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特許異議申立

2021-701244

循環動態測定装置、循環動態測定方法、および循環動態測定プログラム

審判番号
2021-701244
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-051476外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6894730
請求日
2021年12月27日
審決日
2022年09月15日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(A61B) / P1652.121-YAA(A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6894730号発明「循環動態測定装置、循環動態測定方法、および循環動態測定プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6894730号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕、19、20について訂正することを認める。
特許第6894730号の請求項3ないし8、19及び20に係る特許を維持する。
特許第6894730号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 26項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第6894730号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、平成29年3月16日に出願され、令和3年6月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし8、19及び20に係る特許について、同年12月27日に特許異議申立人 山崎浩一郎(以下「申立人」という。当審注:つくりの上部が「立」と表記される「さき」を「崎」で代用)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年4月18日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年6月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、申立人は、同年8月3日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

(1)本件訂正請求における請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~20について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし8のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する、請求項2に記載の循環動態測定装置。」と記載されているのを、

「被検者の心電図を取得する心電図取得部と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する脈波取得部と、
前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する演算部と、
を有する循環動態測定装置であって、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記演算部は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する循環動態測定装置。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8も同様に訂正する。)。

エ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の循環動態測定装置。」と記載されているのを、「請求項3に記載の循環動態測定装置。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~8も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~3のいずれか一項に記載の循環動態測定装置。」と記載されているのを、「請求項3に記載の循環動態測定装置。」に訂正する。

カ 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項9に

「前記被検者の心収縮機能に関する情報は、前記心電図と前記上腕の脈波である第1脈波とから算出された第1脈波伝搬時間であり、
前記被検者の、前記上腕以外の第2部位における第2脈波を取得する第2脈波取得部と、
前記心電図と前記第2脈波とから第2脈波伝搬時間を算出する第2演算部と、
をさらに有する請求項1に記載の循環動態測定装置。」と記載されているのを、
「被検者の心電図を取得する心電図取得部と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する脈波取得部と、
前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する演算部と、
を有する循環動態測定装置であって、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記演算部は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記被検者の心収縮機能に関する情報は、前記心電図と前記上腕の脈波である第1脈波とから算出された第1脈波伝搬時間であり、
前記被検者の、前記上腕以外の第2部位における第2脈波を取得する第2脈波取得部と、
前記心電図と前記第2脈波とから第2脈波伝搬時間を算出する第2演算部と、
をさらに有する循環動態測定装置。」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~18も同様に訂正する。)。

キ 訂正事項7

特許請求の範囲の請求項19に

「被検者の心電図を取得する段階(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する段階(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する段階(c)と、を有し、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記段階(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出する循環動態測定方法。」と記載されているのを、
「被検者の心電図を取得する段階(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する段階(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する段階(c)と、を有し、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記段階(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記段階(b)においては、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記段階(b)においては、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する循環動態測定方法。」に訂正する。

ク 訂正事項8

特許請求の範囲の請求項20に

「被検者の心電図を取得する手順(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する手順(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する手順(c)と、を有し、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記手順(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出する処理をコンピューターに実行させるための循環動態測定プログラム。」と記載されているのを、
「被検者の心電図を取得する手順(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する手順(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する手順(c)と、を有し、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記手順(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記手順(b)においては、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記手順(b)においては、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する処理をコンピューターに実行させるための循環動態測定プログラム。」に訂正する。

(2)訂正の単位について

訂正前の請求項1ないし18は、請求項2ないし18が請求項1を直接的又は間接的に引用していることから、一群の請求項であり、請求項19及び請求項20は、各々独立形式の請求項である。

そして、訂正事項1~6は、一群の請求項〔1-18〕について行われたものであり、訂正事項7及び8は、各々独立形式の請求項である請求項19及び20について行われたものであるから、これらの訂正は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されているものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1及び2について

訂正事項1及び2は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1及び2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項3について

訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項4について

訂正事項4は、請求項4において選択的に記載を引用する請求項から請求項1及び2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項5について

訂正事項5は、請求項7において選択的に記載を引用する請求項から請求項1及び2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項6について

訂正事項6は、本件訂正前の請求項9が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項7について

訂正事項7は、請求項19に記載の発明特定事項「段階(b)」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項7は、請求項2、3及び明細書の【0031】等に記載された事項に基づく訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項8について

訂正事項8は、請求項20に記載の発明特定事項「手順(b)」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項7は、請求項2、3及び明細書の【0031】等に記載された事項に基づく訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 独立特許要件

(1)訂正事項1ないし5、7及び8について

本件においては、請求項1ないし8、19及び20について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし5、7及び8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項6について

訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

4 訂正の適否についてのまとめ

上記のとおり、訂正事項1ないし8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕、19、20について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明

上記のとおり本件訂正が認められるから、特許異議の申立てがされている請求項1及び2は削除された。そして、本件訂正後の特許異議の申立てがされている請求項3ないし8、19及び20に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明3」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3ないし8、19及び20に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項3】
被検者の心電図を取得する心電図取得部と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する脈波取得部と、
前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する演算部と、
続きを表示(全19行)
を有する循環動態測定装置であって、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記演算部は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する循環動態測定装置。
【請求項4】
前記心電図および前記脈波が取得された取得時間が、前記取得時間に取得された前記心電図と前記脈波とから得られる前記脈波伝搬時間に基づく、前記被検者の心収縮機能に関する情報とともに表示される表示画像を作成する表示画像作成部をさらに有する、請求項3に記載の循環動態測定装置。
【請求項5】
前記表示画像作成部は、前記取得時間を横軸とし、横軸の前記取得時間に取得された前記心電図および前記脈波から得られる前記脈波伝搬時間に基づく、前記被検者の心収縮機能に関する情報を縦軸とする二次元グラフにより、前記被検者の心収縮機能に関する情報が表示される前記表示画像を作成する、請求項4に記載の循環動態測定装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記脈波に基づいて血圧をさらに算出し、
前記表示画像作成部は、前記血圧と前記被検者の心収縮機能に関する情報とが関連付けられて表示される前記表示画像を作成する、請求項4または5に記載の循環動態測定装置。
【請求項7】
前記被検者の心収縮機能に関する情報を出力する情報出力部をさらに有する請求項3に記載の循環動態測定装置。
【請求項8】
前記表示画像を出力する画像出力部をさらに有する請求項4~6のいずれか一項に記載の循環動態測定装置。」
「【請求項19】
被検者の心電図を取得する段階(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する段階(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する段階(c)と、を有し、
続きを表示(全14行)
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記段階(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記段階(b)においては、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記段階(b)においては、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する循環動態測定方法。
【請求項20】
被検者の心電図を取得する手順(a)と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する手順(b)と、
取得された前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する手順(c)と、を有し、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記手順(c)は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記手順(b)においては、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得し、
前記手順(b)においては、前記被検者の上腕に装着された前記カフにより前記上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程で前記脈波を取得する処理をコンピューターに実行させるための循環動態測定プログラム。」

第4 特許異議の申立について

1 申立理由の概要

申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証ないし甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲6」という。特許異議申立書の添付書類)及び参考資料1(令和4年8月3日に提出した意見書の添付書類)を提出し、以下の申立理由により、請求項1ないし8、19及び20に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。

(1)(新規性)請求項1、4、5、7、8、19及び20に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

したがって、請求項1、4、5、7、8、19及び20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)(進歩性)請求項1ないし8、19及び20に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明、甲4に記載された技術的事項、及び甲2、甲3、甲5、甲6に記載された周知技術に基いて、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

したがって、請求項1ないし8、19及び20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 証拠方法

甲1:米国特許出願公開第2015/0165211号明細書
甲2:須郷義広、秋山剛、武田朴、石原弘規、「心電図とSpO2脈波を用いた非侵襲連続心拍出量測定」、医科器械学、75巻、2号、2005年2月1日、63頁~69頁
甲3:須郷義広「心電図とSpO2脈波を用いた非侵襲連続心拍出量測定技術の動向と進捗状況について」、医療機器学、83巻、6号、2013年12月1日、527頁~529頁
甲4:特開2004-157941号公報
甲5:特開平10-314129号公報
甲6:特開2013-236836号公報
参考資料1:米国特許出願公開第2011/0275944号明細書

第5 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし8、19及び20に係る特許に対して、当審が令和4年4月18日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)(新規性)請求項1、2、4、5、7、8、19及び20に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

したがって、請求項1、2、4、5、7、8、19及び20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)(進歩性)請求項3及び6に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲4ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

また、請求項4、5、7及び8に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

したがって、請求項3ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第6 各甲号証等の記載

申立人が提出した各甲号証等の記載事項は次のとおりである。

1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明

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(1)甲1の記載事項

甲1には以下の記載がある。外国語の原文に続けて当審訳を記載し、下線は当審で付与した。以下同様である。

(甲1ア)

「ABSTRACT
The system provides information to facilitate efficient optimization of programmer settings for cardiac pacemakers. It simultaneously measures a patient's electrocardiogram and peripheral blood pressure (or volumetric displacement) waveform in order to calculate, in real-time and non-invasively, a value correlated to the pre-ejection time (PET) and, optionally, ejection duration (ED) for the patient's left ventricle. The peripheral pulse waveform can be monitored with a wrist mounted tonometer, or a suitable brachial cuff device. The time difference between the occurrence of the R-wave on the ECG trace and the foot of the pulse on the radial blood pressure waveform is defined as a surrogate pre-ejection time interval (SPET). Data including the electrocardiogram and peripheral pulse trace, as well as the calculated, surrogate pre-ejection time interval (SPET) for each heart beat and trending is displayed on a computer monitor, thereby allowing a physician or nurse to quickly optimize PET for the patient and adjust programmer settings for an implanted pacemaker.」
「要約
心臓ペースメーカーのプログラム可能な設定のための効率的に最適化するための情報を提供するシステムである。患者の心電図と末梢血圧(または体積変位)波形を同時に測定し、患者の左心室の前駆出時間(PET)および、オプションで駆出時間(ED)に相関する値をリアルタイムかつ非侵襲的に算出する。末梢脈波波形は、手首に装着する血圧計、または適切な上腕カフ装置でモニタすることができる。ECG卜レース上のR波の発生と橈骨血圧波形上の脈拍の足との間の時間差を代用前駆出時間間隔(SPET)と定義する。心電図、末梢脈拍、心拍ごとの代用前駆出時間間隔(SPET)、トレンドなどのデータがコンピュータのモニタに表示され、医師や看護師が患者のPETの最適化やペースメーカーのプログラム可能な設定の調整を迅速に行うことができるようになる。」

(甲1イ)

「[0001] The invention relates to the optimization of programmable settings for cardiac pacemakers. It uses simultaneous measurement a patient's electrocardiogram (ECG) and peripheral blood pressure waveform in order to calculate, in real-time, a value correlated to the pre-ejection time (PET) for the patient's left ventricle. More specifically, the time between the detection of the R-wave in an ECG trace and the detection of the foot of the pressure pulse in the peripheral pressure waveform is calculated and displayed, and available to be used by a physician or nurse to quickly optimize PET for the patient when adjusting programmable settings for an implanted pacemaker. The system is also able to determine ejection duration (ED) for the patient's left ventricle.」

「[0001]本発明は、心臓ペースメーカーのプログラム可能な設定の最適化に関するものである。本発明は、患者の心電図(ECG)と末梢血圧波形を同時に測定し、患者の左心室の前駆出時間(PET)に相関する値をリアルタイムで計算する。具体的には、心電図のR波が検出されてから、末梢血圧波形の圧脈の足が検出されるまでの時間を算出・表示し、医師や看護師が植え込み型ペースメーカーのプログラム可能な設定を調整する際に、患者のPETを迅速に最適化するために利用することができる。また、患者の左心室の駆出時間(ED)を測定することができる。」

(甲1ウ)

「[0002] A biventricular pacemaker is a type of cardiac pacemaker that can pace both the right and the left ventricle (typically the lateral wall of the left ventricle). By pacing both right and left ventricles, the pacemaker is able to resynchronize a heart whose opposing walls and right and left ventricles do not contract in synchrony. Biventricular pacemakers have at least two leads, one in the right ventricle to stimulate the septum, and the other inserted through the coronary sinus to pace the lateral wall of the left ventricle. There is typically also a lead in the right atrium to facilitate synchrony with atria contraction. The use of a biventricular pacemaker is generally referred to as cardiac resynchronization therapy (CRT).
[0003] Programmable biventricular pacemakers enable optimization of the various time delays between pacemaker timing pulses. This optimization procedure requires the physician or nurse to set delays between the various timing pulses. Its general purpose is to coordinate contraction of the various chambers in the heart to improve overall efficiency and function. The onset of electrical cardiac activity in an electrocardiogram is marked by the onset of the QRS complex and corresponds to the initial impulse time (To) for the contracting ventricle. The time from the onset of the Q-wave to the closure of the mitral valve is termed electromechanical delay (EMD). The isovolumetric contraction time interval (IVCT) begins when the mitral valve closes and ends when the blood pressure within the left ventricle is sufficient to open the aortic valve. The combination of EMD and IVCT is referred to in the art as the pre-ejection time interval (PET), and is a particularly useful parameter for CRT optimization. Typically, the attending physician will want to minimize PET.」
「[0002] 両室ペースメーカーは、右心室と左心室(典型的には左心室の側壁)の両方をペースすることができる心臓ペースメーカーの一種である。右心室と左心室の両方をペーシングすることによって、ペースメーカーは、対向する壁と右心室と左心室が同期して収縮しない心臓を再同期させることができる。両室ペースメーカーには少なくとも2本のリード線があり、1本は中隔を刺激するために右心室に、もう1本は左心室の側壁をペーシングするために冠状動脈洞から挿入される。また、心房収縮との同期をとるために右心房にもリード線があるのが一般的である。両室ペースメーカーの使用は、一般に心臓再同期療法(CRT)と呼ばれる。
[0003] プログラム可能な両室ペースメーカーは、ペースメーカー・タイミング・パルス間の様々な時間遅延の最適化を可能にする。この最適化手順は、医師又は看護師が様々なタイミングパルス間の遅延を設定することを必要とする。その一般的な目的は、心臓のさまざまな部屋の収縮を調整し、全体的な効率と機能を向上させることである。心電図における電気的な心臓活動の開始は、QKS複合体の開始によって示され、収縮する心室の初期インパルス時間(TO)に対応する。Q波が出現してから僧帽弁が閉じるまでの時間は電気機械的遅延(EMD)と呼ばれる。等容性収縮時間間隔(IVCT)は僧帽弁が閉じたときに始まり、左心室内の血圧が大動脈弁を開くのに十分であるときに終了する。EMDとIVCTの組み合わせは、当技術分野では前駆出時間間隔(PET)と呼ばれ、CRTの最適化に特に有用なパラメータである。一般に、主治医はPETを最小にすることを望むであろう。」

(甲1エ)

「[0006] Accordingly, in one aspect, the invention is directed to a method in which a patient's electrocardiogram (ECG) is measured and, simultaneously, a blood pressure sensor is used to measure the patient's peripheral pulse waveform, e.g., with a tonometer or a brachial cuff. For each respective pulse, the electrocardiogram is analyzed to determine a time correlating to the R-wave, preferably the peak of the R-wave, and this time is defined as an R-wave impulse time (TR) for the contracting ventricle. The time (T2) corresponding to the realization of systolic onset in the detected peripheral pulse waveform is also determined for each respective pulse. In the preferred embodiment of the invention, time T2 corresponding to the onset of systole in the measured peripheral pulse waveform is determined by analyzing the first derivative of the peripheral pulse waveform and identifying a first negative to positive zero crossing preceding a maximum value for the first derivative. In accordance with the invention, the time values TR and T2 are used to calculate a surrogate pre-ejection time interval (SPET) for the pulse. This information (SPET), and trends of this information, can be used conveniently by a medical staff in order to optimize CRT adjustments.
[0007] In another aspect, the invention pertains to a system which includes hardware components and software tools that are particularly well suited to conveniently assist medical staff during CRT optimization by providing information relating to the patient's surrogate pre-ejection time (SPET). The preferred system uses much of the same hardware that is currently available in a SphygmoCor system, utilizing an MM3 digital signal processing electronic module. The leads from ECG electrodes are connected to the electronics module as is the cable from a blood pressure sensor, such as a tonometer. The preferred tonometer, as mentioned above, is strapped to the patient's wrist in a fixed location while the attending staff conducts CRT optimization. Analog data is sent from the electronics module to an A/D converter and the resulting digital data is analyzed and displayed via a programmed personal computer. Software on the personal computer preferably displays traces of the electrocardiogram data and the peripheral pressure waveform data as a function of time, and in real-time. The software allows the attending staff to select a given series of data representing a series of heart beats for which the surrogate pre-ejection time (SPET) is calculated for each pulse. The system preferably displays the data for each heart beat as well as an average and standard deviation for the selected series of heart beats. The system also allows the user to store data for later analysis. Typically, attending staff would adjust settings for the programmable pacemaker during CRT optimization, and compare SPET data from a previous setting to the current setting in an attempt to optimize (e.g. minimize) SPET. If desired, the system can also calculate and display other additional parameters as well. For example, as an optional feature, the system determines and displays ejection duration (ED) calculated from the peripheral pulse waveform, as is known in the art.」
「[0006] 従って、1つの態様において、本発明は、患者の心電図(ECG)が測定され、同時に、血圧センサが、例えば、血圧計又は上腕カフを用いて、患者の末梢脈波形を測定する方法に向けられている。それぞれの脈拍について、心電図を解析してR波、好ましくはR波のピークに相関する時間を決定し、この時間を収縮心室のR波インパルス時間(TR)として定義する。検出された末梢脈波波形における収縮期開始の実現に対応する時間(T2)も、それぞれの脈拍について決定される。本発明の好ましい実施形態では、測定された末梢脈波波形における収縮期の開始に対応する時間T2は、末梢脈波波形の1次導関数を分析し、1次導関数の最大値に先立つ第1の負から正のゼロ交差を識別することによって決定される。本発明に従って、時間値TR及びT2は、脈拍の代用前駆出時間間隔(SPET)を計算するために使用される。この情報(SPET)、及びこの情報の傾向は、CRTの調整を最適化するために、医療スタッフによって便利に使用され得る。
[0007] 別の態様では、本発明は、患者の代用前駆出時間(SPET)に関連する情報を提供することによってCRT最適化の間に医療スタッフを便利に支援するために特によく適しているハードウェアコンポーネント及びソフトウェアツールを含むシステムに係るものである。このシステムは、現在SphygmoCorシステムで使用されているハードウェアとほぼ同じものを使用しており、MM3TMデジタル信号処理電子モジュールを使用している。ECG電極からのリード線は、血圧計などの血圧センサからのケーブルと同様に、電子モジュールに接続される。血圧計は、CRTの最適化を行っている間、患者の手首に固定されている。アナログデータは、エレクトロニクスモジュールからA/Dコンバータに送られ、得られたデジタルデータは、プログラムされたパーソナルコンピュータを介して分析され、表示される。パーソナルコンピュータ上のソフトウェアは、心電図データおよび末梢圧波形データのトレースを時間の関数として、リアルタイムで表示することが好ましい。ソフトウェアは、各脈拍について代用前駆出時間(SPET)が計算される一連の心拍を表すデータの所定の系列を、主治医が選択することを可能にする。システムは、好ましくは、各心拍のデータだけでなく、選択された一連の心拍の平均と標準偏差を表示する。また、本システムは、後の分析のためにデータを保存することもできる。典型的には、主治医はCRT最適化の間にプログラム可能なペースメーカーの設定を調整し、SPETを最適化(例えば最小化)するために以前の設定と現在の設定とのSPETデータを比較することになるであろう。所望により、システムは、他の追加的なパラメータも同様に計算し表示することができる。例えば、オプション機能として、システムは、当技術分野で知られているように、末梢脈波波形から計算された駆出時間(ED)を決定し、表示することが可能である。」

(甲1オ)

「[0016] FIG. 1 is a schematic plot 10 with a variety of illustrative data relating to a hypothetical patient's cardiac cycle. In FIG. 1, curve 12 illustrates the outflow of blood from the patient's left ventricle as a function of time measured via a Doppler echo-cardiogram. Curve 14 represents an electrocardiogram trace (ECG). The width of the QRS complex in the electrocardiogram trace 14 is exaggerated to facilitate the explanation of the invention. Curve 16 in FIG. 1 is a peripheral pulse waveform, for example a waveform of the pressure pulse taken at the patient's radial artery. In accordance with the invention, the patient's electrocardiogram 14 and radial pulse waveform 16 are measured simultaneously. The horizontal axis at the bottom of FIG. 1 represents time in milliseconds. A typical cycle for a heart beat might take one second or one thousand milliseconds.
[0017] Generally speaking, a full cardiac cycle is divided into systole, which corresponds to contraction of the ventricles, and diastole which corresponds to the relaxation of the ventricles. In general terms, systole includes a pre-ejection time (PET) interval, and an ejection duration (ED), which is the amount of time that the aortic valve is open during the cycle. The pre-ejection time (PET) consists of electromechanical delay (EMD) which is typically defined as the time interval from the onset of the Q-wave 14A in the electrocardiogram 14 to the onset of physical cardiac contraction 12A (T1-T0), plus the isovolumetric contraction time (IVCT), which is the initial period of ventricular contraction after the mitral valve closes but before the aortic valve opens. In accordance with an embodiment of the present invention, the system detects the peak value 14R of the R-wave in the electrocardiogram 14. This time is designated as TR on axis 18 in FIG. 1. As is illustrated by curve 12, there is no blood outflowing from the left ventricle during isovolumetric contraction (IVCT). As the pressure within the left ventricle increases during isovolumetric contraction, the pressure eventually opens the aortic valve and blood flows from the left ventricle into the aorta, as indicated by reference number 12B. The time at which the aortic valve opens and blood begins to flow from the left ventricle, reference number 12B, is designated in FIG. 1 as T1 along the time axis 18. FIG. 1 does not illustrate the pressure waveform in the central aorta, but if such waveform were available, the time T1 would correspond to the foot of the central aortic pulse waveform, and the time interval T1-T0 would directly represent the pre-ejection time (PET) interval. However, FIG. 1 illustrates a radial pulse waveform 16 (which is measured non-invasively), not a central aortic pressure waveform. The foot 16A of the systolic portion of the radial pulse waveform occurs at time T2, which is delayed and later in time than T1, see time axis 18. Nevertheless, as long as the patient's peripheral pulse waveform is measured at a fixed location, such as a fixed location on the patient's wrist, the time interval T2-T1 is a constant value (K).
[0018] It has been found in many circumstances that detecting TR corresponding to the peak of the R-wave is more robust and stable over repeated cycles than attempting to accurately measure the onset of the Q-wave or the time of the Q-wave peak (T0). Therefore, even though TR does not correspond to the onset of the Q-wave, detecting TR and defining the time interval T2-TR as a surrogate pre-ejection time (SPET) has been found to be more accurate and reliable in some circumstances than detecting To and defining SPET=T2-T0 as defined in the incorporated U.S. Pat. No. 8,112,150.」
「[0016] 図1は、仮想的な患者の心周期に関連する様々な例示的なデータを有する概略プロット10である。図1において、曲線12は、ドップラーエコー心電図を介して測定された時間の関数としての患者の左心室からの血液の流出を示している。曲線14は、心電図トレース(ECG)を表している。心電図トレース14のQRS複合体の幅は、本発明の説明を容易にするために誇張されている。図1の曲線16は、末梢脈波であり、例えば、患者の撓骨動脈で採取された圧脈の波形である。本発明に従って、患者の心電図14と橈骨脈波16とが同時に測定される。図1の下部の横軸は、ミリ秒単位の時間を表している。心拍の典型的な周期は、1秒または1000ミリ秒を要するかもしれない。
[0017]一般に、完全な心周期は、心室の収縮に対応する収縮期と、心室の弛緩に対応する拡張期とに分けられる。-般に、収縮期は、前駆出時間(PET)間隔と、サイクル中に大動脈弁が開いている時間量である駆出時間(ED)とを含む。前駆出時間(PET)は、典型的には心電図14におけるQ波14Aの発生から物理的な心収縮12Aの開始までの時間間隔(T1-T0)として定義される電気機械遅延(EMD)と、僧帽弁の閉鎖後大動脈弁が開く前の心室収縮の初期期間である等容性収縮時間(IVCT)から構成されている。本発明の実施形態によれば、システムは、心電図14におけるR波のピーク値14Rを検出する。この時間は、図1の軸18上でTRと指定される。曲線12によって示されるように、等容性収縮(IVCT)の間、左心室から流出する血液はない。等容性収縮中に左心室内の圧力が上昇すると、その圧力によって最終的に大動脈弁が開き、参照番号12Bで示すように、血液が左心室から大動脈に流れ込む。大動脈弁が開き、血液が左心室から流れ始める時間、参照番号12Bは、図1において、時間軸18に沿ってT1と指定されている。図1は、中心大動脈の圧力波形を図示していないが、もしそのような波形があれば、時間T1は、中心大動脈脈波形の足に対応し、時間間隔T1-T0は、直接的に前駆出時間(PET)間隔を表すことになるであろう。しかしながら、図1は、中心大動脈圧波形ではなく、(非侵襲的に測定される)撓骨脈波波形16を図示している。橈骨脈波波形の収縮期の部分の足16Aは、時間軸18を参照して、T1よりも遅れて時間的に遅い時間T2に発生する。とはいえ、患者の末梢脈波が患者の手首の定位置などで測定される限り、時間間隔T2-T1は一定値(K)である。
[0018] R波のピークに対応するTRを検出することは、Q波のオンセット又はQ波ピークの時間(T0)を正確に測定しようとするよりも、繰り返しのサイクルにわたってより強固で安定していることが多くの状況において判明している。従って、TRがQ波の開始に対応しないにもかかわらず、TRを検出して時間間隔T2-TRを代用前駆出時間(SPET)として定義することは、T0を検出して組み込まれた米国特許8112150号明細書に定義されているSPET=T2-T0を定義するよりも状況によっては正確かつ信頼できることが判明している。」

(甲1カ)

「[0021] FIG. 2 is a schematic drawing illustrating the use of the invention. The patient 24 has been prepared to undergo CRT optimization, although the wand and the external CRT programming electronics are not shown for the sake of simplicity. Electrocardiogram electrodes 26 are placed on the patient's chest, as is known in the art. Alternatively, the electrodes can be placed on the peripheral limbs, as also is known in the art. Leads 28 from the electrodes 26 are connected to an ECG cable 30 which in turn is connected to a signal processing electronics module 32. As mentioned, the preferred signal processing electronics module 32 is the SphygmoCor MM3, manufactured by AtCor Medical. As is known in the art, the electrode leads 28 and cable 30 need to be compatible with the signal processing electronics module 32. In one embodiment of the invention, a tonometer 34 monitors the patient's radial artery pressure waveform. A conventional hand-held tonometer from AtCor Medical is suitable for carrying out the invention, although it is preferred that the tonometer 34 be strapped to the wrist of the patient 24 in order to ensure that the radial pressure pulse wave be taken at a fixed location on the patient's limb during the CRT optimization session. If desired, the patient's peripheral pulse waveform can be taken at another location, for example, a brachial artery volumetric displacement waveform can be measured using an upper arm cuff. See, e.g., U.S. patent application Ser. No. 13/101,193, entitled Brachial Cuff, filed May 5, 2011, by Ahmad Qasem and assigned to the assignee of the present application, which is hereby incorporated by reference. The criterion for selecting the type of measured waveform is the ability to identify the foot of the waveform (e.g. 16A in FIG. 1). In any event, it is important that the location of the peripheral pulse waveform be measured at a fixed location during the CRT optimization session in order to ensure that the pressure pulse travel time from the aortic valve to the peripheral measurement location (e.g., wrist, or upper arm) is consistent. Since the invention relies on the simultaneous measurement of an electrocardiogram and a peripheral pulse waveform, the accuracy of the invention depends in large part on the measuring of the peripheral pulse waveform at a fixed location.
・・・
[0023] Referring again to FIG. 2, the tonometer 34 (or other suitable pressure sensing device such as a suitable brachial cuff device) is attached to the cable 44 which is connected to the signal processing electronics module 32. Analog output cables 46 and 48 are connected between the signal processing electronics module 32 and the personal computer 50. Electrocardiogram data is transmitted in cable 46 whereas peripheral pulse waveform data is transmitted in cable 48. The computer 50 contains an analog to digital converter which receives the analog data in lines 46 and 48 and converts it to digital form. The computer also includes a processing unit, memory, and data storage, as is common in the art. A computer monitor 52 with a screen display is also provided. The computer 50 is programmed with software that displays a trace of the electrocardiogram and the peripheral pulse waveform, and also calculates SPET for each pressure pulse, which is referred to in FIGS. 3 and 4 as the R-foot interval, as well as trends.
[0024] FIGS. 3 and 4 illustrate a computer screen display 54 used to implement the invention. The screen 54 in FIG. 3 contains exemplary data from a patient before CRT optimization. FIG. 4 is similar to FIG. 3; however, the exemplary data is shown for the same patient after CRT optimization. Referring to FIG. 3, patient ID information is entered by the attending staff in box 55 on the screen 54 at the beginning of the session. The screen 54 includes an echocardiogram window 56 and a peripheral pulse waveform window 58. The screen 54 also includes an offline/online button 60. When the system is online and collecting data, the electrocardiogram window 56 displays a trace of the electrocardiogram in real-time, and the peripheral pulse waveform window 58 displays a trace of the peripheral pulse waveform, also in real-time. Note that the time scale for the windows 56 and 58 is in milliseconds so the length of the time axis in the windows 56 and 58 corresponds to a ten second interval, which in the case of FIG. 3, corresponds to roughly nine heart beats. After startup, the attending physician or staff observes the quality of the ECG trace and peripheral pulse waveform trace while the system is online. When the attending staff believes a quality signal has been obtained, the ANALYZE button 80 is selected to stop data acquisition, and the data in windows 56 and 58 remain stationary. FIG. 3 shows the screen at the time at which the ANALYZE button 80 has been selected. At this point, for each respective heart beat, the system in FIG. 3 determines the peak value of the voltage difference in the R-wave for the electrocardiogram 56 and defines the corresponding time as the R-wave impulse time (TR) for the contracting ventricle. In ECG window 56, a dot 64 is illuminated on the electrocardiogram to indicate the time TR corresponding to the peak value of the voltage difference of the R-wave for each heart beat. Note that the y-axis for the electrocardiogram window 56 is progressively negative from the top to the bottom of the chart. Therefore, the peak value at the R-wave 64 actually appears towards the bottom of the chart.
[0025] Also for each respective pulse, the system in FIG. 3 determines the realization of systolic onset in the detected peripheral pulse waveform and defines the corresponding time as a peripherally measured systolic onset time (T2). The system places a dot 66 at the foot of the waveform for each pulse.
[0026] Screen 54 in FIG. 3 also includes an interval window 68. The interval window 68 displays the variation of SPET (i.e., T2-TR=SPET), or the R-foot Interval, as labeled in FIG. 3, for each heart beat in the ten second trace captured in windows 56 and 58. The R-foot interval (SPET) is illustrated by dots 70 in interval window 68. The system preferably calculates the mean and standard deviation of the calculated SPET values 70 and displays these values on the screen, as indicated by reference numerals 72 and 74. If the attending staff is satisfied with the results of the analysis, the accept button 78 is selected and the data is time-stamped and stored. If the staff is not satisfied that the data is reliable, or for some other reason does not desire to store the information, the reject button 82 is selected.」
「[0021] 図2は、本発明の使用方法を説明するための模式図である。患者24は、CRT最適化を受けるために準備されているが、ワンド及び外部CRTプログラミング電子機器は、簡略化のために示されてはいない。心電図電極26は、当技術分野で知られているように、患者の胸部に配置される。あるいは、電極は、同じく当技術分野で知られているように、末梢の四肢に配置することができる。電極26からのリード線28は、ECGケーブル30に接続され、このケーブルは、信号処理電子モジュール32に接続される。前述のように、好ましい信号処理エレクトロニクスモジュール32は、AtCorMedical社製のSphygmoCor MM3である。当技術分野で知られているように、電極リード線28及びケーブル30は、信号処理エレクトロニクスモジュール32と互換性がある必要がある。本発明の-実施形態では、血圧計34が患者の撓骨動脈圧波形を監視する。AtCorMedical社製の従来の手持ち式血圧計が本発明を実施するのに適しているが、CRT最適化セッション中に患者の四肢の固定位置で橈骨圧力脈波が取られるように、血圧計34を患者24の手首に括り付けることが好ましい。所望により、患者の末梢脈波が別の場所で採取されることができ、例えば、上腕カフを使用して上腕動脈容積変位波形が測定されることが可能である。例えば、Ahmad Qasemによって2011年5月5日に出願され、本願の譲受人に譲渡されたBrachial Cuffと題する米国特許出願第13/101,193号を参照し、これは参照により本願に組み込まれるものとする。測定波形の種類を選択する基準は、波形の足(例えば、図1の16A)を識別する能力である。いずれにしても、大動脈弁から末梢の測定場所(例えば、手首、又は上腕)までの圧脈移動時間が一定であることを保証するために、CRT最適化セッション中に末梢脈波形の位置を固定した場所で測定することが重要である。本発明は、心電図と末梢脈波形の同時測定に依存しているため、本発明の精度は、末梢脈波形を一定の場所で測定することに大きく依存する。
・・・
[0023] 再び図2を参照すると、血圧計34(または適切な上腕カフ装置のような他の適切な圧力感知装置)は、信号処理電子モジュール32に接続されているケーブル44に取り付けられている。アナログ出カケーブル46及び48は、信号処理エレクトロニクスモジュール32とパーソナルコンピュータ50との間に接続される。心電図データはケーブル46で伝送され、一方、末梢脈波データはケーブル48で伝送される。コンピュータ50は、ライン46及び48のアナログデータを受信し、デジタル形式に変換するアナログ-デジタル変換器を含む。コンピュータはまた、当該技術分野において一般的であるように、処理装置、メモリ、およびデータ記憶装置を含む。画面表示を有するコンピュータモニタ52も設けられている。コンピュータ50は、心電図のトレース及び末梢脈波形を表示し、また、図3及び図4において「R足インターバル」と称される各圧脈のSPETを計算し、さらに、トレンドを計算するソフトウェアでプログラムされる。
[0024] 図3及び図4は、本発明を実施するために使用されるコンピュータ画面表示54を示す図である。図3の画面54は、CRT最適化前の患者からの例示的なデータを含んでいる。図4は図3と同様であるが、例示的なデータは、CRT最適化後の同じ患者について示されている。図3を参照すると、患者ID情報は、セッションの開始時に画面54のボックス55にアテンディングスタッフによって入力される。画面54は、心電図ウィンドウ56及び末梢脈波ウィンドウ58を含む。また、画面54には、オフライン/オンラインボタン60が含まれる。システムがオンラインであり、データを収集しているとき、心電図ウィンドウ56は心電図のトレースをリアルタイムで表示し、末梢脈波ウィンドウ58は末梢脈波形のトレースを、同じくリアルタイムで表示する。なお、ウィンドウ56、58の時間軸はミリ秒単位なので、ウィンドウ56、58の時間軸の長さは10秒間隔に相当し、図3の場合、およそ9回の心拍に相当する。起動後、主治医又はスタッフは、システムがオンラインである間、ECGトレース及び末梢脈波波形トレースの品質を観察する。スタッフが質の高い信号が得られたと確信すると、ANALYZEボタン80を選択してデータ取得を停止し、ウィンドウ56及び58のデータは静止したままである。図3は、ANALYZEボタン80が選択された時点の画面である。この時点で、それぞれの心拍について、図3のシステムは、心電図56についてR波の電圧差のピーク値を決定し、対応する時間を収縮心室のR波インパルス時間(TR)として定義する。ECGウィンドウ56では、心電図上にドット64が点灯され、各心拍のR波の電圧差のピーク値に対応する時間TRを示す。なお、心電図ウィンドウ56のY軸は、グラフの上から下に向かって徐々にマイナスになっている。したがって、R波64におけるピーク値は、実際には、チャー卜の底部に向かって現れる。
[0025] また、それぞれの脈拍について、図3のシステムは、検出された末梢脈波における収縮期オンセットの実現を決定し、対応する時間を末梢測定収縮期オンセット時間(T2)として定義する。システムは、各脈拍について、波形の足元にドット66を配置する。
[0026]図3の画面54は、インターバルウィンドウ68も含んでいる。インターバルウィンドウ68は、ウィンドウ56及び58に取り込まれた10秒間のトレースにおける各心拍について、SPETの変動(すなわち、T2-TR=SPET)、すなわち、図3にラベル付けされた「R足インターバル」を表示する。R足インターバル(SPET)は、インターバルウィンドウ68内のドット70によって図示されている。システムは好ましくは、計算されたSPET値70の平均及び標準偏差を計算し、参照数字72及び74で示されるように、これらの値を画面上に表示する。アテンドスタッフが分析結果に満足した場合、受諾ボタン78が選択され、データがタイムスタンプされ、保存される。スタッフがデー夕の信頼性に満足しない場合、又は何らかの他の理由で情報の保存を希望しない場合、拒否ボタン82が選択される。」

(甲1キ)図1

[図:0001392040000001.jpg]

(甲1ク)図2

[図:0001392040000002.jpg]

(甲1ケ)図3

[図:0001392040000003.jpg]

(2)甲1に記載された発明

上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「心臓ペースメーカーのプログラム可能な設定を最適化するシステムであって、
患者の心電図(ECG)を測定し、同時に、血圧センサが、上腕カフを用いて、患者の末梢脈波波形を測定し、
測定された心電図を解析してR波のピークに相関する時間(TR)を、それぞれの心拍について決定し、
測定された末梢脈波波形における収縮期の開始に対応する時間(T2)を、それぞれの心拍について決定し、
決定されたTR及びT2の時間間隔T2-TRを、代用前駆出時間(SPET)として計算し、
代用前駆出時間(SPET)は、患者の左心室の前駆出時間(PET)に相関する値であり、前駆出時間(PET)は、心電図におけるQ波の発生から物理的な心収縮の開始までの時間間隔(T1-T0)として定義される電気機械遅延(EMD)と、僧帽弁の閉鎖後大動脈弁が開く前の心室収縮の初期期間である等容性収縮時間(IVCT)から構成されており、
心電図、末梢脈波形、心拍ごとの代用前駆出時間(SPET)の変動などのデータをモニタに表示し、
医師等が植え込み型ペースメーカーのプログラム可能な設定を調整する際に、患者のPETを最適化するために利用する、
システム。」

2 甲2の記載事項

甲2には以下の記載がある。

「esCOの算出においては心電図のR波から大腿動脈圧波形の立ち上がりまでの伝播時間ではなく、心電図のR波から末梢のSpO2脈波の立ち上がりまでの時間をPWTTとして用いた。」(第67頁左欄15行~右欄2行)

3 甲3の記載事項

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甲3には以下の記載がある。

「2005年に心電図とSpO2脈波を用いた連続心拍量測定技術について報告した1)。心電図のR波と末梢部位で測定したSpO2脈波の立ち上がりまでの時間をPWTT(Pulse wave transit time 脈波伝播時間)と定義して、PWTTとSV(Stroke volume 1回拍出量)の間の相関関係に基づいて心拍出量を計算するものである。」(第527頁左欄2行~8行)」

4 甲4の記載事項

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甲4には以下の記載がある。

「【0056】
カフ16および血圧測定モジュール17は,患者の脈波データ,血圧値(最高血圧値および最低血圧値)および脈拍数を得るために用いられる。血圧測定モジュール17に空気ポンプ,切換弁および圧力センサが内蔵されている。空気ポンプ,切換弁および圧力センサはチューブに接続されており,このチューブの末端が患者の腕に巻付けられるカフ16の内部に位置している。空気ポンプから送られる空気がチューブの末端からカフ16内に送出されることによってカフ16内に空気が送込まれカフ16内が加圧される。患者の腕の脈波に応じてカフ16内の圧力が変動し,この圧力変動が圧力センサによって検出される。圧力センサの変動が脈波データとして用いられる。たとえば,オシロメトリック法により脈波データにもとづいて患者の最高血圧値および最低血圧値がCPU11によって算出される。脈波データに基づいてCPU11によって脈拍数が算出される。
【0057】
PCGマイクロフォン15によって検出された心音に基づく心電図データによって得られる脈波データと,患者の腕に装着されたカフ16から得られる脈波データとに基づいて,PWV(Palse Wave Velocity :脈波伝播速度)がCPU11によって算出される。PWVは,患者の身体の2点において計測された脈波の2点間の伝播時間をこの2点間の距離で除算した値である。心電図データに基づいて得られる第1脈波時刻(たとえば,脈波の振幅が一旦減少した後,増加に転じた時点における時刻)から,患者の腕に装着されたカフ16から得られる第2脈波時刻までの間の時間が算出され,算出された時間が心音検出部位(胸部)から患者の腕に巻付けられたカフ16までの距離(患者の身長等に応じてあらかじめ定められた値)によって除算されることによってPWVが求められる。血管(動脈)が硬いと脈波の伝達速度は速くなり血管が軟らかいと脈波の伝達速度は遅くなる。このため,PWVは動脈硬化の状態を表す指標として用いられる。
・・・
【0090】
図12は,ユーザ用コンピュータ3の表示装置52の表示画面上に表示される,上述の測定リスト・ウインドウ・データに基づくウインドウ(測定リスト・ウインドウ)W2の一例を示している。
【0091】
測定リスト・ウインドウW2には,横軸を日付,縦軸を数値とする最高血圧,最低血圧,脈拍数,PWV,ABI,体重,体脂肪率,BMI等のそれぞれについてのグラフと,医師が患者に対して行ったアドバイス(先生からのアドバイス)と,服用薬リストとが表示される。グラフ表示領域に表示される各グラフの右側には,平均値を表す数字が表示される。グラフ表示領域の右側には,1週間,2週間,・・・1年の期間を表す文字と,各文字に対応するチェックボックスとが表示されている。いずれかのチェックボックスをチェックすると,チェックされた期間を横軸とするグラフがグラフ表示領域に表示(再表示)される。また,測定リスト・ウインドウW2の下部には「メイン画面」ボタン,「質問・近況連絡」ボタン,「治療計画書」ボタン,「測定データ」ボタン,「測定リスト」ボタン,「食事メニュー」ボタン,「運動メニュー」ボタン,「薬の説明」ボタン,「ログアウト」ボタンおよび「パスワード変更」ボタンが表示される。」

5 甲5の記載事項

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甲5には以下の記載がある。

「【0003】ところで、上記のような自動血圧測定装置に対して、例えば、前記カフから突き出された被測定者の右腕を支持し、且つ先端部に心電誘導波形検出用の心電電極が設けられた第1アームレストがカフの背面方向に上向きに傾斜して設けられ、また、被測定者の左腕を支持し、且つ先端部に心電誘導波形検出用の心電電極が設けられた第2アームレストが本体左側に水平状に設けられることにより、血圧測定と同時に被測定者の右腕の手首と左腕の手首とから検出される心電誘導波形の周期毎に発生する所定の部位から、前記脈拍同期波の周期毎に発生する立ち上がり部位までの時間差を算出し、その時間差に基づいて生体の動脈内を伝播する脈波の伝播速度情報も測定することが可能な脈波伝播速度情報測定機能付き自動血圧測定装置が考えられている。
【0004】このような脈波伝播速度情報測定機能付き自動血圧測定装置によれば、血圧測定と同時に脈波伝播速度情報も測定されるので、脈波伝播速度情報と被測定者の動脈硬化度とは密接な関係を有しているという既知の事実に基づき、日常的に血圧降下剤を服用している慢性的な高血圧患者に対しても、例えば、食事療法などにより症状が改善した程度を継続的に評価することが可能になる。
・・・
【0014】上記電子制御装置58は、CPU62、ROM64、RAM66、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU62は、RAM66の一時記憶機能を利用しつつ予めROM64に記憶された手順に従って入力信号を処理して駆動信号や表示信号などを出力する。すなわち、血圧測定に際しては、CPU62は、予め定められた手順に従って減速機付DCモータ48を駆動することによりカフ15を生体の上腕部に巻回し、空気ポンプ44を駆動することによりカフ15により上腕部を圧迫し、次いで切換弁42を駆動してカフ15の圧迫圧力を徐々に降圧させ、その徐速降圧過程において得られる脈波信号SM1 およびカフ圧信号SKに基づいてオシロメトリック方式により血圧値を決定し、その血圧値を最高血圧表示器32および最低血圧表示器34に表示させると同時に、記憶装置68の血圧値記憶領域69に順次記憶させる。なお、この記憶装置68は、磁気ディスク、磁気テープ、揮発性半導体メモリ、或いは不揮発性半導体メモリなどのよく知られた記憶装置により構成されている。」

6 甲6の記載事項

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甲6には以下の記載がある。

「【0037】
上記第1圧力センサT1、第2圧力センサT2および第3圧力センサT3から電子制御装置70には、上流側膨張袋22内の圧力値すなわち上流側膨張袋22の圧迫圧力値PC1を示す出力信号、中間膨張袋24内の圧力値すなわち中間膨張袋24の圧迫圧力値PC2を示す出力信号および下流側膨張袋26内の圧力値すなわち下流側膨張袋26の圧迫圧力値PC3を示す出力信号がそれぞれ供給される。電子制御装置70は、CPU72、RAM74、ROM76および図示しないI/Oポートなどを含む所謂マイクロコンピュータである。この電子制御装置70は、CPU72がRAM74の記憶機能を利用しつつ予めROM76に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理し、電動式の空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁E1、第2開閉弁E2および第3開閉弁E3をそれぞれ制御することにより、膨張袋22、24および26にそれぞれ圧迫された上腕10の動脈16の容積変化に応答してそれぞれ発生する膨張袋22、24および26内の圧力振動である脈波を示す脈波信号SM1、SM2およびSM3(たとえば後述の図6(a)、図7(a)、図8、図9参照)をそれぞれ採取する。また、電子制御装置70は、それら脈波信号SM1、SM2およびSM3に基づいて前記生体の最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPを算出し、表示装置78にその演算結果である測定値を表示させる。この電子制御装置70には、上記第1圧力センサT1、第2圧力センサT2および第3圧力センサT3からの出力信号に加え、血圧値測定起動部80からの出力信号が供給される。この血圧値測定起動部80は、手動による起動操作に応答して、或いは予め設定された血圧測定周期毎に、血圧測定開始の指令信号を出力するものである。
【0038】
図5は、電子制御装置70に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図5において、カフ圧制御部82は、たとえば図10のタイムチャートの示すように、血圧測定開始の指令信号が血圧値測定起動部80から供給された場合に、急速排気弁52および排気制御弁54を閉じ、第1開閉弁E1、第2開閉弁E2および第3開閉弁E3を開いた状態で空気ポンプ50を起動させることにより、上流側膨張袋22、中間膨張袋24および下流側膨張袋26による上腕10の動脈16への圧迫圧力値PCをその動脈16における最高血圧値SBPよりも充分に高い値に予め設定された昇圧目標圧力値PCM(たとえば180mmHg)までそれぞれ急速に昇圧させる。例えば、中間膨張袋24の圧迫圧力値PC2が上記昇圧目標圧力値PCM以上となるまで各膨張袋を昇圧する。続いて、カフ圧制御部82は、排気制御弁54を用いて、上記昇圧させた上流側膨張袋22、中間膨張袋24および下流側膨張袋26の圧迫圧力値PCを予め設定された徐速降圧速度でそれぞれ同時に徐速降圧させる。このとき、カフ圧制御部82は、所定量(たとえば3~10mmHgの範囲内)の除速降圧毎に上流側膨張袋22、中間膨張袋24および下流側膨張袋26の圧迫圧力値PCをそれぞれ所定時間保持する。そして、カフ圧制御部82は、中間膨張袋24の圧迫圧力値PC2が、上記動脈16における最低血圧値DBPよりも充分に低い値に予め設定された測定終了圧力値PCE(たとえば30mmHg)よりも小さくなったときに、急速排気弁52を用いて上流側膨張袋22、中間膨張袋24および下流側膨張袋26内の圧力をそれぞれ大気圧まで排圧する。」

7 参考資料1の記載事項

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参考資料1には以下の記載がある。

「[0029] As depicted in the diagram of FIG. 1, the invention involves the following basic steps:
[0030] a) Measuring a patient's brachial pressure 1, 2, i.e., systolic and diastolic pressure (SP & DP respectively);
[0031] b) Acquiring and calibrating a cuff pulse waveform 3; and
[0032] c) Calculating a calibrated aortic pressure waveform 6 using one or more generalized transfer functions 4 from the calibrated brachial cuff waveform 5.
続きを表示(全23行)
[0033] The steps a) and b) are preferably implemented in hardware and software, while step c) is preferably implemented in software.
[0034] Preferably, steps a) and b) comprise measuring brachial systolic and diastolic pressure or mean pressure through an oscillometric cuff method and acquiring the brachial cuff signal at specified cuff pressure. The step a) measurement can be made with a conventional blood pressure cuff device. The step b) measurement is preferably made with a device comprising a brachial cuff, a tube, a pressure pump with a control system, a pressure sensor and a digital signal processing (DSP) unit to prepare the cuff brachial signal for the software to calculate the aortic pressure waveform. The DSP unit may be connected to the computer implementing the software via a USB cable. The DSP unit may consist of an analog-to-digital component and low-pass, high pass filters and amplifiers. The cuff, the tube and the pump are similar to the components of conventional brachial blood pressure measurement devices. The control unit is used to maintain the cuff pressure within a predetermined pressure range. This is explained in more detail below.
・・・
[0054] C) Method Procedure
[0055] One embodiment of the invention follows the procedure illustrated in FIG. 3. Referring to FIG. 3, the procedure involves the following steps:
[0056] a) Measure Brachial SP and DP using an automated oscillometric cuff blood pressure technique. See block labeled with reference number 2, FIG. 3.
[0057] b) Inflate the cuff pressure to one of the following values. See block 7, FIG. 3.
(i) PCuff=(K %) DP
(ii) PCuff=(K %)(SPB-DPB)+DPB
(iii) PCuff=[(K %)+1]SPB
[0058] where K is a percentage that range preferably from 10 to 90%
[0059] c) Acquire the cuff volume pulse measured by the pressure sensor in the hardware and processed through a DSP unit, block 3, FIG. 3.
[0060] d) Calibrate the digitize cuff volume pulse signal maximum and minimum with measured brachial SP and DP respectively, block 8, FIG. 3.
[0061] e) Apply one of the following transfer functions depending on the cuff pressure values of step b) above (see, block 7, FIG. 3) to convert the measured brachial cuff pulse waveform into aortic pressure waveform, see block 9, FIG. 3:
(i) TFPCuff<DPB
(ii) TFDPB≦PCuff<SPB
(iii) TFPCuff≧SPB'
[0062] Each of these transfer functions can be composed of intermediary transfer functions.
[0063] f) Apply a calibration transfer function TFCalibrate see block 10, FIG. 3, if necessary to calibrate the calculated aortic pressure from block 9, FIG. 3.」
「[0029] 図1の図に描かれているように、本発明は、以下の基本的なステップを含む。
[0030] a)患者の上腕血圧1、2、すなわち収縮期圧力および拡張期圧力(それぞれSP&DP)を測定する。
[0031] b)カフ脈拍波形3を取得し、較正すること;および
[0032] c)較正された上腕カフ脈拍波形5から1つ以上の一般化された伝達関数4を用いて較正された大動脈圧波形6を計算すること。
続きを表示(全23行)
[0033] 好ましくは、ステップa)及びb)は、ハードウェア及びソフトウェアで実装され、ステップc)は、好ましくはソフトウェアで実装される。
[0034] 好ましくは、ステップa)及びb)は、オシロメトリックカフ法により上腕収縮期及び拡張期圧力又は平均圧力を測定し、指定されたカフ圧で上腕カフ信号を取得することからなる。ステップa)の測定は、従来の血圧計のカフ装置で行うことができる。ステップb)の測定は、上腕カフ、チューブ、制御システムを有する加圧ポンプ、圧力センサ、及び大動脈圧波形を計算するソフトウェアのためにカフ上腕信号を準備するデジタル信号処理(DSP)ユニットを含む装置を用いて行われることが好ましい。DSPユニットは、USBケーブルを介して、ソフトウェアを実装するコンピュータに接続されてもよい。DSPユニットは、アナログ/デジタルコンポーネントとローパス、ハイパスフィルタおよび増幅器で構成されてもよい。カフ、チューブ、ポンプは、従来の上腕血圧測定装置の構成要素と同様である。制御部は、カフ圧を所定の圧力範囲に維持するために使用される。これについては、以下でより詳細に説明する。
・・・
[0054] C)方法の手順
[0055] 本発明の一実施形態は、図3に示される手順に従う。図3を参照すると、この手順は以下のステップを含む。
[0056] a)自動オシロメトリックカフ血圧技術を使用して上腕SP及びDPを測定する。図3の参照番号2でラベル付けされたブロックを参照する。
[0057] b)カフ圧を以下の値の1つまで膨張させる。ブロック7、図3を参照。
(i)PCuff=(K%)DP
(ii)PCuff=(K%)(SPB-DPB)+DPB
(iii)PCuff=[(K%)+1]SPB
[0058] ここで、Kは、好ましくは10~90%の範囲の百分率である。
[0059] c)圧力センサによって測定されたカフ容積パルスをハードウェアで取得し、DSPユニット、ブロック3、図3を通して処理する。
[0060] d)デジタル化したカフ容積脈拍信号の最大値と最小値を、それぞれ測定された上腕SPとDPで較正する。ブロック8、図3を参照。
[0061] e)上記ステップb)のカフ圧力値に応じて以下の伝達関数の1つを適用し(ブロック7、図3参照)、測定された上腕カフ脈拍波形を大動脈圧波形に変換する。ブロック9、図3を参照。
(i)TFPCuff<DPBである。
(ii)TFDPB≦PCuff<SPB
(iii)TFPCuff≧SPBとなる。
[0062] これらの各伝達関数は、中間的な伝達関数で構成することができる。
[0063] f)ブロック9、図3からの計算された大動脈圧を較正するために、必要ならば較正伝達関数TFCalibrate参照ブロック10、図3を適用する。」

第7 取消理由に対する当審の判断

1 本件発明3について

(1)本件発明3と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明では、「患者の心電図(ECG)を測定」するから、そのための測定手段を備えることが明らかである甲1発明は、本件発明3の「被検者の心電図を取得する心電図取得部」に相当する構成を備えているといえる。

イ 甲1発明では、「血圧センサが、上腕カフを用いて、患者の末梢脈波波形を測定」するから、そのための測定手段を備えることが明らかである甲1発明は、本件発明3の「前記被検者の上腕の脈波を取得する脈波取得部」に相当する構成を備えているといえる。

ウ 甲1発明の「測定された心電図」から「決定されたTR」、「及び」、「測定された末梢脈波波形」から「決定された」「T2の時間間隔T2-TRを」「計算」する「代用前駆出時間(SPET)」は、本件発明3の「前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間」に相当する。

また、甲1発明の「前駆出時間(PET)は、心電図におけるQ波の発生から物理的な心収縮の開始までの時間間隔(T1-T0)として定義される電気機械遅延(EMD)と、僧帽弁の閉鎖後大動脈弁が開く前の心室収縮の初期期間である等容性収縮時間(IVCT)から構成され」るから、「前駆出時間(PET)」は、「心収縮」機能に関する「時間」情報である。すると、甲1発明の「患者の左心室の前駆出時間(PET)に相関する値」である「代用前駆出時間(SPET)」も、「心収縮」機能に関する「時間」情報といえるから、甲1発明の「代用前駆出時間(SPET)」は、本件発明3の「前記被検者の心収縮機能に関する情報」に相当するといえる。

よって、甲1発明では、「測定された心電図」から「決定されたTR」、「及び」、「測定された末梢脈波波形」から「決定された」「T2の時間間隔T2-TRを」、「患者の左心室の前駆出時間(PET)に相関する値」である「代用前駆出時間(SPET)として計算」するから、そのための計算手段を備えることが明らかである甲1発明は、本件発明3の「前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する演算部」に相当する構成を備えているといえる。

エ 上記ア~ウを踏まえると、甲1発明の「システム」は、本件発明3の「循環動態測定装置」に相当する。

オ 甲1発明の「代用前駆出時間(SPET)」が、「測定された心電図」において「決定」された「R波のピークに相関する時間(TR)」から「上腕カフを用いて」「測定」された「末梢脈波波形」において「決定」された「収縮期の開始に対応する時間(T2)」までの「時間間隔T2-TR」であることは、本件発明3の「前記脈波伝搬時間」が、「心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間」であることに相当する。

カ 甲1発明は、「心拍ごとの代用前駆出時間(SPET)の変動」「をモニタに表示」することを踏まえると、「心拍ごとの代用前駆出時間(SPET)の変動」を「心収縮」機能に関する「時間」情報として「計算」するといえる。すると、そのための計算手段を備えることが明らかである甲1発明は、本件発明3の「前記演算部は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出」するに相当する構成を備えているといえる。

キ 甲1発明では、「上腕カフを用いて」いることから、患者の上腕を「上腕カフを用いて」、患者周りの空気圧(大気圧)より加圧した状態で「患者の末梢脈波波形を測定」することは、明らかである。すると、甲1発明は、本件発明3の「前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得」する相当する構成を備えているといえる。

(2)そうすると、本件発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)

「被検者の心電図を取得する心電図取得部と、
前記被検者の上腕の脈波を取得する脈波取得部と、
前記心電図と前記脈波とから得られる脈波伝搬時間により、前記被検者の心収縮機能に関する情報を算出する演算部と、
を有する循環動態測定装置であって、
前記脈波伝搬時間は、心電図のR波からカフ脈波の立ち上がり開始点までの時間であり、前記演算部は、前記脈波伝搬時間の経時的変化を前記被検者の心収縮機能に関する情報として算出し、
前記脈波取得部は、前記被検者の上腕に装着されたカフにより前記上腕に大気圧以上の圧力が加えられた状態で前記カフのカフ内圧に重畳する前記脈波を取得する循環動態測定装置。」

(相違点)

脈波の取得を、本件発明3では、被検者の上腕に装着されたカフにより「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うのに対し、甲1発明では、「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことは特定されていない点。

(3)上記相違点について検討する。

ア 上腕カフによりカフ内圧の加圧状態を変化させている過程で、血圧センサによってカフ内圧に重畳する脈波を取得し、取得された脈波に基づいて患者の最高血圧値及び最低血圧値を算出することは、例えば、甲4(上記第6の4参照)、甲5(上記第6の5参照)、甲6(上記第6の6参照)などに記載されているように周知技術である。

イ 一方、甲1発明は「心臓ペースメーカーのプログラム可能な設定を最適化するシステム」であって、脈波の取得は「医師等が植え込み型ペースメーカーのプログラム可能な設定を調整する際に、患者のPETを最適化するために利用する」というペースメーカーの調整のために行うものである。また、申立人が提出した上記第6に記載した証拠(甲1ないし甲6、参考資料1)には、このようなペースメーカーの調整のために、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことについて記載も示唆もない。

してみると、上記アで説示したとおり、患者の最高血圧値及び最低血圧値を算出するために、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことが、周知技術であるとしても、甲1発明において、ペースメーカーの調整のために、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことは、当業者が容易に想起し得ることであるとはいえない。

ウ

(ア)仮に、甲1発明において、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行った場合、カフ圧を変化させることにより、取得される脈波の振幅等が変動するため、脈波波形としては検出精度が低下することが想定される。このことからも、ペースメーカーの調整のために、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことは、当業者が容易に想起し得ることであるとはいえない。

(イ)この点につき、申立人は、令和4年8月3日提出の意見書(第5頁16行~第7頁4行)において、甲5の【0003】及び【0004】の記載(第6の5参照)から、「このように、オシロメトリック法による血圧測定中に取得される脈波情報、及びこれと同時に計測される心電波形を用いて、他の異なる指標(脈波伝播速度情報)を算出することは既知の技術である。そして、このような手法により当該指標を測定する場合、仮にカフ圧が変化することに起因して測定精度が低下する問題(デメリット)があるとしても、それを踏まえてなお血圧測定時の脈波を用いて血圧値と別の指標を算出することの効果(メリット)を評価するのであれば、当該技術を採用する、ということは当業者にとっては当然である。・・・即ち、血圧測定時に取得される脈波を用いて脈波伝播時間を算出することの効果などの事情に応じて、甲5号証などに記載のカフ圧を血圧測定のために変化させる過程で脈波を取得するという技術を、デメリットの存在を踏まえたうえで、甲1号証の技術と組み合わせて適用することは、当業者が通常なし得ることである。このことから、「甲1号証において代用前駆出時間を算出するために上腕カフ装置のカフ圧を変化させる必要が無く、当業者であれば、カフ圧を変化させることにより、検出される脈波の振幅等が変動するため、代用前駆出時間の算出に用いるための脈波波形としては検出精度が低下することを通常想定し、カフ圧を変化させることを想到し得ない。」とする特許権者の主張は失当である。」と主張する。

(ウ)申立人の上記主張について検討する。

オシロメトリック法による血圧測定中に取得される脈波を、カフ圧が変化することに起因して測定精度が低下する問題(デメリット)があるとしても、それを踏まえて血圧とは別の指標に用いることは、申立人の主張のとおり、当業者にとっては当然といえる。しかしながら、甲1発明である「心臓ペースメーカーのプログラム可能な設定を最適化するシステム」において、ペースメーカーの調整のために、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことが、当業者が容易に想起し得ることであるとはいえないことは、上記(ア)のとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。

エ

(ア)また、申立人は、令和4年8月3日提出の意見書(第2頁22行~第3頁25行)において、参考資料1の[0034]の「記載に照らせば、実質的には甲1号証においても上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させることが開示されているといえ、「甲1号証には上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる点の開示が無く、血圧の測定を想定したものではない」とする特許権者の主張は失当である。」と主張する。

(イ)申立人の上記主張について検討する。

参考資料1(上記第6の7参照)には、患者の大動脈圧波形を求めるために、ステップa)オシロメトリックカフ法により上腕の収縮期血圧及び拡張期圧力を測定し、ステップb)測定した収縮期血圧及び/又は拡張期圧力に基づき計算したカフ圧を維持した状態で、上腕カフ脈拍波形を取得し、ステップc)取得した上腕カフ脈拍波形の最大値と最小値を、前記測定された収縮期血圧と拡張期圧力で較正し、ステップd)前記カフ圧に応じた伝達関数を適用して、較正した上腕カフ脈拍波形を大動脈圧波形に変換する技術が記載されている。

当該技術によれば、大動脈圧波形を求めるための上腕カフ脈拍波形の取得は、オシロメトリックカフ法により予め測定した収縮期血圧及び/又は拡張期圧力に基づき計算したカフ圧を維持した状態で行っているから、参考資料1では、上腕カフ脈拍波形脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行っていない。

仮に、甲1発明において、甲1の[0021]の記載を踏まえ、参考資料1の技術を組み込めるとしても、ペースメーカーの調整のための脈波の取得を、オシロメトリックカフ法により予め測定した収縮期血圧及び/又は拡張期圧力に基づき計算したカフ圧を維持した状態で行うことになるから、脈波の取得を「上腕に印加されるカフ圧を血圧の測定のために変化させる過程」で行うことにならない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

オ 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明、及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2 本件発明4ないし8について

本件発明4ないし8は、本件発明3の発明特定事項を全て含むものであり、上記相違点を発明特定事項として含んでいることから、甲1発明と同一ではない。

また、相違点については、上記1の(3)で検討したとおりであるから、本件発明4ないし8は、甲1発明、及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件発明4ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してされたものではない。

3 本件発明19及び20について

本件発明19及び20は、それぞれ、本件発明3に対応する方法及びプログラムの発明であり、上記相違点に対応する発明特定事項を含んでいることから、甲1発明と同一ではない。

また、相違点については、上記1の(3)で検討したとおりであるから、本件発明19及び20は、甲1発明、及び甲2~6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件発明19及び20に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してされたものではない。

第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

上記第7の取消理由に対する当審の判断において、上記第4で記載した特許異議申立理由について全て判断している。

第9 むすび

以上のとおり、本件請求項3ないし8、19及び20に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。

さらに、他に本件請求項3ないし8、19及び20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-701244

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