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特許異議申立

2023-700743

生体電極、及び生体信号測定装置

審判番号
2023-700743
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-042915
登録番号
7207027
請求日
2023年07月18日
審決日
2024年03月13日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
  • 【異議申立人】平居 博美
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 樋口 宗彦
  • 審判官 伊藤 幸仙
分類
P1651.113-YAA(A61B) / P1651.121-YAA(A61B) / P1651.537-YAA(A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条第9項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7207027号発明「生体電極、及び生体信号測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7207027号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第7207027号の請求項2~8、10、11に係る特許を維持する。 特許第7207027号の請求項1、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1.手続の経緯 特許第7207027号の請求項1~11に係る特許についての出願についての、手続の経緯は概略、以下のとおりである。 ・平成31年3月8日 :出願 ・令和 4年11月28日付け:特許査定 ・令和 5年 1月10日 :特許権の設定の登録 ・ 同年 1月18日 :特許掲載公報の発行 ・ 同年 7月18日 :特許異議の申立て(特許異議申立人:平居博美(以下「申立人」という。)) ・ 同年 9月28日付け:取消理由の通知(以下「当審取消通知」という。) ・ 同年11月28日 :訂正の請求・意見書の提出(特許権者) 上記特許権者による訂正の請求及び意見書の提出を受けて、合議体は申立人に対し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは当該期間内に応答がなかった。 第2.訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記生体接触部が、前記2種以上のカーボンブラックとして、DBP吸油量が200cm3/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm3/100g以上の第二のカーボンブラックと、を含有する請求項1に記載の生体電極。」 とあるのを、 「生体と接触する生体接触部であって、導電性を有し、ゴム材料とDBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックとを含有する生体接触部を有し、 前記生体接触部が、前記2種以上のカーボンプラックとして、DBP吸油量が200cm3/l00g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm3/100g以上の第二のカーボンブラックと、を含有し、 前記ゴム材料が、シリコーンゴム又はブチルゴムである生体電極。」 に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3~8、10、11についても同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に 「請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の生体電極」 とあるのを、 「請求項2~請求項6のいずれか1項に記載の生体電極」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の生体電極」 とあるのを、 「請求項2~請求項7のいずれか1項に記載の生体電極」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に 「請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の生体電極」 とあるのを、 「請求項2~請求項8のいずれか1項に記載の生体電極」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1・2について 該各訂正事項は何れも請求項を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正とはいえず、新規事項の加入を伴うものでもないから、特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項3について ア 訂正事項3のうち、請求項2の冒頭に 「生体と接触する生体接触部であって、導電性を有し、ゴム材料とDBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックとを含有する生体接触部を有し、」 なる特定事項を加入すると共に請求項1に対する引用の記載を削除する訂正(以下「訂正事項3-1」という。)は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する形式で記載されていたところ、本件訂正により請求項1が削除されたことに伴い、本件訂正前の請求項1に記載されていた、 「生体と接触する生体接触部であって、導電性を有し、ゴム材料とDBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックとを含有する生体接触部を有する」 なる「生体電極」についての特定事項を付加すると共に、請求項1に対する引用の記載を削除して独立形式の記載に改めたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当すると認められる。 また、該訂正事項3-1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正とはいえず、本件訂正前の請求項1に記載された事項の範囲内において行うものである点で新規事項の加入を伴うものでもない。 よって、該訂正事項3-1は特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項3のうち、「前記ゴム材料が、シリコーンゴム又はブチルゴムである」ことを加入する訂正(以下「訂正事項3-2」という。)は、本件訂正前の請求項2が引用する請求項1に記載された「ゴム材料」について、その材質を「シリコーンゴム又はブチルゴムである」と特定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当すると認められる。 また、該訂正事項3-2は「ゴム材料」についてさらにその材質を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正とはいえない。さらに、「ゴム材料」を「シリコーンゴム」とすることは、本件訂正前の、願書に添付した特許請求の範囲の請求項9に記載されているし、同「ブチルゴム」とすることは願書に添付した明細書の【0023】及び【0066】(【表1】)に記載されているから、新規事項の加入を伴うものでもない。 よって、該訂正事項3-2は特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 上記ア・イのとおりであるから、訂正事項3は特許法第120条の5第2項ただし書第1号または同第4号に掲げる事項を目的とし、特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項4~6について 訂正事項4~6は何れも、本件訂正により請求項1及び請求項9が削除されたことに伴い、該各請求項の何れかまたは双方への引用を削除するものであり、詳細には、請求項7・8について請求項1についての引用を削除し、請求項10については請求項1・9双方への引用を削除するものである。 そうすると、該各訂正事項は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減を行うものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当すると認められる。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正とはいえず、新規事項の加入を伴うものでもないことは明らかであるから、特許法第120条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正の単位について 訂正前の請求項1ないし11について、請求項2ないし11は訂正事項1の訂正対象である請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、請求項1ないし11は一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~6は、一群の請求項〔1~11〕に対して請求されている。 (4)独立特許要件 訂正前の全ての請求項について特許異議申立の対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 第3.訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 対比検討の便宜上、本件発明2については、当審にて各構成単位冒頭に「A」等の分説番号を付した。以下、該各構成単位について分説番号を用い「構成A」などということがある。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 A 生体と接触する生体接触部であって、 B 導電性を有し、 C ゴム材料とDBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックとを含有する D 生体接触部を有し、 D1 前記生体接触部が、前記2種以上のカーボンブラックとして、DBP吸油量が200cm3/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm3/100g以上の第二のカーボンブラックと、を含有し、 D2 前記ゴム材料が、シリコーンゴム又はブチルゴムである E 生体電極。 【請求項3】 前記第一のカーボンブラックと、前記第二のカーボンブラックと、のDBP吸油量差(絶対値)が、70cm3/100g以上400cm3/100g以下である請求項2に記載の生体電極。 【請求項4】 前記第一のカーボンブラックと、前記第二のカーボンブラックと、のDBP吸油量差(絶対値)が、100cm3/100g以上300cm3/100g以下である請求項3に記載の生体電極。 【請求項5】 前記第二のカーボンブラックの含有量が、前記ゴム材料100質量部に対して10質量部以上30質量部以下であり、かつ前記第一のカーボンブラックおよび前記第二のカーボンブラックの合計80質量部に対して50質量部以上70質量部以下である請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の生体電極。 【請求項6】 前記第二のカーボンブラックの含有量が、前記ゴム材料100質量部に対して15質量部以上25質量部以下であり、かつ前記第一のカーボンブラックおよび前記第二のカーボンブラックの合計80質量部に対して55質量部以上65質量部以下である請求項5に記載の生体電極。 【請求項7】 前記生体電極の生体接触部の体積抵抗率が1×105Ω・cm以下である請求項2~請求項6のいずれか1項に記載の生体電極。 【請求項8】 前記生体電極の生体接触部のゴム硬度が、30°以上60°以下である請求項2~請求項7のいずれか1項に記載の生体電極。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 請求項2~請求項8のいずれか1項に記載の生体電極を備え、生体信号を測定する生体信号測定装置。 【請求項11】 前記生体信号が脳波である請求項10に記載の生体信号測定装置。」 第4.取消理由通知に記載した取消理由について 1 当審取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~11に係る特許に対する上記当審取消通知の要旨は次のとおりである。 (1)理由1:(新規性) 本件特許出願の請求項1~7・10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、前記各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきである。 (2)理由2:(進歩性) 本件特許出願の請求項1~7・10・11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、前記各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきである。 (3)理由3:(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきである。 2 甲号証の記載 (1)甲号証一覧 本件特許異議の申立てにおいて証拠方法として提出された甲号証は次のとおり。以下、それぞれ、「甲1」などと略称する。いずれも、本件特許の出願日(平成31年3月8日)前に公知となったものである。 ・甲第1号証(甲1):特開平5-95924号公報 ・甲第2号証(甲2):特開2007-224207号公報 ・甲第3号証(甲3):「CARBON BLACK年鑑」、カーボンブラック協会、1998年、No.48、pp.121・pp.126 ・甲第4号証(甲4):「導電性カーボンブラックの現状」、日本印刷学会誌、2007年、 第44巻、第3号、pp.133-143 (2)甲1の記載 ア 甲1には次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ミラブルウレタンゴム100重量部、窒素吸着法による表面積が500m2/g以上の導電性カーボンブラック4~20重量部、表面積が500m2/g未満のカーボンブラック5~25重量部および架橋剤を含有する組成物の架橋物よりなる電極。 ・・・ 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、導電性ミラブルウレタンゴム電極に関する。更に詳しくは、心電図測定などの生体電極として用いられる導電性ミラブルウレタンゴム電極に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、生体電極材としては、アルミニウム、金、銀、白金、銅などの高導電性金属の薄板が使用されているが、これらの金属製の生体電極材は、皮膚との密着性が悪く、皮膚からの電気的信号の検知が不十分なため、皮膚に導電性のゼリー、クリーム、ペーストなどを塗布して、電極材との皮膚との接触を良くするようにしている。しかしながら、ゼリーなどを塗布すると、使用中に肌からの熱や発汗によって機能が低下することがあり、また使用後にゼリーなどを除去しようとしても、十分に除去しきれないで残るなどの問題がある。 【0003】また、最近では、このような導電性のゼリーなどを塗布する必要のない生体電極材が開発されている。これは、金属性電極上に導電性の粘着剤層を設けたものである。この場合には、これを長期間使用していると、粘着剤層にゴミやほこりなどが付着し易く、また雑菌も発生し易いため、機能面や衛生面からも問題がみられる。また、粘着剤へ皮膚への接触という点で、不快感や嫌悪感を与え易いなどの問題もある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ゼリーなどの塗布や粘着剤層の形成といった電極材以外の構成成分を必要とはせず、電極材自体が皮膚とのなじみや感触性にすぐれ、半永久的に使用しても安定した電気的検知が可能で、しかも衛生的な生体電極材を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、ミラブルウレタンゴム100重量部、窒素吸着法による表面積が500m2/g以上の導電性カーボンブラック4~20重量部、表面積が500m2/g未満のカーボンブラック5~25重量部および架橋剤を含有する組成物の架橋物よりなる導電性ミラブルウレタンゴム電極によって達成される。 【0006】ミラブルウレタンゴムとしては、市販品をそのまま使用することができる。また、ミラブルウレタンゴムを形成し得る各成分であるポリオール、ジイソシアネートおよび連鎖移動剤を組成物自体の成分とし、加硫成形時にミラブルウレタンゴムを形成し得るものも用いることができる。 ・・・ 【0011】導電性カーボンブラックとしては、窒素吸着法による表面積が500m2/g以上、好ましくは700~1300m2/gのもの、例えばケッチェンブラックなどが、ミラブルウレタンゴム100重量部当り4~20重量部、好ましくは5~10重量部の割合で用いられる。これ以下の割合では、目的とする導電性が得られず、一方これ以上の割合で用いられると、導電性が高くなりすぎてノイズなどを拾い、安定した心電波形が得られなくなるからである。かかる導電性カーボンブラックが、表面積が500m2/g以上のものとされるのは、それが多孔質構造になっており、そのため電子が容易に移動し易く、導電性を高める効果があるためである。 【0012】このように特定される表面積を有する導電性カーボンブラックと共に、補強、充填目的などのために表面積が500m2/g未満、好ましくは20~150m2/gのカーボンブラック、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどが、ミラブルウレタンゴム100重量部当り5~25重量部、好ましくは10~20重量部の割合で用いられる。かかるカーボンブラックは、ゴム材料としての物性の低下、特に硬さや弾性の低下を直接の目的として用いられており、このため少なくとも5重量部が用いられるが、25重量部以上用いた場合には、カーボンブラックの分散性が悪くなり、混練作業に時間がかかりすぎたり、ゴム強度や耐摩耗性が低下するようになるので好ましくない。 【0013】そして、これら2種類のカーボンブラックは、ゴム物性、作業性、加工性などの点を総合的に勘案して、ミラブルウレタンゴム100重量部当り合計して10~30重量部、好ましくは15~25重量部用いることが望ましい。 ・・・ 【0016】生体電極材として用いられる場合には、加硫成形品は一般に吸盤状、短冊状などに成形される。吸盤状の電極は、人体の皮膚上に任意の個所に取り付け可能であり、短冊状の電極は、手で押え付けたり、はさみ込むことによって取り付け可能である。 【0017】 【発明の効果】本発明に係るミラブルウレタンゴム電極は、生体電極材として満足し得る導電性および常態物性を有しており、心電図測定においても良好な安定性を示している。更に、導電性のゼリーなどや接着剤などを必要とはしないというその取扱性の簡便さから、電話線を介して遠距離から医師が心電図の診断を可能とする心電図電話伝送装置に用いる携帯用心電計の電極などとして好適に用いることができる。 ・・・ 【0019】 【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。 【0020】実施例1 ミラブルウレタンゴム(デュポン社製品アジプレンCM;ポリエーテル型ポリウレタン)1000gに、ケッチェンブラックEC(ライオン製品;表面積800m2/g)80g、ファーネスブラック(三菱化成製品ダイヤブラックH;表面積85m2/g)150g、有機過酸化物(日本油脂製品パークミルD40)20gおよびステアリン酸(花王製品ルナックS30)2.5gを添加し、オープンロールで十分混練して、生地を調製した。 【0021】この生地を、150×200×2mmのシート状にプレス成形した後、二次加硫を行った。本実施例以下において、プレス成形は160~180℃、7~10分間の条件下で行われ、二次加硫は100~120℃で15~24時間行われた。 ・・・ 【0024】実施例2 実施例1において、ケッチェンブラックEC量が50gに、またファーネスブラック量が50gにそれぞれ変更された。 ・・・ 【0026】実施例3 実施例1において、ケッチェンブラックECの代わりに、ケッチェンブラックEC600JD(ライオン製品;表面積1270m2/g)が同量用いられた。 【0027】実施例4 実施例1において、ファーネスブラックの代わりに、アセチレンブラツク(電気化学製品デンカブラック;表面積65m2/g)が同量用いられた。 ・・・ 【0029】実施例5 ポリヘキサメチレンアジペート(大日本インキ化学製品ポリライトODX-688;OH価57)1000g、ジクミルパーオキサイド(日本油脂製品パークミルD)40g、4,4'-メチレンビス-o-クロロアニリン(大日本インキ化学製品パンデックスE)90gおよび架橋助剤としてのトリアリルイソシアネート(バイエル社製品アクチベーターOC)2gを60~80℃で混合した混合物に、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン製品ミリオネートMT)200gおよびトリジンジイソシアネート(日本曹達製品R-203)20gを80℃で混合した混合物を加え、板状に固化させた。 【0030】このようにして得られたミラブルウレタンゴム1000gを用い、実施例1と同様にして、生地の調製および加硫を行った。 ・・・ 【0032】以上の各実施例および比較例で得られたシート状物について、次の各項目の測定が行われた。 混練時間:オープンロールで、所定の配合物が完全に混練し合うのに要する作業時間 シート状物外観:二次加硫物シートの目視による外観 硬さ、100%モジュラス、引張強さ、伸び、引裂強さ:JISK-6301(加硫ゴム物理試験方法)に準ずる テーバー式摩耗試験:砥石H-18、1kg重・1000回回転時の摩耗減量 JISK-7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に準ずる 体積抵抗率:JISK-6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準ずる 心電波形:図1に示されるように、シート状物1に電極2,3を設け、それぞれの電極を心電図発生装置4および心電計5に接続した回路を形成させ、心電図を発生させて、心電計に示される波形を記録した 【0033】以上の測定結果は、次の表1に示される。なお、心電波形は、図2に、安定、やや安定、不安定および応答なしの4段階としてモデル的に示されている。また、シート状物外観評価での不良は、流れ模様を形成していた。 【表1】 [図:0001411328000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記アの記載事項から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位冒頭の「a」などは分説番号であり、以下該各構成単位を前記分説番号を用い「構成a」などと呼ぶことがある。また、各構成単位末尾の括弧内に、主たる認定根拠となる引用箇所を示す(【0027】の「アセチレンブラツク」は、同段落に「ファーネスブラック」なる素材名の記載があること、【0012】に「アセチレンブラック」なる記載があり前記「アセチレンブラツク」と同じ素材を指すと推察されること、からみて、「アセチレンブラック」が正しい表記であると認められるので、下記甲1発明においては「アセチレンブラック」の表記に改めて認定した。)。 「a 人体の皮膚上に任意の個所に取り付け可能な、心電図測定などに用いる生体電極であって、(【0001】・【0016】) b 前記生体電極は、生体電極材として満足し得る導電性を有する、(【0017】) c ミラブルウレタンゴム(デュポン社製品アジプレンCM;ポリエーテル型ポリウレタン)からなる導電性ミラブルウレタンゴム電極であって、(【0001】・【0020】) d1 ミラブルウレタンゴム100重量部、窒素吸着法による表面積が500m2/g以上の導電性カーボンブラック4~20重量部、表面積が500m2/g未満のカーボンブラック5~25重量部および架橋剤を含有する組成物の架橋物よりなり、(【請求項1】) d2 例えば実施例1として、ミラブルウレタンゴム(デュポン社製品アジプレンCM;ポリエーテル型ポリウレタン)1000gに、ケッチェンブラックEC(ライオン製品;表面積800m2/g)80g、ファーネスブラック(三菱化成製品ダイヤブラックH;表面積85m2/g)150g、有機過酸化物(日本油脂製品パークミルD40)20gおよびステアリン酸(花王製品ルナックS30)2.5gを添加し、混練して調整した生地をプレス成形した後二次加硫して製作されたものであり、(【0020】・【0021】) d3 例えば実施例4として、ミラブルウレタンゴム(デュポン社製品アジプレンCM;ポリエーテル型ポリウレタン)1000gに、ケッチェンブラックEC(ライオン製品;表面積800m2/g)80g、アセチレンブラック(電気化学製品電化ブラック;表面積65m2/g)150g、有機過酸化物(日本油脂製品パークミルD40)20gおよびステアリン酸(花王製品ルナックS30)2.5gを添加し、混練して調整した生地をプレス成形した後二次加硫して製作されたものであり、(【0020】・【0021】・【0027】) d4 例えば実施例3として、ミラブルウレタンゴム(デュポン社製品アジプレンCM;ポリエーテル型ポリウレタン)1000gに、ケッチェンブラツクEC600JD(ライオン製品;表面積1270m2/g)80g、ファーネスブラック(三菱化成製品ダイヤブラックH;表面積85m2/g)150g、有機過酸化物(日本油脂製品パークミルD40)20gおよびステアリン酸(花王製品ルナックS30)2.5gを添加し、混練して調整した生地をプレス成形した後二次加硫して製作されたものである、(【0020】・【0021】・【0026】) e 生体電極であって、(【0001】) f1 例えば実施例1において、体積抵抗率は7.5×104Ω・cmであり、(【表1】) f2 例えば実施例4において、体積抵抗率は5.5×104Ω・cmであり、(【表1】) f3 例えば実施例3において、体積抵抗率は2.0×102Ω・cmであり、(【表1】) g 硬度は、例えば実施例1及び実施例4では75であり、(【表1】) h ゴム材料は、いずれの実施例でもミラブルウレタンゴムである、(【0020】・【0021】・【0024】・【0026】・【0027】・【0029】・【0030】) i 生体電極、また、前記生体電極を接続した心電計。(【0001】・【0032】)」 (3)甲2の記載 甲2には次の記載がある。 「【実施例1】 【0051】 ポリプロピレン製容器中でポリエステル系ポリウレタンP22SRNAT(日本ポリウレタン(株)製)100重量部をテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記することがある。)865重量部に溶解させた。その後、その溶液中にカーボンブラック(b1)として、デンカブラック(電気化学工業(株)社製:DBP吸油量180ml/100g)30重量部、カーボンブラック(b2)として、ケッチェンブラックEC(ライオン(株)社製:DBP吸油量360ml/100g)10重量部、及びタルクとしてL-1(1次平均粒子径4.9μm:日本タルク(株)社製)50重量部を加え、更に顔料分散及び混合用としてジルコニアビーズ1000重量部を入れ、顔料分散機((株)東洋精機製作所製)で2時間振とうさせた。その後デカンテーションでジルコニアビーズを取り除き、固形分濃度18.0%の導電性塗料(F)(1)を得た。(以下、各実施例及び各比較例においては、導電性塗料(F)の固形分濃度をおおよそ18.0%となるように溶媒(E)の量を調整した。)繊維材料(g)としてポリエステル製のマルチフィラメントの糸(1100デシテックスのもの)を基糸として用い、その糸に、前記の方法で得た導電性塗料(F)(1)を塗布した後、乾燥し、基糸1mあたり0.04gの導電性組成物(D)(1)で被覆された糸、すなわち、導電性繊維材料(G)(1)を作製した。 また、前記〔測定法4〕にて、面状発熱体(H)(1)を作製した。」 (4)甲3の記載 甲3には次の各記載がある。下線は申立人による。 ア 記載121 121頁には次の記載がある。 「 [図:0001411328000002.jpg] 」 イ 記載126 126頁には次の記載がある。 「 [図:0001411328000003.jpg] 」 (5)甲4の記載 甲4には次の記載がある。 ア 記載17 17~19頁(右上141~143頁)には次の記載がある。数字を○で囲んだ記号は、該数字を小括弧で囲んだ表記に置き換えた。 「5.3 ケッチェンブラック ケッチェンブラックは当初水素ガスの採集を主目的とする重質油のガス化プロセスの副産物カーボンとしてスタートしたが,最近はCBの生産が主,水素ガスを従としたプロセスに変わってきている.表4からも判るとおりケッチェンブラックの比表面積が一般のファーネス法CBより大きいのは,部分酸化プロセス内で C+H2O→CO+H2 と C+CO2→2CO の賦活反応が起きCB表面から内部までの“C”が食われ細孔が生成するためである.品質面から見たケッチェンブラックの特長は,図15に示した写真によく現れている.即ちアセチレンブラック以上に結晶子の再配列が進み典型的な中空シェル構造を形成していることが判る.そしてケッチェンブラックの比表面積とDBP吸収量が大きいのはこの特異な構造故にということができるが,吸収量に関してはもう少し補足しておきたい.通常CBのDBP給収量は,ストラクチャーが発達するほど粒子間空隙が増加しそれに見合いDBP(ジブチルフタレート)の吸収量が増加するという経験則に基づいた代用特性であるが,ケッチェンブラックの場合はやや異なる意味合いを持っている.即ちケッチェンブラックのDBP吸収量がストラクチャーの発達レベルからは想像できない位高い値を示すのは,粒子に細孔が多くその分粒子が軽くなっているため単位重量当たりの粒子個数が多いこと,また細孔の中で比較的大きい部分にはDBPが吸収されることによると考えるべきである.またケッチェンブラックをゴムや樹脂に一定量配合した場合の抵抗が他のCBより低いのも,この細孔容積大→粒子軽い→比表面積大→DBP吸収量大に大きく関係している.即ち(1)単位重量当たりの粒子個数増加⇒粒子間距離小さい.(2)図16に示したモデルの様に細孔にポリマー分子が入り込む⇒粒子間距離小さい.等が主原因であるが,賦活処理で細孔ができる際2次的に形成された粒子表面のノコギリ状凹凸部による.(3)Conductive holeの増加⇒電荷の集中により電子のジャンプする距離が伸びる.ことも影響していると考える.」 イ 表4 表4は次のとおり。 「 [図:0001411328000004.jpg] 」 3 当審の判断 3-1 理由1(新規性)・理由2(進歩性)について (1)本件発明2と甲1発明との対比 ア 構成aの「人体の皮膚上に任意の個所に取り付け可能な、心電図測定などに用いる生体電極」は、構成Aの「生体と接触する生体接触部」に相当する。 よって、甲1発明は構成Aに相当する構成を備える。 イ 構成bの、生体電極が「生体電極材として満足し得る導電性を有する」ことは、構成Bの(生体接触部が)「導電性を有」することに相当する。 よって、甲1発明は構成Bに相当する構成を備える。 ウ 構成cの(生体電極は)「ミラブルウレタンゴム・・・からなる導電性ミラブルウレタンゴム電極であ」ることは、「ミラブルウレタンゴム」がゴムの一種であるから、構成C(D)の(生体接触部が)「ゴム材料」(を含有する)ことに相当する。 よって、甲1発明は構成Cに相当する構成を備える。 エ(ア)構成d2・d3で特定される、「ケッチェンブラックEC(ライオン製品」は、上記2(3)・(5)で摘記した甲2の【0051】及び甲4の表4に記載されるとおり、DBP吸油量が360cm3/100gであるカーボンブラック製品である。 (イ)構成d2・d4で特定される「ファーネスブラック(三菱化成製品ダイヤブラックH」は、上記2(4)で摘記した甲3の「記載121」に記載されるとおり、DBP吸油量が105ml/100g(=105cm3/100g)であるカーボンブラック製品である(ここで、前記甲3の記載における「ダイアブラック」は、製造社が「三菱化学株式会社」で共通することから、構成d2・d4の「ダイヤブラックH」と同一の製品を指すことが明らかである。)。 (ウ)構成d3で特定される「アセチレンブラック(電気化学製品デンカブラック;表面積65m2/g)」は、甲3の記載126によると種々の品種が存在し、甲2の【0051】に記載されるとおり、DBP吸油量は、導電性樹脂を生成する用途に用いるタイプで180ml/100g(=180cm3/100g;以下単位省略)であり、甲3の記載126に記載されるとおり、ゴム・プラスチック配合用途を主要用途とするもので140~160、一次・二次電池用を主要用途とする品種を合わせても140~220である、カーボンブラック製品である。 (エ)構成d4で特定される、「ケッチェンブラックEC600JD(ライオン製品」は、上記2(5)で摘記した甲4の表4に記載されるとおり、DBP吸油量が495ml/100g(=495cm3/100g)であるカーボンブラック製品である。 (オ)以上(ア)~(エ)によれば、構成d2・d3・d4いずれの具体的構成においても、生体電極は相互にDBP吸油量が相違する2種のカーボンブラック製品を含有するといえる。よって、甲1発明は構成Dに相当する構成を備える。 オ 上記ア~エの相当関係を踏まえると、甲1発明は、構成b~d4の特定事項を備える生体電極材(構成b)からなる生体電極(構成e)であるから、構成B~Dの特定事項を備える生体接触部を有する(構成D)生体電極(構成E)に相当する構成を備えるといえる。 カ 上記エによれば、甲1発明は、少なくともその具体的構成d2・d4について、2種のカーボンブラックの一方はDBP吸油量が360cm3/100gである「ケッチェンブラックEC」又はDBP吸油量495cm3/100gの「ケッチェンブラックEC600JD」であり、他方はDBP吸油量105cm3/100gの「ダイヤブラックH」であるから、構成d2・d4におけるDBP吸油量が200cm3/100g以上である「ケッチェンブラックEC」又は「ケッチェンブラックEC600JD」は構成D1の「第二のカーボンブラック」に相当し、構成d2・d4におけるDBP吸油量が105cm3/100gであって200cm3/100g未満である「ダイヤブラックH」は構成D1の「第一のカーボンブラック」に相当する。 よって、甲1発明は、構成D1の「前記生体接触部が、前記2種以上のカーボンブラックとして、DBP吸油量が200cm3/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm3/100g以上の第二のカーボンブラックと、を含有する」との特定事項に相当する構成を備えるといえる。 キ 上記ア~カによれば、本件発明2と甲1発明とは、下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の点で相違する。 (ア)一致点 「A 生体と接触する生体接触部であって、 B 導電性を有し、 C ゴム材料とDBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックとを含有する D 生体接触部を有し、 D1 前記生体接触部が、前記2種以上のカーボンブラックとして、DBP吸油量が200cm3/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm3/100g以上の第二のカーボンブラックと、を含有する、 E 生体電極。」 (イ)相違点 生体接触部が含有するゴム材料が、本件発明2では「シリコーンゴム又はブチルゴム」であるのに対し、甲1発明では「ミラブルウレタンゴム」である点。 (2)相違点の検討 甲1には、実施例・比較例を通じて、生体電極材を構成するゴム材料としてミラブルウレタンゴムを用いる例しか記載がない。また、従来技術としても、アルミニウム、金、銀、白金、銅などの高導電性金属の薄板、又は金属性電極上に導電性の粘着剤層を設けたものが使用されていたこと(【0002】~【0003】)が記載されるのみである。 そして、生体電極材としてシリコーンゴムやブチルゴムを用いることは、甲2~甲4にも記載がない。 さらに、甲1においては、該生体電極材として従来技術では、アルミニウム、金、銀、白金、銅などの高導電性金属の薄板、又は金属性電極上に導電性の粘着剤層を設けたものが使用されていたこと(【0002】~【0003】)に対し、甲1発明においてミラブルウレタンゴムをゴム材料として選択し、導電性カーボンブラックを一定比率で配合した生体電極材の優位性について言及している。 シリコーンゴムやブチルゴムはゴム材料としては周知慣用のものではある。 しかし、甲1発明においては、ゴム材料としてミラブルウレタンゴムを選択しただけではなく、さらに導電性カーボンブラックの配合量を調整することで、「ゼリーなどの塗布や粘着剤層の形成といった電極材以外の構成成分を必要とはせず、電極材自体が皮膚とのなじみや感触性にすぐれ、半永久的に使用しても安定した電気的検知が可能で、しかも衛生的な生体電極材」(【0004】)という条件を満たすゴム材料を得るに至ったものである。また、本件特許明細書の【表1】からは、導電性カーボンブラックの配合形態が同一であってもゴム種が異なれば性能が異なることが、実施例1と実施例9とにおける生体電極材の性能を対比することで推察される。 よって、甲1発明において、ゴム材料をシリコーンゴムやブチルゴムに置き換えた場合に、ゴム材料がミラブルウレタンゴムである甲1発明の実施例と共通の導電性カーボンブラックの配合形態によって、同等の、または少なくとも使用に耐える性能が得られるかの確証はないから、ゴム材料を敢えて変更する動機付けは得がたいし、該変更することによる効果は予測可能なものともいえない。さらに、仮にゴム材料を周知のシリコーンゴムやブチルゴムに置き換えることに思い至ったとしても、改めて導電性カーボンブラックの種類やその配合形態について最適値を探索する必要が生じる蓋然性が高く、該置き換えに伴い当業者にとって過度な試行錯誤を必要とするといえるから、このことからも、甲1発明における前記ゴム材料の置き換えは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。 以上のとおりであるから、本件発明2は甲1発明ではなく、また、本件発明2は甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 (3)本件発明3~8・10・11について 本件発明3~8・10・11は、本件発明2の全ての特定事項を含み、更にそれを減縮した発明である。 本件発明2が新規性・進歩性を有することは上記(2)で説示したとおりである。よって、本件発明3~8・10・11は、甲1発明ではなく、また、甲1発明、甲2~4に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 3-2 理由3(サポート要件)について (1)ゴム材料について 本件発明2(及び本件発明2を直接的又は間接的に引用する本願発明3~8・10・11)において、ゴム材料はシリコーンゴムまたはブチルゴムに限定されている(構成D2)。 そして、ゴム材料としてシリコーンゴムを用いた例は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、実施例1~8・10として種々の導電性カーボンブラックの配合形態について好適例が示されており、このことから、本件発明2(及び3~8・10・11)において特定される、ゴム材料としてシリコーンゴムを用いることについては、当業者が当該発明の課題(「生体と接触する生体接触部であって、導電性を有し、ゴム材料と1種のカーボンブラックとを含有する生体接触部を有する生体電極に比べ、精度良く生体信号を測定する生体電極を提供する」こと(【0004】))を解決できると認識できる程度に発明の詳細な説明に記載されているといえる。 また、ゴム材料としてブチルゴムを用いた例は、実施例1と同じ導電性部カーボンブラックの配合形態を採用する場合について、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、実施例9として好適例が示されている。そして、実施例はこの1つのみであるが、実施例1と同じ導電性カーボンブラックの配合形態についての例であり、実施例1と大差ない効果(性質)が得られることが示されていることから、他のシリコーンゴムについての実施例についても、ゴム材料をブチルゴムに置き換えた場合に同等程度の効果(性質)が得られることが期待できることを示す実施例であると位置づけられるといえる。よって、本件発明2(及び3~8・10・11)において特定される、ゴム材料としてブチルゴムを用いることについては、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に発明の詳細な説明に記載されているといえる。 (2)DBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックについて 2種のカーボンブラック個々のDBP吸油量の数値範囲については、本件発明2(及び本件発明3~8・10・11)において構成D1として限定されており、該数値範囲は本件特許明細書に【表1】に示される実施例1~9が満たすものである。 よって、2種以上のカーボンブラックが満たすDBP吸油量の関係について、特許請求の範囲に記載された特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたもので、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (3)小括 上記(1)・(2)のとおりであるから、特許請求の範囲に記載された発明(本件発明2~8・10・11)は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 第5.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~8・10・11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2~8・10・11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1・9に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1・9に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700743

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