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特許異議申立

2025-700077

ポリイソシアネート組成物、その調製方法および使用

審判番号
2025-700077
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-524847
登録番号
7542145
請求日
2025年01月16日
審決日
2026年02月17日
公報発行日
2026年05月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】万華化学集団股▲フン▼有限公司
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【権利者】万華化学(寧波)有限公司
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 冨永 保
  • 審判官 野田 定文
分類
P1651.537-YAA(C07C) / P1651.113-YAA(C07C) / P1651.121-YAA(C07C) / P1651.853-YAA(C07C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7542145号発明「ポリイソシアネート組成物、その調製方法および使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7542145号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7542145号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7542145号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月1日を国際出願日とする出願であって、令和6年8月21日に特許権の設定登録がされ、同年同月29日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~10に係る特許に対し、令和7年1月16日に、特許異議申立人 山崎 浩一郎(「崎」は正しくは「たつさき」である。以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年2月7日付けの手続補正指令に対し、同年同月28日に手続補正書(方式)が申立人により提出された。 その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和7年 4月14日付け 取消理由通知 同年 7月 9日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月25日付け 訂正の請求があった旨の通知 同年10月 7日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和8年 1月 6日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) なお、令和7年7月9日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和8年1月6日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、先の訂正請求についての訂正の請求があった旨の通知に対して、申立人からは指定期間内に応答はなく、取消理由通知(決定の予告)に対してされた本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に新たに意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 訂正の請求について 1 訂正の請求の趣旨及び訂正の内容 令和8年1月6日提出の訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、 「特許第7542145号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」 というものであり、本件訂正の内容は、本訂正請求書の記載及び同請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1からなるものであると認める。 なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記アルカリ加水分解塩素の質量含有量は、アルカリ性条件で解離されたハロゲンおよび/または100℃以上の温度条件で解離されたハロゲンを、塩素原子の相対原子質量で計算した質量含有量であり、」 と記載されているのを、 「前記アルカリ加水分解塩素の質量含有量は、 (a)10g~15g(0.1mgまで精秤する)の試料を300mLのビーカーに入れ、ロータを入れ、30mLのアセトンを加え、サンプルが完全に溶解した後、50mLのエタノール溶液を加え、60℃の恒温水浴に置いて十分に反応させるステップ、 (b)30min反応させた後、100mLのNaOH溶液を加え、60℃の恒温水浴で50min反応させ続けるステップ、 (c)ビーカーを取り出し、氷水浴に置いて10℃以下に冷却するステップ、 (d)2mLの塩化ナトリウム標準溶液をビーカーに正確に入れ、また、1:3の硝酸溶液を20mL加え、電位差滴定を行い、得る曲線の変曲点を終点とし、消費した硝酸銀標準溶液の体積を記録するステップ、 (e)それと同時に、ブランク試験を行うステップ、 により測定し、 アルカリ加水分解塩素は、以下の式で計算され、 【数1】 [図:0001435174000001.jpg] (式中、 Clは加水分解塩素の含有率(塩素として)で、単位がppmであり、 Vは試料滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 V0はブランク滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 Cは硝酸銀標準溶液の実際の濃度で、単位がmol/Lであり、 mは試料の質量で、単位がgであり、 0.03546は、1.00mLの硝酸銀標準溶液[C(AgNO3)=1.000mol/L]に相当するグラムで表される塩素原子の質量であり、単位がg/molである。)」 に訂正する。 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。 (2) 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~10のうち、請求項2~10は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10についての本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」についてされたものである。 2 訂正事項についての訂正要件の判断 (1) 訂正の目的について 訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載の「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」が、訂正前に「アルカリ性条件で解離されたハロゲンおよび/または100℃以上の温度条件で解離されたハロゲンを、塩素原子の相対原子質量で計算した質量含有量」と記載され、不明確であったところ、 「(a)10g~15g(0.1mgまで精秤する)の試料を300mLのビーカーに入れ、ロータを入れ、30mLのアセトンを加え、サンプルが完全に溶解した後、50mLのエタノール溶液を加え、60℃の恒温水浴に置いて十分に反応させるステップ、 (b)30min反応させた後、100mLのNaOH溶液を加え、60℃の恒温水浴で50min反応させ続けるステップ、 (c)ビーカーを取り出し、氷水浴に置いて10℃以下に冷却するステップ、 (d)2mLの塩化ナトリウム標準溶液をビーカーに正確に入れ、また、1:3の硝酸溶液を20mL加え、電位差滴定を行い、得る曲線の変曲点を終点とし、消費した硝酸銀標準溶液の体積を記録するステップ、 (e)それと同時に、ブランク試験を行うステップ、 により測定し、 アルカリ加水分解塩素は、以下の式で計算され、 【数1】 [図:0001435174000002.jpg] (式中、 Clは加水分解塩素の含有率(塩素として)で、単位がppmであり、 Vは試料滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 V0はブランク滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 Cは硝酸銀標準溶液の実際の濃度で、単位がmol/Lであり、 mは試料の質量で、単位がgであり、 0.03546は、1.00mLの硝酸銀標準溶液[C(AgNO3)=1.000mol/L]に相当するグラムで表される塩素原子の質量であり、単位がg/molである。)」 るものであることを特定し、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」をより明確化するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (2) 新規事項の追加の有無 本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)には、 「【0035】 本願において、加水分解塩素の質量含有量の測定は従来技術であり、GB/T 37042-2018で提供された方法を含むが、これに限定されない。アルカリ加水分解塩素の質量含有量について、当業者は通常の手段で試験を行ってもよく、本願は、以下のような試験方法を例示的に提供するものに過ぎず、以下の方法に限定されるものではない。 【0036】 該方法の試験原理は以下のとおりである。ポリイソシアネートにおけるアルカリ加水分解塩素は、主にアルカリ性条件で解離されることができる塩素であり、まず、エタノールとポリイソシアネートとを反応させることにより、ポリイソシアネートにおけるイソシアネートを除去し、その後、アルカリ性条件でアルカリ加水分解可能なハロゲンを解離し、解離されたハロゲンイオンが対応する塩を形成してから、硝酸銀標準溶液で電位差滴定法によりその含有量を測定する。」 と記載され、さらに、「例示的」な「具体的な試験のステップ」と「計算」として、上記(1)で定義された「測定」及び「計算」手法が本件明細書等の【0039】~【0041】に記載されていることから、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」についての訂正事項1による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて 上記(1)及び(2)で検討したとおり、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、請求項1に記載の「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」について明確化したものであって、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。 3 訂正の請求についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1からなる本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件特許に係る発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10(以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 そして、本件訂正請求項1~10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載されたとおりのものであると認める(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」~「本件訂正発明10」といい、まとめて「本件訂正発明」ということがある。)。 「【請求項1】 アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.1ppm~100ppmであり、 前記アルカリ加水分解塩素の質量含有量は、 (a)10g~15g(0.1mgまで精秤する)の試料を300mLのビーカーに入れ、ロータを入れ、30mLのアセトンを加え、サンプルが完全に溶解した後、50mLのエタノール溶液を加え、60℃の恒温水浴に置いて十分に反応させるステップ、 (b)30min反応させた後、100mLのNaOH溶液を加え、60℃の恒温水浴で50min反応させ続けるステップ、 (c)ビーカーを取り出し、氷水浴に置いて10℃以下に冷却するステップ、 (d)2mLの塩化ナトリウム標準溶液をビーカーに正確に入れ、また、1:3の硝酸溶液を20mL加え、電位差滴定を行い、得る曲線の変曲点を終点とし、消費した硝酸銀標準溶液の体積を記録するステップ、 (e)それと同時に、ブランク試験を行うステップ、 により測定し、 アルカリ加水分解塩素は、以下の式で計算され、 【数1】 [図:0001435174000003.jpg] (式中、 Clは加水分解塩素の含有率(塩素として)で、単位がppmであり、 Vは試料滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 V0はブランク滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 Cは硝酸銀標準溶液の実際の濃度で、単位がmol/Lであり、 mは試料の質量で、単位がgであり、 0.03546は、1.00mLの硝酸銀標準溶液[C(AgNO3)=1.000mol/L]に相当するグラムで表される塩素原子の質量であり、単位がg/molである。) 前記加水分解塩素の質量含有量の測定は、GB/T 37042-2018で提供された方法を採用する、 ポリイソシアネート組成物。 【請求項2】 アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.2ppm~60ppmである、 請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。 【請求項3】 ポリイソシアネート、アルカリ加水分解塩素系不純物および加水分解塩素系不純物の組み合わせを含み、 前記ポリイソシアネートはジイソシアネートであり、 前記ポリイソシアネートは、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、または鎖状ジイソシアネートのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、 前記ポリイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m-キシリレンイソシアネート、p-キシリレンイソシアネート、1,3-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、1,4-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、またはシクロヘキシレンジイソシアネートのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、 請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物。 【請求項4】 調製原料は、ポリアミンとホスゲン系原料の組み合わせを含み、 前記ポリアミンにおける不飽和オレフィン系構造、第二級アミン系構造、または水酸基系構造を有する不純物の総質量含有量は0.1ppm~400ppmである、 請求項1~3のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。 【請求項5】 ポリアミンおよびホスゲン系原料を用いてホスゲン化反応を行い、前記ポリイソシアネート組成物を得ることを含む、 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物の調製方法。 【請求項6】 前記ホスゲン化反応は、気相ホスゲン化反応、液相ホスゲン化反応、または造塩ホスゲン化反応を含み、 前記気相ホスゲン化反応は、ポリアミン気流とホスゲン系原料とを気相ホスゲン化反応させ、反応生成物と液状不活性媒体とを混合して150℃以下に冷却し、または、反応生成物と、液状不活性媒体および目的のイソシアネート生成物の混合物とを混合し、150℃以下に冷却することを含み、 前記液相ホスゲン化反応は、ポリアミン溶液とホスゲン系原料とをまず0~100℃で冷間反応させてから、60~180℃で熱間反応させ、前記冷間反応および熱間反応の総滞留時間が7h以下であることを含み、 前記造塩ホスゲン化反応は、塩化水素および/または二酸化炭素とポリアミンとを不活性溶剤内で造塩反応させてから、ホスゲン系原料とホスゲン化反応させ、前記造塩反応およびホスゲン化反応の総滞留時間が7h以下であることを含む、 請求項5に記載の調製方法。 【請求項7】 調製原料は、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物と活性水素基含有化合物の組み合わせを含む、 ポリウレタン樹脂。 【請求項8】 前記活性水素基含有化合物は、ポリオール系化合物および/またはアミン系化合物を含み、 前記ポリオール系化合物の分子量は400~20000であり、 前記ポリオール系化合物の水酸基価は10mgKOH/g~1500mgKOH/gであり、 前記ポリオール系化合物の官能性は2~8である、 請求項7に記載のポリウレタン樹脂。 【請求項9】 調製原料は、触媒および/または鎖延長剤を更に含む、 請求項7または8に記載のポリウレタン樹脂。 【請求項10】 前記ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタン光学材料、ポリウレタンコーティング材料、またはポリウレタンフォームの調製に用いられる、 請求項7~9のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の使用。」 第4 特許異議の申立ての理由及び当審において通知した取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して甲第1号証(以下「甲1」ともいう。)を提出し、その後、令和7年2月28日提出の手続補正書(方式)に添付して甲1の訳文を提出しているところ、特許異議の申立ての理由の概要は、以下のとおりである。 甲第1号証:中国特許出願公開第110511163号明細書 (1) 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性) 請求項1~3及び5~10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する。したがって、請求項1~3及び5~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当する。 (2) 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性) 請求項1~10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当する。 2 当審において通知した取消理由の概要 (1) 令和7年4月14日付け取消理由通知の取消理由概要 ア 取消理由1(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の(ア)及び(イ)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 (ア) アルカリ加水分解塩素の質量含有量の値について 請求項1では、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」が、「アルカリ性条件で解離されたハロゲンおよび/または100℃以上の温度条件で解離されたハロゲンを塩素原子の相対原子質量で計算した質量含有量」と定義されているところ、「アルカリ性条件」及び「100℃以上の温度条件」との記載のみでは、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」が一つの値に定まらないから、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」の値が明確ではなく、本件発明1及び請求項1の記載を引用して特定される本件発明2~10は明確でない。 (イ) アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との関係について 上記(ア)に指摘のとおり、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」は不明であるところ、さらに、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素が互いにどのような関係にあるのかが明確ではないから、結果として、請求項1の記載は明確でない。 したがって、本件発明1及び請求項1の記載を引用して特定される本件発明2~10は明確でない。 イ 取消理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」が一定量よりも高くなる場合には、光透過率が低下し、耐黄変性が悪くなるといえるから、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」自体について、「117ppm以下」といった上限の特定がない本件発明1~10は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、かつ、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。 (2) 取消理由通知(決定の予告)の取消理由概要 上記(1)の取消理由1(ア)及び取消理由2によって、請求項1~10に係る特許は取り消すべきものである。 第5 当審合議体の判断 本件訂正請求項1~10に係る特許は、以下に述べるように、当審において通知された上記第4の2(1)に示した取消理由1(ア)及び取消理由2、並びに、申立人による申立理由1及び申立理由2によっては、取り消すことができないと判断する。 その理由は次のとおりである。 1 取消理由について (1) 取消理由1(ア)について 本件訂正請求項1では、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」について、測定時の条件及びステップ並びに計算式が特定されており、「ポリイソシアネート組成物」における「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」は特定できるといえるから、本件訂正請求項1~10の記載は明確といえ、取消理由1(ア)は解消している。 (2) 取消理由2について ア 本件訂正発明の課題 本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件明細書【0009】、【0042】、【0059】及び【0090】を含む本件明細書等全体の記載によると、「ポリウレタン樹脂の合成過程で発生しやすい予備重合段階および鎖延長段階の反応活性が不安定であるという問題を解決し、合成エマルションの濁りの状況を効果的に改善して、ポリウレタン製品の光透過率および耐黄変性を向上させることができるポリイソシアネート組成物を提供すること」であると認められる。 イ 本件明細書の記載 以下、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。 摘記(A) 「【0011】 本願は、 ポリイソシアネート組成物におけるアルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.1ppm~100ppmであり、例えば、0.2ppm、0.3ppm、0.4ppm、0.5ppm、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、9ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、98ppm等であり、 前記アルカリ加水分解塩素の質量含有量は、アルカリ性条件で解離されたハロゲンおよび/または100℃以上の温度条件で解離されたハロゲンを、塩素原子の相対原子質量で計算した質量含有量である、 ポリイソシアネート組成物を提供する。 ・・・ 【0014】 下流のポリウレタン調製過程における配合形態が異なるため、ポリウレタン合成過程の酸アルカリ性環境および反応温度条件も同じではなく、ポリイソシアネート組成物におけるアルカリ加水分解塩素系不純物は、ポリウレタン合成過程で塩素を解離されることができることが多い。 【0015】 本発明者の研究によると、反応が局所的に暴走して局所的に激しく発熱する場合、アルカリ加水分解塩素内の塩素は解離され、触媒に対して被毒を与えて、局所的な過剰反応領域の反応活性を低減して、ポリウレタン合成エマルションの濁りを回避し、更に、ポリウレタン製品の光透過率および耐黄変性を向上させる、上記特定量のアルカリ加水分解塩素を含むポリイソシアネート組成物を提供することが見出した。 【0016】 しかし、アルカリ加水分解塩素量が一定量よりも高くなる場合、アルカリ性条件で解離されたこれらの塩素は、局所的な過剰反応を抑制した後、更に外へ拡散し、正常反応領域の触媒に対して被毒を与え、反応活性の不安定を招き、更に、合成過程の熱制御に問題が生じ、ポリウレタンで合成されたエマルションが濁り、ポリウレタン製品に悪影響を及ぼし、光透過率の低下を招き、更に、耐黄変性が悪くなることを招く。 【0017】 好ましくは、前記ポリイソシアネート組成物におけるアルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.2ppm~60ppmであり、0.4ppm~40ppmであることが好ましい。 【0018】 本願の好ましい技術案において、アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値を更に好ましい範囲とすることにより、ポリウレタン合成エマルションの濁り問題を更に改善し、製品の光透過率および耐黄変性を向上させることができる。アルカリ加水分解塩素量が低すぎると、ポリウレタン合成エマルションの濁り問題は悪化し、ポリウレタン製品の光透過率は低下し、アルカリ加水分解塩素量が高すぎると、合成エマルションの濁り問題は悪化し、ポリウレタン製品の光透過率は低下するだけでなく、耐黄変性も悪くなる。 ・・・ 【0020】 好ましくは、前記ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート、アルカリ加水分解塩素系不純物および加水分解塩素系不純物の組み合わせを含む。前記アルカリ加水分解塩素系不純物は、解離してアルカリ加水分解塩素を得る物質であり、加水分解塩素系不純物は、解離して加水分解塩素を得る物質である。」 摘記(B) 「【0034】 本願の発明者の研究によると、アルカリ加水分解塩素の別の由来は、原料ポリアミンの調製過程において、そのうちのいくつかの成分が後のホスゲン化によりイソシアネートを調製する過程でアルカリ加水分解塩素系を生成し、具体的な構造が、a)不飽和オレフィン構造、b)第二級アミン系構造、c)水酸基系構造を含むが、これらに限定されず、上記構造を含む物質が、一般的に原料ポリアミンと分離しにくく、ホスゲン化過程において、特に、気相ホスゲン化過程において、ホスゲンまたは塩化水素と反応し、これにより、アルカリ加水分解塩素系を形成することである。従い、原料ポリアミンについては、これらの種類の物質の総量を制御する必要があり、本願において、総量を0.1ppm~400ppmに制御することを推奨する。」 摘記(C) 「【0094】 〔実施例1〕 本実施例は、ポリイソシアネート組成物を提供し、その調製方法は以下のとおりである。 【0095】 a)特願CN105214568Aの実施例1で開示されたヒータを用い、ヘキサメチレンジアミン(HDA)を気化して355℃に加熱し、窒素ガス雰囲気下で、355℃に加熱されたホスゲンガスとともにそれぞれの供給管を介して連続的に反応器に入れてホスゲン化反応を行い、反応の圧力が絶対圧0.05MPaで、反応の温度が360℃であり、ここで、HDAの供給量が800Kg/hで、ホスゲンガスの供給量が3000Kg/hであり、o-ジクロロベンゼン溶液を用い、ガス噴射吸収装置により、反応後に得られた混合ガスを急速に(接触時間が10s程度)100℃に冷却し、生成物HDI、ホスゲンおよびo-ジクロロベンゼン溶液を含む粗生成物を得た。 【0096】 反応排ガスを排ガス吸収塔に入れた後、-35℃のo-ジクロロベンゼン溶液で吸収し、ホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液を得た。 【0097】 b)ステップa)で得られた粗生成物に対してホスゲンおよびo-ジクロロベンゼン溶液を除去する処理を行い、粗生成物におけるo-ジクロロベンゼン溶液および過剰なホスゲンを168℃、絶対圧0.1MPaで除去し、分離してホスゲンを含まないHDI粗製品およびホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液を得た。 【0098】 c)ステップa)における反応排ガスを吸収した後に得られたホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液と、ステップb)における除去過程後に得られたホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液とを精留塔に入れてホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液との分離を行い、分離過程は、圧力が絶対圧0.125MPaで、塔底温度が155℃で、塔頂温度が15℃である条件で行われ、純度98%のホスゲンおよびホスゲン含有量<0.001%のo-ジクロロベンゼン溶液を得、分離されたホスゲンおよびo-ジクロロベンゼン溶液をいずれもステップa)に戻して循環使用された。 【0099】 d)ステップb)で得られたホスゲンを含まないHDI粗製品を精留で精製し、絶対圧0.5KPa、135~140℃の沸点範囲でHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)製品を得た。 【0100】 使用されたヘキサメチレンジアミンにおける不飽和オレフィン構造、第二級アミン系構造、水酸基系構造の含有量の合計は200ppmであった。 【0101】 得られたHDI製品の収率は97%であり、製品の純度は99.75%であった。得られた製品における加水分解塩素は25ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は30ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は5ppmであった。 【0102】 本実施例は、ポリウレタン樹脂を更に提供し、その調製方法は以下のとおりである。 【0103】 (1)ポリウレタンプレポリマーの調製 相対分子質量1000のポリオキシプロピレンジオール(水酸基価110mgKOH/g、官能性2(上海高橋石油化学工業公司、ポリエーテルポリオールGE-210))を100部秤量し、撹拌しながら110℃に加熱し、絶対圧200Paに減圧して2.5時間除水し、60℃に降温し、上記イソシアネート合成過程で生産されたHDIを168部加えた。80℃に昇温し、120min反応させ、青色で透明なポリウレタンプレポリマーエマルションを得た。 【0104】 プレポリマーエマルションに対して濁度試験を行い、その結果は0.42NTUであった。 【0105】 (2)ステップ(1)で得られたポリウレタンプレポリマー、82部の1,4-ブタンジオール(BASF社、102℃、絶対圧200Paで2.5時間除水してから使用する)、および0.1部のジブチルスズジラウレート(米国Air Products and Chemicals, Inc、Dabco T-12)をキャスティングマシンに置き、それぞれ45℃に加熱し、絶対圧1KPaに減圧し0.5時間脱泡し、均一に混合し、75℃に予熱された型にキャスティングし、4h加熱硬化し、ポリウレタン樹脂を得た。 【0106】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は97.5%であった。 【0107】 製造されたポリウレタン樹脂を80℃のオーブンに入れ、12hベークし、乾燥したポリウレタン製品を得た。色差計(エックスライトX-Rite528型)で得られたポリウレタン製品の色値bを測定してから、ポリウレタンフィルムを150℃のオーブンに入れて0.5hベークし、色差計でベーク後の樹脂フィルムの色値bを測定し、且つ、色差△Eを0.45(数値が低いほど、性能が優れていることを表す)と測定し、データより、本実施例に係るポリウレタン樹脂が良好な耐黄変性を持つことを示した。」 摘記(D) 【0108】 〔実施例2〕 ・・・ 【0119】 得られたH12MDI製品の収率は96%であり、製品の純度は99.8%であった。得られた製品における加水分解塩素は5ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は7ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は2ppmであった。 ・・・ 【0123】 (2)ステップ(1)で得られたポリウレタンプレポリマーを用いて実施例1の方法に従ってポリウレタン樹脂を調製し、色差△E試験を行い、その結果は0.31であり、データより、本実施例に係るポリウレタン樹脂が良好な耐黄変性を持つことを示した。 【0124】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は95.5%であった。 【0125】 〔実施例3〕 ・・・ 【0135】 得られたIPDI製品の収率は97.6%であり、製品の純度は99.85%であった。得られた製品における加水分解塩素は35ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は41ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は6ppmであった。 ・・・ 【0139】 (2)ステップ(1)で得られたポリウレタンプレポリマーを用いて実施例1の方法に従ってポリウレタン樹脂を調製し、色差△E試験を行い、その結果は0.22であり、データより、本実施例に係るポリウレタン樹脂が良好な耐黄変性を持つことを示した。 【0140】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は96.7%であった。 【0141】 〔実施例4〕 ・・・ 【0148】 得られたIPDI製品の収率は97.5%であり、製品の純度は99.85%であった。得られた製品における加水分解塩素は17ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は22ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は5ppmであった。 ・・・ 【0152】 (2)ステップ(1)で得られたポリウレタンプレポリマーを用いて実施例1の方法に従ってポリウレタン樹脂を調製し、色差△E試験を行い、その結果は0.21であり、データより、本実施例に係るポリウレタン樹脂が良好な耐黄変性を持つことを示した。 【0153】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は94.9%であった。 【0154】 〔実施例5〕 ・・・ 【0155】 得られたHDI製品の収率は97%であり、製品の純度は99.75%であった。得られた製品における加水分解塩素は25ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は25.4ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は0.4ppmであった。 ・・・ 【0157】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.10NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.09であった。 【0158】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は98.5%であった。 【0159】 〔実施例6〕 ・・・ 【0160】 得られたHDI製品の収率は97%であり、製品の純度は99.8%であった。得られた製品における加水分解塩素は23ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は63ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は40ppmであった。 ・・・ 【0162】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.11NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.10であった。 【0163】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は98.4%であった。 【0164】 〔実施例7〕 ・・・ 【0165】 得られたHDI製品の収率は96.2%であり、製品の純度は99.8%であった。得られた製品における加水分解塩素は4.1ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は4.3ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は0.2ppmであった。 ・・・ 【0167】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.14NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.15であった。 【0168】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は96.2%であった。 【0169】 〔実施例8〕 ・・・ 【0170】 得られたであるH12MDI製品の収率は96%であり、製品の純度は99.8%であった。得られた製品における加水分解塩素は5ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は65ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は60ppmであった。 ・・・ 【0172】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.15NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.15であった。 【0173】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は96.0%であった。 【0174】 〔実施例9〕 ・・・ 【0175】 得られたIPDI製品の収率は97.5%であり、製品の純度は99.85%であった。得られた製品における加水分解塩素は17ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は22ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は5ppmであった。 ・・・ 【0178】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.19NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.18であった。 【0179】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は94.0%であった。 【0180】 〔実施例10〕 ・・・ 【0181】 得られたHDI製品の収率は97.5%であり、製品の純度は99.88%であった。得られた製品における加水分解塩素は17ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は117ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は100ppmであった。 ・・・ 【0183】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.19 NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は0.20であった。 【0184】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は94.8%であった。」 摘記(E) 「【0185】 〔比較例1〕 ・・・ 【0186】 得られたHDI製品の収率は97%であり、製品の純度は99.74%であった。得られた製品における加水分解塩素は23ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は170ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は147ppmであった。 ・・・ 【0188】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は1.7NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は1.5であった。 【0189】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は81.5%であった。 【0190】 〔比較例2〕 ・・・ 【0191】 得られたH12MDI製品の収率は96.2%で、製品の純度は99.81%であった。得られた製品における加水分解塩素は3ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は170ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は167ppmであった。 ・・・ 【0193】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は1.9NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は1.7であった。 【0194】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は79.1%であった。 【0195】 〔比較例3〕 ・・・ 【0196】 得られたIPDI製品の収率は97.4%であり、製品の純度は99.86%であった。得られた製品における加水分解塩素は25ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は131ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は106ppmであった。 ・・・ 【0198】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.67NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は1.9であった。 【0199】 得られたポリウレタン製品按照GB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は85.5%であった。 【0200】 〔比較例4〕 ・・・ 【0201】 得られたIPDI製品の収率は97.4%であり、製品の純度は99.85%であった。得られた製品における加水分解塩素は21ppmで、アルカリ加水分解塩素含有量は21ppmであり、アルカリ加水分解塩素と加水分解塩素との差は0ppmであった。 ・・・ 【0203】 ポリウレタンプレポリマーの合成で得られたエマルションの濁度は0.75NTUであり、製造されたポリウレタン樹脂に対して色差△E試験を行い、その結果は2.7であった。 【0204】 得られたポリウレタン製品に対してGB/T 2410-2008に係る方法に従って光透過率試験を行い、その結果は73.2%であった。」 摘記(F)「【0205】 実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4を比較することにより、本願に係る特定量(加水分解塩素との差が0.1ppm~100ppmである)のアルカリ加水分解塩素を含むポリイソシアネート組成物は、ポリウレタン合成エマルションの濁りを効果的に回避して、ポリウレタン製品の光透過率および耐黄変性を向上させることができることが分かった。 【0206】 実施例1、5~10を比較することにより、ポリイソシアネート組成物におけるアルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値が0.2ppm~60ppmである場合(実施例1、5~8)、ポリウレタン合成エマルションの濁り問題を更に改善し、製品の光透過率および耐黄変性を向上させることができ、差が4ppm~40ppm範囲内(実施例1、5~6)にある場合、効果がより優れていることが分かった。」 ウ 特許権者が、令和8年1月6日に提出した意見書に添付の証拠(乙第1~8号証(以下、番号に応じて「乙1」等ともいう。))について 乙第1号証:Desmodur W, Covestro, 2015年9月1日編集, p. 1-3 乙第2号証:中華人民共和国国家標準 (GB/T 37042-2018) ヘキサメチレンジイソシアネート, 2019年7月1日 乙第3号証:中華人民共和国国家標準 (GB/T 13941-2015) ジフェニルメタンジイソシアネート, 2016年6月1日 乙第4号証:中華人民共和国国家標準 (GB/T 32469-2016) プラスティック-ポリウレタン原料-トルエンジイソシアネート, 2016年9月1日 乙第5号証:VESTANAT IPDI (EU origin), Evonik, 2019年9月26日, p. 1-4 乙第6号証:Safety Data Sheet Bis(Isocyanatomethyl)cyclohexane, WANHUA, 2025年7月24日改訂 乙第7号証:Desmodur 15, Covestro, 2021年2月11日編集, p. 1-2 乙第8号証:WANNATE XR-2005 (m-キシリレンジイソシアネート), WANHUA, 2018年7月17日 乙1~8には、市販等の各種「ポリイソシアネート」について、「加水分解塩素」の含有量が、次に示すように一定量以下であることが記載されている。 乙1:「ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート」:≦10mg/kg(≦10ppm) 乙2:「ヘキサメチレンジイソシアネート」:≦100mg/kg(≦100ppm) 乙3:「ジフェニルメタンジイソシアネート」:≦0.003%又は≦0.005%(≦30ppm又は≦50ppm) 乙4:「トルエンジイソシアネート」:≦0.010%(≦100ppm) 乙5:「イソホロンジイソシアネート」:≦200ppm 乙6:「シクロヘキシルジメチレンジイソシアネート」:≦0.050%(≦500ppm) 乙7:「ナフタレン-1,5-ジイソシアネート」:≦0.02%(≦200ppm) 乙8:「m-キシリレンジイソシアネート」:≦0.050%(≦500ppm) エ 検討 (ア) 摘記(A)によれば、「アルカリ加水分解塩素系不純物は、ポリウレタン合成過程で塩素を解離」し、「これらの塩素は、局所的な過剰反応を抑制した後、更に外へ拡散し、正常反応領域の触媒に対して被毒を与え、反応活性の不安定を招き、更に、合成過程の熱制御に問題が生じ、ポリウレタンで合成されたエマルションが濁り、ポリウレタン製品に悪影響を及ぼし、光透過率の低下を招き、更に、耐黄変性が悪くなることを招く」ものである。 また、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値」(以下「差A」という。)については、その範囲や具体的数値例が記載されているところ、差Aを好ましい範囲とすることにより、「ポリウレタン合成エマルションの濁り問題を更に改善し、製品の光透過率および耐黄変性を向上させることができる」とされている。 さらに、摘記(C)~(F)によれば、具体的に、差Aが0.1~100ppmの範囲内にある実施例1~10は、差Aが0.1~100ppmの範囲外である比較例1~4に対して、いずれも、色差ΔEが低く、かつ、光透過率が高い良好な結果であったことを確認している。 (イ) ここで、「アルカリ加水分解系不純物は、解離してアルカリ加水分解を得る物質であり、加水分解塩素系不純物は、解離して加水分解塩素を得る物質である」から(摘記(A)の【0020】)、「アルカリ加水分解塩素には加水分解塩素の全てが含まれて」いるところ、上記(ア)より本件訂正発明は、アルカリ加水分解塩素のうち、加水分解塩素でないもの、すなわち、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた後に残る塩素」が「「濁り」及び「黄変」に関与し得る」ことを見いだしたものであるといえる(令和7年7月9日提出の意見書の第6頁参照。)。 そして、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」は、「加水分解塩素の質量含有量」に「差A」を足した数値であるから、本件訂正発明は、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」を、「加水分解塩素の質量含有量」より最大「100ppm」多い含有量に限定するものともいえる。 (ウ) そうすると、本件訂正発明は、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」の限定がないポリイソシアネート組成物、すなわち、差Aの限定がないポリイソシアネート組成物と比べて、「正常反応領域の触媒に対して被毒を与え、反応活性の不安定を招き、更に、合成過程の熱制御に問題が生じ」ることを抑制できる結果、色差ΔE及び光透過率の点で優れた結果が得られることは、当業者であれば理解できるものといえる。 また、一般に、ポリウレタンの材料となるポリイソシアネート組成物は、加水分解塩素の質量含有量は低いレベルに抑えられているところ(乙1~乙8)、さらに、アルカリ加水分解塩素のうち、加水分解塩素でないものの質量含有量を低減させることにより、優れた結果が得られることは、当業者の理解し得るところである。 したがって、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (エ) よって、本件訂正発明1~10は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 (3) 小括 以上のとおり、取消理由1(ア)及び取消理由2によっては、本件訂正請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由(申立理由1及び2)について (1) 甲1の記載事項(申立人が提出した訳文を用いて示す。) 摘記(1a) 「 [図:0001435174000004.jpg] 」 摘記(1b) 「 [図:0001435174000005.jpg] ・・・ [図:0001435174000006.jpg] 」 摘記(1c) 「背景技術 ・・・ [図:0001435174000007.jpg] ・・・ [図:0001435174000008.jpg] 」 摘記(1d) 「 [図:0001435174000009.jpg] [図:0001435174000010.jpg] [図:0001435174000011.jpg] [図:0001435174000012.jpg] 」 摘記(1e) 「 [図:0001435174000013.jpg] [図:0001435174000014.jpg] [図:0001435174000015.jpg] [図:0001435174000016.jpg] [図:0001435174000017.jpg] [図:0001435174000018.jpg] 」 摘記(1f) 「 [図:0001435174000019.jpg] [図:0001435174000020.jpg] 」 摘記(1g) 「 [図:0001435174000021.jpg] 」 摘記(1h) 「 [図:0001435174000022.jpg] 」 摘記(1i) 「 [図:0001435174000023.jpg] [図:0001435174000024.jpg] [図:0001435174000025.jpg] 」(合議体注:原文では、「H12MDA」及び「H12MDI」は、それぞれ「H12MDA」及び「H12MDI」である。以下同様。) 摘記(1j) 「【0106】ポリイソシアネート製造例2 ・・・ [図:0001435174000026.jpg] ・・・ 【0117】ポリイソシアネート製造例3 ・・・ [図:0001435174000027.jpg] ・・・ 【0128】ポリイソシアネート製造例4 ・・・ [図:0001435174000028.jpg] [図:0001435174000029.jpg] ・・・ 【0140】ポリイソシアネート製造例5 ・・・ [図:0001435174000030.jpg] 」 摘記(1k) 「 [図:0001435174000031.jpg] [図:0001435174000032.jpg] [図:0001435174000033.jpg] 」 (2) 甲1に記載された発明 甲1には、「光化学反応によってポリイソシアネートを調製する方法及び水性ポリウレタン樹脂を調製する方法に関し」、「ポリイソシアネートの製造工程におけるベンゾフェノン系不純物の含有量を制御することにより、製品の耐黄変性を効果的に改善すること」ができる発明が記載され(摘記(1a))、「ポリイソシアネートを調製するために、イソシアネートの色および塩素含有量を低減するためのいくつかの方法が言及されているが、どのタイプの不純物がポリイソシアネートの高塩素含有量または黄色がかった色につながるかは明らかで」はない(摘記(1c))という背景技術のもと、「塩素を含むベンゾフェノン系不純物が製品中の残留塩素の一部の供給源であることを発見し、この種の不純物含有量を一定の範囲内で制御すること」で、「ポリイソシアネート製品の塩素含有量0.02%以下、さらには塩素含有量0.01%以下を達成し、ポリイソシアネート製品と下流製品の黄変耐性を向上させる」という課題を解決すること(摘記(1d))が記載されている。 そして、その請求項1に、 「 [図:0001435174000034.jpg] 」 と記載され(摘記(1b))、その対応する具体的な実施例(摘記(1h)、(1i)、(1k))として、「ポリイソシアネート製造例1」及びその結果が記載されている。 そうすると、甲1には以下に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「以下の製造方法による、塩素含有ベンゾフェノン不純物(1,2,1’,2’-テトラクロロベンゾフェノン、2,3,2’,3’-テトラクロロベンゾフェノン、1,2,2’,3’-テトラクロロベンゾフェノン)の総含有量が0.01重量%であり、純度が99.5%であるジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)製品。 製造方法: ステップa) ヒータを用いてジアミンH12MDA(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン:市場調達、取引銘柄番号Wanamine H12MDA)を気化して355℃に加熱し、窒素ガスの保護下で355℃に加熱された気体ホスゲン(自家製、純度>95%、参照特許文献CN104415770A)とそれぞれの供給管を介して連続的に反応器に添加してホスゲン化反応を行う;反応の圧力は絶対圧0.05MPa、反応温度は360℃であり、そのうちH12MDAの供給量は800Kg/h、気相ホスゲンの供給量は3000Kg/hであり、反応後、得られた混合ガスをガス噴射吸収装置を介してo-ジクロロベンゼン溶液(業界標準のHG/T 3602-2010に準拠して購入)を100℃まで急速に冷却(接触時間約10秒)し、生成物H12MDI、ホスゲン及びo-ジクロロベンゼン溶液を含む粗生成物を得る;反応排ガスが排ガス吸収塔に入った後、-35℃のo-ジクロロベンゼン溶液に吸収され、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を得る。 ステップb) ステップa)で得られた粗生成物は、ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液を除去する処理を行い、粗生成物のうちo-ジクロロベンゼン溶液と過剰のホスゲンは168℃、絶対圧0.1MPaで除去し、ホスゲンを含有しないH12MDI粗生成物とホスゲンを含有するo-ジクロロベンゼン溶液を分離する;ホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液が168℃で1時間維持されるように、除去プロセスを制御する。 ステップc) ステップa)の反応排ガスが吸収された後、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を得、ステップb)の除去工程後、得られたホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を精留塔に入れ、ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液の分離を行う;分離工程は、圧力0.125MPa、塔底温度155℃、塔頂温度15℃の条件で行われ、純度98%のホスゲンとホスゲン含有量<0.001%のo-ジクロロベンゼン溶液が得られ、分離されたホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液は全てステップa)に戻り循環して使用する;ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液の分離過程で、155℃でホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液の滞留時間を1時間に調整する。 ステップd) ステップb)のホスゲンを含まないH12MDI粗生成物は蒸留により精製され、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)製品は、絶対圧0.5KPa、150~160℃の蒸留プロセスで得られる。 プロセス全体を通して、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液は、150~165℃で1時間、165~180℃で1時間保持され、150℃~180℃の間の合計滞留時間が2時間以下になるように制御する。」 (3) 本件訂正発明と甲1に記載された発明との対比・判断 ア 本件訂正発明1について (ア) 新規性について 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)」及び「製品」は、それぞれ、本件訂正発明1の「ポリイソシアネート」及び「組成物」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は 「ポリイソシアネート組成物」 である点で一致し、以下の相違点1で相違する。 <相違点1> ポリイソシアネート組成物について、本件訂正発明1は、 「アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.1ppm~100ppmであり、 前記アルカリ加水分解塩素の質量含有量は、 (a)10g~15g(0.1mgまで精秤する)の試料を300mLのビーカーに入れ、ロータを入れ、30mLのアセトンを加え、サンプルが完全に溶解した後、50mLのエタノール溶液を加え、60℃の恒温水浴に置いて十分に反応させるステップ、 (b)30min反応させた後、100mLのNaOH溶液を加え、60℃の恒温水浴で50min反応させ続けるステップ、 (c)ビーカーを取り出し、氷水浴に置いて10℃以下に冷却するステップ、 (d)2mLの塩化ナトリウム標準溶液をビーカーに正確に入れ、また、1:3の硝酸溶液を20mL加え、電位差滴定を行い、得る曲線の変曲点を終点とし、消費した硝酸銀標準溶液の体積を記録するステップ、 (e)それと同時に、ブランク試験を行うステップ、 により測定し、 アルカリ加水分解塩素は、以下の式で計算され、 【数1】 [図:0001435174000035.jpg] (式中、 Clは加水分解塩素の含有率(塩素として)で、単位がppmであり、 Vは試料滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 V0はブランク滴定時に消費する硝酸銀標準溶液の体積で、単位がmLであり、 Cは硝酸銀標準溶液の実際の濃度で、単位がmol/Lであり、 mは試料の質量で、単位がgであり、 0.03546は、1.00mLの硝酸銀標準溶液[C(AgNO3)=1.000mol/L]に相当するグラムで表される塩素原子の質量であり、単位がg/molである。) 前記加水分解塩素の質量含有量の測定は、GB/T 37042-2018で提供された方法を採用する」 ものであるのに対して、 甲1発明は、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値」が不明であって、 「塩素含有ベンゾフェノン不純物(1,2,1’,2’-テトラクロロベンゾフェノン、2,3,2’,3’-テトラクロロベンゾフェノン、1,2,2’,3’-テトラクロロベンゾフェノン)の総含有量が0.01重量%であり、純度が99.5%であり」、以下の製造方法により製造されたものである点 「製造方法: ステップa) ヒータを用いてジアミンH12MDA(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン:市場調達、取引銘柄番号Wanamine H12MDA)を気化して355℃に加熱し、窒素ガスの保護下で355℃に加熱された気体ホスゲン(自家製、純度>95%、参照特許文献CN104415770A)とそれぞれの供給管を介して連続的に反応器に添加してホスゲン化反応を行う;反応の圧力は絶対圧0.05MPa、反応温度は360℃であり、そのうちH12MDAの供給量は800Kg/h、気相ホスゲンの供給量は3000Kg/hであり、反応後、得られた混合ガスをガス噴射吸収装置を介してo-ジクロロベンゼン溶液(業界標準のHG/T 3602-2010に準拠して購入)を100℃まで急速に冷却(接触時間約10秒)し、生成物H12MDI、ホスゲン及びo-ジクロロベンゼン溶液を含む粗生成物を得る;反応排ガスが排ガス吸収塔に入った後、-35℃のo-ジクロロベンゼン溶液に吸収され、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を得る。 ステップb) ステップa)で得られた粗生成物は、ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液を除去する処理を行い、粗生成物のうちo-ジクロロベンゼン溶液と過剰のホスゲンは168℃、絶対圧0.1MPaで除去し、ホスゲンを含有しないH12MDI粗生成物とホスゲンを含有するo-ジクロロベンゼン溶液を分離する;ホスゲンを含むo-ジクロロベンゼン溶液が168℃で1時間維持されるように、除去プロセスを制御する。 ステップc) ステップa)の反応排ガスが吸収された後、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を得、ステップb)の除去工程後、得られたホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液を精留塔に入れ、ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液の分離を行う;分離工程は、圧力0.125MPa、塔底温度155℃、塔頂温度15℃の条件で行われ、純度98%のホスゲンとホスゲン含有量<0.001%のo-ジクロロベンゼン溶液が得られ、分離されたホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液は全てステップa)に戻り循環して使用する;ホスゲンとo-ジクロロベンゼン溶液の分離過程で、155℃でホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液の滞留時間を1時間に調整する。 ステップd) ステップb)のホスゲンを含まないH12MDI粗生成物は蒸留により精製され、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)製品は、絶対圧0.5KPa、150~160℃の蒸留プロセスで得られる。 プロセス全体を通して、ホスゲン含有o-ジクロロベンゼン溶液は、150~165℃で1時間、165~180℃で1時間保持され、150℃~180℃の間の合計滞留時間が2時間以下になるように制御する。」 相違点1について検討する。 本件明細書の摘記(B)によれば、「原料ポリアミン」と分離しにくい「a)不飽和オレフィン構造、b)第二級アミン系構造、c)水酸基系構造」が、「アルカリ加水分解塩素系を形成」する点で、「原料ポリアミン」がアルカリ加水分解塩素の由来となる物質を含むため、「原料ポリアミンについては、これらの種類の物質の総量を制御する必要があり、本願において、総量を0.1ppm~400ppmに制御することを推奨する」とされている。 実際に、本件明細書に記載の具体例である実施例1では、「不飽和オレフィン構造、第二級アミン系構造、水酸基系構造の含有量の合計は200ppm」である「ヘキサメチレンジアミン」を使用しているものである。 ここで、甲1発明は、本件明細書に記載の実施例1と類似の製造条件(手順、温度及び圧力制御は、ステップd)の蒸留温度が「135~140℃」と「150~160℃」の点でのみ異なる。)によって、「イソシアネート組成物」を得ているものの、「原料ポリアミン」は、「ジアミンH12MDA(4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン:市場調達、取引銘柄番号Wanamine H12MDA)」であって、原料ポリアミンに不純物として含まれ得る「不飽和オレフィン構造、第二級アミン系構造、水酸基系構造の含有量」は不明であり、得られた「イソシアネート組成物」の純度は「99.5%」であって、本件明細書に記載の実施例1の純度「99.75%」より低いものである。 そうすると、甲1発明は、単に「市場調達」された「原料ポリアミン」を用いて製造した「イソシアネート組成物」であって、「アルカリ加水分解塩素」の由来となる不純物が一定範囲にある「原料ポリアミン」を使用しているかどうか不明で、そのような「原料ポリアミン」を用いて製造された「ポリイソシアネート組成物」が本件明細書に記載の実施例1と同様に、本件訂正発明1において特定される「差A」の特性を有する「イソシアネート組成物」であるとはいえないから、相違点1は実質的な相違点である。 また、甲1には、甲1発明である「ポリイソシアネート製造例1」以外にも、「ポリイソシアネート製造例2」~「ポリイソシアネート製造例5」も具体例として記載されているが、上記の点で同様に異なるし、ほかの製造条件も異なるものであるから、本件訂正発明1に対して、実質的な相違点を有するものである。 よって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (イ) 進歩性について 甲1には、「塩素を含むベンゾフェノン系不純物が製品中の残留塩素の一部の供給源であることを発見し、この種の不純物含有量を一定の範囲内で制御する」こと(摘記(1d))で、「ポリイソシアネート製品と下流製品の黄変耐性を向上させる」ことは記載されているが、「アルカリ加水分解塩素」の由来となる「原料ポリアミン」の不純物に関する記載はなく、さらに、「アルカリ加水分解塩素の質量含有量」及び「加水分解塩素の質量含有量」に着目することや、「差A」を「0.1ppm~100ppm」の範囲内にすることについても記載はない(摘記(1e)~(1g)及び(1j))。そして、「イソシアネート組成物」において、「アルカリ加水分解塩素」と「ベンゾフェノン系不純物」との関係も明らかではないから、「ベンゾフェノン系不純物」の含有量を0.025重量%以下(甲1の請求項1)とすることで「差A」が「0.1ppm~100ppm」の範囲内となるかは不明であり、範囲内になるということもできない。 そうすると、甲1には、「原料ポリアミン」の不純物を「0.1ppm~400ppm」に制御する動機付けや、「差A」を「0.1ppm~100ppm」の範囲内とする動機付け及びその具体的手段の示唆があるとはいえないから、甲1発明において、相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明2及び3について 本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1を更に限定するものであるから、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備える発明であって、本件訂正発明1を更に限定するものであるから、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件訂正発明5及び6について 本件訂正発明5及び6は、本件訂正発明1~4のポリイソシアネート組成物の「調製方法」の発明であって、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件訂正発明7~10について 本件訂正発明7~10は、本件訂正発明1~4のポリイソシアネート組成物を「調製原料」として含むポリウレタン樹脂であって、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、申立書において、以下の(主張ア)~(主張ウ)をしている。 (主張ア) 申立書45ページ 本件特許発明及び甲1発明は、ポリイソシアネート合成に使用される(ポリアミン、ホスゲン)が同じであり、それを用いた合成方法(各種ホスゲン化反応の条件)が同じであり、さらには発明の目的、効果を達成するための手段が実質的に同一である。 (主張イ) 申立書60ページ 甲第1号証の製造例1~3のそれぞれは、不純物である塩素含有ベンゾフェノン含有量が100ppm(=0.01重量%)、80ppm(=0.008重量%)及び150ppm(0.015重量%)であり、これを本件特許と同様に塩素原子の相対原子質量に換算するとはるかに低くなることは明らかである。 (主張ウ) 申立書60ページ 甲第1号証の製造例1~3に開示された内容から条件等を任意に調整して、本件特許の請求項1の「アルカリ加水分解塩素の質量含有量から加水分解塩素の質量含有量を引いた数値は0.1ppm~100ppm」を満たすポリイソシアネートを容易に製造できる。 イ 申立人の主張の検討 (ア) 上記(3)ア(ア)において説示したとおり、原料であるポリアミンは、不純物の点で同一とはいえないから、上記(主張ア)は採用できない。 (イ) 上記(3)ア(イ)において説示したとおり、「アルカリ加水分解塩素」と「ベンゾフェノン系不純物」との関係は明らかではないから、上記(主張イ)は採用できない。 (ウ) 上記(3)ア(イ)において説示したとおり、甲1には、「原料ポリアミン」の不純物を「0.1ppm~400ppm」に制御する動機付けや、「差A」を「0.1ppm~100ppm」の範囲内とする動機付け及びその具体的手段の示唆があるとはいえないから、条件等を任意に調整しても、「差A」を「0.1ppm~100ppm」の範囲内とすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、上記(主張ウ)は採用できない。 (5) 小括 したがって、申立理由1及び申立理由2によっては、本件訂正請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、本件訂正請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、ほかに本件訂正請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700077

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    共通の審決分類: 113・C07C、121・C07C、537・C07C

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