特許異議申立
2023-700649
浴室環境で使用するバイオモニタリング・デバイス、方法、及びシステム
- 審判番号
- 2023-700649
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-504284
- 登録番号
- 7193526
- 請求日
- 2023年06月20日
- 審決日
- 2024年05月08日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】トイ ラボズ、インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】鮫島 正洋
- 【権利者代理人】和田 祐造
- 【権利者代理人】奈良 大地
- 【異議申立人】大隅 庸平
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P1651.113-YAA(A61B) / P1651.121-YAA(A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7193526号発明「浴室環境で使用するバイオモニタリング・デバイス、方法、及びシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7193526号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、9、10、12-14〕、8、11、〔15-18〕について訂正することを認める。
特許第7193526号の請求項1~8、11~15、18に係る特許を維持する。
特許第7193526号の請求項9、10、16及び17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7193526号の請求項1~18に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)4月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年4月7日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月12日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、令和5年6月20日に特許異議申立人 大隅庸平(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月19日付けで取消理由を通知した。その後、特許権者は、その指定期間内である令和6年1月19日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、同年2月28日に申立人により意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)本件訂正請求における請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~18について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイス。」を、
「前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、デバイス。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~14(請求項8~11を除く)も同様に訂正する。)。
上記訂正事項1を便宜上、以下のとおり枝番を付して分説する。
(ア)訂正事項1-1
「(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)」との訂正。
(イ)訂正事項1-2
「前記デバイスが、前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、」との訂正。
(ウ)訂正事項1-3
「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、」との訂正。
(エ)訂正事項1-4
「前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、デバイス」との訂正。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8の
「前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び/又は前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。」を、
「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、デバイス。」
に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11の
「前記計算ユニットが、前記データを分析して、便の硬さ、血液の存在、尿の色、尿の排泄量、体重、体組成、便の頻度、尿の頻度、又はそれらの任意の組み合わせを決定する、請求項9に記載のデバイス。」を、
「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含み、
前記計算ユニットが、前記データを分析して、便の硬さ、血液の存在、尿の色、尿の排泄量、体重、体組成、便の頻度、尿の頻度、又はそれらの任意の組み合わせを決定する、デバイス。」
に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15の
「前記バイオモニタリング・デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、バイオモニタリング・デバイス。」を、
「前記バイオモニタリング・デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含み、
前記レンズが、前記トイレの座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されており、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にある(ただし、電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、バイオモニタリング・デバイス。」
に訂正する(請求項15の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。)。
上記訂正事項6を便宜上、以下のとおり枝番を付して分説する。
(ア)訂正事項6-1
「前記レンズが、前記トイレの座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されており、」との訂正。
(イ)訂正事項6-2
「前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にある」との訂正。
(ウ)訂正事項6-3
「(ただし、電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)」との訂正。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(2)訂正の単位
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項2~14は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項16~18は、訂正前の請求項15を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項6によって記載が訂正される訂正前の請求項15に連動して訂正されるものである。
したがって、請求項1~14、請求項15~18は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、一群の請求項1~14、15~18について請求されている。
イ 別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項8及び11について、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項1~14の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に対して、電磁放射源及びセンサが、「シャワーノズルにある場合を除く」ことにより、電磁放射源及びセンサの位置をさらに限定するものである。
(イ)訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に対して、デバイスが、「伝送ユニットを備え」ることを限定するものである。
(ウ)訂正事項1-3は、訂正事項1-2の伝送ユニットが、「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する」ことを限定するものである。
(エ)訂正事項1-4は、訂正前の請求項1に対して、デバイスが、「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が、・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む」ことを限定するものである。
(オ)以上のとおり、訂正事項1(訂正事項1-1~1-4)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1-1は、いわゆる「除くクレーム」によって、電磁放射源及びセンサがシャワーノズルにある場合を除外するものであるところ、訂正事項1-1は、本件発明1が、取消理由通知において引用された甲2に記載の発明(甲2発明)と重なるために新規性等が否定されるおそれがあり、その重なりのみを除くためのものであって、本件発明1から、電磁放射源及びセンサがシャワーノズルにある場合を除外したことによって何ら新しい技術的要素が生じていない。
したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ)訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の記載に、訂正前の請求項8における「前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び/又は前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットをさらに備える」との記載のうち、「伝送ユニット」に係る記載と実質的に同様の記載を追加するものである。
したがって、訂正事項1-2に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)訂正事項1-3は、訂正前の請求項1の記載に、訂正前の請求項9における「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備える、請求項8に記載のデバイス。」との記載と実質的に同様の記載を追加するものである。
したがって、訂正事項1-3に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ)訂正事項1-4は、訂正前の請求項1の記載に、訂正前の請求項10における「前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、請求項9に記載のデバイス。」との記載と実質的に同様の記載を追加するものである。
したがって、訂正事項1-4に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(オ)以上のとおり、訂正事項1(訂正事項1-1~1-4)に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1~1-4は、訂正前の請求項1を上記ア(ア)~(エ)のとおり限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1(訂正事項1-1~1-4)に係る訂正は、訂正前の請求項1との関係で、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項1(訂正事項1-1~1-4)に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項2に係る訂正のうち、
「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり」「、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、」という訂正は、訂正前の請求項8の記載が訂正前の請求項1を引用するものであったところ、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)また、訂正事項2に係る上記限定にかかる訂正以外の事項の訂正は、訂正前の請求項8に対して、「前記電磁放射源及び前記センサ」の位置をさらに限定する(「シャワーノズルにある場合を除く」)こと、デバイスがデータ記憶ユニット「及び」伝送ユニットを備えること、伝送ユニットが「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する」こと、及びデバイスが「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む」ことを限定するものである。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮・他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2のうち、独立形式請求項へ改めるための訂正については、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
また、電磁放射源及びセンサの位置を、いわゆる「除くクレーム」によってさらに限定することは、訂正事項1-1に関して上記「(1)イ(ア)」で説示したとおり、新たな技術的事項を導入するものではない。
さらに、訂正事項2のうち、デバイスがデータ記憶ユニット「及び」伝送ユニットを備えることは、訂正前の請求項8に記載があり(「及び/又は」で規定されているうちの「及び」)、伝送ユニットが「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する」ことは、訂正前の請求項9に記載がある。
加えて、デバイスが「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む」については、訂正前の請求項10に記載がある。
以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項8を上記ア(ア)及び(イ)のとおり、独立形式請求項へ改めた上で限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項8との関係で、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項9を削除するというものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項10を削除するというものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項5に係る訂正のうち、
「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり」「、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、」という訂正は、訂正前の請求項11の記載が訂正前の請求項9を引用するものであったところ、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項9の記載(間接的に引用する訂正前の請求項8の記載及び訂正前の請求項1の記載を含む。)を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)また、訂正事項5に係る上記限定にかかる訂正以外の事項の訂正は、訂正前の請求項11に対して、「前記電磁放射源及び前記センサ」の位置をさらに限定する(「シャワーノズルにある場合を除く」)こと、デバイスがデータ記憶ユニット「及び」伝送ユニットを備えること、伝送ユニットが「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する」こと、及びデバイスが「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む」ことを限定するものである。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)以上のとおり、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮・他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5のうち、独立形式請求項へ改めるための訂正については、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
また、電磁放射源及びセンサの位置を、いわゆる「除くクレーム」によってさらに限定することは、訂正事項1-1に関して上記「(1)イ(ア)」で説示したとおり、新たな技術的事項を導入するものではない。
さらに、訂正事項5のうち、デバイスがデータ記憶ユニット「及び」伝送ユニットを備えることは、訂正前の請求項8に記載があり(「及び/又は」で規定されているうちの「及び」)、伝送ユニットが「無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する」ことは、訂正前の請求項9に記載がある。
加えて、デバイスが「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む」については、訂正前の請求項10に記載がある。
以上のとおり、訂正事項5に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、訂正前の請求項11を上記ア(ア)及び(イ)のとおり、独立形式請求項へ改めた上で限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項11との関係で、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項6-1は、訂正前の請求項15に対して、レンズと便器との位置関係を限定するものである。
(イ)訂正事項6-2は、訂正前の請求項15に対して、電磁放射源及びセンサの位置を限定するものである。
(ウ)訂正事項6-3は、訂正事項6-2の電磁放射源及びセンサが、「シャワーノズルにある場合を除く」ことにより、電磁放射源及びセンサの位置をさらに限定するものである。
(エ)以上のとおり、訂正事項6(訂正事項6-1~6-3)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項6-1は、訂正前の請求項15の記載に、訂正前の請求項16における「前記レンズが、前記トイレの座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、請求項15に記載のバイオモニタリング・デバイス。」との記載と実質的に同様の記載を追加するものである。
したがって、訂正事項6-1に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ)訂正事項6-2は、訂正前の請求項15の記載に、訂正前の請求項17における「前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にある、請求項15に記載のバイオモニタリング・デバイス。」との記載と実質的に同様の記載を追加するものである。
したがって、訂正事項6-2に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)訂正事項6-3(電磁放射源及びセンサの位置を、いわゆる「除くクレーム」によってさらに限定すること)は、訂正事項1-1に関して上記「(1)イ(ア)」で説示したとおり、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ)以上のとおり、訂正事項6(訂正事項6-1~6-3)に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6-1~6-3は、訂正前の請求項15を上記ア(ア)~(ウ)のとおり限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項6(訂正事項6-1~6-3)に係る訂正は、訂正前の請求項15との関係で、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項6(訂正事項6-1~6-3)に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項16を削除するというものである。
したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項17を削除するというものである。
したがって、訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8に係る訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項8に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(9)なお、本件訂正請求においては、訂正前の全請求項について特許異議申立てがされているので、いずれの請求項についても、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1~8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、訂正後の請求項8及び11については、別の訂正単位とする求めに応じて、一群の請求項1~14の他の請求項とは別の訂正単位とする。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、9、10、12-14〕、8、11、〔15-18〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件訂正後の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明18」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】
ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、デバイス。
【請求項2】
前記センサが、前記レンズを備えるイメージ・センサである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記センサが、相補型金属酸化物半導体をさらに備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
レーザ・ダイオード及びフォトダイオードを含む、分光学的検出のための構成要素をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサが、前記便器内の検体化学物質を検出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
偏光フィルタをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トイレの前記座部に着座している間に前記ユーザの存在を検出する容量性センサをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、デバイス。」
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、前記レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを記憶するデータ記憶ユニット及び前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備え、
前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含み、
前記計算ユニットが、前記データを分析して、便の硬さ、血液の存在、尿の色、尿の排泄量、体重、体組成、便の頻度、尿の頻度、又はそれらの任意の組み合わせを決定する、デバイス。」
【請求項12】
前記ユーザの体重を捕捉する薄膜圧力センサを含むスケール又は足乗せ台をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記物質が尿又は糞便である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記便器に液体を定量供給することができるノズルをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサと、
(iii)計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットと
を備え、
前記バイオモニタリング・デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含み、
前記レンズが、前記トイレの座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されており、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にある(ただし、電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、バイオモニタリング・デバイス。
【請求項16】(削除)
【請求項17】(削除)
【請求項18】
偏光フィルタをさらに備える、請求項15に記載のバイオモニタリング・デバイス。」
第4 特許異議の申立てについて
1 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証~甲第15号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲15」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1~18に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。なお、「甲1」~「甲15」は、いずれも本件特許に係る優先権主張の日前に日本国内において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である。
(1)申立理由1(新規性)
下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、下記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・請求項1、2、5、8、9及び13
引用文献:甲1
(2)申立理由2(進歩性)
下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、下記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・請求項1、2、5、8、9及び13
引用文献:甲1、周知技術(甲2、甲3)
・請求項3
引用文献:甲1、甲2
・請求項4
引用文献:甲1、周知技術(甲4、甲5)
・請求項6
引用文献:甲1、周知技術(甲4、甲6、甲7)
・請求項7
引用文献:甲1、周知技術(甲8~甲10)
・請求項10
引用文献:甲1、周知技術(甲11、甲12)
・請求項11
引用文献:甲1、周知技術(甲12、甲13)
・請求項12
引用文献:甲1、周知技術(甲14、甲15)
・請求項14
引用文献:甲1、周知技術(甲8、甲9)
・請求項15~17
引用文献:甲1、周知技術(甲2、甲3)、周知技術(甲11、甲12)
・請求項18
引用文献:甲1、周知技術(甲2、甲3)、周知技術(甲4、甲6、甲7)、周知技術(甲11、甲12)
2 証拠方法
甲1:特開2009-270951号公報
甲2:特開2007-252805号公報
甲3:特開2006-61296号公報
甲4:特開2001-4531号公報
甲5:特開2006-90931号公報
甲6:特開2016-108870号公報
甲7:特開2017-12971号公報
甲8:特開2008-38334号公報
甲9:特開2006-274710号公報
甲10:特開2000-166818号公報
甲11:特開2001-128899号公報
甲12:特開2007-204号公報
甲13:特開2009-229315号公報
甲14:特開平4-367638号公報
甲15:特開2001-70201号公報
第5 取消理由通知書に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~18に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 理由1(新規性)
下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、下記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・請求項1、2、5、8、9、13及び14
引用文献:甲1
・請求項1~3、5、8~11及び13~17
引用文献:甲2
2 理由2(進歩性)
下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、下記の請求項に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・請求項1、2、5、8、9、13及び14
引用文献:甲1、周知技術1(甲2、甲3)
・請求項3
引用文献:甲1、周知技術2(甲2)
引用文献:甲1、周知技術1、周知技術2
・請求項4
引用文献:甲1、周知技術3(甲4、甲5)
引用文献:甲1、周知技術1、周知技術3
・請求項6
引用文献:甲1、周知技術4(甲4)
引用文献:甲1、周知技術1、周知技術4
・請求項7
引用文献:甲1、周知技術5(甲9、甲10)
引用文献:甲1、周知技術1、周知技術5
・請求項10、11、15、16及び17
引用文献:甲1、甲2
引用文献:甲1、甲2、周知技術1
・請求項12
引用文献:甲1、周知技術6(甲14、甲15)
引用文献:甲1、周知技術1、周知技術6
・請求項18
引用文献:甲1、甲2、周知技術4
引用文献:甲1、甲2、周知技術1、周知技術4
・請求項1~3、5、8~11及び13~17
引用文献:甲2
・請求項4
引用文献:甲2、周知技術3
・請求項6、18
引用文献:甲2、周知技術4
・請求項7
引用文献:甲2、周知技術5
・請求項12
引用文献:甲2、周知技術6
第6 各甲号証の記載等
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様)。
「【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る腸内状態測定装置は、便器に付設される腸内状態測定装置であって、便を画像として取り込む画像認識部と、前記画像認識部の解析を行う画像解析部と、前記便のpHと前記便の色との関係が記憶される記憶部とを備え、前記画像解析部の結果を前記記憶部に適用し前記便のpHを演算する演算部を備えることを特徴とする。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の健康状態測定装置によれば、非接触で便のpH値を測定できるので、通常の排便動作で簡便に便のpH値、すなわち腸内のpH値を精度良く測定することができる。そのため、従来困難であった毎日の生活の中での腸内の定常的チェックを可能とすることができる。
・・・
【0018】
本発明の腸内状態測定装置は、例えば洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵したり、洋式便器の便座に内蔵したり、あるいは、既設の洋式便器に後付けすることができる。
【0019】
図1は、本発明の腸内状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。便器1に付設された腸内状態測定装置Mを内蔵した衛生洗浄便座装置2が設置されている。衛生洗浄便座装置2の裏面には便座と一体になっていて、便器1に排泄された便の色を画像として取り込む画像認識部であるCCDカメラ3が備えられている。また画像認識部により得られた便の色の画像信号を解析する画像解析部、画像信号を記憶する記憶部、演算部、画像認識部を制御する制御部は一体化して衛生洗浄便座装置2の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果を報知する報知部8およびユーザが撮影開始を指示する撮影開始ボタン9および演算結果を表示させる表示開始ボタン10も衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている。
【0020】
すなわち、腸内状態測定装置Mの構成は、画像認識部、画像解析部、記憶部、演算部、制御部、報知部11からなる。なお、画像認識部と制御部とのデータ交換は結線により、また制御部と報知部8とのデータ交換は赤外線により行っている。
・・・
【0023】
以下、本図を説明する。
腸内状態測定装置Mの記憶部には、図4に示すような便そのものの色の輝度情報と便のpHとの対応を示す検量線が記憶されている。ユーザが便座に着座し排便を開始すると、排便認識部である赤外線センサ(図示していない)が便器1内の落下物を認識する。その動きに連動して待機状態にあった画像認識部であるCCDカメラ3は落下中の便の色の画像信号を入手するために連続撮影を開始する。尚、ユーザの着座により便器1内部が暗くなる場合に備え、画像認識部は便器1内部を明るくする照明部を備えていてもよい。CCDカメラ3はユーザが排便を開始して終了するまでの間、所定範囲内の画像を取り込み、落下中の便の画像信号を画像解析部4に送る。次いで画像解析部4はCCDカメラ3で得られた落下物の画像信号から色の特性を輝度解析によりパラメーター化する。次いで演算部6は、前記記憶部5に記憶されている検量線を用いて、画像解析部4によりパラメーター化された色の輝度情報(Lu1)に対応するpH値(pH1)を演算する。ユーザが排便終了後に、衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている表示開始ボタン10を押すと、制御部7は演算結果を報知部8である衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている液晶パネルに表示させユーザに報知する。
【0024】
本発明によれば、便のpHを落下中の便の色の画像により推測できるので、非接触で便のpHを知ることが出来、簡便にその日の体調を知ることができる。あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0025】
本発明の腸内状態測定装置Mを使用し、健康状態を報知する方法の手順を示す別の実施例を示す。実施例1では落下中の便の画像信号を用いたがここでは封水中に存在する便の画像信号を画像解析に用いる。装置の構成および動きはほぼ実施例1と同様であり、ここでは実施例1との相違点のみ記載する。図5は本発明の腸内状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。画像認識部であるCCDカメラ3は便座と一体になっており、便座後部の洗浄ノズルの近くに設置されている。画像認識部であるCCDカメラ3は制御部7により動きを制御され、便器1の封水13に存在する便を撮影する。また記憶部(図示していない)には実施例1で示したようなあらかじめpHが既知である便そのものの画像信号を画像解析部4によりパラメーター化した情報とpHとの関係を示す検量線のかわりに、あらかじめpHが既知である便の色を封水越しに撮影した画像信号を画像解析部4によりパラメーター化した情報とpHとの関係をあらわす検量線が記憶されている。
【0026】
以下、本発明の腸内状態測定装置M(衛生洗浄便座装置に搭載)を使用し、健康状態を報知する方法の手順を示す。図6は画像解析部4での輝度解析により得られた封水越しに撮影した便の色の画像信号から得られた輝度情報と便のpHとの対応を示す検量線のモデルである。尚、この検量線は腸内状態測定装置Mの記憶部に記憶されている。
ユーザが排泄終了後に衛生洗浄装置の操作部11上にある撮影開始ボタン9を押すと、待機状態にあった画像認識部であるCCDカメラ3は封水13に存在する便の色の画像信号を入手するために撮影を開始する。CCDカメラ3は所定範囲内の画像を取り込み、封水越しに撮影した便の画像信号を画像解析部4に送る。次いで画像解析部4は前記CCDカメラ3で得られた封水越しに撮影した便の色の画像信号(RGB)の色の特性を輝度解析によりパラメーター化する。次いで演算部6は、前記記憶部5に記憶されている検量線を用いて、画像解析部4によりパラメーター化された色の輝度情報(Lu2)に対応するpH値(pH2)を演算する。ユーザが衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている表示開始ボタン10を押すと、制御部7は演算結果を報知部8である衛生洗浄便座装置の操作部11に組み込まれている液晶パネルに表示させユーザに報知する。」、
「【図1】
[図:0001413311000001.jpg]
」、
「
[図:0001413311000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明・技術的事項
ア 【0025】の「図5は本発明の腸内状態測定装置Mを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。画像認識部であるCCDカメラ3は便座と一体になっており、便座後部の洗浄ノズルの近くに設置されている。」との記載及び図5から、衛生洗浄便座装置は、洋式便器の後部に便座の一端が連結部材によって取り付けられることにより、便座が洋式便器の開口部に対して上げ下げ自在となるように設置され、画像認識部であるCCDカメラは、洋式便器の後部に固定された連結部材において洗浄ノズルの近くに設置されていることが理解できる。
イ 前記アを含め前記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明・技術的事項(以下「甲1発明」・「甲1技術的事項」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定根拠となる引用文献1の記載箇所を示す。
「画像認識部、画像解析部、記憶部、演算部、制御部、報知部からなり、画像認識部と制御部とのデータ交換は結線により、また制御部と報知部とのデータ交換は赤外線により行っている腸内状態測定装置であって、(【0020】)
画像認識部により得られた便の色の画像信号を解析する画像解析部、画像信号を記憶する記憶部、演算部、画像認識部を制御する制御部は一体化して衛生洗浄便座装置の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果を報知する報知部およびユーザが撮影開始を指示する撮影開始ボタンおよび演算結果を表示させる表示開始ボタンも衛生洗浄便座装置の操作部に組み込まれ、(【0019】)
画像認識部であるCCDカメラは、便器内部を明るくする照明部を備え、(【0023】)
腸内状態測定装置は、洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵し、衛生洗浄便座装置は、洋式便器の後部に便座の一端が連結部材によって取り付けられることにより、便座が洋式便器の開口部に対して上げ下げ自在となるように設置され、画像認識部であるCCDカメラは、洋式便器の後部に固定された連結部材において洗浄ノズルの近くに設置され、(【0025】、図5、ア)
ユーザが排泄終了後に衛生洗浄便座装置の操作部上にある撮影開始ボタンを押すと、待機状態にあった画像認識部であるCCDカメラは封水に存在する便の色の画像信号を入手するために撮影を開始し、CCDカメラは所定範囲内の画像を取り込み、封水越しに撮影した便の画像信号を画像解析部に送り、次いで画像解析部は前記CCDカメラで得られた封水越しに撮影した便の色の画像信号(RGB)の色の特性を輝度解析によりパラメーター化し、次いで演算部は、前記記憶部に記憶されている検量線を用いて、画像解析部によりパラメーター化された色の輝度情報(Lu2)に対応するpH値(pH2)を演算する、(【0026】)
腸内状態測定装置。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、図面とともに以下の記載がある。
「【0037】
本発明のデータ検出装置1は、人体を被験者として、被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を熱画像及び画像として撮影し、この熱画像及び画像の解析によって被験者の健康状態を推定することを主目的とする装置である。
【0038】
図1に、データ検出装置1の構成の一部を示す。データ検出装置1は、トイレ室内に設置される。
【0039】
図1に示すように、トイレ室内に設けられたトイレ2の便器3における開口部後方の内壁には、被験者であるトイレ使用者の肛門及び局部を洗浄するための円筒状のシャワーノズル4が伸長突出可能に設けられている。
【0040】
また、図2に示すように、シャワーノズル4の先端部付近には、洗浄用の水を噴出するためのノズル孔5が形成されている。また、シャワーノズル4の先端部付近の側面には、画像撮影部6として4つのカメラが設けられている。なお、画像撮影部6としてのカメラの個数は4つに限られるものではなく、例えば、図3に示すように、シャワーノズル4の先端部に2つのカメラを設ける構成としてもよい。
【0041】
画像撮影部6は、被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を撮影するものであり、デジタル画像の取得が可能なCCDカメラ、デジタルスチルカメラ、CMOSカメラ、ビデオカメラ、携帯電話などに付属のカメラモジュールその他のカメラなどにより構成される。また、画像撮影部6はカラー撮影又はモノクロ撮影のいずれを行ってもよい。モノクロ撮影の場合は、画像撮影部6と可視照明光との切り替えにより色情報を取得する。また、画像撮影部6は被写体の一部を拡大して撮影するズーム機能を備えるカメラであることが望ましい。また、画像撮影部6としてのカメラには、近赤外領域(~2000nm程度)に対する感度が必要である。また、本実施形態では画像撮影部6としてモノクロカメラを用いると共に、近赤外照明を用いて熱画像の撮影を行うようになっているが、熱画像を撮影するカメラ(サーモセンサ)を別途設けてもよい。
【0042】
また、図2に示すように、シャワーノズル4の先端部付近であって画像撮影部6の近傍には、4つの照明部7が備えられている。なお、照明部7の個数は4つに限られるものではない。
【0043】
照明部7は光源を備えており、画像撮影部6による撮影時に被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を照射するようになっている。光源としては、蛍光ランプ、白熱球、LEDランプ又はレーザーなどを用いることができる。特に、本実施形態のようにシャワーノズル4に照明部7を設ける場合は、光源として小型で高効率かつ種類が豊富なLEDランプを用いることが望ましい。
・・・
【0052】
また、画像撮影部6のカメラレンズのメンテナンス(洗浄など)は、シャワーノズル4から噴出される水によって行う。具体的には、シャワーノズル4のノズル孔5の位置及び方向を自動的に変更できるように構成しておき、トイレの使用後にノズル孔5の方向をシャワーノズル4の先端部に向けて水を噴出させることによって、カメラレンズを洗浄する。また、洗浄時は水・お湯ではなく、洗浄液を使ってもよい。また、便器3の縁3bに取り付けた画像撮影部6のカメラレンズの洗浄も、ノズル孔5をカメラレンズに向けて行う。
・・・
【0054】
便器3の水溜り部3aの底部に連通する排水孔3dの終端には、小便の排泄により排水孔3dから排水された水量を計測する流量測定部8としての流量計が設けられている。
・・・
【0061】
図1に示すように、データ検出装置1は制御部15を備えている。制御部15には外部通信部16、画像撮影部6、照明部7、流量測定部8、ユーザインターフェイス部12、検知部13、メモリ部17、データ処理・解析部18、パラメータ設定・管理部19、データ蓄積部20及び表示部21が電気的に接続されている。
・・・
【0075】
メモリ部17は、RAM、ROM、DIMMなどから構成され、データ処理・解析部18などにおいて必要なデータをデータ蓄積部20などから転送して一時的に蓄えることにより、データ検出装置1を高速かつ安定に動作させるようになっている。また、本実施形態のメモリ部17は、動画処理をコマ落ちなくリアルタイムで実行できる程度の容量が必要である。
・・・
【0081】
また、データ処理・解析部18は、排泄物の画像解析により、排泄物が大便か否かを判断するようになっている。例えば、便器3の水溜り部3aに排泄された排泄物の画像解析を行う際に、水溜り部3aの水面に対応する画像部分の濃度変化を追跡し又はヒストグラムを作成して、水面の反射濃度に対応する値(使用前のデータを参照又は閾値を予め設定しておく)が所定値以上であれば排泄物は大便と推定する。それ以外は、小便と推定する。
・・・
【0083】
また、データ処理・解析部18は、大便の画像について以下のように解析を行う。
【0084】
すなわち、データ処理・解析部18は、排泄物が大便であると判断した場合は、大便の画像解析により、便が排出されるときの便の形状や性状、色を計測するようになっている。また、その際、肛門の状態を定量化するようになっている。これにより、出血や炎症、痔などの疾病の存在を確認することが可能となる。
【0085】
大便の形状・性状の計測としては、例えば、動画像における排泄時の同点追跡により、大便の排出速度や長さ・大きさを計測し、そのデータから便の固さを推定する。そして、予め作成した大便の排出速度、固さ又は大きさと大便のスケールとの対応テーブルを用いて、便の形状・性状を抽出するようになっている。
【0086】
大便のスケールとしては、例えば、大便を木の実のようなコロコロした硬い塊の便(兎糞便)、短いソーセージのような塊の便(塊便)、表面にひび割れのあるソーセージのような便、表面がなめらかで柔らかいソーセージ、あるいは蛇のようなとぐろを巻く便(普通便)、はっきりとした境界のある柔らかい半分固形の便(軟便)、境界がほぐれてふわふわと柔らかいお粥のような便(泥状便)又は塊のない水のような便(水様便)に分類するブリストル便性状スケールなどがある。
・・・
【0090】
また、データ処理・解析部18は、小便の画像について以下のように解析を行う。
【0091】
すなわち、データ処理・解析部18は、排泄物が小便であると判断した場合は、画像撮影部6から、便器3の水溜り部3aに溜まっている小便液に1種以上の照明光を照射し、その反射光または透過光を受光して得られた画像(透過光の場合は、水溜り部3aに設置された画像撮影部6により撮影画像)及び反射光・透過光データを得て、それらのデータを処理することにより小便内成分を計測するようになっている。
【0092】
すなわち、画像撮影部6及び照明部7の距離と、小便の排泄前後の反射光又は透過光強度(又は濃度)の差分量とを用いて、分析化学における分光吸光度測定法などを元にして、照明光の波長に対応する小便内成分を抽出することが可能である。また、画像解析により得られた計測値と、実際の診断で用いられる指標値とを対応付けたテーブルを予め作成して、計測値に対応する指標値を導出するようにしてもよい。
【0093】
この際、水溜り部3aに溜まっている水量、排泄された小便量及び排泄前の水の反射度又は透過度が高精度に把握されていることが望ましい。そこで、便器3の排水孔3dの終端に設置した流量測定部8(流量計など)により、小便の排泄によって排水された水量を計測することで小便の排泄量を計測しておく。また、水溜り部3aに溜められる水量は、便器3の内部形状や水流制御などの仕様により予め計算することができる。
【0094】
また、照明部7により1452nm、1948nmなどの狭帯域光その他分析化学において公知とされる波長帯域の光を照明して得られた画像を解析することにより、尿糖(グルコース)の分析を行うことが可能である。
【0095】
また、照明部7によりヘモグロビンの存在を抽出するのに効果的な赤~近赤外域の照明光(例えば、660nm、805nm、880nmを中心帯域とする狭帯域光)その他分析化学において公知とされる波長帯域の光を照明して得られた画像を解析することにより、血尿(ヘモグロビン)の分析を行うことが可能である。
・・・
【0101】
次に、上述のデータ検出装置1を使用した本発明のデータ検出方法について、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0102】
被験者がトイレ室に入室すると、被験者の入室を検知した検知部13は、検知結果を画像撮影部6に送信する(ステップS1)。
【0103】
次に、画像撮影部6は、被験者による排泄行為前に、便器3の内部の状態を被写体として撮影し、撮影画像をデータ処理・解析部18に転送する(ステップS2)。
【0104】
続いて、画像撮影部6は、被験者による排泄行為中に、被験者の肛門とその周辺、局部とその周辺及び排泄物を含む便器3の水溜り部3aを静止画及び動画で撮影し、撮影した熱画像又は画像をデータ処理・解析部18に転送する(ステップS3)。
【0105】
続いて、画像撮影部6は、動画の所定時間におけるフレーム間変化が予め設定された閾値以下となると、排泄が終了したものと検知して撮影を終了する(ステップS4)。
次に、画像撮影部6で撮影された熱画像及び画像から被験者の肛門、局部及び排泄物を抽出して、排泄内容などの解析を行う(ステップS5)。
【0106】
具体的には、データ処理・解析部18は、排泄物の画像解析により、排泄物が大便か否かを判断する(ステップS6)。例えば、便器3の水溜り部3aに排泄された排泄物の画像解析を行う際に、水溜り部3aの水面に対応する画像部分の濃度変化を追跡し又はヒストグラムを作成して、水面の反射濃度に対応する値が所定値以上であれば、排泄物は大便と推定し、それ以外は小便と推定する。
【0107】
続いて、排泄物が大便であると判断した場合は、画像解析により、大便の形状や性状、色を計測する(ステップS7)。また、その際、肛門の状態を定量化する。これにより、出血や炎症、痔などの疾病の存在を確認することが可能となる。
【0108】
一方、排泄物が小便であると判断した場合は、画像撮影部6から、便器3の水溜り部3aに溜まっている小便液に1種以上の照明光を照射し、その反射光または透過光を受光して得られた画像及び反射光・透過光データを得て(ステップS8)、それらのデータを処理することにより小便内成分を計測する(ステップS9)。
【0109】
また、データ処理・解析部18は、画像解析により推定された量や性状などのデータを、被験者の生体情報や体調情報が管理されている外部装置14に自動的に転送する(ステップS10)。」、
「
[図:0001413311000003.jpg]
」、
「
[図:0001413311000004.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明・技術的事項
上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲2には、次の発明・技術的事項(以下「甲2発明」・「甲2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定根拠となる引用文献2の記載箇所を示す。
「被験者の排泄物を画像として撮影し、この画像の解析によって被験者の健康状態を推定するデータ検出装置1であって、(【0037】)
データ検出装置1は、制御部15を備え、制御部15には外部通信部16、画像撮影部6、照明部7、流量測定部8、ユーザインターフェイス部12、検知部13、メモリ部17、データ処理・解析部18、パラメータ設定・管理部19、データ蓄積部20及び表示部21が電気的に接続され、(【0061】)
トイレ2の便器3における開口部後方の内壁に設けられたシャワーノズル4の先端部付近の側面には、画像撮影部6としてカメラが設けられ、(【0039】、【0040】)
画像撮影部6は、被験者の排泄物を撮影するものであり、デジタル画像の取得が可能なCCDカメラ、CMOSカメラなどにより構成され、(【0041】)
シャワーノズル4の先端部付近であって画像撮影部6の近傍には、照明部7が備えられ、(【0042】)
照明部7は光源を備えており、画像撮影部6による撮影時に被験者の排泄物を照射するようになっており、(【0043】)
画像撮影部6は、カメラレンズを備え、(【0052】)
便器3の排水孔3dの終端には、小便の排泄により排水孔3dから排水された水量を計測する流量測定部8が設けられ、(【0054】)
メモリ部17は、データ処理・解析部18などにおいて必要なデータをデータ蓄積部20などから転送して一時的に蓄え、(【0075】)
画像撮影部6は、被験者による排泄行為前に、便器3の内部の状態を被写体として撮影し、撮影画像をデータ処理・解析部18に転送し、(【0103】)
続いて、画像撮影部6は、被験者による排泄行為中に、被験者の排泄物を含む便器3の水溜り部3aを静止画及び動画で撮影し、撮影した画像をデータ処理・解析部18に転送し、(【0104】)
続いて、画像撮影部6は、動画の所定時間におけるフレーム間変化が予め設定された閾値以下となると、排泄が終了したものと検知して撮影を終了し、(【0105】)
次に、画像撮影部6で撮影された画像から被験者の排泄物を抽出して、排泄内容などの解析を行い、(【0105】)
具体的には、データ処理・解析部18は、排泄物の画像解析により、水溜り部3aの水面に対応する画像部分の濃度変化を追跡し又はヒストグラムを作成して、水面の反射濃度に対応する値(使用前のデータを参照)が所定値以上であれば、排泄物は大便と推定し、それ以外は小便と推定し、(【0106】、【0081】)
続いて、排泄物が大便であると判断した場合は、画像解析により、大便の形状や性状、色を計測し、大便の形状・性状の計測としては、大便の排出速度や長さ・大きさを計測し、そのデータから便の固さを推定し、(【0107】、【0085】)
一方、排泄物が小便であると判断した場合は、画像撮影部6から、便器3の水溜り部3aに溜まっている小便液に1種以上の照明光を照射し、その反射光または透過光を受光して得られた画像及び反射光・透過光データを得て、それらのデータを処理することにより小便内成分を計測し、尿糖(グルコース)や血尿(ヘモグロビン)の分析を行うことが可能である、(【0108】、【0094】、【0095】)
データ検出装置1。」
3 甲11について
甲11には、以下の記載がある。
「【0027】便座暖房ヒータ3、人体局部洗浄装置4の洗浄水吐出機構と温水ヒータ、人体局部乾燥装置、脱臭ファン、便蓋駆動装置6、室内暖房ヒータ7等の複数の便器周辺機器の作動を制御する便器周辺機器制御装置8がトイレルーム1内に配設されている。便器周辺機器制御装置8は、便座2に取り付けられた画像入力手段81を有している。便器周辺機器制御装置8は、画像入力手段81から入力された現時点でのトイレルーム1の画像を記憶する現画像メモリ82aと、予め入力された人物が居ない状態でのトイレルーム1の画像を記憶する背景画像メモリ82bと、トイレルーム1の現画像から背景画像を差し引く演算を行う差分演算部82cとにより構成される人体画像抽出手段82を有している。」
4 甲12について
甲12には、以下の記載がある。
「【0027】
ここで、三次元モデルの具体的な作成方法について以下に説明する。3Dモデル作成手段12には、例えばVRMLなどの仮想三次元幾何学形状設計言語を用いて作成された人体形状を模した基本人体モデルのデータが予め保存されている。また3Dモデル作成手段12には、各々のCCDカメラ11aのID番号および設置位置情報と、基本人体モデルに相当する人物を各CCDカメラ11aで撮影したと仮定した場合の基本人体モデルを構成するポリゴンの頂点の位置座標情報と、被測定者Bがいない状態で各CCDカメラ1によって撮影された背景画像の画像データとが登録されている。而して、3Dモデル作成手段12では、身体形状取得手段11からあるCCDカメラ11aで撮影された画像データとそのCCDカメラ11aのID番号が対になって入力されると、入力されたID番号をもとに同じCCDカメラ11aで撮影された背景画像を読み込み、入力された画像データと背景画像との差分演算を行うことによって、CCDカメラ11aで撮影した画像から被測定者Bの身体部分を認識して分離する。3Dモデル作成手段12は、身体形状取得手段11から入力された全ての画像データについて、被測定者Bの身体部分を切り出す処理を行うと、切り出された身体部分の画像をテンプレートにして基本人体モデルを構成するポリゴンの頂点の位置座標を修正し、被測定者Bの体型を模した三次元モデルを作成する。また3Dモデル作成手段12では、上述の処理を行って切り出した身体部分の画像データから、へそ、乳首、脇、肘などの特定点の位置座標情報を、画像内の各画素の色および輝度の情報をもとに取得し、各特定点の位置座標情報と、上述の処理で作成した三次元モデルとを用いて胴囲、胸囲、腕回りの太さなどの体型データを算出し、得られた体型データと三次元モデルとを履歴記憶手段14および画面表示手段15に出力する。」
5 甲16号証(特表2012-507646号公報)について
申立人は、令和6年2月28日提出の意見書において、新たに甲16号証(特表2012-507646号公報、以下「甲16」という。)を提出している。甲16には、図面とともに以下の記載がある。
「【0061】
メカニズム2:
(a)カメラ16、17、または18により取り込んだリアルタイムイメージとイメージ基準との比較が、便器92中の、液体の流れや、水の色の軽い変化や、軽い負荷のトイレットペーパーや、他の少量のごみ/排泄物、および/または、光度の突然の低下を示しているときに、排泄物の認識のために2Dイメージ処理を使用する。制御ユニット01は、光が回復してから6~8秒以内に、または、取り込んだイメージが変化していない状態になったときに、液体の排泄物のフラッシュ手順32を実行する。
【0062】
(b)カメラ16、17、または18により取り込んだリアルタイムイメージとイメージ基準との比較が、便器92中の、水の色の著しい変化と固形の排泄物の累積、および/または、光度の突然の低下を示しているときに、排泄物の大きさの推定のために2Dイメージ処理を使用し、制御ユニット01は、光が回復してから6~8秒以内に、固形の排泄物のフラッシュ手順33を実行する。
【0063】
(c)カメラ16および/または17により取り込んだリアルタイムイメージとイメージ基準との比較が、便器92中の固形の排泄物の累積、および/または、光度の突然の低下を示しているときに、3Dモデル発生モジュール62により、固形の排泄物の3Dモデルを構築し、排泄物の容積的な大きさを推定し、排泄物の容積的な大きさを使用して、光度が回復してから6~8秒以内に、診断フラッシュ手順36を実行するために必要とされるフラッシュ量を計算する。」、
「【0071】
図5Aにおいて表されているように、インテリジェントフラッシングシステム02において使用される1つの制御方法が、プロセス500である。化粧室50、51、および52中の便器92から取り込まれたリアルタイムイメージが、フラッシュメカニズム起動の決定のために処理される。処理されたリアルタイム取り込みイメージおよび/または情報45にしたがって、便器92が直ちに使用される確率が高いことを制御ユニット01が認識したときに、ステップ510においてプロセス500が始まる。1つ以上の認可された関係者により予めセットされた命令の通りに、異なる時間の間にステップ515において取り込まれた、便器92の好ましい便器ボウルの状態の選択されたリアルタイムイメージが、ステップ525においてイメージ基準として記憶され、特定的に/周期的に新しくされる。ステップ530では、ステップ515において取り込まれたリアルタイムイメージが、固形の排泄物の状態における相違、固形の排泄物の汚点、ごみ、およびサイズの検出等に関して、イメージ基準と比較される。フラッシュに対する必要性を認識したときに、制御ユニット01は、便器92の光学的状態の性質にしたがって、フラッシュ手順32および33の中から選択する。診断フラッシュ手順36の実行において、制御ユニット01は、3Dモデル発生モジュール62を使用して、固形の排泄物に対する3Dモデルを生成させ、推定された大きさに基づいて、排泄物の総量を除去するのに必要とされるフラッシュ量を計算する。プロセス500は、ステップ535に進み、ここで、不満足なフラッシュ実行評価結果が原因の連続的なフラッシュ起動の回数に対するカウントが追跡される。連続的なフラッシュ起動の回数が、予めセットされた制限を超えていなかった場合に、プロセス500はフラッシュメカニズムの起動のためにステップ540に進む。連続的なフラッシュ起動がステップ535において制限を超えていた場合に、あるいは、ステップ515においてイメージが取り込まれなかったときに、インテリジェントフラッシングシステム02および/または便器92の点検のためのアラート40が、ビル管理者に送られる。図4における3Dモデリングステップは、診断フラッシュ手順36が実行されるときに、プロセス500のステップ530において使用される。」、
「【図5A】
[図:0001413311000005.jpg]
」
第7 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「便の色」及び「腸内状態測定装置」は、本件発明1の「物質のパラメータ」及び「バイオモニタリング・デバイス」に相当する。
甲1発明の「ユーザ」が「便器内」に「排泄」した「便の色」を「解析する」「腸内状態測定装置」は、本件発明1の「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイス」に相当する。
イ 甲1発明の「照明部」は、本件発明1の「電磁放射源」に相当する。
甲1発明の「便器内部を明るくする照明部」は、本件発明1の「(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源」に相当する。
ウ 甲1発明の「便」及び「CCDカメラ」は、本件発明1の「検体化学物質」及び「センサ」に相当する。
甲1発明の「便器内」の「便」を「撮影」する「CCDカメラ」と、本件発明1の「ii)前記トイレの前記便器内の」「検体化学物質を検出する、前記物質上のレンズを含むセンサ」とは、「(ii)前記トイレの前記便器内の」「検体化学物質を検出する、前記物質上のセンサ」の点で一致する。
エ 甲1発明の「洗浄ノズル」は、本件発明1の「シャワーノズル」に相当する。
甲1発明の「照明部を備え」る「CCDカメラは、洋式便器の後部に固定された連結部材において洗浄ノズルの近くに設置され、」は、本件発明1の「前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にあり(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、」に相当する。
オ 甲1発明の「画像解析部」は、本件発明1の「計算ユニット」に相当する。
また、甲1発明の「CCDカメラ」は、「撮影した便の画像信号を画像解析部に送」ることから、甲1発明が、「CCDカメラ」から「画像信号を画像解析部に送」るための伝送ユニットを備えていることは明らかである。
よって、甲1発明は、本件発明1の「前記デバイスが、前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニット」に相当する構成を備えているといえる。
(2)一致点・相違点
本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。
(一致点)
「ユーザによるトイレの便器内に排出される物質のパラメータを測定するバイオモニタリング・デバイスであって、
(i)前記物質上の電磁放射源であって、前記トイレの前記便器内に電磁放射を放出する電磁放射源と、
(ii)前記トイレの前記便器内の電磁放射又は検体化学物質を検出する、前記物質上のセンサと
を備え、
前記電磁放射源及び前記センサが、前記トイレの座部の着座する部分の後方にある(ただし、前記電磁放射源及び前記センサがシャワーノズルにある場合を除く)、デバイスであって、
前記デバイスが、前記センサからのデータを伝送する伝送ユニットであって、無線、光、又は有線通信を介して計算ユニットにデータを伝送する伝送ユニットを備える、デバイス。」
(相違点1)
本件発明1はセンサが「レンズを含」むのに対し、甲1発明は「CCDカメラ」(本件発明1の「センサ」に相当)が、レンズを含むか不明であり、それに伴って「レンズが、前記トイレの前記座部が持ち上げられたときに、前記トイレの前記便器に対して位置が変わらないように配置されている」かも不明である点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記デバイスが、排泄物が前記便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、前記訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、前記ベースライン・サンプル画像から空の前記便器のベースライン・モデルを取得することを含む、」のに対し、甲1発明は、このような構成を備えているか不明である点。
(3)判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
ア 上記相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明でない。
イ 甲2(第6の2「甲2技術的事項」を参照)には、「画像撮影部6は、被験者による排泄行為前に、便器3の内部の状態を被写体として撮影し、撮影画像をデータ処理・解析部18に転送し、(【0103】)」「データ処理・解析部18は、排泄物の画像解析により、水溜り部3aの水面に対応する画像部分の濃度変化を追跡し又はヒストグラムを作成して、水面の反射濃度に対応する値(使用前のデータを参照)が所定値以上であれば、排泄物は大便と推定し、それ以外は小便と推定」すること(【0106】、【0081】)が記載されている。
また、申立人が上記相違点2における本件発明1の構成は周知技術(甲11、甲12)であるとして提示した甲11(【0027】)には、「便器周辺機器制御装置8は、画像入力手段81から入力された現時点でのトイレルーム1の画像を記憶する現画像メモリ82aと、予め入力された人物が居ない状態でのトイレルーム1の画像を記憶する背景画像メモリ82bと、トイレルーム1の現画像から背景画像を差し引く演算を行う差分演算部82cとにより構成される人体画像抽出手段82を有している」ことが記載され(第6の3参照)、甲12(【0027】)には、「3Dモデル作成手段12では、身体形状取得手段11からあるCCDカメラ11aで撮影された画像データとそのCCDカメラ11aのID番号が対になって入力されると、入力されたID番号をもとに同じCCDカメラ11aで撮影された背景画像を読み込み、入力された画像データと背景画像との差分演算を行うことによって、CCDカメラ11aで撮影した画像から被測定者Bの身体部分を認識して分離」し、「身体形状取得手段11から入力された全ての画像データについて、被測定者Bの身体部分を切り出す処理を行うと、切り出された身体部分の画像をテンプレートにして基本人体モデルを構成するポリゴンの頂点の位置座標を修正し、被測定者Bの体型を模した三次元モデルを作成する」ことが記載されている(第6の4参照)。
しかしながら、上記記載のとおり、甲2、甲11、甲12のいずれにも、上記相違点2における本件発明1の構成である、デバイスが「訓練期間を取り」、「前記訓練期間が・・・ベースライン・サンプル画像を取得し・・・空の前記便器のベースライン・モデルを取得すること」について記載も示唆もされていない。また、当該構成は、提示された他の甲号証(甲3の【0032】、【0034】、【0044】、図1~3・甲4の【0021】、図2、図4・甲5の【0025】、【0027】、図2・甲6の【0031】、【0034】、図3、図4・甲7の【0035】、図8・甲8の【0022】、【0033】~【0039】、図1、図7・甲9の【0020】、【0023】、【0029】、図3、図6・甲10の【0004】、【0018】・甲13の【0103】・甲14の【0011】・甲15の【0014】、【0017】、図2)のいずれにも記載も示唆もされておらず、周知技術であるといえる証拠も発見されていない。
そして、上記相違点2における本件発明1の構成は、本願明細書の段落【0087】に記載された「そのために、排泄物がトイレ便器内にない訓練期間中に、サンプル画像の訓練期間が設けられる。これらのベースライン画像は、移動平均ベースラインを生成するロバストな背景モデルを作成する」との効果を奏するものといえる。
そうすると、甲1発明において、甲2~15に記載された技術的事項を踏まえても、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
ウ また、甲2発明を主引用発明とした場合であっても、上記イのとおり、本件発明1と甲2発明との間で上記相違点2は実質的な相違点として存在することになるから、本件発明1は甲2発明でない。そして、上記イのとおり、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1、3~15のいずれにも記載も示唆もされていないことから、甲2発明において、甲1、3~15に記載された技術的事項を踏まえても、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(4)令和6年2月28日提出の意見書について
申立人は、新たに甲16(第6の5参照)を提出し、「この甲16号証の記載から「デバイスが、排泄物が便器内にないときにデータが分析される訓練期間を取り、訓練期間が、排泄物が前記便器内にないときのベースライン・サンプル画像を取得し、ベースライン・サンプル画像から空の便器のベースライン・モデルを取得すること」という構成は、甲2号証に記載されていると共に、甲11、12、16号証に記載された周知技術であるということもでき、訂正後の各独立請求項に記載された発明が進歩性を欠如することは明らかである。」(第6頁のf.を参照)と主張する。
しかし、申立人が当該意見書において提出した甲16には、「インテリジェントフラッシングシステム02において使用される1つの制御方法」として、「便器92から取り込まれたリアルタイムイメージが、フラッシュメカニズム起動の決定のために処理され」、「処理されたリアルタイム取り込みイメージおよび/または情報45にしたがって、便器92が直ちに使用される確率が高いことを制御ユニット01が認識したときに、」「異なる時間の間に」「取り込まれた、便器92の好ましい便器ボウルの状態の選択されたリアルタイムイメージが、」「イメージ基準として記憶され、特定的に/周期的に新しくされ」、「取り込まれたリアルタイムイメージが、固形の排泄物の状態における相違、固形の排泄物の汚点、ごみ、およびサイズの検出等に関して、イメージ基準と比較され」、「フラッシュに対する必要性を認識したときに、制御ユニット01は、便器92の光学的状態の性質にしたがって、フラッシュ手順32および33の中から選択する」ことが記載されているのみで、本件発明1における当該構成について記載も示唆もされていない。
よって、甲16が本件発明1における当該構成を開示していないことは前述のとおりであるから、甲16の記載を踏まえても、上記(3)イで検討したとおり、本件発明1における当該構成が周知技術であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)小括
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明でなく、甲1発明及び甲2~15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1は、甲2発明でなく、甲2発明及び甲1、3~15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~8、11~15及び18について
本件発明2~8、11~15及び18は、いずれも上記相違点2に係る本件発明1の構成を含む発明である。
したがって、本件発明2~8、11~15及び18は、上記1と同様の理由により、甲1発明でなく、甲1発明及び甲2~15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2~8、11~15及び18は、上記1と同様の理由により、甲2発明でなく、甲2発明及び甲1、3~15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 まとめ
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)
上記第7のとおりであるから、請求項1、2、5、8及び13に係る発明は、甲1に記載された発明ではない。また、請求項1~8、11~15及び18に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は採用できない。
2 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)
上記第7のとおりであるから、請求項1、2、5、8、13及び14に係る発明は、甲1に記載された発明ではなく、請求項1~3、5、8、11及び13~15に係る発明は、甲2に記載された発明ではない。また、請求項1~8、11~15及び18に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1~3、5、8、11及び13~15は、甲2に記載された発明に基づいて、請求項4、6、7、12及び18は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は採用できない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1~8、11~15及び18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~8、11~15及び18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項9、10、16及び17に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項9、10、16及び17に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700649