特許異議申立
2025-700985
乳癌検査器具、乳癌検査装置、乳癌検査セット、及び乳癌検査システム
- 審判番号
- 2025-700985
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-526984
- 登録番号
- 7696080
- 請求日
- 2025年10月10日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ソニーグループ株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【異議申立人】帯包 浩司
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 遠藤 直恵
- 分類
- P1652.113-Y (A61B) / P1652.121-Y (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7696080号発明「乳癌検査器具、乳癌検査装置、乳癌検査セット、及び乳癌検査システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7696080号の請求項25、29及び32に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7696080号の請求項1~36に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)5月21日(優先権主張 令和2年5月27日)を国際出願日とする出願であって、令和7年6月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項25、29及び32に係る特許に対し、令和7年10月10日に特許異議申立人帯包浩司(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年11月5日に特許異議申立書を補正対象とする手続補正書(方式)が提出されたものである。
なお、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を以下「申立書」という。
第2 本件発明及び本件明細書等
1 本件発明について
特許第7696080号の請求項1~36に係る特許のうち、特許異議の申立てがされた請求項である請求項25、29及び32の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項25、29及び32に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項25】
超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニットと、
前記測定ユニットを駆動する駆動部と、
前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器と、
前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する検出部と、
を備えた乳癌検査装置であって、
前記検出部は、方位センサにより、前記乳癌検査装置の設置方向を特定し、前記設置方向に応じて前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する、
乳癌検査装置。」(以下「本件発明25」という。)
「【請求項29】
超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニットと、
前記測定ユニットを駆動する駆動部と、
前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器と、
を備えた乳癌検査装置であって、
前記乳癌検査装置は、前記カバー容器が前記乳房の少なくとも一部を覆うように設置され、
前記乳房の形状に応じて前記プローブを支持するアームの角度を調整する制御部を備えた
乳癌検査装置。」(以下「本件発明29」という。)
「【請求項32】
請求項18、19、21~25、27~30のいずれか一項に係る乳癌検査装置と、
前記超音波ビームの反射信号に基づき画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データを表示する表示部と
を備えた乳癌検査システム。」(以下「本件発明32」という。)
ここで、請求項25と請求項29は独立請求項であるものの、請求項25に係る乳癌検査装置と請求項29に係る乳癌検査装置とでは、共通の発明特定事項を有する乳癌検査装置であることから、共通の発明特定事項には同じ符号(括弧書きの大文字アルファベット)を付し、請求項25と請求項29の共通しない各々の発明特定事項には、それぞれ別々の符号(請求項の番号と小文字アルファベット)を付して、以下再掲すると次のとおりである。
「【請求項25】
(A)超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニットと、
(B)前記測定ユニットを駆動する駆動部と、
(C)前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器と、
(25a)前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する検出部と、
(D)を備えた乳癌検査装置であって、
(25b)前記検出部は、方位センサにより、前記乳癌検査装置の設置方向を特定し、前記設置方向に応じて前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する、
(D)乳癌検査装置。」
「【請求項29】
(A)超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニットと、
(B)前記測定ユニットを駆動する駆動部と、
(C)前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器と、
(D)を備えた乳癌検査装置であって、
(29a)前記乳癌検査装置は、前記カバー容器が前記乳房の少なくとも一部を覆うように設置され、
(29b)前記乳房の形状に応じて前記プローブを支持するアームの角度を調整する制御部を備えた
(D)乳癌検査装置。」
「【請求項32】
請求項18、19、21~25、27~30のいずれか一項に係る乳癌検査装置と、
前記超音波ビームの反射信号に基づき画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データを表示する表示部と
を備えた乳癌検査システム。」
2 本件明細書等について
願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(本ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、被検者自身で乳房の内部状態の測定を行うことを可能にする乳癌検査器具、乳癌検査装置、乳癌検査セット、胸部測定方法及び乳癌検査システムを提供する。」
(本イ)「【0035】
図4(A)は、本開示の実施形態に係る乳癌検査装置(測定装置)30の全体の外観を示した斜視図である。図4(B)は、乳癌検査装置30を真上から見た平面図である。図4(C)は、乳癌検査装置30を底面から見た外観斜視図である。図4(D)は、図4(B)に示す矢印Yの方向から乳癌検査装置30を見た側面図である。
【0036】
図4の乳癌検査装置30は左乳房及び右乳房に共通に使用可能に構成されている。乳癌検査装置30は、カバー容器40と、カバー容器40内に配置される測定ユニット50(図4(C))と、測定ユニット50を制御する駆動制御システム(後述する図10参照)とを含む測定装置である。測定ユニット50は、本体部51と、プローブ(探触子)52と、アーム53(後述する図6参照)とを含む。
【0037】
カバー容器40は、測定ユニット50を収容する側が凹状のカップ形状を有する。測定時、カバー容器40の内側には、測定シートが装着された乳房の少なくとも一部が収容される。」
そして、図4として以下の図面が記載されている。
「【図4】
[図:0001433115000001.jpg]
」
(本ウ)【0040】
図5に示すように、モータ58(図6参照)の軸56が、測定ユニット50の本体部51に直接又はギア57等を介して結合されている。モータの軸56及びギア57等が伝達機構を構成する。この伝達機構を介して、モータの駆動力が本体部51に伝達し、本体部51が、プローブ52と一体となって、軸56を中心として回転する。すなわち、モータ58が駆動されることで、測定ユニット50がモータの軸56を中心として回転する(図5の矢印参照)。
【0041】
図6に示すように、カバー容器40の内部の天井部又はその近傍に凹状部分59を設け、この凹状部分59に、モータ58を格納する筐体が凸状部分として差し込まれている。天井部に対し反対側に延びるモータ58の軸56が、本体部51に結合されている。これにより、モータ58を天井部で固定及び支持しながら、測定ユニット50を回転させることができる。モータ58は駆動制御システム60の一部を構成している。駆動制御システム60は測定ユニット50に電気的に接続されており、測定ユニット50を制御可能である。」
「【0042】
図6におけるプローブ52は、アーム53によって本体部51に結合されている。本体部51はアーム53との結合部(関節部)は、駆動制御システム60により制御可能でもよい。これによりアーム53の角度を調整してもよい。アーム53の角度を調整することで、プローブ52と乳房とを密着させることができる。また、アーム53は、伸縮可能に構成されている。例えばアーム53は外側アームと、外側アームに内包される内側アームとを含み、内側アームを移動させることでアーム53の長さを調整できる。アーム53の長さの調整の制御は、駆動制御システム60が行う。アーム53の長さを調整することで、プローブ52の位置を、図6の位置から、回転の半径方向、すなわち本体部51から遠ざかる方向に移動可能(スライド可能)である。」
そして、図5及び6として以下の図面が記載されている。
「【図5】
[図:0001433115000002.jpg]
【図6】
[図:0001433115000003.jpg]
」
(本エ)【0045】
カバー容器40には、乳房に装着された測定シート10との位置合わせを行うためのマーク(シート位置調整部)42A、42Bが設けられている。マーク42Aは左乳房用、マーク42Bは右乳房用である。マーク42A、42Bは、透過部材又は開口部となっている。但し、マーク42A、42Bは、透過部材又は開口部であることに制限されず、特定の色で着色された直線状のマークでもよい。マーク42A、42Bが、透過部41と一体に形成されていてもよい。
【0046】
左乳房の測定を行うときは、左乳房用の測定シート10(図1参照)を左乳房に装着し、カバー容器40のマーク42Aが、測定シート(図1参照)の基準マーク14と一致するように、カバー容器40を配置する。右乳房の測定を行うときは、右乳房用の測定シートを右乳房に装着し、カバー容器40のマーク42Bが、測定シートの基準マークと一致するように、カバー容器40を配置する。
【0047】
後述するように駆動制御システム60には乳癌検査装置30が設置された向きを検知する方向センサ(例えば、ジャイロ又は磁気センサ等)が搭載されている。駆動制御システム60は、マーク42Aが上を向くように(地面に対し反対方向を向くように)配置されたときは、左乳房の測定を行うことを検知する。駆動制御システム60は、マーク42Bが上を向くように配置されたときは、右乳房の測定を行うことを検知する。このように駆動制御システム60は、乳癌検査装置30が設置された向きに基づき、左乳房及び右乳房のいずれの検査を行うのかを検知する。」
そして、図1として以下の図面が記載されている。
「【図1】
[図:0001433115000004.jpg]
」
(本オ)「【0049】
図9は、被検体の左乳房の測定を行う様子を示している。測定シート10が装着された左乳房に乳癌検査装置30を被せている。測定シート10の基準マーク14に、測定ユニット50の左乳房用のマーク(シート位置調整部)42Aが位置合わせされている。被検者は乳癌検査装置30を乳房の方向に軽く押圧した状態を維持する。被検者は、この状態で測定の開始を指示する。測定の開始は、例えば測定の開始指示を操作入力部に手入力又は端末から指示信号を与えることで行う。検査では、まず駆動制御システム60はプローブの位置を第1状態に設定し1周目の走査を行う。これにより、乳頭の近傍領域を測定する。続けて、プローブの位置を第2状態とし、2周目の走査を行う。これにより、近傍領域の周囲の遠方領域を測定する。駆動制御システム60は、プローブにより測定したデータを記憶部に格納する。」
そして、図9として以下の図面が記載されている。
「【図9】
[図:0001433115000005.jpg]
」
第3 特許異議申立書における申立理由
1 申立理由の概要
申立人が、申立書において主張している申立理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人が証拠方法として提示した甲第○号証は、以下「甲○」という。
(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項25、29及び32に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項25、29及び32に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項25に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、本件特許の請求項29に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲3及び4に記載された事項に基づいて、本件特許の請求項32に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項25、29及び32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<甲号証一覧>
甲1:米国特許出願公開第2017/0311923号明細書
甲2:特開2018-183448号公報
甲3:小沢智志、外、「超音波プローブ回転走査式乳腺画像化システムの開発=効率的レビューのために=」、超音波TECHNO、2010年9-10、pp.89-92
甲4:特開2003-310614号公報
(なお、参考資料1は甲3の書誌情報を記載したものである。)
第4 甲号証の記載
1 甲1について
(1)記載事項
甲1は、タイトルが「WEARABLE ULTRASOUND SYSTEM AND METHOD」(着用可能な超音波システム及び方法)であり、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、訳文の下線は当審において付与したものである(以下同様)。
(甲1ア)「[0019] As shown in FIGS. 1A-1B and 2A-2B, an embodiment of an ultrasound system 100 can include: a scanner assembly including a transducer 110, preferably coupled to a shaft of an actuator by way of a transducer support, wherein the actuator provides rotation of the transducer support relative to a first axis 101 and/or translation of the transducer support; a housing 120 coupled to the transducer that preferably provides rotation of the transducer about a second axis 102 by way of a second actuator, wherein the first axis 101 is different from the second axis 102; a reservoir 130 of coupling medium surrounding a scanning portion of the transducer 110; a window 140, such as a membrane forming a boundary of the reservoir; a positioning portion 150, preferably configured to interface with the window for reliable and repeatable positioning of the scanner assembly relative to the body region of the user; and an electronics subsystem 160 configured to facilitate actuation of the transducer and acquisition of scanning data from the body region of the user.」
(当審訳:[0019] 図1A~1B及び図2A~2Bに示すように、超音波システム100の一実施形態は、以下の構成要素を含むことができる。すなわち、変換器支持体を介してアクチュエータのシャフトに連結された変換器110を含むスキャナアセンブリであって、アクチュエータは、変換器支持体を第1軸101まわりに回転させる、及び/又は変換器支持体を並進させる機能を有する。さらに、変換器が連結する筐体(「housing」は甲1に記載されている技術内容から「筐体」と訳す。)120であって、好ましくは第2アクチュエータを介して変換器を第2軸102まわりに回転させる機能を有し、ここで第1軸101は第2軸102とは異なる。また、変換器110の走査部を取り囲む連結媒体の貯留部130、及び貯留部の境界を形成する膜等のウィンドウ140を備える。さらに、スキャナアセンブリをユーザの身体部位に対して確実かつ再現性高く位置決めできるよう、前記ウィンドウとつながるよう構成された位置決め部150を備える。加えて、変換器の駆動及びユーザの身体部位からの走査データの取得を促進するよう構成された電子サブシステム160を備える。)
(甲1イ)「[0021] In a specific application, the system 100 can at least partially comprise a wearable form factor adapted to scanning breast tissue of a patient, in order to promote regular monitoring for early detection of breast cancer.」
(当審訳:[0021] 特定の用途として、システム100は、患者の乳房組織を走査するために適応された着用可能なフォームファクタを少なくとも部分的に備えることができ、これにより乳がんの早期発見のための定期的なモニタリングを促進することができる。)
(甲1ウ)「[0027] As shown in FIGS. 1A-1B and 2A-2D, the transducer 110 is preferably coupled to a shaft 112 or other coupler to an actuator 114, by way of a transducer support, wherein the actuator 114 provides rotation of the transducer support relative to a first axis 101. The shaft/coupler 112 preferably defines the first axis 101, and the transducer support 110 is coupled to the shaft/coupler 112 in order to provide a mechanism that produces motion of the transducer 110 in order to provide desired scanning behavior.」
(当審訳:[0027] 図1A~1B及び図2A~2Dに示すように、変換器110は、好ましくは、変換器支持体として、シャフト112又はその他の連結器を介してアクチュエータ114に連結されている。ここで、アクチュエータ114は、変換器支持体を第1軸101まわりに回転させる。シャフト/連結器112は、好ましくは第1軸101を規定し、変換器支持体110は、シャフト/連結器112に連結されており、変換器110を所望の走査動作を行えるように動作させる機構となるように、変換器支持体110は、シャフト/連結器112に連結されている。)
(甲1エ)「[0032] The system 100 can additionally or alternatively include position sensors (e.g., mechanical stops, optical encoders, proximity sensors, etc.). The position sensors can enable (or assist) determination of transducer position, actuator position (e.g., rotational actuator, linear actuator, etc.), user tissue position (e.g., alignment relative to elements of the system such as the housing, transducer, etc.), and/or position of any other suitable elements of the system. In one example, each actuator of the system 100 can be associated with a corresponding encoder, enabling determination of the actuator positions (e.g., and thereby of the transducer position relative to the housing). In a second example, the system can include optical detectors configured to image and analyze the user's tissue (e.g., detecting nipple and/or areola alignment with respect to the system). However, the system can include any other suitable position sensors in any suitable arrangement.」
(当審訳:[0032] システム100は、追加的又は代替的に、位置センサ(例えば、機械的ストッパ、光学エンコーダ、近接センサ等)を含んでもよい。これらの位置センサは、変換器の位置、アクチュエータの位置(例えば、回転アクチュエータ、リニアアクチュエータ等)、ユーザの組織の位置(例えば、筐体や変換器等のシステム要素に対する整合関係)、及び/又はシステム内のその他の適切な要素の位置を特定又は補助的に特定することを可能にする。一例として、システム100の各アクチュエータには対応するエンコーダが関連付けられており、これによりアクチュエータの位置(例えば、それにより変換器のハウジングに対する位置)を特定することができる。別の例として、システムはユーザの組織を撮像及び解析するよう構成された光学検出器(例えば、システムに対する乳頭及び/又は乳輪の整合を検出する等)を含んでもよい。しかしながら、システムは、その他の適切な位置センサを、任意の適切な配置で含むこともできる。)
(甲1オ)「[0034] The housing 120 is coupled to the transducer and functions to perform one or more of the following : provide rotation of the transducer about a second axis 102, wherein the first axis 101 is different from the second axis 102 ; protect and/or seal elements (e.g., electronic elements, as described in more detail below) of the system within a protective structure ; enhance usability by a user in terms of form factor ; and interface with other portions of the system 100 that are directly coupleable to the user (e.g., in modular formats of the system 100). The housing is preferably mostly substantially rigid in order to provide protection for internal components in a robust manner.」
(当審訳:[0034] 筐体120は、変換器に連結され、以下の1つ又は複数を実行するように機能する。:第2軸102のまわりに変換器を回転させる。ここで、第1軸101は第2軸102と異なるものである。:保護構造のもとでシステムの素子(例えば、下記に述べるような電子素子)を保護する及び/又はシールする。:フォームファクタの点でユーザの使い勝手を高め、そして、ユーザに直接結合可能とされたシステム100の他の部分とインタフェースする(例えば、システム100のモジュール式フォーマット)。堅固な方法で内部部品の保護のために、筐体は、堅固な方法で内部部品を保護するために、好ましくは、大部分が実質的に硬いものである。)
(甲1カ)「[0047] ・・・.However, to adjust the size and/or shape of the scan volume, one or more of the following system configurations can be implemented: the transducer beam can be configured to sweep over any other suitable range (e.g.,+/-30°to+/-90°); a tilt angle of the first axis of rotation 101 relative to the second axis 102 can be adjusted dynamically (e.g., using an actuator to adjust the tilt angle)」
(当審訳:[0047] ・・・。しかしながら、走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するために、以下の1つまたは複数のシステム構成を実施してもよい。:変換器のビームを、他の任意の適切な範囲(例えば、±30°~±90°)にわたって掃引するよう構成する。;第1回転軸101の第2回転軸102に対する傾斜角を(例えば、傾斜角を調整するアクチュエータを用いて)動的に調整する。)
(甲1キ)上記図1A~1B及び図2A~2Dとして、以下の図面が記載されている。
図1A
「
[図:0001433115000006.jpg]
」
Tissure:(乳房)組織
図1B
「
[図:0001433115000007.jpg]
」
図2A
「
[図:0001433115000008.jpg]
」
図2B
「
[図:0001433115000009.jpg]
」
図2C
「
[図:0001433115000010.jpg]
」
図2D
「
[図:0001433115000011.jpg]
」
(甲1ク)また、システム100の具体的な写真図として以下のFIG.8F(図8F)及びFIG.8G(図8G)が、システム100を着用している図面として以下のFIG.9A(図9A)が記載されている。
図8G
「
[図:0001433115000012.jpg]
」
図8F
「
[図:0001433115000013.jpg]
」
図9A
「
[図:0001433115000014.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)において摘記した記載(特に下線部参照)を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「乳がんの早期発見のための定期的なモニタリングを促進することができる超音波システム100であって、
変換器支持体を介してアクチュエータのシャフトに連結された変換器110を含むスキャナアセンブリがあり、アクチュエータは、変換器支持体を第1軸101まわりに回転させる、及び/又は変換器支持体を並進させる機能を有し、変換器が連結する筐体120があり、第2アクチュエータを介して変換器を第2軸102まわりに回転させる機能を有し、ここで第1軸101は第2軸102とは異なり、
変換器110の走査部を取り囲む連結媒体の貯留部130、及び貯留部の境界を形成する膜等のウィンドウ140を備え、さらに、スキャナアセンブリをユーザの身体部位に対して確実かつ再現性高く位置決めできるよう、前記ウィンドウとつながるよう構成された位置決め部150を備え、加えて、変換器の駆動及びユーザの身体部位からの走査データの取得を促進するよう構成された電子サブシステム160を備え、
前記筐体120は、システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもので、大部分が実質的に硬いものであり、
また、システム100は、走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するために、追加的又は代替的に、変換器の位置、アクチュエータの位置、ユーザの組織の位置を特定する位置センサを含んでもよく、さらに、変換器のビームを、適切な範囲にわたって掃引するように、第1回転軸101の第2回転軸102に対する傾斜角をアクチュエータを用いて動的に調整することを実施してもよい、超音波システム100。」(以下「甲1発明」という。)
2 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【0012】
図1は、第1の実施形態における情報処理装置101の機能構成の一例を示す図である。取得部111は、姿勢センサ103によって計測された、撮像デバイス( 例えば、超音波プロープ) 102の傾きや方向などの状態を表す情報(以下、姿勢情報)を取得する。」
(甲2イ)「【0023】
図5は、被検体301を撮像している撮像デバイス102の動きを例示する図である。図5における被検体301は、図3においてDで示すラインにおける被検体301の断面を、被検体301の足側から見ている像を示す。操作者は、被検体301の胸部の片側(左側または右側)の体表に沿って撮像デバイス102を当てていく。ここで、操作者が図5に示す胸部の左側(L側)に撮像デバイス102を当てる場合、すなわち、例えば被検体の左乳房を撮像する場合を考える。このとき、撮像デバイス102が胸部の中央付近(胸骨付近)に位置する場合には、左右方向の傾斜角は小さなマイナスの値となる。そして、撮像デバイス102の位置が胸部の中央付近から外側(体側部付近)に向かうにつれて、撮像デバイスの傾きが大きくなるため、左右方向の傾斜角は大きなプラスの値となる。反対に、胸部の右側(R側)に撮像デバイス102を当てる場合、すなわち、例えば右乳房を撮像する場合を考える。このとき、撮像デバイス102が胸部の中央付近に位置する時は左右方向の傾斜角は小さなプラスの値をとり、体側側に向かうにつれて大きなマイナスの値をとる。」
そして、図5として、以下の図面が記載されている。
「【図5】
[図:0001433115000015.jpg]
」
(甲2ウ)「【0027】
図4に戻り、ステップS405において、判定部114は、ステップS404で生成された集計結果に基づいて、撮像デバイス102で撮像された部位(撮像部位)が胸部の左右の何れであるかを判定する。例えば、判定部114は、撮像デバイス102の傾斜角の最大値によって判定を行う。」
3 甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)「第1図に本システムの写真を示す。」(89頁左欄20~21行)
そして、第1図として、以下の図面が記載されている。
「
[図:0001433115000016.jpg]
」
(甲3イ)「2 画像採取方法
今回開発した超音波プローブ回転走査器は、一般の超音波診断装置に付属させて使用する。本装置では、診断装置に備わっている超音波プローブをアームによって保持し、乳房の湾曲に応じてプローブの傾きを適応的に変化させながら、乳頭を中心に回転走査を行うことで、乳房全体の超音波画像を収集する。」(89頁右欄1~9行)
4 甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)「【0013】超音波探触子6が乳房皮膚面に密着するようその両端の高さを自在にするため、ブロックB5の側部の回転軸上下動用モーター13、スリットのある一対の斧状アーム7の挟持部片側先端の超音波探触子傾斜用モター14がそれぞれ距離センサー10と連動して作動する。なお、ここで距離センサー10以外にもタッチセンサーや圧力センサーなどを使用することができる。超音波探触子6は乳房皮膚面に密着するようにするため、かなりの傾斜が要求される。そのためスリットのある一対の斧状アーム7をブロックD9に対し所定の傾斜角度となるようブロックC8に対する挿通角度が固定されてあり、それにより第1段階の傾斜をとり、第2段階の傾斜は距離センサー10と連動する超音波探触子傾斜用モター14の作動でなされ、後者の傾斜範囲は0~30度程度でおよそ足りる。」
(甲4イ)図1として、以下の図面が記載されている。
「【図1】
[図:0001433115000017.jpg]
」
第5 当審の判断
申立理由1及び2を判断するにあたり、上記第2で記載したとおり、本件発明25に係る乳癌検査装置は、(A)(B)(C)及び(D)で特定される乳癌検査装置に(25a)の構成を加えたもの、本件発明29に係る乳癌検査装置は、同じく(A)(B)(C)及び(D)で特定される乳癌検査装置に(29a)及び(29b)の構成を加えたものであることから、まず、(A)(B)(C)及び(D)で特定される乳癌検査装置(以下「本件共通発明」という。)について検討し、その後、本件発明25及び本件発明29の各発明について検討することとする。そして、さらに、それらを引用する本件発明32について検討することとする。
1 共通発明について
(1)対比
ア(A)について
(ア)超音波装置における変換器(transducer)とは、一般に、超音波ビームを照射し、物体から反射してきた超音波を受信するもので、超音波プローブとも呼称されるものであるから、甲1発明の「超音波システム」における「変換器110」は、本件共通発明の「超音波ビームを照射するプローブ」に相当する。
(イ)「変換器支持体を介してアクチュエータのシャフトに連結された変換器110を含むスキャナアセンブリ」は、「変換器110」によって測定を行う「アセンブリ」を、単に「ユニット」(複数の部品からなる一つ集合体)とみなす限りにおいて、本件共通発明の「測定ユニット」に相当する。
(ウ)しかしながら、甲1発明において、上記「スキャナアセンブリ」における「アクチュエータ」は、「変換器支持体を第1軸101まわりに回転させる、及び/又は変換器支持体を並進させる機能を有」するものの、それらの機能は、(甲1キ)で摘記した図2C及び図2Dに記載されているように、「変換器のビームを、適切な範囲にわたって掃引」し「走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するため」のものであり、本件共通発明のように「プローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる」ためのものではない。
(エ)そうすると、甲1発明の「変換器支持体を介してアクチュエータのシャフトに連結された変換器110を含むスキャナアセンブリ」と、本件共通発明の「超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニット」とは、「超音波ビームを照射するプローブを移動させる測定ユニット」の点で共通する。
イ(B)について
甲1発明の「第1軸101は第2軸102とは異な」り「第2アクチュエータを介して変換器を第2軸102まわりに回転させる機能を有」することにおいて、「変換器を第2軸102まわりに回転させる」ことは、(甲1キ)で摘記した図1Aを参照すると、「変換器支持体を介してアクチュエータのシャフトに連結された変換器110を含むスキャナアセンブリ」(上記(1)イによれば「測定ユニット」)を「第2軸102まわりに回転させる」ことに他ならない。
そして、「第2アクチュエータを介して変換器を第2軸102まわりに回転させる機能を有」することは、「第2アクチュエータ」には「変換器を第2軸102まわりに回転させる」駆動部があることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「第1軸101は第2軸102とは異な」り「変換器を第2軸102まわりに回転させる機能を有」する「第2アクチュエータ」は、本件共通発明の「前記測定ユニットを駆動する駆動部」に相当する。
ウ(C)について
(ア)甲1発明の「第2アクチュエータ」は「システムの素子」といえるから、甲1発明の「筐体は」「第2アクチュエータ」等の「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもの」である。また、「第2アクチュエータ」が「変換器を第2軸102まわりに回転させる」際に、「第2アクチュエータ」自体を支持するものがなければならないことから、「第2アクチュエータ」を支持する支持部があるといえる。
そして、「第2アクチュエータ」は「筐体」によって「保護」され「及び/又はシール」されるものであるから、「筐体」の内側にあるといえ、「第2アクチュエータ」を支持する支持部も「筐体」の内側にあるといえる。この点、(甲1ク)で摘記した図8G及び図8F等を参照するに、「第2アクチュエータ」を支持する支持部等の部品が「筐体」の外側にあるとはいえないことから、「筐体」の内側にあることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「第2アクチュエータ」等の「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもの」である「筐体」は、「筐体」を「容器」とみなす限りにおいて、本件共通発明の「内側に前記駆動部を支持する支持部を含む」「容器」に相当する。
(イ)しかしながら、一般に「筐体」と「カバー」とを部品として同一視できるものではなく、(甲1キ)又は(甲1ク)で摘記した図1A~1B、図2A~2D、図8G、図8F及び図9Aを参照するに、甲1発明の「筐体」は、「乳房を少なくとも部分的に覆」う「カバー」といえるものではない。特に、図1A~1Bを参照すると、「筐体」と(乳房)組織の間には「変換器110の走査部を取り囲む連結媒体の貯留部131、及び貯留部の境界を形成する膜等のウィンドウ140を備え、さらに、スキャナアセンブリをユーザの身体部位に対して確実かつ再現性高く位置決めできるよう、前記ウィンドウとつながるよう構成された位置決め部150」があることから、「筐体」を「乳房を少なくとも部分的に覆」うものであると解することはできない。
(ウ)そうすると、甲1発明の「第2アクチュエータ」等の「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもの」である「筐体」と、本件共通発明の「前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器」とは、「内側に前記駆動部を支持する支持部を含む」「容器」の点でのみ共通する。
エ(D)について
甲1発明の「乳がんの早期発見のための定期的なモニタリングを促進することができる超音波システム100」は、本件共通発明の「乳癌検査装置」に相当するといえる。
オ したがって、本件共通発明と甲1発明とは、
(一致点)
「超音波ビームを照射するプローブを移動させる測定ユニットと、
前記測定ユニットを駆動する駆動部と、
内側に前記駆動部を支持する支持部を含む容器と、
を備えた乳癌検査装置」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
測定ユニットが、本件共通発明では、プローブを「被検体の乳房の表面に沿って」移動させるものであるのに対し、甲1発明では、変換器を「被検体の乳房の表面に沿って」移動させるものではない点。
(相違点2)
容器が、本件共通発明では、「前記乳房を少なくとも部分的に覆」う「カバー」であるのに対し、甲1発明では、「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールする」「筐体」である点。
(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲1発明において、変換器は「筐体120」に「連結する」もので「走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するため」に移動するものであり、上記図1A及び図1Bで示されるように、「変換器110の走査部を取り囲む連結媒体の貯留部130、及び貯留部の境界を形成する膜等のウィンドウ140を備え、さらに、スキャナアセンブリをユーザの身体部位に対して確実かつ再現性高く位置決めできるよう、前記ウィンドウとつながるよう構成された位置決め部150」が存在することから、変換器を「被検体の乳房の表面に沿って」移動させ得る態様のものではない。
そうすると、甲1発明において、変換器を「走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するため」に移動させることに代えて、わざわざ「被検体の乳房の表面に沿って」移動させる動機はなく、さらに、変換器を「被検体の乳房の表面に沿って」移動させるために、甲1発明の「変換器110の走査部を取り囲む連結媒体の貯留部130」、「貯留部の境界を形成する膜等のウィンドウ140」及び「前記ウィンドウとつながるよう構成された位置決め部150」を取り外すことはむしろ阻害要因ともなり得ることである。そして、上記甲2~4を参照しても、甲1発明において、上記部品を取り除き、「走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するため」に移動させることに代えて、「被検体の乳房の表面に沿って」移動させることにはならない。
したがって、相違点1は実質的な相違点であるし、また、甲1発明において、甲2~甲4を参照したとしても、当業者が容易になし得たものでもない。
イ 相違点2について
甲1発明の筐体は、「大部分が実質的に硬いもの」でもっぱら「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもので」あり、「前記乳房を少なくとも部分的に覆」う「カバー」とは、その目的、機能が全く異なるものであるから、甲1発明の筐体を「前記乳房を少なくとも部分的に覆」う「カバー」として使用する着想はない。
そして、上記甲2~4を参照しても、「システムの素子(例えば、電子素子)を保護する及び/又はシールするもので」る「筐体」を、「前記乳房を少なくとも部分的に覆」う「カバー」として使用することを示したものはない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点であるし、また、甲1発明において、甲2~甲4を参照したとしても、当業者が容易になし得たものでもない。
(3)申立人の主張
ア 申立人は、上記相違点1及び2を、以下のとおり相違点とはしていない。
(ア)「[構成要件A] 「超音波ビームを照射するプローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる測定ユニットと、」
甲第1号証・・・、超音波ビームを照射する走査部を有する変換器(プローブ)110の支持体(測定ユニット)をアクチュエータ114により回転させ、ユーザの乳房組織を走査できることが記載されている。
よって、甲第1号証記載発明は、本件発明25の構成要件Aを備えている。」(申立書の17頁下から3行~18頁4行)
(イ)「[構成要件C]「前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器と、」
甲第1号証・・・、乳房を少なくとも部分的に覆う位置決め部150と、位置決め部150に連結され、内側にアクチュエータ114(駆動部)支持するシャフト/ カップラ112(支持部)を含むハウジング120が開示されている。
よって、甲第1号証記載発明は、本件発明25の構成要件Cを備えている。」(申立書の18頁11~17行)
イ 申立人の主張に対する当審の判断
(ア)について
申立人の主張する「乳房組織を走査」するとは、乳房の中の組織(scanned volume)に超音波を送信し反射波を受信することであり、甲1発明は「変換器のビームを、適切な範囲にわたって掃引」するが、それは「プローブを被検体の乳房の表面に沿って移動させる」ことを意味していない。したがって、申立人の(ア)の主張は当を得ないものである。
(イ)について
申立人の主張する「乳房を少なくとも部分的に覆う位置決め部150」について検討するに、「位置決め部150」は「内側に前記駆動部を支持する支持部を含む」ものではなく、その目的、機能を踏まえると、本件明細書等においては上記第2の2(本エ)に記載されている「測定シート」に対応するものである。
そうすると、甲1発明に「位置決め部150」と「ハウジング120」が存在するからといって、それらを合わせたものを恣意的に本件共通発明の「カバー容器」とみなすことはできず、甲1発明と本件共通発明との対応関係からすると、甲1発明の「位置決め部150」は本件明細書等の「測定シート」に、「ハウジング120」は「カバー容器」に対応するものと解するのが相当である。
したがって、甲1発明に「位置決め部150」と「ハウジング120」が存在するからといって、本件共通発明の「前記乳房を少なくとも部分的に覆い、内側に前記駆動部を支持する支持部を含むカバー容器」を備えているとの主張は当を得ないものである。
ウ 小括
以上のことから、本件共通発明は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、上記甲2~4の記載を参照しても、相違点1及び2が甲1発明において当業者が容易になし得たものはないから、本件共通発明は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明25について
(1)本件発明25に係る乳癌検査装置は、本件共通発明の乳癌検査装置に、さらに(25a) 及び(25b)の構成を加えたものであるから、(25a) 及び(25b)の構成について検討するまでもなく、本件発明25は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
しかしながら、(25a) 及び(25b)についての検討も加えておく。
(2)甲1発明の「変換器の位置、アクチュエータの位置、ユーザの組織の位置を特定する位置センサ」は、「走査体積の大きさ及び/又は形状を調整するため」のものであり、(25a)のように「前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する」ためのものではなく、そして「方位センサにより、前記乳癌検査装置の設置方向を特定し、前記設置方向に応じて前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する」ものでもない。
この点、上記甲2の(甲2イ)には「操作者が図5に示す胸部の左側(L側)に撮像デバイス102を当てる場合、・・・、撮像デバイス102が胸部の中央付近(胸骨付近)に位置する場合には、左右方向の傾斜角は小さなマイナスの値となる。そして、撮像デバイス102の位置が胸部の中央付近から外側(体側部付近)に向かうにつれて、撮像デバイスの傾きが大きくなるため、左右方向の傾斜角は大きなプラスの値となる。反対に、胸部の右側(R側)に撮像デバイス102を当てる場合、・・・、撮像デバイス102が胸部の中央付近に位置する時は左右方向の傾斜角は小さなプラスの値をとり、体側側に向かうにつれて大きなマイナスの値をとる。」と記載され、さらに(甲2ウ)には「撮像デバイス102で撮像された部位(撮像部位)が胸部の左右の何れであるかを判定する。例えば、判定部114は、撮像デバイス102の傾斜角の最大値によって判定を行う。」と記載されているが、撮像デバイス102(プローブ)の位置によって傾斜角の値が変化することを用いてプローブの位置が胸部の左右の何れであるかを判定するものであり、「方位センサにより、前記乳癌検査装置の設置方向を特定し、前記設置方向に応じて前記測定ユニットにより測定される前記乳房が左乳房及び右乳房のいずれであるかを検出する」技術とは異なるものである。
(3)そうすると、甲2は(25a) 及び(25b)の構成を開示するものではないから、上記甲2の記載を参照しても、(25a) 及び(25b)の構成が甲1発明において当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件発明25は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明29について
(1)本件発明29に係る乳癌検査装置は、本件共通発明の乳癌検査装置に、さらに(29a) 及び(29b)の構成を加えたものであるから、(29a) 及び(29b)の構成について検討するまでもなく、本件発明29は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
しかしながら、(29a) 及び(29b)についての検討も加えておく。
(2)まず、(29a)は「前記乳癌検査装置は、前記カバー容器が前記乳房の少なくとも一部を覆うように設置され」ることを特定したものであるから、上記1(2)イの判断と同様である。
次に、(29b)の「前記乳房の形状に応じて前記プローブを支持するアームの角度を調整する制御部を備えた」ことについて検討するに、上記甲3には「超音波プローブをアームによって保持し、乳房の湾曲に応じてプローブの傾きを適応的に変化させながら、乳頭を中心に回転走査を行う」ことが記載され、甲4には「超音波探触子6は乳房皮膚面に密着するようにするため、かなりの傾斜が要求される。そのためスリットのある一対の斧状アーム7をブロックD9に対し所定の傾斜角度となるようブロックC8に対する挿通角度が固定され」ることが記載されていることから、甲3及び甲4には、一応「乳房の形状に応じて前記プローブを支持するアームの角度を調整する」ことが開示されているといえる。
しかしながら、甲1発明は、「変換器のビームを、適切な範囲にわたって掃引するように、第1回転軸101の第2回転軸102に対する傾斜角をアクチュエータを用いて動的に調整する」ものであり、甲3に記載されている「乳房の湾曲に応じてプローブの傾きを適応的に変化させ」る「アーム」又は甲4に記載されている「超音波探触子6は乳房皮膚面に密着するようにするため」の「斧状アーム」を、甲1発明の「アクチュエータ」と代える、あるいは甲1発明の「アクチュエータ」に加える動機があるとはいえない。
(3)そうすると、上記甲3及び甲4の記載を参照しても、(29a) 及び(29b)の構成が甲1発明において当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件発明29は、甲1発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明32について
(1)本件発明25及び29は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、それらを引用する本件発明32も、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)なお、上記第2の1において記載したとおり、本件発明32は、本件発明25及び29以外にも請求項18、19、21~24、27、28及び30のいずれか一項に係る乳癌検査装置を引用する発明であるが、申立人は、本件発明32について、
「[構成要件A] 「請求項18、19、21~25、27~30のいずれか一項に係る乳癌検査装置と、」
請求項25については、上記(6-2)で述べたように、甲第1号証記載発明と同一であるか、甲第1号証記載発明及び甲第2号証記載発明に基づいて当業者が容易に想到できる発明である。
請求項29については、上記(6-3)で述べたように、甲第1号証記載発明と同一であるか、甲第1号証記載発明、甲第3号証記載発明及び甲第4号証記載発明に基づいて当業者が容易に想到できる発明である。」(申立書の24頁下から2行~25頁7行)と記載するにとどまり、請求項18、19、21~24、27、28及び30に係る乳癌検査装置については、申立書において何ら記載されておらず、また、請求項18、19、21~24、27、28及び30に係る乳癌検査装置に対する証拠も何ら提示していない。
そうすると、本件発明25及び29以外の請求項18、19、21~24、27、28及び30のいずれか一項に係る乳癌検査装置を引用する本件発明32についても、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 まとめ
以上のとおり、本件発明25、29及び32は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないことから、申立理由1及び2によって、本件発明25、29及び32に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項25、29及び32に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項25、29及び32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700985