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特許異議申立

2021-701171

積層体

審判番号
2021-701171
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-509028外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6886009
請求日
2021年12月13日
審決日
2022年10月07日
公報発行日
2023年01月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6886009号発明「積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6886009号の明細書及び特許請求の範囲を、令和4年5月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8〕について訂正することを認める。
特許第6886009号の請求項1、5~8に係る特許を維持する。
特許第6886009号の請求項2~4に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6886009号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2018(平成30)年2月28日(優先権主張 平成29年3月30日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和3年12月13日 特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する本件特許異議の申立て

令和4年3月11日付け 取消理由通知

令和4年5月16日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

なお、当審から、期間を指定して、令和4年6月7日付けで「訂正があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)」をおこなったが、当該期間内に申立人から応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断

1. 訂正の内容

令和4年5月16日の訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所である。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1および請求項8に、

「層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層。」

と記載されているのを、

「層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該無機化合物(B)がハイドロタルサイトであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層、または、
当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層。」

に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体を、少なくとも一部に有するホース。」とあるうち、請求項1を引用するものについて「請求項1に記載の積層体を、少なくとも一部に有するホース。」に訂正する。

(6)訂正事項6

明細書の段落【0003】,【0013】,【0017】,【0018】および【0108】にそれぞれ「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」と記載されているのを、「エピクロロヒドリンゴム」に訂正する。

(7)訂正事項7

明細書の段落【0108】に「エピクロルヒドリンゴム」と記載されているのを、「エピクロロヒドリンゴム」に訂正する。

(8)訂正事項8

明細書に記載の実施例1~3、5~10、13~14および18につき、参考例であるとの表示を追加するよう訂正する。

具体的には、

明細書の段落【0109】に記載の「実施例1」を「実施例1(参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0117】に記載の「実施例2~12」を「実施例2~12(ただし実施例1~3および5~10は参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0123】に記載の表1-1において、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例7」および「実施例8」とあるのを、それぞれ、「実施例1(参考例)」、「実施例2(参考例)」、「実施例3(参考例)」、「実施例5(参考例)」、「実施例6(参考例)」、「実施例7(参考例)」および「実施例8(参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0124】に記載の表1-2において、「実施例9」および「実施例10」とあるのを、それぞれ、「実施例9(参考例)」および「実施例10(参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0124】に記載の「実施例13」を「実施例13(参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0128】に記載の「実施例14~18」を「実施例14~18(ただし実施例14,15および18は参考例)」に訂正し、

明細書の段落【0134】に記載の表2において、「実施例13」、「実施例14」、および「実施例18」とあるのを、それぞれ、「実施例13(参考例)」、「実施例14(参考例)」および「実施例18(参考例)」に訂正する。

(9)訂正事項9

明細書の段落【0124】、【0126】~【0128】、【0130】、【0132】および【0135】にそれぞれ「ECO」と記載されているのを、「エピクロロヒドリンゴム」に訂正する。

(10)なお、請求項1の訂正にともなって、請求項1を引用する請求項5~7も訂正する。

訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的または間接的に引用し、請求項1の記載の訂正に連動して訂正される関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕、〔8〕毎に請求されたものである。

また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~7〕、〔8〕について請求されたものである。

2. 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1は、請求項1または8の「層(1)」に対し、

「当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該無機化合物(B)がハイドロタルサイトであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層、または、
当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層」

であるという構成を付加し限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項追加の有無

本件特許明細書には以下の記載がある。

「【0014】
<層(1)>
本発明の積層体を構成する層(1)は、ハロゲン系ゴム(A)とハロゲン系ゴム(A):100質量部に対して、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)〔以下、「無機化合物(B)」と略称する場合がある。〕を1~30質量部含む組成物からなる層である。
【0015】
続きを表示(全34行)
<ハロゲン系ゴム(A)>
本発明の積層体の層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)は、分子中にハロゲン原子を含むゴム〔但し、フッ素系ゴムを除く〕であり、好ましくは、ハロゲン含有モノマー由来の構成単位を有するゴムである。
【0016】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、ハロゲン系ゴムとしては、好ましくは塩素原子を含むゴムである。
【0017】
本発明に係るハロゲン系ゴム(A)としては、具体的には、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、などが挙げられる。
【0018】
これらハロゲン系ゴム(A)の中でも、エピクロロヒドリンゴム(ECO)およびアクリルゴム(ACM)が耐熱・耐油性に優れる積層体が得られうるので好ましい。
【0019】
<無機化合物(B)>
本発明の積層体の層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)に配合される無機化合物(B)は、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物である。
【0020】
本発明に係る無機化合物(B)は、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物である限り、特に制限は無いが、例えば、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
【0021】
2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素としては、例えばMg、Ca、Ba、およびAlから選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。
【0022】
本発明に係る無機化合物(B)としては、市販品を用いてもよく、例えば、「キョーワマグ150」(協和化学工業株式会社製、酸化マグネシウム)、「DHT-4A」(協和化学工業株式会社製、ハイドロタルサイト類化合物:Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・mH2O)が挙げられる。
【0023】
本発明に係る無機化合物(B)は、前記ハロゲン系ゴム(A):100質量部に対して1~30質量部、好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは5~30質量部の範囲で含まれる。
【0024】
層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)が、無機化合物(B)を上記範囲で含むことにより、層(2)との接着強度(剥離強度)に優れる積層体が得られうる。
【0025】
また、層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)がさらに無機化合物(B)を10~30質量部、より好ましくは15~30質量部の範囲で含んでいてもよい。無機化合物(B)を10質量部以上含むと熱安定性の面で好ましく、また、15質量部以上含むと熱安定性及び加工性の面で好ましい。
【0026】
<その他配合剤>
本発明に係る層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)には、上記無機化合物(B)に加え、通常、ゴムに配合される種々の添加剤を加えることができる。
【0027】
その他添加剤としては、例えば、以下の添加剤を例示できる。
【0028】
より具体的には、有機過酸化物、カーボンブラック、老化防止剤、軟化剤、金属酸化物、架橋助剤、オニウム塩などが挙げられる。」
「【0055】
本発明に係るオニウム塩としては、市販品を用いてもよく、例えば、「リポカード2HTフレーク」(ライオン・スペシャリティイ・ケミカルズ株式会社製、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム)を用いることができる。
【0056】
本発明に係るオニウム塩を前記ハロゲン系ゴム(A)に配合する場合は、通常、ハロゲン系ゴム(A)100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.2質量部以上、10質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上、8質量部以下がさらに好ましい。本発明に係るオニウム塩を前記範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される。」
「【0107】
本発明の実施例および比較例で用いたハロゲン系ゴム(A)等を以下に示す。
【0108】
≪ハロゲン系ゴム(A)≫
続きを表示(全12行)
<アクリルゴム(ACM)>
Nipol AR-12:アクリル酸エステルを骨格主成分とするアクリルゴム、日本ゼオン社製
<エピクロロヒドリンゴム(ECO)>
エピクロマーH:エピクロルヒドリンゴム、株式会社大阪ソーダ製
≪《ハロゲン含有重合体(C)≫
<フッ素系ゴム>
ダイエル DC-2270F:フルコンパウンド、2元ポリオール加硫系、比重1.85、ML(1+10)100℃:約115、ダイキン工業(株)製
なお、ダイエル DC-2270Fを「ポリオール系FKM」とも称す。」
「【0123】
【表1-1】
[図:0001393078000001.jpg]
【0124】
【表1-2】
[図:0001393078000002.jpg]
」
「【0134】
【表2】
[図:0001393078000003.jpg]
」

特に段落【0134】には、実施例15~17として、エピクロロヒドリンゴム(エピクロマーH)、ハイドロタルサイト(DHT-4A)、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム(リポカード2HTフレーク)を含む、層(1)をなす組成物が示されている。(なお、訂正請求書の第7ページ第22行~第27行には、「実施例13」もそのような組成物であると説明されているが、実施例13には塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム(リポカード2HTフレーク)が含まれていない。)

また、特に段落【0123】~【0124】には、実施例4、11、12として、アクリルゴム(ACM)(Nipol AR-12)、酸化マグネシウム(キョーワマグ150)、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム(リポカード2HTフレーク)を含む、層(1)をなす組成物が示されている。

したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加し、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(4)訂正事項4について

訂正事項4は請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、請求項5が「請求項1~4」の記載を引用していたうち「請求項2~4」が削除されることに伴い、これらの記載を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(6)訂正事項6について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項6は、明細書中の記載「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」につき、JIS K6397においてエピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体を指すとされている略号「ECO」を削除することにより、特許請求の範囲の記載を明確にするためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記(1)イで摘記した本件特許明細書等の段落【0014】~【0018】に示されるように、本件特許明細書等において「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」はハロゲン系ゴム、すなわち分子中にハロゲン原子を含むゴム、の一種として示されているものである。そして、エピクロロヒドリンはハロゲン原子の一種である塩素原子を包含する分子であるから、(JIS K6397で「ECO」という略号が当てられる「エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体」のみでなく、)エピクロロヒドリンをモノマーとして用いたゴムは、すべてハロゲン系ゴムである。すると、本件特許明細書等に接した当業者は「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」との記載からエピクロロヒドリンをモノマーとする任意のゴムを把握できたものと解される。

すると、訂正事項6は、新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項6は、「エピクロロヒドリンゴム」という語を明瞭にするものであってカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではない。

(7)訂正事項7について

訂正事項7は、訂正前の明細書の段落【0108】に記載された「エピクロルヒドリンゴム」を、「エピクロロヒドリンゴム」に訂正するものである。「エピクロロヒドリンゴム」という表記は段落【0017】、【0018】等の他の段落に記載されていたものであるし、また、「エピクロルヒドリン」と「エピクロロヒドリン」は、ともに「Epichlorohydrin」のカタカナ表記として用いられるものである。よって、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(8)訂正事項8について

訂正事項8は、訂正後の請求項1~8に属さなくなった実施例が参考例であることを明示することにより特許請求の範囲の記載を明確にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲の拡張・変更をするものに該当せず、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることも明らかである。

(9)訂正事項9について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項9は明細書の段落【0124】、【0126】~【0128】、【0130】、【0132】および【0135】にそれぞれ「ECO」と記載されているのを、「エピクロロヒドリンゴム」に訂正するものである。訂正事項9は、本件特許明細書等における「ECO」が「エピクロロヒドリンゴム」を意味するものであることを明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記(1)イにおいて摘記した本件特許明細書等の段落【0107】~【0108】には、「本発明の実施例」「で用いたハロゲン系ゴム(A)」として「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」が記載されており、また、段落【0017】~【0018】にも「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」と記載されていた。すると、本件特許明細書等において「ECO」は「エピクロロヒドリンゴム」を意味するものとして用いられていたことが把握できるから、訂正事項9は新規事項を追加するものではない。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項9は、本件特許明細書等における「ECO」が「エピクロロヒドリンゴム」を意味するものであることを明瞭にするものであってカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかであるから、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではない。

3. 小括

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。
層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該無機化合物(B)がハイドロタルサイトであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層、または、
続きを表示(全23行)
当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、HFP/エチレン/VdF共重合体、TFE/プロピレン共重合体、およびHFP/エチレン共重合体のうちのいずれかのエラストマーであるフッ素系ゴムであり、且つ、ポリオール系架橋剤を含む層。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1に記載の積層体を、少なくとも一部に有するホース。
【請求項6】
自動車用、モーターバイク用、工業機械用、建設機械用または農業機械用のいずれかの用途に用いられる請求項5に記載のホース。
【請求項7】
自動車用ターボチャージャーホースに用いられる請求項5に記載のホース。
【請求項8】
下記層(1)と、下記層(2)とを直接接合することを特徴とする積層体の製造方法。
層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該無機化合物(B)がハイドロタルサイトであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層、または、
当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、HFP/エチレン/VdF共重合体、TFE/プロピレン共重合体、およびHFP/エチレン共重合体のうちのいずれかのエラストマーであるフッ素系ゴムであり、且つ、ポリオール系架橋剤を含む層。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

【理由1】(明確性)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1、請求項8に記載された「ハロゲン系ゴム(A)」、「アクリルゴム(ACM)」は、その包含する物質の範囲が明確でない。請求項1を引用する請求項2~7についても同様に明確でない。

請求項2に記載された「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」が、エピクロロヒドリンを重合に用いたゴム全般を意味しているのか、JIS K6397において「ECO」という略号が意味するものとされたエピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体を意味するのか、エピクロロヒドリンの単独共重合体を意味するのか明確でない。

【理由2】(サポート要件)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

発明の詳細な説明の記載で、ハロゲン系ゴム(A)として具体的に、強固な接着強度を有する積層体を得ることができるかが実施例として試験されているのは、アクリルゴム(ACM)としての日本ゼオン社製のNipol AR-12と、エピクロロヒドリンゴム(ECO)としての株式会社大阪ソーダ製のエピクロマーHのみである。ここで、「<アクリルゴム(ACM)>」はハロゲン系ゴムではない、または必ずしもハロゲン系ゴムには限られない。そして、「Nipol AR-12」はその具体的な化学構造は不明であり、ハロゲン系ゴムであるのか不明である。

すると、本件特許が発明の詳細な説明において実際に使用し、強固な接着強度を有する積層体を得ることができるかを記載しているのは、エピクロロヒドリンゴム(ECO)としてのエピクロマーHのみである。

そして、発明の詳細な説明を見ても、強固な接着強度を有する積層体を得るという効果を得る上で、エピクロロヒドリンゴム(ECO)が有するハロゲン原子が、その効果の発現に特に寄与していると考えるべき理由の説明は見当たらない。また、技術常識を考慮しても、ハロゲン原子が積層体の接着強度を強固にするのに貢献していると直ちに解すべき理由は見当たらない。

すると、発明の詳細な説明の内容が示すエピクロロヒドリンゴム(ECO)を用いた発明を、ハロゲン系ゴム全般を用いる場合にまで拡張、一般化できるとはいえない。

【理由3】(新規性)

本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

【理由4】(進歩性)

本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1~4、8に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。

請求項1~8に係る発明は、引用文献1に記載された発明により、または、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求項1~2、4~6、8に係る発明は、引用文献3に記載された発明である。

請求項1~8に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献4に記載された事項により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求項1~5、8に係る発明は、引用文献5に記載された発明である。

請求項1~8に係る発明は、引用文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求項1~5、8に係る発明は、引用文献6に記載された発明である。

請求項1~8に係る発明は、引用文献6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求項1~5、8に係る発明は、引用文献7に記載された発明である。

請求項1~8に係る発明は、引用文献7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>

引用文献1: 特開平5-214118号公報(甲第5号証)
引用文献2: 国際公開第2014/061558号
引用文献3: 特開2007-185826号公報(甲第1号証)

引用文献4: ダイキン工業株式会社,“フッ素ゴム ダイエル G-555”,[online],2019年5月,[令和4年2月18日検索],インターネット(甲第6号証)<URL:https://www.daikinchemicals.com/library/pb_common/pdf/tds_jp/Fluoroelastomers/DAI-EL_Bisphenol_Curable_Terpolymers/tds-g-555-J_ver02_May_2019.pdf>

引用文献5: 特開2005-240853号公報(甲第2号証)
引用文献6: 特開平9-85898号公報(甲第3号証)
引用文献7: 特開平10-264314号公報(甲第4号証)

第5 当審の判断

1.理由1(明確性)について

(1)訂正後の請求項1には、「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」が特定され、「当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であ」ることが特定されている。

当該「アクリルゴム(ACM)」は、「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」をさらに特定したものであるから、「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」であると同時に「アクリルゴム(ACM)」であるものが特定されているものと解され、「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」であることと「アクリルゴム(ACM)」であることとは両立するものであって矛盾しないから、その意味するところは明確である。

(2)訂正前の請求項2に記載されていた「エピクロロヒドリンゴム(ECO)」は、訂正事項2による請求項2の削除により削除された。訂正事項1による請求項1、8の減縮により、訂正後の請求項1、8には「エピクロロヒドリンゴム」と記載されている。

「エピクロロヒドリンゴム」は、その文言から、エピクロロヒドリンを重合に用いたゴムであると解され、その意味するところは明確である。

2.理由2(サポート要件)について

本件発明の解決しようとする課題は「接合強度に優れる異種のハロゲン含有ゴム(重合体)の積層体を得ること」(段落【0009】)である。

この課題の解決のため、本件特許明細書等には「層(1)を形成するハロゲン系ゴム(A)が、無機化合物(B)を上記範囲で含むことにより、層(2)との接着強度(剥離強度)に優れる積層体が得られうる」(段落【0024】)と記載され、具体的な化合物として「例えば、「キョーワマグ150」(協和化学工業株式会社製、酸化マグネシウム)、「DHT-4A」(協和化学工業株式会社製、ハイドロタルサイト類化合物:Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・mH2O)」(段落【0022】)が例示されている。

そして、訂正後の請求項1、8においては、

「当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該化合物(B)がハイドロタルサイトであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む層、または、
当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上10質量部以下含む」

ことが特定されている。

よって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。

なお、請求項1または8の「当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムであり、且つ、前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上10質量部以下含む」に対応するものとして、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の段落【0123】~【0124】には、実施例4、11、12として、アクリルゴム(ACM)(Nipol AR-12)、酸化マグネシウム(キョーワマグ150)、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム(リポカード2HTフレーク)を含む、層(1)をなす組成物が示されているが、申立人は「Nipol AR-12」は「ハロゲン系ゴム」であるアクリルゴム(ACM)に属さないのではないかとの旨を指摘していた。

しかし、「Nipol AR-12」はハロゲン系ゴムであるアクリルゴム(ACM)の実施例として示されたものであること、アクリルゴム(ACM)として塩素等のハロゲン原子を含むものは一般的なものであることを考慮すれば、「Nipol AR-12」はハロゲン系ゴムであるアクリルゴム(ACM)でないとする理由はない。

3.理由3、4(新規性、進歩性)について

(1)引用文献

ア 引用文献1

引用文献1には以下の記載がある。

「【0016】
【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。なお、以下の例において部および%は、特に断わりのない限り重量基準である。
【0017】(1)ゴム積層体の製造
フッ素ゴム配合物および各ゴム配合物を、それぞれ6インチオープンロールで混練して約2mmの均一な厚みのシートを作成し、各シートを6cm×10cm角の短冊型に切る。テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレートのメチルエチルケトン溶液(10重量%)にフッ素ゴムシートを浸漬したのち30分間風乾する。このフッ素ゴムシートと各ゴムシートとを張り合わせ、プレス圧40Kg/cm2で160℃、30分間加硫接着することにより積層体を作成する。この際、剥離試験時にチャックでつかむ部分にあらかじめセロハン紙を挟み、両シートが接着しないようにした。
続きを表示(全17行)
(2)剥離試験
前記の方法で製造した試験片を用い、JIS-K6301に準じて、引張速度50mm/minの条件で剥離試験を行い剥離強度を測定した。
【0018】[実施例1]表1に記載した配合処方によりフッ素ゴム組成物(配合物番号1~2)を、また表2の配合処方によりエピクロルヒドリン系ゴム組成物(配合物番号3~6)を調整し、それぞれ厚さ2mmのシートとした。フッ素ゴムシートは、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート溶液で処理したものとしないものとの2種類を用意した。それぞれのフッ素ゴムシートとエピクロルヒドリン系ゴムシートとを積層し、加圧、加熱して積層体を作成し、剥離強度を測定した。得られた結果を表3に示す。表中、本発明例の欄は、テトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート溶液で処理したフッ素ゴムシートを使用した場合の結果であり、比較例の欄は、処理しないフッ素ゴムシートを使用した場合のものである。
【0019】
【表1】
[図:0001393078000004.jpg]
【0020】
【表2】
[図:0001393078000005.jpg]
【0021】
【表3】
[図:0001393078000006.jpg]
」
「【0027】
【発明の効果】かくして本発明の方法によれば、ホスホニウム塩をゴム層間に介在させることによりフッ素ゴム層と他のゴム層とが強固に接着した積層体を得ることができる。この方法によれば、ホスホニウム塩はゴム層の表面だけにあるのでゴムの加硫速度に影響を及ぼすことがなく、また操作が簡単なので、積層体を製造する上で大きな利点を有する。
[図:0001393078000007.jpg]
」

上記段落【0018】の記載を踏まえて段落【0021】に示される【表3】を参照すると、実験番号4として、番号1のフッ素ゴム配合物をシートとしたものと、番号6のECH系ゴム配合物をシートとしたものと直接積層した積層体が記載されている。

番号6のECH系ゴム配合物については段落【0020】の【表2】に示されており、番号6は、「ゼクロン2000 ※5」を100重量部、「FEFカーボン」を40重量部、「MgO」を5重量部含むことが示されている。(なお、表中の数字が重量部であるとの解釈は、段落【0016】の「以下の例において部および%は、特に断わりのない限り重量基準である」との記載に基づく。)そして、段落【0027】には、「*5」が「エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体」であることが記載されている。

番号1のフッ素ゴム配合物については、段落【0019】の【表1】に示されており、番号1は、加硫系が「ポリオール」であり、「*1」として「フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体」を含むものであることが示されている。

以上より、特に実験番号4に着目すると、引用文献1には、以下の引用発明1及び引用製造方法発明1が記載されていると認められる。

<引用発明1>

「エピクロルヒドリン系ゴムシートと、フッ素ゴムシートとが直接積層されてなる積層体であって、
エピクロルヒドリン系ゴムシートが、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体:100重量部、MgO:5重量部、及び、FEFカーボン:40重量部を含む組成物からなり、
フッ素ゴムシートが、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体であり、かつ、加硫系がポリオールである、
積層体。」

<引用製造方法発明1>

「エピクロルヒドリン系ゴムシートと、フッ素ゴムシートとが直接積層されてなる積層体の製造方法であって、
エピクロルヒドリン系ゴムシートが、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体:100重量部、MgO:5重量部、及び、FEFカーボン:40重量部を含む組成物からなり、
フッ素ゴムシートが、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体であり、かつ、加硫系がポリオールである、
積層体の製造方法。」

イ 引用文献3

引用文献3には以下の記載がある。

「【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の耐熱ホースは、フッ素ゴムまたはフッ素樹脂を用いて形成された内層と、その外周に形成されたヒドリン系ゴム層との積層構造を有する耐熱ホースであって、上記ヒドリン系ゴム層が、下記の(A)~(E)を必須成分とするゴム組成物によって形成され、その組成物中における(B)成分と(C)成分との含有割合が、重量比で、(B):(C)=2:1~8:1の範囲に設定され、(E)成分の含有割合が、(A)成分100重量部に対して2~6重量部の範囲に設定されているという構成をとる。
(A)エチレンオキサイド量が30mol%以下のヒドリンゴム。
(B)フェノール系老化防止剤。
(C)ベンゾイミダゾール系老化防止剤。
(D)1.8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩。
(E)含水ハイドロタルサイト化合物。」
「【0017】
上記(A)成分のヒドリンゴムには、エチレンオキサイド量が30mol%以下のものを用いる必要があり、また、2種以上のヒドリンゴムを併せて用いる場合、この「エチレンオキサイド量が30mol%以下のヒドリンゴム」とは、そのトータルのエチレンオキサイド量が30mol%以下となるよう用いることを意味する。そして、低温性等の点において、上記(A)成分のヒドリンゴムのエチレンオキサイド量は、好ましくは10~30mol%の範囲である。上記ヒドリンゴムとしては、上記規定を満たすものであれば、特に限定はなく、例えば、エピクロルヒドリン重合ゴム(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴム(ECO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(GECO)等が、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、これらヒドリンゴムのなかでも、特に耐熱性等の点から、エピクロルヒドリン成分が全体の少なくとも50mol%含有されていることが好ましい。」
「【0024】
上記(A)~(D)成分とともに用いられる含水ハイドロタルサイト化合物(E)には、下記の一般式(1)で表される化合物が用いられる。
【0025】
【化1】
[図:0001393078000008.jpg]
【0026】
そして、上記一般式(1)で表される含水ハイドロタルサイト化合物としては、例えば、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 ・3.5H2 O、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 、Mg4 Al2 (OH)12CO3 ・3.5H2 O、Mg6 Al2 (OH)16CO3 ・4H2 O、Mg5 Al2 (OH)14CO3 ・4H2 O、Mg3 Al2 (OH)10CO3 ・1.7H2 O、Mg3 ZnAl2 (OH)12CO3 ・wH2 O、Mg3 ZnAl2 (OH)12CO3 等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。このような化合物としては、具体的には、協和化学工業社製のDHT-4A、協和化学工業社製のDHT-6等があげられる。なお、含水ハイドロタルサイト化合物は、酸化マグネシウム等の金属酸化物のようにヒドリンゴム(A)の脱塩素を加速させるおそれがなく、優れた受酸効果を得ることができる。そして、本発明の耐熱ホースにおけるヒドリン系ゴム層2形成材料において、その架橋を進行させるには、上記のように含水タイプを用いることが必須であり、例えば焼成タイプのハイドロタルサイト化合物では、このような機能を果たすことができない。」
「【0045】
まず、実施例に先立って各成分を準備した。
【0046】
〔ヒドリンゴムA〕
続きを表示(全11行)
ECO(エピクロマーC、エチレンオキサイド量51mol%、ダイソー社製)
【0047】
〔ヒドリンゴムB〕
CO(エピクロマーH、エチレンオキサイド量0mol%、ダイソー社製)
【0048】
〔ヒドリンゴムC〕
ECO(エピクロマーCG、エチレンオキサイド量41mol%、ダイソー社製)」
「【0056】
〔受酸剤A〕
含水ハイドロタルサイト(DHT-4A、協和化学工業社製)
【0057】
〔受酸剤B〕
含水ハイドロタルサイト(DHT-6、協和化学工業社製)」
「【0061】
〔カーボン〕
SRF級カーボンブラック(シーストS、東海カーボン社製)」
「【実施例】
【0067】
〔実施例1~21、比較例1~4、従来例〕
まず、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)100部と、SRF級カーボンブラックを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部とを準備し、これらを、5Lニーダーを用いて混練することにより、フッ素ゴム組成物(内層用)を調製した。
続きを表示(全17行)
【0068】
つぎに、上記各成分(加硫剤、加硫遅延剤を除く)を下記の表1~表3に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて混合し、ついで、それに加硫剤および加硫遅延剤を下記の表1~表3に示す割合で配合し、ロールを用いて混練することによりヒドリン系ゴム組成物(外層用)を作製した。
【0069】
【表1】
[図:0001393078000009.jpg]
【0070】
【表2】
[図:0001393078000010.jpg]
【0071】
【表3】
[図:0001393078000011.jpg]
【0072】
上記のようにして予め調製された各層の材料組成物(フッ素ゴム組成物およびヒドリン系ゴム組成物)を用いて、共押出成形し、160℃×45分加熱し、スチーム加硫することにより、フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホースを作製した(図1参照)。なお、上記フッ素ゴム層の厚みが1mm、ヒドリン系ゴム層の厚みが3mm、ホース内径25mm、ホース外径33mmとなるよう、上記耐熱ホースを作製した。」
「【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の耐熱ホースは、各種ホース、例えば、自動車用のエアー系ホース、詳しくは、ガソリン蒸気・エンジンオイルのミスト・空気の三者の混合物をエンジンから排出して再燃焼のためにエンジンに供給するためのエアー系ホースや、燃料系ホースとして有用である。」

段落【0072】には、「上記のようにして予め調製された各層の材料組成物(フッ素ゴム組成物およびヒドリン系ゴム組成物)を用いて、共押出成形し、160℃×45分加熱し、スチーム加硫することにより、フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホースを作製」することが記載されている。

「フッ素ゴム組成物」について、段落【0067】には「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)100部と、SRF級カーボンブラックを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部とを準備し、これらを、5Lニーダーを用いて混練することにより、フッ素ゴム組成物(内層用)」を作製したことが記載されている。

「ヒドリンゴム系組成物」について、段落【0068】には、「上記各成分(加硫剤、加硫遅延剤を除く)を下記の表1~表3に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて混合し、ついで、それに加硫剤および加硫遅延剤を下記の表1~表3に示す割合で配合し、ロールを用いて混練することによりヒドリン系ゴム組成物(外層用)」を作製したことが記載されている。

表1~3における「ヒドリンゴム」「A」「B」について、段落【0046】には「ヒドリンゴムA」が「ECO(エピクロマーC、エチレンオキサイド量51mol%、ダイソー社製)」であること、段落【0047】には「ヒドリンゴムB」が「CO(エピクロマーH、エチレンオキサイド量0mol%、ダイソー社製)」が記載されている。そして、段落【0017】には、「エピクロルヒドリン重合ゴム(CO)」、「エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴム(ECO)」と記載されているから、段落【0046】における「ECO」はエピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴムを意味し、段落【0047】における「CO」は「エピクロルヒドリン重合ゴム」を意味すると解される。

表1~表3には、各成分の「部」が記載されている。段落【0007】における「重量部」との記載を考慮すれば、表1~表3における「部」は重量部のことであると解される。

したがって、引用文献3には、特に実施例1のヒドリン系ゴム組成物(外層用)を用いた場合に注目すると、以下の引用発明2及び引用製造方法発明2が記載されていると認められる。

<引用発明2>

「予め調製されたフッ素ゴム組成物およびヒドリン系ゴム組成物を用いて、共押出成形し、160℃×45分加熱し、スチーム加硫することにより、フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホースであって、
ヒドリン系ゴム層を形成するヒドリンゴム組成物が、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴムであるヒドリンゴムAを60重量部と、エピクロルヒドリン重合ゴムであるヒドリンゴムBを40重量部と、協和化学工業社製のDHT-4Aである含水ハイドロタルサイトである受酸剤Aを3重量部と、SRF級カーボンブラックを70重量部と、を含み、
フッ素ゴム層を形成するフッ素ゴム組成物が、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体であるダイエル G555、ダイキン社製を100部と、SRF級カーボンブラックを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2を6部を用いてなる、
フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホース。」

<引用製造方法発明2>

「予め調製されたフッ素ゴム組成物およびヒドリン系ゴム組成物を用いて、共押出成形し、160℃×45分加熱し、スチーム加硫することにより、フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホースの製造方法であって、
ヒドリン系ゴム層を形成するヒドリンゴム組成物が、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴムであるヒドリンゴムAを60重量部と、エピクロルヒドリン重合ゴムであるヒドリンゴムBを40重量部と、協和化学工業社製のDHT-4Aである含水ハイドロタルサイトである受酸剤Aを3重量部と、SRF級カーボンブラックを70重量部と、を含み、
フッ素ゴム層を形成するフッ素ゴム組成物が、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体であるダイエル G555、ダイキン社製を100部と、SRF級カーボンブラックを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部を用いてなる、
フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホースの製造方法。」

ウ 引用文献5

引用文献5には以下の記載がある。

「【0020】
上記(B)成分の配合割合は、上記(A)成分のアクリル系エラストマー100重量部(以下、「部」と略す)に対し、1~10部の範囲に設定されていると好ましく、より好ましくは1~5部の範囲である。すなわち、上記(B)成分の過酸化物架橋剤が1部未満であると、架橋が不充分となって、強度が劣るようになるからであり、逆に10部を超えると、硬くなりすぎ、柔軟性が損なわれる傾向がみられるからである。」
「【実施例】
【0034】
〔実施例1~5、比較例1~5〕
まず、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)100部と、カーボンSRFを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部とを準備し、これらを、5Lニーダーを用いて混練することにより、フッ素系ゴム組成物(内層用)を調製した。
【0035】
また、下記に示す材料を準備し、後記の表1~2に示す割合で配合し、これらを5Lニーダーを用いて混練することにより、アクリル系ゴム組成物(外層用)を調製した。なお、比較例5における外層用組成物としては、ECO100部と、SRFカーボン75部と、可塑剤であるDOPを5部と、老化防止剤であるNBCを1部と、MgO#150を2部と、ハイドロタルサイト化合物3部と、DBU塩1部と、加硫剤である2,3-ジメチルカプトキノキサリン誘導体2部とを、ニーダーにて混練してなるゴム組成物を調製した。
【0036】
〔アクリル系エラストマー(A成分)〕
ACM(電気化学工業社製、デンカER-5300P)」
「【0039】
〔MAFカーボンブラック〕
シーストG116、東海カーボン社製」
「【0046】
〔受酸剤(i) (D成分)〕
MgO」
「【0052】
【表1】
[図:0001393078000012.jpg]
」
「【0054】
上記のようにして予め調製された各層の材料組成物(フッ素系ゴム組成物およびアクリル系ゴム組成物)を用いて、マンドレル上に共押出成形し、160℃×30分加熱し、スチーム加硫した後、160℃×4時間オーブンにて二次加硫することにより、フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホースを作製した(図1参照)。なお、上記フッ素系ゴム層の厚みが2mm、アクリル系ゴム層の厚みが2mm、ホース内径30mm、ホース外径40mmとなるよう、上記耐熱ホースを作製した。」

したがって、特に実施例1のアクリル系ゴム組成物(外層用)を使用した場合に注目すると、引用文献5には以下の引用発明3及び引用製造方法発明3が記載されていると認められる。

<引用発明3>

「フッ素系ゴム組成物とアクリル系ゴム組成物を用いて、共押出成形し、フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホースであって、
アクリル系ゴム組成物は、アクリル系エラストマーとしてデンカER-5300PであるACMを100重量部、MAFカーボンブラックを50重量部、受酸剤iとしてMgOを5重量部配合し、調製され、
フッ素系ゴム組成物(内層用)は、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)100部と、カーボンSRFを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部とを準備し、これらを、5Lニーダーを用いて混練することにより、調製された、
フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホース。」

<引用製造方法発明3>

「フッ素系ゴム組成物とアクリル系ゴム組成物を用いて、共押出成形し、フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホースの製造方法であって、
アクリル系ゴム組成物は、アクリル系エラストマーとしてデンカER-5300PであるACMを100重量部、MAFカーボンブラックを50重量部、受酸剤iとしてMgOを5重量部配合し、調製され、
フッ素系ゴム組成物(内層用)は、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)100部と、カーボンSRFを13部と、MgO♯150を3部と、Ca(OH)2 を6部とを準備し、これらを、5Lニーダーを用いて混練することにより、調製された、
フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホースの製造方法。」

エ 引用文献6

引用文献6には以下の記載がある。

「【0023】
【発明の実施の形態】以下において代表的な例を実施例として挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
実施例1~3 比較例1,2
続きを表示(全24行)
表1に示されるエピクロルヒドリン系ゴム組成物を7インチロールにて70~80℃で15~20分間混練し、厚さ1~1.5mmのシート(A)を得た。一方、表2に示されるフッ素ゴム組成物を上記同様に混練して厚さ1~1.5mmのシート(B)を作製した。上記シート(A)及びシート(B)を貼り合わせ、160℃、20~25kg/cm2で30分間加圧し、厚さ2~2.3mmの加硫ゴム積層体を得た。上記積層体を2.5×10cmの短冊状に切断して接着試験用試験片を作製した。試験は、25℃において50mm/minの引張速度でT剥離試験を行った。試験結果は表3に示した。表1~表3中の注釈番号(1)~(9)は以下のとおりである。
(1)エピクロルヒドリン:エチレンオキシド=50:50(モル)
(2)エピクロルヒドリン:エチレンオキシド:アリルグリシジルエーテル=60:35:5(モル)
(3)「カープレックス#1120」塩野義製薬社商品名
(4)Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 ・3.5H2 O
(5)Mg4.5 Al2 (OH)13CO3
(6)Mg6 Al2 (OH)16CO3 ・4H2 O
(7)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7
(8)「バイトンE-430」ジヒドロキシ芳香族化合物系の加硫剤と有機ホスホニウム塩系加硫促進剤入りのもの。デュポン社商品名
(9)「バイトンA」デュポン社商品名
【0024】
【表1】
[図:0001393078000013.jpg]
【0025】
【表2】
[図:0001393078000014.jpg]
【0026】
【表3】
[図:0001393078000015.jpg]
」
「【0028】
【発明の効果】本発明の積層体は両加硫ゴム間の接着性が非常に優れており、長時間の温燃料油浸漬後又は長時間の加熱老化後においても接着面は強固である。従って、一方の面が耐酸敗ガソリン性、耐ガソリン透過性、耐アルコール含有ガソリン性等の要求される環境に晒され、他方の面が耐老化性、耐候性、耐ガソリン性等の要求される環境に晒されるような用途、例えば燃料ホース、フィラホース等の用途に極めて有効である。」

段落【0023】には、「表1に示されるエピクロルヒドリン系ゴム組成物」より「シート(A)を得た」こと、「表2に示されるフッ素ゴム組成物」より「シート(B)を作製した」こと、「上記シート(A)及びシート(B)を貼り合わせ、・・・加硫ゴム積層体を得た」こと、「上記積層体を2.5×10cmの短冊状に切断して接着試験用試験片を作製し・・・試験結果は表3に示した」ことが記載されている。

段落【0026】の表3には「実施例1」の「シート(A)」と、「配合I」の「シート(B)」を積層体としたものが記載されている。

段落【0024】の表1には、エピクロルヒドリン系ゴム組成物の実施例1の配合が記載されている。

段落【0025】の表2には、フッ素ゴム組成物の配合Iが記載されている。

したがって、表3に示される、「実施例1」の「シート(A)」と、「配合I」の「シート(B)」とを用いた積層体に注目すると、引用文献6には以下の引用発明4及び引用製造方法発明4が記載されていると認められる。

<引用発明4>

「エピクロル系ヒドリンゴム組成物より作製したシートAと、フッ素ゴム組成物より作製したシートBを貼り合わせたゴム積層体であって、
エピクロル系ヒドリンゴム組成物は、エピクロルヒドリン単独共重合体ゴムを30重量部、エピクロロヒドリン二元共重合体ゴム1を70重量部、N-550カーボンブラックを40重量部、ハイドロタルサイトを3重量部含み、
フッ素ゴム組成物は、デュポン社の商品であるバイトンE-430というジヒドロキシ芳香族化合物系の加硫剤を含むフッ素ゴム8を100重量部含む、
ゴム積層体。」

<引用製造方法発明4>

「エピクロル系ヒドリンゴム組成物より作製したシートAと、フッ素ゴム組成物より作製したシートBを貼り合わせたゴム積層体の製造方法であって、
エピクロル系ヒドリンゴム組成物は、エピクロルヒドリン単独共重合体ゴムを30重量部、エピクロロヒドリン二元共重合体ゴム1を70重量部、N-550カーボンブラックを40重量部、ハイドロタルサイトを3重量部含み、
フッ素ゴム組成物は、デュポン社の商品であるバイトンE-430というジヒドロキシ芳香族化合物系の加硫剤を含むフッ素ゴム8を100重量部含む、
ゴム積層体の製造方法。」

オ 引用文献7

引用文献7には以下の記載がある。

「【0001】
【技術分野】本発明は、積層体及びそれからなるホースに係り、特に、フッ素ゴム若しくはフッ素樹脂からなる第一層とエピクロルヒドリン系ゴムからなる第二層との接着性に優れた積層体、並びにそのような積層体から構成されるホース、中でもフューエル・ホースに関するものである。」
「【0025】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0026】先ず、下記表1~表5に示される各配合成分を、それぞれの表に示される配合量において配合し、均一に混練せしめて、実施例1~12及び比較例1~9に係る各種のゴム組成物を調製した。なお、それぞれの表において、ECOは、エピクロルヒドリン系ゴム材料としてのエピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合体(ダイソー株式会社製エピクロマーC)、GECOは、エピクロルヒドリン系ゴム材料としてのエピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(ダイソー株式会社製エピクロマーCG-104)、DBUは、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ハイドロタルサイトDHT-4Aは、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 ・3.5H2 O、ハイドロタルサイトDHT-4A・2は、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 を、それぞれ、示すものである。また、アルカマイザー4及びアルカマイザー4・2は、それぞれ、Mg3 ZnAl2 (OH)12CO3 ・wH2 O(但し、wは実数である)及びMg3 ZnAl2 (OH)12CO3 を示すものである。
【0027】
【表1】
[図:0001393078000016.jpg]
」
「【0045】また、前記表1~表5に示される各種のゴム組成物と、フッ素ゴム(FKM)又はフッ素樹脂(FCP)との接着性について評価を行ない、その結果を、下記の表11~表15に示した。なお、FKMについては、下記の如き及びの2種類を用い、またFCPについては、下記の1種類を用いた。
【0046】-FKM1-
フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体(バイトンE430、米国:デュポン社製):100重量部、SRFカーボン:13重量部、MgO:3重量部、及びCa(OH)2 :6重量部なる組成のものを用いた。
【0047】-FKM2-
フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン三元共重合体(ダイエルG555、ダイキン株式会社製):100重量部、SRFカーボン:13重量部、MgO:3重量部、及びCa(OH)2 :6重量部なる組成のものを用いた。」
「【0050】-剥 離 力-
厚み:1.2mmのFKM板(又はFCP板)と、厚み:2.2mmの未加硫エピクロルヒドリンゴム板(実施例1~12又は比較例1~9のゴム組成物からなる)とを張り合わせたものを、厚み:3mmの金型に挟み、面圧:20kgf/cm2 、160℃×45分の条件でプレス加硫を行なった後、得られた加硫シートを1インチ幅で短冊状に切断した。次いで、この短冊状の加硫シートをストログラフを用いて、剥離速度:50mm/分で引き離した際の、上記FKM板(又はFCP板)と、加硫エピクロルヒドリンゴム板との剥離力(kgf/inch)を測定した。」
「【0052】
【表11】
[図:0001393078000017.jpg]
」

段落【0045】の記載を踏まえて段落【0052】の【表11】を参照すると、【表11】には、FKM1からなるFKM板と、実施例1のゴム組成物からなるエピクロルヒドリンゴム板との積層体が記載されている。

実施例1のゴム組成物については特に段落【0026】~【0027】に、FKM1については段落【0046】に記載されている。

したがって、【表11】におけるFKM1からなるFKM板と、実施例1のゴム組成物からなるエピクロルヒドリンゴム板との積層体に注目すると、引用文献7には以下の引用発明5及び引用製造方法発明5が記載されていると認められる。

<引用発明5>

「フッ素ゴムFKM1からなるFKM板と、ゴム組成物からなるエピクロルヒドリンゴム板との積層体であって、
ゴム組成物は、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合体を100重量部、SRFカーボンを70重量部、ハイドロタルサイトDHT-4Aを5重量部含み、
フッ素ゴムFKM1は、デュポン社製のバイトンE430であるフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体である、
積層体。」

<引用製造方法発明5>

「フッ素ゴムFKM1からなるFKM板と、ゴム組成物からなるエピクロルヒドリンゴム板との積層体であって、
ゴム組成物は、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合体を100重量部、SRFカーボンを70重量部、ハイドロタルサイトDHT-4Aを5重量部含み、
フッ素ゴムFKM1は、デュポン社製のバイトンE430であるフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体である、
積層体。」

(2)引用発明1または引用製造方法発明1に基づく新規性、進歩性の判断について

ア 本件発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「エピクロルヒドリン系ゴムシート」は、本件発明1の「層(1)」に相当する。

引用発明1の「フッ素ゴムシート」は、本件発明1の「層(2)」に相当する。

引用発明1の「エピクロルヒドリン系ゴム」は、「エピクロルヒドリン」が「Epichlorohydrin」のカタカナ表記として「エピクロロヒドリン」のことであると解され、エピクロロヒドリンがフッ素ではないハロゲン原子である塩素原子を含む分子であって当該塩素原子を包含するゴムであるから、本件発明1の「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」である「エピクロロヒドリンゴム」に相当する。

引用発明1の「MgO」は、Mgが2族元素でありOが酸素であり無機化合物であるから、本件発明1の「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」に相当する。

引用発明1の「FEFカーボン」は、本件特許明細書等の段落【0032】に「各種カーボンブラック」として「FEF」が挙げられていることから把握できるように、本件発明1の「カーボンブラック」に相当する。

引用発明1の「フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体」を含み「フッ素ゴムシート」となる組成物は、重合体であり、ハロゲン原子であるフッ素を含み、「層(1)」の「ハロゲン系ゴム」に相当するとしたエピクロルヒドリン系ゴムとは異なるものであるから、本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕」に相当する。

また、引用発明1の「フッ素ゴムシート」となる「フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン-4フッ化エチレン共重合体」は、フッ化ビニリデンがビニリデンフルオライド(VdF)とも呼ばれるものであり、6フッ化プロピレンが6(ヘキサ-)フッ化(フルオロ-)されたプロピレンであってヘキサフルオロプロピレン(HFP)とも呼ばれるものであり、4フッ化エチレンが4(テトラ)フッ化(フルオロ-)されたエチレンであってテトラフルオロエチレンとも呼ばれるものであり、また「ゴム」となる材料であってエラストマーといえるから、本件発明1の「VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体」である「エラストマー」に相当する。

引用発明1の「加硫系がポリオールである」は、本件発明1の「ポリオール系架橋剤を含む」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1-1~1-2で相違する。

<一致点1>

「下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。
層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムである層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体であるエラストマーであるフッ素系ゴムであり、且つ、ポリオール系架橋剤を含む層。」

<相違点1-1>

本件発明1の「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」は、ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムである選択肢においては、「ハイドロタルサイト」であるのに対し、引用発明1は「MgO」であり、ハイドロタルサイトではない点。

<相違点1-2>

本件発明1の「層(1)」をなす「組成物」は、ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムである選択肢においては、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む」のに対し、引用発明1の「エピクロルヒドリン系ゴム」をなす「組成物」は、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含むことは特定されていない点。

イ 相違点について検討する。

(ア) 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。

引用文献1には、「エピクロルヒドリン系ゴム」をなす「組成物」に「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることを示唆する記載はない。また、他に、引用発明1において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を用いることを動機付ける文献も見当たらない。

本件特許明細書等に、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」が例示される「オニウム塩」(段落【0055】)を「0.2質量部以上、10質量部以下」の「範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される」(段落【0056】)と記載されていることを考慮すると、引用発明1において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることが適宜なし得たことともいえない。

(イ) よって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明1ではない。

(ウ) また、引用発明1において相違点1-2に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて、本件発明1を限定するものであるから、上記イと同様に、引用発明1ではなく、引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8と引用製造方法発明1とを対比すると、相違点1-1~1-2において相違し、その余の点で一致する。

上記イ(ア)で検討したのと同様に、相違点1-2は実質的な相違点であるから、本件発明8は引用製造方法発明1ではない。

また、引用製造方法発明1において相違点1-2に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明8は引用製造方法発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(3)引用発明2または引用製造方法発明2に基づく新規性、進歩性について

ア 本件発明1と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「ヒドリン系ゴム層」は、本件発明1の「層(1)」に相当する。

引用発明2の「フッ素ゴム層」は、本件発明1の「層(2)」に相当する。

引用発明2の「共押出成形し」て「フッ素ゴム層の外周にヒドリン系ゴム層が積層形成されてなる耐熱ホース」は、共押出成形により直接接合されたものとなると解されるから、本件発明1の「層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体」に相当する。

引用発明2の「ヒドリン系ゴム層を形成するヒドリンゴム組成物」は、本件発明1の「層(1)」をなす「組成物」に相当する。

引用発明2の「エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴムであるヒドリンゴムA」及び「エピクロルヒドリン重合ゴムであるヒドリンゴムB」は、「エピクロルヒドリン」が「エピクロロヒドリン」と同じものであり「エピクロロヒドリン」がフッ素ではないハロゲン原子である塩素を含むものであるから、本件発明1の「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」、「エピクロロヒドリンゴム」のいずれにも相当する。

引用発明2の「協和化学工業社製のDHT-4Aである含水ハイドロタルサイトである受酸剤A」は、協和化学工業社製のDHT-4Aが引用文献3の段落【0026】においてMgとOを含む化合物の例として示されていること、及び、協和化学工業社製のDHT-4Aについての本件特許明細書等の段落【0022】における記載から、本件発明1の「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」である「ハイドロタルサイト」に相当する。

引用発明2の「SRF級カーボンブラック」は、本件発明1の「カーボンブラック」に相当する。

引用発明2の「フッ素ゴム層を形成するフッ素ゴム組成物」は、ハロゲン原子であるフッ素を含有し、「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体」である重合体でもあり、「層(1)」の「ハロゲン系ゴム(A)」に相当するとした「エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合ゴムであるヒドリンゴムA」及び「エピクロルヒドリン重合ゴムであるヒドリンゴムB」とは異なるものであるから、本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕」に相当する。

引用発明2の「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体」は、フッ化ビニリデンがビニリデンフルオライド(VdF)のことであり、六フッ化プロピレンがヘキサフルオロプロピレン(HFP)のことであり、四フッ化エチレンがテトラフルオロエチレン(TFE)のことであり、「ゴム」とされるものであって「エラストマー」といえるから、本件発明1の「VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体」である「エラストマー」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点2-1~2-2で相違する。

<一致点2>

「下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。
層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該化合物(B)がハイドロタルサイトである層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体であるエラストマーであるフッ素系ゴムである層。」

<相違点2-1>

本件発明1においては「前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む」のに対し、引用発明2においては「ヒドリン系ゴム層を形成するヒドリンゴム組成物」が「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含むことは特定されていない点。

<相違点2-2>

本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)」は「ポリオール系架橋剤を含む」のに対し、引用発明2の「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体であるダイエル G555、ダイキン社製」がポリオール系架橋剤を含むことは特定されていない点。

イ 相違点について検討する。

(ア) まず相違点2-1について検討する。

引用文献3には、「ヒドリン系ゴム層を形成するヒドリンゴム組成物」に「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることを示唆する記載はない。また、他に、引用発明2において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を用いることを動機付ける文献も見当たらない。

本件特許明細書等に、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」が例示される「オニウム塩」(段落【0055】)を「0.2質量部以上、10質量部以下」の「範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される」(段落【0056】)と記載されていることを考慮すると、引用発明2において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることが適宜なし得たことともいえない。

(イ) よって、相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明2ではない。

(ウ) また、引用発明2において相違点2-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて、本件発明1を限定するものであるから、上記イと同様に、引用発明2ではなく、引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8と引用製造方法発明2とを対比すると、相違点2-1~2-2において相違し、その余の点で一致する。

上記イ(ア)で検討したのと同様に、相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件発明8は引用製造方法発明2ではない。

また、引用製造方法発明2において相違点2-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明8は引用製造方法発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(4)引用発明3または引用製造方法発明3に基づく新規性、進歩性について

ア 本件発明1と引用発明3とを対比する。

引用発明3の「アクリル系ゴム層」は、本件発明1の「層(1)」に相当する。

引用発明3の「フッ素系ゴム層」は、本件発明1の「層(2)」に相当する。

引用発明3の「共押出成形し、フッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が形成されてなる耐熱ホース」は、共押出成形によりフッ素系ゴム層の外周面にアクリル系ゴム層が直接接合されると解されるから、本件発明1の「下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体」に相当する。

引用発明3の「層(1)」をなす「組成物」は、本件発明1の「アクリル系ゴム組成物」に相当する。

引用発明3の「アクリル系エラストマーとしてデンカER-5300PであるACM」は、本件発明1の「アクリルゴム(ACM)」である「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」と、アクリルゴムである限りで一致する。

引用発明3の「MAFカーボンブラック」は、本件発明1の「カーボンブラック」に相当する。

引用発明3の「受酸剤iとしてMgO」は、無機化合物でありMgが2族元素でありOが酸素であり、また、MgOは酸化マグネシウムとも称されるから、本件発明1の「酸化マグネシウム」である「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」に相当する。

引用発明3の「フッ素系ゴム組成物」は、ハロゲン原子であるフッ素を含有し、「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体」から調製されていて重合体であり、「層(1)」に相当するとした「アクリル系ゴム層」に含まれるゴムとは異なるものであるから、本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕」に相当する。

引用発明3の「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)」は、フッ化ビニリデンがビニリデンフルオライド(VdF)のことであり、六フッ化プロピレンがヘキサフルオロプロピレン(HFP)のことであり、四フッ化エチレンがテトラフルオロエチレン(TFE)のことであり、「フッ素系ゴム」とされるものであって「エラストマー」といえるから、本件発明1の「VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体」である「エラストマー」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明3とを対比すると、以下の一致点3で一致し、相違点3-1~3-3で相違する。

<一致点3>

「下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。
層(1):ゴム(A):100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ゴム(A)がアクリルゴムであり、当該無機化合物(B)が酸化マグネシウムである層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体であるエラストマーであるフッ素系ゴムである層。」

<相違点3-1>

本件発明1においては「層(1)」をなす組成物が「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」を含み、「当該ハロゲン系ゴム(A)がアクリルゴム(ACM)であ」るのに対し、引用発明3においては「アクリル系エラストマーとしてデンカER-5300PであるACM」が「ハロゲン系」ゴムであって「フッ素系ゴムを除く」ものであるか不明である点。

<相違点3-2>

本件発明1においては、「前記組成物が塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上10質量部以下含む」のに対し、引用発明3においては「アクリル系ゴム組成物」が「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含むことは特定されていない点。

<相違点3-3>

本件発明1においては、「当該ハロゲン含有重合体(C)が、」「ポリオール系架橋剤を含む」のに対し、引用発明3においては「フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの三元共重合体(ダイエル G555、ダイキン社製)」を用いる「フッ素系ゴム組成物」が「ポリオール系架橋剤を含む」ことは特定されていない点。

イ 相違点について検討する。

(ア) 事案に鑑み、相違点3-2について検討する。

引用文献5には、「アクリル系エラストマーとして」の「デンカER-5300PであるACM」に「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることを示唆する記載はない。

本件特許明細書等に、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」が例示される「オニウム塩」(段落【0055】)を「0.2質量部以上、10質量部以下」の「範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される」(段落【0056】)と記載されていることを考慮すると、引用発明3において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることが適宜なし得たことともいえない。

一応、特開2013-67149号公報には、「アクリル系エラストマー組成物にオニウム塩を添加することにより、フッ素系エラストマーとアクリル系エラストマーとの共架橋が可能となる」(段落【0036】)こと、「本実施形態の積層体1は、オニウム塩の添加によりアクリル系エラストマーとフッ素系エラストマーとが共架橋可能となるため、アクリル系エラストマーの層11と、フッ素系エラストマーの層12との接着性を向上させることができる」こと、「アクリル系エラストマー組成物に添加されるオニウム塩は、特に限定されるものではないが、例えば有機アンモニウム塩や有機ホスホニウム塩などが挙げられ・・・有機アンモニウム塩としては、例えば・・・ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド・・・などが挙げられる」(段落【0038】)ことが記載されており、当該「ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド」は、「クロリド」が「塩化」を意味すると解され、「ステアリル」基がC18アルキル基を意味すると解されるから、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムの一種と解される。

しかし、引用文献8において「ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド」は「オニウム塩」の例として示される「有機アンモニウム塩」のさらなる例として多数示される物質の中の1つに過ぎず、特に好ましいとされるものでもなく実施例等における使用もないものに過ぎない。すると、引用文献8の開示に接した当業者が、特に「ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド」に注目して引用発明3の「アクリル系エラストマー」に適用するであろうとはいえない。

(イ) よって、相違点3-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明3ではない。

(ウ) また、引用発明3において相違点3-2に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点3-1について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて、本件発明1を限定するものであるから、上記イと同様に、引用発明3ではなく、引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8と引用製造方法発明3とを対比すると、相違点3-1~3-3において相違し、その余の点で一致する。

上記イ(ア)で検討したのと同様に、相違点3-2は実質的な相違点であるから、本件発明8は引用製造方法発明3ではない。

また、引用製造方法発明3において相違点3-2に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点3-1について検討するまでもなく、本件発明8は引用製造方法発明3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(5)引用発明4または引用製造方法発明4に基づく新規性、進歩性について

ア 本件発明1と引用発明4とを対比する。

引用発明4の「エピクロル系ヒドリンゴム組成物より作製したシートA」は本件発明1の「層(1)」に相当する。

引用発明4の「フッ素ゴム組成物より作製したシートB」は本件発明1の「層(2)」に相当する。

引用発明4の「ゴム積層体」は本件発明1の「積層体」に相当する。

引用発明4の「エピクロル系ヒドリンゴム組成物」は本件発明1の「層(1)」をなす「組成物」に相当する。

引用発明4の「エピクロルヒドリン単独共重合体ゴム」及び「エピクロロヒドリン二元共重合体ゴム」は、フッ素ではないハロゲン原子である塩素を含むゴムであるから、本件発明1の「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」、「エピクロロヒドリンゴム」のいずれにも相当する。

引用発明4の「ハイドロタルサイト」は本件発明1の「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」、「ハイドロタルサイト」に相当する。

引用発明4の「N-550カーボンブラック」は本件発明1の「カーボンブラック」に相当する。

引用発明4の「フッ素ゴム組成物」は本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕」に相当する。

引用発明4の「デュポン社の商品であるバイトンE-430という・・・フッ素ゴム8」は、本件発明1の「エラストマーであるフッ素系ゴム」に相当する。

引用発明4の「ジヒドロキシ芳香族化合物系の加硫剤を含む」は、ジヒドロキシ芳香族化合物が2つのヒドロキシ基を含むものであってポリオール系であるから、本件発明1の「ポリオール系架橋剤を含む」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明4とは以下の一致点4で一致し、相違点4-1~4-2で相違する。

<一致点4>

下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。

層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、

当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該化合物(B)がハイドロタルサイトである層。

層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、

当該ハロゲン含有重合体(C)が、のエラストマーであるフッ素系ゴムであり、且つ、ポリオール系架橋剤を含む層。

<相違点4-1>

本件発明1の層(1)をなす組成物は、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む」のに対し、引用発明4は含まない点。

<相違点4-2>

本件発明1のフッ素系ゴムは「ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)/HFP共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、HFP/エチレン/VdF共重合体、TFE/プロピレン共重合体、およびHFP/エチレン共重合体のうちのいずれか」であるのに対し、引用発明4の「デュポン社の商品であるバイトンE-430という」「フッ素ゴム8」は、それらのいずれかであるか不明である点。

イ 相違点について検討する。

(ア) まず、相違点4-1について検討する。

引用文献6には、「エピクロル系ヒドリンゴム組成物」に「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることを示唆する記載はない。また、他に、引用発明4において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を用いることを動機付ける文献も見当たらない。

本件特許明細書等に、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」が例示される「オニウム塩」(段落【0055】)を「0.2質量部以上、10質量部以下」の「範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される」(段落【0056】)と記載されていることを考慮すると、引用発明4において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることが適宜なし得たことともいえない。

(イ) よって、相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明4ではない。

(ウ) また、引用発明4において相違点4-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明4に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて、本件発明1を限定するものであるから、上記イと同様に、引用発明4ではなく、引用発明4に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8と引用製造方法発明4とを対比すると、相違点4-1~4-2において相違し、その余の点で一致する。

上記イ(ア)で検討したのと同様に、相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件発明8は引用製造方法発明4ではない。

また、引用製造方法発明4において相違点4-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明8は引用製造方法発明4に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(6)引用発明5または引用製造方法発明5にも基づく新規性、進歩性について

ア 本件発明1と引用発明5とを対比する。

引用発明5の「ゴム組成物からなるエピクロルヒドリンゴム板」は、本件発明1の「層(1)」に相当する。

引用発明5の「フッ素ゴムFKM1からなるFKM」は、本件発明1の「層(2)」に相当する。

引用発明5の「エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合体」は、本件発明1の「ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕」、「エピクロロヒドリンゴム」に相当する。

引用発明5の「SRFカーボン」は、本件特許明細書等の段落【0032】に「SRF」がカーボンブラックとして示されているように、本件発明1の「カーボンブラック」に相当する。

引用発明5の「ハイドロタルサイトDHT-4A」は、本件発明1の「2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B)」、「ハイドロタルサイト」に相当する。

引用発明5の「デュポン社製のバイトンE430であるフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体である」「フッ素ゴムFKM1」は、ハロゲン原子であるフッ素を含有する共重合体であるから、本件発明1の「ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕」に相当する。

引用発明5の「デュポン社製のバイトンE430であるフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体」は、フッ化ビニリデンはビニリデンフルオライドとも呼称され、また、「フッ素ゴム」であってゴムとしての弾性も有すると解されるから、本件発明1の「ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体」である「エラストマー」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明5とを対比すると、以下の一致点5で一致し、相違点5-1~5-2で相違する。

<一致点5>

「下記層(1)と、下記層(2)とが直接接合されてなる積層体。
層(1):ハロゲン系ゴム(A)〔但し、フッ素系ゴムを除く〕:100質量部、2族元素および13族元素から選択される少なくとも1種の元素と、酸素とを含有する無機化合物(B):1~30質量部、及び、カーボンブラック:10~300質量部を含む組成物からなる層であって、
当該ハロゲン系ゴム(A)がエピクロロヒドリンゴムであり、当該化合物(B)がハイドロタルサイトである層。
層(2):ハロゲン含有重合体(C)〔但し、層(1)のハロゲン系ゴムを除く。〕からなる層であって、
当該ハロゲン含有重合体(C)が、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体であるエラストマーであるフッ素系ゴムである層。」

<相違点5-1>

本件発明1の層(1)をなす前記組成物は「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む」のに対し、引用発明5のゴム組成物は「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウムをさらに0.2質量部以上、10質量部以下含む」を含むことは特定されていない点。

<相違点5-2>

本件発明1のハロゲン含有重合体は、「ポリオール系架橋剤を含む」のに対し、引用発明5のフッ素ゴムFKM1はポリオール系架橋剤を含むことは特定されていない点。

イ 相違点について検討する。

(ア) まず、相違点5-1について検討する。

引用文献7には、「エピクロルヒドリン系ゴム」をなす「組成物」に「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることを示唆する記載はない。また、他に、引用発明5において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を用いることを動機付ける文献も見当たらない。

本件特許明細書等に、「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」が例示される「オニウム塩」(段落【0055】)を「0.2質量部以上、10質量部以下」の「範囲で用い、前記無機化合物(B)と併用すると、より層(2)との接着強度が改良される」(段落【0056】)と記載されていることを考慮すると、引用発明5において「塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム」を含めることが適宜なし得たことともいえない。

(イ) よって、相違点5-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明5ではない。

(ウ) また、引用発明5において相違点5-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点5-2について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて、本件発明1を限定するものであるから、上記イと同様に、引用発明5ではなく、引用発明5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8と引用製造方法発明5とを対比すると、相違点5-1~5-2において相違し、その余の点で一致する。

上記イ(ア)で検討したのと同様に、相違点5-1は実質的な相違点であるから、本件発明8は引用製造方法発明5ではない。

また、引用製造方法発明5において相違点5-1に係る構成を備えたものとすることが容易とはいえないから、相違点5-2について検討するまでもなく、本件発明8は引用製造方法発明5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

申立人は、特許異議申立書において、訂正前の本件特許明細書等に関し、「本発明に係るハロゲン系ゴム(A)としては、具体的には、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、などが挙げられる。」(段落【0017】)と記載があり、当該ハロゲンゴム(A)として、段落【0108】~【0118】に示される実施例1~12において「Nipol AR-12:アクリル酸エステルを骨格主成分とするアクリルゴム、日本ゼオン社製」(段落【0108】)が使用されたとされていることを指摘し、アクリルゴム(ACM)とは一般にアクリル酸エステルを主成分の重合単位として重合することにより得られる合成ゴムであって塩素原子などのハロゲン原子を必須として含有するものではないこと、また、当該「Nipol AR-12:アクリル酸エステルを骨格主成分とするアクリルゴム、日本ゼオン社製」がハロゲン原子を含有するゴムであるかは不明であり、申立人が調査等を行った限りではNipol AR-12が架橋サイトとして塩素原子などのハロゲン原子を含有するとの証拠を得ることができなかったとして、「塩素原子などのハロゲン原子を含有するとは言えず、むしろ、塩素原子などのハロゲン原子を含有しないと言える「アクリルゴム(Nipol AR-12)」を使用した場合においても、本件特許発明における課題([0009])が十分に解決できており、そのため、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、いわゆる当業者が、本件特許発明1~8を実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されたものであるとは言ない。そのため、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものである。」と主張する。

しかし、仮に「Nipol AR-12」が「ハロゲン系ゴム」とはいえないとしても、「Nipol AR-12」を用いて課題を解決できることは、発明の詳細な説明の記載から当業者が本件特許発明を実施をすることができないことを意味するものではない。特許法第36条第4項第1号は、本件特許発明以外の手段により本件特許発明と同様の効果を奏するものが存在してはならないことを規定するものではない。

また、仮に「Nipol AR-12」が「ハロゲン系ゴム」とはいえないとしても、塩素を含むアクリルゴムがアクリルゴムとしては周知のものであることを考慮すれば、当業者が発明を実施することはできると解される。

なお、「Nipol AR-12」がハロゲン原子を包含しないという主張について、当該主張を支持する証拠は提示されておらず、直ちには採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、5~8に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に請求項1、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、本件訂正により、請求項2~4は削除されたため、請求項2~4に係る特許に対する特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-701171

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