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特許異議申立

2024-700702

保護フィルム付き光透過性フィルムおよび保護フィルム

審判番号
2024-700702
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-014903
登録番号
7435640
請求日
2024年07月24日
審決日
2025年10月24日
公報発行日
2026年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
  • 【権利者代理人】横田 修孝
  • 【権利者代理人】榎 保孝
  • 【権利者代理人】大森 未知子
  • 【異議申立人】岩崎 千鶴子
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7435640号発明「保護フィルム付き光透過性フィルムおよび保護フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7435640号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7435640号の請求項1、2、6に係る特許を維持する。 特許第7435640号の請求項3~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7435640号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年12月28日に出願した特願2017-254127号の一部を令和4年2月2日に新たな特許出願としたものであって、令和6年2月13日に特許権の設定登録がされ、令和6年2月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 6年 7月24日 :特許異議申立人岩崎千鶴子(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 6年11月21日付け:取消理由通知書 令和 7年 1月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 7年 2月21日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 令和 7年 5月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 7年 7月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 7年 7月24日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 なお、令和7年2月27日付け及び令和7年7月31日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知を期間を指定して行い、意見書を提出する機会を与えたが、いずれにおいても当該期間内に申立人から応答はなかった。 また、令和7年2月21日提出の手続補正書により補正された令和7年1月23日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年7月24日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正の請求(当該訂正の請求による訂正自体を以下「本件訂正」という。)は、「特許第7435640号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面が、前記粘着層の表面である、光透過性フィルム。」とあるのを、 「前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面が、前記粘着層の表面であり、 前記光透過性フィルムが、前記樹脂基材の少なくとも片面に設けられた樹脂層をさらに備え、 前記樹脂層の膜厚が1μm以下であり、前記保護フィルムが前記樹脂層の表面に剥離可能に貼り付けられており、 前記光透過性フィルムから全ての前記保護フィルムを剥離した状態で、前記光透過性フィルムに対し前記光透過性フィルムの対向する辺部の間隔が30mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に前記光透過性フィルムに割れまたは破断が生じない、保護フィルム付き光透過性フィルム。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1ないし5のいずれか一項に記載の保護フィルム付き光透過性フィルム。」とあるのを、 「請求項1または2に記載の保護フィルム付き光透過性フィルム。」に訂正する。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項2~6は、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の光透過性フィルムが、樹脂層をさらに有すること、及び、特定の180°折り畳み試験において光透過性フィルムに割れまたは破断が生じないことを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の訂正前の請求項4、5並びに明細書の【0022】~【0025】及び【0222】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2~4 訂正事項2~4は、請求項3~5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項5 訂正事項5は、請求項6について、請求項3~5が削除されたことに伴い引用する請求項の数を減少させるものであり、また、削除された請求項3~5を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1、2、6に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも樹脂基材を備える折り畳み可能な光透過性フィルム(ただし、導電フィルムを除く。)と、前記光透過性フィルムの少なくとも片面に剥離可能に貼り付けられた保護フィルムとを備える保護フィルム付き光透過性フィルムであって、 前記樹脂基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であり、 前記保護フィルムの厚みが、30μm以上であり、 前記保護フィルムのヘイズ値が、3%以下であり、 前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面の外部ヘイズ値が、3%以下であり、 前記保護フィルムが、ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムにおける前記光透過性フィルム側の面に設けられた粘着層とを備え、 前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面が、前記粘着層の表面であり、 前記光透過性フィルムが、前記樹脂基材の少なくとも片面に設けられた樹脂層をさらに備え、 前記樹脂層の膜厚が1μm以下であり、前記保護フィルムが前記樹脂層の表面に剥離可能に貼り付けられており、 前記光透過性フィルムから全ての前記保護フィルムを剥離した状態で、前記光透過性フィルムに対し前記光透過性フィルムの対向する辺部の間隔が30mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に前記光透過性フィルムに割れまたは破断が生じない、保護フィルム付き光透過性フィルム。 【請求項2】 前記保護フィルムが、前記光透過性フィルムの両面に剥離可能に貼り付けられている、請求項1に記載の保護フィルム付き光透過性フィルム。」 「【請求項6】 前記保護フィルム付き光透過性フィルムが、ロール状に巻回されている、請求項1または2に記載の保護フィルム付き光透過性フィルム。」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 1 取消理由の概要 取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1~4、6に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献一覧](申立人が提出した甲○号証は以下「甲○」という。) 甲1:特開2004-94012号公報 甲3:特開2014-180840号公報 引用文献1:国際公開第2017/119391号(当審において職権で引用した文献) 2 当審における判断 当審合議体は、以下のとおり、上記取消理由で通知した理由によっては、訂正後の請求項1、2、6に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献に記載された事項、発明 ア 甲1 (ア)甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお下線が当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。 「【請求項1】 透明基材フィルムの表面に粘着層を形成してなる光学フィルム用表面保護フィルムであって、光透過率が85%以上、且つ、ヘイズ値が3.5%以下であることを特徴とする光学フィルム用表面保護フィルム。 ・・・ 【請求項4】 光学フィルムに、請求項1~3のいずれかに記載の表面保護フィルムが貼付されている表面保護フィルム付き光学フィルム。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、光学フィルム用表面保護フィルムに関する。本発明の光学フィルム用表面保護フィルムは、偏光板、位相差板等の各種光学フィルム表面の保護に用いられる。また、光学フィルムを最表面に有する液晶表示パネル表面に貼着することによって液晶表示装置等、その他に有機EL表示装置、PDP等の各種の画像表示装置の保護に用いられる。」 「【0007】 すなわち本発明は、透明基材フィルムの表面に粘着層を形成してなる光学フィルム用表面保護フィルムであって、光透過率が85%以上、且つ、ヘイズ値が3.5%以下であることを特徴とする光学フィルム用表面保護フィルム、に関する。 【0008】 上記光透過率が85%以上、且つ、ヘイズ値が3.5%以下である表面保護フィルムは透明性が高く、偏光板等の光学フィルムの表面に該保護フィルムを貼付したまま光学検査を行うことができる。そのため検査時に一旦表面保護フィルム剥離し、検査終了後に再度貼付するという工程を省略することができ、作業の効率化、低コスト化を図ることができる。」 「【0035】 本発明の表面保護フィルムを貼付する光学フィルムとしては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光板の他に楕円偏光板、光学補償機能を有する偏光板、視角拡大機能を有する偏光板、輝度向上機能を有する偏光板などが挙げられる。これらは偏光板に位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルムまたは防眩シート等が積層されている。」 「【0044】 実施例1 透明基材フィルムとして厚さ38μmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物からなる導電層組成物をバーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させて、厚さ0.08μmの導電層を形成した。また、前記ポリエステルフィルムの反対側の面にアクリル系粘着剤(日東電工社製)をバーコーターを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥させて、厚さ13μmの粘着層を形成し、表面保護フィルムを作製した。」 「【0052】【表1】 [図:0001433056000001.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 上記(ア)の記載を総合し、特に実施例1に着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「透明基材フィルムの表面に粘着層を形成した表面保護フィルムが貼付されている表面保護フィルム付き光学フィルムであって、 透明基材フィルムとして厚さ38μmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に、厚さ0.08μmの導電層を形成し、前記ポリエステルフィルムの反対側の面に厚さ13μmの粘着層を形成し、表面保護フィルムを作製し、 光学フィルムとしては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されないものであり、 前記表面保護フィルムのヘイズ値が1.8%である、 表面保護フィルム付き光学フィルム。」 イ 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 引用文献1には以下の記載がある。 「[0002] 本発明は、光学フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。」 「[0007] 本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、優れた硬度および優れた耐久折り畳み性能を有する光学フィルム、これを備えた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。」 「[0071] 第1の領域10Bにおいては、第1のハードコート層13の膜厚は、一定となっていることが好ましい。第1の領域10Bにおける第1のハードコート層13の膜厚は、2μm以上20μm以下であることが好ましい。第1の領域における第1のハードコート層の膜厚が、2μm未満であると、ハードコート層の硬度が低下するおそれがあり、また20μmを超えると、厚みが厚すぎることに起因して加工性が悪化するおそれがある。・・・」 「[0074] 第2のハードコート層14は、第1の領域10Bにおいては第1のハードコート層13上に設けられており、第2の領域10Cにおいては第1のハードコート層13間の隙間に埋め込まれている。第1の領域10Bにおける第2のハードコート層14の膜厚は、0.5μm以上4μm以下であることが好ましい。第1の領域における第2のハードコート層の膜厚が、0.5μm未満であると、耐擦傷性が低下するおそれがあり、また4μmを超えると、第2のハードコート層用組成物のコーティングが困難となるおそれがある。また、第2の領域10Cにおける第2のハードコート層14の膜厚は、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。第2の領域における第2のハードコート層の膜厚が、0.5μm未満であると、耐擦傷性が低下するおそれがあり、また20μmを超えると、充分な屈曲性が得られないおそれがある。・・・」 「[0152]<実施例1> 光透過性樹脂基材として、厚さ30μmおよび幅300mmの上記式(1)で表されるポリイミド樹脂からなるポリイミド基材を準備し、・・・膜厚7μmの複数の第1のハードコート層と、第1のハードコート層上に膜厚2μmの第2のハードコート層とからなるハードコート層を形成した。これにより、ポリイミド基材、第1のハードコート層および第2のハードコート層がこの順で配置された第1の領域と、第1のハードコート層間の隙間に第2のハードコート層が埋め込まれ、ハードコート層の表面の硬度が第1の領域より低い第2の領域とを有する光学フィルムを得た。・・・」 「[0159]<実施例7> 実施例7においては、第1のハードコート層の膜厚を7μmから2μmに代え、また第2のハードコート層の膜厚を2μmから0.5μmに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。・・・」 「[0170]<耐久折り畳み試験> 実施例及び比較例に係る光学フィルムを30mm×100mmの矩形状にカットして作製したサンプルを、耐久性試験機(製品名「DLDMLH-FS、ユアサシステム機器社製)の固定端および移動端に取り付け、移動端を移動させて、サンプルのハードコート層を形成した側の面が内側となり、かつサンプルの曲げ半径が1.5mm(直径3.0mm)となるようにサンプルを180°に折り畳む試験を10万回行った。なお、実施例に係るサンプルにおいては、第2の領域で折り畳むものとした。 [0171] ・・・ ○:上記試験をサンプルの両面に対して行った場合であっても、サンプルに割れおよび破断が生じていなかった。 ×:上記試験をサンプルの両面に対して行った場合、サンプルに割れもしくは破断が生じた。」 「[0173][表1] [図:0001433056000002.jpg] 」 「[図1] [図:0001433056000003.jpg] 」 (イ)引用文献1に記載された事項 上記(ア)の記載を総合し、特に実施例7に着目すると、引用文献1には以下の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されているといえる。 「曲げ半径が1.5mm(直径3.0mm)となるように180°に折り畳む試験を10万回行っても割れおよび破断が生じない、ポリイミド基材、膜厚2μmの第1のハードコート層および膜厚0.5μmの第2のハードコート層を有する光学フィルム。」 ウ 甲3 (ア)甲3の記載 甲3には以下の記載がある。 「【請求項1】 光学フィルムの両面に、それぞれ、第1及び第2の保護フィルムが積層されたフィルムであって、 前記光学フィルムが、透明樹脂で形成され、かつ60℃及び荷重10mNの条件で、針入方式の熱機械分析による5分後から10分後までの変形率が総厚みに対して1.0%以上であり、 前記第1及び第2の保護フィルムが、それぞれ、基材層と、この基材層の光学フィルムと接触する面に形成された粘着層とを含む積層体であり、 前記第1及び第2の保護フィルムの基材層が、それぞれ、合成樹脂で形成され、かつ60℃及び荷重10mNの条件で、針入方式の熱機械分析による5分後から10分後までの変形率が総厚みに対して1.0%未満であり、 前記第1及び第2の保護フィルムの粘着層表面の形状が、それぞれ、中心線平均粗さRa0.1μm以下であり、かつ 前記第1及び第2の保護フィルムの粘着層が、それぞれ、加速電圧200kV、線量350kGyで電子線を照射したとき、0.01~0.5N/25mmの粘着力を有する積層フィルム。 ・・・ 【請求項8】 ロール状に巻き取られたロール体である請求項1~7のいずれかに記載の積層フィルム。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、60℃で永久歪みを有する透明な光学フィルムの両面が保護フィルムで積層された積層フィルム及びロール状に巻き取った光学フィルムの表面平滑性を保持する方法に関する。」 「【発明の効果】 【0018】 本発明では、低温で永久歪み性を有する光学フィルムの両面が特定の保護フィルムで積層されているため、低温で永久歪み性を有する光学フィルムをロール状に巻き取って保管及び流通してもゲージバンド痕(又は巻き締まり)の発生を抑制でき、特に、高温(例えば、40~60℃程度)で保管及び流通してもゲージバンド痕の発生を抑制でき、表面平滑性を保持できる。」 (イ)甲3に記載された事項 上記(ア)の記載を総合すると、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。 「光学フィルムの両面に、それぞれ、第1及び第2の保護フィルムが粘着層を介して積層することにより、該フィルムをロール状に巻き取ってもゲージバンド痕の発生を防止すること。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 <保護フィルム> 甲1発明は、「透明基材フィルムの表面に粘着層を形成した表面保護フィルムが貼付されている表面保護フィルム付き光学フィルム」であるから、甲1発明の「透明基材フィルムとして厚さ38μmのポリエステルフィルム」、「厚さ13μmの粘着層」、「透明基材フィルムの表面に粘着層を形成した表面保護フィルム」はそれぞれ、 本件発明1の「ポリエステル系樹脂からなる基材フィルム」、「粘着層」、「ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムにおける前記光透過性フィルム側の面に設けられた粘着層とを備え」た「保護フィルム」に相当する。 <光透過性フィルム> 甲1発明の「光学フィルム」は【0035】~【0036】の記載から光透過性の樹脂フィルムであるといえるから、本件発明1の「少なくとも樹脂基材を備える折り畳み可能な光透過性フィルム(ただし、導電フィルムを除く。)」であって「前記樹脂基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であり」と、「少なくとも樹脂基材を備える」「光透過性フィルム」である限りにおいて一致する。 <保護フィルム付き光透過性フィルム> 甲1発明の「透明基材フィルムの表面に粘着層を形成した表面保護フィルムが貼付されている表面保護フィルム付き光学フィルム」は、甲1の【0009】の記載及び技術常識から表面保護フィルムは剥離可能といえるから、本件発明1の「少なくとも樹脂基材を備える」「光透過性フィルム」「と、前記光透過性フィルムの少なくとも片面に剥離可能に貼り付けられた保護フィルムとを備える保護フィルム付き光透過性フィルム」に相当する。 <保護フィルムの詳細> 甲1発明の「透明基材フィルムとして厚さ38μmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に、厚さ0.08μmの導電層を形成し、前記ポリエステルフィルムの反対側の面に厚さ13μmの粘着層を形成し、表面保護フィルムを作製し」、「前記表面保護フィルムのヘイズ値が1.8%である」態様は、合計厚みが51.08μm(=38+0.08+13)であること及び甲1発明における「ヘイズ値」は全ヘイズ値であって外部ヘイズ値はそれよりも小さいという技術常識を踏まえると、本件発明1の「前記保護フィルムの厚みが、30μm以上であり、前記保護フィルムのヘイズ値が、3%以下であり、前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面の外部ヘイズ値が、3%以下であり」、「前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面が、前記粘着層の表面である」態様に相当する。 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「少なくとも樹脂基材を備える光透過性フィルムと、前記光透過性フィルムの少なくとも片面に剥離可能に貼り付けられた保護フィルムとを備える保護フィルム付き光透過性フィルムであって、 前記保護フィルムの厚みが、30μm以上であり、 前記保護フィルムのヘイズ値が、3%以下であり、 前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面の外部ヘイズ値が、3%以下であり、 前記保護フィルムが、ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムにおける前記光透過性フィルム側の面に設けられた粘着層とを備え、 前記保護フィルムの前記光透過性フィルム側の表面が、前記粘着層の表面である、保護フィルム付き光透過性フィルム。」 [相違点] 光透過性フィルムについて、本件発明1では、「導電フィルムを除く」ものであって、「折り畳み可能な」「前記光透過性フィルムから全ての前記保護フィルムを剥離した状態で、前記光透過性フィルムに対し前記光透過性フィルムの対向する辺部の間隔が30mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に前記光透過性フィルムに割れまたは破断が生じない」ものであり、「樹脂基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であ」り、「前記樹脂基材の少なくとも片面に設けられた樹脂層をさらに備え、前記樹脂層の膜厚が1μm以下であり、前記保護フィルムが前記樹脂層の表面に剥離可能に貼り付けられて」いるのに対し、甲1発明では、光学フィルムがそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 まず、引用文献1記載事項における「ポリイミド基材」、「第1のハードコート層」及び「第2のハードコート層」、「光学フィルム」はそれぞれ、本件発明1の「樹脂基材」、「樹脂層」、「光透過性フィルム」に相当する。 ここで、甲1発明は、「光学フィルムとしては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されないものであ」る。 そうすると、甲1発明における表面保護フィルムを貼付する光学フィルムは、公知の光学フィルムの中から当業者が適宜選択できるものであるから、例えば、導電フィルムであるとは特定されていない引用文献1記載事項に係る光学フィルムを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 しかしながら、引用文献1記載事項に係る光学フィルムは「膜厚2μmの第1のハードコート層および膜厚0.5μmの第2のハードコート層を有する」ものであるし、引用文献1の「第1のハードコート層の膜厚が、2μm未満であると、ハードコート層の硬度が低下するおそれがあり」([0071])との記載を踏まえると、引用文献1記載事項において、第1のハードコート層と第2のハードコート層が重なって形成されるハードコート層の厚さを1μm以下とすることには阻害要因があるといえる。 また、相違点に係る構成は、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前における周知技術であったともいえない。 したがって、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、6について 本件発明2、6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由について 1 申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1、3に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件明細書には、全ヘイズ値が2.6%、3.0%、1.7%の保護フィルムを使用した保護フィルム付き光透過性フィルムの実施例が記載されているが、これらの保護フィルムの外部ヘイズ値が具体的に何%なのか不明であるから、請求項1が特定する「外部ヘイズ値が、3.0%以下」のうち任意の外部ヘイズ値を有する保護フィルムを製造することができない。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件明細書には、全ヘイズ値が2.6%、3.0%、1.7%の保護フィルムを使用した保護フィルム付き光透過性フィルムの実施例が課題を解決していることが記載されているが、これらの保護フィルムの外部ヘイズ値が具体的に何%なのか不明であり、例えば1.0%かも知れないから、請求項1が特定する「外部ヘイズ値が3%以下」の数値範囲全体において課題を解決することを当業者が認識することができない。 [証拠一覧] 甲1:特開2004-94012号公報 甲2:国際公開第2016/060213号 甲3:特開2014-180840号公報 2 当審における判断 (1)申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について ア 甲2に記載された事項 甲2の[0001]、[0048]、請求項1、3、4を参照すると、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。 「ポリイミド樹脂とシリカ微粒子とを含有するポリイミド樹脂組成物からなり、少なくとも一方の面に厚さ1~30μmのハードコート層が形成されてなるポリイミドフィルムをフレキシブル光学フィルムとして用いること。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は、上記第4の2(2)アで示しとおりである。 (イ)判断 まず、相違点は実質的なものであるから、本件発明1は甲1発明ではない。 そして、甲2の「(4)耐屈曲性 測定はポリイミドフィルムをR=0mmまで1度折り曲げ、破断するかを試験した。測定は5回実施し、折り曲げた5箇所のうち、全てで破断しなければA(破断箇所0個)、1箇所でも破断しなければB(破断箇所1~4個)、全てで破断すればC(破断箇所5個)と記載した。」([0060])との記載を踏まえると、甲2記載事項に係るフレキシブル光学フィルムは、1度折り曲げて破断しない程度の耐屈曲性しか有しないものである。 そうすると、甲1発明における表面保護フィルムを貼付する光学フィルムとして甲2記載事項に係るフレキシブル光学フィルムを採用したとしても、相違点に係る「180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に前記光透過性フィルムに割れまたは破断が生じない」までの耐屈曲性を備えるようにする動機付けはない。 また、相違点に係る構成は、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前における周知技術であったともいえない。 したがって、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明2、6について 本件発明2、6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記イと同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 以上より、新規性、進歩性に係る申立理由には理由がない。 (2)申立理由3(実施可能要件)について ア 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 そして、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。以下、この観点に立って検討する。 イ 本件明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本件発明に係る保護フィルム付き光透過性フィルムの実施例1~6が【0204】~【0215】に記載されており、当該実施例の保護フィルムの全ヘイズ値の測定方法は【0223】に記載されており、その測定結果は【0227】【表1】に示されている。さらに外部ヘイズ値の求め方は【0089】に記載されている。そして、前記【表1】を参酌すると、実施例1~6の全てにおいて保護フィルムの全ヘイズ値は3.0以下となっており、【0089】にも記載されている全ヘイズ値が外部ヘイズ値と内部ヘイズ値の合計であるという技術常識を踏まえると、これら実施例1~6の保護フィルムの外部ヘイズ値は3.0以下であるといえる。 そうすると、当業者は、過度の試行錯誤をすることなく、その物を製造し、使用することができるから、発明の詳細な説明は、明確かつ十分に記載されているものといえる。 ウ 申立人は、特許異議申立書において上記1(3)のとおり主張する。 しかしながら、実施例1~6のように全ヘイズ値が3.0以下であれば、外部ヘイズ値も3.0以下であることは明らかであるし、外部ヘイズ値の具体的な数値が分からなければ外部ヘイズ値が3.0以下の保護フィルムが製造できないという理由もない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 以上より、実施可能要件に係る申立理由には理由がない。 (3)申立理由4(サポート要件)について ア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の解決しようとする課題は、「優れた平滑性を有する光透過性フィルムを得ることが可能な保護フィルム付き光透過性フィルムおよび保護フィルムを提供することを目的とする。」(【0006】)である。 そして、上記課題の解決にあたり、発明の詳細な説明には、「光透過性フィルムにおいては、・・・、光透過性フィルムに保護フィルムを貼り付けた状態で巻き取られ、圧力が加わることで、保護フィルムの表面の凹凸形状が転写されてしまうので、光透過性フィルムから保護フィルムを剥離すると、樹脂基材の表面に凹凸が現れてしまうという問題がある。」(【0005】)との記載、及び、「外部ヘイズ値は、全ヘイズ値から内部ヘイズを差し引くことによって求められる値である。・・・。具体的には、まず、上記全ヘイズ値の測定法方法に従って、保護フィルム30のヘイズ値(全ヘイズ値)を求める。その後、保護フィルム30における樹脂基材21の表面21Aと接していた表面に、膜厚が25μmの透明光学粘着層・・・を介して厚みが60μmのトリアセチルセルロース基材・・・を貼り付ける。これによって、保護フィルム30の表面の凹凸形状が潰れ、保護フィルム30の表面が平坦化される。そして、この状態で、上記全ヘイズ値の測定方法と同様の方法によって、ヘイズ値を測定することで内部ヘイズ値を求め、全ヘイズ値から内部ヘイズを差し引くことによって外部ヘイズ値を求める。保護フィルム30の外部ヘイズ値は、5%以下、3%以下の順にさらに好ましい・・・。」(【0089】)との記載を踏まえると、保護フィルムの外部ヘイズ値は、表面の凹凸形状に起因するヘイズ値であり、保護フィルムの光透過性フィルム側の表面の外部ヘイズ値が小さければ当該表面の凹凸形状が小さくなり、その結果として、光透過性フィルムに転写される凹凸が小さくなることがわかる。 そして、「保護フィルム30の外部ヘイズ値は、5%以下、3%以下の順にさらに好ましい」(【0089】)との記載も踏まえると、外部ヘイズ値が3%より大きい場合よりも、光透過性フィルムに転写される凹凸が小さくなることを、当業者であれば理解できるから、本件発明は、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 ウ 申立人は、特許異議申立書において上記1(4)のとおり主張する。 たしかに実施例1~6に係る保護フィルムの外部ヘイズ値の具体的な数値は不明である。しかしながら、上記イに示した【0005】、【0089】の記載を踏まえると、外部ヘイズ値が3%以下であれば、3%より大きい場合よりも光透過性フィルムに転写される凹凸が小さくなることを当業者であれば理解できる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1、2、6に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1、2、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3~5に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700702

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