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特許異議申立

2025-701107

熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物

審判番号
2025-701107
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-220008
登録番号
7689825
請求日
2025年12月01日
審決日
2026年03月26日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本ジェネリック株式会社
  • 【権利者代理人】藍原 誠
  • 【権利者代理人】松川 まり子
  • 【異議申立人】藤央 弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 田中 耕一郎
  • 審判官 井上 千弥子
分類
P1652.113-Y (A61K) / P1652.121-Y (A61K) / P1652.537-Y (A61K) / P1652.55 -Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
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特許第7689825号発明「熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7689825号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7689825号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和2年12月18日を出願日とする特許出願であって、令和7年5月30日に特許権の設定登録がされ、同年6月9日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、本件特許に対し、令和7年12月1日に、特許異議申立人 藤井 正弘(以下「申立人」という。)から、請求項1に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 リナグリプチンと、D-マンニトールと、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上と、トウモロコシデンプンと、ステアリン酸マグネシウムとを含む、医薬組成物。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第24号証を提出するとともに、概略、以下の申立理由1、2、3-1、3-2、4-1、4-2、5-1、5-2により、本件発明に係る特許は、取り消されるべきものであると主張している。 1 申立理由1(新規事項の追加) 令和7年1月30日及び同年5月14日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件発明に係る特許は、本件特許についての願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 3 申立理由3-1(甲第1号証による新規性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 4 申立理由3-2(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 5 申立理由4-1(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された請求項10から認定される甲2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 6 申立理由4-2(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された実施例1及び2から認定される甲2-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 7 申立理由5-1(甲第3号証による新規性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 8 申立理由5-2(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如) 本件発明は、本件特許の出願日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 9 証拠方法 甲第1号証:中国特許出願公開第110151719号明細書 甲第2号証:国際公開第2015/107536号 甲第3号証:国際公開第2019/203755号 甲第4号証:日本薬学会編、「スタンダード薬学シリーズ7 製剤化のサイエンス 第2版」、株式会社東京化学同人、2012年9月20日発行、表紙、116~119頁、奥付頁 甲第5号証:日本医薬品添加剤協会 訳編、「改訂 医薬品添加物ハンドブック」、株式会社薬事日報社、2007年2月28日、表紙、891~893、936~937頁、奥付頁 甲第6号証:日本製薬工業協会 企画部長 草井 章、「固形製剤におけるでん粉の役割」、最終更新日2010年11月4日、2025年8月8日検索、<https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000019.html> 甲第7号証:一番ヶ瀬 尚 他編、「医薬品の開発 12巻 製剤素材[I]、株式会社廣川書店、平成2年10月15日、表紙、163~165頁、 奥付頁 甲第8号証:J.Rojas et al.,Powder and compaction characteristics of pregelatinized starches,Pharmazie,2012年,67(6),pp.513~517 甲第9号証:Colorcon Inc,Stability of Opadry(R)XY Formulations(295 Series)、Updated:November 2024((R)は、丸の中にR) 甲第10号証:中国特許出願公開第104586806号明細書 甲第11号証:新規医薬品添加剤POVACOAT(R)、日新化成株式会社、大同化成工業株式会社、2014年11月((R)は、丸の中にR) 甲第12号証:Manidipa Debnath et al.,FORMULATION,DEVELOPMENT AND IN-VITRO RELEASE KINETICS OF LINAGLIPTIN TABLET USING DIFFERENT SUPER DISINTEGRATING AGENTS,CIBTech Journal of Pharmaceutical Sciences,2015,4(3),pp.12-25 甲第13号証:欧州特許出願公開第3156048号明細書 甲第14号証:尾関哲也 他編、「最新薬剤学[第11版]」、平成30年4月30日、株式会社廣川書店、表紙、108~110頁、奥付頁 甲第15号証:医薬品インタビューフォーム、トラゼンタ(R)錠5mg、2020年7月、表紙、前書、目次、1~8頁((R)は、丸の中にR) 甲第16号証:静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府薬科学専攻 梅本佳昭、「ポリビニルアルコールを用いた固体分散体製剤に関する研究」、2020年3月、表紙、1~6頁 甲第17号証:特開2020-158435号公報 甲第18号証:日本医薬品添加剤協会編、「医薬品添加物事典2000」、2000年4月28日、株式会社薬事日報社、表紙、265頁、奥付頁 甲第19号証:「Kollicoat grades」、BASF社、2007年1月、表紙、4~6頁、29~36頁 甲第20号証:特開2013-177415号公報 甲第21号証:特開2017-132724号公報 甲第22号証:特開2020-23486号公報 甲第23号証:竹内洋文 他編、「最新製剤学 第4版」、平成30年3月28日、株式会社廣川書店、表紙、209~213頁、奥付頁 甲第24号証:日本薬剤学会 製剤技術伝承委員会編、「製剤の達人による製剤技術の伝承 上巻 経口投与製剤の製剤設計と製造法」、株式会社じほう、2019年1月25日、表紙、149~151頁、273~277頁、奥付頁 なお、申立人が提出した特許異議申立書を「申立書」、甲第1~24号証を「甲1」~「甲24」のように略記する場合がある。 第4 当審の判断 1 申立理由1(新規事項の追加)について (1)本件補正の内容 ア 本件補正後の特許請求の範囲における請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲における請求項1の記載は、上記第2のとおりである。 イ 願書に最初に添付した特許請求の範囲における請求項1の記載 願書に最初に添付した特許請求の範囲における請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 リナグリプチンと、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤から選択される1種または2種以上の添加剤とを含有する医薬組成物であって、当該結合剤が、コポリビドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、崩壊剤が、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、である医薬組成物。」 (原文にない下線は、当審が強調のために付与した。以下、同様。) (2)申立人の主張 申立人は、本件補正は、以下のとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないと主張している(申立書20頁17行~22頁23行)。 ア 本件補正は、有効成分であるリナグリプチンに添加する各添加剤について、「結合剤」、「崩壊剤」、「滑沢剤」であるとする発明特定事項を削除するものである。 当該削除によって、各添加剤が結合剤、崩壊剤、滑沢剤としてリナグリプチンと素錠部を形成する構成を超えて、当該添加剤の一部がコーティング剤として素錠部外に配置された構成等も発明の範囲に広く含まれることになった。しかし、そのような構成は、当初明細書等には記載されていない。 イ そして、医薬業界において、「医薬組成物」とは、使用する有効成分と添加剤の全てを含むものであり、例えば、甲2の請求項10、甲3の実施例、甲22の【0031】に記載の医薬組成物には、コーティング剤が含まれている。また、本件明細書の【0020】にも、「医薬組成物」には、コーティング剤等が「配合することができる」ものとして記載されている。 ウ さらに、本件明細書の【0007】に記載された課題解決手段、【0035】~【0038】に記載された、本件発明の医薬組成物の製造方法においても、各添加剤の一部が、素錠部とは別のコーティング部分等に配置された分離構成は、記載されていない。 エ したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3)判断 そこで、上記申立人の主張について検討する。 ア 本件発明の特許請求の範囲の記載 本件発明の特許請求の範囲には、以下のとおり、リナグリプチンと、D-マンニトールの他、ポリビニルアルコール(部分けん化物)等を含む「医薬組成物」が記載されている。 「【請求項1】 リナグリプチンと、D-マンニトールと、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上と、トウモロコシデンプンと、ステアリン酸マグネシウムとを含む、医薬組成物。」 本件発明の特許請求の範囲に記載された上記「組成物」とは、一般に、「二種以上の成分が全体として均質に存在し、一物質として把握されるものをいう」(細田 芳徳、「改訂8版 化学・バイオ特許の出願戦略」、平成30年6月25日、一般財団法人経済産業調査会、142頁)と認められ、また、化学大辞典の「組成」の項目には、「対象としている物質を構成している一群の成分(元素、化合物および相など)、およびそれらの量的関係をいう」(大木 道則他編集、「化学大辞典」、1998年6月1日、株式会社東京化学同人、1314頁)と記載されている。 すなわち、「組成物」とは、一般に、二種以上の成分が全体として均質に存在しているものと理解されるから、本件発明の特許請求の範囲の記載に接した当業者は、本件発明の「医薬組成物」とは、リナグリプチンとポリビニルアルコール(部分けん化物)等は、全体として均質に存在しているものと理解する。 一方で、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層を設けたコーティング錠は、リナグリプチンを含む成分が全体として均質に存在している素錠部分と、コーティング層部分とが、別々に配置されており、全体として均質に存在しているものではないから、当業者は、リナグリプチンを含む素錠の外側に、ポリビニルアルコール(部分けん化物)等がコーティング層として存在している場合が、本件発明の「医薬組成物」に含まれるとは通常理解しないといえる。 イ 本件明細書の記載 本件明細書の【0020】には、以下のとおり記載されている。 「【0020】 本発明の医薬組成物には、必要に応じて、更に医薬品添加物を配合することができる。具体的には、例えば、賦形剤、界面活性剤、コーティング剤、酸味料、発泡剤、甘味剤、香料、着色剤、緩衝剤、抗酸化剤等が挙げられる。崩壊剤、結合剤、滑沢剤については、特定の添加剤の他、任意の添加剤を追加して使用することもできる。」 上記【0020】には、本件発明の医薬組成物には、コーティング剤を配合することができると記載されているが、コーティング剤が素錠の外側に配置される場合も本件発明に含まれることは記載されておらず、ましてや、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等が、コーティング剤として素錠の外側に配置される場合も本件発明に含まれることは記載されていない。 そして、本件明細書の実施例その他全体の記載をみても、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等は、素錠の中に含まれるものとして記載されており、コーティング剤として素錠の外側に配置されることについては、何ら記載されていない。 さらに、本件明細書の【0037】には、素錠の外側に配置されるコーティング剤について、以下のとおり記載されている。 「【0037】 次に、得られた打錠用末を打錠して、錠剤を製造する。必要に応じて、例えば、ヒプロメロース(三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール等を含む)等のフィルム基剤溶液を噴霧して、フィルムコーティング錠を製造する。」 上記【0037】に記載されたコーティング剤は、本件発明で特定される医薬組成物に含まれるポリビニルアルコール(部分けん化物)等とは異なるものであるから、なおさら、本件明細書には、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等がコーティング剤として素錠の外側に配置されることは記載されていないといえる。 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者は、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等について、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合も本件発明の「医薬組成物」に含まれると理解するとはいえない。 ウ 審査経緯について 本件補正により、結合剤等の特定を削除するにあたり、令和7年1月30日提出の意見書では、以下のとおり説明されている。 「2.補正についての説明 (1-1)請求項1において、医薬組成物がD-マンニトールを含むことを規定しました。この補正は、明細書の段落0021、0044等の記載に基づきます。 (1-2)請求項1において、「当該結合剤が、コポリビドン、・・・、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤」から「当該結合剤が、」、「、ヒドロキシプロピルセルロース」及び「の添加剤」を削除しました。 (1-3)請求項1において、「崩壊剤が、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、・・・、クロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤」から「崩壊剤が、」及び「デンプングリコール酸ナトリウム、・・・、クロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤」を削除しました。 (1-4)請求項1において、「滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤」から「滑沢剤が、」及び「、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤」を削除しました。」 上記のとおり、本件補正にあたり、結合剤等の特定を削除することで、本件補正前は結合剤として記載されていた添加剤が、コーティング剤として素錠外に含む場合も包含されるものとなることをうかがわせるような説明は見あたらない。 したがって、審査経緯を検討しても、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等について、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合も本件発明の「医薬組成物」に含まれると理解する理由は見いだせない。 エ 申立人が提示する文献について 上記(2)イのとおり申立人が提示する、甲2の請求項10、甲3の実施例、甲22の【0031】には、医薬組成物にコーティング剤が含まれる例が記載されている。 しかしながら、医薬組成物にコーティング剤が含まれると記載されている文献がいくつか存在するからといって、一般に、素錠の外側に配置されるコーティング剤であっても医薬組成物に含まれると当業者が認識しているとまでは認められない。 そして、本件発明においては、本件の特許請求の範囲の記載、本件明細書の記載、及び審査経緯からみて、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等がリナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合も本件発明の「医薬組成物」に含まれると理解することはできないことは、上記ア~ウのとおりである。 (4)小括 以上のとおり、本件の特許請求の範囲の記載、本件明細書の記載、及び審査経緯からみて、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等がリナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合も本件発明の「医薬組成物」に含まれると理解することはできず、本件補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、申立理由1は、理由がない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 発明の詳細な説明の【0006】には、【発明が解決しようとする課題】として、「本発明の目的は、熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物を提供することにある。」と記載されているから、本件発明の解決しようとする課題は、「熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物の提供」であるといえる。 そして、発明の詳細な説明の実施例には、本件発明の具体例である実施例2~5が、熱安定性に優れており、上記課題を解決できるものであることが記載されている。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書において、本件発明は、ポリビニルアルコール(部分けん化物)などの添加剤が、リナグリプチンが配置された部分とは別の部分に配置された分離構成も含むものであり、そのような分離構成は、上記課題を解決することができるものではないから、サポート要件を満たさないと主張している(申立書22頁下から8行~23頁下から9行)。 しかしながら、上記1のとおり、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等がリナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合は、本件発明の「医薬組成物」に含まれないから、申立人が主張する分離構成が本件発明に含まれるということはなく、申立人の主張は、前提において採用することができない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件に適合する。 したがって、申立理由2は、理由がない。 3 申立理由3-1(甲1による新規性欠如)、申立理由3-2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について (1)甲1に記載された発明 甲1の特許請求の範囲の請求項1及び7には、以下のとおり記載されている(なお、甲1は、外国語で記載された文献であるから、申立人による日本語訳で記載する。)。 「1.以下の製造工程を含むことを特徴とする、リナグリプチン錠の製造方法。 工程1:混合。まず原薬、マンニトール、デンプン及び部分α化デンプンを湿式造粒機で均一に混合する。 工程2:湿式造粒。混合後、コポリビドン溶液を加えて湿式造粒する。 工程3:乾燥。得られた顆粒を流動層に移して乾燥させ、ハロゲン高速水分計を用いて顆粒の水分含量を測定する。 工程4:最終混合。乾燥後の顆粒を三次元運動ミキサーに移し、ステアリン酸マグネシウムを加えて最終混合する。 工程5:打錠。回転式打錠機を使用して最終混合後の顆粒を打錠する。」 「7.請求項1に記載のリナグリプチン錠の製造方法であって、打錠工程後にコーティング工程を実施し、コーティング工程で使用されるコーティング液が、可溶性フィルムコーティングプレミックスOpadry XY型であることを特徴とする方法。」 上記請求項1及び7の記載によれば、甲1には、請求項1の工程1~5の後に、工程6として、請求項7に記載されたコーティング工程を実施する製造方法で製造されたリナグリプチン錠である、以下の発明が記載されているといえる。 「以下の製造工程を含む製造方法で製造されたリナグリプチン錠。 工程1:混合。まず原薬、マンニトール、デンプン及び部分α化デンプンを湿式造粒機で均一に混合する。 工程2:湿式造粒。混合後、コポリビドン溶液を加えて湿式造粒する。 工程3:乾燥。得られた顆粒を流動層に移して乾燥させ、ハロゲン高速水分計を用いて顆粒の水分含量を測定する。 工程4:最終混合。乾燥後の顆粒を三次元運動ミキサーに移し、ステアリン酸マグネシウムを加えて最終混合する。 工程5:打錠。回転式打錠機を使用して最終混合後の顆粒を打錠する。 工程6:打錠工程後にコーティング工程を実施し、コーティング工程で使用されるコーティング液が、可溶性フィルムコーティングプレミックスOpadry XY型である。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明と甲1発明の対比 ア 甲1発明の工程1における「原薬」は、リナグリプチン錠の原薬であるから、「リナグリプチン」であって、本件発明の「リナグリプチン」に相当する。 イ 甲1発明の「マンニトール」は、本件発明の「D-マンニトール」とは、「マンニトール」である限りにおいて一致する。 ウ 甲1発明の「デンプン」は、本件発明の「トウモロコシデンプン」とは、「デンプン」である限りにおいて一致する。 エ 甲1発明の「ステアリン酸マグネシウム」は、本件発明の「ステアリン酸マグネシウム」に相当する。 オ 甲1発明における工程1~4により形成された、「原薬であるリナグリプチン、マンニトール、デンプン、ステアリン酸マグネシウムを含む組成物」は、医薬であるリナグリプチンを含む組成物であるから、本件発明の「医薬組成物」に相当する。 カ そうすると、本件発明と甲1発明の一致点及び相違点(以下「相違点1-1」~「相違点1-3」という。)は、次のとおりである。 <一致点> 「リナグリプチンと、マンニトールと、デンプンと、ステアリン酸マグネシウムとを含む、医薬組成物。」 <相違点1-1> 本件発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むのに対し、甲1発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含まない点。 <相違点1-2> 本件発明は、「D-マンニトール」を含むのに対し、甲1発明の「マンニトール」は、「D-マンニトール」とは特定されない点。 <相違点1-3> 本件発明は、「トウモロコシデンプン」を含むのに対し、甲1発明の「デンプン」は、「トウモロコシデンプン」とは特定されない点。 (3)相違点1-1の判断 ア 本件発明の医薬組成物に対応する、甲1発明における工程1~4により形成された組成物について、甲1には、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは記載も示唆もされていない。 したがって、相違点1-1は、実質的な相違点である。 イ そして、申立人が提出した甲1~24を検討しても、当業者であれば、甲1発明における工程1~4により形成された組成物について、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとする動機付けは見いだせない。 したがって、甲1発明において、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではない。 ウ また、本件明細書には、本件発明の具体例である実施例2~5が、熱安定性に優れていることが具体的に記載されており、本件発明は、熱安定性に優れるという効果を奏するものといえる。 一方、甲1~24を検討しても、本件発明が、熱安定性に優れるという効果を奏することについて、当業者が予測し得たといえる理由は見いだせない。 したがって、本件発明は、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、概略、以下の点を挙げて、本件発明は、甲1に記載された発明であり、その記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 甲1には、「(a)リナグリプチン、(b)マンニトール、(c)Opadry XY、(d)デンプン、(e)ステアリン酸マグネシウムを含有する(f)リナグリプチン錠」の発明が記載されており(申立書3頁)、Opadry XYは、ポリビニルアルコール(部分けん化物)を含むから、本件発明は、甲1に記載された発明である(申立書23頁下から8行~25頁18行)。 仮に、Opadry XYが、必ずしも、ポリビニルアルコール(部分けん化物)であるとはいえないとしても、防湿性の観点から、Opadry XYのうち、ポリビニルアルコールを含有する295Fを選択することは、当業者が容易に行うことである。 そして、本件発明の具体例である実施例2~5の効果は、本件出願当時知られていたリナグリプチン組成物と比較しても、同程度以下の効果であり顕著性は認められない。 したがって、本件発明は、進歩性を欠如するものである(申立書25頁19行~31頁2行)。 イ そこで、上記主張について検討する。 申立人は、甲1には、ポリビニルアルコール(部分けん化物)である「(c)Opadry XY」を含有する「(f)リナグリプチン錠」の発明が記載されていると主張しているところ、Opadry XYが、ポリビニルアルコール(部分けん化物)であるかは明らかでなく、仮に、ポリビニルアルコール(部分けん化物)であったとしても、甲1において、Opadry XYは、上記(1)のとおり、打錠工程後に行われるコーティング工程で使用されるコーティング液として記載されており、リナグリプチンを含む素錠の中に含まれるものとしては記載されていない。 そして、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等が、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合は、本件発明の「医薬組成物」に含まれないことは、上記1のとおりである。 以上によれば、甲1には、リナグリプチンと、Opadry XYを含む医薬組成物は記載されているとはいえず、また、Opadry XYを、素錠の外側のコーティング層としてではなく、医薬組成物に含まれるものとする動機付けもないから、本件発明は、甲1に記載された発明であるとも、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいうことはできない。 そして、本件出願当時知られていたリナグリプチン組成物と比較して格別顕著ではなかったとしても、本件発明の具体例である実施例2~5が熱安定性に優れていることが本件明細書には記載されているのであるから、本件発明は、熱安定性に優れるという効果を奏するものである。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (5)小括 上記(3)アのとおり、相違点1-1は実質的な相違点であるから、本件発明は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 そして、上記(3)イ、ウのとおり、甲1発明において、相違点1-1に係る構成である「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではなく、本件発明は、熱安定性に優れるという、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 また、上記(4)のとおり、申立人の主張を検討しても、上の判断を覆す根拠は見いだせない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1に記載された発明ではなく、それに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 よって、申立理由3-1、3-2は、理由がない。 4 申立理由4-1(甲2を主引例とする進歩性欠如)について (1)甲2に記載された発明 甲2の特許請求の範囲の請求項6及び10には、以下のとおり記載されている(なお、甲2は、外国語で記載された文献であるから、申立人による日本語訳で記載する。)。 「6.リナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩、並びに1種以上の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物の製造方法であって、塩基性アミノ酸を含まない、医薬組成物の製造方法。」 「10.請求項6に記載の医薬組成物の製造方法であって、以下の工程を含む方法: (a)メトホルミン塩酸塩及び1種以上の薬学的に許容される添加剤の乾式混合物を調製する工程; (b)結合剤及び1種以上の溶媒を用いて造粒液を調製する工程; (c)工程(b)の溶液を用いて、工程(a)で得られたメトホルミン塩酸塩の乾式混合物を造粒する工程; (d)上記の顆粒をステアリン酸マグネシウムにより滑沢化し、錠剤に圧縮する工程; (e)ヒプロメロース及び/又はポリビニルアルコール、プロピレングリコールを1種以上の溶媒に溶解して溶液を調製し、工程(d)で得られた錠剤をコーティングする工程; (f)リナグリプチン、ヒプロメロース、ポリビニルアルコールを1種以上の溶媒に溶解してリナグリプチンの薬液を調製する工程; (g)工程(e)で得られた錠剤を、工程(f)で得られたリナグリプチン薬液を用いてコーティングする工程; (h)任意に、工程(g)で得られた錠剤をコーティングする工程。」 上記請求項6及び10の記載によれば、甲2には、請求項10に記載された請求項6の医薬組成物の製造方法で製造された医薬組成物である、以下の発明が記載されているといえる。 「リナグリプチン及びメトホルミン塩酸塩、並びに1種以上の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物の製造方法であり、塩基性アミノ酸を含まない、医薬組成物の製造方法であって、以下の工程を含む方法で製造された医薬組成物: (a)メトホルミン塩酸塩及び1種以上の薬学的に許容される添加剤の乾式混合物を調製する工程; (b)結合剤及び1種以上の溶媒を用いて造粒液を調製する工程; (c)工程(b)の溶液を用いて、工程(a)で得られたメトホルミン塩酸塩の乾式混合物を造粒する工程; (d)上記の顆粒をステアリン酸マグネシウムにより滑沢化し、錠剤に圧縮する工程; (e)ヒプロメロース及び/又はポリビニルアルコール、プロピレングリコールを1種以上の溶媒に溶解して溶液を調製し、工程(d)で得られた錠剤をコーティングする工程; (f)リナグリプチン、ヒプロメロース、ポリビニルアルコールを1種以上の溶媒に溶解してリナグリプチンの薬液を調製する工程; (g)工程(e)で得られた錠剤を、工程(f)で得られたリナグリプチン薬液を用いてコーティングする工程; (h)任意に、工程(g)で得られた錠剤をコーティングする工程。」(以下「甲2-1発明」という。) (2)本件発明と甲2-1発明の対比 ア 甲2-1発明は、工程(d)で得られた錠剤を工程(e)でコーティングした後、工程(f)で調製した「リナグリプチンの薬液」を用いて、工程(g)で、さらにコーティングする工程を有するところ、工程(f)の「リナグリプチン、ヒプロメロース、ポリビニルアルコールを1種以上の溶媒に溶解」した「リナグリプチンの薬液」は、医薬である「リナグリプチン」を含み、各成分が全体として均質に存在している組成物であるから、本件発明の「リナグリプチン」を含む「医薬組成物」に相当する。 イ 上記アの「リナグリプチンの薬液」における「ポリビニルアルコール」は、本件発明の「ポリビニルアルコール(部分けん化物)」とは、「ポリビニルアルコール」である限りにおいて一致する。 ウ そうすると、本件発明と甲2-1発明の一致点及び相違点(以下「相違点2-1-1」~「相違点2-1-2」という。)は、次のとおりである。 <一致点> 「リナグリプチンと、ポリビニルアルコールを含む、医薬組成物。」 <相違点2-1-1> 本件発明は、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含むのに対し、甲2-1発明は、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含まない点。 <相違点2-1-2> 本件発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上を含む」を含むのに対し、甲2-1発明の「ポリビニルアルコール」は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)」であるとは特定されない点。 なお、甲2-1発明における工程(d)のステアリン酸マグネシウムは、工程(d)の錠剤に含まれるものであり、一方、工程(f)のリナグリプチンを含む薬液は、工程(g)で、錠剤をコーティングするためのコーティング液であるから、ステアリン酸マグネシウムとリナグリプチンは、同じ組成物に含まれるものではない。 したがって、工程(d)のステアリン酸マグネシウムは、本件発明において、リナグリプチンを含む医薬組成物に含まれるステアリン酸マグネシウムとは一致点にはなり得ないものである。 (3)相違点2-1-1の判断 甲2には、本件発明の医薬組成物に対応する、甲2-1発明における工程(f)のリナグリプチンを含む薬液について、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含むものとすることが記載も示唆もされていない。 そして、申立人が提出した甲1~24を検討しても、当業者であれば、甲2-1発明における工程(f)のリナグリプチンを含む薬液を、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含むものとする動機付けは見いだせない。 したがって、甲2-1発明において、相違点2-1-1に係る構成である、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではない。 そして、上記3(3)ウのとおり、本件発明は、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、概略、以下の点を挙げて、本件発明は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 甲2の請求項10の工程(d)には、ステアリン酸マグネシウムが記載されているから、ステアリン酸マグネシウムは本件発明との一致点であり、また、甲2には、「本発明の医薬添加剤は、1種以上の充填剤、1種以上の結合剤、1種以上の希釈剤、・・・などから選択される。」こと、「より詳細には、充填剤または希釈剤としては、マンニトール、デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、ケイ化微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、トウモロコシデンプン及びマンニトールが好ましく用いられる。」ことが記載され(7頁)、甲2-1発明(積層錠)に対応する実施例3には、添加剤として充填剤のトウモロコシデンプンが記載され、また、単層錠の実施例には、充填剤としてトウモロコシデンプンとマンニトールの2種が記載されているから、甲2-1発明の充填剤として、トウモロコシデンプンとマンニトールの2種を用いることは当業者が容易に行うことである。 そして、甲2-1発明は、リナグリプチン、D-マンニトール、コポビドン(コポリビドンと同義である。)、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムを含有している点で、本件明細書【表2】の実施例1と同じ構成であるところ、本件明細書記載の実施例1と本件発明の具体例である実施例2~5の安定性の効果は同レベルであるから、本件発明の効果は、甲2-1発明から予測し得る程度のものである。 したがって、本件発明は、進歩性を欠如するものである(申立書31頁7行~32頁8行、33頁下から7行~34頁18行)。 イ そこで、上記主張について検討する。 申立人は、甲2の請求項10の工程(d)には、ステアリン酸マグネシウムが記載されているから、ステアリン酸マグネシウムは本件発明との一致点であると主張するが、ステアリン酸マグネシウムが一致点にはなり得ないことは、上記(2)のとおりである。 また、申立人は、甲2には、マンニトールとトウモロコシデンプンが添加剤として記載され、甲2-1発明に対応する実施例3には、添加剤としてトウモロコシデンプンが記載されていると主張するが、実施例3において、トウモロコシデンプンは、メトホルミン薬剤コアに含まれる成分として記載され、リナグリプチンを含む薬剤積層に含まれる成分として記載されているものではない。 したがって、実施例3の記載から、甲2-1発明におけるリナグリプチンを含む医薬組成物である工程(f)の薬液に、トウモロコシデンプンを含有することが記載されているということはできず、また、D-マンニトール、ステアリン酸マグネシウムを上記工程(f)の薬液に含ませることが動機付けられるともいえない。そして、それは、甲2に添加剤として、マンニトールとトウモロコシデンプンが例示されていること、甲2-1発明の積層錠ではなく、単層錠において、マンニトールとトウモロコシデンプンが含まれていることを検討しても同様である。 そうすると、甲2-1発明において、相違点2-1-1に係る構成を採用することが、当業者が容易に行うこととはいえない。 そして、甲2-1発明が、本件明細書記載の実施例1に対応し、本件発明の具体例である実施例2~5が、実施例1と同程度の効果であったとしても、上記3(3)ウのとおり、本件発明である医薬組成物が、熱安定性に優れていることは、甲1~24の記載からは予測し得ないのであるから、本件発明は、甲1~24の記載から予測し得ない効果を奏するものである。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (5)小括 上記(3)のとおり、甲2-1発明において、相違点2-1-1に係る構成である、「D-マンニトール」と、「トウモロコシデンプン」と、「ステアリン酸マグネシウム」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではないから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由4-1は、理由がない。 5 申立理由4-2(甲2を主引例とする進歩性欠如)について (1)甲2に記載された発明 甲2の実施例1及び2には、以下の単層錠が記載されている(なお、甲2は、外国語で記載された文献であるから、申立人による日本語訳で記載する。)。 「 [図:0001434197000001.jpg] [図:0001434197000002.jpg] [図:0001434197000003.jpg] [図:0001434197000004.jpg] [図:0001434197000005.jpg] 」 上記実施例1、2によれば、甲2には、以下の単層錠の発明が記載されているといえる。 「リナグリプチン、メトホルミン塩酸塩、添加剤(マンニトール及び/又はトウモロコシデンプン)、コポビドンを含む顆粒とステアリン酸マグネシウムの混合物を含む錠剤をコーティングした単層錠。」(以下「甲2-2発明」という。) (2)本件発明と甲2-2発明の対比 ア 甲2-2発明における、コーティング前の錠剤は、「リナグリプチン、メトホルミン塩酸塩、添加剤(マンニトール及び/又はトウモロコシデンプン)、コポビドンを含む顆粒とステアリン酸マグネシウムが、全体として均質に存在している組成物であって、医薬である「リナグリプチン」を含む組成物であるから、本件発明の「リナグリプチン」を含む「医薬組成物」に相当する。 イ 甲2-2発明の「マンニトール」は、本件発明の「D-マンニトール」とは、「マンニトール」である限りにおいて一致する。 ウ 甲2-2発明の「トウモロコシデンプン」、「ステアリン酸マグネシウム」は、本件発明の「トウモロコシデンプン」、「ステアリン酸マグネシウム」に相当する。 エ そうすると、本件発明と甲2-2発明の一致点及び相違点(以下「相違点2-2-1」~「相違点2-2-2」という。)は、次のとおりである。 <一致点> 「リナグリプチンと、マンニトールと、トウモロコシデンプンと、ステアリン酸マグネシウムとを含む、医薬組成物。」 <相違点2-2-1> 本件発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むのに対し、甲2-2発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含まない点。 <相違点2-2-2> 本件発明は、「D-マンニトール」を含むのに対し、甲2-2発明の「マンニトール」は、「D-マンニトール」であるか不明な点。 (3)相違点2-2-1の判断 甲2には、甲2-2発明における「リナグリプチン、メトホルミン塩酸塩、添加剤(マンニトール及び/又はトウモロコシデンプン)、コポビドンを含む顆粒とステアリン酸マグネシウムの混合物を含む錠剤」について、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは記載も示唆もされていない。 そして、申立人が提出した甲1~24を検討しても、当業者であれば、甲2-2発明における「リナグリプチン、メトホルミン塩酸塩、添加剤(マンニトール及び/又はトウモロコシデンプン)、コポビドンを含む顆粒とステアリン酸マグネシウムの混合物を含む錠剤」について、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとする動機付けは見いだせない。 したがって、甲2-2発明における「リナグリプチン、メトホルミン塩酸塩、添加剤(マンニトール及び/又はトウモロコシデンプン)、コポビドンを含む顆粒とステアリン酸マグネシウムの混合物を含む錠剤」において、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではない。 そして、上記3(3)ウのとおり、本件発明は、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、概略、以下の点を挙げて、本件発明は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 本件発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含む点で、甲2-2発明と相違するが、甲2-2発明におけるコーティングとして、甲2に記載されたポリビニルアルコールの他、POVACOAT(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、甲11)やKollicoat(R)IR(ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、甲3、甲19。なお(R)は丸の中にRである。)を選択することは、当業者が容易に行うことである。 そして、甲2-2発明は、リナグリプチン、D-マンニトール、コポビドン(コポリビドンと同義である。)、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムを含有している点で、本件明細書【表2】の実施例1と同じ構成であるところ、本件明細書記載の実施例1と本件発明の具体例である実施例2~5の安定性の効果は同レベルであるから、本件発明の効果は、甲2-2発明から予測し得る程度のものである。 したがって、本件発明は、進歩性を欠如するものである(申立書32頁9行~34頁18行)。 イ そこで、上記主張について検討する。 申立人は、甲2-2発明におけるコーティングとして、ポリビニルアルコール等を選択することは、当業者が容易に行うことであると主張するが、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等が、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合は、本件発明の「医薬組成物」に含まれないことは、上記1のとおりである。 したがって、仮に、甲2-2発明におけるコーティングとして、ポリビニルアルコール等を選択したとしても、本件発明の医薬組成物にはなり得ないといえる。 そして、甲2-2発明が、本件明細書記載の実施例1に対応し、本件発明の具体例である実施例2~5が、実施例1と同程度の効果であったとしても、上記3(3)ウのとおり、本件発明である医薬組成物が、熱安定性に優れていることは、甲1~24の記載からは予測し得ないのであるから、本件発明は、甲1~24の記載から予測し得ない効果を奏するものである。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (5)小括 上記(3)のとおり、甲2-2発明において、相違点2-2-1に係る構成である、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではないから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由4-2は、理由がない。 6 申立理由5-1(甲3による新規性欠如)、申立理由5-2(甲3を主引例とする進歩性欠如)について (1)甲3に記載された発明 甲3の実施例1には、以下のとおり記載されている(なお、甲3は、外国語で記載された文献であるから、申立人による日本語訳で記載する。)。 「 [図:0001434197000006.jpg] ・・・ [図:0001434197000007.jpg] 」 上記実施例1によれば、甲3には、以下のフィルムコーティング錠の発明が記載されているといえる。 「以下の工程を含む製造方法により製造されたフィルムコーティング錠。 a)リナグリプチン、微結晶セルロース、及び、デンプングリコール酸ナトリウムを混合する工程 b) 別のタンクで精製水を用いてポビドンを造粒する工程 c) 工程(a)の混合物と工程(b)の混合物を混合する工程 d) 混合物を乾燥させ、次いで飾過する工程 e) フマル酸ステアリルナトリウムを添加し、次いで混合する工程 f) 次に、圧縮して錠剤を形成する工程 g) 錠剤をコーティング剤でコーティングする工程。」(以下「甲3発明」という。) (2)本件発明と甲3発明の対比 甲3発明は、工程a)~f)により錠剤を形成する工程の後、工程g)により錠剤をコーティングする工程を含むものであるところ、工程a)~f)における、リナグリプチン、微結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ポビドン、フマル酸ステアリルナトリウムは、全体として均質に存在する組成物を形成しており、当該組成物は、医薬である「リナグリプチン」を含む組成物であるから、本件発明の「リナグリプチン」を含む「医薬組成物」に相当する。 そうすると、本件発明と甲3発明の一致点及び相違点(以下「相違点3-1」~「相違点3-4」という。)は、次のとおりである。 <一致点> 「リナグリプチンを含む、医薬組成物。」 <相違点3-1> 本件発明は、「D-マンニトール」を含むのに対し、甲3発明は、「D-マンニトール」を含まない点。 <相違点3-2> 本件発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むのに対し、甲3発明は、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含まない点。 <相違点3-3> 本件発明は、「トウモロコシデンプン」を含むのに対し、甲3発明は、「トウモロコシデンプン」を含まない点。 <相違点3-4> 本件発明は、「ステアリン酸マグネシウム」を含むのに対し、甲3発明は、「ステアリン酸マグネシウム」を含まない点。 (3)相違点3-2の判断 ア 本件発明の医薬組成物に対応する、甲3発明における工程a)~f)で形成された錠剤について、甲3には、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは記載も示唆もされていない。 したがって、相違点3-2は、実質的な相違点である。 イ そして、申立人が提出した甲1~24を検討しても、当業者であれば、甲3発明における工程a)~f)で形成される錠剤について、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとする動機付けは見いだせない。 したがって、甲3発明において、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではない。 ウ また、上記3(3)ウのとおり、本件発明は、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、申立書において、概略、以下の点を挙げて、本件発明は、甲3に記載された発明であり、その記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 甲3の実施例1には、リナグリプチンと充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤を含有するフィルムコーティング錠(甲3発明)が記載されている。 さらに、充填剤及び結合剤としてマンニトール、崩壊剤としてトウモロコシデンプン、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、コーティング剤としてメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール-グラフトコポリマーが例示されている。すなわち、甲3発明は、本件発明の構成を包含している発明と位置づけられる。 本件発明は、甲3発明における複数の添加剤から一部を選択して発明特定事項とした発明に過ぎず、効果には何ら顕著性が認められないから新規性がないことは明らかである。 仮に、添加剤が特定されているか否かの点で相違していると考えても、その特定は製薬業界において通常行われる最適材料の選択に過ぎない設計事項である。 また、設計事項であることを措くとしても、リナグリプチンは、水分に敏感であることが知られており、甲3発明の課題も高い安定性であるから、甲3に接した当業者は、各種添加剤として、防湿性等に優れ、実際にリナグリプチン製剤において使用されていたものを選択することは容易である。 したがって、本件発明は、進歩性を欠如するものである(申立書34頁19行~36頁下から6行)。 イ そこで、上記主張について検討する。 甲3には、コーティング剤としてポリビニルアルコール等が例示されているが、実施例1には、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を用いたことについて、何ら記載されていないから、実施例1のフィルムコーティング錠から、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含む医薬組成物が認定できるとはとはいえない。 そして、甲3において、コーティング剤は、上記(1)のとおり、工程g)で錠剤をコーティングするための添加剤として記載されており、リナグリプチンを含む素錠に含まれるものとしては記載されていないところ、本件発明で特定されるポリビニルアルコール(部分けん化物)等が、リナグリプチンを含む素錠の外側にコーティング層として存在している場合は、本件発明の「医薬組成物」に含まれないことは、上記1のとおりである。 そうすると、仮に、甲3発明におけるコーティング剤として、「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を選択したとしても、本件発明の医薬組成物にはなり得ないといえる。 そして、上記(3)ウのとおり、本件発明は、甲1~24の記載から予測し得ない効果を奏するものである。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (5)小括 上記(3)アのとおり、相違点3-2は実質的な相違点であるから、本件発明は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 そして、上記(3)イ、ウのとおり、甲3発明において、相違点3-2に係る構成である「ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種または2種以上」を含むものとすることは、当業者が容易に行うことではなく、本件発明は、熱安定性に優れるという、甲1~24の記載からは予測し得ない効果を奏するものである。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲3に記載された発明ではなく、それに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 よって、申立理由5-1、5-2は、理由がない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701107

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