審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2021-701033

遮音板

審判番号
2021-701033
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-212925外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6872158
請求日
2021年10月29日
審決日
2022年07月19日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(C03C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6872158号発明「遮音板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6872158号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6872158号の請求項1~6に係る特許を維持する。 特許第6872158号の請求項7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6872158号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成28年10月31日の出願であって、令和3年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年10月29日 :特許異議申立人 津末恵子(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年 2月22日付け:取消理由通知 同年 4月28日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年 6月15日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年4月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」といい、本件訂正に係る請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第1の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下である遮音板。」と記載されているのを、「前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第1の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下であり、 前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し、 前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される遮音板。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第2の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下である遮音板。」と記載されているのを、「前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第2の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下であり、 前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し、 前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される遮音板。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~8〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第1の強化ガラスの厚さ」と「第2の強化ガラスの厚さ」との差の範囲、「中間膜」の「圧縮せん断強度」の範囲及び「中間膜」の材料を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、訂正事項1のうち、「前記第1の強化ガラスの厚さ」を「前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」することは、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0077】【表1】の試験例1~4おいて、試験例4では第1の強化ガラスの厚さが第2の強化ガラスの厚さに対して2mm厚く、試験例1~3では第1の強化ガラスの厚さが第2の強化ガラスの厚さに対して2mmを超えて厚い(試験例1では3.7mm厚い、試験例2では4.7mm厚い、試験例3では3.0mm厚い)ことが確認できるから、本件明細書等に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1のうち、「前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有」することは、訂正前の請求項7の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、訂正事項1のうち、「前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成され」ることは、訂正前の請求項8の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1と同じ内容であるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件明細書等に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)申立人の主張について 申立人は、令和4年6月15日付け意見書の3ページ9~29行において、「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」なる技術的事項は、本件明細書等に記載されていないし、本件明細書等から自明な事項でもなく、さらには、本件明細書等の【0019】には、単に「第1の強化ガラス21と第2の強化ガラス22とを異厚の構成とすることにより、コインシデンス効果の発生を効果的に抑制することができる。」とのみ記載されており、第1の強化ガラス21と第2の強化ガラス22とで異なる厚さを有することについての効果は記載される一方で、どの程度異ならせればこのような効果が向上するかについては何ら開示がない、すなわち、本件明細書等には、厚さの差を2mm以上とすることによる、単に異厚とする以上のさらなる効果について記載されているものではなく、したがって、本件特許権者が主張するように、このような技術的事項により、「第1の強化ガラスのコインシデンス周波数と第2の強化ガラスのコインシデンス周波数の差を十分につけることができ」、「第1の強化ガラスと第2の強化ガラスは、互いにコインシデンス効果の発生をより効果的に抑制することができるため、遮音性をさらに向上できる」という新たなさらなる効果が得られるとすると、本件明細書等に記載されておらず、自明でもない特徴を導入することにより、本件明細書等に記載された課題以上の課題を解決しているから、訂正請求書における請求項1及び2の「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2m以上で大きく」なる記載を追加する訂正は、訂正前の請求項1及び2に係る本件発明において新たな技術的事項を導入するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない旨主張している。 しかし、訂正前の請求項1及び2には、「前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し」と記載されており、第1の強化ガラスの厚さは第2の強化ガラスの厚さよりも大きくなっているから、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件明細書等の【0019】に記載の「第1の強化ガラス21と第2の強化ガラス22とを異厚の構成とすることにより、コインシデンス効果の発生を効果的に抑制することができる。」との効果を奏するものといえる。 一方、本件訂正によって、請求項1及び2に係る発明には、「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」との事項が追加されたが、当該事項は、第1の強化ガラスと第2の強化ガラスとの異厚の構成を更に限定するものであり、すなわち、第1の強化ガラスの厚さと第2の強化ガラスの厚さの差の範囲を更に限定するものであるから、訂正後の請求項1及び2に係る発明が、上記【0019】に記載の効果を奏することに変わりはない。 以上のとおり、訂正の前後において、請求項1及び2に係る発明が奏する効果は変わらないから、請求項1及び2に「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2m以上で大きく」との事項を追加する訂正は、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 そして、上記(1)及び(2)で検討したとおり、「前記第1の強化ガラスの厚さ」を「前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」することは、本件明細書等に記載されているから、本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1~8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第1の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下であり、 前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し、 前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される遮音板。 【請求項2】 通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第2の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下であり、 前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し、 前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される遮音板。 【請求項3】 通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され、 前記第2の強化ガラスが1.5mm未満の厚さを有する遮音板。 【請求項4】 前記第1の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが10μm以上である請求項1から3の何れか一項に記載の遮音板。 【請求項5】 前記第2の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが10μm以上である請求項1から4の何れか一項に記載の遮音板。 【請求項6】 前記中間膜の厚さが、1.3mm以下である請求項1から5の何れか一項に記載の遮音板。 【請求項7】削除 【請求項8】削除」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和4年2月22日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1(進歩性) 本件特許の請求項1、2、4~8に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2013-23912号公報 甲第2号証:国際公開2014/168246号 甲第3号証:技術シリーズガラス、日本、株式会社朝倉書店、昭和57年5月25日、20~22ページ 甲第5号証:特開2014-189956号公報 甲第6号証:特表2011-506236号公報 甲第7号証:特開2006-13505号公報 なお、申立人は、甲第4号証及び甲第8号証も提出しているので、次項の第5においては、これらの証拠方法についても併せて検討した。 甲第4号証:特開2015-180596号公報 甲第8号証:特表2008-513342号公報 第5 当審の判断 1 取消理由1(進歩性)について (1)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 ア 甲第1号証(特開2013-23912号公報) (ア)甲第1号証には以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【請求項1】 道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる合せガラスであって、 前記合せガラスは、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され、 前記第1の化学強化ガラスの厚みが1.5~4mmであり、 前記第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり、 前記中間膜の厚みが6.0mm以下であることを特徴とする合せガラス。」 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0011】 よって、本発明の目的は、耐熱性及び耐風圧性に優れ、破損時におけるガラス片を縮小できる合せガラス及び安全性に優れた透光性防音パネルを提供することにある。」 「【0029】 本発明の合せガラスにおいて、第2の化学強化ガラスは、厚みが1.5mm以上であることが必要であり、2~8mmがより好ましい。厚みが1.5mm未満であると、防音性や耐風圧性が劣る傾向にある。10mmを超えても、材料コストが嵩み経済的でないとともに、重量が重くなるので透光性防音パネルの施工性が低下する傾向である。」 「【0066】 (製造例2-10) 製造例2-1において、中間膜として、ポリビニルブチラール樹脂の代わりにアイオノプラスト樹脂(SG)を使用した以外は、製造例2-1と同様にして、厚さ1.52mmの中間膜を有する合せガラスを製造し、図1に示す金属枠で周囲を囲って、透光性防音パネルを製造した。」 (イ)甲第1号証に記載された発明 上記(ア)の【請求項1】の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる合せガラスであって、 前記合せガラスは、道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され、 前記第1の化学強化ガラスの厚みが1.5~4mmであり、 前記第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり、 前記中間膜の厚みが6.0mm以下であることを特徴とする合せガラス。」 イ 甲第2号証(国際公開2014/168246号) 甲第2号証には以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「[0001] 本発明は、屋外用化学強化ガラス板、特に、長期にわたり屋外環境にさらされた結果生じる破損の懸念を低減する屋外用化学強化ガラス板に関する。」 「[0015] 本発明の屋外用化学強化ガラス板は、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓として、好適に用いられる。建築窓としては、住宅、ビル等の窓が例示され、特に、交通量の多い地域に施工される窓に好適に用いられる。これらの窓には、板厚が3.0~6.0mmであることが好ましい。外壁としては、高速道路等の防音壁等を例示できる。太陽電池は、例えば住宅や工場の屋根に設置する場合が多く、軽量化が求められる。そのため、太陽電池カバーガラスに本発明の屋外用化学強化ガラスを用いる場合、板厚が1.0~4.0mmであることが好ましい。車両窓として本発明の屋外用化学強化ガラスを用いる場合、板厚が1.0~4.0mmであることが好ましい。特に、後述する合せガラスを構成する少なくとも1枚のガラス板に本発明の屋外用化学強化ガラスを用いることは好適である。これらの屋外用化学強化ガラスの外形寸法、すなわち主面の面積は、2500cm2以上であること、特に10000cm2以上が、その用途を考慮し好ましく例示できる。 [0016] これらの用途において、屋外用化学強化ガラス板は、複層ガラスや合せガラスのうちの少なくとも1枚のガラス板として用いてもよく、全てのガラス板を屋外用化学強化ガラス板で構成することもできる。合わせガラスとして用いるときの屋外用化学強化ガラス板の板厚は、0.5mm以上が強度やハンドリング性などから好ましい。また、板厚の上限は、6.0mmであれば、実用上充分であるが、2.3mm以下であれば一般の合わせガラス製造装置を利用できるため好ましい。なお、上記した板厚が0.5mm以上の化学強化ガラス板においても、双方の主面に400~1000MPaの表面圧縮応力が形成されており、双方の主面における表面圧縮応力層の板厚方向の厚さが10~30μmである化学強化ガラス板が使用される。 また、一方または両方の主面に、熱線反射膜や防汚膜等の機能膜を形成してもよい。 本発明におけるガラス板は、主面とともに端面にも圧縮応力層が形成されていてもよい。化学強化後に所望の形状にガラス板を切断する場合には、端面に圧縮応力層を有さない場合もある。本発明における圧縮応力は、ガラス板の主面方向に均一に形成されていても、面内に分布を有していてもよい。上記の化学強化処理によれば、処理むらを除けばほぼ均一に圧縮応力が得られる。そのため、圧縮応力に関する種々に値の測定にあたっては、主面の中央(ガラス板が矩形の場合には対角線の交わる点、矩形でない場合もこれに準じた点)を代表点とすればよい。 [0017] 本発明におけるガラス板を得るための化学強化処理の方法としては、ガラス表層のNaと溶融塩中のKとをイオン交換できるものであれば特に制限はないが、たとえば加熱された硝酸カリウム溶融塩にガラスを浸漬する方法が挙げられる。なお、本発明において硝酸カリウム溶融塩または硝酸カリウム塩は、KNO3の他、KNO3と10質量%以下のNaNO3を含有するものなどを含む。[0018] ガラスに所望の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成するための化学強化処理条件はガラス板の板厚などによっても異なるが、350~550℃の硝酸カリウム溶融塩に2~20時間、ガラス基板を浸漬させることが典型的である。経済的な観点からは、350~500℃、2~16時間の条件で浸漬させることが好ましく、より好ましい浸漬時間は、2~10時間である。」 「[0039] 以上の結果から、風雨や砂塵が多いと目される地域に、20年設置されたガラス板の主面に形成される傷の深さが、最大で約9μmであることがわかった。これにより、本発明の屋外用化学強化ガラス板の圧縮応力層の厚さを10μm以上にすることで、好ましくは圧縮応力層による強度増分を十分に発現するために15μm以上にすることで、傷が圧縮応力層を突き抜けることを予防出来、長期にわたり屋外環境にさらされても、ガラス板の破損を低減できる。」 ウ 甲第3号証(技術シリーズガラス、日本、株式会社朝倉書店、昭和57年5月25日、20~22ページ) 甲第3号証には以下の事項が記載されている。 「3.1.1 強化ガラス ガラスの実用強度が理論強度の数百分の1ぐらいと小さい理由は,ガラス表面に存在するきわめて微細な傷に外力が集中して表面の引っ張り応力によって破壊されるためであると述べたが,それゆえガラスを強化するためには表面に働く引っ張り応力に対抗する圧縮応力を残存させることが考えられる.具体的な方法として物理強化法,化学強化法,表面結晶化法ならびにイオン交換と表面結晶化の組み合わせ法などが行われているが,それぞれの強化法による最大強化割合を表I-12に示した. [図:0001389399000001.jpg] [図:0001389399000002.jpg] 物理強化法はガラスを軟化温度付近まで加熱して空気あるいは液体によって急冷するとガラス表面は急激に固化されるが,ガラスの熱伝導率は金属に比べて小さいので内部は徐徐に冷却されるためガラス表面に圧縮応力が生じる.また化学強化法はガラス転移点以下の温度(例えば400で)の硝酸カリ(KNO3)の熔融塩の中にNa2O・CaO・SiO2系のガラスを浸漬すると,図I-31に示すようにガラス表面でガラス中のNa+イオンが熔融塩中のK+イオンと入れ変わるが,K+オオンのほうがNa+イオンより大きいのでガラスを取り出して室温に冷却されたとき,ガラス表面に圧縮応力が生じる.これら2つの強化方法の相違は表I-13に示すようである. [図:0001389399000003.jpg] 物理強化法の特徴は化学強化の場合より圧縮応力の大きさは小さいが,層の厚みが深いためその後に加わる外傷による強度低下の影響が少なく,また処理時間が数分と短いことが大量生産方式に適している.しかしガラスの厚さが2~3mm以上必要であることや,板などの単純な形状にしか適用できないなどの制限があるが,万一の破損時には破片が小豆粒ぐらいの大きさに細かく割れる上,破面が鋭利に尖っていないため安全性が高いことが特徴である.一方,化学強化は圧縮応力が大きく,薄いものや寸法精度の厳しいもの、あるいは小さいものなど,どのような形状のガラスにも適用可能であって変形を起こさないことが長所であるが,処理時間が長くかかり,圧縮層の厚みが浅いことが短所である.」(21ページ左欄19行~22ページ左欄10行) エ 甲第4号証(特開2015-180596号公報) 甲第4号証には以下の事項が記載されている。 「【0004】 これらの化学強化ガラスの強化特性は、一般に、表面圧縮応力(CS;Compressive stress)と圧縮応力層深さ(DOL;Depth of layer)で表現されている。通常のソーダライムガラスを素板ガラスとして化学強化処理を施した場合、一般的にはCSが500~600MPa、DOLが6~10μmとなる化学強化ガラスが得られる。」 オ 甲第5号証(特開2014-189956号公報) 甲第5号証には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 路の側方に設置される路側設置用パネルであって、 前記パネルが、複数のガラス板を中間膜を介して貼り合わせた複合ガラスを本体とするものであり、 前記ガラス板のうち、最も路側のガラス板が強化ガラスとされることを特徴とする路側設置用パネル。」 「【0024】 以下、本発明の一実施形態に係る路側設置用パネル1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、路側設置用パネル1は、路Rの側方に設置されるものである。路側設置用パネル1は、いわゆる一般道あるいは高速道路等の公道、私道、通路、あるいは駐車場等における車両の走行路、あるいは鉄道の道床等、あらゆる路Rの側方に設置可能である。この実施形態において、路側設置用パネル1は、複合ガラス10と、この周縁に取り付けられた枠体20とで形成されている。 【0025】 図2に示すように、複合ガラス10は、民地側ガラス板12及び路側ガラス板14を、中間膜16を介して積層して貼り合わせた複合ガラス(合わせガラス)によって構成されている。民地側ガラス板12の厚みd1は、路側ガラス板14の厚みd2以下(d1≦d2)であることが好ましい。これによれば、民地側に飛散するガラス片の大きさ(重量)を最小限に抑制することができる。具体的には、民地側ガラス板12の厚みd1は、3mm以上8mm以下(3mm≦d1≦8mm)が好ましく、4mm以上5mm以下(4mm≦d1≦5mm)であることがより好ましい。前記値が3mm未満であると強風にさらされた場合、風荷重に耐えることができず、8mmを超えると飛散した場合のガラス片の量が多くなり好ましくない。更に使用するガラスの面積が大きくなると厚みが薄い場合割れやすい傾向にあるので、前記値は4mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、路側ガラス板14の厚みd2は、3mm以上8mm以下(3mm≦d2≦8mm)の範囲内において、民地側ガラス板12の厚みd1以上の厚みに設定されていることが好ましい。」 「【0030】 中間膜の厚みは特に限定はしないが、0.7~3.9mmであることが好ましく、1.5~3.1mmがより好ましい。前記値が0.7mm未満であると衝撃の際にガラスが飛散し易くなり、3.9mmを超えると経済的に好ましくない。」 カ 甲第6号証(特表2011-506236号公報) 甲第6号証には以下の事項が記載されている。 「【0059】 合わせガラスにおいては、破損時のガラスの飛散防止の観点から、中間膜とガラスとの接着性が非常に重要である。中間膜とガラスとの接着性とガラスの飛散防止性能との間には密接な関連があり、接着力を制御することによりガラスの飛散防止性が制御可能である。そのような観点から、本発明の合わせガラスの圧縮せん断強度が、5N/mm2以上であることが好ましく、10N/mm2以上であることがより好ましく、15N/mm2以上であることがさらに好ましい。圧縮せん断強度が5N/mm2未満の場合、中間膜とガラスとの接着性が十分でなく、合わせガラスに衝撃を与えた際にガラスが飛散するなど、安全上問題となるおそれがある。ここで、合わせガラスの圧縮せん断強度は、特表2001-526165号公報に記載された方法によって測定される。また、接着直後の圧縮せん断強度(s1)が5N/mm2以上、好適には10N/mm2以上であり、かつ、100℃、100時間熱処理後の圧縮せん断強度(s2)と圧縮せん断強度(s1)の比(s2/s1)が0.8~1.2であることが好ましい。すなわち、合わせガラスの製造後、経時的に接着力が大きく変化しないことが好ましい。」 「【0064】 [圧縮せん断強度] 中間膜のガラス接着性の評価は、特表2001-526165号公報に記載の方法に従い、圧縮せん断強度を測定することによって行った。図1に示す圧縮せん断試験装置1を用いて、合わせガラス2の圧縮せん断試験を実施した。試料とする合わせガラス2を寸法26mm×24mmに切断し、上側治具3と下側治具4の間に角度45°で装着し、上側治具3に正確に垂直方向下向きの力を作用させた。このとき、下側治具4は、水平方向に移動可能になっている。ガラス5から中間膜6がせん断するために必要な最大力を試料面積で割ることにより圧縮せん断強度(N/mm2)を測定し、5回の測定値の平均値を得た。合わせガラス2の作製直後に23℃、相対湿度50%の雰囲気に4時間保管したサンプルについての圧縮せん断強度(s1)と、100℃で100時間熱処理した後のサンプルを、23℃、相対湿度50%の雰囲気に4時間保管したサンプルについての圧縮せん断強度(s2)とを測定した。」 「【0067】 実施例1 [分散液の作製] ZnO/Sb2O5モル比が0.8~1.2である無水アンチモン酸亜鉛(B)の60重量%メタノール分散液(日産化学株式会社製「CX-Z693M-F」)をビーズミルにて粉砕処理して、分散液(d1)を得た。分散液(d1)0.6gに、10重量%のポリビニルブチラール(A1)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1000、アセタール化度70モル%)が溶解したエタノール溶液7.2gを攪拌しながら加え、分散液(d2)を得た。さらに、分散液(d2)を攪拌しながら、可塑剤(C)としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(以下、3G8と略す)15.2gを添加し、無水アンチモン酸亜鉛(B)が分散し、ポリビニルブチラール(A1)と可塑剤(C)が溶解した分散液(d3)を得た。 【0068】 [合わせガラス用中間膜の作製] 以上のようにして調製した分散液(d3)をポリビニルブチラール(A2)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度72モル%)40gに添加し混合した。この混合物をラボプラストミルで、170℃にて混練した後、プレス機で、140℃、5分間プレス成形することにより、厚さ1mmの合わせガラス用中間膜を作製した。サンプル作製条件を表1に示す。表1中、PVBはポリビニルブチラールを示し、Pnは粘度平均重合度を示す。 【0069】 [合わせガラスの作製] 得られた合わせガラス用中間膜を2mm厚のガラス(Saint Gobain社製、Planilux Clear)2枚を用いて挟んだ後、減圧下、140℃で90分保持することにより、合わせガラスを作製した。 【0070】 [評価] 得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて評価した結果を表2に示す。 【0071】 実施例2 実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加したポリビニルブチラール(A1)の代わりに、ポリビニルブチラール(A1)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度72モル%)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。 【0072】 実施例3 実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加するエタノール溶液のポリビニルブチラール(A1)の濃度を5重量%とし、該エタノール溶液を14.4g加えたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。 【0073】 実施例4 実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加するエタノール溶液のポリビニルブチラール(A1)の濃度を20重量%とし、該エタノール溶液を7.2g加えたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。 【0074】 実施例5 実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加する10重量%のポリビニルブチラール(A1)が溶解したエタノール溶液の添加量を3.6gにした以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。 【0075】 実施例6 実施例1と同様にして作製した分散液(d2)を攪拌しながら、可塑剤(C)として3G8を5.2g添加し、無水アンチモン酸亜鉛(B)が分散し、ポリビニルブチラール(A1)と可塑剤(C)が溶解した分散液(d3)を得た。分散液(d3)を、可塑剤(C)10g、酢酸マグネシウムの25重量%水溶液0.18g、酢酸カリウムの25重量%水溶液0.09gとポリビニルブチラール(A2)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度72モル%)40gからなる混合物と混合した。得られた混合物を実施例1と同様に成形し、サンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。 【0076】 実施例7 実施例1と同様にして作製した分散液(d1)0.27gに、10重量%のポリビニルブチラール(A1)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1000、アセタール化度70モル%)が溶解したエタノール溶液3.2gを攪拌しながら加え、分散液(d2)を得た。分散液(d2)を、可塑剤(C)15.2gとポリビニルブチラール(A2)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度72モル%)40gからなる混合物と混合した。得られた混合物を実施例1と同様に成形し、サンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜および合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。」 「【0087】 【表2】 [図:0001389399000004.jpg] 」 キ 甲第7号証(特開2006-13505号公報) 甲第7号証には以下の事項が記載されている。 「【請求項3】 PVBをベースとするフィルムの少なくとも1つがガラス/ガラスの積層品中で空気/空気のガラス表面において10~30N/mm2の圧縮剪断接着強さを有する、請求項1または2記載のソーラーモジュール。」 「【0006】 ガラスとPVBフィルムとからなる複合材の安全性は、公知のとおり、フィルムとガラスとの間の接着力に依存する。接着力は、ガラスの機械的な破壊の際にガラス破片がフィルムに接着したままであることが保証され、かつ角がとがったガラス破片が剥離することができないような高さであるほうがよい。しかしフィルムの接着力が高い場合、激突した物体が合わせガラスを貫通することができる。というのも、PVBフィルムが衝突箇所でほとんど弾力的に変形せず、かつ物体の制動にほとんど寄与しないからである。ガラスに対する付着が低いレベルにある場合、PVBフィルムは衝突箇所で引き延ばされながらガラスから剥離し、かつ変形し、このことによって衝突する物体は抑制される。 【0007】 ガラスへのPVBフィルムの接着性が低すぎると、ガラス破片は容易にフィルムから剥離し、ひいては破片が飛散する危険を高めるので、実地では高い接着力と低い接着力との間で妥協すること、つまり中間的なレベルの接着力が求められている。これは特に、高い貫通防止が重要である、自動車のための複合安全板の場合に該当する。建築分野のための複合安全板は、特に屋根材の場合に、良好に破片を結合することが必要とされるので、PVBフィルムはガラスと接着フィルムとの間で比較的高い接着力を有するほうがよい。」 ク 甲第8号証(特表2008-513342号公報) 甲第8号証には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 複合ポリマー中間層内に少なくとも3つのポリマー層を含む消音性積層体物品であって、複合中間層の少なくとも1つの層が、PET層と異なる少なくとも2つのポリマー層の間に配置されたポリエステル(PET)ポリマーであり、該異なるポリマーが、ポリビニルブチラール(PVB)、イオノプラスト樹脂(イオノマー)、ポリウレタン(PU)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、エチレン酸ターポリマー(酸コポリマー)などのエチレン酸コポリマー、およびポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる群から選択されたポリマーである、消音性積層体物品。」 「【0002】 本発明は、透明板ガラス用途に用いられる積層体に関する。本発明は特に、消音のための遮音性透明板ガラスとして有用な積層体に関する。 【背景技術】 【0003】 消音性性質を有するガラス積層体は、建築用途ならびに車において使用されている。このような遮音性積層体は、外部音源から例えば建築物または自動車の内部への音の透過を低減することが望ましい。」 「【0030】 実施例1 ポリアリルアミンプライマーコーティングを両面にコートされたPETを用いてガラス/イオノマー/PET/PVB/ガラス積層体を作製した。PETの対向した表面に、厚さ30ミルのPVB中間層(BE-1028Butacite(登録商標)、デュポンから入手可能)および厚さ60ミルのSentryGlas(登録商標)Plusイオノプラスト中間層(デュポンから入手可能)の各々、1つのシートを積層した。PETシートは厚さ6.5~7.0ミルであった。損失係数を計算し、表1に記載する。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「道路の内側」、「道路の外側」は、それぞれ、本件発明1の「通路の側」、「前記通路と反対の側」に相当する。また、本件発明1の「前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され」ているから、甲1発明の「道路の内側に配置される第2の化学強化ガラス」、「道路の外側に配置される第1の化学強化ガラス」は、それぞれ、本件発明1の「通路の側に配置される第1の強化ガラス」、「前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラス」に相当する。 (イ)甲1発明の「中間膜」は、本件発明1の「中間膜」に相当し、上記(ア)の検討を参酌すると、甲1発明の「道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され」る「合せガラス」は、本件発明1の「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラス」に相当する。 (ウ)甲1発明の「合せガラス」は、「道路の路側に沿って配置される透光性防音パネルに用いられる」ものであるから、遮音する機能を有していることは明らかであり、また、当該「合わせガラス」は、「道路の外側に配置される第1の化学強化ガラスと、道路の内側に配置される第2の化学強化ガラスとを、中間膜を介して貼り合せて構成され」るものであるから、板状であるといえる。 したがって、甲1発明の「合わせガラス」は、「遮音板」を構成するものであるといえる。 (エ)甲1発明の「第2の化学強化ガラス」は、「厚み」が「1.5mm以上」であり、本件発明1の「第1の強化ガラス」は、「4mm以上8mm以下の厚さを有し」ているから、両者の厚さは、4mm以上8mm以下の範囲で重複しているから、甲1発明の「第2の化学強化ガラス」と、本件発明1の「第1の強化ガラス」とは、「4mm以上8mm以下の厚さを有し」ている点で共通する。 (オ)甲1発明の「第2の強化ガラス」の「厚さ」は、「4mm未満」であり、本件発明1の「第1の化学強化ガラス」は、「厚みが1.5~4mm」であり、両者の厚みは、1.5~4mm未満の範囲で重複しているから、甲1発明の「第2の強化ガラス」と、本件発明1の「第1の化学強化ガラス」は、厚みが1.5~4mm未満である点で共通する。 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成される遮音板。」 <相違点> 相違点1-1:本件発明1は、「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」なっているのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点1-2:本件発明1は、「前記第1の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点1-3:本件発明1は、「前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し」ているのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点1-4:本件発明1は、「前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1-3、相違点1-4について 事案に鑑み、「中間膜」に関する相違点1-3、相違点1-4から一緒に検討する。 上記(1)ア(ア)における甲第1号証の【0066】には、中間膜としてアイオノプラスト樹脂(SG)を使用すること、すなわち、アイオノマー樹脂を使用することが記載されているから、甲1発明の「中間膜」をアイオノマー樹脂で構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。 しかし、「中間膜」であるアイオノマー樹脂の圧縮せん断強度を25N/mm2以上にすることは、甲第1号証~甲第8号証のいずれにも記載も示唆もされていないし、本件特許出願時における技術常識であるともいえない。 また、アイオノマー樹脂の圧縮せん断強度が25N/mm2以上であることを示す証拠もない。 したがって、甲1発明において、「中間膜」を25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有するアイオノマー樹脂で構成すること、すなわち、相違点1-3、1-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人の主張 申立人は、上記相違点1-3及び相違点1-4について、令和4年6月15日付け意見書において、当業者が、甲1発明において、甲第1号証及び甲第8号証に記載のアイオノマー樹脂を中間膜に採用し、さらに甲第5号証の記載に基づいて中間膜が25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有するようにアイオノマー樹脂を選択することは、容易になし得ることである旨主張している(当審注:上記「甲第5号証の記載に基づいて」は、「甲第6、7号証の記載に基づいて」の誤記である。)。 しかし、申立人の上記主張は、甲1発明において、甲第1号証及び甲第8号証に記載のアイオノマー樹脂を中間膜に採用し、これを基準として、さらに甲第6、7号証の記載に基づいて中間膜が25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有するようにアイオノマー樹脂を選択するこにより、相違点1-3及び相違点1-4に係る本件発明1の構成とすることとなり、甲1発明に基づき、2つの段階を経て相違点1-3及び相違点1-4に係る本件発明1の構成に至るものであるから、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (3)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明を対比する。 本件発明1と本件発明2とは、いずれも、「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され」る「遮音板」との構成を有しているから、前記(2)アにおける検討を参酌すると、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、前記第2の強化ガラスが4mm未満の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成される遮音板。」 <相違点> 相違点2-1:本件発明2は、「前記第1の強化ガラスの厚さは前記第2の強化ガラスの厚さよりも2mm以上で大きく」なっているのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点2-2:本件発明2は、「前記第2の強化ガラスにおける圧縮応力層の深さが12μm以下である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点2-3:本件発明2は、「前記中間膜が、25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有し」ているのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 相違点2-4:本件発明2は、「前記中間膜がアイオノマー樹脂で構成される」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点2-3、相違点2-4について 事案に鑑み、「中間膜」に関する相違点2-3及び相違点2-4から一緒に検討する。 相違点2-3及び相違点2-4は、上記相違点1-3及び相違点1-4と同じ内容のものであるから、上記(2)イ(ア)で検討したのと同様の理由により、甲1発明において、「中間膜」を25N/mm2以上の圧縮せん断強度を有するアイオノマー樹脂で構成すること、すなわち、相違点2-3及び相違点2-4に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明4~6について 本件発明4~6は、本件発明1又は2を減縮した発明であり、いずれも、相違点1-3及び相違点1-4に係る本件発明1の構成、又は、相違点2-3及び相違点2-4に係る本件発明2の構成を有しているから、上記(2)イ(ア)又は(3)イ(ア)で検討しの同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4~6は、甲1発明及び甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、取消理由1には理由がない。 第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 1 申立理由1(進歩性) (1)本件発明3は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件発明4~6は、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 なお、請求項7、8は、本件訂正により削除されている。 2 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と本件発明3とは、いずれも、「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し」、「前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成され」る「遮音板」との構成を有しているから、前記第5 1(2)アにおける検討を参酌すると、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「通路の側に配置される第1の強化ガラス、及び前記通路と反対の側に配置される第2の強化ガラスが、中間膜を介して積層される合わせガラスで構成される遮音板であって、 前記第1の強化ガラスが4mm以上8mm以下の厚さを有し、 前記第1の強化ガラス及び前記第2の強化ガラスは化学強化ガラスで構成される遮音板。」 <相違点> 相違点3:「第2の強化ガラス」の「厚さ」について、本件発明3は、「1.5mm未満」であるのに対し、甲1発明は、「1.5~4mm」である点。 イ 判断 甲1発明が解決しようとする課題は、上記第5 1(1)ア(ア)における甲第1号証の【0011】によれば、「耐熱性及び耐風圧性に優れ、破損時におけるガラス片を縮小できる合せガラス及び安全性に優れた透光性防音パネルを提供すること」であるところ、甲第1号証の【0029】には、「本発明の合せガラスにおいて、第2の化学強化ガラスは、厚みが1.5mm以上であることが必要であり、2~8mmがより好ましい。厚みが1.5mm未満であると、防音性や耐風圧性が劣る傾向にある。」と記載されていることからすると、甲1発明の「前記第2の化学強化ガラスの厚みが1.5mm以上であり」との事項は、上記課題を解決するための手段であるといえる。 そうすると、甲1発明において、「第2の化学強化ガラスの厚み」を1.5mm未満にすると、上記課題が解決されなくなるから、甲1発明において、「第2の化学強化ガラスの厚み」を1.5mm未満とすることには阻害要因がある。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の38ページ5~15行において、甲第1号証においては、第1の化学強化ガラスの厚みは1.5mm以上であり、一方で、本件発明3においては、第2の強化ガラスの厚さは1.5mm未満であるが、測定誤差等を鑑みると、1.5mm以上なる下限値と1.5mm未満なる上限値との間に実質的な差異はなく、さらに技術的意義ないし作用効果において実質的な意義はなく、現に、本件明細書に記載される実施例においては、第2の強化ガラスの厚さを1.3mmとした場合と3.0mmとした場合において、衝撃試験で同等の結果が得られているから、当業者が、甲1発明において第1の化学強化ガラスの厚みを下限値とすることは適宜なしうることである旨主張している。 しかし、上記イで検討したとおり、甲1発明において、「第1の化学強化ガラスの厚み」を1.5mm未満にすることには阻害要因があるから、甲1発明の「第1の化学強化ガラスの厚み」の「1.5mm」なる下限値と、本件発明3の「第2の強化ガラス」の「厚さ」の「1.5mm未満」なる上限値との間に実質的な差異はないとすることはできない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (2)本件発明4~6について 本件発明4~6は、本件発明3を減縮した発明であり、いずれも、相違点3に係る本件発明3の構成を有しているから、上記(1)イで検討したとおり、甲1発明において、「第2の化学強化ガラスの厚み」を1.5mm未満とすることには阻害要因があり、このことは、甲第2号証~甲第5号証の記載に左右されるものではない。 したがって、本件発明4~6は、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明3~6は、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、申立理由1には理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項7、8は、本件訂正により削除されたため、請求項7、8に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-701033

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決117件(AGC株式会社、津末 恵子)
  • 2025-701169異議申立 / 2026-03-18 / 維持ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、電極合剤、電極、及び二次電池
    同じ当事者: AGC株式会社
  • 2023-700825異議申立 / 2025-09-18 / 訂正認容光学フィルタおよび撮像装置
    同じ当事者: AGC株式会社
  • 2025-700636異議申立 / 2025-09-03 / 維持シリカガラス、シリカガラスを用いた高周波デバイス、およびシリカガラスの製造方法
    同じ当事者: AGC株式会社
  • 2025-700205異議申立 / 2025-07-31 / 維持車載カメラ付き車両用窓ガラス
    同じ当事者: AGC株式会社
  • 2024-700654異議申立 / 2024-11-01 / 維持ポリウレタンフォーム、及び車両用防音材
    同じ当事者: AGC株式会社
同じ根拠条文の審決2,126件(特許法120条の8第1項、特許法135条)
  • 2023-700489異議申立 / 2023-12-26 / 訂正認容光学ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランクおよび光学素子
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2022-700297異議申立 / 2023-05-02 / 訂正認容落下性能が改善されたガラス
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2021-700994異議申立 / 2022-07-12 / 訂正認容高周波デバイス用ガラス基板と高周波デバイス用回路基板
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2020-700830異議申立 / 2022-01-11 / 訂正認容光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2019-700910異議申立 / 2021-07-27 / 訂正認容光学ガラス、光学素子及びプリフォーム
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
同じ論点・分野の審決(審決分類)345件(121・C03C)
  • 2025-700668異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容光学ガラス及び光学素子
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2024-701221異議申立 / 2026-01-19 / 訂正認容ガラス板
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2024-700008異議申立 / 2025-04-30 / 維持合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2023-701171異議申立 / 2024-09-25 / 訂正認容石英ガラスクロスの製造方法
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2023-701007異議申立 / 2024-06-25 / 訂正認容光学ガラスの製造方法
    共通の審決分類: 121・C03C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存