特許異議申立
2024-700008
合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス
- 審判番号
- 2024-700008
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-110535
- 登録番号
- 7305711
- 請求日
- 2024年01月05日
- 審決日
- 2025年04月30日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.121-Y (C03C) / P1651.536-Y (C03C) / P1651.537-Y (C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7305711号発明「合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7305711号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7305711号の請求項1~9に係る特許(以下、「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、2015年(平成27年)2月25日(優先権主張 平成26年2月25日(JP)日本国)を国際出願日とする特願2015-512942号の一部を令和1年6月14日に特願2019-111301号として分割出願し、さらにその一部を令和3年7月2日に特願2021-110535号として分割出願としたものであって、令和5年6月30日にその特許権の設定登録がされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許1~9に対して、令和6年1月5日に特許異議申立人弁理士法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年2月26日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出され、同年9月30日付けで取消理由が通知され、同年11月29日に特許権者より意見書が提出された。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である、合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項2】
合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程と、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)。
【請求項3】
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第2の樹脂層を備える、請求項1又は3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1及び3~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1及び3~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラス。」
第3 特許異議の申立てについて
1 申立ての理由の概要
申立人が主張する申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(進歩性欠如)
本件特許発明1~9は、甲第1号証~甲第3号証の2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)
本件特許1~9は、特許請求の範囲の記載が後記4(2)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許1~9は、発明の詳細な説明の記載が後記4(2)アの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 証拠方法
甲第1号証 国際公開第2014/021406号
甲第2号証 特開2012-224489号公報
甲第3号証の1 国際公開第97/10099号
甲第3号証の2 特表平11-512351号公報
甲第4号証 特開2012-81748号公報
なお、甲第4号証は、申立理由2、3において主張する技術常識を裏付けるための証拠である。
2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
当審において令和6年9月30日付けで特許権者に通知した取消理由は、要するに、本件特許発明1~9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証の2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。
3 各甲号証の記載内容について
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「合わせガラス及び合わせガラスの取り付け方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている(下線部は、当審で付加した。以下同様である。)。
ア 「[0027] 図2に、本発明の一実施形態に係る合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜を模式的に部分切欠断面図で示す。
[0028] 図2に示す中間膜1は、多層中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、赤外線反射層2と、赤外線反射層2の第1の表面2a側に配置された第1の樹脂層3と、赤外線反射層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に配置された第2の樹脂層4とを備える。第1の樹脂層3は、赤外線反射層2の第1の表面2aに積層されている。第2の樹脂層4は、赤外線反射層2の第2の表面2bに積層されている。赤外線反射層2は、中間層であり、熱線を反射する性能を有する。第1,第2の樹脂層3,4は、本実施形態では表面層である。赤外線反射層2は、第1,第2の樹脂層3,4の間に配置されている。赤外線反射層2は、第1,第2の樹脂層3,4の間に挟み込まれている。従って、中間膜1は、第1の樹脂層3と、赤外線反射層2と、第2の樹脂層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
・・・
[0030] 上記赤外線反射層は赤外線を反射する。上記赤外線反射層は、赤外線を反射する性能を有していれば特に限定されない。上記赤外線反射層としては、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、赤外線を反射する性能を有する。
・・・
[0032] 上記金属箔付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの外表面に積層された金属箔とを備える。上記樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。上記金属箔の材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、パラジウム、及びこれらを含む合金等が挙げられる。」
イ 「[0048](熱可塑性樹脂)
上記第1,第2の樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。該熱可塑性樹脂は特に限定されない。熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第1の樹脂層中の熱可塑性樹脂と、上記第2の樹脂層中の熱可塑性樹脂とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0049] 上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
[0050] 上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材及び赤外線反射層などの他の層に対する第1,第2の樹脂層の接着力がより一層高くなる。
・・・
[0055] 上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは28モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは32モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
[0056] 上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、測定することにより求めることができる。」
ウ 「[0063] (可塑剤)
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、上記第1の樹脂層は可塑剤を含むことが好ましく、上記第2の樹脂層は可塑剤を含むことが好ましい。上記第1,第2の樹脂層中の熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、上記第1,第2の樹脂層はそれぞれ、可塑剤を含むことが特に好ましい。
・・・
[0074] 上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記第1,第2の樹脂層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の各含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上、好ましくは75重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。」
エ 「[0094] (紫外線遮蔽剤)
上記第1の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との双方が、紫外線遮蔽剤を含むことがより好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。該紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。」
オ 「[0109] (酸化防止剤)
上記第1の樹脂層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との双方が酸化防止剤を含むことが好ましい。該酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。」
カ 「[0122] 上記中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上述した各成分を混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。特に、上記第1,第2の樹脂層は、押出成形により形成することが好ましい。
[0123] 上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。なお、上記合わせガラス用中間膜を得る際に、第1の樹脂層と赤外線反射層と第2の樹脂層とを別々に作製した後、第1の樹脂層と赤外線反射層と第2の樹脂層とを積層して中間膜を得てもよく、第1の樹脂層と赤外線反射層と第2の樹脂層とを共押出により積層して中間膜を得てもよい。
[0124] また、赤外線反射層の表面に、第1,第2の樹脂層を形成するための組成物を塗工して、第1,第2の樹脂層を形成して、中間膜を得てもよい。
[0125] 中間膜の製造効率が優れることから、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが、同一のポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましく、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤を含むことがより好ましく、同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。一方で、遮熱性をより一層高める観点からは、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが、異なる樹脂組成物により形成されていることが好ましい。」
キ 「[0160] 以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
[0161] 第1,第2の樹脂層を形成するために、以下の材料を用いた。
[0162] 熱可塑性樹脂:
下記の表1に示すポリビニルブチラール樹脂PVB1~PVB7(いずれも、n-ブチルアルデヒドによりアセタール化されているポリビニルブチラール樹脂(PVB))を用意した。
[0163]
[表1]
[図:0001423454000001.jpg]
[0164] 可塑剤:
3GO(トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート)
[0165] 他の成分:
BHT(酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
T-460(2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(24-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、BASF社製「Tinuvin460」)
T-326(紫外線遮蔽剤、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
・・・
VSU(紫外線遮蔽剤、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド、クラリアントジャパン社製「Sanduvor VSU」)
PR25(紫外線遮蔽剤、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル、クラリアントジャパン社製「Hostavin PR-25」)
ITO(ITO粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子)
・・・
43V(成分X、フタロシアニン化合物、中心金属としてバナジウムを含有する、山田化学社製「NIR-43V」)
・・・
[0166] また、以下の赤外線反射層を用意した。
[0167] XIR-75(金属箔付き樹脂フィルム、Southwall Technologies社製「XIR-75」)
多層フィルム(3M、多層樹脂フィルム、住友スリーエム社製「マルチレイヤー Nano 80S」)
[0168] また、以下の合わせガラス部材(ガラス)を用意した。
[0169] クリアガラス(縦100cm×横100cm×厚み2mm)
グリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦100cm×横100cm×厚み2mm)
[0170] (樹脂層A1の作製)
ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(T-326)0.8重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
[0171] 得られた組成物を押出機により押出して、厚み380μmの単層の樹脂層A1を得た。
・・・・・
[0173]
[表2]
[図:0001423454000002.jpg]
[0174] (樹脂層B1の作製)
可塑剤(3GO)40重量部と、ITOを得られる樹脂層B1中で0.39重量%となる量とを添加し、充分に混練し、可塑剤分散液を得た。ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤分散液全量と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
[0175] 得られた組成物を押出機により押出して、厚み380μmの単層の樹脂層B1を得た。
[0176] (樹脂層B2~B17の作製)
配合成分の種類及び含有量を下記の表3に示すように設定したこと以外は樹脂層B1と同様にして、厚み380μmの単層の樹脂層B2~B17を作製した。
[0177] なお、下記の表3において、PVB1、3GO、BHT、T-326、T-460、LAF70、VSU及びPR25の配合量は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)100重量部に対する配合量(重量部)を示す。ITO、CWO、43V及びSG-5A1257の配合量は、樹脂層100重量%中での配合量(重量%)を示す。
[0178]
[表3]
[図:0001423454000003.jpg]
[0179] (実施例1)
(1)合わせガラス用中間膜の作製
赤外線反射層として、XIR-75(金属箔付き樹脂フィルム、Southwall Technologies社製「XIR-75」)を用意した。
[0180] 用意したXIR-75を赤外線反射層として用いて、該赤外線反射層を得られた樹脂層A1と得られた樹脂層B3との間に挟み込んで、中間膜を得た。
[0181] (2)合わせガラスの作製
得られた中間膜を、縦30cm×横30cmの大きさに切断した。また、1枚のクリアガラス(縦30cm×横30cm×厚み2mm)と、1枚のグリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦30cm×横30cm×厚み2mm)とを用意した。このクリアガラスとグリーンガラスとの間に、得られた中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラス板からはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
[0182] (実施例2~29)
第1,第2の樹脂層の種類、赤外線反射層の種類、並びに第1,第2の合わせガラス部材(ガラス)の種類を下記の表4~6に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
・・・
[0196]
[表4]
[図:0001423454000004.jpg]
」
ク 「[図2]
[図:0001423454000005.jpg]
」
(2) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが5.0%以下であり、フィルム流れ方向(MD)およびフィルム幅方向(TD)の180℃で5分間の加熱収縮率の差の絶対値が1.0%以下であることを特徴とする合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム。」
イ 「【0025】
本発明のフィルムは透明樹脂を介して、ガラスに接着されることが一般的である。透明樹脂は、例えばポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられるが、これら透明樹脂との接着性を向上させるため、本発明のフィルム表面にコロナ処理を行うことが好ましい。コロナ処理されたフィルム表面のぬれ指数は52dyne/cm以上が好ましい。」
(3) 甲第3号証の1、甲第3号証の2の記載事項
甲第3号証の2には、「反射-および透過光にしわによる光障害のない安全ガラスの製造方法、該安全ガラスを製造するために特別な支持体フィルムを用いることならびに該方法および該用途のために特に適する支持体フィルム」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
なお、甲第3号証の1は、甲第3号証の2の国際公開であって、同じ内容が記載されているから、ここでの摘記は省略する。
ア 「【特許請求の範囲】
1)第一のガラス板、これに対応する第二のガラス板および多層の中間層を有しており、フィルム積層体の形の該中間層が第一の複合フィルム、薄層系を有した二軸延伸された熱可塑性支持体フィルムおよび第二の複合フィルムより成る、反射-および透過光にしわによる光障害がない安全ガラスの製造法において、
1.1)第一の複合フィルムの上に、薄層系を有する支持体フィルムを載せ、該支持体フィルムが
1.11)30~70μmの厚さおよび
1.12)両方の延伸方向で0.3~0.8%の熱収縮率(120℃で20秒熱処理した後に測定)
を有し、そしてその支持体フィルムの上に第二の複合フィルムを載せ、
1.2) 1.1)の要件に従うフィルムをしわのない状態で二枚のガラス板の間に配置し、そして圧力および熱の使用下に圧縮しガラス板と接合し、
その際に1.1)および/または1.2)の手段の範囲内において少なくとも1度は脱気を実施することを特徴とする、上記方法。
・・・・・
7)第一の複合フィルムの上に、薄層系を有しそして両方の面に少なくとも40mJ/m2の表面エネルギーを有する支持体フィルムを載せる請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
8)ポリビニルブチラールまたはエチレンビニルアセテートを基礎とする複合フィルムおよびポリエチレンテレフタレートより成る支持体フィルムを用いて実施する請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
・・・・・
15)請求項1~9のいずれか一つに記載の方法を実施するための、薄層系を有する延伸された熱可塑性合成樹脂の支持体フィルムであって、厚さ30~70μmを有しかつ両方の延伸方向に0.3~0.8%の熱収縮率(120℃で20秒熱処理した後に測定)を有する上記支持体フィルム。
・・・・・
18)両面に少なくとも40mJ/m2の表面エネルギーを有する請求項15~17のいずれか一つに記載の支持体フィルム。
19)ポリエチレンテレフタレートより成る請求項15~18のいずれか一つに記載の支持体フィルム。」
イ 「本発明は、第一のガラス板、第二のガラス板および多層の中間層より成り、フィルム積層体の状態の該中間層が第一の複合フィルム、薄層系を有した二軸延伸された熱可塑性支持体フィルムおよび第二の複合フィルムより成る、反射-および透過光にしわによる光障害がない安全ガラスを製造する方法に関する。」(第5ページ第5~8行)
ウ 「しかしながら、最初の複合フィルムの上に、薄層系を有しそして両側に少なくとも40mJ/m2の表面エネルギーを有するた支持フィルムを載せる場合には、これらのフィルム積層体において特に良好な接合が達成される。この目的のためには支持体フィルムを未被覆の側をコロナ-またはプラズマ処理に付す。
上記の数値パラメーターは特に有利であり、ポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンビニルアセテート-コポリマー(EVA)より成る複合フィルムおよびポリエチレンテレフタレート(PET)より成る支持体フィルムを用いる場合が非常に適している。」(第9ページ第14~21行)
エ 「以下に本発明を実施例によって詳細に説明する。実施例は複雑に曲げた安全ガラスの製法に関し、これは本発明を制限するものではない。
両側がザラザラした厚さ0.38mmのPVB-複合フィルム(製造元:Monsanto社)、二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)並びに両側がザラザラした厚さ0.38mmのPVB-複合フィルム(製造元:Monsanto社)をロールから引き出し、ロール対の間で約60~70℃で接合して脱気されそして部分的に接合した予備積層体とし、次いで適当な手段で裁断する。
被覆されたPET-支持体フィルムを被覆する前に二軸延伸しそして熱的に固定する。延伸および被覆は、PET-支持体フィルムが被覆後におよび予備積層体の製造前に以下の熱収縮挙動を示すような条件で行う。即ち、被覆されたPET-支持体フィルムは120℃に加熱されたポリエチレングリコール(分子量:約400)の液浴中に20秒にわたり浸漬する間にフィルム板において長手方向に対して平行にかつ垂直に約0.4%収縮する。この場合、収縮率の測定は長さ150mm、幅15mmの帯状フィルムの両端を長さ測定装置の固定部の間にクランプで止める。帯状フィルムの長さは、熱い浴中に浸漬する前および熱処理の終了後に同じ測定温度で測定する。これから長さの変化の百分率を予め決められた収縮処理温度および保持時間のもとでの収縮値として算出する。
被覆されたPET-支持体フィルムは、複合フィルムに対しての十分な接着を確保するために両側に40mJ/m2より大きい表面エネルギーを負荷する。
上述の通り製造された予備積層体は、2.1mmの厚さの複雑に曲がったガラス板の凹み側にしわを作らずに載せる。このガラス板は長手方向および横手方向で曲がっており、著しく湾曲した側面部を有している。このものはその縁部に沿って印刷されそして焼き付けられた不透明な防眩帯状物を有している。曲がりが第一のガラス板のそれに一致している厚さ1.5mmの第二の複雑に曲がったガラス板を予備積層体の上に載せる。ガラス板の縁部の上にある予備積層体の端を切除する。曲げ安全ガラスの製法で一般に知られている様に、ガラス板の端部に沿って、脱気の目的で減圧システムに連結したリッププロフィール(lip ptofile)を置く。
以下の脱気工程において、リッププロフィールを約20分減圧し、それによってガラス-フィルム積層体を脱気する。次いでオートクレーブ中で減圧状態を維持しながら、約100℃の最高温度のもとで約30分熱処理して予備接合する。これに続いて、中間冷却の後に、予備接合されたガラス-フィルム積層体を約125℃に加熱しながら13bar までの圧力下にオートクレーブ中で実際の積層工程を行う。
完成安全ガラスをオートクレーブから取り出した後に反射-および透過光学性をチェックする。ガラス板の著しく曲がった側の領域でも被覆されたPET-支持体フィルムに実質的にしわがなく、安全性および反射-/透過光に関する自動車の風防ガラスおよびリアーウインドについての厳しい要求に合格している。」(第10ページ第19行~第11ページ末行)
4 当審の判断
(1) 取消理由、申立理由1(進歩性欠如)について
事案に鑑み、取消理由及び申立理由1(進歩性欠如)をまとめて検討する。
ア 甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、前記3(1)ア~カ、クによれば、実施形態に係る合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜([0027])及びその製造方法([0122])について記載され、前記合わせガラス用中間膜は、赤外線反射層2と、赤外線反射層2の第1の表面2a側に配置された第1の樹脂層3と、赤外線反射層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に配置された第2の樹脂層4とを備えること([0028]、[図2])、当該赤外線反射層としては、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等が挙げられること([0030])、前記第1及び第2の樹脂層は、熱可塑性樹脂を含み、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましいこと([0048]、[0050])、前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、15モル%以上40モル%以下が好ましいこと([0055])、前記第1及び第2の樹脂層は、中間膜の接着力をより一層高める観点から、可塑剤を含むことが好ましく、その含有量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、25重量部以上75重量部以下であることが好ましいこと([0063]、[0074])、前記第1及び第2の樹脂層は、紫外線遮蔽剤や酸化防止剤を含むことが好ましいこと([0094]、[0109])が記載されている。
(イ) そして、前記3(1)キによれば、実施例に係る具体例として、実施例1には、赤外線反射層として、金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)を用意し、この赤外線反射層を樹脂層A1と樹脂層B3との間に挟み込んで、中間膜を得たこと([0166]、[0167]、[0179])、前記樹脂層A1は、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(T-326)と、酸化防止剤(BHT)を含む組成物であること([0162]~[0165]、[0170]、[0173])、前記樹脂層B3は、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(VSU、PR25)と、酸化防止剤(BHT)とを含む組成物であること([0162]~[0165]、[0174]~[0178])が記載されている。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の記載事項を実施例1の「合わせガラス用中間膜」及びその製造方法に注目して整理すると、甲第1号証には、次の「合わせガラス用中間膜」に係る発明(以下、「甲1発明1」という。)及び「合わせガラス用中間膜の製造方法」に係る発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明1)
「赤外線反射層として、金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)を用い、前記赤外線反射層の第1の表面側に配置されており、かつ、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(T-326)と、酸化防止剤(BHT)とを含む組成物である樹脂層A1と、前記赤外線反射層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されており、かつ、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(VSU、PR25)と、酸化防止剤(BHT)とを含む組成物である樹脂層B3を備える、合わせガラス用中間膜。」
(甲1発明2)
「赤外線反射層として、金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)を用い、前記赤外線反射層の第1の表面側に、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(T-326)と、酸化防止剤(BHT)とを含む組成物である樹脂層A1を配置し、前記赤外線反射層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に、水酸基の含有率が30.5mol%であるポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(VSU、PR25)と、酸化防止剤(BHT)とを含む組成物である樹脂層B3を配置する、合わせガラス用中間膜の製造方法。」
イ 本件特許発明1について
(ア) 本件特許発明1と甲1発明1との対比
甲1発明1の「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」は、金属箔付き樹脂フィルムであり、当該樹脂フィルムは、甲第3号証の2の「二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)」との記載(前記3(3)エ参照)によると、ポリエチレンテレフタレート(PET)と推認できるから、甲1発明1の「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」は、本件特許発明1の「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する。
また、甲1発明1の「樹脂層A1」及び「樹脂層B3」は、それぞれ赤外線反射層の第1の表面側及び前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されているから、本件特許発明1の「前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層」、「前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層」に相当する。
さらに、甲1発明1の「樹脂層A1」及び「樹脂層B3」は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部を含むから、本件特許発明1の「前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である」ことを満足する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明1とは、
「プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である、合わせガラス用中間膜。」
である点で一致し、次の相違点1、2の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されて」いるのに対して、甲1発明1は、「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」の「第1の表面」及び「前記第1の表面とは反対の第2の表面」に対して、ぬれ張力を調整するための表面処理又は改質が行われていない点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)」ことが特定されているのに対して、甲1発明1は、その点が明らかでない点。
(イ) 相違点1の検討
事案に鑑み相違点1から検討する。
a 甲第3号証の2には、前記3(3)アによれば、「フィルム積層体の形の該中間層が第一の複合フィルム、薄層系を有した二軸延伸された熱可塑性支持体フィルムおよび第二の複合フィルムより成る」ことが記載され、前記3(3)エによれば、「両側がザラザラした厚さ0.38mmのPVB-複合フィルム(製造元:Monsanto社)、二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)並びに両側がザラザラした厚さ0.38mmのPVB-複合フィルム(製造元:Monsanto社)をロールから引き出し、ロール対の間で約60~70℃で接合して脱気されそして部分的に接合した予備積層体」が記載されている。そして、前記3(3)エによれば、「被覆されたPET-支持体フィルムは、複合フィルムに対しての十分な接着を確保するために両側に40mJ/m2より大きい表面エネルギーを負荷する」ことも記載されている。
他方、甲第3号証の2には、前記3(3)ウによれば、「最初の複合フィルムの上に、薄層系を有しそして両側に少なくとも40mJ/m2の表面エネルギーを有するた支持フィルムを載せる場合には、これらのフィルム積層体において特に良好な接合が達成される。この目的のためには支持体フィルムを未被覆の側をコロナ-またはプラズマ処理に付す。」(当審注:「表面エネルギーを有するた支持フィルム」は、「表面エネルギーを有する支持フィルム」の誤記である。)と記載されており、当該記載において、支持体フィルムを「未被覆の側」とは、薄層系、すなわち、二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層が積層されていない側を意味すると解される。
そうしてみると、甲第3号証の2には、「二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)」の熱線遮断層が積層されていない側のPET-支持体フィルムの表面のみにコロナ又はプラズマ処理を付すことが記載されていると解するのが相当であり、「二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)」の熱線遮断層が積層されている側にコロナ又はプラズマ処理を付すことは記載されていない。
b また、甲第3号証の1には、甲第3号証の2と同じ内容が記載されているから、甲第3号証の1にも、前記aで検討したのと同様に、「二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)」の熱線遮断層が積層されている側にコロナ又はプラズマ処理を付すことは記載されていない。
c さらに、甲第2号証には、前記3(2)ア、イによれば、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムである、合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムについて、当該フィルムを、透明樹脂を介してガラスに接着される際に、透明樹脂との接着性を向上させるため、当該フィルム表面にコロナ処理を行い、その表面のぬれ指数を52dyne/cm以上とすることが記載されている。
しかしながら、甲第2号証には、「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」に関する記載はなく、このような「赤外線反射層」の両面をコロナ処理することは示されていない。
d したがって、甲第2号証~甲第3号証の2の記載を参酌しても、甲1発明1の「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」の「金属箔」が付されている側の表面を、表面処理剤で被覆すること、又は、表面処理により改質することは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。そのため、甲1発明1において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証~甲第3号証の2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明2について
(ア) 本件特許発明2と甲1発明2との対比
甲1発明2の「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」、「樹脂層A1」、「樹脂層B3」は、前記イ(ア)で検討したのと同様に、本件特許発明2の「プラスチックシートであるプラスチック層」、「前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層」、「前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層」に相当する。
また、甲1発明2の「樹脂層A1」及び「樹脂層B3」は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部を含むから、本件特許発明2の「前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である」ことを満足する。
したがって、本件特許発明2と甲1発明2とは、
「合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第1の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下であり、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記第2の樹脂層に含まれる前記可塑剤の含有量が、35重量部以上75重量部以下である合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法。」
である点で一致し、次の相違点3、4の点で相違する。
(相違点3)
本件特許発明2は、「第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程」を備えているのに対して、甲1発明2は、「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」の「第1の表面」及び「前記第1の表面とは反対の第2の表面」に対して、ぬれ張力を調整するための表面処理又は改質が行われていない点。
(相違点4)
本件特許発明2は、「(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除く。)」ことが特定されているのに対して、甲1発明2は、その点が明らかでない点。
(イ) 相違点3の検討
事案に鑑み、相違点3について検討すると、前記イ(イ)で検討したのと同様に、甲第2号証~甲第3号証の2の記載を参酌しても、甲1発明2の「金属箔付き樹脂フィルムXIR-75(Southwall Technologies社製)」である「赤外線反射層」の「金属箔」が付されている側の表面を、表面処理剤で被覆すること、又は、表面処理により改質することは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。そのため、甲1発明2において、相違点3に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第1号証~甲第3号証の2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
エ 本件特許発明3~9について
本件特許発明3~9は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲第1号証~甲第3号証の2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
オ 申立人の主張について
(ア) 申立人の指摘事項
申立人は、特許異議申立書の第24ページ末行~第25ページ第11行において、「甲第1号証には、要するに、甲1発明として、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備える合わせガラスにおいて(請求項1)、中間膜が、赤外線を反射する赤外線反射層と、赤外線反射層の第1の表面側に配置されており、かつ熱可塑性樹脂を含む第1の樹脂層と、赤外線反射層の第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されており、かつ熱可塑性樹脂を含む第2の樹脂層とを備えており(請求項1、[0030])、熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材及び赤外線反射層などの他の層に対する第1、第2の樹脂層の接着力がより一層高くなり([0050]、[0055])、第1の樹脂層は25~75質量部の可塑剤を含むことが好ましく、第2の樹脂層は25~75質量部の可塑剤を含むことが好ましいこと([0063]、[0074])、が開示されている。」として、甲1発明を認定している。
そして、特許異議申立書の「(ア)本件特許発明1について」(第27ページ)、及び、「(イ)本件特許発明2について」(第33ページ)において、甲第1号証の「上記赤外線反射層としては、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等が挙げられる。」([0030])との記載を論拠にして、甲1発明の「赤外線を反射する赤外線反射層」は、本件特許発明1又は2の「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当すること、及び、甲第1号証~甲第3号証の2に記載された発明は技術分野や課題が共通しており、密着性向上という共通の作用・機能を有する手段を有していることを論拠として、甲1発明において、甲第2号証~甲第3号証の2に記載された発明を組み合わせて、本件特許発明1の「前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており」との構成(構成要件1D)や、本件特許発明2の「第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程」との構成(構成要件2B)を具備させることについて、何ら困難ではないことを主張している。
(イ) 前記(ア)の主張に対する判断
甲第3号証の2、甲第3号証の1には、前記イ(イ)a、bで検討したとおり、複合フィルムとの十分な接着を確保するために、「二重の銀層を有する高い光透過性の熱線遮断層のあるPET-支持体フィルム(製造符号XIR 75、製造元:Southwall社)」の熱線遮断層が積層されていない側のPET-支持体フィルムの表面のみをコロナ又はプラズマ処理することが記載され、また、甲第2号証には、前記イ(イ)cで検討したとおり、透明樹脂との接着性を向上させるために、共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムの表面をコロナ処理することが記載されている。
すなわち、甲第2号証~甲第3号証の2には、樹脂層との密着性を向上させるために、PETやポリエステルといったプラスチック表面に対して、コロナ処理又はプラズマ処理することが記載されているにすぎない。
他方、申立人が認定する甲1発明の「赤外線反射層」は、甲第1号証の[0030]の記載によれば、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等の様々な赤外線反射層を含んでおり、例えば、金属箔付き樹脂フィルムのように、第1の表面及び第1の表面とは反対の第2の表面の両面がプラスチック表面でない赤外線反射層を含むものである。
そうしてみると、申立人が認定する甲1発明において、本件特許発明1の構成要件1Dや、本件特許発明2の構成要件2Bを具備させるためには、赤外線反射層の中から、第1の表面及び第1の表面とは反対の第2の表面の両面がプラスチック表面である赤外線反射層を選択し、さらに、その両面に対して、甲2号証~甲第3号証の2に記載されたコロナ処理又はプラズマ処理を実施することになる。
しかしながら、甲第1号証~甲第3号証の2の記載をみても、甲1発明の赤外線反射層として、第1の表面及び第1の表面とは反対の第2の表面の両面がプラスチック表面である赤外線反射層を選択する動機付けとなる記載や示唆はないし、そして、甲1発明の赤外線反射層として、第1の表面及び第1の表面とは反対の第2の表面の両面がプラスチック表面である赤外線反射層を選択することが容易想到の事項であるとしても、さらに、その両面のプラスチック表面に対して、甲第2号証~甲第3号証の2に記載された発明に基づき、コロナ処理又はプラズマ処理を実施することは、容易想到性を重ねること、すなわち、いわゆる「容易の容易」であることからすると、甲1発明において、本件特許発明1の構成要件1Dや、本件特許発明2の構成要件2Bを具備させることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
カ 取消理由、申立理由1についての結論
以上の検討のとおり、取消理由及び申立理由1に理由はない。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)、申立理由3(実施可能要件違反)について
ア 申立人の指摘事項
本件特許発明1の「プラスチックシートであるプラスチック層」との発明特定事項について、本件特許明細書には、発明が解決しようとする課題として、「合わせガラスの層間剥離を生じ難くし、更に合わせガラスの耐貫通性を高めることができるプラスチックシート・・・を提供することである」(【0007】)と開示されているところ、本件特許明細書において、当該課題を解決できたことが具体的に示された例は、プラスチック層として、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートを用いた場合のみであり(【0139】~【0142】、【0146】~【0149】)、ポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂層からなるプラスチック層を用いた場合であっても同様に、上記課題を解決し得ることは、開示も示唆もない。
また、ポリエチレンテレフタレートは、元々、耐熱性や熱収縮挙動などの面で優れた性質を有しているため、合わせガラス用中間膜を構成する層としても好適であることは周知である(甲第4号証参照)が、本件特許明細書の【0037】で列挙された熱可塑性樹脂の中には、たとえば、融点の低いポリエチレンやガラス転移温度の低いポリプロピレンのように耐熱性が低いという点や熱収縮性が悪いという点においてポリエチレンテレフタレートよりも劣る原料もあり、本件特許明細書で具体的に示されるポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフタレートよりも性質の劣るポリエチレンやポリプロピレン等)を用いる場合に、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が把握できない。
加えて、ポリエチレンテレフタレートを用い、本件特許発明の課題を解決できる具体例が示されているとしても、他の熱可塑性樹脂を用いる場合も同様に、当該課題を解決できる中間膜を作製し得るかどうかは定かでないし、そのような中間膜を作製するためには、当業者に過度の試行錯誤を要求することとなる。
以上のことから、本件特許発明1~9は、発明の詳細な説明に開示された範囲を超えているし、発明の詳細な説明に基づいて実施可能でない(特許異議申立書第43ページ第6行~第47ページ第9行)。
イ 前記アの指摘事項に対する判断
本件明細書の【0007】に記載されているように、本件特許発明の課題は、「合わせガラスの層間剥離を生じ難くし、更に合わせガラスの耐貫通性を高めることができるプラスチックシート及びプラスチックシートの製造方法を提供すること」であり、これは、プラスチックシートとして同じ樹脂を用いた場合において、「合わせガラスの層間剥離を生じ難く」すること、「合わせガラスの耐貫通性を高める」ことを意図したものと解釈できる。
そうすると、本件特許発明の課題は、「プラスチックシートであるプラスチック層」として、ポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂を用いた場合であっても、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合と同等の特性を有することではないから、「プラスチックシートであるプラスチック層」として、ポリエチレンテレフタレートよりも性質の劣るポリエチレンやポリプロピレン等が含まれることのみを理由に、サポート要件違反及び実施可能要件違反であるということはできない。
また、技術常識を参酌しても、本件特許明細書の記載から、ポリエチレンやポリプロピレン等を用いた場合に、層間剥離性や耐貫通性が改善しないとの事情は認められず、また、特許異議申立書では、単に本件明細書にポリエチレンやポリプロピレン等を用いた例が示されていないということを主張するにとどまり、実際にポリエチレンやポリプロピレン等を用いた場合では、層間剥離性や耐貫通性が改善しなかったといった具体的な証拠や理由は示されていない。
そうすると、前記アの指摘事項は、正当な理由があるとはいえず、採用できない。
ウ 申立理由2、申立理由3についての結論
以上の検討のとおり、申立理由2及び申立理由3に理由はない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、本件特許1~9を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~9を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700008