特許異議申立
2025-700205
車載カメラ付き車両用窓ガラス
- 審判番号
- 2025-700205
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-048530
- 登録番号
- 7540377
- 請求日
- 2025年02月18日
- 審決日
- 2025年07月31日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】AGC株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】冨田 圭太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 八木 誠
- 審判官 西山 智宏
- 分類
- P1651.121-Y (B60R) / P1651.537-Y (B60R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7540377号発明「車載カメラ付き車両用窓ガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7540377号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7540377号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年3月23日にした出願であって、令和6年8月19日に特許権の設定登録がされ、同年8月27日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年2月18日に、特許異議申立人冨田圭太郎(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
車両に取り付けられる車両用窓ガラスと、
前記車両用窓ガラスの室内側の面に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられる車載カメラと、
前記車載カメラの車両前方側に配置されるフード部と、を有する車載カメラ付き車両用窓ガラスであって、
前記車載カメラの撮影レンズは、前記ブラケットの開口部から前記車両用窓ガラスに向けられ、
前記ブラケットは第1樹脂材料からなり、前記フード部が第2樹脂材料からなり、前記第1樹脂材料と前記第2樹脂材料とが異なり、
前記第1樹脂材料が30%以上のガラス繊維が配合された樹脂材料であり、前記第2樹脂材料が30%未満のガラス繊維が配合された樹脂材料であり、
前記フード部の前記車両用窓ガラスを向く表面は、L値が27.0以下の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成される、
車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記フード部が前記ブラケットに配置される、請求項1に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記ブラケットと前記フード部とが一体成形品である、請求項1又は2に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記ブラケットと前記フード部とが二色成形品である、請求項3に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記ブラケットと前記フード部とが別部品で構成され、前記フード部は、前記ブラケットと接着剤、または両面テープにより接着されている、請求項1又は2に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記ブラケットと前記フード部とが別部品で構成され、前記フード部は、係合部を有し、前記ブラケットは、被係合部を有し、
前記フード部と前記ブラケットとは、前記係合部と前記被係合部とが係合することで連結される、請求項1又は2に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記車両用窓ガラスは室内側の面の外周縁に遮蔽領域を備え、
前記ブラケットは、前記遮蔽領域内において、前記車両用窓ガラスに固定されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記車両用窓ガラスが車両に取り付けられる取付角度は20°から80°の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車載カメラ付き車両用窓ガラス。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証~甲第14号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲14」ともいう。)を提出して、以下の特許異議申立理由(申立理由1~3)により請求項1~8に係る特許を取り消すべきである旨主張する。
1 証拠方法
甲1:特開2020-131809号公報
甲2:特表2012-504518号公報
甲3:特開2020-6827号公報
甲4:独国特許発明第10211444号明細書
甲5:独国特許発明第102011056128号明細書
甲6:中国特許出願公開第110091809号明細書
甲7:特開2003-22703号公報
甲8:特開平10-275964号公報
甲9:特開2003-71884号公報
甲10:特開2018-111766号公報
甲11:特開平10-24464号公報
甲12:特開2017-171166号公報
甲13:特開2017-61276号公報
甲14:特開2019-14338号公報
2 特許異議申立理由
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~8は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1~8は発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
(3)申立理由3(明確性要件)
本件発明1~8は明確ではないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
「【請求項1】
被係止部を有し、車両の周辺情報を検知するカメラと、
前記カメラが車幅方向一方側から車幅方向他方側へスライドすることにより前記被係止部が係止される係止部を有し、フロントウインドシールドガラスの内面で、かつ車両上方側に取り付けられたブラケットと、
を備えたカメラ搭載構造。
【請求項2】
前記ブラケットに設けられ、前記カメラのレンズの車両前方下側に配置された画角フード部材と、
前記画角フード部材に設けられ、前記被係止部が前記係止部から外れないようにロックするロック機構と、
を備えた請求項1に記載のカメラ搭載構造。」
「【0017】
図1に示されるように、車両12に搭載される本実施形態に係るカメラ搭載構造10を構成するカメラの一例としての車載カメラ装置20は、少なくとも車両12の後方側の映像を表示する表示装置の一例としての電子インナーミラー(図示省略)よりも車両前方上側におけるフロントウインドシールドガラス14の内面に設けられている。
【0018】
図2に示されるように、車載カメラ装置20は、車両12の周辺情報(位置、方向、距離等)を検知する運転支援用(自動運転用)の車載カメラ16を装置本体22に有している。そして、装置本体22は、後述する画角フード部材(以下「フード部材」という)30の本体部32が上面に設置される平板状の設置部24を有している。」
「【0021】
上記したように、装置本体22の設置部24には、平面視で車両前方側へ向かって車幅方向へ広がる略等脚台形状の本体部32を有するフード部材30が配置されるようになっている(図7参照)。図2、図3に示されるように、フード部材30は、フロントウインドシールドガラス14を透過した光の反射(車載カメラ16への写り込み)を抑制又は防止するための樹脂製の部材であり、その本体部32は、例えば黒色に着色されている。
【0022】
なお、フード部材30は、車載カメラ16のレンズ16Aの前方下側に配置されている。そして、フード部材30の本体部32における前端部32Fの上面は、フロントウインドシールドガラス14の内面に接触しない(非接触となる)構成になっている(図1参照)。また、図4に示されるように、このフード部材30は、後述するブラケット50に取り付けられるようになっている。」
「【0029】
図4に示されるように、ブラケット50は、平面視で略「H」字状となるように樹脂で形成された本体部51を有している。この本体部51が、図1に示されるように、フロントウインドシールドガラス14の内面で、かつ車両上方側の車幅方向中央部に両面テープ及び接着剤によって取り付けられている。」
「【0034】
したがって、車載カメラ装置20は、次のようにしてブラケット50に装着される。すなわち、図5に示されるように、装置本体22の右側の側壁22Rに形成された突起部27Rが、装着部52の右側の側壁52Rに形成された貫通孔58に車幅方向内側から挿入されて係止されるとともに、装置本体22の前壁22Fに形成された突起部25が、装着部52の前壁52Fに形成されたガイド溝60に車両下方側から挿入される。」
「【図1】
[図:0001426842000001.jpg]
」
「【図7】
[図:0001426842000002.jpg]
」
イ 認定事項
図1、7の図示内容によれば、車載カメラ装置20のレンズ16Aは、ブラケット50の切り欠き部からフロントウインドシールドガラス14に向けられることが認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「車載カメラ構造10が設けられたフロントウインドシールドガラス14であって、
車載カメラ構造10は、
フロントウインドシールドガラス14の内面に取り付けられたブラケット50と、
ブラケット50に装着される車載カメラ装置20と、
車載カメラ装置20のレンズ16Aの前方下側に配置されるフード部材30を備え、
車載カメラ装置20のレンズ16Aは、ブラケット50の切り欠き部からフロントウインドシールドガラス14に向けられ、
ブラケット50は樹脂で形成され、フード部材30は樹脂製の部材であり、
フード部材30の本体部32は黒色に着色されている、
車載カメラ構造10が設けられたフロントウインドシールドガラス14。」
(2)甲2について
ア 記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
自動車のウインドウ(12)に固定可能なキャリアプレート(10)を有し、該キャリアプレートは、少なくとも部分的にプラスチックから製造され、前記キャリアプレートにより、少なくとも1つのカメラ(22)、1つのセンサ(20)又は同様のものが担持されている、自動車のウインドウ、特にフロントウインドウ(12)に固定するキャリア装置であって、 前記キャリアプレート(10)のプラスチックには、添加物、特にガラス添加材料が混ぜられていることを特徴とするキャリア装置。」
「【図面の簡単な説明】
【0020】
・・・
【図7】第2の実施形態に基づく、フロントウインドウに取り付けられているキャリア装置を内側から見た場合の部分的な斜視図である。
【図8】カバーを取り外して、キャリア装置を内側から見た場合の部分的な斜視図である。特に、キャリアプレートによって保持されているカメラ、センサ又は同様のものが確認できる。
【図9】図7及び8によるキャリア装置のキャリアプレートの斜視図である。
【図10】ウインドウに対向する、図9によるキャリアプレート面の斜視図である。
【図11】図7及び8による、フロントウインドウの内側に接着されたキャリア装置のキャリアプレートの部分的な斜視図である。
【図12】図7によるキャリアプレートのカバーの斜視図である。」
「【0022】
これに対して、図7~13は、本キャリア装置の第2の実施形態を示し、これは、特に後に詳しく述べる追加カメラが設けられているという点で、第1の実施形態とは異なっている。この場合、図7及び8は、図1及び2と同じく、車室から見た場合の、フロントウインドウ12の、特に車両ルーフ内張り14への移行部分に取り付けたキャリア装置の配置を示している。これに対して、図9及び10は、キャリアプレート10の第2の実施形態をそれぞれ斜視図で示したものであるが、キャリアプレートは、図3及び4によるキャリアプレートとほぼ同一に形成されている。
【0023】
図11は、接着剤を介してフロントウインドウ12に内側から取り付けられているキャリアプレート10の配置を示している。」
「【0028】
図3及び4又は図9及び10によるそれぞれのキャリアプレート10を説明するには、まず、キャリアプレート10が、それぞれ添加材料、特にガラス材料を加えたプラスチックからなることを指摘しておかなければならない。このガラス材料は、例えばガラス繊維又はガラスビーズを含むことができ、この添加材料は、プラスチック全体の10%~40%、特に20%~30%の割合を占めている。この添加材料により、キャリアプレート10は、フロントウインドウ12と同じような膨張特性又は膨張率を得られる。その結果として、フロントウインドウ12又は車室のキャリアプレート10が加熱されると、両方の部品は少なくともほぼ均等に膨張する。このことにより、キャリアプレートを特に有利にフロントウインドウ12に固定することが可能となる。従って、カメラ及びセンサ18~22をとりわけ確実に、動かないように配置することができ、このことはそれぞれの測定結果又は検知結果に有利に働く。カメラアングルを車両に合わせて正しく調整するため、キャリアプレート10のカメラホルダをモデルごとに様々に形成することも可能である。従って、基礎構造を変更する必要はない。」
「【0036】
さらに図8から、図1による実施形態とは異なり(この部分は特に図2において確認できる)、カメラ22が多目的カメラ12とレイン/ライトセンサ20との間に設けられていることが分かる。これに対応して、図9及び10から、第2の実施形態によるキャリアプレート10は、このカメラ22のためのもう1つの開口部54を有しており、この開口部は同様に絞りの役割を果たす。第2の実施形態によるキャリア装置のカバー16を示している図12及び13から、レンズフード56が取り付けられていることが分かる。このレンズフード56は、第2の実施形態によるキャリアプレート10の開口部54に合わせられているため、全体として漏斗型のエレメントになっている。図12及び13によるレンズフード56の内側には、該当するラッカが塗布されている。これにより、カバー16は、キャリア装置全体の保護機能又はカバー機能ばかりではなく、さらにレンズフード56を提供するというもう1つの機能も持っている。」
「【図7】
[図:0001426842000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001426842000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001426842000005.jpg]
」
「【図12】
[図:0001426842000006.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)【0020】及び【0022】の記載によれば、図7、8は、フロントウインドウ12に取り付けられたキャリア装置を車室側から見た図であり、【0036】の記載並びに図7、8及び12の図示内容も参照すると、レンズフード56はカメラ22の車両後方側に配置されることが認められる。
(イ)【0036】の記載並びに図8及び9の図示内容によれば、カメラ22のレンズは、キャリアプレート10の開口部54からフロントウインドウ12に向けられていることが認められる。
ウ 甲2発明
上記ア及びイを総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「キャリア装置が取り付けられた自動車のフロントウインドウ12であって、
キャリア装置は、
フロントウインドウ12に内側から取り付けられているキャリアプレート10と、
キャリアプレート10に担持されるカメラ22と、
カメラ22の自動車後方側に配置され、カバー16に取り付けられるレンズフード56とを有し、
カメラ22のレンズは、キャリアプレート10の開口部54からフロントウインドウ12に向けられており、
キャリアプレート10は10%~40%のガラス繊維を加えたプラスチックである、
キャリア装置が取り付けられた自動車のフロントウインドウ12。」
(3)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、基本的には製品形状への機械加工だけで作製でき、表裏で異なる表面性状が要求されるランプシェードに適した両面プレコート鋼板を提供することを目的とする。本発明の前照灯ランプシェード用プレコート鋼板は、その目的を達成するため、ランプシェードの内面となる鋼板表面にポリエーテルサルフォン系樹脂をベース樹脂とする膜厚3~15μmの黒色塗膜が形成され、ランプシェードの外面となる鋼板表面にポリエーテルサルフォン系樹脂をベース樹脂とする膜厚3~15μmのクリア耐熱塗膜が形成されていることを特徴とする。
【0006】黒色塗膜は、黒色顔料の添加によって明度指数L*が40以下(更に好ましくは、35以下)に調整されていることが好ましい。黒色塗膜の耐熱性は、シリカ,アルミナ,酸化チタン等の金属酸化物粉末或いは複合酸化物粉末を配合することによって向上する。更に、黒色塗膜の明度指数L*が35以下になると、ほぼ反射光をなくすことができる。クリア耐熱塗膜には、透明感を維持しながら耐熱性を向上させるため10~65質量%のアルミニウム粉末を配合してもよい。」
(4)甲8について
甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラ内部の信号伝達手段に用いられるフレキシブルプリント基板に起因する漏光の反射によるフレアやゴーストなどを防止するための、フレキシブルプリント基板及びこれにより反射防止されたフレキシブルプリント基板を用いたカメラに関するものである。」
「【0017】この際、フレキシブルプリント基板の一部又は全面に形成された反射防止層の表面は、JIS Z8741に従い光沢度計で測定した際の入射光60度に対する光沢度が0~0.5%であることが必要である。この光沢度が0.5%を超えるとカメラなどの光学機器内部での反射防止効果が不十分となる。・・・」
2 申立理由1(進歩性)について
(1)甲1を主引用文献とする場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「車載カメラ装置20」は、その機能や構造等からみて、前者の「車載カメラ」に相当し、以下同様に、「フロントウインドシールドガラス14」は「車両用窓ガラス」に、「内面」は「室内側の面」に、「取り付けられた」ことは「固定される」ことに、「ブラケット50」は「ブラケット」に、「装着される」ことは「取り付けられる」ことに、「前方下側」は「車両前方側」に、「フード部材30」は「フード部」に、「備え」ることは「有する」ことに、「切り欠き部」は「開口部」に、「本体部32」は「前記車両用窓ガラスを向く表面」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「車載カメラ構造10が設けられたフロントウインドシールドガラス14」は前者の「車載カメラ付き車両用窓ガラス」に相当し、以下同様に、「フロントウインドシールドガラス14の内面に取り付けられたブラケット50」は「前記車両用窓ガラスの室内側の面に固定されるブラケット」に、「ブラケット50に装着される車載カメラ装置20」は「前記ブラケットに取り付けられる車載カメラ」に、「車載カメラ装置20のレンズ16Aの前方下側に配置されるフード部材30」は「前記車載カメラの車両前方側に配置されるフード部」に、「車載カメラ装置20のレンズ16Aは、ブラケット50の切り欠き部からフロントウインドシールドガラス14に向けられ」ることは「前記車載カメラの撮影レンズは、前記ブラケットの開口部から前記車両用窓ガラスに向けられ」ることに、「ブラケット50は樹脂で形成され」ることは「前記ブラケットは第1樹脂材料からな」ることに、「フード部材30は樹脂製の部材であ」ることは「前記フード部が第2樹脂材料からな」ることに、「フード部材30の本体部32は黒色に着色されている」ことは「前記フード部の前記車両用窓ガラスを向く表面は」「黒色であ」ることに、それぞれ相当する。
また、後者の「フロントウインドシールドガラス14」は車両に取り付けられることは明らかであるから、前者の「車両に取り付けられる車両用窓ガラス」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「車両に取り付けられる車両用窓ガラスと、
前記車両用窓ガラスの室内側の面に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられる車載カメラと、
前記車載カメラの車両前方側に配置されるフード部と、を有する車載カメラ付き車両用窓ガラスであって、
前記車載カメラの撮影レンズは、前記ブラケットの開口部から前記車両用窓ガラスに向けられ、
前記ブラケットは第1樹脂材料からなり、前記フード部が第2樹脂材料からなり、
前記フード部の前記車両用窓ガラスを向く表面は黒色である、
車載カメラ付き車両用窓ガラス。」
<相違点1-1>
本件発明1では、「前記第1樹脂材料と前記第2樹脂材料とが異なり、前記第1樹脂材料が30%以上のガラス繊維が配合された樹脂材料であり、前記第2樹脂材料が30%未満のガラス繊維が配合された樹脂材料である」のに対し、甲1発明では、そのような構成であるのか不明である点。
<相違点1-2>
フード部の車両用窓ガラスを向く表面について、本件発明1では、「L値が27.0以下であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成される」のに対し、甲1発明では、そのような特定はない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
甲7には、ランプシェードの内面に形成された黒色塗膜の明度指数L*を35以下にするとよいこと(【0005】、【0006】等参照。以下「甲7記載事項」という。)が記載され、甲8には、カメラ内部に用いられるフレキシブルプリント基板に形成された反射防止層の表面を、JIS Z8741に従い光沢度計で測定した際の入射光60度に対する光沢度が0~0.5%であることが必要であること(【0001】、【0017】等参照。以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。
甲7記載事項の「明度指数L*」は、本件発明1の「L値」に相当し、甲8記載事項の「光沢度」は、本件発明1の「グロス値」に相当すると認められるが、甲1発明と甲7記載事項では、属する技術分野が異なり、甲1発明と甲8記載事項では、属する技術分野は類似するものの、反射防止を図る部材がそれぞれフード部材30とフレキシブルプリント基板であり、設けられる箇所を含めて異なることから、甲1発明に甲7記載事項や甲8記載事項を適用する動機付けがあるとは認められない。
また、甲1、7、8だけでなく、甲2~6及び9~14を参照しても、車載カメラのフード部の車両用窓ガラスを向く表面について、L値が27.0以下であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成されることが、当該技術分野において、技術常識であることや周知技術であることを認めるに足る証拠もない。
したがって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
以上によれば、相違点1-1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲2を主引用文献とする場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲2発明と対比すると、後者の「自動車」は前者の「車両」に相当し、以下同様に、「フロントウインドウ12」は「車両用窓ガラス」に、「取り付けられている」ことは「固定される」ことに、「キャリアプレート10」は「ブラケット」に、「担持される」ことは「取り付けられる」ことに、「カメラ22」は「車載カメラ」に、「レンズフード56」は「フード部」に、「有」することは「有する」ことに、「レンズ」は「撮影レンズ」に、「開口部54」は「開口部」に、「ガラス繊維」は「ガラス繊維」に、「加えた」ことは「配合された」ことに、「プラスチック」は「第1樹脂材料」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「キャリア装置」はカメラ22を有するものであるから、後者の「キャリア装置が取り付けられた自動車のフロントウインドウ12」は前者の「車載カメラ付き車両用窓ガラス」に相当し、以下同様に、「自動車のフロントウインドウ12」は「車両に取り付けられる車両用窓ガラス」に、「フロントウインドウ12に内側から取り付けられているキャリアプレート10」は「前記車両用窓ガラスの室内側の面に固定されるブラケット」に、「キャリアプレート10に担持されるカメラ22」は「前記ブラケットに取り付けられる車載カメラ」に、「カメラ22のレンズは、キャリアプレート10の開口部54からフロントウインドウ12に向けられて」いることは「前記車載カメラの撮影レンズは、前記ブラケットの開口部から前記車両用窓ガラスに向けられ」ることに、「キャリアプレート10は」「プラスチックである」ことは「前記ブラケットは第1樹脂材料からな」ることに、それぞれ相当する。
c そして、後者の「カメラ22の車両後方側に配置され」る「レンズフード56」は、前者の「前記車載カメラの車両前方側に配置されるフード部」と、「前記車載カメラの車両前後方向の一方側に配置されるフード部材」という点で共通し、後者の「10%~40%のガラス繊維を加えたプラスチック」は、前者の「30%以上のガラス繊維が配合された樹脂材料」と、「ガラス繊維が配合された樹脂材料」という点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
「車両に取り付けられる車両用窓ガラスと、
前記車両用窓ガラスの室内側の面に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられる車載カメラと、
前記車載カメラの車両前後方向の一方側に配置されるフード部と、を有する車載カメラ付き車両用窓ガラスであって、
前記車載カメラの撮影レンズは、前記ブラケットの開口部から前記車両用窓ガラスに向けられ、
前記ブラケットは第1樹脂材料からなり、
前記第1樹脂材料がガラス繊維が配合された樹脂材料である、
車載カメラ付き車両用窓ガラス。」
<相違点2-1>
フード部について、本件発明1では、前記車載カメラの「車両前方側」に配置されるのに対し、甲2発明では、カメラ22の「自動車後方側」に配置される点。
<相違点2-2>
本件発明1では、「前記フード部が第2樹脂材料からなり、前記第1樹脂材料と前記第2樹脂材料とが異なり」、
前記第1樹脂材料が「30%以上」のガラス繊維が配合された樹脂材料であり、「前記第2樹脂材料が30%未満のガラス繊維が配合された樹脂材料である」のに対し、甲2発明では、キャリアプレート10は「10%~40%」のガラス繊維を加えたプラスチックであり、レンズフード56の材料は不明である点。
<相違点2-3>
フード部の車両用窓ガラスを向く表面について、本件発明1では、「L値が27.0以下の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成される」のに対し、甲2発明では、そのような特定はない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
相違点2-3は相違点1-2を包含し、更なる相違点を含むものであるから、上記(1)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲2発明において、相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、相違点2-3以外の相違点を検討するまでもなく本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)小括
以上によれば、申立理由1は成り立たない。
3 申立理由2(サポート要件)について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の40~42ページにおいて、本件明細書の【0065】及び【0066】を参酌すると、本件発明において、フード部に適用される第2樹脂材料が30%未満のガラス繊維が配合された樹脂材料であることの技術的意義は、フード部を形成する金型の表面に凹凸を設け、フード部の表面に凹凸を転写するが、ガラス繊維が多いと該転写を妨げてグロス値を安定させないおそれがあるから、グロス値を安定させることであると認められるところ、本件発明1~8は、フード部を形成する金型に凹凸を設けることについて何ら特定しておらず、金型に凹凸がないものも含まれ、そのようなものでは、グロス値を安定させるという課題を解決できないから、発明の課題が解決できると当業者が認識できるように記載された範囲を外れると判断すべきものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。
(2)申立人の主張についての判断
本件明細書の発明の詳細な説明の【0006】の記載によれば、本件発明の課題は、車両用窓ガラスを透過した光がフード部で反射し、反射像が車両用窓ガラスの車内側の面に映り込むことを抑制できる車載カメラ付き車両用窓ガラスを提供することと認められるところ、発明の詳細な説明の【0053】には、「そこで、発明者らは鋭意検討した結果、後述の実施例で説明するように、フード部30の車両用窓ガラス12を向く表面を、L値が27.0以下の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成されることで、車両用窓ガラス12を透過した光がフード部30で反射し、反射像が車両用窓ガラス12への映り込むことを抑制できることを見出した。・・・」と記載され、発明の詳細な説明における、
「【0060】
ガラスへの反射の評価は、試験体1から試験体11のフード部を、図5(B)に示すように、車載カメラの前方に配置して、目視で確認を行った。ガラスへの反射が抑制されている試験体1、及びガラスへの反射が試験体1と同程度である場合を〇とし、多少のガラスへの反射があるが、使用上問題が無い場合を△とし、ガラスへの反射が有り、実使用上問題が有る場合を×とした。
【0061】
表1は、試験体1から試験体11に関して、測定結果と、評価結果を示している。表1から理解できるように、試験体4を除く、27.0以下のL値の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成される試験体は、ガラスへの反射の評価が△以上であることが理解できる。ここで重要なことは、27.0以下のL値の黒色で、且つグロス値が6.0未満の材料であれば、特に限定されることなくフード部に適用でき、ガラスへの反射を抑制できる。
【0062】
[図:0001426842000007.jpg]
」との記載も参酌すると、当業者であれば、フード部の車両用窓ガラスを向く表面が、27.0以下のL値の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成されることで、本件発明の課題が解決できることが理解できる。
そして、本件発明1~8は、「フード部の車両用窓ガラスを向く表面は、L値が27.0以下の黒色であり、且つ、JIS Z8741-1997に準拠して測定されるグロス値が6.0未満の材料で構成される」との発明特定事項を有するものであり、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(3)小括
以上によれば、申立理由2も成り立たない。
4 申立理由3(明確性要件)について
(1)申立人の主張
申立人は、申立書の42~43ページにおいて、請求項1の「前記第2樹脂材料が30%未満のガラス繊維が配合された樹脂材料であり」との記載では、下線部の文言からみて、第2樹脂材料がガラス繊維を含む樹脂材料であると解するのが自然であるところ、本件明細書の【0066】では、「「30%未満のガラス繊維が配合された」には、ガラス繊維を全く含まない場合も含まれる。」と記載されていることを勘案すると、請求項1の上記記載では、第2樹脂材料がガラス繊維を全く含まないものを含むのか含まないのか不明確であるから、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明2~8は不明確である旨主張する。
(2)申立人の主張についての判断
しかしながら、文言上30%未満に0%が含まれるのは明らかであり、0%のガラス繊維が配合された樹脂材料という表現が日本語として間違いであるとまではいえず、請求項1の上記記載は、第2樹脂材料がガラス繊維を全く含まないものを含むと解するのが相当であるところ、それは本件明細書の【0066】の上記記載と矛盾しないことから、請求項1の上記記載は明確である。
よって、申立人の上記主張は前提において根拠を欠くものであり、採用することはできない。
(3)小括
以上によれば、申立理由3も成り立たない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700205