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特許異議申立

2023-701171

石英ガラスクロスの製造方法

審判番号
2023-701171
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-090028
登録番号
7269416
請求日
2023年11月07日
審決日
2024年09月25日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】信越化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
  • 【異議申立人】河原田 隆
審判長/審判官
  • 審判長 岩谷 一臣
  • 審判官 木原 裕二
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1651.121-YAA(C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7269416号発明「石英ガラスクロスの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7269416号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~7、9〕について訂正することを認める。 特許第7269416号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7269416号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和4年6月2日に出願され、令和5年4月25日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年5月8日発行)がされ、その後、その特許について、令和5年11月7日に特許異議申立人河原田隆(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年2月21日付けで取消理由が通知され、令和6年4月15日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされた。なお、本件訂正請求について、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 本件訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~7、9について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所に当審が付したものである。 (1)訂正事項 特許請求の範囲の請求項3の「加熱工程」を、 「加熱工程(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。)」に訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7、9も同様に訂正する。) (2)一群の請求項について 訂正前の請求項4~7、9は、請求項3の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 2.訂正の適否 上記訂正事項は、「加熱工程」について「(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。)」とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この「(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。)」とすることにより、新たな技術的事項が導入されるものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、上記訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.訂正についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正後の請求項〔3~7、9〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む、40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 【請求項2】 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスをヒートクリーニングする工程を含む、40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 【請求項3】 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスをヒートクリーニングする工程と、 ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する加熱工程(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。) とを含む、40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項4】 気体が、空気及び不活性ガスから選ばれ、露点15℃以下の気体である請求項1 ~3のいずれか1項記載の石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項5】 露点が0℃以下の乾燥気体を、炉内に導入する請求項1~3のいずれか1項記載の石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項6】 加熱前、昇温中、温度保持中及び降温中のいずれか1つ以上に、露点が0℃以下の乾燥気体を、炉内に導入する請求項5記載の石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項7】 降温中に、露点が0℃以下の乾燥気体を、炉内に導入する請求項6記載の石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項8】 ヒートクリーニングする工程後に、さらにシラン処理工程を含む、請求項1又は2記載の石英ガラスクロスの製造方法。 【請求項9】 加熱工程後に、さらにシラン処理工程を含む、請求項3記載の石英ガラスクロスの製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1.取消理由の概要 本件特許の請求項3~5、9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用刊行物> 甲第1号証:特開2021-195689号公報 甲第13号証:特開2021-63320号公報 以下、甲第1号証を「甲1」といい、その他も同様にいう。 2.取消理由についての判断 (1)甲1に記載された発明 甲1(特に、請求項1及び7)には、SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロスに対して、ヒートクリーニング(【0050】)を行った後の熱処理工程(【0053】)について、次の「甲1発明」が記載されている。 「SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングを行った後、電気加熱炉に入れ、500℃~1500℃の温度で加熱処理し、前記加熱処理した石英ガラスクロスの表面をエッチング液でエッチング処理して、10GHzでの誘電正接が0.0010未満で引張強さがクロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上のアニールド石英ガラスクロスとする、アニールド石英ガラスクロスの製造方法。」 (2)本件発明3について ア 本件発明3と甲1発明を対比する。 甲1発明の「SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロス」は、本件発明3の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」に相当し、甲1発明の「ヒートクリーニングを行」うことは、本件発明3の「ヒートクリーニングする工程」に相当する。 甲1発明の「電気加熱炉に入れ、500℃~1500℃の温度で加熱処理」することは、本件発明3の「加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する加熱工程(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。)」と、「加熱炉に入れて加熱する加熱工程」という限りで一致する。 甲1発明の「アニールド石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明3の「石英ガラスクロスの製造方法」に相当する。 そうすると、本件発明3と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスをヒートクリーニングする工程と、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、加熱炉に入れて加熱する加熱工程とを含む、石英ガラスクロスの製造方法。 《相違点1》 「加熱炉に入れて加熱する加熱工程」に関し、本件発明3が、「真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する加熱工程(但し、ヒートクリーニングされた石英ガラスクロスを、500~1,500℃で加熱する工程を除く。)」であるのに対し、甲1発明は、「500℃~1500℃の温度で加熱処理」である点。 《相違点2》 本件発明3が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲1発明は、「10GHzでの誘電正接が0.0010未満」である石英ガラスクロスの製造方法である点。 イ 上記相違点1について検討する。 本件発明3の加熱工程は、真空又は露点15℃以下の気体中であること、最高加熱温度が100~600℃であること、及び、100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となることを条件としている。 一方、甲1発明は、「加熱雰囲気としては、・・・真空中や減圧下でも特に限定されるものではないが、通常はコストなども考え、常圧の空気中で行う。」(甲1の【0056】。ただし、「・・・」は記載の省略)としており、真空又は露点15℃以下の気体中で加熱を行うことは意図しておらず、むしろ除外しているとも理解されるうえ、本件発明3における「最高加熱温度」や「加熱量(℃・h)」といったパラメータについても一切着目していない。 そして、この点に関し、甲13には、記載も示唆もされていない。 よって、本件発明3の相違点1に係る構成は、甲1発明及び甲13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4、5、9について 本件発明4、5、9は、本件発明3の発明特定事項を全て備えるものであるところ、上記(2)で述べたように、本件発明3は、甲1発明及び甲13に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4、5、9も、甲1発明及び甲13に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1.申立理由 申立人は、取消理由通知に記載した取消理由のほか、次の理由を申し立てている。 (1)新規性、進歩性に係る申立理由 ア 本件発明1~4、8、9に対する、甲1に基づく新規性 イ 本件発明1、2、4、5、8に対する、甲1に基づく進歩性(ただし、請求項4、5は本件発明1、2を引用するもの) ウ 本件発明1、2、4、5、8に対する、甲11(特開2014-122446号公報)に基づく進歩性 エ 本件発明1、2、4、5、8に対する、甲7(特開2016-108162号公報)に基づく進歩性 (2)記載不備に係る申立理由 ア サポート要件 (ア)「真空」について (イ)「露点15℃」について イ 明確性要件 (ア)「真空」について (イ)「誘電正接」について ウ 実施可能要件 露点の測定方法について 2.各申立理由についての判断 (1)甲1に基づく新規性、進歩性について まず、進歩性について検討する。 ア 甲1に記載された発明 甲1(特に、請求項1及び7、【0089】)には、次の「甲1A発明」が記載されている。 「SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロスを、400℃で10時間加熱処理することで繊維用収束剤を除去して、10GHzでの誘電正接が0.0011で引張強さが80N/25mmであるアニールド石英ガラスクロスとする、アニールド石英ガラスクロスの製造方法。」 イ 本件発明1、4、5、8について (ア)本件発明1と甲1A発明とを対比する。 甲1A発明の「SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロス」は、本件発明1の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」に相当し、甲1A発明の「加熱処理することで繊維用収束剤を除去」することは、本件発明1の「ヒートクリーニングする工程」に相当する。 甲1A発明の「400℃で10時間加熱処理することで繊維用収束剤を除去」することは、本件発明1の「ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」と、「ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である」という限りで一致する。 甲1A発明の「アニールド石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明1の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1A発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点1A》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明1が、石英ガラスクロスを「真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」であるのに対し、甲1A発明は、石英ガラスクロスを「400℃で10時間加熱処理する」である点。 《相違点2A》 本件発明1が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲1A発明は、「10GHzでの誘電正接が0.0011」である石英ガラスクロスの製造方法である点。 (イ)上記相違点1Aについて検討する。 甲1Aには、ヒートクリーニングする工程について、「石英ガラスクロスを400℃で10時間加熱処理することで繊維用集束剤を除去した」(【0089】)旨記載されているが、加熱処理の過程で、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱するとはされていない。 この点に関し、甲13には、「非加熱処理シリカガラスクロスの加熱処理温度は、450℃~1650℃が好ましく、・・・このような加熱処理温度であれば、加熱処理体の誘電特性を好ましいものとすることができる。加熱方法としては、炉による加熱として電気加熱炉、マッフル炉、管状加熱炉等による加熱方法が挙げられるが、・・・酸水素火炎による方法ではOHの起因となるH2Oが生成するため、好ましくない。」(【0050】)、「非加熱処理シリカガラスクロスの加熱処理は、不純物が混入するのを避けるため、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム雰囲気で行うことができる。また、不活性ガス中の水分はできるだけ少ない方が好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。場合により、乾燥空気を用いることもできる。」(【0052】)と記載されており、加熱炉内に存在する水分ができるだけ少ない方が良く、乾燥空気下で加熱処理を行うこともできる事項が記載されていると認められる。 しかしながら、甲13の上記加熱処理は、「基板に用いられるシリカガラスクロスを加熱するという平易な方法で、誘電正接を10分の1以下にし、伝送損失を抑え」(【0021】)ることを意図して行われるものであり、石英ガラスの収束剤を除去するヒートクリーニング工程においてまで、加熱炉内に存在する水分ができるだけ少ない方が良く、乾燥空気下で加熱処理を行うとはされていない。 そうすると、甲1及び甲13を参照した当業者は、甲1A発明のヒートクリーニング工程について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明1の石英ガラスクロスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを容易に想到し得ない。 よって、相違点2Aを検討するまでもなく、本件発明1と、請求項1を引用する本件発明4、5、8は、甲1に基づく進歩性により取消すべきものではない。 ウ 本件発明2、4、5、8について (ア)本件発明2と甲1A発明とを対比する。 甲1A発明の「SiO2の含有量が99.5質量%以上の石英ガラスクロス」は、本件発明2の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」に相当し、甲1A発明の「加熱処理することで繊維用収束剤を除去」することは、本件発明2の「ヒートクリーニングする工程」に相当する。 甲1A発明の「400℃で10時間加熱処理することで繊維用収束剤を除去」することは、本件発明2の「上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」と、「ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である」という限りで一致する。 甲1A発明の「アニールド石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明2の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲1A発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点3A》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明2が、石英ガラスクロスを「真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」であるのに対し、甲1A発明は、石英ガラスクロスを「400℃で10時間加熱処理する」である点。 《相違点4A》 本件発明2が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲1A発明は、「10GHzでの誘電正接が0.0011」である石英ガラスクロスの製造方法である点。 (イ)上記相違点3Aについて検討する。 上記(1)イ(イ)で検討したとおり、甲1及び甲13を参照した当業者は、甲1A発明のヒートクリーニング工程について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明2の石英ガラスクロスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを容易に想到し得ない。 よって、相違点4Aを検討するまでもなく、本件発明2と、請求項2を引用する本件発明4、5、8は、甲1に基づく進歩性により取消すべきものではない。 エ 小括 本件発明1、2、4、5、8は、特許法第29条第2項に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 また、新規性についても、本願発明1~4、8、9は、第4の2.(2)、(3)及び第5の2.(1)イ、ウのとおり、甲1発明又は甲1A発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 (2)甲11に基づく進歩性について ア 甲11に記載された発明 甲11の、特に実施例1に着目すると、次の「甲11発明」が記載されているといえる。 「信越石英社製石英ガラスクロス2116タイプの生布を、線膨張係数が0.5×10-6/℃である天然石英ガラスから作成した芯材に巻き取り、400℃にて10時間加熱処理を行なう、ヒートクリーニング処理を含む石英ガラスクロスの製造方法。」 イ 本件発明1、4、5、8について (ア)本件発明1と甲11発明とを対比する。 甲11発明の「信越石英社製石英ガラスクロス2116タイプの生布」は、本件発明1の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」と、「石英ガラスクロス」という限りで一致する。 甲11発明の「400℃にて10時間加熱処理を行なう、ヒートクリーニング処理」は、本件発明1の「ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」と、「ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である」という限りで一致する。 甲11発明の「石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明1の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲11発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点11(1)》 本件発明1は「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」であるのに対し、甲11発明は、石英ガラスクロスが含むSiO2の質量%について特定されていない点。 《相違点11(2)》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明1が、「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」であるのに対し、甲11発明は、石英ガラスクロスを「400℃にて10時間加熱処理を行なう」点。 《相違点11(3)》 本件発明1が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲11発明は、誘電正接について特定されていない点。 (イ)説明の都合上、上記相違点11(2)から検討する。 上記(1)イ(イ)で述べたように、甲11発明のヒートクリーニング処理について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明1の、石英ガラスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを想到し得ない。 よって、相違点11(1)及び相違点11(3)を検討するまでもなく、本件発明1と、請求項1を引用する本件発明4、5、8は、甲11に基づく進歩性により取消すべきものではない。 ウ 本件発明2、4、5、8について (ア)本件発明2と甲11発明とを対比する。 甲11発明の「信越石英社製石英ガラスクロス2116タイプの生布」は、本件発明2の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」と、「石英ガラスクロス」という限りで一致する。 甲11発明の「400℃にて10時間加熱処理を行なう、ヒートクリーニング処理」は、本件発明2の「上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」と、「ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である」という限りで一致する。 甲11発明の「石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明2の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲11発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点11(4)》 本件発明2は「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」であるのに対し、甲11発明は、石英ガラスクロスが含むSiO2の質量%について特定されていない点。 《相違点11(5)》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明2が、「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」であるのに対し、甲11発明は、石英ガラスクロスを「400℃にて10時間加熱処理を行なう」点。 《相違点11(6)》 本件発明2が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲11発明は、誘電正接について特定されていない点。 (イ)説明の都合上、上記相違点11(5)から検討する。 上記(2)イ(イ)で述べたように、甲11発明のヒートクリーニング処理について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明2の、石英ガラスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを想到し得ない。 よって、相違点11(4)及び相違点11(6)を検討するまでもなく、本件発明2と、請求項2を引用する本件発明4、5、8は、甲11に基づく進歩性により取消すべきものではない。 エ 小括 本件発明1、2、4、5、8は、特許法第29条第2項に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 (3)甲7に基づく進歩性について ア 甲7に記載された発明 甲7は、「シラン処理前に加熱分解処理いわゆるヒートクリーニング法によって集束剤を完全に除去すること」(【0005】)に関し、特に実施例1に着目すると、次の「甲7発明」が記載されているといえる。 「石英ガラス繊維に石英ガラス収束剤を塗布して石英ガラスヤーンを作製し、得られた石英ガラスヤーンをエアージェット織機により石英ガラスクロスとし、この石英ガラスクロスを350℃の加熱炉の中で10時間加熱してヒートクリーニングする処理を含む石英ガラスクロスの製造方法。」 イ 本件発明1、4、5、8について (ア)本件発明1と甲7発明とを対比する。 甲7発明の「石英ガラスクロス」は、本件発明1の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」と、「石英ガラスクロス」という限りで一致する。 甲7発明の「石英ガラスクロスを350℃の加熱炉の中で10時間加熱してヒートクリーニングする処理」は、本件発明1の「ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」と、「ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である」という限りで一致する。 甲7発明の「石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明1の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲7発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点7(1)》 本件発明1は「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」であるのに対し、甲7発明は、石英ガラスクロスが含むSiO2の質量%について特定されていない点。 《相違点7(2)》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明1が、「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~600℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である(但し、石英ガラスクロスを450℃~1,650℃で加熱する方法を除く。)」であるのに対し、甲7発明は、「石英ガラスクロスを350℃の加熱炉の中で10時間加熱してヒートクリーニングする」点。 《相違点7(3)》 本件発明1が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲7発明は、誘電正接について特定されていない点。 (イ)説明の都合上、上記相違点7(2)から検討する。 上記(1)イ(イ)で述べたように、甲7発明のヒートクリーニング処理について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明1の、石英ガラスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを想到し得ない。 よって、相違点7(1)及び相違点7(3)を検討するまでもなく、本件発明1と、請求項1を引用する本件発明4、5、8は、甲7に基づく進歩性により取消すべきものではない。 ウ 本件発明2、4、5、8について (ア)本件発明2と甲7発明とを対比する。 甲7発明の「石英ガラスクロス」は、本件発明2の「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」と、「石英ガラスクロス」という限りで一致する。 甲7発明の「石英ガラスクロスを350℃の加熱炉の中で10時間加熱してヒートクリーニングする処理」は、本件発明2の「上記ヒートクリーニングする工程が、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」と、「ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱炉に入れて加熱する方法である」という限りで一致する。 甲7発明の「石英ガラスクロスの製造方法」は、本件発明2の「石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲7発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 《一致点》 石英ガラスクロスを、ヒートクリーニングする工程を含む石英ガラスクロスの製造方法であって、 上記ヒートクリーニングする工程が、石英ガラスクロスを加熱する方法である、上記石英ガラスクロスの製造方法(但し、SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスが、硝酸エステル化ガラスクロスである製造方法を除く。)。 《相違点7(4)》 本件発明2は「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロス」であるのに対し、甲7発明は、石英ガラスクロスが含むSiO2の質量%について特定されていない点。 《相違点7(5)》 「ヒートクリーニングする工程」に関し、本件発明2が、「SiO2を95質量%以上含む石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、真空又は露点15℃以下の気体中で、最高加熱温度が100~400℃、かつ100℃以上の加熱温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱する方法である」であるのに対し、甲7発明は、「石英ガラスクロスを350℃の加熱炉の中で10時間加熱してヒートクリーニングする」点。 《相違点7(6)》 本件発明2が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であるのに対し、甲7発明は、誘電正接について特定されていない点。 (イ)説明の都合上、上記相違点7(5)から検討する。 上記(3)イ(イ)で述べたように、甲7発明のヒートクリーニング処理について、甲13の加熱処理を採用する動機付けは見いだせず、本件発明2の、石英ガラスをヒートクリーニングする工程において、「真空又は露点15℃以下の気体中」で加熱することを想到し得ない。 よって、相違点7(4)及び相違点7(6)を検討するまでもなく、本件発明2と、請求項2を引用する本件発明4、5、8は、甲7に基づく進歩性により取消すべきものではない。 エ 小括 本件発明1、2、4、5、8は、特許法第29条第2項に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 (4)サポート要件について ア 本件明細書を参照すると、本件発明の解決しようとする課題は、「誘電正接を低くすることができる石英ガラスクロスの加熱方法、加熱処理後に特別な後処理をすることなく、低誘電化石英ガラスクロスを製造できる、製造方法を提供すること」(【0005】)である。 イ この課題の解決にあたり、発明の詳細な説明には、「石英ガラスは95質量%以上がSiO2であり、表面のSi-OH基は活性が強く、特に高温雰囲気では水分を水素結合で取り込み、Si-O-Si結合を開裂させることでさらにSi-OH基が生じると考えられる(SiO2+H2O⇔Si-OH)。ここで生じるSi-OH基がガラスクロスの誘電正接を悪化させる。」、「ガラスクロスの量産においてガラスクロスを加熱する加熱炉はガス炉が一般的に用いられており、都市ガス等の燃焼を熱源としていることから、生成物として大量の二酸化炭素と水が生じる。結果として加熱機構に水分を発生させる加熱炉を用いることで上記反応をSi-OH基が生成する方向に平衡が傾くことを見出した。」、「石英ガラスクロスを加熱炉に入れ、炉内を真空又は露点15℃以下の気体中で、100~600℃、かつ100~600℃の温度温度(℃)×加熱時間(h)で表される加熱量が450(℃・h)以上となる条件で加熱することで、加熱炉内の水分量をさらに低下させ、さらに平衡反応を左へ傾けることができ、加熱のみで誘電正接を低下させることができ、この加熱工程を含むことで、40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である低誘電化石英ガラスクロスが得られることを知見し、本発明をなすに至った」(いずれも【0006】)と記載されている。 上記記載から、炉内を真空又は露点15℃以下の気体中とするのは、炉内に水分が存在するとSi-OH基が生成する方向に平衡が傾いてしまうため、炉内の水分を少ない状態としてSi-OH基が減少する方向に平衡が傾くようにするためであり、「真空又は露点15℃以下の気体中」で、かつ、本件発明の加熱条件で加熱することにより、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である低誘電化石英ガラスクロス」が得られるものと理解できる。 そして、本件発明には、「真空又は露点15℃以下の気体中」で、かつ、所定の加熱条件で加熱することが特定されており、当業者は、本件発明が発明の課題が解決できることを認識し得るものといえる。 ウ 申立人は、甲14(JIS Z8126-1:2021「真空技術-用語-第1部:一般用語」)を示して、「真空」とは「通常の大気圧より低い圧力(分子密度)の気体で満たされた空間の状態」をいい、例えば1Paだけ小さいような大気圧未満であることも含むものであるから、本件発明は、低誘電正接化の課題を達成し得ない範囲を包含するものであり、サポート要件を満たさないと主張する(特許異議申立書85~86頁)。 しかし、本件発明が、加熱炉を「真空」とするのは、炉内の水分を少ない状態としてSi-OH基が減少する方向に平衡が傾くようにするためであることからすれば、「真空」の状態は、炉内の水蒸気圧が大気圧下よりも低く、炉内の水分が少ない状態を意味し、その状態下で所定の加熱条件で加熱することにより、本件発明の課題を解決し得るといえるから、申立人の上記主張は採用できない。 エ また、申立人は、「露点15℃以下」が普通に周りに存在する空気であり、これを使用する態様をも含むものは、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであり、サポート要件を満たさないとも主張する(特許異議申立書86~87頁)。 しかし、本件発明の「露点15℃以下の気体中」で加熱するとは、炉内に燃焼の生成物としての水(本件明細書の【0006】)が生じても、炉内の露点を15℃以下に維持することを意味するから、申立人がいう「普通に周りに存在する空気を使用する態様」を含むものではなく、申立人の上記主張も採用できない。 オ 以上を踏まえると、本件発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に掲げる要件を満たすものである。 よって、本件発明は、同法第113条第4号に該当しない。 (5)明確性要件について ア 申立人は、本件明細書では、真空の要件について何ら具体的な特定がされておらず、どの程度を真空と定義するのか判然としないと主張する(特許異議申立書87頁)。 しかし、「真空」とは、一般には、申立人が甲14を示すように、「通常の大気圧より低い圧力(分子密度)の気体で満たされた空間の状態」を意味するところ、本件発明が「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下である石英ガラスクロスの製造方法」であることからすれば、当業者は、「真空」が、「40GHzにおける誘電正接が0.0015以下」とすることができる程度に、炉内の水蒸気圧が低いことを意味するものと理解できる。 よって、本件発明の「真空」の意味するものは明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 イ また、申立人は、誘電正接は、測定時の温度と湿度に対しての依存性があることが技術常識(甲15(「電気絶縁材料の比誘電率・誘電正接の湿度特性試験」、[online]、日置電機株式会社、[令和5年11月1日検索]、インターネット<https://www.hioki.co.jp/jp/products/introduction/detail/?dbid=442>))であるところ、本件明細書では実施例においても測定時の温度と湿度が特定されていないため、どのような条件で測定した誘電正接によって特許発明の技術的範囲が定められているのかを当業者が理解することは困難であり、発明を明確に把握することができないと主張する(特許異議申立書88頁)。 しかし、石英ガラスクロスの誘電正接(40GHz)は、本件明細書(【0059】「ガラスクロスの10GHz及び40GHzの誘電正接はエーイーティー社製空洞共振器(TE011モード)を用いて測定した。」)に記載されるように、一般に市販される測定装置により測定できるものであり、明記はされずとも、技術常識から測定装置の測定条件(温度、湿度等)は設定され得るものである。 実際、誘電正接の測定結果が示される、甲2の1(「ミリ波帯における誘電体基板の複素誘電率測定○1(当審注:丸内に数字の1)」、[online]、宇都宮大学古神研究室、2011マイクロウェーブ展、[令和5年11月1日検索]、インターネット<http://www.ee.utsunomiya-u.ac.jp/wp-content/ploads/2016/06/MWE2011_Meas.pdf>)、甲1及び甲13において、いずれも、測定装置の測定条件(温度、湿度等)は、特段、明記されていない。 したがって、本件発明の「誘電正接」の意味するものは明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 以上を踏まえると、本件発明は明確であり、特許法第36条第6項第2号に掲げる要件を満たすものである。 よって、本件発明は、同法第113条第4号に該当しない。 (6)実施可能要件について 申立人は、本件明細書の実施例では、「露点はオリオン社製露点モニターMG-40を用いて測定した」(【0058】)ことが記載されており、実施例2及び12においては露点が-70℃であったことが記載されているが、この露点モニターMG-40の商品情報(甲16(「露点モニターMG」、[online]、オリオン機械株式会社、[令和5年11月1日検索]、インターネット<https://www.orionkikai.co.jp/product/kuatsu/equipment>) によれば、露点の測定温度範囲は「-60.0~+40.0℃」であり、-70℃の露点は測定できないから、実施例2及び12の説明記載は瑕疵があり、当業者はこれを実施することはできないと主張する(特許異議申立書88頁)。 しかし、本件明細書記載の「オリオン社製露点モニターMG-40」で測定できない温度範囲である場合には、当業者は、その範囲を測定可能な装置を使用することができるから、本件明細書記載の測定装置の有効測定範囲が実施例の温度に達していないことをもって、測定できず実施できないとすることはできない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 以上を踏まえると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に掲げる要件を満たすものである。 よって、本件発明は、同法第113条第4号に該当しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701171

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