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特許異議申立

2024-701221

ガラス板

審判番号
2024-701221
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-553081
登録番号
7545112
請求日
2024年12月20日
審決日
2026年01月19日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本電気硝子株式会社
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 塩谷 領大
  • 審判官 深草 祐一
分類
P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7545112号発明「ガラス板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7545112号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 特許第7545112号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7545112号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)10月7日(優先権主張 平成10月15日)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月27日にその特許権の設定登録がされ、同年9月4日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和6年12月20日に、特許異議申立人山田友則(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年12月20日 :申立人による特許異議の申立て 令和7年 6月30日付け:取消理由通知 同年 8月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 9月 2日付け:訂正請求があった旨の通知 上記訂正請求があった旨の通知で、申立人に、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。 以下、令和7年8月21日にされた訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正の適否について 1 本件訂正の内容 本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~6〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 5~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~35%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有する」と記載されているのを、「ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 12~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~20%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6に「3次元的に湾曲した曲面形状を有することを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のガラス板」と記載されているのを、「樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板であって、ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 5~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~35%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有し、3次元的に湾曲した曲面形状を有することを特徴とするガラス板」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1のガラス組成について、Al2O3の組成範囲を5~30%から12~30%に減縮し、MgOの組成範囲を14~35%から14~20%に減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ そして、上記Al2O3及びMgOの組成範囲の減縮については、明細書の【0021】の「Al2O3の含有量は、好ましくは5~30%、9~25%、10~20%、特に12~18%である。」との記載、及び【0023】の「MgOの含有量は、好ましくは3~35%、8~30%、12~25%、特に14~20%である。」との記載に基づくものであり、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれ「本件特許明細書」などといい、まとめて「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項6の記載を、請求項1を引用しない形式に書き改めるものであり、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、訂正前の請求項6は請求項1~5の何れかの記載を引用するものであるところ、請求項1を引用する請求項6の場合のみに書き改めるものであり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ そして、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 独立特許要件について 訂正事項1、2はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件特許の請求項1~6の全ての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされたので、本件訂正後における請求項1~6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は適用されない。 3 訂正の適否についての結論 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、訂正後の請求項6については、別の訂正単位とする求めがされているところ、上記のとおり請求項6についての訂正は認容し得るものであるから、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを認める。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 上記第2のとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件特許異議の申立てに係る本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板であって、ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 12~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~20%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有することを特徴とするガラス板。 【請求項2】 ヤング率が80GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板。 【請求項3】 液相粘度が102.0d・Pa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板。 【請求項4】 結晶化度が30%以下であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のガラス板。 【請求項5】 板厚が3~15mmであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のガラス板。 【請求項6】 樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板であって、ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 5~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~35%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有し、3次元的に湾曲した曲面形状を有することを特徴とするガラス板。」 第4 取消理由、申立人による特許異議の申立理由の概要 1 取消理由の概要 設定登録時の請求項1~5に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 申立人による特許異議の申立理由の概要 (1) 甲第1号証を主たる証拠とした特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~5に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~5に係る発明は、同甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「申立理由1」とする。)。 (2) 甲第2号証を主たる証拠とした特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~6に係る発明は、後記3の甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下「申立理由2」とする。) 3 提出された証拠 甲第1号証:特開2001-134925号公報 甲第2号証:特開2018-145082号公報 以下、甲第1号証等を「甲1」などという。 第5 当審の判断 当審は、上記取消理由及び申立理由1、2のいずれにも理由がないと判断する。 以下、その理由について詳述する。 1 各甲号証に記載された事項 (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付した。以下同様である。 (ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ディスク、光ディスク、等の情報記録媒体の基板に用いられるガラスに関する。 ・・・ 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年ハードディスクドライブについては記憶容量の向上が求められており、高記録密度化および高速回転化が進行している。・・・ 【0005】またパソコンの小型化に伴いハードディスクの小型化および薄型化が提言されている。現在、65mmハードディスクのガラス基板の厚さは0.63mm程度であるが、将来的には0.43mm、さらには0.38mmへと薄くなることが予想されている。しかしガラス基板が薄くなればなるほどたわみや反りが生じやすくなる。 ・・・ 【0007】この問題を解決するため、特開平11-116267においては高いヤング率を有するガラス基板が開示されている。このガラス基板のヤング率は110GPa以上であり、薄型化した場合でもガラス基板のたわみや反りの問題が生じにくい。しかしハードディスク用ガラス基板には、高ヤング率に加え大量生産が容易であることが求められている。大量生産という観点からは、溶融ガラスをガラス板に成形するに際しガラスが失透しにくいことが求められている。 ・・・ 【0010】・・・本発明は、以上の課題を解決し、高いヤング率を有し、かつ失透しにくい情報記録媒体基板用ガラス、および耐候性の高い情報記録媒体用ガラス基板の提供を目的とする。」 (イ) 「【0012】 【発明の実施の形態】本発明の情報記録媒体基板用ガラス(以下単に本発明のガラスという。)は、ハードディスク、光ディスク、等の情報記録媒体の基板に用いられる。本発明のガラスの液相温度は1300℃以下であることが好ましい。1300℃超ではガラス製造時に失透するおそれがある。より好ましくは1260℃以下、さらに好ましくは1230℃以下、特に好ましくは1210℃以下である。 【0013】本発明のガラスのヤング率は100GPa以上であることが好ましい。100GPa未満では情報記録媒体高速回転時に基板がたわんだり反ったりするおそれがある。より好ましくは110GPa以上、さらに好ましくは120GPa以上である。一方、そのヤング率は150GPa以下であることが好ましい。150GPa超では研磨しにくくなるおそれがある。より好ましくは140GPa以下、特に好ましくは130GPa以下である。 ・・・ 【0018】本発明のガラスの組成について、モル%を単に%と表記して以下に述べる。SiO2は、ガラスを安定化させるネットワークフォーマであり、また液相温度を下げる成分であり必須である。・・・ 【0019】Al2O3はガラスを安定化させ、またヤング率を大きくする成分であり必須である。20%以上では液相温度が高くなりすぎる。好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは9.9%以下、最も好ましくは5%未満である。1%未満ではヤング率が小さくなりすぎる。好ましくは3%以上である。 【0020】MgOはヤング率を大きくする成分であり必須である。・・・ 【0022】CaOは必須ではないが、溶融ガラスの粘度を低下させ溶解を促進し、また液相温度を低下させるために25%未満の範囲で含有してもよい。25%超ではヤング率が小さくなりすぎるおそれがある。より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは12%以下である。CaOを含有する場合は2%以上含有することがより好ましく、4%以上含有することがさらに好ましい。 【0023】Al2O3、MgOおよびCaOの合量が40%以上では、液相温度が高くなりすぎる。・・・ 【0024】SrOは必須ではないが、溶融ガラスの粘度を低下させ溶解を促進するために、また液相温度を低下させるために15%まで含有してもよい。・・・ 【0028】Li2Oは必須ではないが、溶融ガラスの粘度を低下させ溶解を促進するために、またヤング率を大きくするために15%まで含有してもよい。・・・ 【0029】Na2Oは必須ではないが、溶融ガラスの粘度を低下させ溶解を促進するために2%まで含有してもよい。・・・ 【0030】Li2OとNa2Oの含有量の合計は2%未満であることが好ましい。・・・ 【0031】Y2O3は必須ではないが、ヤング率を大きくするために25%まで含有してもよい。・・・ 【0032】La2O3は必須ではないが、ヤング率を大きくするために25%まで含有してもよい。」 (ウ) 「【0042】 【実施例】表のSiO2~Nb2O5の欄にモル%表示で示した組成となるように原料を調合して白金るつぼに入れ、1450~1650℃に加熱し3~5時間溶融した。この際白金スターラにより2時間撹拌し溶融ガラスを均質化した。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形後、徐冷を行った。 【0043】得られたガラスについて、ヤング率(単位:GPa)、液相温度(単位:℃)および密度(単位:g/cm3)を測定した。ヤング率を密度で除した比弾性率(単位:GPa/g/cm3)の値とともに表に示す。なお、例55~167についてはヤング率のみ測定した。 【0044】ヤング率、液相温度および密度の測定方法は以下のとおりである。 ヤング率:4cm×4cmのガラス板の両面が平行になるように研磨して、厚さを10~20mmとした試料について、超音波パルス法により測定した。 ・・・ 【0046】 【表1】 [図:0001434136000001.jpg] 【0047】 【表2】 [図:0001434136000002.jpg] 【0048】 【表3】 [図:0001434136000003.jpg] 【0049】 【表4】 [図:0001434136000004.jpg] 【0050】 【表5】 [図:0001434136000005.jpg] 【0051】 【表6】 [図:0001434136000006.jpg] 【0052】 【表7】 [図:0001434136000007.jpg] 【0053】 【表8】 [図:0001434136000008.jpg] 【0054】 【表9】 [図:0001434136000009.jpg] 【0055】 【表10】 [図:0001434136000010.jpg] 【0056】 【表11】 [図:0001434136000011.jpg] 【0057】 【表12】 [図:0001434136000012.jpg] 【0058】 【表13】 [図:0001434136000013.jpg] 【0059】 【表14】 [図:0001434136000014.jpg] 【0060】 【表15】 [図:0001434136000015.jpg] 【0061】 【表16】 [図:0001434136000016.jpg] 【0062】 【表17】 [図:0001434136000017.jpg] 【0063】 【表18】 [図:0001434136000018.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 (ア) 前記ア(ア)には、【0010】に「本発明は、・・・高いヤング率を有し、かつ失透しにくい情報記録媒体基板用ガラス・・・の提供を目的とする」ことが記載されている。 (イ) そして、前記ア(イ)には、実施例について、【0042】に「表のSiO2~Nb2O5の欄にモル%表示で示した組成となるように原料を調合して・・・溶融した。・・・次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形後、徐冷を行った。」と記載されており、【0043】に「得られたガラスについて、ヤング率(単位:GPa)、・・・を測定した。」ことが記載されている。 (ウ) さらに、前記ア(ウ)の【表1】~【表18】には、例1~176のガラス組成とヤング率が記載されており、その中で本件発明1の組成に最も近い例83に着目して整理すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「高いヤング率を有し、かつ失透しにくい情報記録媒体基板用ガラスであって、ガラス組成として、モル%表示で示した以下の組成を有し、127GPaのヤング率を有する情報記録媒体基板用ガラス。 SiO2:50.0 Al2O3:10.0 MgO:17.0 CaO:3.0 SrO:0.0 ZnO:0.0 TiO2:0.0 ZrO2:4.0 Li2O:6.0 Y2O3:10.0 La2O3:0.0 CeO2:0.0 Yb2O3:0.0 Ta2O5:0.0 Nb2O5:0.0」 (2)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2の記載事項 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 窓ガラスに用いるガラス樹脂複合体において、 少なくとも複数枚のガラス板と樹脂板とを備えるガラス樹脂複合体であって、 有機樹脂中間層により複合一体化されており、 外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス板が、結晶化度が30%以下であり、且つ内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高いことを特徴とするガラス樹脂複合体。 【請求項2】 外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス転移温度が850℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラス樹脂複合体。 【請求項3】 外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス板が、非晶質であり、ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 5~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~20%、MgO+CaO+SrO+BaO 3~35%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス樹脂複合体。 【請求項4】 最内層のガラス板がソーダライムガラスであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のガラス樹脂複合体。 【請求項5】 樹脂板が、最内層のガラス板よりも内側に配置されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のガラス樹脂複合体。 【請求項6】 樹脂板がポリカーボネート板であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のガラス樹脂複合体。 【請求項7】 総板厚が45mm以下であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のガラス樹脂複合体。 【請求項8】 3次元的に湾曲した曲面形状を有することを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のガラス樹脂複合体。」 (イ) 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、結晶化ガラスの結晶化度を高めると、結晶化ガラスの硬度が上昇し、飛散片の衝突エネルギーを減衰し得るが、析出結晶が軟化変形を阻害するため、曲げ加工が困難になり、自動車のフロントガラス等に適用できなくなる。 【0008】 また、結晶化ガラスの厚みを大きくすることでも、飛散片の衝突エネルギーを減衰し得るが、この場合、窓ガラスの重量が増大してしまい、透明性も損なう虞がある。 【0009】 そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、曲げ加工性に優れると共に、厚みや結晶化度が小さくても、飛散片の衝突エネルギーを有効に減衰し得る窓ガラスを創案することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者等は、複数枚のガラス板と樹脂板とを備えるガラス樹脂複合体(積層体)について、外側(外気側)のガラス板のヤング率をその内側(室内側)に隣接するガラス板のヤング率よりも高くすることにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。・・・ 【0013】 また、本発明者等が、飛散片の衝突エネルギーの減衰を解析したところ、最初にガラス板が衝撃を受けた際に発生した衝撃波を飛散体の衝突方向に対してだけでなく、垂直方向へも進行させると、つまり衝撃波を広範囲に進行させると、衝撃波による破壊領域が大きくなり、衝突エネルギーを効率良く吸収し得ることが分かった。そこで、本発明のガラス樹脂複合体は、上記知見に基づき、外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス板のヤング率が、内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高くなっている。このようにすれば、飛散片の衝突によって発生した衝撃波の速度が、高ヤング率のガラス板により速くなり、衝撃波が、飛散体の衝突方向に対して垂直方向にも進行し易くなる。その後、高ヤング率のガラス板に対して、内側に隣接する低ヤング率のガラス板の存在により、衝撃波の速度が遅くなり、衝撃波が、飛散体の衝突方向に対して垂直方向に進行し難くなる。これらの効果により、外側のガラス板内で衝撃波が広がるため、衝撃波による破壊領域が大きくなり、飛散体の衝突エネルギーを破壊エネルギーとして吸収し易くなる。その結果、飛散体がガラス樹脂複合体を貫通し難くなる。なお、外側に位置するガラス板のヤング率が、そのガラス板と内側に隣接するガラス板のヤング率よりも十分に高くないと、上記作用は働かず、飛散片の衝突エネルギーを効率良く減衰できない。」 (ウ) 「【発明を実施するための形態】 【0023】 本発明のガラス樹脂複合体は、複数枚のガラス板を備えており、好ましくは2~7枚、より好ましくは2~3枚、特に2枚のガラス板を備えている。・・・ 【0033】 SiO2は、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiO2の含有量は、好ましくは45~80%、50~75%、特に57~72%である。SiO2の含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また耐候性が低下し易くなる。一方、SiO2の含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下し易くなり、また熱膨張係数が低くなり過ぎて、樹脂板や有機樹脂中間層の熱膨張係数に整合させ難くなる。 【0034】 Al2O3は、耐候性やヤング率を高める成分である。Al2O3の含有量は、好ましくは5~30%、9~25%、特に15~23%である。Al2O3の含有量が少な過ぎると、耐候性やヤング率が低下し易くなる。一方、Al2O3の含有量が多過ぎると、溶融性、成形性及び耐失透性が低下し易くなる。 【0035】 Li2O、Na2O及びK2Oは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性及び熱加工性を高める成分である。特にLi2Oは、ヤング率を高める成分である。Li2O、Na2O及びK2Oの合量は、好ましくは0~20%、5~20%、特に10~20%である。Li2O、Na2O及びK2Oのそれぞれの含有量は、好ましくは0~20%、3~15%、特に8~16%である。Li2O、Na2O及びK2Oの含有量が多過ぎると、耐失透性と耐候性が低下し易くなる。またNa2O及びK2Oの含有量が多過ぎると、ヤング率が低下し易くなる。 【0036】 MgO、CaO、SrO及びBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性及び熱加工性を高める成分である。特にMgOは、ヤング率を顕著に高める成分である。MgO、CaO、SrO及びBaOの合量は、好ましくは3~35%、10~30%、特に12~25%である。MgOの含有量は、好ましくは0~35%、5~25%、特に10~20%である。CaO、SrO及びBaOのそれぞれの含有量は、好ましくは0~20%、0~10%、特に0~5%である。MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。またCaO、SrO及びBaOの含有量が多過ぎると、ヤング率が低下し易くなる。」 (エ) 「【実施例】 【0067】 以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。・・・ 【0068】 次のようにしてガラス板を作製した。表1に記載のガラス板が得られるように、ガラス原料を調合した。次に、調合済みのガラスバッチを連続溶融炉に投入し、1600℃で20時間溶融した後、清澄、攪拌して、均質な溶融ガラスを得た上で、板厚8.0mmの板状に成形した。・・・ 【0069】 【表1】 [図:0001434136000019.jpg] 【0070】 ヤング率は、周知の共振法で測定した値である。 ・・・ 【0073】 また、ガラス板を所定の形状の金型で各試料を挟み込んだ状態で熱処理炉を通過させることにより、板幅方向の全体が円弧状に湾曲し、且つ長さ方向の全体が円弧状に湾曲した曲面形状に曲面加工した。その後、曲面加工後のガラス板の端面について#800のメタルボンド砥石によりC面取り加工及び研磨加工を行った。 【0074】 次に、ガラス板と同様の曲面形状を有するポリカーボネート板(板厚4.0mm)とソーダガラス板(板厚8.0mm)を用意した。なお、ソーダガラス板のガラス組成、ガラス転移温度、ヤング率及び結晶化度は、表1に記載の通りである。 【0075】 最後に、厚み0.8mmのポリビニルブチラール(PVB)を用いて、表1に記載のガラス板(最外層のガラス板)、ソーダガラス板(最内層のガラス板)、ポリカーボネート板の配置になるように、オートクレーブ処理により複合一体化して、試料No.1~10に係るガラス樹脂複合体をそれぞれ得た。 【0076】 表1から分かるように、試料No.1~7は、最外層のガラス板のヤング率が最内層のガラス板のヤング率よりも5GPa以上高いため、飛散片の衝撃エネルギーを有効に減衰し得ると考えられる。一方、試料No.8~10は、最外層のガラス板のヤング率が最内層のガラス板のヤング率に比べて十分に高くない、或いは最外層のガラス板のヤング率が最内層のガラス板のヤング率よりも低いため、飛散片の衝撃エネルギーを減衰し難いものと考えられる。なお、試料No.1~10は、ガラス樹脂複合体の板厚が21.6mmであり、4.0mm厚のポリカーボネート板を備えるため、軽量である。」 イ 甲2に記載された発明 (ア) 前記ア(ア)には、【請求項1】に「窓ガラスに用いるガラス樹脂複合体において、少なくとも複数枚のガラス板と樹脂板とを備えるガラス樹脂複合体であって、有機樹脂中間層により複合一体化されており、外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス板が、結晶化度が30%以下であり、且つ内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高いことを特徴とするガラス樹脂複合体」が記載され。【請求項8】に「3次元的に湾曲した曲面形状を有することを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のガラス樹脂複合体」が記載されている。 (イ) そして、前記ア(エ)には、実施例について、【0068】に、「表1に記載のガラス板が得られるように、ガラス原料を調合し・・・板厚8.0mmの板状に成形した」ことが記載され、【表1】に、No.1~10のガラス板及びソーダガラス板の組成(mol%)と、ヤング率(GPa)、結晶化度(%)が記載されている。さらに、【0073】には、「板幅方向の全体が円弧状に湾曲し、且つ長さ方向の全体が円弧状に湾曲した曲面形状に曲面加工した」ことが記載されている。 (ウ) また、前記ア(エ)の【0075】には、「表1に記載のガラス板(最外層のガラス板)、ソーダガラス板(最内層のガラス板)、ポリカーボネート板の配置になるように、オートクレーブ処理により複合一体化して、試料No.1~10に係るガラス樹脂複合体をそれぞれ得た」ことが記載され、【0076】に「表1から分かるように、試料No.1~7は、最外層のガラス板のヤング率が最内層のガラス板のヤング率よりも5GPa以上高いため、飛散片の衝撃エネルギーを有効に減衰し得ると考えられる。」と記載されていることから、表1記載のNo.1~7のガラス板は、請求項1、8に記載されたガラス樹脂複合体を作製するための、「結晶化度が30%以下であり、且つ内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高い外層のガラス板」である。 (エ) そこで、表1に記載されたガラス組成のうち、本件発明1のガラス組成に近い試料No.3、5に着目して整理すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 (甲2発明) 「窓ガラスに用いる、少なくとも複数枚のガラス板と樹脂板とを備えるガラス樹脂複合体であって、有機樹脂中間層により複合一体化されており、外層のガラス板の内、少なくとも一層のガラス板が、結晶化度が30%以下であり、且つ内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高いことを特徴とするガラス樹脂複合体を作製するための、前記結晶化度が30%以下であり、且つ内側に隣接するガラス板のヤング率よりも5GPa以上高い外層のガラス板であって、以下のNo.3、5のいずれかの組成(mol%)及びヤング率(GPa)を有し、板状に成形され、板幅方向の全体が円弧状に湾曲し、且つ長さ方向の全体が円弧状に湾曲した曲面形状に曲面加工された、ガラス板。 [図:0001434136000020.jpg] 」 2 対比、判断 (1) 取消理由及び申立理由1(甲1を主たる証拠とする新規性欠如又は進歩性欠如)について ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、いずれも「ガラス板」である。そして、甲1発明のガラス組成と本件発明1の組成範囲を対比すると、いずれもモル%で、SiO2が50.0%で45~80%の範囲内、MgOが17.0%で14~20%の範囲内、CaOが3.0%で1~35%の範囲内、SrOが0.0%で0~3.5%の範囲内である。また、甲1発明では、Na2O、K2O、SrO、BaOは含まれていないから、Li2O+Na2O+K2O=6.0%で0~15%の範囲内、SrO+BaO=0%で0~5%の範囲内であって、いずれも本件発明1の組成の範囲内である。 (イ) そうすると、両者は、「ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~20%、CaO 1~35%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有するガラス板」である点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件発明1が、ガラス組成として、モル%で「Al2O3 12~30%」であるのに対し、甲1発明では、Al2O3がモル%表示で10.0である点。 (相違点2) 本件発明1が、「樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板」であるのに対し、甲1発明は、「高いヤング率を有し、かつ失透しにくい情報記録媒体基板用ガラス」である点。 (ウ) 上記相違点のうち、少なくとも相違点1は、ガラス組成が相違しており、実質的な相違点である。よって、本件発明1は、甲1発明ではない。 (エ) 特許異議申立書には、甲1に関して、新規性欠如の理由についてのみ具体的に記載されているが、10ページ13~14行に「したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載されたものであり、新規性及び進歩性を有しない。」と記載されており、進歩性欠如も申立理由とされているので、甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。 (オ) 甲1発明のAl2O3含有量について、甲1には、【0019】に「Al2O3はガラスを安定化させ、またヤング率を大きくする成分であり必須である。20%以上では液相温度が高くなりすぎる。好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは9.9%以下、最も好ましくは5%未満である。1%未満ではヤング率が小さくなりすぎる。好ましくは3%以上である。」と記載されている。この記載によれば、Al2O3のより好ましい含有量は、10%以下であり最も好ましくは5%未満であって、10%より少ない方が好ましいものである。そうすると、甲1発明のAl2O3含有量を10.0%から増やして、相違点1に係る本件発明1の組成範囲内となる少なくとも12%へと、より好ましい範囲から外れる方向へ変更する動機付けはないというべきである。 (カ) したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5について (ア) 本件発明2~5は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~5は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 よって、取消理由及び申立理由1には理由がない。 (2) 申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性欠如)について ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「有機樹脂中間層により複合一体化されて」いる「ガラス樹脂複合体を作製するための」「ガラス板」は、本件発明1の「樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板」に相当する。 (イ) また、本件発明1と甲2発明のガラス組成はいずれもモル%(mol%)表示で表され、甲2発明のNo.3、5のガラス組成は、SiO2が59.7%、59.9%で45~80%の範囲内、Al2O3が20.0%、15.0%で5~30%の範囲内、Li2O+Na2O+K2Oがいずれも0.0%で0~15%の範囲内、MgOが20.0%、15.0%で14~20%の範囲内、SrOがいずれも0.0%で0~3.5%の範囲内、SrO+BaOがいずれも0.0%で0~5%の範囲内であって、これらについては本件発明1の組成の範囲内である。 (ウ) そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「樹脂板と複合一体化して、ガラス樹脂複合体を作製するためのガラス板であって、ガラス組成として、モル%で、SiO2 45~80%、Al2O3 12~30%、Li2O+Na2O+K2O 0~15%、MgO 14~20%、SrO 0~3.5%、SrO+BaO 0~5%を含有することを特徴とするガラス板」である点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点3) 本件発明1では、ガラス組成として、モル%で、「CaO 1~35%」を含有するのに対し、甲2発明では、CaOの含有量がモル%(mol%)で0.0%である点。 (エ) 相違点3について検討する。 (オ) 本件特許明細書の【0024】には、CaOについて、「CaOは、ヤング率を高める成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性、成形性及び曲げ加工性を高める成分である。また、MgOを含有量が多い組成領域において、CaOを導入すると、液相温度が低下し、耐失透性の低下が緩和される。CaOの含有量は、好ましくは0.1~35%、1~25%、2~20%、特に4~15%である。CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。一方、CaOの含有量が多過ぎると、ガラス組成のバランスが崩れて、かえって耐失透性が低下し易くなる。」と記載されており、ヤング率を高め、高温粘度を低下させて溶融性、成形性、曲げ加工性を高める観点から含有されるものであり、また、MgO含有量が多い組成領域において、液相温度を低下させ、耐失透性の低下を緩和する観点から含有されるものである。 (カ) これに対して、甲2には、【0036】に「MgO、CaO、SrO及びBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性、成形性及び熱加工性を高める成分である。・・・MgO、CaO、SrO及びBaOの合量は、好ましくは3~35%、10~30%、特に12~25%である。・・・CaO、SrO及びBaOのそれぞれの含有量は、好ましくは0~20%、0~10%、特に0~5%である。MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。またCaO、SrO及びBaOの含有量が多過ぎると、ヤング率が低下し易くなる。」と記載されており、上記本件特許明細書に記載されたのと同様の、高温粘度を低下させて溶融性、成形性及び熱加工性を高める観点から0~20%含有され得ることは示唆されている。 (キ)しかしながら、甲2には、CaO添加によりヤング率を高める点については記載がなく、さらに、MgO含有量が多い組成領域において、液相温度を低下させ、耐失透性の低下を緩和する点についても記載されておらず、むしろ、含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなると記載されている。 (ク) そうすると、甲2にMgO、SrO及びBaOと共にCaOの添加可能性について示唆されているとしても、実際にCaOを添加した具体的なガラスは開示されていないところ、CaO含有量が0.0%である甲2発明において、本件特許明細書に記載されているように、MgO含有量が多い組成領域において、液相温度を低下させ、耐失透性の低下を緩和すること、及びヤング率を高めることを期待して、敢えて他の何れかの成分とCaOを1モル%以上置換して、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ケ) 申立人は、特許異議申立書の11ページ10行~12ページ13行において、甲2と甲1はいずれも高温粘度を低下させ溶融性を高めるためにCaOを含有しており、甲2発明のガラス組成を、高温粘度を低下させて溶融性を高めるために甲1に記載されたガラス組成に置換することは当業者が容易になし得ることである旨主張している。 (コ) しかしながら、本件訂正により、甲1に記載されたいずれのガラス組成も本件発明1の組成範囲を満足しないものとなったため、甲2発明に甲1に記載されたいずれのガラス組成を適用しても、本件発明1の構成を満足するガラスとはならない。 (サ) また、甲1に記載されたガラスは、前記1(1)ア(ア)で摘示したように、高いヤング率を有し、かつ失透しにくい情報記録媒体基板用ガラス、及び耐候性の高い情報記録媒体用ガラス基板であり、甲2に記載されたガラスは、前記1(2)ア(イ)で摘示したように、曲げ加工性に優れると共に、厚みや結晶化度が小さくても、飛散片の衝突エネルギーを有効に減衰し得る窓ガラスであって、全く用途が異なるガラスであり、求めるガラスの特性として一部類似するところがあるとしても、求める全ての特性が一致するものではなく、重視する特性のバランスも自ずと異なるものである。したがって、窓ガラスを志向する甲2発明において、情報記録媒体基板を志向する甲1記載のガラス組成を適用しようとする動機付けは相当に弱いといわざるを得ない。その上、甲1、2のいずれにも、前記(キ)、(ク)で検討した、本件発明1におけるCaO含有量についての技術思想は開示されていないし、上記(コ)で述べたとおり、甲1には、本件発明1の組成を満足する具体的なガラス組成も開示されていない。そうすると、甲2発明において、甲1の記載を参照して、当業者が相違点3に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たとはいえない。 イ 本件発明2~5について (ア) 本件発明2~5は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲2発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~5は、甲2発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明6について (ア) 本件発明6は、本件発明1について、Al2O3の含有量を12~30%から5~30%に拡張し、MgOの含有量を14~20%から14~35%に拡張したものにおいて、3次元的に湾曲した曲面形状を有する点を特定したものである。 (イ) 本件発明6と甲2発明とを対比すると、甲2発明はCaOの含有量がいずれの場合も0.0mol%であるから、少なくとも相違点3において相違する。これは、甲2に記載されたNo1~10のいずれのガラスを引用発明としても同じである。 (ウ) そうすると、前記アで検討したのと同様に、本件発明6も甲2発明及び甲1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 小括 よって、申立理由2には理由がない。 第6 まとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~6に係る発明は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由1、2では、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~6に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701221

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