特許異議申立
2020-700830
光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
- 審判番号
- 2020-700830
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-218902外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6689057
- 請求日
- 2020年10月26日
- 審決日
- 2022年01月11日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C) / P1651.851-YAA(C03C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6689057号発明「光学ガラス、プリフォーム及び光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6689057号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6689057号の請求項1、4、5に係る特許を維持する。
特許第6689057号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6689057号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成27年11月6日(優先権主張 平成26年12月24日)に特許出願され、令和2年4月9日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~5に係る特許に対して、令和2年10月26日に特許異議申立人合同会社SAS(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年1月5日付けで取消理由が通知され、同年3月2日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)がされ、先の訂正請求に対して、同年4月28日に申立人により意見書の提出がされ、同年6月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月23日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、本件訂正請求に対して、同年10月8日に申立人により意見書(以下、「申立人意見書」という。)の提出がされたものである。
なお、本件訂正請求がされたので、先の訂正請求は、特許法第120条の5第7項に規定により取り下げられたものとみなす。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容(訂正事項)
本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~5を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「B2O3成分を25.0%以上70.0%以下」とあるのを、
「B2O3成分を30.0%以上55.0%未満」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1について
「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」の後に、
「Li2O成分を7.0%超、
ZnO成分を14.0%超、
ZrO2成分を0%超、」を追加する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1について
「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満
であり、」の後に、
「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)、
酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)、」を追加する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1について
「1.60以上1.80以下の屈折率(nd)を有し、40以上60以下のアッベ数(νd)を有する」とあるのを、
「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4について、
「請求項1から3のいずれか」とあるのを、
「請求項1に」に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5について、
「請求項1から3いずれか」とあるのを、
「請求項1に」に訂正する。
(2)訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付された明細書の段落【0029】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「B2O3成分」の含有量を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、願書に添付された明細書の段落【0034】、【0035】、【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項1のガラス組成について、「Li2O3成分」、「ZnO成分」及び「ZrO2成分」の各含有量を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載、及び、願書に添付された明細書の段落【0058】、【0059】、【0085】【表1】実施例7、【0086】【表2】実施例10の記載に基づき、訂正前の請求項1のガラス組成について、「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)」及び「モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)」を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、願書に添付された明細書の段落【0068】、【0069】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「屈折率(nd)」及び「アッベ数(νd)」の範囲を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 訂正事項7、8について
訂正事項7、8は、訂正前の請求項4、5における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
3 本件特許発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1、4、5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
酸化物基準のモル%で、
B2O3成分を30.0%以上55.0%未満、
Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満
Li2O成分を7.0%超、
ZnO成分を14.0%超、
ZrO2成分を0%超、
含有し、
Ta2O5成分の含有量が1.0%未満、
Gd2O3成分の含有量が1.0%未満
であり、
酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)、
酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)、
屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する光学ガラス。
【請求項4】
請求項1に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。」
4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
先の訂正請求により訂正された請求項1、4及び5に係る特許に対して、当審が令和3年6月22日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、後記甲第16号証、甲第22号証~甲第25号証のいずれかを主たる証拠とするものであって、その概要は、次のとおりである。
ア 取消理由
請求項1に係る発明は、甲第16号証、甲第22号証~甲第25号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4及び5に係る発明は、甲第16号証、甲第22号証、甲第24号証、甲第25号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、また、請求項4及び5に係る発明は、甲第16号証、甲第22号証~甲第25号証のいずれかに記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
イ 証拠方法
甲第16号証:特開2006-321710号公報
甲第22号証:特開平8-26766号公報
甲第23号証:特開平8-217484号公報
甲第24号証:特開2006-306648号公報
甲第25号証:国際公開第2010/035770号
甲第7号証:特開2014-84235号公報
甲第8号証:特開2007-31253号公報
甲第9号証:特開2007-254224号公報
(2)甲第16号証を主たる証拠とした取消理由に対する当審の判断
ア 甲第16号証に記載された発明
甲第16号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0083】~【0152】の記載を、実施例1のガラス組成物に注目して整理すると、甲第16号証には、
「質量%で、SiO2が5.00%、B2O3が38.08%、Li2Oが4.25%、Y2O3が6.00%、La2O3が25.60%、Gd2O3が0%、TiO2が0.05%、ZrO2が6.00%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、WO3が0%、ZnOが15.00%、CaOが0%、BaOが0%、SrOが0%、Sb2O3が0.02%からなる組成を有し、屈折率ndが1.69181、アッベ数νdが53.1である光学素子用のガラス組成物。」
の発明(以下、「甲16発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
(ア)対比、判断
本件特許発明1と甲16発明とを対比すると、甲16発明の「光学素子用のガラス組成物」は、本件特許発明1の「光学ガラス」に相当する。
また、甲16発明の組成は、「モル%」で表すと、おおよそ、SiO2が7.49%、B2O3が49.22%、Li2Oが12.80%、Y2O3が2.39%、La2O3が7.07%、Gd2O3が0%、TiO2が0.06%、ZrO2が4.38%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、WO3が0%、ZnOが16.59%、CaOが0%、BaOが0%、SrOが0%、Sb2O3が0.006%になるし、当該組成は、Yb2O3成分、MgO成分、Na2O成分及びK2O成分を含有しておらず、La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3のモル和が9.46%(=7.07%+0%+2.39%+0%)、ZnO/(ZnO+MgO+CaO+SrO+BaO)のモル比が1.00(=16.59%/(16.59%+0%+0%+0%+0%))、(MgO+CaO+SrO+BaO+Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3)のモル比が0.226(=0%+0%+0%+0%+12.80%+0%+0%)/(7.49%+49.22%))になるから、甲16発明の組成は、本件特許発明1の「B2O3成分を30.0%以上55.0%以下」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」、「Li2O成分を7.0%超」、「ZnO成分を14.0%超」、「ZrO2成分を0%超」、「Ta2O5成分の含有量が1.0%未満」、「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満」及び「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)」との規定を満足する。
さらに、甲16発明の「屈折率ndが1.69181、アッベ数νdが53.1」であることは、「-0.01νd+2.21」が1.679となり屈折率ndより小さくなるから、本件特許発明1の「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満足する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲16発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
・相違点1:本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲16発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.226である点。
そして、相違点1は実質的なものであるから、本件特許発明1は、甲第16号証に記載された発明であるといえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、甲第16号証の段落【0056】の記載に基づき、甲16発明において、Li2O成分量を下げる動機があるから、Li2O成分量を調整して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)の値を0.158以上0.220以下とすることは当業者が容易に想到することである旨を主張している(申立人意見書第5頁下から4行~第6頁第4行)。
しかしながら、甲第16号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、申立人の前記主張は採用できない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるところ、甲16発明を対比すると、少なくとも前記相違点1で実質的に相違するから、甲第16号証に記載された発明であるといえない。
また、甲第7号証~甲第9号証にも、ガラス組成のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を特定範囲に調整することは記載も示唆もされていないから、本件特許発明4、5は、甲第16号証に記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(3)甲第22号証を主たる証拠とした取消理由に対する当審の判断
ア 甲第22号証に記載された発明
甲第22号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0018】~【0022】の記載を、実施例10の光学ガラスに注目して整理すると、甲第22号証には、
「wt%で、SiO2が3.5%、B2O3が29.8%、Al2O3が0%、Li2Oが2.5%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、ZnOが25.1%、ZrO2が0%、La2O3が30.5%、Gd2O3が0%、Y2O3が8.4%、Yb2O3が0%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、As2O3が0%、Sb2O3が0.4%からなる組成を有し、屈折率ndが1.7248、アッベ数νdが50.7である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲22発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
(ア)対比、判断
甲22発明の組成は、「モル%」で表すと、おおよそ、SiO2が5.78%、B2O3が42.19%、Al2O3が0%、Li2Oが8.30%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、ZnOが30.61%、ZrO2が0%、La2O3が9.29%、Gd2O3が0%、Y2O3が3.69%、Yb2O3が0%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、As2O3が0%、Sb2O3が0.136%になるし、当該組成は、La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3のモル和が12.98%(=9.29%+0%+3.69%+0%)、ZnO/(ZnO+MgO+CaO+SrO+BaO)のモル比が1.00(=30.61%/(30.61%+0%+0%+0%+0%))、(MgO+CaO+SrO+BaO+Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3)のモル比が0.173(=0%+0%+0%+0%+8.30%+0%+0%)/(5.78%+42.19%))になるから、甲22発明の組成は、本件特許発明1の「B2O3成分を30.0%以上55.0%以下」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」、「Li2O成分を7.0%超」、「ZnO成分を14.0%超」、「Ta2O5成分の含有量が1.0%未満」、「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満」、「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)」及び「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」との規定を満足する。
さらに、甲22発明の「屈折率ndが1.7248、アッベ数νdが50.7」であることは、「-0.01νd+2.21」が1.703となり屈折率ndより小さくなるから、本件特許発明1の「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満足する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲22発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
・相違点2:本件特許発明1では、「ZrO2成分」の含有量が0モル%超であるのに対して、甲22発明では、0wt%(0モル%)である点。
そして、相違点2は実質的なものであるから、本件特許発明1は、甲22発明であるといえない。
また、甲第22号証の実施例8の光学ガラスに注目して、甲第22号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第22号証に記載された発明であるといえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、甲第22号証の段落【0009】、【0010】及び【0014】並びに甲第24号証の段落【0023】の記載に基づき、甲22発明において、耐失透性及び屈折率を高めるために、B2O3成分及びSiO2成分の一部をZrO2成分に置換して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を一定範囲としつつ、ZrO2成分の含有量を0モル%超とすることは当業者が容易に想到することである旨を主張している(申立人意見書第7頁第7行~第8頁第9行)。
しかしながら、B2O3成分及びSiO2成分の一部をZrO2成分に置換した場合にはアッベ数が小さくなることが技術常識であることを踏まえると、前記置換によって、本件特許発明1の「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満たすことができるのかが明らかでないため、申立人の前記主張は採用できない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるところ、甲22発明と対比すると、少なくとも前記相違点2で実質的に相違するから、甲第22号証に記載された発明であるといえない。
また、甲第7号証~甲第9号証のいずれにも、「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満たしつつ、ガラス組成のB2O3成分及びSiO2成分の一部をZrO2成分に置換することは記載も示唆もされていないから、本件特許発明4、5は、甲第22号証に記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(4)甲第23号証を主たる証拠とした取消理由に対する当審の判断
ア 甲第23号証に記載された発明
甲第23号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0018】~【0021】の記載を、実施例9の光学ガラスに注目して整理すると、甲第23号証には、
「重量%で、SiO2が6.0%、B2O3が30.0%、GeO2が0%、La2O3が23.5%、Lu2O3が1.5%、Y2O3が6.0%、Gd2O3が0%、Yb2O3が0%、ZnOが23.1%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、Al2O3が0%、TiO2が0.1%、ZrO2が6.0%、Ta2O5が0%、Nb2O5が0%、WO3が0%、Li2Oが3.3%、Na2Oが0%、K2Oが0%、Sb2O3が0.5%からなる組成を有し、屈折率ndが1.708、アッベ数νdが48.9である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲23発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
(ア)対比、判断
甲23発明の組成は、「モル%」で表すと、おおよそ、SiO2が9.25%、B2O3が39.93%、GeO2が0%、La2O3が6.68%、Lu2O3が0.35%、Y2O3が2.46%、Gd2O3が0%、Yb2O3が0%、ZnOが26.30%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、Al2O3が0%、TiO2が0.12%、ZrO2が4.51%、Ta2O5が0%、Nb2O5が0%、WO3が0%、Li2Oが10.23%、Na2Oが0%、K2Oが0%、Sb2O3が0.159%になるし、当該組成は、La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3のモル和が9.14%(=6.68%+0%+2.46%+0%)、ZnO/(ZnO+MgO+CaO+SrO+BaO)のモル比が1.00(=26.30%/(26.30%+0%+0%+0%+0%))、(MgO+CaO+SrO+BaO+Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3)のモル比が0.208(=0%+0%+0%+0%+10.23%+0%+0%)/(9.25%+39.93%))になるから、甲23発明の組成は、本件特許発明1の「B2O3成分を30.0%以上55.0%以下」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」、「Li2O成分を7.0%超」、「ZnO成分を14.0%超」、「ZrO2成分を0%超」、「Ta2O5成分の含有量が1.0%未満」、「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満」、「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)」及び「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」との規定を満足する。
さらに、甲23発明の「屈折率ndが1.708、アッベ数νdが48.9」であることは、本件特許発明1の「1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満足する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲23発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
・相違点3:本件特許発明1では、「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満た」しているのに対して、甲23発明では、屈折率ndが1.708、アッベ数νdが48.9であり、「-0.01νd+2.21」が1.721となって屈折率ndより大きくなるため、前記関係式を満たさない点。
そして、相違点3は実質的なものであるから、本件特許発明1は、甲第23号証に記載された発明であるといえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、甲第23号証の段落【0003】の記載に基づき、甲23発明において、アッベ数や耐失透性を維持しつつ、屈折率がより高いガラスとするために、前記関係性式を満たすガラスを得ることは当業者が容易に想到することである旨を主張している(申立人意見書第9頁第5~11行)。
しかしながら、甲第23号証には、ガラスの屈折率及びアッベ数に関して、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たすように調整することは記載も示唆もされておらず、当該関係式を満たすように調整する動機付けは存在しないから、申立人の前記主張は採用できない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるところ、甲23発明と対比すると、少なくとも前記相違点3で実質的に相違する。そして、甲第7号証~甲第9号証にも、ガラスの屈折率及びアッベ数を前記関係式を満足するように調整することは記載も示唆もされていないから、本件特許発明4、5は、甲第23号証に記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(5)甲第24号証を主たる証拠とした取消理由に対する当審の判断
ア 甲第24号証に記載された発明
甲第24号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0030】~【0035】の記載を、実施例8の光学ガラスに注目して整理すると、甲第24号証には、
「重量%で、SiO2が3.2%、B2O3が36.4%、Li2Oが2.7%、ZnOが18.8%、Y2O3が7.3%、La2O3が26.1%、Gd2O3が1.7%、Yb2O3が0.1%、ZrO2が3.9%、Ta2O5が0%、GeO2が0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、WO3が0%、Nb2O5が0%、TiO2が0%、Sb2O3が0%からなる組成を有し、屈折率ndが1.709、アッベ数νdが52.7である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲24発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
(ア)対比、判断
甲24発明の組成は、「モル%」で表すと、おおよそ、SiO2が5.09%、B2O3が49.96%、Li2Oが8.63%、ZnOが22.08%、Y2O3が3.09%、La2O3が7.65%、Gd2O3が0.45%、Yb2O3が0.02%、ZrO2が3.02%、Ta2O5が0%、GeO2が0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、WO3が0%、Nb2O5が0%、TiO2が0%、Sb2O3が0%になるし、当該組成は、Na2O成分及びK2O成分を含有しておらず、La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3のモル和が11.21%(=7.65%+0.45%+3.09%+0.02%)、ZnO/(ZnO+MgO+CaO+SrO+BaO)のモル比が1.00(=22.08%/(22.08%+0%+0%+0%+0%))、(MgO+CaO+SrO+BaO+Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3)のモル比が0.157(=0%+0%+0%+0%+8.63%+0%+0%)/(5.09%+49.96%))になるから、甲24発明の組成は、本件特許発明1の「B2O3成分を30.0%以上55.0%以下」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」、「Li2O成分を7.0%超」、「ZnO成分を14.0%超」、「ZrO2成分を0%超」、「Ta2O5成分の含有量が1.0%未満」、「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満」及び「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)」との規定を満足する。
さらに、甲24発明の「屈折率ndが1.709、アッベ数νdが52.7」であることは、「-0.01νd+2.21」が1.683となり屈折率ndより小さくなるから、本件特許発明1の「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満たし、1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満足する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲24発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
・相違点4:本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲24発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.157である点。
そして、相違点4は実質的なものであるから、本件特許発明1は、甲第24号証に記載された発明であるといえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、甲第24号証の段落【0024】及び甲第22号証の段落【0010】の記載に基づき、甲24発明において、屈折率を高めるために、B2O3成分量を調整して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)の値を0.158以上0.220以下とすることは当業者が容易に想到することである旨を主張している(申立人意見書第10頁第1~12行)。
しかしながら、甲第24号証及び甲第22号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、申立人の前記主張は採用できない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるところ、甲24発明と対比すると、少なくとも前記相違点4で実質的に相違するから、甲第24号証に記載された発明であるといえない。
また、甲第7号証~甲第9号証にも、ガラス組成のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を特定範囲に調整することは記載も示唆もされていないから、本件特許発明4、5は、甲第24号証に記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(6)甲第25号証を主たる証拠とした取消理由に対する当審の判断
ア 甲第25号証に記載された発明
甲第25号証の「請求の範囲」、及び、段落[0046]~[0052]の記載を、実施例11の光学ガラスに注目して整理すると、甲第25号証には、
「重量%で、SiO2が2.2%、B2O3が36.0%、GeO2が0%、Al2O3が0%、Li2Oが7.0%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが12.7%、BaF2が0%、ZnOが17.3%、ZnF2が4.3%、Y2O3が6.5%、La2O3が12.9%、Gd2O3が0%、Yb2O3が1.08%、Sb2O3が0%、ZrO2が0%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、WO3が0%からなる組成を有し、屈折率ndが1.6601、アッベ数νdが54.7である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲25発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
(ア)対比、判断
甲25発明の組成は、「モル%」で表すと、おおよそ、SiO2が3.06%、B2O3が43.23%、GeO2が0%、Al2O3が0%、Li2Oが19.59%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが6.92%、BaF2が0%、ZnOが17.3%、ZnF2が3.5%、Y2O3が2.41%、La2O3が3.31%、Gd2O3が0%、Yb2O3が0.23%、Sb2O3が0%、ZrO2が0%、Nb2O5が0%、Ta2O5が0%、WO3が0%になるし、当該組成は、La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3のモル和が5.95%(=3.31%+0%+2.41%+0.23%)、(ZnO+ZnF2)/(ZnO+ZnF2+MgO+CaO+SrO+BaO+BaF2)のモル比が0.75(=(17.8%+3.5%)/(17.8%+3.5%+0%+0%+0%+6.92%+0%))、(MgO+CaO+SrO+BaO+BaF2+Li2O+Na2O+K2O)/(SiO2+B2O3)のモル比が0.573(=0%+0%+0%+6.92%+0%+19.59%+0%+0%)/(3.06%+43.23%))になるから、甲25発明の組成は、本件特許発明1の「B2O3成分を30.0%以上55.0%以下」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)で3.0%以上14.0%未満」、「Li2O成分を7.0%超」、「ZnO成分を14.0%超」、「Ta2O5成分の含有量が1.0%未満」、「Gd2O3成分の含有量が1.0%未満」及び「酸化物基準のモル比ZnO/(ZnO+RO)が0.70以上1.00以下であり(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)」であるとの規定を満足する。
さらに、甲25発明の「屈折率ndが1.6601、アッベ数νdが54.7」であることは、本件特許発明1の「1.65以上1.75未満の屈折率(nd)を有し、48以上60以下のアッベ数(νd)を有する」との規定を満足する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲25発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
・相違点5:本件特許発明1では、「ZrO2成分」の含有量が0モル%超であるのに対して、甲25発明では、0wt%(0モル%)である点。
・相違点6:本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲25発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.573である点。
・相違点7:本件特許発明1では、「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が、nd≧(-0.01νd+2.21)の関係を満た」しているのに対して、甲25発明では、屈折率ndが1.708、アッベ数νdが48.9であり、「-0.01νd+2.21」が1.721となって屈折率ndより大きくなるため、前記関係式を満たさない点。
そして、相違点5~7は実質的なものであるから、甲25発明であるといえない。
また、甲第25号証の実施例18の光学ガラスに注目して、甲第25号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第25号証に記載された発明であるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるところ、甲25発明と対比すると、少なくとも前記相違点5~7で実質的に相違するから、甲第25号証に記載された発明といえない。
また、甲第7号証~甲第9号証にも、前記相違点5~7に係る本件特許発明1の特定事項について記載も示唆もされていないから、本件特許発明4、5は、甲第25号証に記載された発明及び甲第7号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(7)小活
以上のとおり、甲第16号証、甲第22号証~甲第25号証のいずれを主たる証拠としても、その取消理由に理由はない。
5 取消理由通知書(決定の予告)で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由は、後記甲第1号証~甲第5号証のいずれかを主たる証拠とする申立理由であって、その概要は、次のとおりである。
ア 申立理由
設定登録時の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証~甲第5号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第1号証~甲第9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
イ 証拠方法
甲第1号証:特開2000-16831号公報
甲第2号証:特開2001-130924号公報
甲第3号証:中国特許出願公開第101209895号明細書
甲第4号証:中国特許出願公開第101439929号明細書
甲第5号証:特開平8-259257号公報
甲第6号証:特開平11-79781号公報
甲第7号証:特開2014-84235号公報
甲第8号証:特開2007-31253号公報
甲第9号証:特開2007-254224号公報
(2)甲第1号証を主たる証拠とした申立理由に対する当審の判断
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0041】~【0052】の記載を、実施例1の光学ガラスに注目して整理すると、甲第1号証には、
「質量%で、B2O3が28%、La2O3が21%、Y2O3が8%、SiO2が15%、Li2Oが3%、CaOが11%、ZnOが8%、Gd2O3が0%、ZrO2が6%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、SrOが0%、BaOが0%、Ta2O5が0%、Al2O3が0%、Yb2O3が0%、Nb2O5が0%、As2O3が0%、Sb2O3が0%からなる組成を有し、屈折率ndが1.6921、アッベ数νdが53.3である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲1発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.455である点で少なくとも相違しているから、本件特許発明1は、甲1発明であるといえない。
そして、甲第1号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、甲第2号証~甲第9号証の記載を参酌しても、甲1発明において、その組成をモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下となるようにすることは容易想到な事項であるといえない。
また、甲第1号証の実施例3~16及び比較例1の光学ガラスに注目して甲第1号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討した理由により、本件特許発明4及び5は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(3)甲第2号証を主たる証拠とした申立理由に対する当審の判断
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0035】~【0046】の記載を、実施例1の光学ガラスに注目して整理すると、甲第2号証には、
「質量%で、B2O3が28%、La2O3が21%、Y2O3が8%、SiO2が15%、Li2Oが3%、CaOが8%、ZnOが11%、Gd2O3が0%、ZrO2が6%、Na2Oが0%、K2Oが0%、MgOが0%、SrOが0%、BaOが0%、Ta2O5が0%、Al2O3が0%、Yb2O3が0%、Nb2O5が0%、GeO2が0%、As2O3が0%、Sb2O3が0%からなる組成を有し、屈折率ndが1.6971、アッベ数νdが52.6である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲2発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.373である点で少なくとも相違しているから、本件特許発明1は、甲2発明であるといえない。
そして、甲第2号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、甲第1号証、甲第3号証~甲第9号証の記載を参酌しても、甲2発明において、その組成をモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下となるようにすることは容易想到な事項であるといえない。
また、甲第2号証の実施例3~21及び比較例1、3~5の光学ガラスに注目して甲第2号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討した理由により、本件特許発明4及び5は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(4)甲第3号証を主たる証拠とした申立理由に対する当審の判断
ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の特許請求の範囲、第3頁第2~4行、及び、第5頁下から3行~第8頁末行の記載(甲第3号証の部分翻訳の第1頁第14行~第2頁第11行、第2頁第13~16行、及び、第5頁下から6行~第6頁末行を参照)を、実施例1の光学ガラスに注目して整理すると、甲第3号証には、
「重量パーセントで、SiO2が17.78%、B2O3が29%、La2O3が19.6%、Gd2O3が0%、Y2O3が6.5%、CaOが12%、SrOが0%、BaOが0%、MgOが0%、ZnOが6.1%、Li2Oが5.5%、Na2Oが0%、K2Oが0%、ZrO2が3%、Al2O3が0.5%、Nb2O5が0%、WO3が0%、Sb2O3が0.02%、SnO2が0%からなる成分組成を有し、屈折率ndが1.66830、アッベ数νdが55.32である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲3発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.559である点で少なくとも相違しているから、本件特許発明1は、甲3発明であるといえない。
そして、甲第3号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証~甲第9号証の記載を参酌しても、甲3発明において、その組成をモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下となるようにすることは容易想到な事項であるといえない。
また、甲第3号証の実施例2~5、7、9~14及び比較例1、2、4の光学ガラスに注目して甲第3号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討した理由により、本件特許発明4及び5は、甲第3号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(5)甲第4号証を主たる証拠とした申立理由に対する当審の判断
ア 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証の特許請求の範囲、及び、第7頁下から3行~第10頁第7行の記載(甲第4号証の部分翻訳の第1頁第13行~第2頁第25行、及び、第6頁下から7行~第6頁第14行を参照)を、実施例1の光学ガラスに注目して整理すると、甲第4号証には、
「重量パーセントで、SiO2が7%、B2O3が32.9%、La2O3が21.1%、Gd2O3が1%、Y2O3が8%、Yb2O3が0%、CaOが9.9%、SrOが1%、BaOが0%、MgOが0%、ZnOが13%、Li2Oが3%、Na2Oが0%、K2Oが0%、ZrO2が3%、Al2O3が0%、TiO2が0%、Ta2O5が0%、Nb2O5が0%、WO3が0.1%、Sb2O3が0%、SnO2が0%からなる成分組成を有し、屈折率ndが1.69372、アッベ数νdが53.04である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、本件特許発明1では、「酸化物基準のモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)」であるのに対して、甲4発明では、当該モル比は特定されておらず、モル%換算後の組成から算出した当該モル比は0.487である点で少なくとも相違しているから、本件特許発明1は、甲4発明であるといえない。
そして、甲第4号証には、ガラス組成に関して、モル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)を調整することは記載も示唆もされておらず、当該モル比を特定の特定範囲に調整する動機付けは存在しないから、甲第1号証~甲第3号証、甲第5号証~甲第9号証の記載を参酌しても、甲4発明において、その組成をモル比(RO+Rn2O)/(SiO2+B2O3)が0.158以上0.220以下となるようにすることは容易想到な事項であるといえない。
また、甲第4号証の実施例2~8、10、13、14の光学ガラスに注目して甲第4号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討した理由により、本件特許発明4及び5は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(6)甲第5号証を主たる証拠とした申立理由に対する当審の判断
ア 甲第5号証に記載された発明
甲第5号証の【特許請求の範囲】、及び、段落【0016】~【0018】の記載を、実施例3の光学ガラスに注目して整理すると、甲第5号証には、
「質量比(wt%)で、SiO2が6.0%、B2O3が25.2%、Li2Oが0.7%、Na2Oが0%、K2Oが4.8%、MgOが0%、CaOが0%、SrOが0%、BaOが0%、ZnOが29.0%、ZrO2が0%、La2O3が29.9%、Gd2O3が0%、Y2O3が4.0%、Yb2O3が0%、As2O3が0.4%、Sb2O3が0%からなる組成を有し、屈折率ndが1.6938、アッベ数νdが49.6である光学ガラス。」
の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比すると、Li2O成分に関して、本件特許発明1では、7.0モル%超で含有しているのに対して、甲5発明では、0.7wt%(2.3モル%)で含有している点で少なくとも相違しているから、本件特許発明1は、甲5発明であるといえない。
そして、甲第5号証に記載された光学ガラスは、Li2O成分の含有量を0.1~2wt%の所定範囲にすることを特徴とするものである(【特許請求の範囲】及び段落【0008】参照)ところ、甲5発明のLi2O成分の含有量を当該所定範囲で調整しても、7.0モル%超とならないから、甲第1号証~甲第4号証、甲第6号証~甲第9号証の記載を考慮しても、甲5発明において、Li2O成分の含有量を7.0モル%超とすることは容易想到な事項であるといえない。
また、甲第5号証の実施例5の光学ガラスに注目して甲第5号証に記載された発明を認定しても同様である。
したがって、本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第5号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討した理由により、本件特許発明4及び5も、甲第5号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第5号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(7)小活
以上のとおり、甲第1号証~甲第5号証のいずれを主たる証拠としても、その申立理由に理由はない。
6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件請求項1、4、5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項2、3は、前記2のとおり、訂正により削除された。これにより、本件請求項2、3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700830