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特許異議申立

2021-700904

染毛料組成物

審判番号
2021-700904
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-184829外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6846900
請求日
2021年09月17日
審決日
2021年12月10日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法114条4項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第114条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6846900号発明「染毛料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6846900号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6846900号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2016-184829号)は、平成28年9月21日(優先権主張 平成27年9月25日(以下「本件優先日」という。))に出願され、令和3年3月4日にその特許権の設定の登録(請求項の数:4)がなされ、同年3月24日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和3年9月17日に、特許異議申立人 神山優一(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」~「本件請求項4」という。)に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含有し、 前記成分Aの含有量が0.01~0.5質量%であり、 前記成分Bの含有量が0.1~1.0質量%であり、 前記成分Cの含有量が0.01~0.5質量%であり、 前記成分Dの含有量が0.2~1.5質量%であり、 カラーリンス又はカラートリートメントであることを特徴とする染毛料組成物。 成分A:下記式(1)で表される染料 【化1】 [図:0001384202000001.jpg] 成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれた染料 成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれた染料 成分D:HC青2 成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれた成分 【請求項2】 前記成分C100質量%中の、前記HC黄2の含有量が50.0質量%以上である請求項1に記載の染毛料組成物。 【請求項3】 前記成分Eの含有量が0.5~10.0質量%である請求項1又は2に記載の染毛料組成物。 【請求項4】 白髪染め用の染毛料組成物である請求項1~3のいずれか1項に記載の染毛料組成物。」 以下、本件特許の請求項1~4に係る発明を、それぞれ請求項の番号順に「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。 第3 申立ての理由の概要及び証拠 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由として、以下「1」に概要を示す申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張するとともに、証拠方法として、以下「2」に示す甲第1~6号証(以下、番号順に「甲1」~「甲6」ということがある。)を提出した。 1 申立人による申立ての理由の概要 ・申立理由:甲1を主引例とする進歩性欠如 (特許法第29条第2項/請求項1~4) 本件発明1~4は、甲1~甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (当審注:申立書には、甲1~甲6のいずれが主引例であるのか明示されていないが、申立書(特に、42~46頁)の記載からみて、甲1を主引例とする進歩性欠如が主張されているものと理解できるから、その前提で以下の検討を行う。) 2 申立人が提出した証拠(証拠方法) 甲第1号証: 特開2015-017109号公報 (平成27年1月29日発行) 甲第2号証: 欧州特許出願公開第2883535号明細書 (2015年(平成27年)6月17日発行) 甲第3号証: 特開2014-101292号公報 (平成26年6月5日発行) 甲第4号証: 特開2012-246284号公報 (平成24年12月13日発行) 甲第5号証: 特開2014-101290号公報 (平成26年6月5日発行) 甲第6号証: 特開2017-031085号公報 (平成29年2月9日発行) 第4 各甲号証及び周知例の記載事項 上記「第3」の「2」に示した各甲号証について、申立理由の判断に必要な範囲で記載事項を以下に摘記する。 また、当審が提示する次の周知例Aの記載事項も、各甲号証の記載事項に続いて摘記する。 なお、下線はいずれも当審が付したものである。 周知例A: 特開2013-067597号公報 (平成25年4月18日発行) 1 甲1の記載事項 本件優先日前である平成27年1月29日に発行された甲1(特開2015-017109号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 以下 (a)式 【化1】 [図:0001384202000002.jpg] で表される染料; (b)式 【化2】 [図:0001384202000003.jpg] 、及び 【化3】 [図:0001384202000004.jpg] で表される化合物群から選択される少なくとも1種の染料; [式中、 Dは、次の式 【化4】 [図:0001384202000005.jpg] で表されるジアゾ成分の基であり; ・・・である]; 及び (c)以下 (c1)次の式 【化5】 [図:0001384202000006.jpg] [式中、 ・・・である] で表される四級アンモニウム塩、 (c2)次の式 【化6】 [図:0001384202000007.jpg] [式中、 ・・・である] で表されるイミダゾリウム塩、 (c3)次の式 【化7】 [図:0001384202000008.jpg] [式中、 ・・・である] で表される四級ジアンモニウム塩、 から選択される四級アンモニウム塩; を含んでいる毛髪染色用組成物。 ・・・ 【請求項3】 成分(a)が、式 【化8】 [図:0001384202000009.jpg] に対応している、請求項1又は2に記載の組成物。 ・・・ 【背景技術】 【0002】 カチオン染料が有機材料(例えばケラチン、絹、セルロース又はセルロース誘導体)・・・を染色するのに用いられ得ることは、例えば、・・・から公知である。カチオン染料は非常に鮮やかな色調を呈する。欠点は、加水分解及び光に対してその堅牢性が不十分であること、還元性又は酸化性条件下ではその安定性が多くの場合不十分であること、及びその貯蔵安定性が多くの場合不十分であることである(・・・)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の実際の技術的な課題は、洗浄、光、シャンプー及び擦りに関して良好な堅牢特性を有している濃染によって特徴付けられ、また好ましくは還元性又は酸化性染色条件下で十分な安定性を呈する、有機材料を染色するための鮮やかな染料を提供することであった。 ・・・ 【0059】 本発明は、また、有機材料、好ましくはケラチン含有繊維、そして最も好ましくはヒト毛髪を染色するのに用いられる、本発明による毛髪染色用組成物を含んでいる製剤にも関する。 ・・・ 【0064】 製剤は、各種の専用の剤形でケラチン含有繊維(好ましくはヒト毛髪)に適用され得る。 【0065】 製剤の専用の剤形は、例えば、溶液(特に粘度の高い水性又は水性アルコール溶液)、クリーム、フォーム、シャンプー、パウダー、ジェル、又はエマルションである。 ・・・ 【0071】 適する化粧品ヘアケア製剤は、ヘアトリートメント調製物(例えばシャンプー+コンディショナーの形態にあるヘアウォッシング調製物)、ヘアケア調製物(例えばプレトリートメント調製物や、スプレー、クリーム、ジェル、ローション、ムース及びオイルのようなリーブオンプロダクト)、ヘアトニック・・・、ヘアリンス、トリートメントパック、インテンシブヘアトリートメント、・・・、テンポラリー、セミパーマネントもしくはパーマネントヘア着色剤、自己酸化性染料含有調製物、又はヘア天然着色剤(例えばヘナやカモミール)である。 ・・・ 【0078】 本発明の毛髪染色用組成物には以下の補佐剤が好ましくは用いられる:・・・、カチオン性ポリマー、・・・。 ・・・ 【実施例】 【0105】 ・・・。特に断らない限り、部及びパーセントは重量に関する。・・・。 【0106】 適用例: ヘア(毛髪)を染色するためのベイシックブルー124とベイシックレッド51、ベイシックイエロー87及びベイシックオレンジ31並びに四級アンモニウム塩との組み合わせ。 ・・・ 【0124】 実施例6: pH=6.4の染料エマルション(以下 0.05%の染料ベイシックブルー124 0.15%のベイシックブルー99 0.07%のベイシックブラウン17 0.04%のベイシックイエロー57 0.15%のベイシックブラウン16 0.01%のベイシックレッド76 0.01%のベイシックレッド51 0.01%のHCレッドBN 0.01%のHCレッド3 0.01%の3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール 0.05%のHCブルー2 3.5%のセテアリールアルコール 1.5%のヘナ 10.5%のウォルナット 1.0%のセテアレス30 0.5%のグリコールジステアラート 3.0%のステアロアミドDEA 1.0%のナトリウムオレオアンホヒドロキシプロピルスルホナート 0.5%のポリクォターニウム-10 0.1%のTinovis CD(ジメチルアクリルアミド/エチルトリモニウムクロリドメタクリラートコポリマー、プロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート、PPG-1トリデセス-6、C10-11イソパラフィン) 0.5%のアミノプロピルジメチコン 水 加えて100% を含有)を、室温にて脱色ヒト毛髪に30分間適用し、その後濯ぎ洗いする。結果は、良好な堅牢性を有する赤みを帯びたブラウン染色である。 【0125】 実施例7: pH=6.4の染料エマルション(以下 0.05%の染料ベイシックブルー124 0.15%のベイシックブルー99 0.07%のベイシックブラウン17 0.04%のベイシックイエロー57 0.15%のベイシックブラウン16 0.01%のベイシックレッド76 0.01%のベイシックレッド51 0.01%のHCレッドBN 0.01%のHCレッド3 0.01%の3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール 0.05%のHCブルー2 0.01%のベイシックブルー26 0.01%のベイシックブルー75 3.5%のセテアリールアルコール 1.5%のヘナ 10.5%のウォルナット 1.0%のセテアレス30 0.5%のグリコールジステアラート 3.0%のステアロアミドDEA 1.0%のナトリウムオレオアンホヒドロキシプロピルスルホナート 0.5%のポリクォターニウム-10 0.1%のTinovis CD(ジメチルアクリルアミド/エチルトリモニウムクロリドメタクリラートコポリマー、プロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート、PPG-1トリデセス-6、C10-11イソパラフィン) 0.5%のアミノプロピルジメチコン 水 加えて100% を含有)を、室温にて脱色ヒト毛髪に30分間適用し、その後濯ぎ洗いする。結果は、良好な堅牢性を有する赤みを帯びたブラウン染色である。」 2 甲2の記載事項 本件優先日前である2015年(平成27年)6月17日に発行された甲2(欧州特許出願公開第2883535号明細書)には、以下の事項が記載されている。なお、甲2は英語で記載されているため、当審による和訳にて摘記する。 「[0001] 本発明は、グリオキシル酸又はその誘導体と直接染料を含む、毛髪の再成形及び直接染色のための、すぐ使える組成物に関する。・・・。 ・・・ [0027] 驚くべきことに、式(I)又は(II)の成分と、少なくとも1つの適切な直接染料とを含む組成物は、ケラチン質繊維、特に人間の毛髪を、卓越した方法でストレート化し染色できることがわかった。そして、毛髪は良好に再形成され均一に染色される。 [0028] したがって、本発明は、少なくとも1種の直接染料と、それぞれ構造 (I) で表される成分又は構造 (II) で表される対応する一水和物: [図:0001384202000010.jpg] (ここで、基Xは、ヒドロキシ基であるか、Rがアミノ酸ラジカルであり、N原子がアミノ酸のアミノ基である、-NHR基である)を含む、ケラチン繊維を同時に再成形し染色するための水性製剤、を提供する。 ・・・ 染料 ・・・ [0046] したがって、本発明の組成物は、単一の染料又は染料の混合物を含んでもよく、混合物の染料は同じ又は異なるイオノゲン性分子からなる。 染料は、アニオン性、非イオン性又はカチオン性の染料から選択される。 ・・・ 非イオン性染料: [0049] 好適な非イオン性染料は、例えばニトロベンゼンタイプであり、・・・1-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ニトロベンゼン(HC Yellow No.2);1-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-5-ニトロベンゼン(HC Yellow No.4);・・・;・・・(HC Yellow No.7);・・・;・・・(HC Yellow No.13);・・・;4-アミノ-3-ニトロフェノール;・・・;・・・(HC Orange No.1);・・・;・・・(HC Red No.1);・・・(HC Red No.3);・・・;・・・(HC Red No.13);・・・;2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール;4-ニトロ-o-フェニレンジアミン;・・・;1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロ-4-[ジ(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-ベンゼン(HC Blue No.2);・・・から選択され、分散染料、例えば、・・・、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、・・・も使用できる。 ・・・ [0050] 好ましいのは、HC Yellow No.7、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、HC Orange No.1、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.13、Disperse Violet 1、HC Yellow No.13、Disperse Red 17である。 カチオン性染料: [0051] 適切なカチオン性染料は、・・・、塩基性茶16、塩基性茶17、・・・、塩基性青124、・・・から選択され、好ましくは、・・・、塩基性茶16、塩基性茶17、・・・である。 ・・・ [0053] すぐ使える組成物中に存在する1つ以上の染料の総量は、0.01重量%から5.0重量%の間である。 補助剤: [0054] 本発明は、グリオキシル酸と1種以上の染料の他に、・・・、界面活性剤、・・・、シリコーン、・・・、4級粘度調整剤、・・・から選ばれた成分を組み合わせて含有する組成物を提供する。 ・・・ [0064] 適切なカチオン性界面活性剤は、例えば、第4級アンモニウム塩であり、・・・、好ましくは、塩化又は臭化セチルトリメチルアンモニウム、・・・塩化又は臭化(C20-C22)-アルキルトリメチルアンモニウム、・・・、好ましくは、塩化(C12-C18)-アルキルジメチルベンジルアンモニウム;・・・である。 [0066] 界面活性剤は、約0.5~6.0重量%、好ましくは約1.0~4重量%の量で組成物に含めることができます。 [0067] 本発明による組成物は、INCI名ポリクォターニウムのカチオン性ポリマーを含むことができ、例えば、・・・、カチオン性セルロース誘導体(ポリクォターニウム-4及び-10)、・・・である。 [0068] このようなポリマーの好ましい量は、0.1~5重量%、好ましくは0.1~1.0重量%の範囲であり得る。 ・・・ [0072] 適切なカチオン性増粘剤は、ヒドロキシプロピルグアーの誘導体であり、その例としては、INCI命名法でグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られているポリマーがあり、・・・。 ・・・ [0080] 本発明による組成物は、特定の特性を設定するためにシリコーンを含むこともできる。・・・。 [0081] シリコーンは、組成物の重量を基準にして、0.1~5.0重量%、より好ましくは0.3~2.5重量%の量で存在するのが好ましい。 ・・・ 実施例1 [0105] 成形・染色剤の調製のために標準的な組成物を用いた。本実施例では、染料とその量のみ変化させた。成形・染色組成物の調製に用いた染料の量を、アニオン性染料は表1に、カチオン性染料は表2に、非イオン性染料は表3に示した。 毛髪の再形成と着色を同時に行うための化粧品組成物 [0106] グリオキシル酸、水中50% 35.00% プロピレングリコール 40.00% ビス-PEG/PPG-20/20 ジメチコン 1.50% セトリモニウムクロリド 0.75% グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.30% EDTA 2ナトリウム 0.10% 染料及び量 表1に示した 水 加えて 100.00% ・・・ 表1-2:カチオン性染料、量及び染色結果 実施例 染料 量 色[RAL] 強度 ・・・ 1-2.8 塩基性茶17 1.00% 8023 orange brown 中-強 1-2.9 塩基性青99 0.50% 7036 platinum gray 中 ・・・ 表1-3:中性染料、量及び染色結果 実施例 染料 量 色[RAL] 強度 1-3.1 HC Yellow 7 0.13% 1002 sand yellow 中 ・・・ [0107] 染料を含む組成物を、カール状に縮れた明るいブロンドのブラジリアンヘアに塗布した。・・・。処理前にカールしていた髪がよくストレートになり、上記の表示色で染色された。 [0108] ・・・。このデータは、本発明組成物を含む溶液で処理した後、自然にカールしたブラジリアンヘアを実質的に復帰させることなく効果的にストレート化し、同時に染色できることを示している。 ・・・ 」 3 甲3の記載事項 本件優先日前である平成26年6月5日に発行された甲3(特開2014-101292号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は染毛料組成物に関する。更に詳しくは本発明は、カラートリートメントにおける直接染料として特定の塩基性染料及びHC染料を組合わせて用いることにより、オーバータイム時の変色や、染毛料の継続使用あるいは染毛料と酸化染毛剤との継続使用における変色を有効に抑制できる染毛料組成物に関する。 【0002】 染毛用の組成物は、通常、酸化染料を用いる酸化染毛剤等の永久染毛剤、直接染料を用いる半永久染毛料、毛髪を一時的に着色する一時染毛料に大別される。これらの内、半永久染毛料は永久染毛剤と比較して染毛力、染着力が劣るものの、酸化染毛剤のように酸化剤等を用いないので、毛髪に与えるダメージが少ない。半永久染毛料の一種として染毛効果とヘアコンディショニング効果を同時に示すカラートリートメントがある。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ところで、前記したように、直接染料は酸化染料に比較して染毛力や染着力が劣る。これに対して、染着力が比較的優れた塩基性染料の配合量を多くして染毛力を高めようとすると、塩基性染料の皮膚への染着(地肌汚れ)が懸念される。 【0007】 次に、直接染料はシャンプー堅牢性等が不十分である(色落ちし易い)ため、特に多種の色彩の染料を併用する黒色系の染毛料では色落ちにより変色し易い。従って、染毛料の継続使用(繰返しの使用)の際や、染毛料の使用後数日から数週間経過した後に酸化染毛剤で染毛するという継続使用の際に、染毛色調が変化し易い。更に酸性染料以外の直接染料は染料自体が変色や褪色を起こし易く(・・・)、オーバータイム時の変色も多い。「オーバータイム」とは、染毛料の処理時間が正規に規定された時間を超過してしまうことを言う。 【0008】 そこで本発明は、酸性染料以外の直接染料を用いたカラートリートメントにおける地肌汚れを抑制すると共に、カラートリートメントの継続使用における変色を抑制し、かつオーバータイム時の変色も抑制し、カラートリートメント使用後に酸化染毛剤で染毛するという継続使用の際に染毛色調の変色を抑制することを、解決すべき課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 (第1発明の構成) 上記課題を解決するための第1発明の構成は、下記(A)~(D)の染料を含有し、pHが4~6の範囲内である、染毛料組成物である。 【0010】 (A)塩基性青75(Basic Blue 75) (B)塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上 (C)HC青2(HC Blue No.2) (D)HC黄4(HC Yellow No.4) 【0011】 (第2発明の構成) 上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る染毛料組成物における各染料の含有量が(A)≦0.5質量%、(B)≦0.5質量%、(C)≦1.0質量%、(D)≦0.5質量%であり、かつ、塩基性染料(A)、(B)の合計含有量T BasicとHC染料(C)、(D)の合計含有量T HCとの質量比T Basic/T HCが1.5以下である、染毛料組成物である。 【発明の効果】 【0012】 (第1発明の効果) 第1発明の染毛料組成物のように、直接染料として塩基性染料とHC染料を併用すると、コンディショニング用成分としてカチオン性界面活性剤を含有する場合でも、直接染料と界面活性剤がコンプレックスを形成すると言う不具合を起こさない。 【0013】 塩基性染料はカチオン性であるため、相対的に染着性と水溶性に優れるという特性を持つ。HC染料は非イオン性であり水溶性は低いが、毛髪のキューティクルの内部まで入って蓄積しやすく、特に繰り返しの使用において染毛力を向上させると言う特性を持つ。そして、相対的に染着性やシャンプー堅牢性に優れた塩基性染料に対して更にHC染料を併用すると、強い染着力と十分なシャンプー堅牢性が得られることが分かった。又、塩基性染料に対してHC染料を組合わせると、カラーバリエーションが拡張されるだけでなく、結果的に塩基性染料の過剰配合が回避され、塩基性染料の過剰配合に起因する地肌汚れを抑制できる。 【0014】 更に、特に黒色系や茶色系に必須の重要な配合色である青色系の塩基性染料として、通常は塩基性青99(Basic Blue 99)が標準的に使用されるが、塩基性青99は染毛料や酸化染毛剤の継続使用における変色、及びオーバータイム時の変色等の傾向が大きいことが判明した。第1発明の染毛料組成物では、青色系の塩基性染料として塩基性青99に代えて塩基性青75を含有する。塩基性青75は、塩基性染料としては、色落ちし難いだけでなく、変色も起こし難い。 【0015】 なお、塩基性染料としての塩基性茶16及び塩基性茶17は染料自体の安定性が良いと言う利点があり、HC染料としてのHC青2も染料自体の安定性が良いと言う利点があり、更にHC黄4も染料自体の安定性が良いと言う利点がある。 ・・・ 【0018】 (第2発明の効果) 第2発明の染毛料組成物においては、「塩基性青75の配合量を0.5質量%以下」、「塩基性茶16/塩基性茶17の配合量を0.5質量%以下」、「HC青2の配合量を1.0質量%以下」、「HC黄4の配合量が0.5質量%以下」としたもとで、これら塩基性染料の合計含有量とHC染料の合計含有量との質量比T Basic/T HCを1.5以下とするため、(1)これらの塩基性染料やHC染料の皮膚への染着(地肌汚れ)が更に良好に抑制されるだけでなく、(2)塩基性染料とHC染料との染毛効果が良好にバランスされる結果として、カラートリートメントを継続使用した場合やオーバータイム時の染毛色調が一層安定化し、変色し難くなる。 ・・・ 【0023】 〔染毛料組成物の必須成分〕 本発明の染毛料組成物は、必須成分として、(A)塩基性青75(Basic Blue 75)、(B)塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上、(C)HC青2(HC Blue No.2)及び(D)HC黄4(HC Yellow No.4)を含有する。 ・・・ 【0037】 (カチオン性界面活性剤) 本発明の染毛料組成物は、コンディショニング成分としてカチオン性界面活性剤の1種以上を含有することが好ましい。 ・・・ 【0043】 (カチオン性ポリマー) 染毛料組成物は、カチオン性界面活性剤以外のコンディショニング成分としてカチオン性ポリマーを好ましく含有することができる。 ・・・ 【0050】 (その他の染料) 染毛料組成物は、上記した(A)~(D)成分以外の塩基性染料、HC染料その他の各種の直接染料を含有することができる。・・・。 【0051】 (A)、(B)成分以外の塩基性染料としては、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Brown 4、・・・、Basic Yellow 87等を選択して用いることができる。 ・・・ 【0053】 (C)、(D)成分以外のHC染料としては、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15、・・・、2-ニトロ-5-グリセリルメチルアニリン等を例示できる。 ・・・ 【0078】 〔染毛料組成物の調製〕 後述の表1、表2に示す実施例1~16及び表3に示す比較例1~12に係る組成の1剤式の染毛料組成物を、それぞれ常法に従いクリーム状の乳化剤として調製した。 ・・・ 【0082】 (染毛力) 各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、白髪混じりの人毛毛束に塗布し、10分間放置後に水洗することにより、人毛毛束に対する染毛処理を完了した。 【0083】 上記染毛処理の完了後に10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、染毛力が、非常に優れる(5点)、優れる(4点)、やや優れる(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の5段階で評価した。・・・。 ・・・ 【0085】 (染毛料の連用や酸化染毛剤使用による変色抑制) ・・・ 【0088】 この評価は10名のパネラーが行い、変色抑制効果が、非常に優れる(4点)、優れる(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。・・・。 【0089】 (オーバータイム時の変色抑制) ・・・ 【0090】 この評価は10名のパネラーが行い、変色抑制効果が、非常に優れる(4点)、優れる(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。・・・。 【0091】 (地肌汚れ) 各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、腕の内側部における直径1cmの円形のエリアに塗布し、10分間放置した後、温水で洗い流した。次に、石鹸を使用して指で1分間軽く擦り、温水で洗い流した。 【0092】 以上の処理の後、10名のパネラーが地肌汚れ(皮膚への染着の度合い)を目視にて観察し、地肌汚れが、非常に少ない(4点)、少ない(3点)、やや多い(2点)、多い(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。・・・。 【0093】 【表1】 [図:0001384202000011.jpg] 【0094】 【表2】 [図:0001384202000012.jpg] 【0095】 【表3】 [図:0001384202000013.jpg] 〔その他の実施例〕 上記の表1~表3に示した実施例とは別の、本発明の染毛料組成物(1剤式)の実施例を以下に示す。・・・。 【0096】 (実施例17) 質量% Basic Blue 75 0.1 Basic Brown 16 0.3 HC Blue No.2 0.5 HC Yellow No.4 0.1 ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5 ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3 ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.2 セタノール 5 ミツロウ 0.5 流動パラフィン 3 グリセリン 2 乳酸 pH5に調整 フェノキシエタノール 0.3 ジメチルポリシロキサン 0.5 海泥〔マリンシルトFP;株式会社アンコール・アン製〕 1 黒米エキス〔黒米エキス-PC;オリザ油化株式会社製〕 0.1 海藻エキス 〔ファルコレックスケルプ;一丸ファルコス株式会社製〕 0.1 香料 0.5 精製水 残量 (実施例18) 質量% Basic Blue 75 0.01 Basic Brown 17 0.1 HC Blue No.2 0.5 HC Yellow No.4 0.1 ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5 ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3 セトステアリルアルコール 8 流動パラフィン 0.5 グリセリン 1 乳酸 pH5に調整 フェノキシエタノール 0.3 アモジメチコン 0.5 加水分解コラーゲン 0.1 ローヤルゼリーエキス 0.1 アボカド油 0.1 タウリン 0.1 テアニン 0.1 アセチルグルコサミン 0.1 香料 0.5 精製水 残量 (実施例19) 質量% Basic Blue 75 0.02 Basic Brown 16 0.1 Basic Brown 17 0.1 HC Blue No.2 0.5 HC Yellow No.4 0.1 ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5 ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 2 ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1 ステアリルアルコール 8 グリセリン 2 乳酸 pH5に調整 フェノキシエタノール 0.3 サクラエキス〔サクラエキスB;一丸ファルコス株式会社製〕0.1 桜の花エキス〔桜の花エキス-PC;オリザ油化株式会社製〕0.1 酵母エキス(3)〔赤ワイン酵母エキス;永遠幸メディカル コスメティック株式会社〕 0.1 香料 0.5 精製水 残量 」 4 甲4の記載事項 本件優先日前である平成24年12月13日に発行された甲4(特開2012-246284号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 HC染料、塩基性染料の中から選ばれる1種又は2種以上の染料とスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaが含有された染毛料。 ・・・ 【技術分野】 【0001】 本発明は主にヒトの頭髪に使用される染毛料であり、安全で毛髪損傷がなく、皮膚への汚着が少なく、しかも髪に良く染まる染毛料を提供するものである。・・・。 【背景技術】 【0002】 現在、日本で使用されている染毛剤、染毛料は染毛技術的には大きく分けると以下の3タイプに分類される。 A:酸化染毛剤(医薬部外品) 2剤式であり、第1剤はアンモニアなどのアルカリ剤と、染料(パラフェニレンジアミンなどの染料中間体、メタフェニレンジアミン、アミノフェノール、レゾルシンなどのカップラー、及びこれらにニトロ基を導入した直接染料など)が含まれる。第2剤は過酸化水素水からなり、使用時に第1、2剤を混合し頭髪に塗布する。 製品の特徴として、染色力が強く永久染毛剤とも呼ばれる。また第1剤に染料を配合しなければブリーチ機能をもたせることもできるなど機能性が高く「明るく良く染まるヘアカラー」として利用頻度は高い。しかし、染料による皮膚感作性、頭皮一次刺激性の問題、アンモニア、過酸化水素による毛髪損傷の問題に課題を残している。 B:酸性染毛料(化粧品) 1剤式であり、酸性染料、ベンジルアルコール、有機酸などが含まれる。 製品の特徴として、染色力が中程度で2週間程度の色持ちがあり半永久染毛料とも呼ばれる。毛髪損傷はなく皮膚安全性も高く、鮮やかな色調に染めることができ「ヘアマニキュア」とよばれ利用されている。しかし、ベンジルアルコールの溶剤的作用により皮膚に染料が深く浸透しやすく、一旦皮膚に汚着してしまうと石鹸で落とすことができず、特殊なクレンジング剤が必要である。 C:HC染料、塩基性染料による染毛料(化粧品) 1剤式であり、HC染料や塩基性染料が含まれる。 製品の特徴として、染色力が弱く1週間程度の色持ちしかない。しかし、HC染料、塩基性染料は皮膚汚着性が少なく、毛髪損傷もない。また、カチオン性界面活性剤、カチオン性高分子による染色性阻害がなく「トリートメントヘアカラー」として徐々に利用されてきている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 かかる現状において本発明者は、HC染料、塩基性染料による染毛料の課題である「弱い染色力」を解決し、実用に耐える程度に「高い染色向上効果」を達成するべく鋭意研究を行った。 【発明を実施するための形態】 【0006】 本発明とする染毛料はHC染料、塩基性染料の中から選ばれる1種又は2種以上の染料とスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaが含有された染毛料である。 HC染料、塩基性染料は、平成22年11月、日本ヘアカラー工業会発行による自主基準「化粧品の染毛料に配合できる色素リストについて」の中から選定した以下の色素とする。 [自主基準によるHC染料、塩基性染料(表示名称)リスト] HC青2、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC橙1、HC橙2、HC黄2、HC黄4、HC黄9、HC紫1、HC紫2、・・・、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄57、分散黒9、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性青75の群から選ばれる1種又は2種以上の色素とする。 スルホコハク酸ジエチルヘキシルNaは、この別名がジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムなどとよばれることもあるが、本質はいずれも同一である。本原料はアニオン性界面活性剤であり、取り扱いやすさから一般にはエタノール、BG、水などの溶剤との混合物が多い。 主な機能としては、洗浄剤、湿潤・浸透剤として知られている。本原料は、HC染料、塩基性染料に染色向上効果が認められるが、酸性染料においてはこの効果が弱いものであった。 ・・・ 【0012】 ・・・。スルホコハク酸ジエチルヘキサンNaは分岐した2個のエチルヘキサン鎖が結合された二鎖型アニオン界面活性剤で、このバルキーな疎水部側がF-layerに吸着配向され、スルホコハク酸Naの親水部側が毛髪表面を覆う状態に変化する。HC染料、塩基性染料は親水性の色素なので、毛髪表面をたやすく拡散し、染料の入り口であるCMCの先端部に到達することができる。・・・。 以上の染色過程から、なぜスルホコハク酸ジエチルヘキシルNaが染毛向上効果を及ぼすかが推定される。 ・・・ 【実施例5】 【0016】 [図:0001384202000014.jpg] いずれの染毛料も白髪ストランドに15分処理でよく染まり(染毛評価5点)、染料の組み合わせにより、いろいろな色調が得られる。ジェル状にすることで髪によく伸びてたれ落ちすることはない。」 5 甲5の記載事項 本件優先日前である平成26年6月5日に発行された甲5(特開2014-101290号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 下記(A)成分~(D)成分を含有する染毛料組成物。 (A)脂肪酸と1価アルコールとのモノエステルから選ばれる少なくとも一種である液状のエステル油 0.5~2質量% (B)下記「化1」の一般式で示されるアルキルアミドアミン及びその塩から選ばれる少なくとも一種 1~3質量% 【化1】 [図:0001384202000015.jpg] (式中、R1は炭素数11~21の脂肪族炭化水素基を示し、R2は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基を示し、R3は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基を示し、nは2~4の数を示す。) (C)HC染料 (D)水 70質量%以上 ・・・ 【背景技術】 【0002】 毛髪を染めるための組成物として、一般的に、一時染毛料(付着タイプ)、直接染毛料(半永久染毛料)、及び酸化染毛剤組成物(永久染毛剤)が知られている。前記直接染毛料は直接染料を含有する。当該直接染料として、例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等が知られている。 【0003】 直接染毛料は、過酸化水素等の酸化剤を使用せずに、毛髪に直接染料を染着できる。即ち、一つの利点として、直接染毛料はマイルドな条件下で染毛可能である。一方、毛髪の表面に顔料を固着する一時染毛料と比較すると、直接染毛料は堅牢性に優れる。 【0004】 酸性染料は毛髪への染着力に優れるが、当該酸性染料の有する電荷の関係からカチオン性界面活性剤との併用が困難である。よって、酸性染料の有する優れた染着力と、カチオン性界面活性剤の有する毛髪の感触効果との両立は難しい。 【0005】 一方、塩基性染料は、上記酸性染料と比べると毛髪への染着力が劣る傾向にあるが、カチオン性界面活性剤との併用が可能である。よって、ある程度の範囲で、染毛力と毛髪の感触効果は並立できる。例えば、・・・、塩基性染料とカチオン性界面活性剤を併用するカラートリートメントやカラーリンスが知られている。当該カラートリートメントやカラーリンスは繰り返し使用され、徐々に染毛が進む。 【0006】 HC染料はノニオン性の直接染料であり、日本ヘアカラー工業会自主基準リストにも収載されている。塩基性染料と同様、当該HC染料はカチオン性界面活性剤と併用できる。上記HC染料は電荷をもたず、分子量が小さい。よって、上記HC染料は毛髪内部に浸透しやすく更に毛髪内部に蓄積可能であり、一方で地肌を汚染しにくく、また、かぶれにくい。他方、上記HC染料は水に溶けにくいという特徴も有している。 【0007】 例えば水を比較的多量に含むカラートリートメントやカラーリンスにおいて、HC染料の含有量を増やしていくとHC染料の析出が起こり、染毛力が向上しないという問題がある。また、毛髪の感触効果については、カラートリートメントやカラーリンスへのカチオン性界面活性剤の配合だけでは十分でない。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 上記特許文献1及び特許文献2には、比較的多量の水、塩基性染料及びHC染料を含有する実施例が開示されている。しかし、より優れたレベルにおいて染毛力と毛髪の感触効果を両立した染毛料組成物を得たいという要望があった。 【0011】 ・・・。HC染料を増量する利点の一例として、HC染料を増量した染毛料組成物の繰り返しの使用、及び/又は、オーバータイム使用による染毛力の向上が挙げられる。「オーバータイム」とは、染毛料の処理時間が正規に規定された時間を超過することをいう。しかし、比較的多量の水とHC染料とを含む染毛料組成物において、より優れたレベルにおいて染毛力とコンディショニング効果を両立するために、HC染料の析出抑制は重要な課題となる。 【0012】 一般にカラートリートメント等では、カチオン性界面活性剤は毛髪の感触向上効果を得るために配合する。HC染料を使用する場合、併用する含窒素分子の構造が重要であることを本願発明者は見出した。・・・。 【0013】 以上を考慮した上で、「HC染料の溶解性の改善」、並びに、「染毛力及び毛髪の感触効果の向上」を並立するため本願発明者は鋭意検討を重ねた。その結果、意外にも、(A)液状のエステル油と(B)アルキルアミドアミン及びその塩から選ばれる少なくとも一種との組み合わせ使用が有効であることを本願発明者は見出した。 【0014】 よって、染毛力及び毛髪の感触効果に優れ、HC染料の溶解性が改善された染毛料組成物を提供することを解決すべき課題とする。 ・・・ 【0033】 〔(B)成分〕 (B)成分は上記「化1」の一般式で示されるアルキルアミドアミン及びその塩から選ばれる少なくとも一種である。・・・。 ・・・ 【0037】 上記(B)成分の具体例として、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、・・・、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジエチルアミンや、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、・・・、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、・・・、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジメチルアミン等がある。 ・・・ 【0039】 〔(C)成分〕 上記(C)成分はHC染料である。・・・。 【0040】 上記(C)成分の含有量は本願が開示する染毛料組成物の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましい含有量は0.1質量%以上であり、より好ましい含有量は0.2~1.2質量%であり、更に好ましい含有量は0.5~1.0質量%である。 【0041】 HC染料として、例えば、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15、・・・がある。 【0042】 好ましくは、HC Blue No.2、HC Orange No.1、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.9である。より好ましくは、HC Blue No.2、HC Yellow No.4である。 ・・・ 【0051】 〔その他の成分〕 本願が開示する染毛料組成物は、上記(A)成分~(E)成分の他、任意の成分を含有して良い。当該任意の成分として、例えば、・・・、塩基性染料、・・・等がある。 ・・・ 【0058】 本願が開示する染毛料組成物は、ヘアコンディショニング効果を持ちながら、同時に半永久染毛料としての染毛効果も示す染毛料組成物である。好ましくはカラートリートメント、カラーリンスである。 ・・・ 【0064】 下記表1~表3に示す実施例1~18及び比較例1~12に係る、乳化物である1剤式の染毛料組成物(カラートリートメント)を常法により調製した。・・・。各表における各成分の数値の単位は質量%であり、精製水の含有量をバランスして合計が100となるようにした。・・・。 ・・・ 【0067】 〔染毛力〕 各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、白髪混じりの人毛毛束1gに塗布し、10分間放置後に水洗することにより、人毛毛束に対する染毛処理を完了した。 上記染毛処理の完了の直後に10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、非常に優れる(5点)、優れる(4点)、良好である(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の5段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位で四捨五入して、各例の評価点を算出した。その評価結果を各表の「染毛力」の欄に示す。 ・・・ 【0069】 【表1】 [図:0001384202000016.jpg] 【0070】 【表2】 [図:0001384202000017.jpg] 」 6 甲6の記載事項 本件特許の出願日(平成28年9月21日)より後である平成29年2月9日に発行された甲6(特開2017-031085号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【実施例】 【0068】 以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。・・・。また、配合量の単位は、特記しない限り質量%である。 【0069】 <試験例1> 以下に示す各成分を常法により混合して、毛髪処理用組成物A-1を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の誤記と認める。) [毛髪処理用組成物A-1] モノエタノールアミン 8.0 セチルアルコール 9.0 ステアリルアルコール 2.0 プロピレングリコール 5.0 ミリスチン酸イソプロピル 2.0 10%アンモニア水 3.0 ステアリン酸 1.0 ラウリン酸ポリグリセリル-10 1.0 ステアリン酸グリセリル 1.0 アルギニン 0.1 水酸化ナトリウム 0.2 EDTA-2Na 0.1 香料 0.6 精製水 残量 【0070】 上記毛髪処理用組成物A-1と、6%過酸化水素水(・・・)とを、1:1の質量比で混合し、実施例1の毛髪明度向上剤を調製した。 ・・・ 【0073】 <試験例2> 以下に示す各成分を常法により混合して、第1染着用組成物B-1(茶色)を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の誤記と認める。) [第1染着用組成物B-1(茶色)] エタノール 0.5 セチルアルコール 5.0 ステアリルアルコール 1.0 ベヘニルアルコール 0.5 ジプロピレングリコール 3.0 ベンジルアルコール 2.0 ミネラルオイル 3.0 ステアルトリモニウムクロリド 1.0 ベヘントリモニウムクロリド 0.5 ラノリン 0.5 ヒドロキシエチルセルロース 0.3 トリエタノールアミン 0.2 エチドロン酸 0.1 HC青2 0.11 HC黄2 0.041 HC赤3 0.053 塩基性茶17 0.277 塩基性茶16,塩基性青99,塩基性青76,塩基性赤76, 塩基性黄57,紫401 各0.143 アルギニン 0.1 L-システイン塩酸塩 0.1 リシン 0.05 ヒスチジン 0.05 メチルパラベン 0.15 プロピルパラベン 0.05 香料 0.6 精製水 残量 【0074】 ・・・ 【0075】 上記毛髪処理用組成物A-1と上記第1染着用組成物B-1(茶色)とを、1:1の質量比で混合し、混合物を得た。得られた混合物と上記6%過酸化水素水とを、1:1の質量比で混合し、実施例2の毛髪色彩調整剤(茶色)を調製した。・・・。」 7 周知例Aの記載事項 本件優先日前である平成25年4月18日に発行された周知例A(特開2013-067597号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 近年、合成染料であるp-フェニレンジアミン系やアミノフェノール系の酸化染料を含む染毛剤が広く用いられている。・・・。 【0003】 しかしながら、酸化染料は、皮膚障害を引き起こすことが知られている。また、生態系に悪影響を及ぼす環境ホルモンであるという指摘や、さらに、発がん性や発アレルギー性等の疑いがあるとの指摘もある。・・・。 【0004】 一方、染毛剤の染料成分として、酸化染料よりも安全性が高いとされている、HC染料や塩基性染料等が知られている。従来からHC染料及び塩基性染料は、例えば、2~3週間程度の色持ちを目的としたヘアマニキュアや、1週間に数回用いることにより色を付与し続けるカラーリンスやカラートリートメントとして用いられていた。・・・。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ・・・。しかしながら、HC染料や塩基性染料は、化学反応することなく毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点があった。 ・・・ 【0013】 HC染料は公知の「HC」を接頭辞として有する染料であり、分子径が小さい染料であるために毛髪の内部に浸透して水素結合や分子間引力によって染着し、より深みのある発色を付与する。その具体例としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.8、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.16、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.9、HCイエローNo.12、等が挙げられる。・・・。 【0014】 ・・・。塩基性染料は、水溶液中で陽イオンになるために、毛髪表面のケラチンタンパクのマイナス部分とイオン結合することにより染着する。その具体例としては、例えば、ベーシックブルー7(・・・)、ベーシックブルー16(・・・)、ベーシックブルー22(・・・)、ベーシックブルー26(・・・)、ベーシックブルー99(・・・)、ベーシックブルー117、ベーシックバイオレット10(・・・)、ベーシックバイオレット14(・・・)、ベーシックブラウン16(・・・)、ベーシックブラウン17(・・・)、ベーシックレッド2(・・・)、ベーシックレッド12(・・・)、ベーシックレッド22(・・・)、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76(・・・)、ベーシックレッド118(・・・)、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー28(・・・)、ベーシックイエロー57(・・・)、ベーシックイエロー87、ベーシックブラック2(・・・)等が挙げられる。・・・。」 第5 申立理由についての当審の判断 当審は、上記「第3」の「1」に概要を示した、申立人が申し立てている本件特許を取り消すべき理由(申立理由)は、理由がないものと判断した。その判断の詳細は以下のとおりである。 なお、申立理由についての検討に先立って、本件優先日前の染毛料組成物に関する技術常識を確認する。 1 本件優先日前の染毛料組成物の技術常識について 上記「第4」に摘記した各甲号証及び周知例の記載事項によれば、本件優先日前の染毛料組成物に関する技術常識として、以下のことが認められる。 従来から用いられてきた染毛料組成物である、酸化染料と酸化剤(過酸化水素等)を含む酸化染毛剤は、皮膚障害を引き起こしたり毛髪の脱色・染色の際に毛髪に損傷を与えるという問題があった(甲3の【0002】、甲4の【0002】、周知例Aの【0002】~【0003】)。 一方、直接染料である塩基性染料やHC染料は、酸化染毛剤と比べると、安全性が高く、毛髪の損傷は小さいが、染毛力や染着力が劣り、染着力が比較的優れた塩基性染料の配合量を多くして染毛力を高めようとすると、皮膚への染着(地肌汚れ)が懸念されること、シャンプー堅牢性等が不十分である(色落ちし易い)こと、染毛料の処理時間が正規時間を超過する「オーバータイム」時の変色も多いこと、等の課題があった(甲3の【0002】、【0006】~【0007】、甲4の【0002】、周知例Aの【0004】及び【0006】)。 2 申立理由について (1)甲1に記載された発明 上記「第4」の「1」に摘記した甲1の記載事項によれば、甲1には、次のア~ウの事項が記載されていると認められる。 ア 従来、カチオン染料は、非常に鮮やかな色調を呈するが、加水分解や光に対して堅牢性が不十分、還元性又は酸化性条件下では安定性が不十分、貯蔵安定性が不十分、といった問題があったところ、甲1に係る「本発明」は、洗浄、光、シャンプー及び擦りに関して良好な堅牢特性を有する濃染により特徴付けられ、還元性又は酸化性染色条件下で十分な安定性を呈する、有機材料を染色するための、鮮やかな染料を提供すること、を解決しようとする課題とするものであること(【0002】、【0005】)。 イ (a)式 【化1】 [図:0001384202000018.jpg] で表される染料; (b)式 【化2】 (式は省略。) 及び 【化3】 (式は省略。) で表される化合物群から選択される少なくとも1種の染料; 及び (c)以下 (c1)次の式 【化5】 (式は省略。) で表される四級アンモニウム塩、 (c2)次の式 【化6】 (式は省略。) で表されるイミダゾリウム塩、 (c3)次の式 【化7】 (式は省略。) で表される四級ジアンモニウム塩、 から選択される四級アンモニウム塩; を含んでいる毛髪染色用組成物(【請求項1】)。 上記成分(a)が、式 【化8】 [図:0001384202000019.jpg] に対応している、毛髪染色用組成物(【請求項3】)。 ウ 上記イに記載された毛髪染色用組成物の具体例として、次の染料等の成分を含有する「染料エマルション」を調製し、脱色ヒト毛髪に適用した後に、濯ぎ洗いしたところ、良好な堅牢性を有する赤みを帯びたブラウンの染色であったこと(【0124】:実施例6)。 0.05%の染料ベイシックブルー124 0.15%のベイシックブルー99 0.07%のベイシックブラウン17 0.04%のベイシックイエロー57 0.15%のベイシックブラウン16 0.01%のベイシックレッド76 0.01%のベイシックレッド51 0.01%のHCレッドBN 0.01%のHCレッド3 0.01%の3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール 0.05%のHCブルー2 0.5%のポリクォターニウム-10 0.5%のアミノプロピルジメチコン (含有量の単位は重量%である(【0105】)。) 上記ウの事項から、実施例6の「染料エマルション」について、特に染料成分等に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 ≪甲1発明≫ 「染料ベイシックブルー124を0.05重量%、 ベイシックブラウン16を0.15重量%、 ベイシックブラウン17を0.07重量%、 HCブルー2を0.05重量%、 ベイシックブルー99を0.15重量%、 ベイシックレッド51を0.01重量%、 ベイシックレッド76を0.01重量%、 ベイシックイエロー57を0.04重量%、 HCレッドBNを0.01重量%、 HCレッド3を0.01重量%、 3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノールを0.01重量%、 ポリクォターニウム-10を0.5重量%、 アミノプロピルジメチコンを0.5重量% 含有する、染料エマルション。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「染料エマルション」は、毛髪を染色するために毛髪に直接に適用される組成物であり(甲1の【0124】を参照。)、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、「本発明」の「染毛料組成物」の製造方法として、カラーリンス又はカラートリートメントの場合には、水相に油相を入れて攪拌し乳化を行う(すなわち、エマルションとする)旨が記載されていることから(【0055】)、甲1発明の「染料エマルション」は、本件発明1の「染毛料組成物」に相当する。 本件明細書には、本件発明1における 「成分A:下記式(1)で表される染料 【化1】 [図:0001384202000020.jpg] 」 が、「BASIC BLUE 124(ベーシックブルー124)で表記される化合物」であることが記載され(【0016】)、「近年、青色染料であるベーシックブルー(Basic Blue)124を配合した染毛料組成物が知られている(特許文献2、3)。」と記載され(【0005】)、ここで引用された「特許文献3」は「特開2015-17109号公報」であり(【0006】)、甲1と同じ文献である。 また、上記の式(1)の構造は、甲1の請求項3に記載された、 「式 【化8】 [図:0001384202000021.jpg] 」 の構造と、表記の一部が異なるものの、一致している。 そうすると、甲1発明における「染料ベイシックブルー124」は、本件発明1における「成分A:下記式(1)で表される染料(当審注:式は省略する。)」に相当する。 そして、「重量%」と「質量%」は割合を示す数値としては同じ値になるから、甲1発明における「染料ベイシックブルー124」の含有量「0.05重量%」は、本件発明1における「成分Aの含有量が0.01~0.5質量%」の条件を満たしている。 甲1発明における「ベイシックブラウン16」及び「ベイシックブラウン17」は、それぞれ本件発明1における「成分B」の染料である「塩基性茶16」及び「塩基性茶17」に相当し、甲1発明における上記2種の染料の合計量「0.22重量%」は、本件発明1における「成分Bの含有量が0.1~1.0質量%」の条件を満たしている。 甲1発明における「HCブルー2」は、本件発明1における「成分D」である「HC青2」に該当する。 甲1発明における「ポリクォターニウム-10」は、カチオン性ポリマーの一種であるカチオン性セルロース誘導体であるから(例えば、甲2の[0067]を参照。)、本件発明1における「成分E」の選択肢である「カチオン性ポリマー」に該当し、また、甲1発明における「アミノプロピルジメチコン」は、本件発明1における「成分E」の選択肢である「シリコーン油」に該当するものである。 なお、本件発明1は、成分A~D以外の染料及び成分E以外の他の成分を含有することを排除していないから、甲1発明に「ベイシックブルー99」等の他の染料やその他の成分が含まれることは、本件発明1との相違点にはならない。 そうすると、本件発明1と甲1発明の間には、以下の一致点及び相違点があるものと認められる。 <一致点> 「下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Dと、下記成分Eとを及びを含有し、 前記成分Aの含有量が0.01~0.5質量%であり、 前記成分Bの含有量が0.1~1.0質量%である 染毛料組成物。 成分A:下記式(1)で表される染料 【化1】 [図:0001384202000022.jpg] 成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれた染料 成分D:HC青2 成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれた成分」 <相違点1> 本件発明1は、「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれた染料」である「成分C」を含有し、「成分Cの含有量が0.01~0.5質量%」であるのに対し、甲1発明は当該「成分C」を含有していない点。 <相違点2> 「成分D」の含有量が、本件発明1では「0.2~1.5質量%」であるのに対し、甲1発明では当該範囲の下限値よりも少ない「0.05重量%」である点。 <相違点3> 染毛料組成物が、本件発明1では「カラーリンス又はカラートリートメントである」とされているのに対し、甲1発明では「染料エマルション」とされている点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1(「成分C」の有無及びその含有量)について a.甲1の記載からの動機付けについて 甲1には、染料エマルションをはじめとする毛髪染色用組成物が含有し得る染料として、HC染料についての一般的な説明は何ら記載されておらず、「HC黄4」及び「HC黄2」の例示やこれらを含有する組成物の処方例等も全く記載されていない。 そうすると、このような甲1の記載のみからでは、当業者が、甲1発明の染料エマルションに、さらに「HC黄4」及/又は「HC黄2」を含有させることを動機付けられるとはいえない。 そこで、甲2~甲6の記載及び本件優先日前の技術常識も考慮した場合の甲1発明の染料エマルションに「HC黄4」及/又は「HC黄2」を加えることの想到容易性について、以下、検討する。 b.甲2の記載を参照した場合の動機付けについて 甲2には、「グリオキシル酸又はその誘導体と直接染料を含む、毛髪の再成形及び直接染色のための、すぐ使える組成物」([0001])が含有し得る染料の例が数多く列記されている([0046]~[0051])。それらの染料のうち、適切なカチオン性染料の選択肢中に、本件発明1における「成分A」の「式(1)で表される染料」に該当する「塩基性青124」、並びに、本件発明1における「成分B」の「塩基性茶16」及び「塩基性茶17」に該当する染料が挙げられており([0051])、また、好適な非イオン性染料の非常に多くの選択肢の中には、本件発明1における「成分C」の「HC黄4」及び「HC黄2」に該当する染料、並びに、本件発明1における「成分D」の「HC青2」に該当する染料も含まれている([0049])。 しかしながら、甲2には、本件発明1における「成分A」、「成分B」、「成分C」及び「成分D」に該当する各染料を組み合わせることについて、何らの記載も示唆もなされおらず、同「成分C」及び「成分D」に該当する非イオン性染料については、好ましい染料の例([0050])の中にも含まれておらず、積極的に選択すべきものとはされていないし、「塩基性茶17」に該当する染料を含有する組成物の実施例の記載はあるものの([0106]、表1-2、実施例1-2.8)、同「成分A」、「成分C」及び「成分D」に該当する染料のいずれか1つでも含有する組成物の実施例の記載もなく、複数の染料を併用した組成物の実施例さえも全く記載されていない。 そうすると、甲2の記載を参照したとしても、当業者が、甲1発明の染料エマルションに、さらに「HC黄4」及び/又は「HC黄2」を含有させることを動機付けられるとはいえない。 c.甲3~甲6の記載について 甲3、甲4、甲5及び甲6には、本件発明1における「成分B」の「塩基性茶16」及び/又は「塩基性茶17」に該当する染料、及び/又は、本件発明1における「成分D」の「HC青2」に該当する染料とともに、本件発明1における「成分C」の「HC黄4」及び/又は「HC黄2」に該当する染料を、本件発明1で規定する「0.01~0.5質量%」の範囲内の量で含有している染毛料組成物が、実施例等として具体的に記載されている(特に、甲3の【0093】【表1】~【0094】【表2】に記載の実施例1~3、5~6、9~16、同【0095】【表3】に記載の比較例8、【0096】に記載の実施例17~19、甲4の【0016】に記載の実施例-23及び実施例-24、甲5の【0064】、【0069】【表1】~【0070】【表2】に記載の実施例1~18、並びに、甲6の【0073】~【0075】に記載の実施例2の「毛髪色彩調整剤(茶色)」を参照。)。 しかしながら、甲6に記載された実施例2の「毛髪色彩調整剤(茶色)」については、甲6が本件特許の出願日よりも後に発行された文献であって、当該実施例2の記載が本件優先日前の技術常識を示したものであるとは認められないから、本件発明1と甲1発明との相違点に係る構成の想到容易性の判断の根拠とすることはできない。 また、甲3、甲4及び甲5には、上記のとおり、「塩基性茶16」及び/又は「塩基性茶17」に該当する染料、及び/又は、「HC青2」に該当する染料とともに、「HC黄4」及び/又は「HC黄2」に該当する染料を、本件発明1で規定する「0.01~0.5質量%」の範囲内の量で含有している染毛料組成物の実施例等が記載されているが、本件発明1における「成分A」に該当する染料については全く記載されていない。そしてそのため、当該「成分A」に該当する染料に、「成分B」及び「成分D」に該当する染料とともに、「成分C」に該当する各染料を組み合わせた特定の組成とすることについても、何らの記載も示唆もない。 d.本件優先日前の技術常識も考慮した想到容易性について 「HC黄4」及び/又は「HC黄2」に該当する染料は、「塩基性茶16」、「塩基性茶17」及び「HC青2」に該当する各染料と同様に、染毛料組成物が含有し得る多数の周知の染料の一選択肢にすぎない(例えば、甲2の[0049]、甲3の【0053】、甲4の【0006】、甲5の【0041】、周知例Aの【0013】~【0014】を参照。)。 そして、染毛料組成物に含有させる染料の種類やその組合せは、所望する特性(効果)を考慮した選択が要求されるところ、「HC黄4」及び/又は「HC黄2」に該当する染料を含有させることが強く推奨され、かつ、当該染料の含有量を「0.01~0.5質量%」の範囲内とするべき、といったような技術常識が本件優先日前に存在したとも認められない。 そうすると、染毛料組成物が含有し得る多数の周知の染料のうちの一選択肢に過ぎない「HC黄4」及び/又は「HC黄2」に該当する染料を、本件発明1で規定する「0.01~0.5質量%」の範囲内の量で、「塩基性茶16」及び/又は「塩基性茶17」に該当する染料、及び/又は、「HC青2」に該当する染料とともに含有する染毛料組成物の例が、単に幾つかの公知文献に記載されているからといって、特定の複数の染料を組み合わせた組成を有する甲1発明の「染料エマルション」において、甲1に例示さえない「HC黄4」及び/又は「HC黄2」を、あえて含有するものとし、さらにその含有量を「0.01~0.5質量%」という特定の範囲の条件を満たすものとすることは、当業者において動機付けられるとはいえない。 e.相違点1の判断のまとめ したがって、甲1発明において、「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれた染料」である「成分C」を含有させ、そしてその量を「0.01~0.5質量%」とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)相違点2(「成分D」の含有量)について 甲1発明の「染料エマルション」においては、本件発明1における「成分D」の「HC青2」に該当する「HCブルー2」の含有量は、本件発明1で特定する「成分D」の含有量である「0.2~1.5質量%」の範囲の下限値「0.2質量%」の4分の1の「0.05重量%」にとどまる。 そして、上記「(ア)a.」で説示したように、甲1には、HC染料についての一般的な説明さえも記載されていないし、染料エマルションをはじめとする毛髪染色用組成物における「HCブルー2」の含有量に関する説明も記載されておらず、これを「0.2~1.5質量%」の範囲内とする根拠となり得る記載は認められない。 また、染毛料組成物における各染料の含有量にも、所望する特性(効果)を考慮した選択が求められるところ、「HC青2」に該当する染料の含有量を「0.2~1.5質量%」の範囲内とすることが強く推奨されるというような技術常識が本件優先日前に存在したとも認められない。 そうすると、甲1発明の「染料エマルション」において、含有されている特定の複数の染料のうち、他の染料の含有量は変化させずに、あえて「HCブルー2」の含有量のみについて、「0.05重量%」から、その4倍以上の量として、「0.2~1.5質量%」の範囲内のものに変更することを、当業者に動機付ける根拠は見いだせない。 したがって、甲1発明において、「成分Dの含有量」を「0.2~1.5質量%」とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)相違点についての判断のまとめ 上記「(ア)」及び「(イ)」で説示したとおり、甲1発明において、本件発明1との間の相違点1及び相違点2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たとはいえないから、相違点3についての検討をするまでもなく、本件発明1の特定事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 本件発明1の効果について (ア) 上記「イ」にて説示したとおり、甲1発明において、本件発明1との間の相違点1及び相違点2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たとはいえないが、仮に、上記各相違点の構成を当業者が採用する動機付けがあるといえたとしても、以下のとおり、本件発明1は当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 (イ) 甲1の【0124】には、甲1発明を認定する根拠とした実施例6の染料エマルションについて、脱色ヒト毛髪に適用した後、濯ぎ洗いしたところ、良好な堅牢性を有する赤みを帯びたブラウンの染色であった旨が記載されているから、仮に、甲1発明において、相違点1~3の構成を採用した場合においても、上記の実施例6の染料エマルションと同じ程度の良好な堅牢性を有する染色の効果が奏されることを、当業者が予測し得るにすぎない。 (ウ) これに対し、本件明細書の【0009】には、本件発明の染毛料組成物の効果として、(a)十分に優れた毛髪に対する染色性を有するため、カラーリンスやカラートリートメントとして用いる場合には、少ない回数の使用によって、十分に毛髪の染色効果を発揮し得ること、(b)皮膚への染着性が低く、使用時の指や頭皮の着色が極めて少ないこと、が記載されている。 そして、上記の(a)及び(b)の効果については、本件明細書の【0063】~【0064】、【0066】~【0068】、【0070】~【0081】、【0084】~【0094】に記載されている、本件発明の実施例及び比較例のカラーリンス(又はカラートリートメント)としての染毛料組成物についての7つの評価試験の結果のうち、「試験1:染色性の評価」及び「試験2:皮膚汚れ(染着性)の評価」の結果により、具体的に裏付けられている。 (エ) すなわち、本件明細書の【0078】【表1】及び【0079】【表2】に記載の「実施例1-1」~「実施例1-23」の染毛料組成物は、「成分A」~「成分D」に該当する染料を様々な量で含有しているが、いずれもが本件発明1の特定事項を全て備えており、各染料の含有量の条件も全て満たしているところ、「染色性」の評価結果は「◎(優れる):非常に濃く染色されている」又は「○(良好):十分に染色されている」であり、同時に、「皮膚汚れ」の評価結果が「◎(優れる):皮膚汚れが全く残らない」又は「○(良好):皮膚汚れが僅かに残る」であることから、上記「(ウ)」の(a)及び(b)の効果を両立できることが示されている。 また、上記の「実施例1-1」~「実施例1-23」の染毛料組成物については、「試験3:堅牢性の評価」及び「試験4:放置時間延長時の変色抑制の評価」の結果も、全て「○(良好)」であったことが確認されている。 (オ) 一方で、本件明細書の【0080】【表3】及び【0081】【表4】に記載の「比較例1-1」~「比較例1-11」の染毛料組成物のうち、「成分A」又は「成分B」のいずれかを含有しない「比較例1-1」、「比較例1-2」、「比較例1-5」、「比較例1-6」では、「皮膚汚れ」の評価結果は「◎(優れる)」又は「○(良好)」であるが、「染色性」の評価結果は「×(不良):染色が薄い」であり、上記の(a)及び(b)の効果を両立できないことが示されている。 また、「比較例1-7」~「比較例1-11」の染毛料組成物は、「成分A」(「ベーシックブルー124」)を含有していないが、その代わりに、同じく青色の塩基性染料である「塩基性青75」を0.05質量%含有しているところ、「染色性」の評価結果は「◎(優れる)」又は「○(良好)」であるものの、「皮膚汚れ」の評価結果は「×(不良):皮膚汚れが明らかに残る」であり、やはり上記の(a)及び(b)の効果を両立できないことが示されている。 そして、「比較例1-3」及び「比較例1-4」の染毛料組成物は、「成分C」又は「成分D」のいずれか一方を含有していないところ、「染色性」の評価結果は「○(良好)」であり、「皮膚汚れ」の評価結果は「◎(優れる)」であったが、「堅牢性」及び「放置時間延長時の変色抑制」の評価結果は、いずれも「×(不良)」であったことが示されている。 (カ) さらに、本件明細書の【0028】には、青色の染料として、塩基性染料である「成分A」とHC染料である「成分D」を組み合わせることにより、染色速度を適切に調節できるため、ダメージ毛(例えば、ブリーチ毛)に対する染色ムラが生じにくくなる、という本件発明が奏する効果も記載されており、当該効果も、本件明細書に記載の実施例及び比較例の染毛料組成物についての評価試験の結果により具体的に裏付けられている。 すなわち、「試験7:ダメージ毛に対する色ムラの評価」では、「ブリーチ処理した毛束」に対し、「試験1:染色性の評価」と同様の試験を行ったところ(【0091】~【0092】)、本件発明1の特定事項を全て充足する「実施例1-11」の染毛料組成物の評価結果は、「○(良好):毛束全体が均一に染まっている」であったのに対し、「実施例1-24」の染毛料組成物は、「成分C」の含有量が0.007質量%、「成分D」の含有量が0.07質量%であり、本件発明1で規定する「成分C」及び「成分D」の下限値に満たないところ、同評価結果は「×(不良):毛束全体が均一に染まっておらず、色ムラがある」であったとされている(【0093】)。 (キ) 上記の「(ウ)」~「(カ)」によれば、本件発明1の全ての特定事項を備えた染毛料組成物は、 (a)十分に優れた毛髪に対する染色性を有するため、カラーリンス又はカラートリートメントとして用いる場合には、少ない回数の使用によって、十分に毛髪の染色効果を発揮し得る (b)皮膚への染着性が低く、使用時の指や頭皮の着色が極めて少ない (c)堅牢性が良好である (d)放置時間延長時の変色抑制が良好である (e)ダメージ毛に対する色ムラが生じにくい という複数の効果を併せ奏するものであると認められる。 (ク) 甲1~甲6のいずれにも、甲1発明の染毛料組成物について、「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれた染料」を「0.01~0.5質量%」の量で含有させ、「HC青2」の含有量を「0.2~1.5質量%」に増量することを含めて、本件発明1の特定事項を全て備えたものとした場合に、上記の(a)~(e)の効果を併せ奏することを、当業者が予測し得る根拠となるような記載は見出せない。 そして、本件発明1の特定事項を全て備えた染毛料組成物とした場合に、上記の(a)~(e)の効果を併せ奏することを、当業者が予測し得る根拠となるような技術常識が、本件優先日前に存在したとも認められない。 (ケ) したがって、本件発明1が奏する上記の(a)~(e)の効果は、当業者が予測し得ない顕著なものである。 エ 甲1の実施例7から引用発明を認定した場合について 上記「(1)」では、甲1の実施例6に基づいて甲1発明を認定したが、申立書(特に、42~46頁)の記載からみて、申立人は、甲1の実施例6又は実施例7を引用発明とする旨を主張をしているものと解される。 そこで、甲1の実施例7に基づいて引用発明を認定した場合について検討するに、同実施例7の染料エマルションは、同実施例6の染料エマルションと比較すると、「0.01%のベイシックブルー26」及び「0.01%のベイシックブルー75」を追加的に含有する点でのみ相違し、他の成分組成は全て同じであり、脱色ヒト毛髪に適用した後に、濯ぎ洗いしたところ、良好な堅牢性を有する赤みを帯びたブラウンの染色であったことも、実施例6の染料エマルションと共通している。 そうすると、甲1の実施例7に基づいて引用発明を認定した場合でも、本件発明1との間の一致点及び相違点は、甲1の実施例6に基づいて認定した甲1発明の場合と同じになるから、相違点の想到容易性についての判断も、本件発明1の効果についての判断も、甲1発明の場合と同じになる。 オ 申立人の主張について (ア)甲3に基づくHC黄4(成分C)の追加配合の想到容易性について 申立人は、甲3の【0013】には、「塩基性染料に対して更にHC染料を併用すると、強い染着力と十分なシャンプー堅牢性が得られる」及び「塩基性染料に対してHC染料を組合わせると、(中略)塩基性染料の過剰配合に起因する地肌汚れを抑制できる」と記載され、甲3の【0015】では、塩基性茶16、塩基性茶17、HC青2及びHC黄4の4種類の染料を限定列挙して、「染料自体の安定性が良い」ことを指摘しており、甲3の染毛料組成物は、本件明細書に記載の「放置時間延長時」と同じ概念である「オーバータイム時」の変色抑制を技術的課題の一つとしていることから(【0007】)、甲3の上記【0015】の「染料自体の安定性」も、オーバータイム時の変色抑制と関連付けて理解されるものであることを主張し、甲3の【0095】表3の比較例8も参照しつつ、これらの甲3の記載は、課題・効果の面からも、甲1の実施例6、7に係る染料エマルションに、HC黄4を追加配合し、本件発明1に該当する染毛料とすべきことを示唆している旨を主張している(申立書の43頁1~16行)。 しかしながら、上記「イ(ア)」において説示したように、甲1には、HC染料についての一般的な説明は何ら記載されていないし、「HC黄4」の例示やこれらを含有する組成物の処方例等も全く記載されていない。 一方、甲3において、オーバータイム時の変色抑制等の課題を解決し得る染毛料組成物として開示されているのは、(A)「塩基性青75」、(B)「塩基性茶16」及び「塩基性茶17」から選ばれる1種以上、(C)「HC青2」、及び、(D)「HC黄4」という、特定の染料成分の組み合わせを必須とする染毛料組成物(【0009】)である。 そうすると、甲3において、「HC黄4」が、「塩基性茶16」、「塩基性茶17」及び「HC青2」とともに、染料自体の安定性が良いことが指摘されているからといって、(A)「塩基性青75」等との組み合わせという技術思想を離れて、甲3に記載された染毛料組成物を構成する複数の染料成分の中から、甲1には例示さえない「HC黄4」のみを抽出し、これを別異の特定の複数の染料成分の組み合わせを有する甲1発明の「染料エマルション」に、あえて追加配合することは、当業者において動機付けられるとはいえない。 なお、申立人が指摘する甲3の比較例8の染毛料組成物は、「HC黄4」に代えて「HC黄2」を含有することにより、オーバータイム時の変色抑制等の効果が劣ることを示しているから、甲1発明の「染料エマルション」に「HC黄2」を追加配合する動機付けを妨げるものである。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 (イ)甲3及び甲5に基づくHC青2(成分D)の増量の想到容易性について 申立人は、甲3の実施例3では、HC青2を1.5質量%含有し、甲5の多数の実施例では、HC青2を軒並み0.5~0.7質量%配合していることから、甲1の実施例6、7におけるHC青2の含有量を、この程度に増量することは容易である旨を主張している(申立書の43頁20~27行)。 しかしながら、上記「イ(イ)」で説示したように、甲1に、染料エマルションをはじめとする毛髪染色用組成物における「HCブルー2」の含有量の説明はなく、これを「0.2~1.5質量%」の範囲内とする根拠となり得る記載は認められないし、染毛料組成物において、「HC青2」に該当する染料の含有量を「0.2~1.5質量%」の範囲内とすることが強く推奨されるというような技術常識が本件優先日前に存在したとも認められない。 そうすると、幾つかの文献に、「HC青2」の含有量が「0.2~1.5質量%」の範囲内である染毛料組成物が記載されているからといって、甲1発明の「染料エマルション」において、含有されている特定の複数の染料のうち、他の染料の含有量は変化させずに、あえて「HCブルー2」の含有量のみについて、「0.05重量%」から、その4倍以上の量である「0.2~1.5質量%」の範囲に変更することは、当業者において動機付けられるものではない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 (ウ)本件発明の課題・効果とHC青2(成分D)の増量の想到容易性について 申立人は、本件発明の課題・効果という観点からのHC青2の増量の想到容易性について、概ね次のように主張をしている(申立書の44頁16行~45頁14行)。 a.本発明の出願人は、審査過程の意見書において、本件発明1の効果として、 (α)高い染色性を有しながら皮膚染色性が低い、 (β)放置時間延長時の変色抑制を有する、 の2点を重点的に主張している。 b.(α)の高い染色性と低い皮膚染色性の両立は、古くて新しい周知の課題であり、例えば、甲4の【0002】【背景技術】の項で、各種染料について毛髪染色性と皮膚染色性を論じており、HC染料と塩基性染料は染色力が弱く、逆に皮膚染色性も少ないことを明記している。また、甲5の【0006】でも、HC染料が地肌を汚染しにくいことを指摘している。一方、本件発明の実施例では、染色性も◎(非常に濃く染色されている)の評価が多いが、他種の直接染料を用いた場合との対比を伴わない純然たる官能評価であるため、「濃く染色されている」の程度が不明であり、信頼性と客観性を欠くから、(α)の効果の主張は、本発明の進歩性を担保しない。 c.(β)放置時間延長時の変色抑制の効果に関し、甲5の【0011】でいうオーバータイムとは、本発明の放置時間延長時と同じ意味であり、同じく甲5の【0011】では「HC染料を増量する利点の一つとして、染毛料組成物の繰り返しの使用、及び/又は、オーバータイム使用による染毛力の向上が挙げられる。」と指摘している。 d.してみれば、本件発明1は、上記の(α)及び(β)に関する各甲号証の開示に基づいて、直接染料として汎用的なHC染料と塩基性染料のみを配合し、染毛力の不足に関して、HC染料、特に、成分DであるHC青2の含有量を、例えば甲3や甲4の実施例にならって、0.2~1.5質量%に増量することで対応しようとしたものであり、課題・構成・効果において、新規な点はない。 しかしながら、染毛料組成物において、塩基性染料等の直接染料の含有量の増加による染毛力の向上と皮膚への染着(地肌汚れ)の改善という、二律背反の課題が存在すること自体は、上記「1」でも確認したように、本件優先日前の技術常識であるが、本件明細書に記載の「試験1:染色性の評価」については、他種の直接染料を使用した場合との対比を伴わない官能評価であっても、上記「ウ」の「(ウ)」~「(オ)」で説示したように、本件発明1の特定事項を全て備えた実施例と、「成分A」又は「成分B」のいずれかを含有しない比較例とでは、染色性に優劣の差があるということが明確に示されている。 また、甲5では、HC染料を増量する利点に、オーバータイム使用による染毛力の向上が挙げられるとしている一方、増量したHC染料の析出抑制が重要な課題であることが記載されており(【0007】、【0011】)、当該課題を解決する手段として、(A)液状のエステル油と(B)「化1」の一般式で示されるアルキルアミドアミン(塩)の組み合わせが記載されている(【請求項1】、【0013】~【0014】)。 そうすると、甲5に、HC染料を増量することによるオーバータイム使用による染毛力の向上が記載されているとしても、(A)液状のエステル油と(B)「化1」の一般式で示されるアルキルアミドアミン(塩)の組み合わせという技術思想を離れて、多数のHC染料の中から、特に「HC青2」に着目し、甲3や甲4の実施例の「HC青2」の含有量も参照して、甲1発明の「染料エマルション」における特定の複数の染料のうち、他の染料の含有量は変えず、あえて「HCブルー2」の含有量のみを、「0.05重量%」から、その4倍以上の量である「0.2~1.5質量%」の範囲の量に変更することは、当業者において動機付けられるとはいえない。 そして、「HC青2」である「成分D」の含有量を「0.2~1.5質量%」の範囲内のものとするだけでなく、「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれた染料」である「成分C」を含有させ、そしてその量を「0.01~0.5質量%」とするとともに、「成分A」及び「成分B」についても、それぞれ本件発明1で特定する範囲の含有量で併用する、という手段を採用することによって、上記「ウ」の「(キ)」~「(ク)」で説示したように、 (a)十分に優れた毛髪に対する染色性を有するため、カラーリンス又はカラートリートメントとして用いる場合には、少ない回数の使用によって、十分に毛髪の染色効果を発揮し得る (b)皮膚への染着性が低く、使用時の指や頭皮の着色が極めて少ない という、上記の二律背反の課題を共に解決できるのみならず、 (c)堅牢性が良好である (d)放置時間延長時の変色抑制が良好である (e)ダメージ毛に対する色ムラが生じにくい という複数の効果を併せ奏するということは、申立人が提出した各甲号証をみても、これらの文献に記載も示唆もされていないし、そのような技術常識が本件優先日前に存在したとも認められない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 カ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、いずれも、本件発明1の特定事項を全て備えており、さらに限定された発明である。 そうすると、上記(2)で説示したとおり、本件発明1が、甲1~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、これと同様の理由により、本件発明1がさらに限定された本件発明2~6についても、甲1~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 申立理由についての当審の判断のまとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲1~甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件請求項1~4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由によって取り消されるべきものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、その他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1~4に係る特許について、結論のとおり決定する。

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2021-700904

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