商標異議申立
2025-900263
タイシ
- 審判番号
- 2025-900263
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2025-027329
- 登録番号
- 6988154
- 請求日
- 2025年12月02日
- 審決日
- 2026年08月18日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【異議申立人】株式会社 ナチュラルサイエンス
- 【異議申立人代理人】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 和彦
- 審判官 駒井 芳子
- 審判官 目黒 潤
- 分類
- T1651.13 -Y (W0103) / T1651.16 -Y (W0103) / T1651.272-Y (W0103)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第6号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6988154号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6988154号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6988154号商標(以下「本件商標」という。)は、「TAISHI」の文字を標準文字で表してなり、令和7年3月14日に登録出願、第1類「化粧品製造用化学品,化粧品の製造に使われる化学剤,スキンケア用化粧品製造用化学品,化粧品及びスキンケア用品の原材料として用いられる化学品,クレンジング用化粧品製造用化学品,化粧品の原料となる化学品,化粧品の成分として用いられる化学品,化粧品・せっけん・香料の製造に使用される化学品」及び第3類「洗顔料,せっけん類,化粧品,歯磨き,香料,薫料,化粧用脱脂綿,化粧用綿棒,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同年11月7日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号、並びに同法第3条第1項第6号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨述べ、証拠方法として、甲第1号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)はじめに
本件商標は、「TAISHI」の文字を標準文字で表示してなるところ、読み方が「タイシ」である(甲1の17)「胎脂」をローマ字表記したものと容易に認識させる語である。
そして、「胎脂」は、高い保湿効果や皮膚のバリア効果を有することから、「胎脂」が有する機能性を模倣すべく、「胎脂」の含有成分を模した成分(以下「胎脂成分」という。)を含む化粧品が各社から多数、製造販売されている(甲1の2、4~8、11~13)。
各社は胎脂成分を配合した化粧品であることを強く訴求しており、「胎脂」は化粧品の品質・効能を表す語として、広く一般的に使用されている。
申立人も、長年にわたって「胎脂」を研究し続け、胎脂成分を配合した化粧品ラインを提供している(甲1の3)。
しかしながら、本件商標「TAISHI」が登録されてしまったため、申立人及び各社の「胎脂」の使用について懸念が生じる事態となっている。
これは、同業界における公正な取引秩序及び流通秩序を維持できないばかりか、これまで申立人及び各社が長年にわたり多大なコストと労力を費やして確立してきた、胎脂成分を配合した化粧品ブランドの存在が脅かされる事態ともいえる。
このように、本件商標「TAISHI」が登録されてしまうことは、胎脂成分を配合した化粧品を提供してブランド形成を図ってきた企業にとっては極めて由々しき問題であって、産業の発展の阻害にもつながり得ることから、商標制度の存在意義にも関わるものと認識している。
申立人は、かかる事態を看過することはできず、同業界における産業の発展に資するべく、本件商標の異議申立てをするに至った。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
化粧品分野の需要者は本件商標「TAISHI」の文字を見た際、直ちに「胎脂」の語を認識すると考えるのが自然である。その理由について以下に述べる。
ア 理由1
本件商標権者(花王株式会社)は、カネボウ化粧品のブランド「KANEBO」から、胎脂成分を配合した化粧品を発売しており(甲1の10、14)、そのブランド名として「TAISHI」(甲1の15)を使用し、その成分の名称として「TAISHI Micro-Lipo」を使用している(甲1の14)。
「胎脂」(タイシ)は、ヒトの新生児の皮膚を覆うロウ様あるいはチーズ様の白色の物質であり、羊水の中の胎児の皮膚を保護する等の役割を果たすことが広く知られている(甲1の9、甲1の18の1~2)。
本件商標権者の研究チームは、「胎脂」の組成を分析し、研究・開発を進めた結果、「胎脂」が有する機能性を模倣した化粧品開発に成功し、上記の化粧品販売に至っている(甲1の15)。
このように、本件商標権者が胎脂成分を配合した化粧品のブランド名として「TAISHI」の文字を使用していることから、「TAISHI」を「胎脂」のローマ字表記として使用している意図は明らかであり、本件商標権者が「胎脂」のローマ字表記として「TAISHI」を使用している以上、それを目にした需要者は「TAISHI」を「胎脂」として認識、理解するのが当然である。
したがって、化粧品分野の需要者は「TAISHI」の文字を見た際に、当然に「胎脂」の語を認識するものといえる。
イ 理由2
化粧品の商品分野では、配合成分をあえて大文字のローマ字表記にしてイメージアップを図る例があり、例えば、「SAKURA」(甲1の19)は桜のエキス、「YUZU」(甲1の20)は柚子から取れる精油、「HYALURONIC ACID」(甲1の21)はヒアルロン酸、「COLLAGEN」(甲1の22)はコラーゲン、「VITAMIN C」(甲1の24)はビタミンC誘導体、「GLUTATHIONE」(甲1の25)はグルタチオンを配合した化粧品、また、「EXOSOME」(甲1の23)はエクソソームを使用した化粧品である。
化粧品分野の需要者は、上記「SAKURA」等を目にした際には当該成分を配合したものであることを認識し、「EXOSOME」を目にした際にはエクソソームを使用したものであることを認識する。
このように、化粧品の商品分野では、配合成分をあえて大文字のローマ字表記にすることが一般的に行われているため、本件商標「TAISHI」についても、胎脂成分を配合した化粧品が多数、販売されていることに鑑みると、化粧品分野の需要者が「TAISHI」に接した際には、胎脂成分を配合したものと理解し、「胎脂」の語を容易に認識するのが自然である。
ウ 理由3
胎脂成分を配合した化粧品が多数、販売されており(甲1の2、4~8、11~13)、各社は胎脂成分を配合していることについて訴求し、それらの広告・説明文において、「(胎脂が)赤ちゃんの肌のバリア機能をケアする」「胎脂には、アレルギーやアトピーの原因にもなる外部からの異物混入を防ぐ肌の「バリア機能」を整える機能があります。また、大人の皮脂より水分保持能力が高く、約3倍も水分を抱え込む力があると言われています。」(甲1の2)、「胎脂は、高い保水力を持ち、赤ちゃんを乾燥や刺激から守る働きがあります。」(甲1の4)、「胎脂は、羊水の中で胎児の皮膚に付着して、未発達の肌を守っているクリーム状の物質。」(甲1の5)、「赤ちゃんの肌を守る胎脂」(甲1の6)、「赤ちゃんの肌を守る胎脂成分」(甲1の8)、「赤ちゃんを守る天然のバリア」(甲1の12)、「胎脂に近い高保湿成分」「肌のバリア機能をサポート!」(甲1の13)といった記載が見られる。
申立人も、長年にわたって「胎脂」を研究し続け、胎脂成分を鋭意開発し、胎脂成分を配合した化粧品の広告・説明文において「胎脂」の文字を使用している(甲1の3,16)。例えば、「赤ちゃんの肌を育てる胎脂」「「胎脂」は天然の保護クリーム!」「お母さんのおなかの中で赤ちゃんの肌にはバターのような胎脂がべったりついてバリアしています。この胎脂は生まれてから24時間以内に消えてしまうため、肌が未熟な赤ちゃんは胎脂成分でバリア機能を補う必要があります。」(甲1の3)、「胎脂は、胎児の表皮に組成し、未成熟な肌のバリア機能を補強する効果があると考えられています。」(甲1の16)などと記載している。
また、胎脂成分が配合された化粧品の広告・商品説明において、例えば、「胎脂成分」、「胎脂をモデルとした保護成分」、「胎脂様成分」(甲1の16)、「胎脂模倣成分」(甲1の5)、「胎脂類似成分」(甲1の11)などの表現が一般的に使用されている。
このような各社及び申立人の「胎脂」の使用態様及び説明文の表記に鑑みると、化粧品業界において、「胎脂」は、一般に新生児の皮膚を覆うクリーム状の物質を意味し、「胎脂」が保湿作用、皮膚保護作用、バリア機能といった性質を有することが需要者に広く知られているといえる。
したがって、化粧品の商品分野において「胎脂」の語が化粧品の品質・効能を表す語として広く知られ、一般的に使用されている状況に鑑みると、化粧品分野の需要者が「TAISHI」を視認した際には、当然に「胎脂」の語を認識するのが自然である。
以上のとおり、化粧品分野の需要者は、「TAISHI」の文字を見た際、直ちに「胎脂」の語を認識すると考えるのが自然であり、化粧品の分野における取引者・需要者は、「TAISHI」が「胎脂」の称呼をローマ字表記したものと認識するため、化粧品の商品分野においては、「TAISHI」の語は「胎脂」の意味合いを一義的に表すと解釈される。
したがって、化粧品やそれに関する商品に「TAISHI」の語を使用した場合、需要者は「胎脂のような保湿作用、皮膚保護作用、バリア機能を有する化粧品」という商品の品質・効能を示す語として理解するにすぎず、「TAISHI」は自他商品識別機能を有しない語である。
「TAISHI」は、「胎脂」のローマ字表記ではあるが、「TAISHI」の読み方は通常は「タイシ」のみであって「胎脂」と音が完全に一致し、上記のように「胎脂」が化粧品の品質・効能を示す語として一般的に理解され、広く使用されている状況に鑑みると、たとえローマ字表記であっても商品の品質・効能を説明するための記述的表示の機能は保持され、需要者は容易に漢字の「胎脂」を認識するといえる。
そうすると、本件商標「TAISHI」をその指定商品中、第1類「化粧品製造用化学品,化粧品の製造に使われる化学剤,スキンケア用化粧品製造用化学品,化粧品及びスキンケア用品の原材料として用いられる化学品,クレンジング用化粧品製造用化学品,化粧品の原料となる化学品,化粧品の成分として用いられる化学品,化粧品・せっけん・香料の製造に使用される化学品」及び第3類「洗顔料,せっけん類,化粧品,歯磨き,香料,薫料」に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、「TAISHI」が「胎脂」の称呼をローマ字表記したものと認識し、商品の品質・効能を表すものとして理解、認識するにすぎない。
したがって、本件商標は、上記商品の品質・効能を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当し、取り消されるべきものである。
また、申立に係る商品において、上記商品以外の第3類「化粧用脱脂綿,化粧用綿棒,つけづめ,つけまつ毛」に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)商標法第3条第1項第6号該当性について
上記のとおり、胎脂成分を配合した化粧品が多数、販売されており(甲1の2~8、11~13)、「胎脂」は化粧品の品質・効能を表す語として、広く一般的に知られ、使用されている実情がある。
また、「TAISHI」は、「胎脂」のローマ字表記ではあるが、「TAISHI」の読み方は通常は「タイシ」のみであって「胎脂」と音が完全に同一であり、上記のように「胎脂」が化粧品の品質・効能を示す語として一般的に理解され、広く使用されている状況に鑑みると、たとえローマ字表記であっても商品の品質・効能を説明するための記述的表示の機能は保持され、需要者は容易に漢字の「胎脂」を認識するといえる。
このため、「胎脂」をローマ字表記した本件商標「TAISHI」は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるため、商標法第3条第1項第6号に該当し、取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、上記1のとおり、「TAISHI」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は一般の辞書等に掲載がなく、また、同じく「タイシ」と称呼するローマ字表記とする語の中には、「大使」「太子」「大志」等複数存在することから、直ちに特定の意味合いを認識させるとはいい難いものである。
そして、「胎脂」の文字が「新生児の身体表面に付着している白い脂肪性物質のこと」(出典:「南山堂医学大辞典 第20版」株式会社南山堂)の意味を有する語であるところ、申立人が提出した証拠によれば、本件商標の指定商品中の「化粧品」を取り扱う業界において、「胎脂」の文字は、これが高い保湿性や皮膚のバリア効果を有することから、同様の効果を持つ商品において、その効能、品質を説明する語として使用され、これを模倣した成分を配合した商品が製造、販売されている事実は認められるものの、ローマ字表記した「TAISHI」が「胎脂」の意味合いをもって、使用されている証拠は見いだせない。
また、当審において職権をもって調査するも、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「TAISHI」の文字が、本件商標の登録査定時に、商品の具体的な品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本件商標の指定商品の取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
そうすると、本件商標は、その構成全体として特定の意味合いを想起させない一種の造語として認識、理解されるとみるのが相当であるから、本件商標をその指定商品について使用しても、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということができず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえ、また、本件商標が商品の品質等を表示するものでない以上、本件商標は、商品の品質の誤認を生じるおそれもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
(2)商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は、上記1のとおり、「TAISHI」の文字を標準文字で表してなるところ、申立人は、「TAISHI」は「胎脂」のローマ字表記であり、「TAISHI」の読み方「タイシ」は、「胎脂」と音が完全に同一で、「胎脂」が化粧品の品質・効能を示す語として一般的に理解され、広く使用されている状況から、ローマ字表記であっても商品の品質・効能を説明するための記述的表示の機能は保持され、需要者は容易に漢字の「胎脂」を認識し、「胎脂」をローマ字表記した本件商標は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ない旨主張する。
しかしながら、「TAISHI」の文字は、「タイシ」と称呼する複数の語のローマ字表記であり、その指定商品との関係において「胎脂」を直ちに認識させるとはいい難いものであって、その構成全体として特定の意味合いを想起させない一種の造語として認識、理解されるとみるのが相当であることは、上記(1)のとおりであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-900263