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特許異議申立

2021-700360

金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む光起電力デバイス

審判番号
2021-700360
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-009006外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6772308
請求日
2021年04月21日
審決日
2023年03月03日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第6772308号発明「金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む光起電力デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6772308号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-24〕、〔25-27〕について訂正することを認める。 特許第6772308号の請求項1-7、12及び21-25に係る特許を維持する。 特許第6772308号の請求項8-11及び13-20、26及び27に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続きの経緯 特許第6772308号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし27に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)12月17日(優先権主張 2013年12月17日 英国、2014年8月5日 英国)を国際出願日とする出願である特願2016-539967号の一部を2019年(平成31年)1月23日に新たな特許出願としたものであって、令和2年10月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人鈴木佐知子(以下「申立人」という。)により請求項1-27に対して特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 令和3年 9月17日付け :取消理由通知 令和3年12月23日 :訂正請求書・意見書(特許権者) 令和4年 2月21日付け :訂正拒絶理由通知 令和4年 4月14日 :手続補正書・意見書(特許権者) 令和4年 6月 7日 :意見書(申立人) 令和4年 9月30日付け :取消理由通知(決定の予告) 令和4年12月28日 :訂正請求書(以下、これによりなされた 訂正を「本件訂正」という。)・意見書 (特許権者) なお、訂正後の請求項1及び25(独立項であって、他の訂正後の請求項は、これらの独立項のいずれかに従属している。)は、令和4年9月30日付け取消理由通知(決定の予告)において取消理由を通知しなかった当時の請求項10の構成をすべて含むものであるとともに、当該当時の請求項10に係る発明に対して申立人に意見書を提出する機会が既に与えられていることから、当審は、特許法第120条の5第5項ただし書の規定に基づき、申立人に対し、意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1)請求項1に係る訂正事項(以下「訂正事項1」という。) 請求項1に「(b)有機化合物である不動態化剤を含み、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している」とあるのを、「(b)ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤を含み、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しており、 金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、」に訂正する。 請求項1の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。 (2)請求項2に係る訂正事項(以下「訂正事項2」という。) 請求項2に「不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合が、ハロゲン結合、カルコゲン-金属結合、窒素-金属結合、及びリン-金属結合から選択される」とあるのを、「不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合が、ハロゲン結合である」に訂正する。 請求項2の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。 (3)請求項8に係る訂正(以下「訂正事項3」という。) 請求項8を削除する。 (4)請求項9に係る訂正(以下「訂正事項4」という。) 請求項9を削除する。 (5)請求項10に係る訂正(以下「訂正事項5」という。) 請求項10を削除する。 (6)請求項11に係る訂正(以下「訂正事項6」という。) 請求項11を削除する。 (7)請求項12に係る訂正(以下「訂正事項7」という。) 請求項12に「不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合しているか、又は不動態化剤が、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり、有機化合物の分子が、硫黄-金属結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中の金属カチオンに結合している、請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体。」とあるのを、「不動態化剤の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合している、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体。」に訂正する。 請求項12の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。 (8)請求項13に係る訂正(以下「訂正事項8」という。) 請求項13を削除する。 (9)請求項14に係る訂正(以下「訂正事項9」という。) 請求項14を削除する。 (10)請求項15に係る訂正(以下「訂正事項10」という。) 請求項15を削除する。 (11)請求項16に係る訂正(以下「訂正事項11」という。) 請求項16を削除する。 (12)請求項17に係る訂正(以下「訂正事項12」という。) 請求項17を削除する。 (13)請求項18に係る訂正(以下「訂正事項13」という。) 請求項18を削除する。 (14)請求項19に係る訂正(以下「訂正事項14」という。) 請求項19を削除する。 (15)請求項20に係る訂正(以下「訂正事項15」という。) 請求項20を削除する。 (16)請求項21に係る訂正(以下「訂正事項16」という。) 請求項21に「請求項1から20のいずれか一項」とあるのを、「請求項1から7及び12のいずれか一項」に訂正する。 請求項21の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。 (17)請求項22に係る訂正(以下「訂正事項17」という。) 請求項22に「請求項1から21のいずれか一項」とあるのを、「請求項1から7、12、及び21のいずれか一項」に訂正する。 請求項22の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。 (18)請求項25に係る訂正(以下「訂正事項18」という。) 特許請求の範囲の請求項25に「(b)有機化合物である不動態化剤を含み、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を製造するための方法であって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当な有機化合物である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理する」とあるのを、「(b)ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤を含み、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を製造するための方法であって、ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含み、 金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンであり、 ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することが、 ヨードペンタフルオロベンゼンを含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置すること、又は 金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液にヨードペンタフルオロベンゼンを添加することを含む」に訂正する。 (19)請求項26に係る訂正(以下「訂正事項19」という。) 請求項26を削除する。 (20)請求項27に係る訂正(以下「訂正事項20」という。) 請求項27を削除する。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1-24〕、〔25-27〕について請求されたものである。 2 訂正についての当審の判断 (1)訂正事項1(請求項1に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の要否 訂正事項1は、以下の内容からなる。 (i)訂正前の請求項1に「有機化合物」とあったものを、「ヨードペンタフルオロベンゼン」に限定する訂正。 (ii)訂正前の請求項1の「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」について、「金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである」と限定する訂正。 よって、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記(i)の訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の「・・・「有機化合物」という用語には、・・・ヨードペンタフルオロベンゼンなどの過ハロゲン化有機化合物などの化合物・・・が含まれる。」(【0041】)及び実施例1(【0247】・【0248】・図1等の記載に照らして、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 上記(ii)の訂正は、本件明細書等の段落【0146】の「金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってよい。したがって、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、典型的に、式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。」との記載に照らして、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項1に係る請求項1は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2(請求項2に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合」について、「ハロゲン結合、カルコゲン-金属結合、窒素-金属結合、及びリン-金属結合から選択される」ものとされていたのを、選択事項を削減して、「ハロゲン結合である」ものに限定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項2は、本件明細書等の「・・・報告されている最も強いハロゲン結合ドナーの1つは、ヨードペンタフルオロベンゼンである・・・」(【0034】)との記載に照らして、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項2に係る請求項2は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3(請求項8に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は、請求項8を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項3は、請求項8を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項3に係る請求項8は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4(請求項9に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、請求項9を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項4は、請求項9を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項9に係る請求項4は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)訂正事項5(請求項10に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、請求項10を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項5は、請求項10を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項10に係る請求項5は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6(請求項11に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、請求項11を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項6は、請求項11を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項6に係る請求項11は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)訂正事項7(請求項12に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、以下の内容からなる。 (i)訂正前の請求項12に「請求項1から11のいずれか一項」とあるのを、「請求項1から7のいずれか一項」に限定する訂正。 (ii)訂正前の請求項12に「不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合しているか、又は不動態化剤が、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり、有機化合物の分子が、硫黄-金属結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中の金属カチオンに結合している」とあったのを、「又は」の後ろにある選択肢を削除する訂正。 (iii)上記(ii)の結果、請求項12に残った選択肢である「不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合している」について、訂正事項1によって「不動態化剤」が「ヨードペンタフルオロベンゼン」に限定されたことに伴い、当該「ヨードペンタフルオロベンゼン」が「ハロゲン結合ドナー化合物」である(本件明細書等の【0212】)ことを踏まえると、当該残った選択肢に係る記載のうち「不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子が」という記載が冗長となることから、これを「不動態化剤の分子が」という記載に整理する訂正。 上記(i)及び(ii)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記(iii)の訂正は、明瞭でない記載を釈明するものである。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記(i)の訂正は、引用する請求項の数を削減するだけのものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 上記(ii)及び(iii)の訂正は、不動態化剤である「ヨードペンタフルオロベンゼン」が「ハロゲン結合ドナー化合物」であることが、上記アのとおり、本件明細書等の【0212】に記載されていることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項7に係る請求項12は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)訂正事項8(請求項13に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項8は、請求項13を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項8は、請求項13を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項8に係る請求項13は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (9)訂正事項9(請求項14に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項9は、請求項14を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項9は、請求項14を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項9に係る請求項14は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (10)訂正事項10(請求項15に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項10は、請求項15を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項10は、請求項15を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項10に係る請求項15は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (11)訂正事項11(請求項16に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項11は、請求項16を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項11は、請求項16を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項11に係る請求項16は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (12)訂正事項12(請求項17に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項12は、請求項17を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項12は、請求項17を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項12に係る請求項17は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (13)訂正事項13(請求項18に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項13は、請求項18を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項13は、請求項18を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項13に係る請求項18は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (14)訂正事項14(請求項19に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項14は、請求項19を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項14は、請求項19を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項14に係る請求項19は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (15)訂正事項15(請求項20に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項15は、請求項20を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項15は、請求項20を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項15は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項15に係る請求項20は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (16)訂正事項16(請求項21に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項16は、引用する請求項の数を削減するものであって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項16は、引用する請求項の数を削減するだけのものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項16は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項16に係る請求項21は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (17)訂正事項17(請求項22に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項17は、引用する請求項の数を削減するものであって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項17は、引用する請求項の数を削減するだけのものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項17は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項17に係る請求項22は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (18)訂正事項18(請求項25に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項18は、以下の内容からなる。 (i)訂正前の請求項25に「有機化合物」とあったのを、「ヨードペンタフルオロベンゼン」に限定する訂正。 (ii)上記(i)に伴い、訂正前の請求項25における「不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理する」のを何で行うのかについて、「金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当な有機化合物」で行うとあったのを、「ヨードペンタフルオロベンゼン」で行うと整合させる訂正。 (iii)上記(ii)の結果、なされることとなった「ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理する」ことについて、「ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理する」ことが「ヨードペンタフルオロベンゼンを含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置すること、又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液にヨードペンタフルオロベンゼンを添加することを含む」ことであると限定する訂正。 (iv)訂正前の請求項25の「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」について、「金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである」と限定する訂正。 上記(i)、(iii)及び(iv)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記(ii)の訂正は、明瞭でない記載を釈明するものである。 よって、訂正事項18は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記(i)、(ii)及び(iv)の訂正は、訂正事項1と同じ訂正事項であるから、上記(1)イと同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 上記(iii)の訂正は、本件明細書等の段落【0217】の「不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、典型的に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に不動態化剤を配置することを含む。不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、不動態化剤を含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置することを含むことができる。」、及び、段落【0218】の「不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成の前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液に不動態化剤を添加することを含むこともできる。」との記載に照らして、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項18は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項18は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項18に係る請求項25は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (19)訂正事項19(請求項26に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項19は、請求項26を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項19は、請求項26を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項19は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項19に係る請求項26は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (20)訂正事項20(請求項27に係る訂正事項)について ア 訂正の目的の適否 訂正事項20は、請求項27を削除することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項20は、請求項27を削除する訂正であるから本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項20は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項20に係る請求項27は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 よって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 なお、請求項1ないし27は、特許異議の申立てがなされた請求項であるから、当該各請求項についての訂正には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 第3 本件発明 本件訂正後の請求項1ないし27に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明27」といい、これらのうち削除されていない各発明を総称して、「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。 【本件発明1】 (a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び (b)ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤 を含み、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しており、 金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I): [A][B][X]3(I) のペロブスカイトであり、 式中、 [A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、 [B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、 [X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、半導体。 【本件発明2】 不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合が、ハロゲン結合である、請求項1に記載の半導体。 【本件発明3】 不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のカチオン又はアニオンが、配位不飽和である、請求項1又は2に記載の半導体。 【本件発明4】 不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明5】 不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に自己集合層を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明6】 不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の欠陥部位にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明7】 不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の配位不飽和なカチオン又は配位不飽和なアニオンに結合している、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明8】 (削除) 【本件発明9】 (削除) 【本件発明10】 (削除) 【本件発明11】 (削除) 【本件発明12】 不動態化剤の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合している、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明11】 (削除) 【本件発明12】 (削除) 【本件発明13】 (削除) 【本件発明14】 (削除) 【本件発明15】 (削除) 【本件発明16】 (削除) 【本件発明17】 (削除) 【本件発明18】 (削除) 【本件発明19】 (削除) 【本件発明20】 (削除) 【本件発明21】 結晶性ドメインを含む連続的な層を含む、請求項1から7及び12のいずれか一項に記載の半導体。 【本件発明22】 請求項1から7、12、及び21のいずれか一項に記載の半導体を含む、半導体デバイス。 【本件発明23】 光電子デバイスである、請求項22に記載の半導体デバイス。 【本件発明24】 光電子デバイスが発光デバイスである、請求項23に記載の半導体デバイス。 【本件発明25】 (a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び (b)ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤 を含み、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を製造するための方法であって、 ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含み、 金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I): [A][B][X]3(I) のペロブスカイトであり、 式中、 [A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、 [B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、 [X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンであり、 ヨードペンタフルオロベンゼンで金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することが、 ヨードペンタフルオロベンゼンを含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置すること、又は 金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液にヨードペンタフルオロベンゼンを添加することを含む、方法。 【本件発明26】 (削除) 【本件発明27】 (削除) 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 令和4年4月14日付け手続補正書により補正された令和3年12月23日付け訂正請求書による訂正(以下「先の訂正」という。)後の請求項1-9、11-27に係る特許に対して、当審が令和4年9月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。なお、請求項10には、取消理由が通知されていない。 1 明確性要件違反 先の訂正後の請求項15、17及び26の「不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されて」いるとの記載が明確でないから、当該各請求項及びこれらのいずれかの従属項である請求項16、18-24に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 実施可能要件違反 (1)先の訂正後の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、先の訂正後の請求項1-9、11-14、20-25及び27並びに15及び16に記載された発明(不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している態様に係るものであって、不動態化剤がヨードペンタフルオロベンゼンに限定されていないものである。)を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、当該各発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)先の訂正後の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、先の訂正後の請求項17-19及び26並びに15及び16に記載された発明(不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない態様に係るものである。)を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、当該各発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 サポート要件違反 (1)先の訂正後の請求項1-9、11-14、20-25及び27並びに15及び16に記載された発明(不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している態様に係るものであって、不動態化剤がヨードペンタフルオロベンゼンに限定されていないものである。)は、発明の詳細な説明に係る発明であるとはいえないから、当該各発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)先の訂正後の請求項17-19及び26並びに15及び16に記載された発明(不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない態様に係るものである。)は、発明の詳細な説明に係る発明であるとはいえないから、当該各発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 新規性欠如及び進歩性欠如 (1)先の訂正後の請求項25に係る発明は、本件特許に係る出願の最先の優先日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内または外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証(以下「第」及び「号証」を省いて表記する。他の証拠も同様である。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)先の訂正後の請求項17-19に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)甲各号証 甲1:特開2008-227330号公報 甲2:佐藤幹男他、「オリゴチオフェンを用いた有機-無機ナノ複合材料の構築(II)-ハロゲン種の効果-」、Polymer Preprints, Japan, 2010年, Vol.59, No.2, 3Pa097, p.3909 甲3:J.-Y. Jeng et al, CH3NH3PbI3 Perovskite/Fullerene Planar-Heterojunction Hybrid Solar Cells, Advanced Materials, 2013年6月17日, Vol. 25, pp. 3727-3732 甲4:Kuan-Lin Wu et al, J.-Y. Jeng et al, High Efficiency and Robust Performance of Organo Lead Perovskite Solar Cells with Large Grain Absorbers Prepared in Ambient Air Conditions, Chemistry Letters, 2015年12月19日, 2015, Vol.44, No.3, p. 321-323 5 甲各号証に記載された事項及び甲各号証に記載された発明 (1)甲1について ア 本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、下記の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。 (ア)「【請求項1】 発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物を含み、 前記発光層と親和層とが隣接して配置され、該親和層が前記有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する化合物を含んでいることを特徴とする発光素子。」 「【請求項4】 発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物を含み、 前記発光層の有機マトリックス材料中に、有機無機層状ペロブスカイト化合物粒子が分散していることを特徴とする発光素子。」 「【技術分野】」 【0001】 「本発明は、発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物を含んでいる発光素子に関する。」 「【0021】 「発光体である有機無機層状ペロブスカイト化合物(RNH3)2MX4の有機アンモニウム分子RNH3としては、脂肪族アンモニウム分子、芳香族アンモニウム分子、脂環式アンモニウム分子、発色団を有する有機アンモニウム分子などの各種の有機アンモニウム分子が適用可能である。また、一種類の有機アンモニウム分子のみならず、二種類の有機アンモニウム分子を選択可能である。好ましい脂肪族アンモニウム分子としては、プロピルアンモニウム(C3H7NH3)、ブチルアンモニウム(C4H9NH3)、ペンチルアンモニウム(C5H11NH3)、ヘキシルアンモニウム(C6H13NH3)などが挙げられる。好ましい脂環式アンモニウム分子としては、シクロヘキセニルエチルアンモニウム(C6H9C2H4NH3)などが挙げられる。好ましい芳香族アンモニウム分子としては、フェネチルアンモニウム(C6H5C2H4NH3)などが挙げられる。好ましい発色団を有する有機アンモニウム分子としては、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、フェニレン誘導体などを導入した化合物が挙げられる。」 【0022】 「無機成分であるMX4としては、Mとして第14族元素および遷移金属が適用可能であり、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ユウロピウム(Eu)が好ましい。また、Xとして第17族元素であるハロゲンが適用可能である。」 【0023】 「発光層4の作製には、通常の薄膜作製に用いられる各種の作製法が適用可能であり、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、インクジェット法などの塗布法および真空蒸着法などが挙げられる。塗布法では、有機無機層状ペロブスカイト化合物をアセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解した溶液を用いることにより、各種の塗布法が適用可能である。真空蒸着法では、有機無機層状ペロブスカイト化合物結晶を用いて成膜することができる。」 【0024】 「親和層3を形成する物質としては、少なくとも一種類以上の有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する官能基を含む物質が適用可能であり、少なくとも一種類以上のカチオン性の官能基を有する物質が適用可能である。例えば、アンモニウムイオンなどの官能基を有する化合物が挙げられる。親和層3のカチオン性官能基と、有機無機層状ペロブスカイト化合物の無機層7の構成成分MX42-とがプラス電荷とマイナス電荷を有することから、静電相互作用により強固に結合し、親和層3と発光層4とがより強固に結合した構造となる。その結果、基板1上に一様に発光層4を形成することが可能となる。」 【0025】「また、親和層3を形成する物質としては、有機無機層状ペロブスカイト化合物の有機成分RNH3の少なくとも一部の構造を有する物質が適用可能である。発光層4の有機無機層状ペロブスカイト化合物の有機成分と、親和層3の有機成分が類似の構造を有することにより、疎水性相互作用によって発光層4と親和層3との結合力が向上する。その結果、基板1上に一様に発光層4を形成することが可能となる。例えば、有機無機層状ペロブスカイト化合物の有機成分にブチルアンモニウムを用いた場合は、ブタン、ブチルアミン、ブタノール、4-アミノブタノール、ブチルジアミン、ヨウ化ブチルアルコールアンモニウム、臭化ブチルアルコールアンモニウム、塩化ブチルアルコールアンモニウムなどの物質が適用可能である。」 【0026】 「親和層3の積層数として、単層あるいは複数層からの構成が適用可能であるが、単層であることが好ましい。親和層3を単層に成膜する方法としては、通常の単層膜形成法が適用可能であり、例えば、LB法、ディップコート法、スピンコート法などが挙げられる。」 【0027】 「基板1上に親和層3を所定の形状にパターニングし、その上に発光層4を形成することで、所定の形状の親和層3上に発光層4を成膜することが可能となる。パターニングの方法としては、一般的に用いられる成膜方法が適用可能であり、インクジェット法やフォトリソグラフィー法などの塗布法が好ましい。」 【0063】 「<実施例1> 親和層に4-アミノフェノールハイドロブロマイド、発光層に(C6H9C2H4NH3)2PbBr4、基板に石英基板を用いて、無機層と親和層とが隣接した構造の発光素子を作製した。」 【0064】 「4-アミノフェノールに臭化水素酸を加えて、4-アミノフェノールハイドロブロマイドを合成した。4-アミノフェノール水溶液を石英基板にスピンコートすることで、基板上に親和層を形成した。この親和層の上に(C6H9C2H4NH3)2PbBr4をスピンコートすることで発光層とした。」 【0065】 「比較として、親和層を含まずに、基板上に発光層を形成した発光素子を、石英基板上に(C6H9C2H4NH3)2PbBr4をスピンコートすることで作製した。」 【0066】 「作製した発光素子のPLスペクトルを図5に示す。図5において、実線で示すスペクトルが親和層を含む発光素子であり、点線で示すスペクトルが親和層を含まない発光素子である。354nmの波長のUV光を照射すると、407nmにPL発光を示すピークが確認でき、親和層を含む発光素子ではPL強度が約1.5倍増強した。」 【0067】 「<実施例2> 親和層にフェニルトリエトキシシラン、発光層に(C6H9C2H4NH3)2PbBr4、基板に石英基板を用いて、無機層と親和層とが隣接した構造の発光素子を作製した。」 【0068】 「親和層の作製にはゾルゲル法を用い、エタノールにフェニルトリエトキシシランおよび塩酸を加えて撹拌することでゾル液を作製した。このゾル液を石英基板にスピンコートして薄膜とした後、60℃で6時間乾燥させて親和層を形成した。この親和層の上に(C6H9C2H4NH3)2PbBr4をスピンコートすることで発光層とした。」 【0069】 「作製した発光素子の吸光スペクトルを図6に示す。図6において、吸光スペクトルからは、270nm付近に現れるSiO2特有の吸収は確認できず、親和層の厚みが非常に薄いことが読み取れる。354nmの波長のUV光を照射することで得たPLスペクトルを図7に示す。図7において、(C6H9C2H4NH3)2PbBr4に特有の407nmからのPL発光が確認でき、親和層を含まない素子と比較して、PL強度は向上した。」 【0073】 「<実施例4> 発光層として式(C6H5C2H4NH3)2PbBr4の有機無機層状ペロブスカイト化合物と有機マトリックス材料にポリビニルカルバゾールを用いて、図8に示したような構成の発光素子を作製した。有機無機層状ペロブスカイト化合物のエネルギーギャップは3.0eV、有機マトリックス材料のエネルギーギャップは3.5eVである。」 【0074】 「基板11には石英基板を用いた。有機無機層状ペロブスカイト化合物粒子15は、有機無機層状ペロブスカイト化合物結晶をボールミルで粉砕することで作製した。この有機無機層状ペロブスカイト化合物粒子15とポリビニルカルバゾールを1,2-ジクロロエタンに加えてよく分散した後、前記基板11にスピンコート法による成膜を行い、発光素子を得た。」 【0075】 「比較のために、DMFに溶解した式(C6H5C2H4NH3)2PbBr4の有機無機層状ペロブスカイト化合物をスピンコート法によって薄膜状として発光層16を形成した発光素子を作製した。」 【0076】 「354nmの波長のUV光を照射すると、いずれの発光素子からも、有機無機層状ペロブスカイト化合物に由来する412nmにピークを有するPL発光を得た。有機無機層状ペロブスカイト化合物粒子を分散した素子では、薄膜状の素子と比較して室温におけるPL強度が向上し、粒子が均一に分散していることで発光素子全体からの均一な発光が得られた。」 ・図1は次のものである。 [図:0001398210000001.jpg] (イ)「有機無機層状ペロブスカイト化合物」(【請求項1】)が「半導体」として機能することは、本件優先日前に技術常識であったから、上記「有機無機層状ペロブスカイト化合物」は、「半導体」といえる。 イ 上記アによれば、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、甲1発明の認定に用いた甲1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある(以下同じ。)。 「発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物を含み、前記発光層と親和層とが隣接して配置され、該親和層が前記有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する化合物を含んでいる発光素子において、(【請求項1】) 前記Mとして第14族元素および遷移金属が適用可能であり、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ユウロピウム(Eu)であり、(【0022】) 前記親和層を形成する物質が有機成分を有するものであって、(【0025】) 前記親和層を形成する物質が、一種類以上の有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する官能基を含む物質であり、一種類以上のカチオン性の官能基であるアンモニウムイオンなどの官能基を有する化合物であって、前記親和層のカチオン性官能基と、有機無機層状ペロブスカイト化合物の無機層の構成成分MX42-とがプラス電荷とマイナス電荷を有することから、静電相互作用により強固に結合し、親和層と発光層とがより強固に結合した構造となっているものであって、(【0024】) 前記親和層を形成する物質として、4-アミノフェノールを用いてもよい、(【0063】、【0064】) 有機無機層状ペロブスカイト化合物である半導体。(上記ア(イ))」 ウ また、甲1には、甲1発明を製造方法的に表現した下記の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されているとも認められる。 「発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物を含み、前記発光層と親和層とを隣接して配置し、該親和層が前記有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する化合物を含んでいる発光素子に用いる有機無機層状ペロブスカイト化合物である半導体を製造する方法において、(【請求項1】) 前記親和層を形成する物質が有機成分を有するものであって、(【0025】) 前記親和層を形成する物質が、一種類以上の有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する官能基を含む物質であり、一種類以上のカチオン性の官能基であるアンモニウムイオンなどの官能基を有する化合物であって、前記親和層のカチオン性官能基と、有機無機層状ペロブスカイト化合物の無機層の構成成分MX42-とがプラス電荷とマイナス電荷を有することから、静電相互作用により強固に結合し、親和層と発光層とがより強固に結合した構造となっているものであって、(【0024】) 前記親和層を形成する物質として、4-アミノフェノールを用いてもよく、(【0063】、【0064】) 前記親和層を成膜する方法としては、通常の単層膜形成法が適用可能でありスピンコート法が挙げられ、(【0026】) 前記発光層4の作製には、通常の薄膜作製に用いられる各種の作製法が適用可能であり、スピンコート法などの塗布法が挙げられ、(【0023】) 前記親和層の上に発光層を形成した、(【0027】) 有機無機層状ペロブスカイト化合物である半導体を製造する方法。(上記ア(イ))」 (2)甲3について ア 本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3には、下記の事項が記載されている。(訳は当審が作成した。) (ア)「CH3NH3PbI3 Perovskite/Fullerene Planar-Heterojunction Hybrid Solar Cells」(タイトル) (当審訳:CH3NH3PbI3 ペロブスカイト/フラーレン プレーナーヘテロ接合ハイブリッド太陽電池) (イ)「Figure 5e,f present the HR-SEM images of the film formed by spin-casting (8000 rpm) the CH3NH3PbI3 perovskite N,N-dimethylformamide (DMF) solution (equimolar CH3NH3I and PbI2) on the preheated glass/ITO/PEDOT:PSS substrate (60 ℃ for 5min). The results show distinguishing features compared to those in Figure 5a-d. In Figure 5e, the CH3NH3PbI3 perovskite film exhibits densely interconnected crystalline strips on the glass/ITO/PEDOT:PSS substrate at a magnification of 20 000x. As shown in Figure 5f at a magnification of 100 000x, the crystal sizes are approximately 150-200 nm in diameter, that is, larger than those in Figure 5d. The height AFM image (Figure 5h) exhibits a surface morphology distinct from that in Figure 5g. The CH3NH3PbI3 perovskite film has a higher contact area in the PHJ and a suitable channel to transport charge carriers configured as interconnected crystalline strips.」(3731頁左欄11-25行) (当審訳:図5e,fは、CH3NH3PbI3ペロブスカイトN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(等モルのCH3NH3IとPbI2)を予熱したガラス/ITO/PEDOT:PSS基板(60℃、5分)にスピンキャスト(8000rpm)することにより形成した膜のHR-SEM画像を示している。この結果は、図5a-dのものと比較して、際立った特徴を示している。図5eでは、CH3NH3PbI3ペロブスカイト膜は、倍率20000×でガラス/ITO/PEDOT:PSS基板上で密に相互接続した結晶性ストリップを示した。図5fに示すように、結晶の大きさは直径約150-200nmであり、図5dよりも大きい。高さ方向のAFM像(図5h)は、図5gとは異なる表面形状を示している。CH3NH3PbI3ペロブスカイト膜は、PHJにおける接触面積が高く、結晶ストリップが相互に接続された電荷キャリアの輸送に適したチャネルを有していることがわかる。) (ウ)「CH3NH3PbI3 was synthesized by mixing CH3NH3I and lead iodide (PbI2)(Showa Chemical Industry Co., Ltd.) at 1:1(0.8:2.3g) equimolar ratio in γ-butyrolactone(Aldrich)(15.8mL, 14.9wt% solution) or anhydrous N,N-dimethylformamide(DMF)(Aldrich)(17.2wt% solution) at 60℃, stirring for 12 h inside a nitrogen-filled glove box with oxygen and moisture levels<1 ppm.」(3732頁左欄19-24行) (当審訳:CH3NH3PbI3は、酸素及び湿分1ppm未満の窒素充填されたグローブボックス内で、γ-ブチロラクトン(15.8mL,14.9wt%溶液)あるいは無水のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich)(17.2wt%溶液)中、CH3NH3I及びヨウ化鉛(PbI2)(昭和化学工業株式会社)を1:1(0.8:2.3g)等モルで60℃において12時間混合することにより合成された。) (エ)「Figure 2a illustrates the device configuration and Figure 2b shows the energy levels of the layers. Prior to the device fabrication, the ITO/glass substrates were sequentially cleaned by ultrasonic treatment in detergent, deionized water, acetone, and isopropyl alcohol. The glass/ITO/PEDOT:PSS substrates were preheated at 60 ℃ for 5 min prior to spin-casting CH3NH3PbI3 γ-butyrolactone solution (14.9 wt%) at 6000 rpm for 30 s. The preheating treatment of the substrate ensures the solvent evaporation is fast and inhibits coarsening of the crystals. The film becomes darker after annealing at 100 ℃ for 15 min.」(3732頁左欄33-42行) (当審訳:図2aにデバイスの構成を、図2bに各層のエネルギー準位を示す。デバイス作製に先立ち、ITO/ガラス基板を洗剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコール中で超音波処理し、順次洗浄した。ガラス/ITO/PEDOT:PSS基板は、CH3NH3PbI3γ-ブチロラクトン溶液(14.9wt%)を6000rpmで30秒間スピンキャストする前に60°Cで5分間予熱処理した。100℃で15分間アニールすると、膜の色が濃くなる。) (オ)「The C60(30nm)(>99.5%, Aldrich), PCBM(25 nm) ( > 99.5%, Solenne, Netherlands), ICBA(30 nm)(>99.5%, Solenne, Netherlands), BCP(10 nm)(Aldrich), and Al(100 nm) were thermally deposited on the substrate inside a vacuum chamber (10 -6 Torr).」(3732頁左欄45-49行。なお、「PCBM)」の「)」は明らかな誤記であると認められるので、省いて摘記した。) (当審訳:C60(30nm)(>99.5%,Aldrich),PCBM)(25nm)(>99.5%,Solenne,Netherlands),ICBA(30nm)(>99.5%,Solenne,Netherlands),BCP(10nm)(Aldrich),Al(100nm)を、真空チャンバー(10-6Torr)内で基板上に熱蒸着した。) C (カ)Figure 2(a)は次のものである。 「 [図:0001398210000002.jpg] 」 (当審訳: [図:0001398210000003.jpg] ) (キ)Figure 5(e)-(h)は次のものである。 「 [図:0001398210000004.jpg] 」 (ク)「CH3NH3PbI3ペロブスカイト」が「半導体」として機能することは、原出願の最先の優先日前に技術常識であったから、上記「CH3NH3PbI3ペロブスカイト」は、「半導体」といえる。 イ 甲3に記載された技術的な事項 (ア)上記ア(カ)(Figure 2(a))より、CH3NH3PbI3(ドナー)及びC60(アクセプタ)を含み、ペロブスカイト/フラーレンのヘテロ接合を備える太陽電池が、みてとれる。 また、上記ア(オ)及び同(カ)(Figure 2(a))から、当該図中の「C60(アクセプタ)」は、「C60(30nm)、PCBM(25nm)及びICBA(30nm)」より構成されるもの、と理解できる。 (イ)上記ア(イ)の記載を踏まえて、上記ア(キ)の図5(f)を見ると、 a CH3NH3PbI3(ドナー)表面(ヘテロ接合界面)には、CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒が多数存在すること。 b 当該CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒の間に隙間があること。 がみてとれる。 また、上記ア(イ)によれば、当該CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒の大きさは、直径約150nm-200nmであると認められる。 (ウ)上記ア(オ)より、「CH3NH3PbI3(ドナー)」上に、「C60(アクセプタ)」を熱蒸着する工程を、理解できる。 ウ 甲3に記載された発明 (ア)上記ア及びイより、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「CH3NH3PbI3(ドナー)及びC60(アクセプタ)を含み、ペロブスカイト/フラーレンのプレーナーヘテロ接合ハイブリッド太陽電池であって、(上記ア(ア)) C60(アクセプタ)は、C60(30nm)、PCBM(25nm)及びICBA(30nm)より構成され、(上記イ(ア)) CH3NH3PbI3(ドナー)上に、C60(アクセプタ)を熱蒸着し、(上記イ(ウ)) CH3NH3PbI3(ドナー)表面(ヘテロ接合界面)には、CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒が多数存在し、当該CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒の間に隙間があり、(上記イ(イ)) 前記結晶粒の大きさは、直径約150-200nmである、(上記イ(イ)) プレーナーヘテロ接合ハイブリッド太陽電池。(上記イ(ア))」 (イ)また、甲3には、上記(ア)の「プレーナーヘテロ接合ハイブリッド太陽電池」を製造するための次の方法の発明(以下「甲3方法発明」という。)も記載されているものと認められる。 「CH3NH3PbI3(ドナー)及びC60(アクセプタ)を含み、ペロブスカイト/フラーレンのプレーナーヘテロ接合ハイブリッド太陽電池を製造するための方法であって、(上記ア(ア)) C60(アクセプタ)は、C60(30nm)、PCBM(25nm)及びICBA(30nm)より構成され、(上記イ(ア)) CH3NH3PbI3(ドナー)上に、C60(アクセプタ)を熱蒸着し、(上記イ(ウ)) CH3NH3PbI3(ドナー)表面(ヘテロ接合界面)には、CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒が多数存在し、当該CH3NH3PbI3(ドナー)結晶の結晶粒の間に隙間があり、(上記イ(イ)) 前記結晶粒の大きさは、直径約150-200nmである、(上記イ(イ))方法。」 第5 当審の判断 1 明確性要件違反について (1)本件訂正により、明確でない記載を含む旨指摘されていた請求項15、17及び26が削除され、さらに、先の訂正後において当該各請求項のいずれかに従属していた請求項16、18-24のうち、請求項21-24は、上記の削除された請求項を引用しないようにされるとともに、その余の請求項が削除された。 よって、当該取消理由は解消した。 (2)申立人は、次のとおり主張するが、いずれも失当である。 ア 申立人は、特許登録時の請求項1(従属する請求項2-16、20-24も同様。)について、「不動態化剤」という記載と、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内のアニオン又はカチオンに「化学的に結合」しているという記載の意味が曖昧である旨主張する。 しかしながら、本件発明1には「不動態化剤」が「ヨードペンタフルオロベンゼン」であることが特定されたため、「不動態化剤」の意味は明確である。また、「化学的に結合」の意味は、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の【0033】に、「「化学的に結合している」という用語は、本明細書で使用される場合、化学結合が間にある分子、原子又はイオンから選択される2つの種を指し、超分子化学結合によって結合している分子、原子又はイオンから選択される2つの種への言及が含まれる。」と記載されており、その記載中、「化学結合」との用語が技術用語として確立していることに照らせば、明確である。 本件発明1に従属する本件発明2-8、12、21-24も同様である。 イ 申立人は、特許登録時の請求項17(従属する請求項18及び19も同様。)について、「不動態化剤」という記載と、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに「化学的に結合していない」という記載の意味が不明確である旨主張するが、当該各請求項は、本件訂正により削除された。 ウ 申立人は、特許登録時の請求項25及び26(これらに従属する請求項27も同様。)について、請求項25に対しては上記アと同様の主張をし、請求項26に対しては上記イと同様の主張をするが、本件発明25には「不動態化剤」が「ヨードペンタフルオロベンゼン」であることが特定されているため、上記アと同様の議論が成り立つとともに、請求項26及び27は、本件訂正により削除された。 (3)よって、本件発明1-7、12及び21-25は、明確である。 2 実施可能要件違反及びサポート要件違反について (1)本件訂正により、本件発明は、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している態様に係るものについては、不動態化剤がヨードペンタフルオロベンゼンに限定されるとともに、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない態様に係るものについては、削除された。 よって、当該各取消理由は解消した。 (2)申立人は、次のとおり主張するが、いずれも失当である。 ア 申立人は、本件発明3、4及び6における「不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト」について、(i)その中のアニオン又はカチオンが「配位不飽和」であること、(ii)その中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が「金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面にある」こと、(iii)その中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が「金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の欠陥部位にある」ことが、本件訂正明細書等では確認されていない旨主張し、本件発明5及び7における「不動態化剤の分子」について、(iv)「金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に自己集合層を形成する」こと、(v)「金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の配位不飽和なカチオン又は配位不飽和なアニオンに結合している」ことが、やはり、本件訂正明細書等では確認されていない旨主張する。 しかしながら、上記(i)及び(ii)の点は、本件訂正明細書等(実施例1)において、ペロブスカイト表面上に吸着されたIPFBに対して13C NMRの化学シフトをみることにより、IPFBが、CH3NH3PbX3結晶表面に結合するハロゲンを介して吸着されていることが確認されている。上記(iii)-(v)の点は、本件発明では、不動態化剤がヨードペンタフルオロベンゼンに限定されているところ、本件訂正明細書等の【0106】には、「不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルクに入るほど十分小さくてよい。」と記載されるとともに、【0105】には、「第1の態様の不動態化剤は、しばしば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に自己集合層を形成する」と記載されている。 イ 申立人は、特許登録時の請求項8-14(従属項も同様)について、「化学的に結合している」不動態化剤のうち、実施例において具体的に効果が確認されているヨードペンタフルオロベンゼン等以外の不動態化剤については、本件訂正明細書等には、当業者が実施できる程度に記載されていない旨主張するが、本件訂正後の当該各請求項は、請求項12以外の請求項は削除されるとともに、請求項12も不動態化剤が「ヨードペンタフルオロベンゼン」に限定されたことになっている。 また、申立人は、当該各請求項について、「化学結合をしていない」比較例が存在しないから、優れた効果を奏することが確認されていない旨主張する。しかしながら、本件発明の技術的意義は、ペロブスカイト材料における欠陥部位及び表面状態の排除又は不動態化がデバイス効率の改善を可能にすることを見出したことにある(【0006】)から、本件発明の作用効果を確認するためには、不動態化剤を用いた場合とそうでない場合とを比較すれば足りる。そして、そのような比較は、実施例3及び8等でなされている。 ウ 申立人は、特許登録時の請求項15-19(従属項も同様)について、「化学的に結合していない」不動態化剤に係る実施例が存在せず、当該不動態化剤の分子が「金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置され」ていることも確認されていない旨主張するが、本件訂正により当該各請求項は削除された。 エ 申立人は、本件発明21について、その中で特定された「結晶性ドメインを含む連続的な層を含む」ことが、本件訂正明細書等において、背景技術としてその用語が見当たるものの、本件発明21としての説明はなされておらず、また、その層を具体的にどのように形成させたのか、さらには、その層が形成されたことを確認したと考えられる記載もない旨主張する。 しかしながら、本件訂正明細書等の【0005】にもあるとおり、「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」を「結晶性ドメインを含む連続的な層」として製作することは技術常識と認められるところ、その層の表面にヨードペンタフルオロベンゼンを塗布等するのであれば、当該層が「結晶性ドメインを含む連続的な」ものとして維持されることが明らかである。 オ 申立人は、本件発明25について、上記と同様の主張をするが、同様に失当である。 また、申立人は、特許登録時の請求項27及び28についてもるる主張するが、本件訂正により当該各請求項は削除された。 (3)よって、本件訂正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。また、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 3 新規性欠如及び進歩性欠如について (1)上記第4の4のとおり、新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由は、先の訂正後の請求項17-19及び25に係る発明に対してのみ通知されていたところ、本件訂正により、請求項17-19は削除されるとともに、請求項25は、新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由が通知されていなかった先の訂正後の請求項27の発明特定事項を含むものとなった。 したがって、当該各取消理由は解消した。 (2)申立人は、独立項に係る本件発明1に関連する発明である特許登録時における請求項10に係る発明に対して、甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如を主張し、また、独立項に係る本件発明25に関連する発明である特許登録時における請求項27のうち請求項25を引用する部分に係る発明に対して、甲1に記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を主張するが、後記第6のとおり、失当である。 なお、申立人は、特許登録時における上記請求項27に係る発明に対して、甲1のみならず、甲3に記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如をも主張するが、甲3は、もっぱら請求項26を引用する部分に係る発明に対して提出されたものであり、本件訂正によりその部分は削除されている。 (3)よって、本件発明1-7、12、21-24及び25は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の「発光層」に含まれる「式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物」は、本件発明1の「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」に相当する。 イ 甲1発明の「親和層を形成する物質」は「有機成分を有するものであ」るから、当該「親和層を形成する物質」は、本件発明1の「ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤」とは、有機化合物である点で共通する。そして、甲1発明は、「親和層を形成する物質」が備える「カチオン性官能基」が「有機無機層状ペロブスカイト化合物の無機層の構成成分MX42-」と「静電相互作用により強固に結合」するものであるから、当該「親和層を形成する物質」は、本件発明1でいうその「分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している」ものといえる。 ウ 甲1発明の「有機無機層状ペロブスカイト化合物である半導体」は、上記bも踏まえると、有機化合物の分子が、「金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合して」いる「半導体」といえる。 エ 上記アないしウでの検討によれば、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 〔一致点〕 「(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び (b)有機化合物 を含み、有機化合物の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している、半導体。」 〔相違点1〕 有機化合物が、本件発明1は、ヨードペンタフルオロベンゼンである不動態化剤であるのに対して、甲1発明は、有機成分を有する親和層を形成する物質である点。 〔相違点2〕 金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、本件発明1は、「式(I):[A][B][X]3(I)のペロブスカイトであり、式中、[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである」のに対して、甲1発明は、発光層が少なくとも式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される有機無機層状ペロブスカイト化合物からなる点。 (2)判断 ア 相違点1について 甲1発明の有機化合物に該当する「有機成分を有する親和層を形成する物質」は、「一種類以上の有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する官能基を含む物質」であって、その「官能基」としては「一種類以上のカチオン性の官能基であるアンモニウムイオンなどの官能基」が例示されている。 しかしながら、甲1には、上記物質として、相違点1に係る本件発明1の構成のような「ヨードペンタフルオロベンゼン」を用いることは記載も示唆もされていないし、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを用いた半導体の技術分野において、当該ペロブスカイトにヨードペンタフルオロベンゼンを含めるようにすることは、甲2-4にも記載されておらず、技術常識ともいえない。 そのため、甲1発明から出発した当業者は、「有機成分を有する親和層を形成する物質」としてヨードペンタフルオロベンゼンを採用することに容易に至るとはいえない。 イ 相違点2について 甲1発明の「有機無機層状ペロブスカイト化合物」は、「式(RNH3)2MX4(RNH3=有機アンモニウム分子、M=第14族元素または遷移金属、X=ハロゲン)で表される」ところ、当該「有機無機層状ペロブスカイト化合物」の結晶構造は2次元構造である一方、相違点2に係る本件発明1の金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、3次元構造であることが知られている。 そして、甲1発明は、ガラス基板やITOなどの基板と、基板上に作製した有機無機層状ペロブスカイト化合物との間には強い相互作用が生じない(【0007】)という課題を解決するために、有機無機層状ペロブスカイト化合物と結合力を有する化合物を含む親和層を形成するものであるから、有機無機ペロブスカイト化合物は「層状」のものであることが前提となっている。 そのため、甲1発明から出発した当業者は、有機無機ペロブスカイト化合物として相違点2に係る本件発明1の構成の3次元構造からなるものが知られていたとしても、甲1発明に係る有機無機層状ペロブスカイト化合物を3次元構造のものとすることはないというべきであり、甲2ないし甲4をみても、以上の説示が左右されることはない。 ウ 以上については、甲1に記載されたその余の技術的事項をみても左右されることはない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2-7、12、21-24について 本件発明2-7、12、21-24は、本件発明1に従属する請求項であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本件発明25について 本件発明25は、本件発明1に係る半導体を製造する方法を更に限定したものであるから、上記1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1-7、12及び21-25を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1-7、12及び21-25を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項8-11及び13-20、26及び27は、本件訂正により削除されたので、当該各請求項についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700360

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