特許異議申立
2025-700474
基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システム
- 審判番号
- 2025-700474
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-104005
- 登録番号
- 7579916
- 請求日
- 2025年04月25日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東京エレクトロン株式会社
- 【権利者代理人】金本 哲男
- 【権利者代理人】萩原 康司
- 【権利者代理人】扇田 尚紀
- 【権利者代理人】齊藤 隆史
- 【権利者代理人】三根 卓也
- 【異議申立人】奥野 宏美
- 【異議申立人】安達 信夫
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 松永 稔
- 審判官 小川 将之
- 分類
- P1651.55 -Y (H01L) / P1651.536-Y (H01L) / P1651.537-Y (H01L) / P1651.113-Y (H01L) / P1651.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7579916号発明「基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7579916号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7579916号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和2年12月9日(優先権主張 令和1年12月26日、令和2年1月28日)を国際出願日とする特願2021-567196号の一部を、令和5年6月26日に新たな出願としたものであって、令和6年7月9日付け拒絶理由通知書に対して、令和6年9月9日に手続補正がなされ、令和6年10月30日にその特許権の設定登録がされ、同年11月8日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年4月25日に、特許異議申立人 奥野 宏美(以下「申立人1」という。)により、その請求項1、4~6、8、11、12に係る特許に対し特許異議が申し立てられ(以下、申立人1により提出された特許異議申立書を「申立書1」という。)、また、令和7年5年7日に、特許異議申立人 安達 信夫(以下「申立人2」という。)により、その請求項1~12に係る特許に対し、特許異議が申し立てられた(以下、申立人2により提出された特許異議申立書を「申立書2」という。)。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって、
前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、
前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射することと、
前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写することと、を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記レーザ吸収層に対して径方向外側から内側に向けて前記レーザ光を照射し、
前記第2の基板の外周端と、前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端である前記レーザ吸収層の外周端との間から、前記レーザ光の照射を開始する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記重合基板を回転させることと、前記重合基板を径方向に移動させることとを交互に行い、前記レーザ吸収層に対して円環状に前記レーザ光を照射する、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板を洗浄する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板をエッチングする、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板をCMP処理する、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記重合基板を回転させながら前記レーザ光を照射し、
前記重合基板の回転速度は、前記レーザ光が前記レーザ吸収層の径方向外側に照射される場合に比べて内側に照射される場合の方が速く、且つ、前記レーザ吸収層の径方向外側に照射される前記レーザ光の周波数は、内側に照射される前記レーザ光の周波数よりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1の表面膜は酸化膜であり、
前記第2の表面膜は酸化膜である、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板の表面に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写するための基板処理装置であって、
前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、
前記第1の基板の裏面を保持する保持部と、
前記保持部が前記第1の基板を保持した状態で、前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射するレーザ照射部と、
前記保持部を回転させる回転機構と、
前記保持部を径方向に移動させる移動機構と、
前記回転機構、前記移動機構及び前記レーザ照射部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記保持部の回転と、前記保持部の径方向の移動を交互に行い、前記レーザ吸収層に対して円環状に前記レーザ光を照射するように、前記回転機構、前記移動機構及び前記レーザ照射部を制御する、基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記レーザ吸収層に対して径方向外側から内側に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2の基板の外周端と、前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端である前記レーザ吸収層の外周端との間から、前記レーザ光の照射を開始するように、前記レーザ照射部を制御する、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板の表面に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する基板処理システムであって、
前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され、
前記第1の基板の裏面を保持する保持部と、
前記保持部が前記第1の基板を保持した状態で、前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射するレーザ照射部と、
前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写する搬送部と、を有する、基板処理システム。
【請求項12】
前記第2の基板が剥離された前記第1の基板を洗浄する洗浄装置を有する、請求項11に記載の基板処理システム。」
第3 申立人1による申立ての理由の検討
1 申立理由の概要
申立人1は、申立書1において下記の証拠(以下、申立人1が提出した甲第1号証~甲第3号証をそれぞれ甲1-1~甲1-3という。)に基づき、以下の理由を申し立てた。
甲1-1:特開2005-203506号公報
甲1-2:特表2012-531052号公報
甲1-3:特開2000-223681号公報
(1) 申立理由1-1(進歩性欠如)
本件発明1、4~6、8、11、12は、甲1-1に記載された発明、又は、甲1-1及び甲1-2に記載された発明、甲1-1及び甲1-3に記載された発明、甲1-1~甲1-3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、4~6、8、11、12に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。
(2) 申立理由1-2(サポート要件・明確性要件違反、実施可能要件違反)
本件発明1、4~6、8、11、12は、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしておらず、また、本件特許の願書に添付した明細書(以下「明細書」という。)の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1、4~6、8、11、12に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。
2 申立理由1-1(進歩性欠如)
(1) 引用発明
ア 引用発明1-1
(ア) 甲1-1の記載
甲1-1には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装構造体の製造方法に関し、特に、信頼性の高い実装構造体を安価に効率良く製造し得る実装構造体の製造方法に関するものである。また、本発明は、薄膜回路チップなどの薄膜層よりなる被転写体を剥離して、他の基板へ剥離転写する転写技術に関するものである。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態の実装構造体の製造方法について図1及び図2を参照しながら説明する。本実施形態では、第1の基板に設けられた複数の被転写体としての薄膜回路チップを第2の基板に転写する転写方法を利用して、薄膜回路チップを含む実装構造体を製造した例について説明する。
【0033】
図1(A)は、複数の第1の接続端子としての電極パッド120が形成された第1の基板100の一例を示す図である。
【0034】
第1の基板(転写元基板)100は、基礎となる基板110上に、剥離層112、配線層113、薄膜トランジスタ部102及び薄膜トランジスタ部102と後述する第二の基板に形成された配線との電気的接続を図るための第1の接続端子としての電極パッド120が形成された構成を有する。図1(A)中、130は転写単位としての被転写体を示す。なお、本実施形態では被転写体は薄膜回路チップである。
【0035】
図3は、本実施形態に用いられる第1の基板100の上面図である。図3に示すように、第1の基板100には、複数の被転写体130が上下左右に形成されている。また、被転写体130には、一の薄膜トランジスタ部102と複数の電極パッド120が含まれている。
・・・(中略)・・・
【0041】
なお、図1(A)には示されないが、基板110及び剥離層112の性状に応じて、両者の密着性の向上等を目的とした中間層を基板110と剥離層112の間に設けても良い。この中間層は、例えば製造時または使用時において被転写層を物理的または化学的に保護する保護層、絶縁層、被転写層へのまたは被転写層からの成分の移行(マイグレーション)を阻止するバリア層、反射層としての機能のうち少なくとも一つを発揮するものである。
【0042】
また、剥離層112及び配線層113の間には、図示せぬ絶縁膜(例:酸化シリコン)が形成されている。これにより、配線層113の保護が図られると共に、外部との電気的絶縁を保っている。
【0043】
図1(B)は、複数の第2の接続端子としての電極パッド204aが形成された第2の基板200の一例を示す図である。
【0044】
第2の基板(回路基板又は転写先基板)200は、例えばガラス製又は樹脂製の適度な強度を有する基板210上に、配線層212、第1の基板100側の電極パッド120と接続される電極パッド204a及び配線層212を保護する保護膜214を含み構成されている。保護膜214は、例えば、酸化シリコン、樹脂等で構成され、配線層212と外部との電気的絶縁を図る役割も担う。
・・・(中略)・・・
【0046】
図1(C)は、上記のような第1の基板100と第2の基板200との接合工程を示す図である。図1(C)に示すように、第1の基板100と第2の基板200とを接着層131を介してアライメントしながら重ね合わせる。
【0047】
本実施形態では、さらに具体的には、第1の基板100の今回転写対象となる被転写体130に備えられた第1の接続端子としての電極パッド120と、第2の基板200に備えられた第2の接続端子としての電極パッド204aとを当接させることにより行われる。
【0048】
接着層131に用いられる接着剤としては、導電性粒子132を含む異方性導電性ペースト(ACP)が用いられる。このような接着剤は、接着部位に例えばディスペンサ、インクジェット方式を利用した液滴吐出法等により供給される。
・・・(中略)・・・
【0055】
図2(E)は、剥離層112への光照射工程を示す。図2(E)に示すように、第1の基板100と第2の基板200との接合体を第1の基板100側から、転写するべき被転写体130に対応する剥離層203部分に選択的に光Lを照射する。これにより、転写するべき薄膜回路チップ(被転写体130)を支持している剥離層112のみに剥離(層内剥離および/または界面剥離)を生じさせる。
【0056】
剥離層112の層内剥離および/または界面剥離が生じる原理は、剥離層112の構成材料にアブレーションが生じること、また、剥離層112に含まれているガスの放出、さらには照射直後に生じる溶融、蒸散等の相変化によるものである。
【0057】
ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(剥離層112の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することをいい、主に、剥離層112の構成材料の全部または一部が溶融、蒸散(気化)等の相変化を生じる現象として現れる。また、前記相変化によって微小な発泡状態となり、結合力が低下することもある。
【0058】
剥離層112が層内剥離を生じるか、界面剥離を生じるか、またはその両方であるかは、剥離層112の組成や、その他種々の要因に左右され、その要因の1つとして、照射される光の種類、波長、強度、到達深さ等の条件が挙げられる。
【0059】
照射する光Lとしては、剥離層112に層内剥離および/または界面剥離を起こさせるものであればいかなるものでもよく、例えば、X線、紫外線、可視光、赤外線、レーザー光等が挙げられる。
【0060】
そのなかでも、剥離層112の剥離(アブレーション)を生じさせ易く、かつ高精度の局部照射が可能である点で、レーザー光が好ましく、特に、波長100nm~350nmを有するレーザー光が好ましい。このように短波長レーザー光を用いることにより、光照射精度が高められるとともに、剥離層112における剥離を効果的に行うことができる。
・・・(中略)・・・
【0064】
図2(F)は、転写剥離工程を示す図である。図2(F)に示すように、第1の基板(転写元基板)100と第2の基板(転写先基板)200に、双方を離間させる方向に力を加えることによって、第2の基板200から第1の基板100を取り外す。前記光照射工程によって、転写すべき薄膜回路チップ(被転写体130)の剥離層112が薄膜回路チップから剥離しており、また転写するべき薄膜回路チップは、接着層131を介して第2の基板200に接合されているので容易に転写がなされる。」
「【図1】
[図:0001428003000001.jpg]
【図2】
[図:0001428003000002.jpg]
」
(イ) 引用発明1-1
上記(ア)によると、甲1-1には次の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。)
「第1の基板に設けられた複数の被転写体としての薄膜回路チップを第2の基板に転写する転写方法(段落0032)であって、
第1の基板100と第2の基板200とを接着層131を介してアライメントしながら重ね合わせることにより接合し(段落0046、図1C)、
第1の基板100の今回転写対象となる被転写体130に備えられた第1の接続端子としての電極パッド120と、第2の基板200に備えられた第2の接続端子としての電極パッド204aとを当接させることにより行われ(段落0047)、
接着層131に用いられる接着剤としては、導電性粒子132を含む異方性導電性ペースト(ACP)が用いられ(段落0048)、
第1の基板100と第2の基板200との接合体を第1の基板100側から、転写するべき被転写体130に対応する剥離層203部分に選択的に光Lを照射し、これにより、転写するべき薄膜回路チップ(被転写体130)を支持している剥離層112のみに剥離(層内剥離および/または界面剥離)を生じさせ(段落0055、図2E)、
剥離層112の層内剥離および/または界面剥離が生じる原理は、剥離層112の構成材料にアブレーションが生じることによるものであり(段落0056)、
ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(剥離層112の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することをいい(段落0057)、
照射する光Lとしては、剥離層112の剥離(アブレーション)を生じさせ易く、かつ高精度の局部照射が可能である点で、レーザー光が好ましく(段落0059、0060)、
第1の基板(転写元基板)100と第2の基板(転写先基板)200に、双方を離間させる方向に力を加えることによって、第2の基板200から第1の基板100を取り外し、前記光照射工程によって、転写すべき薄膜回路チップ(被転写体130)の剥離層112が薄膜回路チップから剥離しており、また転写するべき薄膜回路チップは、接着層131を介して第2の基板200に接合されているので容易に転写がなされる(段落0064、図2F)
方法であって、
第1の基板(転写元基板)100は、基礎となる基板110上に、剥離層112、配線層113、薄膜トランジスタ部102及び薄膜トランジスタ部102と、第二の基板に形成された配線との電気的接続を図るための第1の接続端子としての電極パッド120が形成された構成を有し(段落0034、図1A)、
被転写体130には、一の薄膜トランジスタ部102と複数の電極パッド120が含まれ(段落0035)、
第2の基板(回路基板又は転写先基板)200は、ガラス製又は樹脂製の適度な強度を有する基板210上に、配線層212、第1の基板100側の電極パッド120と接続される電極パッド204a及び配線層212を保護する保護膜214を含み構成されている(段落0044、図1B)、
方法。」
イ 引用発明1-2
(ア) 甲1-2の記載
甲1-2には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造を加工するための方法であって、
少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる結合層を、第1の要素および第2の要素の少なくとも一方の表面上に設けるステップと、
前記結合層を、前記第1の要素と前記第2の要素との間に配置するステップと、
前記第1の要素と前記第2の要素との間に配置された前記結合層を用いて前記第1の要素と前記第2の要素とを結合界面において互いに接着するステップと、
を備える方法。
・・・(中略)・・・
【技術分野】
【0002】
本発明の様々な実施形態は、半導体構造を加工するための方法および構造に関し、より詳細には、半導体構造の加工中に2つかまたはそれ以上の要素をお互いに接着するための結合層を形成するための方法および構造に関する。
・・・(中略)・・・
【0006】
結合層は、例えば、導体(例えば、金属)、半導体、および、絶縁体を含む多数の材料を含んでもよい。より一般的な結合層の1つは、例えば、二酸化ケイ素のようなケイ酸塩を備え、この二酸化ケイ素表面の表面化学は、高い結合エネルギーを生成することのできるシラノール(Si-OH)基を備えてもよい。しかしながら、絶縁結合層を使用することは、結合された要素間における電子の流れを妨げることがあり、このことは、2つかまたはそれ以上の要素間における電気伝導性を邪魔または妨害することがある。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【0008】
本発明の様々な実施形態は、一般的には、半導体構造を加工するための方法および構造を提供し、この方法は、少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる結合層を、第1の要素および第2の要素の少なくとも一方の表面上に設けるステップを備える。また、本発明のある特定の実施形態においては、この方法は、結合層を、第1の要素と第2の要素との間に配置するステップと、第1の要素と第2の要素との間に配置された結合層を用いて第1の要素と第2の要素とを結合界面においてお互いに接着するステップとを備える。
・・・(中略)・・・
【0015】
本発明の例としての実施形態が、図1A~図1Dを参照して、以下で説明される。図1Aは、第1の要素102を備える半導体構造100を示す。第1の要素は、多くの構造および材料を備えてもよい。例えば、第1の要素は、層構造、デバイス構造、および、結合された構造(2つかまたはそれ以上の層、デバイス、または、お互いに結合された層およびデバイスを含む構造)の少なくとも1つを備えてもよい。
・・・(中略)・・・
【0026】
図1Cは、第1の要素102、結合層106、および、第2の要素114を備える半導体構造112を示す。第2の要素114は、第1の要素102に関して上述したすべての構造、デバイス、および、材料を備えてもよい。本発明のこの実施形態においては、第2の要素114の表面116は、結合層106の結合表面110に結合されてもよい。第2の要素114の表面116と結合層106の結合表面110との間の十分な結合を助長するために、第2の要素114の表面116は、清浄されたものであってもよく、また、約1nmよりも小さい二乗平均(rms)表面粗さを有してもよい。さらに、第2の要素114の表面116は、表面116の表面化学が結合層106の接触結合表面との分子付着を促進するように処理または形成されてもよい。
・・・(中略)・・・
【0035】
以下において、本発明のさらなる実施形態が、図2Aおよび図2Bを参照して説明される。図2Aおよび図2Bに示される実施形態は、これまでに図1A~図1Dにおいて簡単に説明された実施形態に類似している。しかしながら、これらのさらなる実施形態においては、結合層は、それぞれの要素の表面上に、すなわち、第1の要素の表面上および第2の要素の表面上の両方に形成され、それによって、2つの結合層間に配置された結合界面が、形成される。
・・・(中略)・・・
【0037】
図2Bは、第1の要素202、結合層206、第2の要素214、および、結合層215を備える半導体構造204を示し、ここで、構造219および221は、第1の要素202と第2の要素214との間に、より詳細には、結合層206と結合層215との間に配置された結合界面220をもたらす結合層206および215を介して、お互いに結合される。構造219および221を結合するための方法は、図1A~図1Dの要素102、114を結合するための上述した方法のいずれかを備えてもよい。それぞれの要素202および214上に存在する結合層を用いて要素202および214を接着することは、その後のプロセスのために所望の結合強度を備える結合界面220をもたらすことを支援するかもしれない。」
「【図2A】
[図:0001428003000003.jpg]
【図2B】
[図:0001428003000004.jpg]
」
(イ) 引用発明1-2
a 上記(ア)の段落0035、及び、段落0037の記載によると、甲1-2には、「それぞれの第1の要素202および第2の要素214上に存在し、結合界面220をもたらす結合層206および結合層215を用いて、第1の要素202および第2の要素214を接着する」ことが記載されている。
b 以上を踏まえると、甲1-2には次の発明(以下「引用発明1-2」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。)
「半導体構造を加工するための方法であって、
少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる結合層を、第1の要素および第2の要素の少なくとも一方の表面上に設けるステップと、
前記結合層を、前記第1の要素と前記第2の要素との間に配置するステップと、
前記第1の要素と前記第2の要素との間に配置された前記結合層を用いて前記第1の要素と前記第2の要素とを結合界面において互いに接着するステップと、
を備える方法(請求項1)であって、
第1の要素、第2の要素は、デバイス構造を備え(段落0015,0026)、
それぞれの第1の要素202および第2の要素214上に存在し、結合界面220をもたらす結合層206および結合層215を用いて、第1の要素202および第2の要素214を接着する(上記a)
方法。」
(2) 甲1-1を主引用例とする進歩性欠如
ア 対比
本件発明1と引用発明1-1とを対比する。
(ア) 引用発明1-1の「第2の基板200」、「第1の基板100」は、それぞれ本件発明1の「第1の基板」、「第2の基板」に相当する。
そして、引用発明1-1において、「第1の基板100と第2の基板200とを接着層131を介してアライメントしながら重ね合わせることにより接合し」た「第1の基板100と第2の基板200との接合体」は、本件発明1の「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板」に相当する。
また、ここで、後記3(1)のとおり、本件発明1の「前記第2の基板に形成されたデバイス層」と、前記第2の基板に形成された「第2のデバイス層」とは同じものであるから、引用発明1-1の「第1の基板に設けられた複数の被転写体としての薄膜回路チップ」、「被転写体130」、「薄膜回路チップ(被転写体130)」は、いずれも、本件発明1の「前記第2の基板に形成されたデバイス層」、又は、前記第2の基板に形成された「第2のデバイス層」に相当する。
したがって、「第1の基板に設けられた複数の被転写体としての薄膜回路チップを第2の基板に転写する転写方法」に係る引用発明1-1は、「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法」といえる点で本件発明1と一致する。
(イ) 第1の基板
引用発明1-1の、「第2の基板(回路基板又は転写先基板)200」のガラス製又は樹脂製の適度な強度を有する基板210上に構成された、「配線層212、第1の基板100側の電極パッド120と接続される電極パッド204a」は、「第1のデバイス層」といえる。
そして、引用発明1-1は、第1の基板100と第2の基板200との接合が、「第1の基板100の今回転写対象となる被転写体130に備えられた第1の接続端子としての電極パッド120と、第2の基板200に備えられた第2の接続端子としての電極パッド204aとを当接させることにより行われ」るものであって、引用発明1-1の、第2の基板200の「配線層212を保護する保護膜214」は、接合に寄与するものではないから、本件発明1の、第2の表面膜とともに、第1の基板と第2の基板を接合する「第1の表面膜」には相当しない。
そうすると、引用発明1-1は、「前記第1の基板には、第1のデバイス層が形成され」といえる点で、本件発明1と共通する。
(ウ) 第2の基板
a レーザ吸収層
引用発明1-1は、「第1の基板100と第2の基板200との接合体を第1の基板100側から、転写するべき被転写体130に対応する剥離層203部分に選択的に光Lを照射し、これにより、転写するべき薄膜回路チップ(被転写体130)を支持している剥離層112のみに剥離(層内剥離および/または界面剥離)を生じさせ」るものであって、「剥離層112の層内剥離および/または界面剥離が生じる原理は、剥離層112の構成材料にアブレーションが生じることによるものであり、
ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(剥離層112の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することをいい、
照射する光Lとしては、剥離層112の剥離(アブレーション)を生じさせ易く、かつ高精度の局部照射が可能である点で、レーザー光が好まし」いから、引用発明1-1の、第1の基板(転写元基板)100の基板110上に形成された「剥離層112」は、レーザー光を吸収してアブレーションを生じさせる「レーザ吸収層」といえる。
b 引用発明1-1において、「被転写体130には、一の薄膜トランジスタ部102と複数の電極パッド120が含まれ」、「転写すべき薄膜回路チップ(被転写体130)の剥離層112が薄膜回路チップから剥離しており、また転写するべき薄膜回路チップは、接着層131を介して第2の基板200に接合されているので容易に転写がなされる」。
そうすると、引用発明1-1において、被転写体130に含まれる「薄膜トランジスタ部102」及び「電極パッド120」は、「剥離層112」の「基礎となる基板110」とは逆の面上に形成されていることは明らかである。
c 以上によると、引用発明1-1の「第1の基板(転写元基板)100」は、「レーザ吸収層、第2のデバイス層が表面側からこの順で形成され」といえる点で、本件発明1の「第2の基板」と共通する。
(エ) 引用発明1-1では、「第1の基板100と第2の基板200との接合体を第1の基板100側から、転写するべき被転写体130に対応する剥離層203部分に選択的に光Lを照射し、これにより、転写するべき薄膜回路チップ(被転写体130)を支持している剥離層112のみに剥離(層内剥離および/または界面剥離)を生じさせ」、「照射する光Lとしては、剥離層112の剥離(アブレーション)を生じさせ易く、かつ高精度の局部照射が可能である点で、レーザー光が好まし」いとされているから、本件発明1と引用発明1-1とは「前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光を照射すること」を有する点で共通する。
(オ) 引用発明1-1では、「第1の基板(転写元基板)100と第2の基板(転写先基板)200に、双方を離間させる方向に力を加えることによって、第2の基板200から第1の基板100を取り外し、前記光照射工程によって、転写すべき薄膜回路チップ(被転写体130)の剥離層112が薄膜回路チップから剥離しており、また転写するべき薄膜回路チップは、接着層131を介して第2の基板200に接合されているので容易に転写がなされる」から、「前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層を前記第1の基板に転写すること」を有する点で本件発明1と共通する。
(カ) 一致点・相違点
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明1-1とは次の点で、一致し、相違する。
a 一致点
「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって、
前記第1の基板には、第1のデバイス層が形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層が表面側からこの順で形成され、
前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光を照射することと、
前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層を前記第1の基板に転写することと、を有する、基板処理方法。」
b 相違点A
本件発明1が、「前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され」、「前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写する」ことを特定しているのに対し、引用発明1-1は、本件発明1の「第1の表面膜」及び「第2の表面膜」に相当する構成がなく、「第1の基板100と第2の基板200とを接着層131を介して」接合し、転写すべき薄膜回路チップが接着層131を介して転写される点。(以下「相違点A」という。)
c 相違点B
本件発明1がレーザ光を「パルス状に」照射することを特定しているのに対し、引用発明1-1のレーザー光が、「パルス状に」照射されると特定されていない点。(以下「相違点B」という。)
イ 申立人1の主張の検討
(ア) 相違点Aの認定について
a 申立人1は、申立書1(ウー2)26ページ下から7行~末行にて、甲1-1発明の「保護膜214」が、本件発明1の「第1の表面膜」に相当する旨主張する。
しかしながら、甲1-1発明の「保護膜214」は、単に配線層212を保護するものであって、第1の基板100と第2の基板200を接合することと無関係の構成であって、第2の表面膜とともに第1の基板と第2の基板を接合する機能を有する本件発明1の「第1の表面膜」に相当しないから、申立人1の上記主張は採用できない。
b 申立人1は、申立書1(ウー9)30ページ11~22行にて、「甲第1号証において、第2の基板200の電極パッド204a及びこれを覆う接着層131、並びに、第1の基板100の電極パッド120及びこれを覆う接着層131は、本件特許発明1の要素(B)の「前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成されること」、本件特許発明1の要素(C)の「前記第2の基板には、第2のデバイス層と第2の表面膜が表面側からこの順で形成されること」、本件特許発明1の要素(D)の「前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合されること」に対応しています。甲第1号証は、第1の基板100の電極パッド120と第2の基板200の電極パッド204aを導電性接着剤で接着するものであり、この当てはめによれば、本件特許発明1と甲第1号証に相違点はありません。」と主張する。
しかしながら、上記ア(イ)のとおり、引用発明1-1は、本件発明1の「第1の表面膜」に相当する構成がなく、上記ア(カ)bのとおり、「前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合される」ものではないから、申立人1の上記主張は採用できない。
(イ) 第2の表面膜について
a 申立人1は、申立書1(27ページ13~18行)にて、「甲第1号証において、第2の基板200の保護膜214と同様に、第1の基板100にも保護膜を形成して、本件特許発明1の要素(C)のように 「前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成される」ようにすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります。」、また、申立書1(29ページ9~14行)にて「第2の基板200の保護膜214と同様に、第1の基板100にも保護膜を形成して、第1の基板100と第2の基板200の保護膜どうしを接合すること、すなわち、本件特許発明1の要素(D)のように 「前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合される」ようにすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります。」と主張する。
しかしながら、甲1-1発明において、第2の基板200の保護膜214と同様に、第1の基板100の配線層113を保護する「新たな保護膜」を形成したとしても、甲1-1発明は、電極パッド120と電極パッド204aを当接させて、第1の基板100と第2の基板200を接合するものであって、保護膜214と「新たな保護膜」との間には間隔が存在することになるから、第1の基板100と第2の基板200を接合する構成にならない。
したがって、申立人1の上記主張は採用できない。
b 申立人1は、申立書1(27ページ18~末行)にて、「甲第1号証の段落0041には、基板110及び剥離層112の間に中間層(保護層、絶縁層、バリア層、反射層)を設けてもよいことが記載されており、甲第1号証の段落0042には、剥離層112及び配線層113の間に絶縁膜(例:酸化シリコン)を形成してもよいことが記載されています。これらの中間層や絶縁膜の配置順序を入れ替えて、本件特許発明1の要素(C)のように 「前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成される」ようにすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります。」と主張する。
しかしながら、甲1-1発明において、中間層と絶縁膜の配置順序を入れ替えることは、何ら示唆されておらず、また、中間層及び絶縁膜の機能を踏まえれば、その配置順序を入れ替えることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
また、仮に、配置順序を入れ替えることが容易であったとしても、中間層又は絶縁膜が、甲1-1発明において、電極パッド120と電極パッド204aと接続する際に、第1の基板100と第2の基板200を接合する構成にならない。
したがって、申立人1の上記主張は採用できない。
c 申立人1は、申立書1(28ページ2~12行)にて「甲第1号証において、第1の基板100と第2の基板200は、接着層(接着剤)131によって接着(結合)されるところ、この接着層131を第1の基板100と第2の基板200のそれぞれの接着部位に予め供給して、第2の基板200の側の接着層131を本件特許発明1の要素(B)の「第1の基板の第1の表面膜」として、第1の基板100の側の接着層131を本件特許発明1の要素(C)の「第2の基板の第2の表面膜」とすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります。例えば、本件特許において、明細書の発明の詳細な説明の段落0016には、第1のウェハW1(第1の基板)の表面膜(第1の表面膜)F1としては、酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などを使用してもよいことが記載されています。」、また、申立書1(29ページ16~22行)にて「甲第1号証において、第1の基板100と第2の基板200は、接着層(接着剤)131によって接着(結合)されるところ、この接着層131を第1の基板100と第2の基板200のそれぞれの接着部位に予め供給して、第2の基板200の側の接着層131を本件特許発明1の要素(D)の「第1の基板の第1の表面膜」として、第1の基板100の側の接着層131を本件特許発明1の要素(D)の「第2の基板の第2の表面膜」とすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります。」と主張する。
しかしながら、甲1-1発明の、第1の基板100と第2の基板200とを接合する接着層131を、第1の基板100と第2の基板200のそれぞれの接着部位に予め供給することは、甲1-1には記載も示唆もされていないから、申立人1の上記主張は採用できない。
d 甲1-3について
申立人1は申立書1(28ページ12~末行)にて、「周知文献としての甲第3号証には、「図1(c)に示す工程では、単結晶Siの第2の基板20を準備し、第1の基板10と第2の基板20とを、第2の基板と絶縁層14とが面するように室温で密着させる。その後、陽極接合、加圧若しくは熱処理又はこれらを組合わせた処理により第1の基板10と第2の基板20とを貼り合わせる。この処理により、第2の基板20と絶縁層14が強固に結合される。なお、絶縁層14は、上記のように単結晶Si層13側に形成しても良いし、第2の基板20上に形成しても良く、両者に形成しても良く、結果として、第1の基板と第2の基板を密着させた際に 図1(c)に示す状態になれば良い。(段落0099)」と記載されており、接着層(接着剤)を、一方の基板ではなく、両方の基板のそれぞれに形成・供給することが記載されています。してみれば、本件特許発明1の要素(B)の「前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成されること」、本件特許発明1の要素(C)の「前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成されること」は、甲第1号証に基づいて当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります(周知文献としての甲第3号証を適宜に参照することができます)。」、また、申立書1(29ページ22行~30ページ10行)にて、甲1-3の段落0099には、「接着層(接着剤)を、一方の基板ではなく、両方の基板のそれぞれに形成・供給することが記載されています。してみれば、本件特許発明1の要素(D)のように「前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合される」ようにすることは、当業者が容易に想到できる事項であり、甲第1号証に記載されたに等しい事項であります(周知文献としての甲第3号証を適宜に参照することができます)。」と主張する。
しかしながら、引用発明1-1において、第1の基板100と第2の基板200を接合することは、電極パッド120と電極パッド204aを接続することを伴うところ、第1の基板100と第2の基板200を接合する構成として、甲1-3に記載された「絶縁層14」を採用するは、電極パッド120と電極パッド204aの接続を妨げることになるから、甲1-3は、引用発明1-1が属する技術分野における周知事項を示すものとはいえない。
したがって、申立人1の上記主張も採用できない。
e 小括
以上のとおり、引用発明1-1において、相違点Aに係る本件発明1の構成を採用することは、引用発明1-1に基づいて、又は、引用発明1-1及び甲1-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得る事項ではない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1に基づいて、又は、引用発明1-1及び甲1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 甲1-2との組み合わせについて
申立人1は、申立書1(34ページ1~17行)にて「(ウ-17)
例えば、甲第2号証の図2A、図2Bにおいて、第1の要素202は、本件特許発明1の「第1の基板と第1のデバイス層」に相当し、結合層206は、本件特許発明1の「第1の表面膜」に相当し、第2の要素214は、本件特許発明1の「第2の基板と第2のデバイス層」に相当し、結合層215は、本件特許発明1の「第2の表面膜」に相当します。
(ウ-18)
そうしますと、本件特許発明1の第1、第2の基板の層構造として、甲第1号証に甲第2号証を組み合わせて採用することにより、本件特許発明1の要素(B)、(C)、(D)の「前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合される」ことが導かれ、且つ、本件特許発明1の要素(F)の「前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写する」ことが導かれます。」と主張する。
しかしながら、物と物とを接合する方法は、接合される物の性質や、接合面の態様などに応じて選択されるものであるところ、引用発明1-1は、第1の基板100と第2の基板200とを、電極パッド120と電極パッド204aとを当接させることにより接合するものであって、第1の基板100と第2の基板200の接合面は、甲1-1の図1、2に示されるように、それぞれ凹凸がある。
そして、第1の基板100と第2の基板200と接合する手段として、接合面の凹凸を吸収し得る接着剤に替えて、少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる、結合界面220をもたらす結合層206および結合層215を採用することは、いずれの証拠にも、記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明1-1において、相違点Aに係る本件発明1の構成を採用することは、甲1-1及び甲1-2に基づいて当業者が容易に想到し得る事項ではない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1及び甲1-2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 甲1-2を主引用例とする進歩性欠如
ア 申立人1は、申立書1(34ページ下から3行~38ページ13行)において、本件特許の親出願(特願2021-567196号)の出願時の請求項1の記載、甲1-1の記載、及び、本件特許についての令和6年9月9日提出の意見書の記載に基づいて、「甲第2号証は、積層構造を開示しているのみであり、剥離層を設けてレーザで転写することは開示していませんが、剥離層を設けてレーザで転写することは、甲第1号証に開示されているように周知技術です。そして、上述したように、甲第2号証の積層構造と、甲第1号証の剥離層を設けてレーザで転写することとによる特段の作用効果はありません。そうしますと、主引例としての甲第2号証に副引例としての甲第1号証を組み合わせて本件特許発明1とすることも、当業者が容易に想到できた事項であります。」と主張する。
イ 対比
本件発明1と引用発明1-2とを対比する。
(ア) 引用発明1-2の「第1の要素」、「第2の要素」は、それぞれ「第1の基板」、「第2の基板」といえる。
(イ) 引用発明1-2の「第1の要素」、「第2の要素」がそれぞれ備える「デバイス構造」は、第1の基板に形成された「第1のデバイス層」、第2の基板に形成された「第2のデバイス層」といえる。
(ウ) 引用発明1-2の、それぞれの第1の要素202および第2の要素214上に存在し、結合界面220をもたらす「結合層206」、「結合層215」は、第1の基板に形成された「第1の表面膜」、第2の基板に形成された「第2の表面膜」といえる。
(エ) 引用発明1-2は、「前記第1の要素と前記第2の要素との間に配置された前記結合層を用いて前記第1の要素と前記第2の要素とを結合界面において互いに接着する」から、「前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され」といえ、接着された第1の要素と第2の要素は、「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板」といえる。
(オ) 相違点C
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明1-2とは、少なくとも、本件発明1が、「前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって」、「前記第2の基板には、レーザ吸収層」が「形成され」、「前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光をパルス状に照射することと、
前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写することと、を有する」のに対し、引用発明1-2がこれらの事項を特定していない点(以下「相違点C」という。)で相違する。
(カ) 相違点Cの検討
引用発明1-2において、第2の要素214のデバイス構造の、結合層215とは逆の面に、レーザ吸収層を形成し、第2の要素が備えるデバイス構造を、第1の要素に転写することは、いずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、甲1-1に開示された、剥離層を設けてレーザで転写することが、周知技術であったとしても、引用発明1-2において、相違点Cに係る本件発明1に係る構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-2、及び甲1-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 申立理由1-1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1-1に記載された発明、又は、甲1-1及び甲1-2に記載された発明、甲1-1及び甲1-3に記載された発明、甲1-1~甲1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明1と同様の技術事項を物のカテゴリーで表現した本件発明11、及び、本件発明1、又は11の構成をすべて含む本件発明4~6、8、12についても同様である。
3 申立理由1-2(サポート要件・明確性要件・実施可能要件違反)
(1) 「デバイス層」と「第2のデバイス層」と「第1のデバイス層」の関係について
申立人1は、申立書1(42ページ7~末行)にて
「(エ-3)
しかしながら、本件特許発明1は、プリアンブルのフレーズにある「第2の基板に形成されたデバイス層」と、プリアンブル後のフレーズにある「第2の基板に形成された第2のデバイス層」 との関係が不明確であり、両者が同一のデバイス層なのか、異なる別々のデバイス層なのか、理解することができません。本件特許発明1について、この点を明確にする訂正が必須であると考えます。
(エ-4)
さらに、「第2の基板に形成されたデバイス層」と「第2の基板に形成された第2のデバイス層」が同一のデバイス層なのか、異なる別々のデバイス層なのか、いずれの解釈をとったとしても、「第1の基板に形成された第1のデバイス層」との関係が不明確と言わざるを得ません。本件特許発明1について、この点を明確にする訂正が必須であると考えます。
(エ-5)
明細書の発明の詳細な説明を精査しても、「第1のウェハW1側のデバイス層D1が第2のウェハW2側に転写される(段落0017)」、「デバイス層D2を第1のウェハW1に転写することができる(段落0045)」という曖昧で具体性のない記載が漫然と繰り返されるのみであり、「第2の基板に形成されたデバイス層」と「第2の基板に形成された第2のデバイス層」と「第1の基板に形成された第1のデバイス層」の関係性を理解することができません。本件特許発明1について、この点を明確にする訂正が必須であると考えます。」と主張する。
しかしながら、本件特許の請求項1には、「前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され」と記載され、当該記載における「第2のデバイス層」以外に、デバイス層とみなし得る構成を第2の基板に設けることは記載されていない。したがって、本件発明1において、「前記第2の基板に形成されたデバイス層」と前記第2の基板に形成された「第2のデバイス層」とは同じものであって、第2の表面膜を介して、第1の表面膜が形成された第1のデバイス層と接合されるものであることは明らかであるから、申立人1の前記主張は採用できない。
(2) 「第1のデバイス層」の作用について
ア 申立人1は、申立書1(43ページ1~11行)で、
「(エ-6)
例えば、「第2の基板に形成されたデバイス層」及び/又は「第2の基板に形成された第2のデバイス層」を第1の基板に転写したときに、「第1の基板に形成された第1のデバイス層」がどのように作用するのか、明細書の発明の詳細な説明から把握することができません。例えば、転写に伴って、第1の基板において、「第2の基板に形成されたデバイス層」及び/又は「第2の基板に形成された第2のデバイス層」と「第1の基板に形成された第1のデバイス層」を接続するのか、それぞれ別々のデバイス層として機能するのか、第1の基板(同一、単一、共通の基板)に接続する技術的意味を理解することができません(たとえ当業者であっても、実装時の構成を予想、想定することができません)。本件特許発明1について、この点を明確にする訂正が必須であると考えます。」と主張する。
しかしながら、本件発明1において、第1のデバイス層が、「第2の基板に形成されたデバイス層」及び/又は「第2の基板に形成された第2のデバイス層」と接続されても、接続されなくてもよいことは明らかであるから、申立人1の上記主張は採用できない。
イ また、申立人1は、申立書1(43ページ12~20行)で、
「(エ-7)
さらに、明細書の発明の詳細な説明には、「なお、表面W1aには、デバイス層D1と表面膜F1が形成されていない場合もある(段落0016)」、「また、表面W2aには、デバイス層D2と表面膜F2が形成されていない場合もある (段落0017)」 といった記載まであります。この場合、「第1の基板に形成された第1のデバイス層」と「第2の基板に形成されたデバイス層」と「第2の基板に形成された第2のデバイス層」の関係性ないし技術的意味を理解することができません(たとえ当業者であっても、実装時の構成を予想、想定することができません)。」と主張する。
しかしながら、明細書の上記記載は、本件発明1と対応しないことが明らかであり、本件発明1の技術的範囲に影響しないから、申立人1の上記主張は採用できない。
(3) 申立人1は、申立書1(43ページ下から5行~44ページ5行)で、
「(エ-8)
したがって、本件特許発明1は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとの要件を満たしていないと考えます。
(エ-9)
同様の理由により、本件特許発明1は、特許を受けようとする発明が明確であるとの要件を満たしていないと考えます。
(エ-10)
同様の理由により、本件特許発明1は、当業者が本件特許発明を実施できる程度に、明細書等が明確かつ十分に記載されたものであるとの要件を満たしていないと考えます。」と主張する。
しかしながら、上記(1)~(2)のとおり、本件発明1が明確でないとはいえない。
また、本件発明1が、本件明細書の段落0004に記載された「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板の表面に形成されたデバイス層を第1の基板に適切に転写する」との課題を解決できると認識できる範囲外のものとはいえず、加えて、本件発明1がその方法を使用できないともいえないから、申立人1の上記主張は採用できない。
本件発明1と同様の技術事項を物のカテゴリーで表現した本件発明11、及び、本件発明1、又は11の構成をすべて含む本件発明4~6、8、12についても同様である。
4 申立人1の申立理由についての結論
以上のとおりであるから、申立人1による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、4~6、8、11、12に係る特許を取り消すことはできない。
第4 申立人2による申立ての理由の検討
1 申立理由の概要
申立人2は、申立書2において、下記の証拠(以下、申立人2が提出した甲第1号証~甲第6号証をそれぞれ甲2-1~甲2-6という。)を提出し、以下の理由を申し立てた。
甲2-2:国際公開第2021/131711号
甲2-2:特開平10-125931号公報
甲2-3:特表2012-531052号公報
甲2-4:特開2019-004063号公報
甲2-5:特表2016-525801号公報
甲2-6:特開2000-223681号公報
(1) 申立理由2-1(新規事項)
本件発明2~8、10について令和6年9月9日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項2~8、10に係る特許は、同法第113条第1号により取消されるべきものである。
(2) 申立理由2-2(実施可能要件違反)
明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2~8、10について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。
(3) 申立理由2-3(明確性要件違反)
本件発明7、8は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項7、8に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。
(4) 申立理由2-4(新規性・進歩性欠如)
ア 本件発明1、3~9、11~12は、甲2-1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1~12は、甲第2-1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~12に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。
イ 本件発明1~12は、甲第2-2~甲2-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~12に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。
2 申立理由2-1(新規事項)
(1) 申立理由2-1
申立理由2-1について、申立人2は、申立書2(4-1-2)(20ページ12行~22ページ末行)において、本件補正の根拠として提示された、出願当初の明細書の段落0036の「レーザ光Lの照射開始位置は、第2のウェハW2の外周端Eaと、重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Ebとの間であるのが好ましい。かかる場合、例えば重合ウェハTにおいて、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合でも、その偏心分を吸収して、レーザ吸収層Pにレーザ光Lを適切に照射することができる。」との記載に基づき、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心とが水平方向にずれている場合に、「「重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Eb」と、「レーザ吸収層の外周端」とは一致しない。
以上からみて、「重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Eb」と「レーザ吸収層の外周端」とは、概念的に全く異なるものである。」から、「本件特許の当初明細書等には、「レーザ光Lの照射開始位置」の範囲を規定する基準の一方として「重合基板における第1の基板と第2の基板の接合端」を基準とすることしか開示されていないのであり、「レーザ光Lの照射開始位置」の範囲を規定する基準の一方について「前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端」としていたものを、「前記レーサ吸収層の外周端」と実質的に変更する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項の追加であることが明らかである。」と主張する。
(2) 当審の判断
本件発明2は、レーザ光の照射を開始する範囲の一端を「前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端である前記レーザ吸収層の外周端」と特定するものである。
ここで、段落0036に記載された「第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合」、「重合基板における第1の基板と第2の基板の接合端」と「レーザ吸収層の外周端」とは一致せず、本件発明2の発明特定事項である「前記重合基板における前記第1の基板と前記第2の基板の接合端である前記レーザ吸収層の外周端」は特定できなくなるから、本件発明2は、「第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合」を含むものでないことは明らかである。
そして、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心していない場合、「重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Eb」と「レーザ吸収層の外周端」とは一致するから、「重合ウェハTにおける第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合端Eb」と「レーザ吸収層の外周端」とが、概念的に全く異なるものとはいえないから、申立人2の上記主張は採用できない。
また、本件発明10についても同様である。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、申立理由2-1は理由がない。
3 申立理由2-2(実施可能要件違反)
(1) 申立理由2-2
申立理由2-2(申立書2(23ページ14行~24ページ6行))は次のとおりである。
「より具体的にいえば、当該段落に記載の技術では、「重合ウェハTにおいて、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心」することを前提としているものの、重合ウェハTをチャック100に載置して保持する際に、チャック100の中心に対し、第1のウェハW1の中心を一致させ保持するのか、第2のウェハW2の中心を一致させて保持するのか、あるいは他の位置を基準としてチャック100の保持させるのかについて全く記載がない。
仮に「重合ウェハTにおいて、第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心」している場合に、「第2の基板の外周端と、重合基板における第1の基板と第2の基板の接合端」又は「レーザ吸収層の外周端」のいずれかを基準としてレーザ光の照射を開始するとしても、どのような条件でチャック100に重合ウェハTを載置し保持するのかが不明である以上、重合ウェハTにおいてレーザ光線Lが照射される領域は特定不可能である。その結果、本件特許の明細書等を参照しても、具体的に、どのようにして上記の請求項2、請求項2を引用する請求項3~8、及び請求項10に記載された発明を実施することができるのかが全く理解することができない。
よって、本件特許の明細書および図面には、請求項2、請求項2を引用する請求項3~8、及び請求項10に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に明確にかつ十分に記載されているとは言えない。」
(2) 当審の判断
上記2(2)のとおり、本件発明2、10は、「第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合」を含むものでないから、申立人2の「第1のウェハW1の中心と第2のウェハW2の中心がずれて偏心している場合」を前提とした主張は採用できない。
したがって、申立理由2-2は理由がない。
4 申立理由2-3(明確性要件違反)
(1) 申立理由2-3
申立理由2-3(申立書2(24ページ下から4行~25ページ8行))は次のとおりである。
「しかし、請求項7において、重合基板の回転速度に関し、レーザ光がレーザ吸収層の径方向外側に照射される場合に比べて内側に照射される場合の方を速くするとしても、具体的にどの程度速くするのかについて全く特定されていない。同様に レーザ光の周波数に関し、レーザ吸収層の径方向外側に照射されるレーザ光の周波数を内側に照射されるレーザ光の周波数よりも大きくするにしても、具体的にどの程度大きくするのかについて全く特定されていない。そして、請求項7に特定しているように、重合基板の回転速度とレーザ光の周波数を制御したとしても、適切にレーザ光が照射されるか否かは、レーザ光によるスキャン速度と周波数の相対関係によるはずであるから、請求項7に係る発明では、レーザ光の照射間隔が適切に調整されるか不明であり、レーザ光の照射間隔が不適切に制御される構成、すなわち加工結果が悪化する構成も当然に含まれている。」
(2) 当審の判断
本件発明7において、レーザ光の照射される位置(レーザ吸収層の経方向において外側であるか内側であるか)と、「重合基板の回転速度」及び「レーザ光の周波数」との関係は、その技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確とはいえないから、加工結果が悪化する構成を含むとしても、本件発明7は明確である。
したがって、申立理由2-3は理由がない。
5 申立理由2-4(新規性・進歩性欠如)
(1) 甲2-1を主引用例とする新規性・進歩性欠如
申立人2は、申立書2(25ページ15~21行)で「本件特許は、出願日が令和2年12月9日の特願2021567196号を原出願とする分割出願として出願されている。 しかし、上記したよう本件特許の審査における手続きにおいて、令和6年9月9日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものではないことが明らかであるから、分割出願の要件を満たしていない。よって、本件特許の新規性、進歩性等の判断基準日は、本件特許の現実の出願日、すなわち令和5年6月26日(2023年6月26日)である。」と主張するが、上記2(2)のとおり、令和6年9月9日になされた手続補正は適法であるから、分割要件を満たしていないとはいえず、本件特許に係る出願の出願日は、その親出願の国際出願日である令和2年12月9日に遡及する。
そして、甲2-1の国際公開日は2021年(令和3年)7月1日であり、甲2-1に記載された発明は、「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」といえないから、甲2-1を主引用例とする申立理由2-4は、理由がない。
(2) 甲2-2を主引用例とする進歩性欠如
ア 甲2-2発明
(ア) 甲2-2の記載
甲2-2(特開平10-125931号公報)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために、当審において付加した。)
「【請求項1】 基板上の薄膜素子を転写体に転写する方法であって、
前記基板上に分離層を形成する工程と、
前記分離層上に薄膜素子を含む被転写層を形成する工程と、
前記薄膜素子を含む被転写層を接着層を介して前記転写体に接合する工程と、
前記分離層に光を照射し、前記分離層の層内および/または界面において剥離を生じせしめる工程と、
前記基板を前記分離層から離脱させる工程と、を有することを特徴とする薄膜素子の転写方法。
・・・(中略)・・・
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜素子の転写方法,薄膜素子,薄膜集積回路装置,アクティブマトリクス基板および液晶表示装置に関する。
・・・(中略)・・・
【0013】また、薄膜素子の転写体への接合に用いられる接着層として、例えば、平坦化作用をもつ物質(例えば、熱硬化性樹脂)を用いれば、薄膜素子を含む被転写層の表面に多少の段差が生じていたとしても、その段差は平坦化されて無視できるようになり、よって常に良好な転写体への接合が可能となり、便利である。
・・・(中略)・・・
【0106】前記硬化型接着剤を用いる場合、例えば被転写層(薄膜デバイス層)140上に硬化型接着剤を塗布し、その上に転写体180を接合した後、硬化型接着剤の特性に応じた硬化方法により前記硬化型接着剤を硬化させて、被転写層(薄膜デバイス層)140と転写体180とを接着し、固定する。
【0107】接着剤が光硬化型の場合、光透過性の基板100または光透過性の転写体180の一方の外側から(あるいは光透過性の基板及び転写体の両外側から)光を照射する。接着剤としては、薄膜デバイス層に影響を与えにくい紫外線硬化型などの光硬化型接着剤が好ましい。
【0108】なお、図示と異なり、転写体180側に接着層160を形成し、その上に被転写層(薄膜デバイス層)140を接着してもよい。なお、例えば転写体180自体が接着機能を有する場合等には、接着層160の形成を省略してもよい。
【0109】転写体180としては、特に限定されないが、基板(板材)、特に透明基板が挙げられる。なお、このような基板は平板であっても、湾曲板であってもよい。また、転写体180は、前記基板100に比べ、耐熱性、耐食性等の特性が劣るものであってもよい。その理由は、本発明では、基板100側に被転写層(薄膜デバイス層)140を形成し、その後、被転写層(薄膜デバイス層)140を転写体180に転写するため、転写体180に要求される特性、特に耐熱性は、被転写層(薄膜デバイス層)140の形成の際の温度条件等に依存しないからである。
・・・(中略)・・・
【0116】なお、転写体180は、例えば、液晶セルのように、それ自体独立したデバイスを構成するものや、例えばカラーフィルター、電極層、誘電体層、絶縁層、半導体素子のように、デバイスの一部を構成するものであってもよい。
【0117】さらに、転写体180は、金属、セラミックス、石材、木材紙等の物質であってもよいし、ある品物を構成する任意の面上(時計の面上、エアコンの表面上、プリント基板の上等)、さらには壁、柱、天井、窓ガラス等の構造物の表面上であってもよい。
【0118】[工程4]次に、図4に示すように、基板100の裏面側から光を照射する。
【0119】この光は、基板100を透過した後に分離層120に照射される。これにより、分離層120に層内剥離および/または界面剥離が生じ、結合力が減少または消滅する。
【0120】分離層120の層内剥離および/または界面剥離が生じる原理は、分離層120の構成材料にアブレーションが生じること、また、分離層120に含まれているガスの放出、さらには照射直後に生じる溶融、蒸散等の相変化によるものであることが推定される。
【0121】ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(分離層120の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することをいい、主に、分離層120の構成材料の全部または一部が溶融、蒸散(気化)等の相変化を生じる現象として現れる。また、前記相変化によって微小な発砲状態となり、結合力が低下することもある。
【0122】分離層120が層内剥離を生じるか、界面剥離を生じるか、またはその両方であるかは、分離層120の組成や、その他種々の要因に左右され、その要因の1つとして、照射される光の種類、波長、強度、到達深さ等の条件が挙げられる。
【0123】照射する光としては、分離層120に層内剥離および/または界面剥離を起こさせるものであればいかなるものでもよく、例えば、X線、紫外線、可視光、赤外線(熱線)、レーザ光、ミリ波、マイクロ波、電子線、放射線(α線、β線、γ線)等が挙げられる。そのなかでも、分離層120の剥離(アブレーション)を生じさせ易いという点で、レーザ光が好ましい。」
「【図4】
[図:0001428003000005.jpg]
」
(イ) 甲2-2発明
上記(ア)によると、甲2-2には次の発明(以下「甲2-2発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。)
「基板上の薄膜素子を転写体に転写する方法であって、
前記基板上に分離層を形成する工程と、
前記分離層上に薄膜素子を含む被転写層を形成する工程と、
前記薄膜素子を含む被転写層を接着層を介して前記転写体に接合する工程と、
前記分離層に光を照射し、前記分離層の層内および/または界面において剥離を生じせしめる工程と、
前記基板を前記分離層から離脱させる工程と、を有することを特徴とする薄膜素子の転写方法(請求項1)であって、
被転写層(薄膜デバイス層)140上に硬化型接着剤を塗布し、その上に転写体180を接合した後、硬化型接着剤の特性に応じた硬化方法により前記硬化型接着剤を硬化させて、被転写層(薄膜デバイス層)140と転写体180とを接着し、固定し(段落0106)、
転写体180としては、基板(板材)、特に透明基板が挙げられ(段落0109)、
転写体180は、例えば、液晶セルのように、それ自体独立したデバイスを構成するものや、例えばカラーフィルター、電極層、誘電体層、絶縁層、半導体素子のように、デバイスの一部を構成するものであってもよく(段落0116)、
基板100の裏面側から光を照射し(段落0118)、
照射する光としては、分離層120の剥離(アブレーション)を生じさせ易いという点で、レーザ光が好ましく(段落0123)
アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(分離層120の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することである(段落0121)、
方法。」
イ 甲2-3発明
甲2-3は甲1-2と同じ文献であるから、甲2-3の記載は上記第3の2(1)イ(ア)のとおり、甲2-3に記載された発明(以下「甲2-3発明」という。)は上記第3の2(1)イ(イ)のとおりである。
ウ 対比・判断
本件発明1と甲2-2発明とを対比する。
(ア) 第1の基板
甲2-2発明の「基板(板材)」が挙げられる「転写体」は、本件発明1の「第1の基板」に相当する。
そして、甲2-2発明の「転写体」は、「例えば、液晶セルのように、それ自体独立したデバイスを構成するものや、例えばカラーフィルター、電極層、誘電体層、絶縁層、半導体素子のように、デバイスの一部を構成するもの」であってもよいから、第1のデバイス層が形成されているといえる。
そうすると、甲2-2発明の「転写体」は、「第1のデバイス層が形成され」といえる点で本件発明1の「第1の基板」と共通する。
(イ) 第2の基板
甲2-2発明の「基板」は、本件発明1の「第2の基板」に相当する。
また、甲2-2発明の「分離層」は、レーザ光を照射することによって、「層内および/または界面において剥離を生じせしめる」ものであって、剥離(アブレーション)を生じさせるために、レーザ光を吸収するものといえるから、本件発明1の「レーザ吸収層」に相当し、甲2-2発明の「薄膜素子を含む被転写層」は、本件発明1の「第2のデバイス層」に相当する。
しかし、引用発明2-2の「前記薄膜素子を含む被転写層」と「前記転写体」とを接合する「接着層」は、分離層及び被転写層が形成された基板上に形成されるものであるが、転写体180上に形成された表面膜とともに、分離層及び被転写層が形成された基板と、転写体とを接合するものではないから、本件発明1の、第1の表面膜とともに、第1の基板と第2の基板を接合する「第2の表面膜」には相当しない。
そして、甲2-2発明は「前記基板上に分離層を形成」し、「前記分離層上に薄膜素子を含む被転写層を形成する」ものであるから、甲2-2発明の「基板」は、本件発明1の「レーザ吸収層、第2のデバイス層が表面側からこの順で形成され」たといえる点で本件発明1の「第2の基板」と共通する。
(ウ) 甲2-2発明において、「接着層」を介して接合された「転写体」と、「分離層」及び「薄膜素子を含む被転写層」が形成された「基板」とは、「重合基板」といえる。
そうすると、「基板上の薄膜素子を転写体に転写する方法」に係る甲2-2発明は、「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法」といえる点で、本件発明1と共通する。
(エ) 甲2-2発明は、「分離層」に対して、「基板100の裏面側から光を照射」するから、「前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光を照射すること」を有する点で、本件発明1と共通する。
(オ) 甲2-2発明は、「前記分離層に光を照射し、前記分離層の層内および/または界面において剥離を生じせしめる工程と、
前記基板を前記分離層から離脱させる工程と、を有する」から、「前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層を前記第1の基板に転写すること」を有する点で、本件発明1と共通する。
(カ) 一致点・相違点
以上を踏まえると、本件発明1と甲2-2発明とは次の点で一致し、相違する。
a 一致点
「第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、前記第2の基板に形成されたデバイス層を前記第1の基板に転写する方法であって、
前記第1の基板には、第1のデバイス層が形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層が表面側からこの順で形成され、
前記レーザ吸収層に対して、前記第2の基板の裏面側からレーザ光を照射することと、
前記レーザ吸収層と前記第2の基板との界面において、前記第2の基板を前記第1の基板から剥離して、前記第2のデバイス層を前記第1の基板に転写することと、を有する、基板処理方法。」
b 相違点D
本件発明1が「前記第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第2の基板には、レーザ吸収層、第2のデバイス層及び第2の表面膜が表面側からこの順で形成され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の表面膜と前記第2の表面膜が接合され」、「前記第2のデバイス層と前記第2の表面膜を前記第1の基板に転写する」ことを特定しているのに対し、甲2-2発明は、本件発明1の「第1の表面膜」及び「第2の表面膜」に相当する構成がなく、分離層及び被転写層が形成された基板と、転写体とが「接着層を介して」接合され、被転写層140と接着層を転写体に転写する点。(以下「相違点D」という。)
c 相違点E
本件発明1がレーザ光を「パルス状に」照射することを特定しているのに対し、甲2-2発明のレーザ光が「パルス状に」との特定がない点。(以下「相違点E」という。)
(キ) 申立人2の主張の検討
a 申立人2は、相違点Dに含まれる申立書2(45ページ下から4~末行)において、
「・相違点3
本件特許発明1では、「第1の基板には、第1のデバイス層と第1の表面膜が表面側からこの順で形成」されているのに対し、甲2発明の転写体180は、そのような構成を備えているか不明である点(以下「相違点3」という。)。」との相違点について、申立書2(51ページ19~52ページ2行)で、「甲2発明は、「前記硬化型接着剤を用いる場合、例えば被転写層(薄膜デバイス層)140上に硬化型接着剤を塗布し・・・」なる技術事項を開示している一方、「転写体180側に接着層160を形成し、その上に被転写層(薄膜デバイス層)140を接着してもよい」ことも開示している。
そして、上記した甲2発明及び甲3発明に加え、甲2発明が記載された甲第2号証の段落[0104]に「図3に示すように、薄膜デバイス層140を、接着層160を介して転写体180に接合(接着)する」 なる記載があることを合わせて考えると、 甲2発明における転写体180に関し、 基板上においてデバイス層と接着層として機能する表面膜とが、表面側からこの順で形成されるようにすること(相違点3)は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。」と主張する。
しかしながら、甲2-2の段落0106、0108には、被転写層(薄膜デバイス層)140上、又は、転写体180側のいずれか一方に接着層を形成することが記載されているが、その両方に接着層を形成することを示唆するものではなく、また、物と物とを接合する方法は、接合される物の性質や、接合面の態様などに応じて選択されるものである。
そして、引用発明2-2の接着層について、「薄膜素子を含む被転写層の表面に多少の段差が生じていたとしても、その段差は平坦化されて無視できるようになり、よって常に良好な転写体への接合が可能となり、便利である。」(甲2-2段落0013)との作用効果を有する平坦化作用をもつ物質(例えば、熱硬化性樹脂)に替えて、甲2-3発明の、少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる、結合界面220をもたらす結合層206および結合層215を採用することは、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、引用発明2-2の、接着層を介して接合される接合される転写層と被転写層を、それぞれ転写層と被転写層上に存在する、少なくとも実質的に亜鉛、シリコン、および、酸素からなる、結合界面をもたらす結合層により接着することに動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲2発明における転写体180に関し、基板上においてデバイス層と接着層として機能する表面膜とが、表面側からこの順で形成されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、申立人2の主張は採用できない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-2、甲2-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、同様の技術事項を発明特定事項とする、本件発明9、11、及び本件発明1、9、11のいずれかの構成をすべて含む、本件発明2~8、10、12についても同様である。
b 申立人2は、申立書2(52ページ3~7行)で「なお、本件特許の明細書の段落[0016]には、「表面W1aには、デバイス層D1と表面膜F1が形成されていない場合もある」と記載されており、本件特許の第1のウェハWの表面に形成される第1の表面膜F1は、本件特許発明1にとって必須の構成ではなく、格別な作用効果を奏するものでないことが明らかである。」と主張する。
しかしながら、本件明細書の段落0016の上記記載は、本件発明1と対応する記載ではないから、申立人2の上記主張は採用できない。
6 申立人2の申立理由についての結論
以上のとおりであるから、申立人2による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
上記第3のとおり、申立人1による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、4~6、8、11、12に係る特許を取り消すことはできない。
また、上記第4のとおり、申立人2による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700474