特許異議申立
2023-700738
レーザーマーク周辺の隆起を解消するための研磨用組成物
- 審判番号
- 2023-700738
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-560534
- 登録番号
- 7212321
- 請求日
- 2023年07月14日
- 審決日
- 2024年12月13日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日産化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
- 【異議申立人】大村 豊
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7212321号発明「レーザーマーク周辺の隆起を解消するための研磨用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7212321号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7212321号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7212321号の請求項1~9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2018(平成30年)12月19日(優先権主張 平成29年12月22日)を国際出願日とする出願であって、令和5年1月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 7月14日 :特許異議申立人 大村 豊(以下、「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
同年10月13日付け:取消理由通知
同年12月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 2月 2日 :申立人による意見書の提出
同年 4月15日 :申立人による手続補正書の提出
同年 6月14日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 8月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和6年8月20日付けで申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。
また、令和5年12月18日に特許権者によりされた訂正の請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年8月1日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため合議体が付与した。)。
(1)訂正事項1
請求項1に「該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシ基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し」と記載されているのを、
「該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
請求項1に「R1は-OCOCH3基、-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、K、又はNH4を示し」と記載されているのを「R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1による訂正は、「親水性部分」が「その末端もしくは側鎖に」有している「ヒドロキシアルキル基、アシルオキシ基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基」のうち、「アシルオキシ基」を削除して「ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2による訂正は、「式(3)」の「R1」である「-OCOCH3基、-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基」のうち「-OCOCH3基」を削除して「-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基」に限定するとともに、「R1」の選択肢である「-COOM基」、「-SO3M基」の「M」について、「Na、K、又はNH4」のうち「NH4」を削除して「Na、又はK」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の請求項1~9に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であって、該研磨用組成物は水溶性化合物とキレート剤と金属酸化物粒子とを含み、且つ7~12のpHを有し、該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し、
前記水溶性化合物が、下記式(1)、式(2)、又は式(3):
【化1】
[図:0001422381000001.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数、n3は1~30の整数、R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し、式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で5~700ppmの含有量となる
上記研磨用組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、5~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子、ジルコニア粒子、又はセリア粒子である請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記キレート剤が、アミノカルボン酸系キレート剤又はホスホン酸系キレート剤である請求項1または請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記アミノカルボン酸系キレート剤が、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3-プロパンジアミンテトラ酢酸、1,3-ジアミン-2-ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、又はエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸である請求項3に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記ホスホン酸系キレート剤が、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、又はエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)である請求項3に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
更にアルカリ成分として、水酸化アンモニウム、水酸化第1級アンモニウム、水酸化第2級アンモニウム、水酸化第3級アンモニウム、水酸化第4級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを含む、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の研磨用組成物を用いてレーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を研磨する工程を含むウェハーの研磨方法。
【請求項8】
レーザーマークが付されたウェハーを予備研磨する工程、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の研磨用組成物を用いてレーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を研磨する工程を含むウェハーの研磨方法。
【請求項9】
前記隆起を研磨する工程が、前記レーザーマークが付されたウェハー表面の水平面に対して高さ50nmから500nmのレーザーマーク周辺部の隆起を、該水平面に対して高さ30nmからマイナス10nmになるまで研磨する工程である、請求項7又は請求項8に記載のウェハーの研磨方法。」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第14号証(以下、「甲1」~「甲14」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(明確性)
請求項1~9に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 申立理由2(サポート要件)
請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~9に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 申立理由4(新規性)
請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
5 申立理由5(進歩性)
請求項1~9に係る発明は、甲1に記載された発明、甲3に記載された発明、甲4に記載された発明又は甲5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲1:国際公開第2015/019706号
甲2:特開2013-165173号公報
甲3:国際公開第2017/110315号
甲4:特開2015-233031号公報
甲5:特開2016-135882号公報
甲6:「ポリビニルアルコール-銅錯体の生成」、工業化学雑誌、1970年、73巻、8号、1862~1866ページ
甲7:特開2016-213216号公報
甲8:特開2017-98299号公報
甲9:「ひずみをもった金属錯体の量子化学計算-炭酸イオンがキレート配位した八面体型コバルト(III)錯体の構造最適化-」、ケモインフォマティクス討論会予稿集、2004年、77~78ページ
甲10:「陰イオン性PVOH Lシリーズ」と題するウェブページの、Way Back Machineによるアーカイプ、アーカイプされた日:2017年1月23日、[2024年4月2日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170123073537/https://www.gohsenol.com/doc_e/spcl/spcl_01/spcl_05.shtml>
甲11:「陰イオン性PVOH Tシリーズ」と題するウェブページの、Way Back Machineによるアーカイブ、アーカイプされた日:2017年1月23日、[2024年4月2日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170123214325/https://www.gohsenol.com/doc_e/spcl/spcl_01/spcl_04.shtml>
甲12:ポバールの代表銘柄一覧が記載されたウェプページの、Way Back Machineによるアーカイブ、アーカイブされた日:2022年7月5日、[2024年4月2日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20220705131027/https://www.j-vp.co.jp/pva/lists>
甲13:特開平10-152508号公報
甲14:特開2013-203994号公報
第5 取消理由(決定の予告)の概要
当審において、令和6年6月14日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1(明確性)
請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由2(サポート要件)
請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 取消理由1(明確性)、申立理由1(明確性)について
1 取消理由1について
取消理由1は、請求項1における式(3-2)のR1の「-OCOCH3基」は、通常は疎水性基であるものの、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)では、親水性基として記載され、技術的に矛盾しており、また、「-OCOCH3基」が親水性基であることは、本件特許の出願当時の技術常識であるともいえないから、請求項1の記載、及び、請求項1の記載を引用する請求項2~9の記載は明確でないというものである。
なお、申立人は、特許異議申立書58ページ10行~59ページ下から6行における「(A-2)親水性部分について」において、同旨の主張をしている。
しかし、訂正事項1による訂正により、訂正前の請求項1の「-OCOCH3基」は削除されたから、取消理由1は解消した。
2 申立人の主張
(1)キレート剤について
ア 申立人は、特許異議申立書の55ページ下から8行~58ページ5行において、本件発明1では、「キレート剤」を規定するが、本件明細書には、「キレート剤」について何ら定義されておらず、本件明細書の【0036】~【0037】に具体的に示されているもの以外に、どのような成分が「キレート剤」に含まれるのか不明であり、「アミノカルボン酸系キレート剤」、「ホスホン酸系キレート剤」で規定する本件発明3についても同様であるから、本件発明1~9はいずれも不明確である旨主張している。
イ 本件明細書には、研磨用組成物に含ませるキレート剤について以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【0036】
本発明ではキレート剤を添加する事ができる。キレート剤として、アミノカルボン酸系キレート剤及びホスホン酸系キレート剤を挙げる事ができる。
アミノカルボン酸系キレート剤として、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3-プロパンジアミンテトラ酢酸、1,3-ジアミン-2-ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、及びエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸が挙げられる。
【0037】
ホスホン酸系キレート剤として、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。」
ウ ここで、研磨用組成物に含ませるキレート剤について、甲1の[0086] には、「研磨用組成物(両面研磨用組成物・片面研磨用組成物)にはキレート剤を含有させることができる。研磨用組成物(両面研磨用組成物・片面研磨用組成物)のキレート剤は、研磨用組成物中に元々含まれている金属不純物や研磨中に研磨対象物や研磨装置から生じる、あるいは外部から混入する金属不純物を捕捉して錯体を作ることで、研磨対象物への金属不純物の残留を抑制する。特に、研磨対象物が半導体の場合、金属不純物の残留を抑制することで半導体の金属汚染を防止し、半導体の品質低下を抑制する。」と記載されており、甲2の【0052】には、「研磨用組成物中にはキレート剤を含有させることができる。研磨用組成物中のキレート剤は、研磨系中の金属不純物を捕捉して錯体を作ることで、半導体基板への金属不純物の残留を抑制する。」と記載されている。
また、甲1の[0087] 、[0088]、甲2の【0053】、【0054】には、キレート剤として、アミノカルボン酸系キレート剤及び有機ホスホン酸系キレート剤が例示されており、さらに、アミノカルボン酸系キレート剤の具体例として、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられ、有機ホスホン酸系キレート剤の具体例として、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1,-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等が挙げられている(当審注:下線を引いたキレート剤は、上記アにおいて下線を引いたキレート剤にそれぞれ対応する。)。
以上の記載によれば、研磨用組成物に含ませるキレート剤とは、研磨系中の金属不純物を捕捉して錯体を作ることで研磨対象物である半導体基板への金属不純物の残留を抑制するものであること、当該キレート剤としてアミノカルボン酸系キレート剤及びホスホン酸系キレート剤を用いることは、いずれも、研磨用組成物の技術分野において技術常識であるといえる。
したがって、本件発明1の「キレート剤」及び本件発明3の「アミノカルボン酸系キレート剤」、「ホスホン酸系キレート剤」は明確であるから、本件発明1~9は明確である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明8について
ア 申立人は、特許異議申立書の60ページ1~19行において、本件明細書を見ても、本件発明8における「レーザーマークが付されたウェハーを予備研磨する工程」がどのようなものを指すのか、皆目見当がつかず、ひいては、当該工程の外縁を把握できず(又は一義的に確定できず)、本件発明8の記載は不明確である旨主張する。
イ しかし、本件明細書の【0041】には、「本発明ではレーザーマークが付されたウェハーを予備研磨する工程を経て、本願発明の研磨用組成物を用いてレーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を研磨する工程を行う事ができる。」と記載されている。
また、同【0002】には、【背景技術】として、「半導体製品に用いられるシリコンウェハーはラッピング工程(粗研磨工程)とポリッシング工程(精密研磨工程)とを経て鏡面に仕上げられる。ポリッシング工程は予備ポリッシング工程(予備研磨工程)と仕上げポリッシング工程(仕上げ研磨工程)を含むものである。」と記載されている。
そうすると、本件発明8の「レーザーマークが付されたウェハーを予備研磨する工程」は、従来から行われているポリッシング工程(精密研磨工程)のうちの予備研磨工程であるといえる。
したがって、本件発明8は明確である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、取消理由1、申立理由1には理由がない。
第7 取消理由2(サポート要件)、申立理由2(サポート要件)について
1 取消理由2は、本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「ウェハーの研磨工程でレーザーマーク周辺部の隆起の解消を目的としてフラットな研磨面を与える研磨用組成物と、それを用いたウェハーの研磨方法を提供すること」(以下、「本件課題」という。)であるところ、同【0008】には、「このような親水性部分と疎水性部分を有するポリマー等の水溶性化合物において、親水性部分は一つがヒドロキシル基であり、その他はヒドロキシアルキル基、アシルオキシ基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基である。ポリマー等の水溶性化合物には、親水性部分にヒドロキシル基とその他の親水性基とを持つことが必須である。この官能基の組み合わせにより、本発明の研磨用組成物は良好なレーザーマーク解消性を達成することができる。」と記載されているものの、上記式(3)における式(3-2)のR1の「-OCOCH3基」は、通常は疎水性であるから、本件発明1において、上記式(3)における式(3-2)の「R1」が「-OCOCH3基」の場合、「水溶性化合物」は、ヒドロキシル基を有しているが、その他の親水性基を有していないから、良好なレーザーマーク解消性を達成することができるとはいえないから、本件発明1は、必ずしも上記本件課題を解決し得るものではなく、また、本件発明1において、上記式(3)における式(3-2)の「R1」が「-OCOCH3基」の場合の場合、上記本件課題を解決し得ることが、本件特許の出願当時の技術常識であるともいえないから、本件発明1~9は、発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願当時の技術常識に照らして、当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、したがって、本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載したものでないというものである。
しかし、訂正事項1による訂正により、訂正前の請求項1の「-OCOCH3基」は削除されたから、取消理由1は解消した。
2 申立人の主張について
(1)水溶性化合物について
ア 申立人は、特許異議申立書の61ページ11行~65ページ18行において、本件明細書の実施例では特定の成分で構成された極めて限定された組成物(特定の組成物)を用いることで、当該課題を解決したとする結果が示されているものの、本件発明で規定された水溶性化合物(式(1)、式(2)又は式(3)の単位構造を有する化合物)のすべてにおいてまで、上記課題を解決するものとはいえない旨主張している。
イ 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はウェハーの研磨工程でレーザーマーク周辺部の隆起の解消を目的としてフラットな研磨面を与える研磨用組成物と、それを用いたウェハーの研磨方法を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0007】
本発明の研磨用組成物はウェハーの研磨工程でウェハー周辺部に付与されるレーザーマークの周辺部の隆起を解消することを目的とする。
研磨用組成物の研磨性能は、組成物中のシリカ粒子と水以外の成分の役割が大きい。
レーザーマーク周辺部の隆起部分は他の部分よりヌレ性が高いため、研磨成分が効率よく接触するために、研磨剤組成物には添加剤として親水性と疎水性のバランスが適切である水溶性化合物が求められる。水溶性化合物として、たとえば疎水性部分及び親水性部分を有する化合物、オリゴマー及びポリマーが挙げられる。
たとえばポリマーの中心部が疎水性であり、周囲が親水性の物質は効率的に研磨成分(例えば、シリカ粒子、ジルコニア粒子及びセリア粒子等)とレーザーマーク周辺部の隆起とを接触させることが可能であることを見出した。
たとえば、ポリマーの疎水性主鎖と、親水性の末端及び/又は側鎖を含む構造の物質を研磨用組成物中に介在する事で効率的に研磨成分(例えば、シリカ粒子、ジルコニア粒子及びセリア粒子等)と、レーザーマークの周辺部の隆起とを接触させる事が可能である。
【0008】
このような親水性部分と疎水性部分を有するポリマー等の水溶性化合物において、親水性部分は一つがヒドロキシル基であり、その他はヒドロキシアルキル基、アシルオキシ基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基である。ポリマー等の水溶性化合物には、親水性部分にヒドロキシル基とその他の親水性基とを持つことが必須である。この官能基の組み合わせにより、本発明の研磨用組成物は良好なレーザーマーク解消性を達成することができる。この官能基の組み合わせはポリマーを変性させることであるが、変性はヒドロキシルメチル基の水素原子の一部を上記ヒドロキシエチル基や、ポリヒドロキシアルキル基に置換することや、ヒドロキシル基の水素原子をアシル基(結果としてアシルオキシ基の付与)に変換することで達成できる。
例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン等のヒドロキシ基の一部を上記その他の親水性基に変性することにより、上記官能基の組み合せを達成することができる。」
「【0029】
式(1)の繰り返し単位(単位構造)を有する水溶性化合物はポリマーであって、ヒドロキシエチルセルロースである。式(1)においてn1は1~5の整数、典型的にはn1=2の整数であり、n2は100~10000の整数である。グルコース骨格から延びるヒドロキシメチル基のヒドロキシル基の水素原子はオキシエチレン基を介したヒドロキシエチル基で置換することにより親水性を付与することができる。グルコース骨格から延びるヒドロキシメチル基のヒドロキシル基の水素原子は、その一部又は全部を置換数することが可能であるが、全体の50モル%以上を置換することが好ましい。
【0030】
上記ヒドロキシエチルセルロースは平均分子量10万~150万、又は50万~130万、又は60万~120万の範囲で使用することができる。例えばダイセルファインケム(株)社製の商品名SE-400(平均分子量60万)、住友精化(株)社製の商品名CF-X(平均分子量120万)を用いることができる。これらは研磨用組成物中で10~500ppm、又は10~100ppmの含有量で良好なレーザーマーク解消性を示す。
【0031】
式(2)の繰り返し単位(単位構造)を有する水溶性化合物はグリセリン又はポリグリセリンである。式(2)においてn3は1~30の整数である。
グリセリン又はポリグリセリンはヒドロキシル基と、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基とを構造に含むものである。例えば、ヒドロキシル基と、ヒドロキシプロピル基とを構造に含むものを例示することができる。
【0032】
ポリオキシアルキレン骨格の末端もしくは側鎖のヒドロキシル基の水素原子は、オキシアルキレン基を介したヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基による置換により親水性を付与することができ、その一部又は全部を置換することが可能であるが、全体の50モル%以上を置換する事が好ましい。
上記ポリグリセリンは(阪本薬品工業(株)社製、商品名ポリグリセリン♯750、平均分子量750)が挙げられる。
これらは研磨用組成物中で10~500ppm、又は10~100ppmの含有量で良好なレーザーマーク解消性を示す。
【0033】
式(3)の単位構造を有する水溶性化合物、即ち式(3-1)及び式(3-2)の繰り返し単位(単位構造)を有する水溶性化合物はポリマーであって、変性ポリビニルアルコールである。式(3-2)において、R1はアセトキシ基、カルボン酸基(カルボキシル基)、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基である。カルボン酸、及びスルホン酸は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶液で中和する事によりNa+、K+、NH4+等の対イオンを導入する事ができる。アセトキシ基の導入はポリビニルアルコールに酢酸を反応させ、ヒドロキシル基の水素原子をアセチル基で置き換える事でアルキレン骨格にアセトキシ基を導入する事ができる。カルボン酸基やスルホン酸基は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸と、ビニルアルコールとを共重合させることで導入する事ができる。アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸と、ビニルアルコールとはブロック共重合でも、ランダム共重合でも可能である。また、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸と、酢酸ビニルとを共重合させ、その後アセチル基の一部又は全部を加水分解させることで、カルボン酸基やスルホン酸基を導入した式(3)の単位構造を有する水溶性化合物を得る事ができる。ヒドロキシル基を有するアルキレン単位(式(3-1))と、R1のアセトキシ基、カルボン酸基(カルボキシル基)、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基を有するアルキレン単位(式(3-2))とは、それらがブロック体でも、ランダム体でも存在するが、一般的にランダム共重合体を好ましく用いることができる。式(3)の変性ポリビニルアルコール中で式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す事ができる。
【0034】
ポリアルキレン骨格の側鎖のヒドロキシル基は、R1のアセトキシ基、カルボン酸基(カルボキシル基)、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基による変換により親水性を付与することができ、その一部又は全部を変換することが可能であるが、全体の50モル%以上を変換する事が好ましい。
【0035】
これらの水溶性化合物(ポリマー)はアセトキシ基導入ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール(株)製、商品名JP-03、平均分子量1万5千)、スルホン酸塩基導入ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)、商品名L-3266、平均分子量2万)、カルボン酸塩基導入ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)、商品名T-330、平均分子量14万)が挙げられる。特にスルホン酸塩基導入ポリビニルアルコールとカルボン酸塩基導入ポリビニルアルコールが好ましい。
これらは研磨用組成物中で10~500ppm、又は10~100ppmの含有量で良好なレーザーマーク解消性を示す。」
「【実施例】
【0043】
市販のシリコンウェハーを以下の方法で研磨した。
1)キレート剤と金属酸化物粒子とを含む組成物の調製
窒素吸着法から求められる平均一次粒子径40nmのコロイダルシリカ(シリカゾルに基づくシリカ粒子)0.33質量%と、塩基性化合物(アルカリ成分)として、水酸化アンモニウム25ppm、キレート剤として、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム(試薬)110ppm、各種添加剤を下記表1に示す割合で添加し、残部は水となるようなキレート剤と金属酸化物粒子とを含む組成物(A)を製造した。
組成物(A)と同様に各成分の添加を行い、各組成物を作成した。上記組成物(A)中において、平均一次粒子径40nmのコロイダルシリカ(シリカゾルに基づくシリカ粒子)の含有量(質量%)、塩基性物質の種類と含有量(ppm)、キレート剤の種類と含有量(ppm)を以下表1に示す割合に変更して同様に組成物(B)~(J)を作成した。
表中、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムはEDTA、水酸化アンモニウムはNH4OH、水酸化カリウムはKOH、水酸化エチルトリメチルアンモニウムはETMAHで示す。
【0044】
【表1】
[図:0001422381000002.jpg]
【0045】
2)研磨条件
研磨機:浜井産業社製両面研磨機13BF
荷重:150g/cm2
上定盤回転数:7rpm
下定盤回転数:20rpm
研磨パッド:発泡ポリウレタン製研磨パッド
研磨希釈液の供給量:6.0L/分
研磨時間:5分
シリコンウェハー:直径200mm、伝導型P型、結晶方位が<100>、抗率が100Ω・cm未満
3)洗浄条件
水洗浄を行った後、40℃に加温したSC1洗浄液(29%アンモニア水:30%過酸化水素水:水の重量比=1:1:28の洗浄液)で洗浄し、ウェハー表面の不純物を除去した。
4)レーザーマーク高さの測定方法
(株)ニコンインステック社製光干渉顕微鏡システムBW-M7000を用い、一定幅(500μm)をスキャンして得られる粗さ曲線に対し、ウェハー表面の最も高い部分と最も低い部分の高さの差分を測定した。
【0046】
<実施例1>
上記組成物の調製で調製した組成物(A)に、水溶性化合物としてヒドロキシエチルセルロース(平均分子量60万、ダイセルファインケム(株)社製、商品名SE-400)を添加量が研磨用組成物中に100ppmとなるように加え、実施例1の研磨用組成物を製造した。該研摩用組成物を用いてシリコンウェハーを5分間研磨した。引き続きシリコンウェハーを洗浄し、レーザーマーク高さの測定を行った。研磨前のレーザーマーク周辺部の高さが151nmであったものが、研磨後にレーザーマーク高さは0nmとなり、良好な結果を得た。研磨速度は0.06μm/分であった。
【0047】
<実施例2~20、比較例1~5>
下記表2に示す様に、実施例1と同様に各組成物に水溶性化合物の添加を行い各実施例2~20及び各比較例1~5の研磨用組成物を作成した。各実施例において使用した上記組成物の種類と、研磨用組成物中での水溶性化合物の種類と濃度(ppm)を下表2に示した。実施例1~実施例20、比較例1~5の研磨用組成物のpHは、使用した組成物(A)~(J)のpHと同じであった。
下表2では、ヒドロキシエチルセルロース(平均分子量60万、ダイセルファインケム(株)社製、商品名SE-400)を水溶性化合物(a)、
ヒドロキシエチルセルロース(平均分子量120万、住友精化(株)製、商品名CF-X)を水溶性化合物(b)、
グリセリン(阪本薬品工業(株)社製、商品名精製グリセリン)を水溶性化合物(c)、
ポリグリセリン(平均分子量750、阪本薬品工業(株)社製、商品名ポリグリセリン♯750)を水溶性化合物(d)、
スルホン酸基変性ポリビニルアルコール(平均分子量2万、日本合成化学工業(株)社製、商品名L-3266)を水溶性化合物(e)、
カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(平均分子量14万、日本合成化学工業(株)社製、商品名T-330)を水溶性化合物(f)、
変性ポリグリセリン(阪本薬品工業(株)社製、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、商品名SC-E1500、ポリグリセリンのヒドロキシル基の水素原子を、ヒドロキシエチル基に変換した。)を水溶性化合物(g)、
変性ポリグリセリン(阪本薬品工業(株)社製、カプリル酸エステル、商品名MCA750、ポリグリセリンのヒドロキシル基とカプリル酸とを反応させた。)を水溶性化合物(h)、
変性ポリグリセリン(阪本薬品工業(株)社製、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、商品名SC-E1600、ポリグリセリンのヒドロキシル基の水素原子を、1-メチルヒドロキシエチル基に変換した。)を水溶性化合物(i)、
ポリビニルアルコール(平均分子量3500、試薬)を水溶性化合物(j)とした。
【0048】
【表2】
[図:0001422381000003.jpg]
【0049】
各実施例において、研磨試験の条件と研磨試験結果を下表3に示す。
【表3】
[図:0001422381000004.jpg]
」
ウ 上記イの【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「ウェハーの研磨工程でレーザーマーク周辺部の隆起の解消を目的としてフラットな研磨面を与える研磨用組成物と、それを用いたウェハーの研磨方法を提供すること」(以下、「本件課題」という。)である。
エ 上記イの【0007】、【0008】には、親水性部分と疎水性部分を有するポリマー等の水溶性化合物において、親水性部分は一つがヒドロキシル基と、その他はヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基との組み合わせにより、本発明の研磨用組成物は良好なレーザーマーク解消性を達成することができることが記載されており、また、【0029】~【0034】には、式(1)~式(3)の水溶性化合物について記載されており、さらに、【0035】には、水溶性化合物の具体例として、アセトキシ基導入ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール(株)製、商品名JP-03、平均分子量1万5千)、スルホン酸塩基導入ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)、商品名L-3266、平均分子量2万)、カルボン酸塩基導入ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)、商品名T-330、平均分子量14万)が挙げられ、これらは研磨用組成物中で10~500ppm、又は10~100ppmの含有量で良好なレーザーマーク解消性を示すことが記載されている。
そして、以上の水溶性化合物のうち、上記イの実施例(【0043】~【0049】)では、ヒドロキシエチルセルロース、グリセリン、ポリグリセリン、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールについて、本件課題を解決することが裏付けられている。
以上から、本件発明の水溶性化合物であれば、本件課題を解決し得ると認識できるものである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)キレート剤について
申立人は、特許異議申立書の65ページ19行~66ページ7行において、本件明細書の実施例では、組成物を構成する「キレート剤」として、具体的に本件課題を解決できたものは、「エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム」のみであるところ、そもそも、「エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム」をキレート剤に拡張して本件課題を解決できるものと認識できる合理的理由は全くないし、「キレート剤」には極めて広範囲なものまで含まれうるのであり、到底、「キレート剤」全般においてまで、「エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム」と同様に機能(作用)し、本件課題を解決できるものとはいえない旨主張している。
しかし、上記第6 2(1)ウの検討によれば、研磨用組成物に含ませるキレート剤は、研磨系中の金属不純物を捕捉して錯体を作ることで研磨対象物(半導体基板)への金属不純物の残留を抑制するものであって、本件課題である「ウェハーの研磨工程でレーザーマーク周辺部の隆起の解消を目的としてフラットな研磨面を与える研磨用組成物と、それを用いたウェハーの研磨方法を提供すること」に寄与するものではないから、本件発明の「キレート剤」は、本件課題を解決するための手段であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)キレート剤の割合について
申立人は、特許異議申立書の66ページ8行~24行において、本件明細書の実施例において具体的に確認されているのは、「エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム」を110ppmの割合で含む組成物のみであるが、組成物における割合は、当然に課題の解決に影響するものであるから、上記(2)のとおり「キレート剤」全般において本件課題を解決できるものではないし、「エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム」に特化しても、組成物における割合について何の規定もない本件発明において、本件課題を解決できるものとはいえない旨主張している。
しかし、上記(2)で検討したとおり、本件発明の「キレート剤」は、本件課題を解決するための手段であるとはいえないから、申立人の上記主張は前提において誤っており採用できない。
(4)その他の条件について
申立人は、特許異議申立書の66ページ25行~68ページ9行において、「レーザーマーク周辺部の隆起の解消」は、水溶性化合物の種類以外にも影響されるというのが技術常識であるから(例えば、甲1~甲3)、本件課題は、本件発明で規定する以外の条件(例えば、シリカの特性)によっても影響を受けるものであるし、仮にそうでないとしても、上記(1)~(3)のいずれか単独で限定しさえすれば本件課題を解決できるものと認識できるようなものではなく、少なくともこれらを組み合わせて限定するものでなければ、本件明細書において示される具体的な実験結果(実施例)との乖離が大きすぎ、上記課題を解決できるものとは認識しえない旨主張している。
しかし、本件発明が、本件課題を解決できると認識できるものであることは、上記(1)で検討したとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、取消理由2、申立理由2には理由がない。
第8 申立理由3(実施可能要件)について
1 申立人は、特許異議申立書の68ページ14~20行において、上記第7 2(1)~(4)において説明したように、本件課題たる「レーザーマーク周辺部の隆起の解消」を実現しうる組成物の探索(例えば、水溶性化合物の種類、キレート剤の種類及びその割合、これらの組合せ等)は困難であり、当業者といえども過度の試行錯誤を要するものであるから、本件明細書の記載は、いわゆる実施可能要件を充足しない旨主張している。
しかし、上記第7 2(1)イにおける発明の詳細な説明の【実施例】(【0043】~【0049】)の記載から、当業者は本件発明の研磨用組成物を製造し、使用することができるといえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
2 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、申立理由3には理由がない。
第9 申立理由4(新規性)、申立理由5(進歩性)について
1 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
(1)甲1(国際公開第2015/019706号)
ア 甲1には、以下の記載がある。
「実施例
[0105] 次に、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
[0106] コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物(含窒素水溶性高分子化合物)と、イオン交換水とを混合してなる、実施例1~26および比較例1~12で用いられる、両面研磨用組成物を、表1で示される組成となるように調製した。また、コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、イオン交換水とを混合してなる、実施例1~26および比較例1~12で用いられる、片面研磨用組成物を、表1で示される組成となるように調製した。各例の両面研磨用組成物(両面研磨加工での予備研磨用組成物)、片面研磨用組成物(片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物)の詳細を表1に示す。なお、調製は、各成分を、攪拌混合(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)することにより行った。
[0107] 表1中の“BET粒子径”および“平均二次粒子径”は、それぞれ、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて測定した比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径および平均二次粒子径を示す。
・・・
[0109] 表1中の“水溶性高分子種類”欄内の“HEC”は、ヒドロキシエチルセルロースを示し、PVP”はポリビニルピロリドンを示し、“PNVF”はポリN-ビニルホルムアミドを示し、“PEG”はポリエチレングリコールを示し、“PEO”はポリエチレンオキサイドを示す。
[0110] 表1中の“水溶性高分子 Mw”は、両面研磨用組成物に含まれる含窒素水溶性高分子化合物の重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算)と、片面研磨用組成物に含まれる水溶性高分子の重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算)を示す。
・・・
[0114] 次に、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の両面研磨用組成物(両面研磨加工での予備研磨用組成物)を純水で30倍に希釈した研磨液を用いて、シリコンウエハ(直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を、表2に記載の研磨条件1で両面研磨を1回行い、両面研磨済シリコンウエハを得、引き続きリンスを1回行い、この両面研磨済シリコンウエハを、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の片面研磨用組成物(片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物)を純水で20倍に希釈した研磨液を用いて表2に記載の研磨条件3で片面研磨を1回行った。
・・・
[0117] なお、表1に記載のもの以外の構成成分を以下に記載する。
・・・
[0119] <片面研磨用組成物>
塩基性化合物として、アンモニア0.2質量%を使用した。
・・・
[0127] 結果を表1に示す。・・・
[0128]
[表1]
[図:0001422381000005.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
(ア)同[0106]には、「また、コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、イオン交換水とを混合してなる、実施例1~26および比較例1~12で用いられる、片面研磨用組成物を、表1で示される組成となるように調製した。」と記載されており、また、同[0117]には、「なお、表1に記載のもの以外の構成成分を以下に記載する。」と記載され、同[0119]には、「<片面研磨用組成物>
塩基性化合物として、アンモニア0.2質量%を使用した。」と記載されているから、上記実施例1~26の片面研磨用組成物は、コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、イオン交換水と、アンモニア0.2質量%を含んでいるといえる。
(イ)同[0114]には、「両面研磨済シリコンウエハを、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の片面研磨用組成物(片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物)を純水で20倍に希釈した研磨液を用いて表2に記載の研磨条件3で片面研磨を1回行った。」と記載されているから、研磨液は、片面研磨用組成物を純水で20倍に希釈したものである。
(ウ)同[0128]の[表1]における実施例2では、片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物のコロイダルシリカのBET粒子径は40nmである。
そして、同[0107]には、「表1中の“BET粒子径”および“平均二次粒子径”は、それぞれ、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて測定した比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径および平均二次粒子径を示す。」と記載されているから、実施例2におけるコロイダルシリカは、平均一次粒子径が40nmであるといえる。
(エ)同[0128]の[表1]における実施例2では、片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物の水性高分子種類はHECであり、同[0109]には、「表1中の“水溶性高分子種類”欄内の“HEC”は、ヒドロキシエチルセルロースを示し」と記載されているから、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロースである。
(オ)同[0128]の[表1]における実施例2では、片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物の水性高分子含有量は0.3質量%であるから、上記(エ)を参酌すると、片面研磨用組成物中のヒドロキシエチルセルロースの含有量は、0.3質量%であるといえる。
(カ)上記(ア)~(オ)の実施例2における片面研磨用組成物に注目すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、イオン交換水と、アンモニア0.2質量%を混合してなる片面研磨用組成物を純水で20倍に希釈した研磨液であって、
コロイダルシリカは、平均一次粒子径が40nmであり、
水溶性高分子化合物は、ヒドロキシエチルセルロースであり、
片面研磨用組成物中のヒドロキシエチルセルロースの含有量は、0.3質量%である研磨液。」
(2)甲2(特開2013-165173号公報)
ア 甲2には、以下の記載がある。
「【0060】
本実施形態の研磨用組成物は、BET法で測定される比表面積から求められる平均一次粒子径が40nm以上の二酸化ケイ素、含窒素水溶性高分子、及び塩基性化合物を含有し、条件X1及び条件X2を満たしている。これにより、半導体基板の表面に対して、物理的作用、及びその物理的作用から保護する保護作用が好適に発現されるとともに、物理的作用と化学的作用とが好適に発現されるようになる。これにより、半導体基板の表面粗さ又は段差を低減することが容易となる。例えば、研磨に供される半導体基板には、レーザーマーカによる刻印部分を有することがある。本実施形態の研磨用組成物は、半導体基板の有する刻印部分の表面粗さ又は段差を低減する用途に適している。さらに、半導体基板の端部の加工性が制御される。すなわち、半導体基板の端部が過剰に研磨されることが抑制されるため、半導体基板の端部の形状が維持され易くなる。例えば、研磨に供される半導体基板のエッジロールオフを低減させることが容易となる。加えて、高い研磨速度が容易に得られる。」
「【実施例】
【0074】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(A.半導体基板の両面研磨)
二酸化ケイ素、含窒素水溶性高分子化合物、及び塩基性化合物をイオン交換水に混合して実施例A1~A13及び比較例A1~A9の研磨用組成物を調製した。各例の研磨用組成物の詳細を表1に示す。
【0075】
表1中の“BET粒子径”は、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて測定した比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径を示し、“A”は研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数を示す。表1中の“水溶性高分子”欄内の“PVP”はポリビニルピロリドンを示し、“PVCL”はポリビニルカプロラクタムを示し、“PAA”はポリアクリル酸を示し、“PVA”はポリビニルアルコールを示し、“PEG”はポリエチレングリコールを示す。表1中の“B”は研磨用組成物1リットル中の含窒素水溶性高分子化合物の単量体単位数、又は、研磨用組成物1リットル中の水溶性高分子化合物の単量体単位数を示す。表1中の“塩基性化合物”欄内の“KOH”は水酸化カリウムを示し、“K2CO3”は炭酸カリウムを示し、“TMAH”は水酸化テトラメチルアンモニウムを示す。表1中の“塩基性化合物”欄内の“C”は研磨用組成物1リットル中の塩基性化合物の分子数を示す。
・・・
【0083】
【表1】
[図:0001422381000006.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アにおける【0060】、【0074】、【0075】、【0083】【表1】の比較例6Aの記載に注目すると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「半導体基板の有するレーザーマーカによる刻印部分の表面粗さ又は段差を低減する用途に適している研磨用組成物であって、平均一次粒子径が50μmの二酸化ケイ素、重量平均分子量が530000、含有量が0.0003質量%のポリビニルアルコール、塩基性化合物として水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、及び、イオン交換水を含む研磨用組成物。」
(3)甲3(国際公開第2017/110315号)
ア 甲3には、以下の記載がある。
「[0044]4-2 水溶性高分子について
本実施形態の研磨用組成物には、研磨対象物の表面や砥粒の表面に作用する水溶性高分子(共重合体でもよい。また、これらの塩、誘導体でもよい。)を添加してもよい。水溶性高分子、水溶性共重合体、これらの塩又は誘導体の具体例としては、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸や、ポリホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸があげられる。また、他の具体例として、キタンサンガム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類や、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体があげられる。
[0045] さらに、他の具体例として、ピロリドン単位を有する水溶性高分子(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体)や、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ソルビタンモノオレエート、単一種又は複数種のオキシアルキレン単位を有するオキシアルキレン系重合体等があげられる。これらの水溶性高分子の中では、ピロリドン単位を有する水溶性高分子が好ましく、ポリビニルピロリドンがより好ましい。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
「[0064]〔実施例〕
以下に実施例を示し、表1を参照しながら本発明をさらに具体的に説明する。
シリカからなる砥粒と、3種の塩基性化合物(水酸化カリウム、炭酸カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)と、2種の添加剤(キレート剤、水溶性高分子)と、超純水とを混合して、実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3の研磨用組成物(スラリー)を製造した。
[0065] いずれの研磨用組成物においても、シリカの濃度は0.39質量%、水酸化カリウムの濃度は0.005質量%、炭酸カリウムの濃度は0.043質量%、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は0.067質量%、キレート剤(エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸))の濃度は0.003質量%、水溶性高分子(ポリビニルピロリドンK-30)の濃度は0.0003質量%である。
[0066] また、実施例1、3において使用したシリカは、2個以上の一次粒子が一次粒子と同一の材質で構成された結合子を介して結合してなる結合粒子を含み、且つ、結合部分の面積の割合などの本発明の要件を満たすシリカである。実施例2、4において使用したシリカは、2個以上の一次粒子が直接結合してなる結合粒子を含み、且つ、結合部分の面積の割合などの本発明の要件を満たすシリカである。
[0067] 比較例1、2において使用したシリカは、2個以上の一次粒子が結合してなる結合粒子を含んでいないシリカである。
比較例3において使用したシリカは、2個以上の一次粒子が直接結合してなる結合粒子を含んでいるが、結合部分の面積の割合などの本発明の要件を満たしていないシリカである。
実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3の研磨用組成物において使用したシリカの結合粒子の割合、結合部分の面積の割合等の各種物性値は、表1に示す通りである。
[0068]
[表1]
[図:0001422381000007.jpg]
[0069] 実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3の研磨用組成物を用いて、下記の研磨条件でシリコンウェーハの研磨を行った。このシリコンウェーハの表面には、ハードレーザーマークが形成されている。また、このシリコンウェーハの伝導型はP型であり、結晶方位は<100>であり、抵抗率は0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満である。
[0070] (研磨条件)
研磨装置:日本エンギス株式会社製の片面研磨装置、型式「EJ-380IN」
研磨パッド(研磨布):ニッタ・ハース株式会社製「MH-S15A」
研磨荷重:16.7kPa
定盤の回転速度:50min-1
ヘッド(キャリア)の回転速度:40min-1
研磨時間:研磨による取り代が5μmとなるまでの時間(ただし、研磨速度が0μm/minである場合は60minで研磨を終了する)
研磨用組成物の供給速度:100mL/min(掛け流し使用)
研磨用組成物の温度:23~26℃
[0071] そして、研磨前のシリコンウェーハの質量と、研磨後のシリコンウェーハの質量とを測定し、その質量差、研磨時間、被研磨面の面積、シリコンの密度等から研磨速度を算出した。結果を表1に示す。
[0072] また、研磨終了後のシリコンウェーハの被研磨面を分析し、ハードレーザーマークの周縁部に生成する突起の高さを測定した。結果を表1に示す。突起の高さは、株式会社東京精密製の形状測定装置サーフコムDX-12を用いて測定した。
表1から分かるように、実施例1、2、3、4の研磨用組成物は、研磨速度が高く且つハードレーザーマークの周縁部に生成した突起の高さが低かった。この結果から、ハードレーザーマークが形成されているシリコンウェーハの表面を、実施例1、2、3、4の研磨用組成物を用いて研磨すれば、ハードレーザーマークの周縁部に生成する突起を低減することができることが分かる。」
イ 甲3に記載された発明
上記アの[0064] 、[0065]、 [0072]における実施例3の記載に注目すると、甲3には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「ハードレーザーマークが形成されているシリコンウェーハのハードレーザーマークの周縁部に生成する突起を低減することができる研磨用組成物であって、シリカからなる砥粒と、3種の塩基性化合物(水酸化カリウム、炭酸カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)と、2種の添加剤(キレート剤、水溶性高分子)と、超純水とを含み
水溶性高分子は、濃度が0.0003質量%のポリビニルピロリドンである
研磨用組成物。」
(4)甲4(特開2015-233031号公報)
ア 甲4には、以下の記載がある。
「【0052】
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウェーハのポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0053】
水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ビニルアルコール系ポリマー等が挙げられる。具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体やブロック共重合体、ポリビニルアルコール、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピペリジン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。」
「【0063】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、ハードレーザーマーク周縁の隆起を解消する性能(隆起解消性)に優れる。かかる特長を活かして、上記研磨用組成物は、ハードレーザーマークの付された表面を含む研磨対象面の研磨に好ましく適用することができる。例えば、ハードレーザーマークの付されたシリコンウェーハの予備ポリシング工程において用いられる研磨用組成物として好適である。ハードレーザーマーク周縁の隆起は、ポリシング工程の初期に解消しておくことが望ましい。このため、ここに開示される研磨用組成物は、ハードレーザーマーク付与後の最初のポリシング工程(1次研磨工程)において特に好ましく使用され得る。上記最初のポリシング工程は、典型的には、シリコンウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨工程として実施される。ここに開示される研磨用組成物は、このような両面研磨工程において好ましく使用され得る。
・・・
【0065】 以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0066】
<研磨用組成物の調製>
(実施例1~5)
コロイダルシリカ、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)およびイオン交換水を室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、表1に示す組成の研磨用組成物を調製した。コロイダルシリカとしては、実施例1~4ではBET平均粒子径が40.0nmのものを、実施例5ではBET平均粒子径が50.0nmのものを使用した。なお、実施例1~5に係る研磨用組成物は、K2CO3とTMAHとの緩衝系を構成している。この緩衝系における理論緩衝比Aは2である。
・・・
【0073】
<隆起解消性評価>
洗浄後のシリコンウェーハについて、ハードレーザーマークを含むサイトの表面形状を測定し、隆起解消性を評価した。測定は、KLATencor社製の「WaferSight2」を用いて、SFQD(Site Front least-sQuares site Deviation)を求めることにより行った。ここで、SFQDとは、26mm×8mmのサイズ(評価精度向上のため、エッジから内周方向に1mmまでの部分は評価範囲から除外する。)で設定した各サイト内において、最小二乗法にて算出した基準平面からの+側厚みおよび該基準平面からの-側厚みのうち、絶対値が大きい方の数値のことである。上記「+側」とは、シリコンウェーハの表面を上に向けて水平に置いた場合の上側をいう。上記「-側」とは、シリコンウェーハの表面を上に向けて水平に置いた場合の下側をいう。得られたSQRDの値(単位:nm)を表1の「隆起解消性」の欄に示した。以上の測定または試験により得られた結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
[図:0001422381000008.jpg]
【0075】
表1に示されるように、αが0.80以上である実施例1~5の研磨用組成物は、いずれも良好な隆起解消性を示した。BET平均粒子径が40.0nmのシリカ粒子を用いた実施例1~4の研磨用組成物のうち、αが1.00より大きい実施例2~4の研磨用組成物によると、より高い隆起解消性が得られた。βが1.0モル/kg以上5モル/kg以下である実施例2,3では特に優れた隆起解消性が得られた。」
イ 甲4に記載された発明
上記アにおける【0063】の記載、及び、【0066】、【0074】【表1】の実施例1の記載に注目すると、甲4には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「ハードレーザーマークの付されたシリコンウェーハのハードレーザーマーク周縁の隆起を解消する性能(隆起解消性)に優れる研磨用組成物であって、
BET平均粒子径が40.0nmのコロイダルシリカ、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)及びイオン交換水を含み、10.58のphを有する研磨用組成物。」
(5)甲5(特開2016-135882号公報)
ア 甲5には、以下の記載がある。
「【0304】
<<実験例1>>
<研磨用組成物の調製>
(実施例A1)
砥粒、水溶性ポリマーHA、アンモニア水(濃度29%)および超純水を混合して研磨用組成物の濃縮液を調製した後、この濃縮液を上記混合から1時間以内に超純水で20倍(体積基準)に希釈することにより、砥粒の濃度が0.5%、アンモニア(NH3)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物を調製した。この研磨用組成物のpHは10.2であった。
砥粒としては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカを使用した。上記平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「FlowSorb II 2300」を用いて測定されたものである。また、上記平均二次粒子径は、日機装株式会社製の型式「UPA-UT151」を用いて測定された体積平均二次粒子径である(以下の例において同じ。)。
水溶性ポリマーHAとしては、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールを使用した。この水溶性ポリマーHAにおけるビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比(全繰返し単位のモル数に占めるビニルアルコール単位びモル数の割合)は73%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は27%である。各繰返し単位のSP値および体積比から算出される水溶性ポリマーHAの平均SP値は15.1である。
・・・
【0319】
上記LPD数評価およびヘイズ測定により得られた結果を、水溶性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を単独で使用した比較例A5のLPD数およびヘイズ値をそれぞれ100%とする相対値に換算して表3に示した。この表3には、各例において使用した水溶性ポリマーの構成を併せて示している。実施例A1~A5および比較例A1~A3については、使用した各水溶性ポリマーに含まれる2種類の繰返し単位のうち、SP値が大きいほうの繰返し単位を第1の繰返し単位とし、SP値が小さいほうの繰返し単位を第2の繰返し単位として示している。また、LPD数を示す欄において「測定不可」とは、上記ウエハ検査装置による欠陥測定においてData Overloadとなった、すなわちLPD数が測定上限を超えたことを表している。
【0320】
【表3】
[図:0001422381000009.jpg]
」
イ 甲5に記載された発明
上記アにおける【0304】、【0319】、【0320】【表3】の実施例A1の記載に注目すると、甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「砥粒の濃度が0.5%、アンモニア(NH3)の濃度が0.010%、水溶性ポリマーHAの濃度が0.018%であり、残部が水からなる研磨用組成物であって、
砥粒は、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカであり、
水溶性ポリマーHAは、けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールであり、ビニルアルコール単位(SP値18.5)のモル比(全繰返し単位のモル数に占めるビニルアルコール単位びモル数の割合)は73%であり、酢酸ビニル単位(SP値11.1)のモル比は27%である
研磨用組成物。」
2 甲1発明を主引用発明とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「研磨液」は、「片面研磨用組成物を純水で20倍に希釈した」ものであるから、研磨用組成物であるといる。
ここで、甲1の[0036]には、「また、含窒素水溶性高分子の含有量を多く設定する方が、レーザーマーク高さは、ゼロに近くなる傾向がある」と記載されており、甲1発明の「研磨液」には、含窒素水溶性高分子は含まれていない。
そうすると、甲1発明の「研磨液」は、レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であるとはいえない。
(イ)甲1発明の「水溶性高分子化合物」は、本件発明1の「水溶性化合物」に対応する。
(ウ)甲1の[0032](上記1(1)参照)には、「砥粒の中でも、シリカ粒子が好ましく、シリカ粒子としてはコロイダルシリカ、フュームドシリカなどが挙げられる。」と記載されているから、甲1発明の「コロイダルシリカ」は、シリカ粒子であるといえる。
一方、本件明細書の【0017】には、「金属酸化物粒子としては特にシリカ粒子が好ましい。」と記載されているから、本件発明1の「金属酸化物粒子」は、シリカ粒子を含むものである。
したがって、甲1発明の「コロイダルシリカ」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。
(エ)上記(イ)及び(ウ)の検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、「水溶性化合物」と「金属酸化物粒子」とを含んでいる点で共通する。
(オ)甲1発明の「水溶性高分子化合物」は、「ヒドロキシエチルセルロース」である。
一方、本件明細書の【0029】には、「式(1)の繰り返し単位(単位構造)を有する水溶性化合物はポリマーであって、ヒドロキシエチルセルロースである。式(1)においてn1は1~5の整数、典型的にはn1=2の整数であり、n2は100~10000の整数である。グルコース骨格から延びるヒドロキシメチル基のヒドロキシル基の水素原子はオキシエチレン基を介したヒドロキシエチル基で置換することにより親水性を付与することができる。」と記載されているから、本件発明1の「式(1)」の「水溶性化合物」はヒドロキシエチルセルロースである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し」、「該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基」とを有し、「水溶性化合物が、下記式(1):
【化1】
[図:0001422381000010.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数」「を示す。)の単位構造を有する化合物」である点で共通する。
(カ)甲1発明の「研磨液」は、「コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、イオン交換水と、アンモニア0.2質量%を混合してなる片面研磨用組成物を純水で20倍に希釈した」ものであり、「水溶性高分子化合物は、ヒドロキシエチルセルロースであり、片面研磨用組成物中のヒドロキシエチルセルロースの含有量は、0.3質量%である」から、「研磨液」中の「ヒドロキシエチルセルロース」の含有量は、0.3÷20=0.015質量%=150ppmである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「該水溶性化合物は研磨用組成物中」で150ppmの含有量となる点で共通する。
(キ)以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「研磨用組成物であって、該研磨用組成物は水溶性化合物と金属酸化物粒子とを含み、該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基とを有し、前記水溶性化合物が、下記式(1):
【化1】
[図:0001422381000011.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で150ppmの含有量となる
上記研磨用組成物。」
<相違点>
相違点1-1:本件発明1は、「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための」のものであるのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。
相違点1-2:本件発明1は、「キレート剤」を含んでいるのに対し、甲1発明は、キレート剤を含んでいない点。
相違点1-3:本件発明1は、「7~12のpHを有し」ているのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
イ 相違点についての判断
まず、相違点1-1について検討する。
(ア)上記ア(ア)で検討したとおり、甲1発明の「研磨液」は、レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であるとはいえないから、相違点1-1は実質的なものである。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。
(イ)甲1の[0114]には、「次に、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の両面研磨用組成物(両面研磨加工での予備研磨用組成物)を純水で30倍に希釈した研磨液を用いて、シリコンウエハ(直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を、表2に記載の研磨条件1で両面研磨を1回行い、両面研磨済シリコンウエハを得、引き続きリンスを1回行い、この両面研磨済シリコンウエハを、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の片面研磨用組成物(片面研磨加工での仕上げ研磨用組成物)を純水で20倍に希釈した研磨液を用いて表2に記載の研磨条件3で片面研磨を1回行った。」と記載されているから、甲1においては、両面研磨を行った後に片面研磨を行うものである。
そして、甲1の[0109]には、「表1中の“水溶性高分子種類”欄内の・・・PVP”はポリビニルピロリドンを示し」と記載されており、[0110]には、「表1中の“水溶性高分子 Mw”は、両面研磨用組成物に含まれる含窒素水溶性高分子化合物の重量平均分子量・・・を示す」と記載されているから、甲1の実施例2において、両面研磨用組成物には、含窒素水溶性高分子化合物であるポリビニルピロリドンが含有されているといえる。
また、甲1の[0036]には、「また、含窒素水溶性高分子の含有量を多く設定する方が、レーザーマーク高さは、ゼロに近くなる傾向がある」と記載されているから、甲1の実施例2においては、含窒素水溶性高分子化合物であるポリビニルピロリドンが含有されている両面研磨用組成物による両面研磨によって、レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起は解消しているといえる。
そうすると、甲1の実施例2における両面研磨後の片面研磨おいて用いる甲1発明の研磨液を、レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物とする動機付けはなく、このことは、甲2~甲5の記載に左右されるものではない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得えたものとはいえない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の68ページ下から6行~3行において、本件発明1~7は、甲1の比較例6に示される組成物[特定のコロイダルシリカ、5~700ppmのヒドロキシエチルセルロース、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(さらには水酸化テトラメチルアンモニウム及び炭酸カリウム)を含む両面研磨用組成物]ないし研磨方法と同一である旨主張し、さらに、特許異議申立書の69ページ下から10行~8行において、仮に、何らかの相違点(例えば、水溶性高分子の含有量「5~700ppm」)があったとしても、当該相違点に至ることは容易に想到できたことであるし、そのことによる格別な効果もなく、本件発明1~7は進歩性を欠如する旨主張している。
イ しかし、甲1の比較例6の組成物における水溶性高分子であるHECは、上記1(1)イ(エ)及びア(オ)の検討を参酌すると、ヒドロキシエチルセルロースであって、本件発明1の「式(1)」の「水溶性化合物」に相当するものであるところ、その含有量は0.007質量%であり、甲1の[0114]の「次に、実施例1~25および比較例1~11で示される組成の両面研磨用組成物(両面研磨加工での予備研磨用組成物)を純水で30倍に希釈した研磨液を用いて、シリコンウエハ・・・を、表2に記載の研磨条件1で両面研磨を1回行い」との記載から、甲1の比較例6の研磨液中のヒドロキシエチルセルロースの含有量は、0.007質量÷30=0.00023%=2.3ppmである。
そうすると、甲1の比較例6の研磨液中のヒドロキシエチルセルロースは、本件発明1の「式(1)」の「水溶性化合物」に相当するものの、その含有量は、2.3ppmであって、本件発明1~7における研磨用組成物中の水溶性化合物の含有量である「5~700ppm」の範囲内ではない。
したがって、本件発明1~7は、甲1の比較例6に記載された発明であるとはいえない。
ウ また、甲1の比較例6に記載された発明は、比較例であるから、研磨液中のヒドロキシエチルセルロースの含有量を変更する動機付けはなく、このことは、甲1の比較例6以外の記載及び甲2~甲5の記載に左右されるものではない。
したがって、本件発明1~7は、甲1の比較例6に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得えたものとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
3 甲2発明を主引用発明とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明は、「半導体基板の有するレーザーマーカによる刻印部分の表面粗さ又は段差を低減する用途に適している研磨用組成物」であるから、本件発明1とは、「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨組成物」である点で共通する。
(イ)甲2発明の「ポリビニルアルコール」が水溶性化合物であることは技術常識であるから、本件発明1と甲2発明とは「水溶性化合物」を含んでいる点で共通する。
(ウ)甲2発明の「二酸化ケイ素」は、「比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径が50μm」であるから二酸化ケイ素粒子、すなわち、シリカ粒子であるといえる。
一方、上記2(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件発明1の「金属酸化物粒子」には、シリカ粒子が含まれる。
そうすると、甲2発明の「比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径が50μmの二酸化ケイ素」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。
(エ)以上から、本件発明1と甲2発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であって、該研磨用組成物は水溶性化合物と金属酸化物粒子とを含む
上記研磨用組成物。」
<相違点>
相違点2-1:本件発明1は、「キレート剤」を含んでいるのに対し、甲2発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点2-2:本件発明1は、「7~12のpHを有し」ているのに対し、甲2発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点2-3:「水溶性化合物」について、本件発明1は、「該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し、
前記水溶性化合物が、下記式(1)、式(2)、又は式(3):
【化1】
[図:0001422381000012.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数、n3は1~30の整数、R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し、式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で5~700ppmの含有量となる」のに対し、甲2発明は、「重量平均分子量が530000、含有量が0.0003質量%のポリビニルアルコール」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
(ア)甲2発明の「重量平均分子量が530000、含有量が0.0003質量%のポリビニルアルコール」は、相違点2-3に係る本件発明1の式(1)~式(3)のいずれの「水溶性化合物」ではないから、相違点2-3は実質的な相違点である。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではない。
(イ)甲2には、研磨用組成物について、ポリビニルアルコールに換えて、相違点2-3に係る本件発明1の「水溶性化合物」を用いることは、記載も示唆もされていない。
また、甲1、甲3~甲5のいずれにも、研磨用組成物おいて、ポリビニルアルコールに換えて相違点2-3に係る本件発明1の「水溶性化合物」を5~700ppm含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。
4 甲3発明を主引用発明とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明は、「ハードレーザーマークが形成されているシリコンウェーハのハードレーザーマークの周縁部に生成する突起を低減することができる研磨用組成物」であるから、本件発明1とは、「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨組成物」である点で共通する。
(イ)本件発明1と甲3発明とは、「水溶性高分子とキレート剤」を含んでいる点で共通する。
(ウ)甲3発明の「シリカからなる砥粒」はシリカ粒子であるといえる。
一方、上記2(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件発明1の「金属酸化物粒子」には、シリカ粒子が含まれる。
そうすると、甲3発明の「シリカからなる砥粒」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。
(エ)以上から、本件発明1と甲3発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であって、該研磨用組成物は水溶性化合物とキレート剤と金属酸化物粒子とを含む
上記研磨用組成物。」
<相違点>
相違点3-1:本件発明1は、「7~12のpHを有し」ているのに対し、甲3発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点3-2:「水溶性化合物」について、本件発明1は、「該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し、
前記水溶性化合物が、下記式(1)、式(2)、又は式(3):
【化1】
[図:0001422381000013.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数、n3は1~30の整数、R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し、式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で5~700ppmの含有量となる」のに対し、甲3発明は、「濃度が0.0003質量%のポリビニルピロリドン」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3-2から検討する。
甲3の[0044]には、「本実施形態の研磨用組成物には、研磨対象物の表面や砥粒の表面に作用する水溶性高分子(共重合体でもよい。また、これらの塩、誘導体でもよい。)を添加してもよい。水溶性高分子、水溶性共重合体、これらの塩又は誘導体の具体例としては、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸や、ポリホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸があげられる。また、他の具体例として、キタンサンガム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類や、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体があげられる。」と記載され、同[0045]には、「さらに、他の具体例として、ピロリドン単位を有する水溶性高分子(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体)や、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ソルビタンモノオレエート、単一種又は複数種のオキシアルキレン単位を有するオキシアルキレン系重合体等があげられる。これらの水溶性高分子の中では、ピロリドン単位を有する水溶性高分子が好ましく、ポリビニルピロリドンがより好ましい。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」と記載されている。
ここで、上記[0044]に水溶性高分子として例示されているヒドロキシエチルセルロースは、本件発明1の式(1)の水溶性化合物に相当する。
しかし、上記[0044]、[0045]には、多数の水溶性高分子が例示されており、また、甲3には、研磨用組成物中の水溶性高分子の具体的な含有量については、記載も示唆もされていない。
また、甲1、甲2、甲4、甲5のいずれにも、研磨用組成物おいて、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロースを5~700ppm含有させることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明において、上記[0044]、[0045] に多数例示されている水溶性高分子の中からヒドロキシエチルセルロースを選択して研磨用組成物に添加し、さらに、その含有量を5~700ppmとすること、すなわち、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
5 甲4発明を主引用発明とした場合
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明は、「ハードレーザーマークの付されたシリコンウェーハのハードレーザーマーク周縁の隆起を解消する性能(隆起解消性)に優れる研磨用組成物」であるから、本件発明1と甲4発明とは、である点で共通する。
(イ)甲4発明の「BET平均粒子径が40.0nmのコロイダルシリカ」はシリカ粒子であるといえる。
一方、上記2(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件発明1の「金属酸化物粒子」にはシリカ粒子が含まれる。
そうすると、甲4発明の「BET平均粒子径が40.0nmのコロイダルシリカ」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。
(ウ)甲4発明の「研磨用組成物」は、「10.58のphを有する」ものであるから、7~12のpHを有しているといえる。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、「7~12のpHを有し」ている点で共通する。
(エ)以上から、本件発明1と甲4発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための研磨用組成物であって、該研磨用組成物は金属酸化物粒子とを含み、且つ7~12のpHを有する
上記研磨用組成物。」
<相違点>
相違点4-1:本件発明1は、「キレート剤」を含んでいるのに対し、甲4発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点4-2:本件発明1は、「水溶性化合物」を含み、「該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し、
前記水溶性化合物が、下記式(1)、式(2)、又は式(3):
【化1】
[図:0001422381000014.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数、n3は1~30の整数、R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し、式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で5~700ppmの含有量となる」のに対し、甲4発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4-2から検討する。
甲4の【0052】には、「ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウェーハのポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。」と記載され、同【0053】には、水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ビニルアルコール系ポリマー等が挙げられる。具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体やブロック共重合体、ポリビニルアルコール、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピペリジン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。」と記載されている。
ここで、上記【0053】に水溶性高分子として例示されているヒドロキシエチルセルロースは、本件発明1の式(1)の水溶性化合物に相当する。
しかし、上記【0053】には、多数の水溶性高分子が例示されており、また、上記【0052】には、「研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子・・・を、必要に応じてさらに含有してもよい」と記載されているものの、甲4には、研磨用組成物中の水溶性高分子の具体的な含有量については記載されていない。
また、甲1~甲3、甲5のいずれにも、研磨用組成物おいて、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロースを5~700ppm含有させることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲4発明において、上記【0053】に多数例示されている水溶性高分子の中からヒドロキシエチルセルロースを選択して研磨用組成物に含有させ、さらに、その含有量を5~700ppmとすること、すなわち、相違点4-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
6 甲5発明を主引用発明とした場合について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)甲5発明の「砥粒」は、「平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ」であるから、シリカ粒子であるといえる。
一方、上記2(1)ア(ウ)で検討したとおり、本件発明1の「金属酸化物粒子」にはシリカ粒子が含まれる。
そうすると、甲5発明の「平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのコロイダルシリカ」である「砥粒」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。
(イ)甲5発明の「けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールである」「水溶性ポリマーHA」は、水溶性化合物であるといえるから、本件発明1と甲5発明とは、「水溶性化合物」を含んでいる点で共通する。
(ウ)甲5発明と本件発明1とは、「研磨用組成物」である点で共通する。
(エ)以上から、本件発明1と甲5発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「水溶性化合物と金属酸化物粒子とを含む
研磨用組成物。」
<相違点>
相違点5-1:本件発明1は、「レーザーマークが付されたウェハーのレーザーマーク周辺部の隆起を解消するための」ものであるのに対し、甲5発明は、そのようなものかどうか不明である点。
相違点5-2:本件発明1は、「キレート剤」を含んでいるのに対し、甲5発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点5-3:本件発明1は、「7~12のpHを有し」ているのに対し、甲5発明は、そのような構成を有していない点。
相違点5-4:「水溶性化合物」について、本件発明1は、「該水溶性化合物は疎水性部分と親水性部分とを有し、該親水性部分は、その末端もしくは側鎖にヒドロキシル基と、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、又はスルホン酸塩基とを有し、
前記水溶性化合物が、下記式(1)、式(2)、又は式(3):
【化1】
[図:0001422381000015.jpg]
(式中、n1は1~5の整数、n2は100~10000の整数、n3は1~30の整数、R1は-COOH基、-COOM基、-SO3H基、又は-SO3M基を示し、MはNa、又はKを示し、式(3-1)の単位構造の数n4と、式(3-2)の単位構造の数n5との合計n4+n5は100~10000の整数を示す。)の単位構造を有する化合物であり、
該水溶性化合物は研磨用組成物中で5~700ppmの含有量となる」のに対し、甲5発明は、「けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコールである」「水溶性ポリマーHA」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5-4から検討する。
甲5には、「水溶性ポリマーHA」である「けん化度73モル%、重量平均分子量(Mw)2.8×104のポリビニルアルコール」に換えて、相違点5-4に係る本件発明1の「水溶性化合物」を用いることは、記載も示唆もされていない。
また、甲1~甲4のいずれにも、研磨用組成物おいて、水溶性ポリマーとして相違点5-4に係る本件発明1の「水溶性化合物」を5~700ppm含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲5発明において、相違点5-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
7 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立理由4、申立理由5は、理由がない。
第10 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700738