特許異議申立
2022-700274
樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置
- 審判番号
- 2022-700274
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-540352
- 登録番号
- 6950699
- 請求日
- 2022年03月31日
- 審決日
- 2023年08月09日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】平野 裕之
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】中塚 岳
- 【異議申立人】加藤 三千代
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.161-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6950699号発明「樹脂組成物、半導体用配線層積層体及び半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6950699号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~25〕について訂正することを認める。
特許第6950699号の請求項11~18に係る特許を維持する。
特許第6950699号の請求項1~10、19~25に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6950699号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~25に係る特許についての出願は、2017年(平成29年) 9月26日(優先権主張 2016年 9月26日(JP)、2017年1月23日(JP))を国際出願日とする日本語特許出願であり、令和 3年 9月28日にその特許権の設定登録がされ、令和 3年10月13日に特許掲載公報が発行されたものである。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 3月31日 :特許異議申立人加藤三千代〔申立番号01〕(以下、「申立人1」という。)による請求項1~25に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 4年 4月13日 :特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所〔申立番号02〕(以下、「申立人2」という。)による請求項1~25に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 4年 7月25日付け:取消理由の通知
令和 4年 9月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(令和5年3月7日にされた訂正請求により、この訂正請求書による訂正請求は取り下げられたものとみなす。)
令和 4年11月 4日 :申立人2による意見書の提出
令和 4年11月 9日 :申立人1による意見書の提出
令和 5年 1月25日付け 取消理由の通知(決定の予告)
令和 5年 3月 7日 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)の提出
令和 5年 6月 2日 申立人1による意見書の提出
なお、令和 5年 5月 1日付けで、申立人2に対して意見を求めたが、申立人2から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年3月7日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~25について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1~10を削除する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項11に「熱可塑性樹脂を更に含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。」と記載されているのを、本件訂正後の請求項11に記載されている「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であり、熱可塑性樹脂を更に含有する、樹脂組成物。」(下線は訂正箇所。以下同じ。)に訂正する(請求項11を直接的又は間接的に引用する請求項12~18も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項19~25を削除する。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~18、20~25は、いずれも直接又は間接的に請求項1を引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~18、20~25に対応する本件訂正後の請求項1~18、20~25は、一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項20~25は、いずれも直接又は間接的に請求項19を引用するものであり、訂正事項3によって記載が訂正される請求項19に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項19~25に対応する本件訂正後の請求項19~25は、一群の請求項である。
そして、本件訂正前の請求項1~18、20~25と、本件訂正前の請求項19~25とは、共通する請求項20~25を含むので、本件訂正前の請求項1~25に対応する本件訂正後の請求項1~25は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、本件訂正において「別の訂正単位とする求め」はなされていない。
よって、本件訂正は、本件訂正後の請求項〔1~25〕に係る一群の請求項が訂正単位である。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1~10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 独立特許要件
訂正事項1は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項1~25について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1~10に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正事項1による本件訂正前の請求項1の削除に伴い、請求項11を、請求項1を引用しないものとするとともに、本件訂正前の請求項11が引用する請求項1に記載された「硬化物」について「樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許の明細書の段落0127には「樹脂組成物の硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率は、以下の手順で測定することができる。樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムを、シリコンウェハ上に100℃でラミネートし、その状態で硬化性フィルムを180℃で2時間の加熱により硬化する。シリコンウエハ及び樹脂組成物の硬化膜の積層体であるサンプルを、130℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽(エスペック社製EHS-221MD)内で200時間静置する。その後・・・(中略)・・・サンプルを取り出し、シリコンウェハから硬化膜を削り取る。得られた硬化物サンプルの加熱による重量減少率を・・・(中略)・・・測定する。」(下線は強調のため当審にて付した。)と記載され、吸湿率を測定する対象は、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化性フィルムの硬化物であることが開示されている。したがって、本件訂正後の請求項11に記載された「樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物」は、本件特許の明細書に記載された事項である。
以上のことより、訂正事項2は、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件
訂正事項2は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項1~25について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項11~25に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、本件訂正前の請求項19~25を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 独立特許要件
訂正事項3は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項1~25について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項19~25に係る訂正事項3に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~25〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~25に係る発明(以下、請求項11~18に係る発明を、「本件発明11」~「本件発明18」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~25に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】 (削除)
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】 (削除)
【請求項9】 (削除)
【請求項10】 (削除)
【請求項11】
硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であり、
熱可塑性樹脂を更に含有する、樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物の硬化物における塩化物イオンの濃度が5ppm以下である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂組成物の硬化物の破断伸びが5~200%である、請求項11又は12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂組成物の硬化物の40℃における貯蔵弾性率が10MPa~5GPaである、請求項11~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が120~240℃である、請求項11~14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電率が3.0以下である、請求項11~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの誘電正接が0.005以下である、請求項11~16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度が300℃以上である、請求項11~17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】 (削除)
【請求項20】 (削除)
【請求項21】 (削除)
【請求項22】 (削除)
【請求項23】 (削除)
【請求項24】 (削除)
【請求項25】 (削除)」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由(決定の予告)について
当審が特許権者に通知した、令和5年1月25日付けの取消理由(決定の予告)は請求項1~10、19~25に係るものであるが、本件訂正により、請求項1~10、19~25は削除された。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人1による特許異議申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった、申立人1が主張する特許異議申立理由は、以下のとおりである。なお、申立人1が提出した甲第1号証~甲第10号証を、以下、「甲1-1」~「甲1-10」という。
(申立理由1-1)請求項1~25に係る発明は、甲1-1に記載された発明と、甲1-2~甲1-10に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~25に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由1-2)請求項1~25に係る発明は、マレイミド化合物以外の硬化性樹脂から構成されるものを含むものであるが、本件特許明細書にはマレイミド化合物以外の硬化性樹脂により課題が解決されることは記載されていないから、請求項1~25に係る発明により課題が解決されるとはいえず、請求項1~25に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由1-3)本願の発明の詳細な説明は、マレイミド化合物以外の硬化性樹脂により課題が解決されることは記載されていないから、請求項1~25に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由1-4)請求項1~25に係る発明は、「樹脂組成物の硬化物」の形状及び大きさが特定されていないため、「吸湿率」を特定することができず、明確でないから、請求項1~25に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、取り消されるべきものである。
甲1-1:特開2011-003884号公報
甲1-2:実装技術ガイドブック 1999年、第43頁乃至47頁、1999年5月24日発行、発行所:株式会社工業調査会
甲1-3:特開2009-246201号公報
甲1-4:国際公開第2015/141717号
甲1-5:国際公開第2015/141719号
甲1-6:国際公開第2016/114286号
甲1-7:国際公開第02/096969号
甲1-8:特開2007-266588号公報
甲1-9:特開2014-224855号公報
甲1-10:国際公開第2015/141618号
(1)請求項1~10、19~25に係る申立理由について
上記「第2 訂正の適否」において述べたように、本件訂正により本件訂正前の請求項1~10、19~25は削除されたため、申立理由1-1~1-4のうち、本件訂正前の請求項1~10、19~25に係る申立を却下する。
(2)請求項11~18に係る申立理由1-1(甲1-1を主引用例とする進歩性)について
ア 甲1-1の記載事項及び発明
(ア)甲1-1には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
近年、電子機器に対する小型化、高性能化及び低価格化等の要求に伴い、半導体チップの微細化や多端子化とともに、半導体チップを搭載する回路基板の微細化、多層化、及び該回路基板上での電子部品の高密度実装化が進められている。特に、半導体チップの多端子化、これら端子の狭ピッチ化に伴い、多層回路基板にも微細配線化が求められている。」
「【0014】
先ず、図1を参照して、一実施形態に従った回路基板の製造方法を説明する。
・・・(中略)・・・
【0016】
最初に、図1(b)に示すように、下部電極12を有する支持基板11上に、第1の開口22を有する第1の絶縁層21を形成する。第1の絶縁層21は、詳細に後述するように、好ましくは感光性絶縁膜であり、例えばスピンコート又はロールコートなどにより支持基板11上の全面に塗布した後、露光・現像することにより、第1の開口22を形成するようにパターニングすることが可能である。現像後、必要に応じて、第1の絶縁層21の硬化処理(キュア)を行う。第1の開口22は、ビア形成のためのビアホールの底部となるものであり、以下、ビアホール底部とも称する。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、ビアホール底部22が形成された第1の絶縁層21を覆う絶縁膜23’を成膜する。絶縁膜23’は、詳細に後述するように好ましくは感光性絶縁膜であり、例えばスピンコート又はロールコートなどによって成膜することが可能である。・・・(中略)・・・
【0018】
次に、図1(d)に示すように、絶縁膜23’を露光・現像し、第1の絶縁層21の第1の開口22と連通する第2の開口24、及びの第1の開口22と連通しない第3の開口25を有する第2の絶縁層23を形成する。現像後、第2の絶縁層23の硬化処理(キュア)を行う。第2の開口24は、より上層の配線との接続ビアを受ける、あるいは回路基板上に搭載される部品との電気的接点となるビアのランドとなるビアホール部分であり、以下、ビアホール上部又はランド部とも称する。ビアホール上部24の径は、好ましくは、露光時の位置ずれに対するマージンの拡大のため、そして、後のシード層形成及びめっき時の付き回りをよくするため、ビアホール底部22の径よりも大きくされる。第3の開口25は、配線形成用のトレンチであり、以下、配線溝などとも称する。
・・・(中略)・・・
【0021】
次に、図1(e)に示すように、図1(d)の構造の表面に、拡散防止膜31及びめっきシード層32を例えばスパッタ法又は真空蒸着法により順次形成する。拡散防止膜31は、シード層32及び/又は配線溝25及びビアホール26内に後に充填されるメッキ金属(図1(f)の35’)中の金属原子が絶縁層21及び23内に拡散することを抑制し得る材料を有する。例えば、拡散防止膜31は、Ti、W、Ta及びRuのうちの何れか1つを含む金属膜又は導電性合金膜とし得る。拡散防止膜31はまた、各層がこれらの元素のうちの1つ以上を含む2層以上の積層膜であってもよい。シード層32は好ましくは、例えばCu又はAg等の低抵抗金属の層(以下、通電層とも称する)を有する。・・・(中略)・・・
【0023】
次に、図1(f)に示すように、電気めっき法によりビアホール26及び配線溝25を例えばCu等のめっき金属35’で充填する。電気めっきの埋め込み高さは適宜選択することができるが、開口面積の大きく異なる配線構造を同時にめっきする場合は開口面積に応じて成長速度が異なるため、平坦性を確保する目的で図示のように過剰めっきすることが好ましい。
【0024】
最後に、図1(g)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)法により、第2の絶縁層23が露出するまで余分なめっき金属35’、シード層32及び拡散防止膜31を除去し、トレンチ配線35及びビア36を形成する。なお、CMPの代わりに物理的な研削、研磨又は切削を用いてもよい。また、余分なシード層32及び拡散防止膜31はウェット又はドライエッチングによって除去してもよい。
【0025】
多層回路基板の場合は、図1(b)-(g)の工程を繰り返し行えばよい。また、最終的に、支持基板11をエッチング、CMP又は研削などにより除去してもよい。
・・・(中略)・・・
【0027】
続いて、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層23に好適な材料を更に詳細に説明する。
【0028】
上述のように、本実施形態においては、第1の絶縁層21のパターニング後に、第2の絶縁層23の塗布及びパターニングを行う。・・・(中略)・・・より好ましくは、第1の絶縁層21にネガ型感光性樹脂膜、第2の絶縁層23に、ネガ型より一般的に解像性に優れるポジ型感光性樹脂膜を用いる。」
「【0031】
ネガ型感光性絶縁膜は好ましくは、ベースポリマーとしてフェノール樹脂を有する。また、このネガ型感光性絶縁膜は硬化剤を含み得る。硬化剤は例えば、アミノ樹脂、酸無水物、又はシアネートエステル樹脂などであり、好ましくはアミノ樹脂である。アミノ樹脂は、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレアなどの、1分子中に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物;この含窒素化合物中のメチロール基の水酸基の水素原子がメチル基やブチル基などのアルキル基によって置換された化合物;又は含窒素化合物若しくはその置換化合物が一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含む化合物とし得る。これらのアミノ樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上混合して用いられてもよい。さらに、このネガ型感光性絶縁膜は、架橋剤として1分子中に複数の架橋性基を有する化合物を含み得る。架橋性基は例えば、エポキシ基、チイラニル基、オキセタニル基、又はビニルエーテル基とし得る。従って、具体的にはエポキシ化合物、オキセタン化合物、チイラン化合物またはビニルエーテル化合物とし得る。なお、それらの混合物も使用することができる。この化合物は、組成物を活性化放射線に露光した際に、カチオン重合して露光領域を硬化させると共に、ポストベーク時に熱で架橋し、耐熱性の高い絶縁層を与える作用を有する。
【0032】
また、ポジ型感光性絶縁膜は好ましくは、ベースポリマーとしてフェノール樹脂を有する。また、このポジ型感光性絶縁膜は感放射線性酸発生剤を含み得る。感放射線性酸発生剤とは、放射線照射により酸を発生する化合物である。ここでは、感放射線性酸発生剤は例えば、オニウム塩、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、又はジアゾメタン化合物などとし得る。さらに、このポジ型感光性絶縁膜は酸拡散制御剤を含み得る。酸拡散制御剤としては、好ましくは、放射線照射やベークにより塩基性が変化しない含窒素有機化合物を用いる。かかる含窒素有機化合物としては、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示すとして、例えば、化学式:R1R2R3Nで表わされる含窒素化合物;同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物;窒素原子を3個以上有するジアミノ重合体;アミド基含有化合物;ウレア化合物;含窒素複素環化合物;等の含窒素化合物を用い得る。
・・・(中略)・・・
【0034】
これらの、ベースポリマーとしてフェノール樹脂を有するネガ型及びポジ型の感光性樹脂膜は、回路基板の絶縁膜として用いることに適した耐熱性を有している。しかしながら、耐熱性が良好で絶縁層間の剥離を防止することが可能な組合せであれば他の樹脂も用いることができ、例えば、フェノール樹脂の他に、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを用いてもよい。
【0035】
続いて、図2-4を参照して、図1に示した実施形態の種々の変形例を説明する。
【0036】
先ず、図2を参照するに、第1の絶縁層21の形成工程の変形例が示されている。第1の絶縁層21及び第2の絶縁層23の好適例として、異種の感光性樹脂を有するものを説明したが、絶縁層の材料はこれらに限定されるものではない。例えば、第1の絶縁層21は、非感光性の絶縁材料であってもよい。第1の絶縁層21に非感光性絶縁材料を用いる場合、例えば、図1(b)において、第1の絶縁層を支持基板11の全体に成膜した後、レーザ加工によりビアホール底部22を形成してもよい。また、ウエットエッチング、又はドライエッチングによりビアホール底部22を形成してもよい。
【0037】
図2は、図1(b)に示した第1の絶縁層21の形成工程の変形例として、ドライエッチングを用いる方法を示している。先ず、図2(a)に示すように、図1(a)に示した下部電極12が形成された、例えばSiウエハーとし得る支持基板11上に、第1の絶縁膜21’として例えば非感光性のポリイミド樹脂膜又はエポキシ樹脂膜などの非感光性樹脂膜を成膜する。この成膜には、例えば、スピンコート等による塗布、又は樹脂シートの支持基板11へのラミネート加工を用いることができる。次に、図2(b)に示すように、非感光性樹脂膜21’上に、例えばノボラック樹脂又はゴム系樹脂を含むフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより、第1の開口22を形成する位置に開口42を有するフォトレジストマスク41を形成する。次に、図2(c)に示すように、例えばSF6又はCF4等のガス種を用いたドライエッチングにより、マスク41に従って第1の開口(ビアホール底部)22を形成する。そして、図2(d)に示すように、マスク41を剥離し、図1(b)と同様の構造を得る。」
「【0048】
続いて、図5を参照して、一実施形態に従った多層回路基板50の一例を説明する。多層回路基板50は、図1-4を参照して説明した方法に従って製造され得る。
【0049】
多層回路基板50は、下部電極12が形成された支持基板11上に3層の配線層51-53を形成した一例を示している。支持基板11は例えばSiウエハーとし得る。配線層51-53は、それぞれ、第1の絶縁層21と第2の絶縁層23とを含んでいる。各配線層の第1の絶縁層21は例えばネガ型感光性樹脂を有し、第2の絶縁層23は例えばポジ型感光性樹脂を有する。第1の絶縁層21の各々はそれぞれのビア36の底部を有し、第2の絶縁層23の各々はそれぞれのビア36の上部(ランド部)を有している。第2の絶縁層23の各々はまた、トレンチ配線35を有している。」
「【0054】
下部電極を形成した6インチSiウエハーを準備した。先ず、第1の絶縁層としてベースポリマーがフェノール樹脂であるネガ型感光性樹脂のワニスをスピンコートにより塗布し、プリベークした。次に、所定の位置にφ60μmのビアパターンを有するガラスマスクを用いてコンタクトアライナーにより露光し、その後、現像して第1の絶縁層中の所定の位置にφ50μmのビアホール(底部)を形成した。この時の第1の絶縁層の膜厚は20μmであった。」
「【0110】
10、50 回路基板
11 支持基板
12 下部電極
21 第1の絶縁層
22 第1の開口(ビアホール底部)
23 第2の絶縁層
24 第2の開口(ビアホール上部)
25 第3の開口(配線溝)
26 ビアホール
27 第4の開口(擬似配線溝)
31 拡散防止膜
32 めっきシード層
35 トレンチ配線
36 ビア
37 擬似配線
51、52、53 配線層
【図1】【図2】【図3】【図4】
【図5】【図6】」
「図1
[図:0001403617000001.jpg]
」
「図5
[図:0001403617000002.jpg]
」
(イ)上記(ア)より、甲1-1には次の技術事項が記載されている。
a 段落0002には「半導体チップを搭載する回路基板の」「多層化」「が進められている。」と記載されている。
よって、半導体チップを搭載する多層回路基板が記載されている。
b 段落0016には「図1(b)に示すように、下部電極12を有する支持基板11上に、第1の開口22を有する第1の絶縁層21を形成する。第1の絶縁層21は」「感光性絶縁膜であり、」「支持基板11上の全面に塗布した後、露光・現像することにより、第1の開口22を形成するようにパターニングすることが可能である。」及び「第1の絶縁層21の硬化処理(キュア)を行う」と記載されている。
よって、下記h~jを踏まえると、図1(b)に示すように、下部電極12を有する支持基板11上に、第1の開口22を有する第1の絶縁層21を形成する工程であって、第1の絶縁層21はベースポリマーとしてフェノール樹脂を有し、さらに、硬化剤を含むネガ型感光性樹脂膜であり、支持基板11上の全面にネガ型感光性樹脂を塗布した後、露光・現像することにより第1の開口22を形成するようにパターニングされ、現像後、硬化処理(キュア)を行うものである工程が記載されている。
c 段落0017には「図1(c)に示すように、ビアホール底部22が形成された第1の絶縁層21を覆う絶縁膜23’を成膜する。絶縁膜23’は」「感光性絶縁膜であり」と記載され、段落0018には「図1(d)に示すように、絶縁膜23’を露光・現像し、第1の絶縁層21の第1の開口22と連通する第2の開口24、及びの第1の開口22と連通しない第3の開口25を有する第2の絶縁層23を形成する。現像後、第2の絶縁層23の硬化処理(キュア)を行う。」「第3の開口25は、配線形成用のトレンチであり、以下、配線溝などとも称する。」と記載されている。
よって、下記(h)を踏まえると、図1(c)、(d)に示すように、第1の絶縁層21を覆う絶縁膜23’を成膜し、絶縁膜23’は感光性絶縁膜であり、露光・現像されて、第1の絶縁層21の第1の開口22と連通する第2の開口24、及び第1の開口22と連通しない第3の開口25を有する第2の絶縁層23となり、現像後、第2の絶縁層23の硬化処理(キュア)が行われ、第3の開口25は配線溝となり、第2の絶縁層23はポジ型感光性樹脂膜である工程が記載されている。
d 段落0021には「図1(e)に示すように、図1(d)の構造の表面に、拡散防止膜31及びめっきシード層32を例えばスパッタ法又は真空蒸着法により順次形成する。」と記載されている。また、図1(e)より、配線溝25が形成された絶縁層23の表面に拡散防止膜31及びめっきシード層32が形成されることが見てとれる。
よって、図1(e)に示すように、配線溝25が形成された絶縁層23の表面に、拡散防止膜31及びめっきシード層32をスパッタ法又は真空蒸着法により順次形成する工程が記載されている。
e 段落0023には、「図1(f)に示すように、電気めっき法によりビアホール26及び配線溝25を例えばCu等のめっき金属35’で充填する。」と記載されている。
よって、図1(f)に示すように、電気めっき法によりビアホール26及び配線溝25をCuのめっき金属35’で充填する工程が記載されている。
f 段落0024には「図1(g)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)法により、第2の絶縁層23が露出するまで余分なめっき金属35’、シード層32及び拡散防止膜31を除去し、トレンチ配線35及びビア36を形成する。」と記載されている。
よって、図1(g)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)法により、第2の絶縁層23が露出するまで余分なめっき金属35’、シード層32及び拡散防止膜31を除去し、トレンチ配線35及びビア36を形成する工程が記載されている。
g 段落0025には「多層回路基板の場合は、図1(b)-(g)の工程を繰り返し行えばよい。」と記載されている。
よって、上記aの技術事項を踏まえれば、上記b~fで技術事項としてあげた工程を繰り返し行うことにより、半導体チップを搭載する多層回路基板を形成することが記載されているといえる。
h 段落0028には「第1の絶縁層21にネガ型感光性樹脂膜、第2の絶縁層23に」「ポジ型感光性樹脂膜を用いる。」と記載されている。
よって、第1の絶縁層21はネガ型感光性樹脂膜であり、第2の絶縁層23はポジ型感光性樹脂膜であるといえる。
i 段落0031には「ネガ型感光性絶縁膜は好ましくは、ベースポリマーとしてフェノール樹脂を有する。また、このネガ型感光性絶縁膜は硬化剤を含み得る。」と記載されている。
よって、ネガ型感光性樹脂膜はベースポリマーとしてフェノール樹脂を有し、さらに、硬化剤を含むものである。
j 段落0054には「第1の絶縁層としてベースポリマーがフェノール樹脂であるネガ型感光性樹脂のワニスをスピンコートにより塗布し」と記載されている。
よって、第1の絶縁層を形成する工程において、ネガ型感光性樹脂のワニスが塗布されるといえる。
k 上記a~jより、甲1-1には、次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1-1発明)
「ネガ型感光性樹脂であって、
(a)下部電極12を有する支持基板11上に、第1の開口22を有する第1の絶縁層21を形成する工程であって、第1の絶縁層21はベースポリマーとしてフェノール樹脂を有し、さらに、硬化剤を含むネガ型感光性樹脂膜であり、支持基板11上の全面にネガ型感光性樹脂のワニスを塗布した後、露光・現像することにより第1の開口22を形成するようにパターニングされ、現像後、硬化処理(キュア)を行うものである工程、
(b)第1の絶縁層21を覆う絶縁膜23’を成膜し、絶縁膜23’は感光性絶縁膜であり、露光・現像されて第1の絶縁層21の第1の開口22と連通する第2の開口24、及び第1の開口22と連通しない第3の開口25を有する第2の絶縁層23となり、現像後、第2の絶縁層23の硬化処理(キュア)が行われ、第3の開口25は配線溝となり、第2の絶縁層23はポジ型感光性樹脂膜である工程、
(c)配線溝25が形成された第2の絶縁層23の表面に、拡散防止膜31及びめっきシード層32をスパッタ法又は真空蒸着法により順次形成する工程、
(d)電気めっき法によりビアホール26及び配線溝25をCuのめっき金属35’で充填する工程、
(e)化学的機械的研磨(CMP)法により、第2の絶縁層23が露出するまで余分なめっき金属35’、シード層32及び拡散防止膜31を除去し、トレンチ配線35及びビア36を形成する工程
を繰り返し行うことにより半導体チップを搭載する多層回路基板が形成される、ネガ型感光性樹脂。」
イ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と甲1-1発明とを対比する。
a 甲1-1発明において「第1の絶縁層21はベースポリマーとしてフェノール樹脂を有し、さらに、硬化剤を含むネガ型感光性樹脂膜で」あり、「第1の絶縁層21を形成する工程」は「ネガ型感光性樹脂のワニスを塗布した後、露光・現像することにより」「パターニングされ、現像後、硬化処理(キュア)を行う」ものであるから、甲1-1発明の「ネガ型感光性樹脂」は、硬化剤を含む硬化性樹脂であるといえ、本件発明11の「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有」する「樹脂組成物」に相当する。
b 甲1-1発明の「配線溝25」は「第2の絶縁層23の表面に」形成されたものであり、「トレンチ配線35」は「配線溝25をCuのめっき金属35’で充填する工程」及び「化学的機械的研磨(CMP)法により、第2の絶縁層23が露出するまで余分なめっき金属35’」「を除去」することにより形成されるものである。
よって、甲1-1発明の「トレンチ配線35」は、Cuのめっき金属35’からなるといえ、本件発明11の「銅配線」に相当する。
c 上記(b)より、甲1-1発明の「トレンチ配線35」は、「第2の絶縁層23」の表面に露出されると認められ、また、甲1-1発明の工程(a)~(e)は繰り返し行われるものであり、「第2の絶縁層23」の表面に露出する「トレンチ配線35」の上に「第1の絶縁層21」が形成され、「第1の絶縁層21」の上にさらに「第2の絶縁層23」及び「トレンチ配線35」が形成されるから、甲1-1発明の「第1の絶縁層21」は、積層される「トレンチ配線35」の間に形成されると共に「トレンチ配線35」に接するといえ、本件発明11の「銅配線と接する配線層間絶縁層」に相当する。
d 甲1-1発明は工程(a)の「第1の絶縁層21を形成する工程」において「ネガ型感光性樹脂のワニスを塗布し」、「硬化処理(キュア)」を行うものであるから、「ネガ型感光性樹脂」は「第1の絶縁層21」を形成するためのものであるといえ、上記(a)を踏まえると、本件発明11の「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」に相当する。
e 本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である」のに対し、甲1-1発明はそのような構成を有さない点で相違する。
f 本件発明11は「熱可塑性樹脂を更に含有する」のに対し、甲1-1発明は熱可塑性樹脂を含有しない点で相違する。
g 上記a~fより、本件発明11と甲1-1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物である、
樹脂組成物。」
(相違点1)
本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である」のに対し、甲1-1発明はそのような構成を有さない点。
(相違点2)
本件発明11は「熱可塑性樹脂を更に含有する」のに対し、甲1-1発明は熱可塑性樹脂を含有しない点。
(イ)当審の判断
相違点1及び2は関連するので、まとめて検討する。
甲1-2の第43頁第1行~第2行、第45頁右欄第6行~第17行、図4には、熱硬化型ポリフェニレンエーテル(以後PPE)樹脂であって、熱硬化型PPE樹脂が使用されたビルドアップパッケージの絶縁層の130℃、85%雰囲気で170時間後の吸水率が0.1%未満である、熱硬化型PPE樹脂が記載され、甲1-3の段落0023及び段落0032には、フレキシブル銅張積層板のポリイミド層は、吸湿率が1.0%以下である必要があり、吸湿率は、120℃で2時間乾燥した後23℃/50%RHの恒温恒湿機で24時間静置し、その前後の重量変化から式:吸湿率(%)=[(吸湿後重量-乾燥後重量)/乾燥後重量]×100により求められることが記載され、甲1-4の段落0102及び段落0103には、シリコンウエハ上に感放射線樹脂組成物をスピンコートし、加熱して形成した樹脂膜付きシリコンウエハを、高度加速寿命試験装置(HAST装置)に入れ、130℃、98%RHの環境下に200時間放置した後、樹脂膜の単位体積当たりの水分量をそれぞれ測定し、算出した吸水量が1500重量ppm未満であることが望ましいことが記載され、さらに、甲1-5の段落0105、段落0106及び表1には、シリコンウエハ上に感放射線樹脂組成物をスピンコートし、加熱して形成した樹脂膜付きシリコンウエハを、高度加速寿命試験装置(HAST装置)に入れ、130℃、98%RHの環境下に200時間放置した後、樹脂膜の単位体積当たりの水分量をそれぞれ測定し、算出した吸水量が1800重量ppm以下であることが望ましいことが記載されている。
しかし、甲1-2~甲1-5には、熱可塑性樹脂を含有させることは記載されていない。そして、樹脂組成物の吸湿率が、樹脂組成物を構成する材料により決まるものであることは技術常識から明らかであるから、甲1-1発明において、ネガ型感光性樹脂を甲1-2~甲1-5に記載された材料に替えたとしても、熱可塑性樹脂を含有するものとはならないから、相違点2に係る本件発明11の構成とすることはできない。
一方、甲1-6の段落0012、段落0106~0110、段落0171、表4には、樹脂フィルムの取扱い性を高めるために、マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する樹脂組成物に、分子中にスチレンユニットを有する熱可塑性エラストマを更に含有させること、樹脂組成物からなる樹脂フィルムを50mm角に切断したものを、121℃、2.2気圧中に5時間入れ、前後の質量を測定し算出した吸水率が0.16wt%であることが記載されている。
しかし、甲1-6に記載された樹脂組成物は感光性樹脂ではないから、甲1-6に記載された事項を甲1-1発明のネガ型感光性樹脂に適用して熱可塑性エラストマを含有させ、相違点2に係る本件発明11の構成とする動機はない。また、甲1-6に記載された樹脂組成物における「吸水率」は、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率ではない。そのため、仮に、甲1-1発明のネガ型感光性樹脂に甲1-6に記載された熱可塑性エラストマを含有させたとしても、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率は1%以下とはならないから、相違点1に係る本件発明11の構成とするはできない。
さらに、甲1-7~甲1-10には、熱可塑性樹脂を含有させることも、吸湿率についても記載されていない。
よって、本件発明11は、甲1-1発明と、甲1-2~甲1-10に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明12~18について
本件訂正後の請求項12~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記(ア)のとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18も、甲1-1発明と、甲1-2~甲1-10に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1-1には理由がない。
(3)請求項11~18に係る申立理由1-2(サポート要件)について
ア 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。(下線は、強調のため、当審が付与した。)
「【0010】
本発明は、良好な絶縁信頼性を有する配線層間絶縁層及び半導体装置、並びに該配線層間絶縁層を好適に形成できる樹脂組成物を提供することを目的とする。」
「【0179】
以上に説明した製造方法によって形成された配線層積層体10のおいては、130℃、相対湿度85%の環境に2時間放置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下であることにより、配線層間絶縁層に含まれる水分量は、極めて少なくなっている。このため、配線層間絶縁層内の水と銅との反応に起因する、銅の配線層間絶縁層内への拡散を良好に抑制できる。その結果、配線層間絶縁層の絶縁性を良好に保持し、銅配線同士の短絡を抑制できるので、配線層積層体10の絶縁信頼性を良好に向上できる。」(当審注:「2時間放置」は「200時間放置」の誤記であると認める。)
「【0217】
<吸湿率の測定>
・・・(中略)・・・この試料を、相対湿度85%、130℃に設定された恒温恒湿槽(エスペック株式会社製、商品名:EHS-221MD)内にて、200時間静置した。そして、恒温恒湿槽内を50℃まで下げた後、試料を取り出し、シリコンウェハ上から樹脂の一部を削り取った。削り取られた樹脂の一部を示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度:10℃/分、窒素フロー:400mL/分、温度範囲:25℃~150℃の条件下で測定した。150℃における上記の重量減少率を吸湿率として算出した。」
「【0220】
<b-HAST耐性>
・・・(中略)・・・得られた配線上に、スピンコートでワニスを積層し、90℃で5分間乾燥させた。・・・(中略)・・・樹脂膜の膜厚は、5μmとなるようにスピンコート条件を調整した。UVを1000mJ/cm2照射した後、180℃/1時間加熱して樹脂膜を硬化させた。なお、基材となるウェハ(6インチ径、厚さ400μm)と配線層の間には、パターンを形成する以外は全く同様の方法で作製した樹脂層がある。
得られた配線に、湿度85%、130℃の条件下において第1の接続配線55cと第2の接続配線55dとに3.3Vの電圧を印加し、所定の時間にわたって静置した。これにより、時間経過に伴う第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の変化を測定した。この試験では、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が、300時間以上、1×106Ω以上だったものを「A」(b-HAST耐性あり)とし、そうでなかったものを「B」(b-HAST耐性なし)として評価した。」
「【0221】
【表4】
[図:0001403617000003.jpg]
」
イ 当審の判断
本件特許明細書の段落0010より、発明が解決しようとする課題は、良好な絶縁信頼性を有する配線層間絶縁層を好適に形成できる樹脂組成物を提供することであるといえる。
本件特許明細書の段落0179には、上記課題を解決する手段として、130℃、相対湿度85%の環境に200時間放置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下であることが記載されており、段落0217、段落0220及び段落0221より、130℃、相対湿度85%の環境に200時間静置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下であることにより、上記課題を解決できることが示されている。
そして、本件発明11~18は、上記「130℃、相対湿度85%の環境に200時間放置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下である」構成を備えるから、当業者は、本件発明11により、本件特許明細書に記載された課題を解決できることを理解できるといえる。
よって、本件発明11~18は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであり、請求項11~18に係る申立理由1-2には理由がない。
(4)請求項11~18に係る申立理由1-3(実施可能要件)についての当審の判断
ア 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。)
「【0032】
2価の炭化水素基は、一実施形態において、高周波特性及び耐HAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)性をより効果的に高める観点から、下記式(II)で表される基である。
【化5】
[図:0001403617000004.jpg]
式中、R2及びR3は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル基を表す。」
「【0075】
熱可塑性樹脂は、その吸湿性及び誘電率を抑制できる観点から、例えばシロキサン鎖を有する樹脂を含む。・・・(中略)・・・」
「【0090】
テトラカルボン酸二無水物は、樹脂組成物中の溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性を付与する観点から、下記式(6)又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【化18】
[図:0001403617000005.jpg]
【化19】
[図:0001403617000006.jpg]
」
「【0111】
以下、第1実施形態及び第2実施形態に共通する事項を説明する。樹脂組成物は、低吸湿性及び低透湿性を付与する観点から、フィラー(充填材)を更に含んでもよい。」
イ 当審の判断
上記アより、本件特許明細書には、吸湿率を低減する方法として、2価の炭化水素基を上記式(II)で表される基とすること、シロキサン鎖を有する樹脂を含有させること、上記式(6)又は式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有させること、及び、フィラー(充填材)を含有させることが開示されており、当該手段を組み合わせて、当業者は、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である構成を実施することができるといえ、それにより本件特許明細書に記載された課題を解決できることは、上記(3)において検討したとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明11~18を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであり、請求項11~18に係る申立理由1-3は理由がない。
(5)請求項11~18に係る申立理由1-4(明確性要件)について
本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あるものであり、「膜厚10μm」との特定により、樹脂組成物の形状は膜状であり、厚さは10μmであると認められる。それにより、本件発明11における「硬化物」となる樹脂組成物の形状及び大きさが特定されるから、「130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率」は特定され、明確であるといえる。
よって、本件発明11~18は明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであり、請求項11~18に係る申立理由1-4は理由がない。
2 申立人2による特許異議申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった、申立人2が主張する特許異議申立理由は、以下のとおりである。なお、申立人2が提出した甲第1号証~甲第9号証を、以下、「甲2-1」~「甲2-9」という。
(申立理由2-1)請求項1~10に係る発明は、甲2-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-2)請求項1~11、13~18に係る発明は、甲2-1に記載された発明に基づき、又は、甲2-1に記載された発明と甲2-3、甲2-5~甲2-7に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11、13~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-3)請求項1に係る発明は、甲2-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-4)請求項1、11、13~18に係る発明は、甲2-2に記載された発明に基づき、又は、甲2-2に記載された発明と甲2-1、甲2-3、甲2-5~甲2-7に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、11、13~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-5)請求項1~4、8~11に係る発明は、甲2-3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、8~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-6)請求項1~4、8~18に係る発明は、甲2-3に記載された発明に基づき、又は、甲2-3に記載された発明と甲2-1、甲2-2、甲2-4及び甲2-6に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、8~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-7)請求項1に係る発明は、甲2-4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-8)請求項1、11、13~18に係る発明は、甲2-4に記載された発明に基づき、又は、甲2-4に記載された発明と甲2-1、甲2-3~甲2-7に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、11、13~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-9)請求項1、2、10、11、17に係る発明は、甲2-5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、10、11、17に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-10)請求項1、2、10~18に係る発明は、甲2-5に記載された発明に基づき、又は、甲2-5に記載された発明と甲2-1~甲2-4、甲2-6に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、10~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-11)請求項1、11、12に係る発明は、甲2-6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、11、12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-12)請求項1、11~18に係る発明は、甲2-6に記載された発明に基づき、又は、甲2-6に記載された発明と甲2-1、甲2-4に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-13)請求項1~7、10~18に係る発明は、甲2-7に記載された発明に基づき、又は、甲2-7に記載された発明と甲2-1、甲2-4に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7、10~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-14)請求項1~25に係る発明は、甲2-8に記載された発明と甲2-1~甲2-7に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~25に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-15)請求項1~7、10に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(甲2-9の国際公開参照)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~7、10に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-16)請求項1~25は、樹脂組成物の硬化物の成膜条件が特定されていないため、成膜条件によっては樹脂組成物の硬化物の吸湿率を1%以下にすることができず、課題を解決することができないから、請求項1~25に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2-17)請求項1~25に係る発明は、樹脂組成物の硬化物の吸湿率の下限が特定されていないため、発明の範囲が明確でないから、請求項1~25に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、取り消されるべきものである。
甲2-1:特開2013-083958号公報
甲2-2:国際公開第2015/141719号
甲2-3:特開2011-042711号公報
甲2-4:国際公開第2010/041651号
甲2-5:特開2013-108025号公報
甲2-6:特開2002-031889号公報
甲2-7:国際公開第2016/114286号
甲2-8:特開2011-003884号公報
甲2-9:特願2016-072761号(国際公開第2017/170643号参照)
(1)請求項1~10、19~25に係る申立理由について
上記「第2 訂正の適否」において述べたように、本件訂正により本件訂正前の請求項1~10、19~25は削除されたため、申立理由2-1~2-17のうち、本件訂正前の請求項1~10、19~25に係る申立を却下する。
(2)請求項11、13~18に係る申立理由2-2(甲2-1を主引用例とする進歩性)について
ア 甲2-1の記載事項、発明
(ア)甲2-1には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
従来、半導体素子用保護膜、半導体表層に形成される層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜には、耐熱性、電気的特性、及び機械的特性に優れるポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物が用いられている。・・・(中略)・・・」
「【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物において、特定のビスマレイミド化合物、光重合開始剤、及び特定のケイ素化合物とを組み合わせて用いることにより、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能となり、また、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来のような高温での熱硬化を必要としないことを見出した。さらに、このような感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れており、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜等として特に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【0069】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は前記(I)ビスマレイミド化合物、前記(II)光重合開始剤、及び前記(III)ケイ素化合物を含有する。本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(II)光重合開始剤の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1~15質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、露光時において、光照射による2量化反応が十分に進行せず、現像時に重合膜が無機表面保護膜から剥離する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、反応が進行しすぎて未露光部の重合反応が進行してしまうため、微細なパターンを形成することが困難となる傾向にある。」
「【0095】
(実施例1)
先ず、(I)成分としてビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)100質量部、(II)成分として光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)1質量部、及び(III)成分としてケイ素化合物1(信越化学工業株式会社製、「X-40-2655A」)0.25質量部を、固形分濃度が50質量%となるように溶剤(キシレン)に添加し、攪拌機により十分に攪拌して固形分を溶解せしめた。次いで、この溶解液を1μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、不溶物を除去して感光性樹脂組成物を得た。」
「【0099】
(実施例4)
(III)成分としてケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X-12-984S」)を0.5質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cm2において開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は92MPaであり、破断伸度は101%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。さらに、得られた感光性樹脂組成物を用いて密着性評価を行った結果を表3に示す。」
(イ)上記(ア)より、甲2-1には次の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されている。
(甲2-1発明)
「ビスマレイミド化合物成分としてビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI-3000」、固形分100%)100質量部、
光重合開始剤成分として光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)1質量部、
及びケイ素化合物成分としてケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X-12-984S」)0.5質量部を、
固形分濃度が50質量%となるように溶剤(キシレン)に添加し、攪拌機により十分に攪拌して固形分を溶解せしめ、この溶解液を1μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、不溶物を除去して得た感光性樹脂組成物であって、
感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は半導体表層に形成される層間絶縁膜として用いることができる、
感光性樹脂組成物。」
イ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と甲2-1発明とを対比する。
a 甲2-1発明は「感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は半導体表層に形成される層間絶縁膜として用いることができる」るものであり、甲2-1発明の「感光性樹脂組成物」は、硬化して半導体表層に形成される層間絶縁膜として用いることができるものであるから、本件発明11の「硬化性樹脂と」「を含有し、銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」に相当する。
しかし、本件発明11は「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」のに対し、甲2-1発明は「半導体表層に形成される層間絶縁膜として用いることができる」ものの、配線層間絶縁層が銅配線と接することが特定されない点で相違する。
b 甲2-1発明の「光重合開始剤」として添加される「光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE-01」)1質量部」は、本件発明11の「硬化剤」に相当する。
c 本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あるのに対し、甲2-1発明は吸湿率が特定されない点で相違する。
d 本件発明11は「熱可塑性樹脂を更に含有する」のに対し、甲2-1発明は熱可塑性樹脂を含有しない点で相違する。
e 上記a~dより、本件発明11と甲2-1発明とは以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物である、
樹脂組成物。」
(相違点3)
本件発明11は「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる」のに対し、甲2-1発明は「半導体表層に形成される層間絶縁膜として用いることができる」ものの、配線層間絶縁層が銅配線と接することが特定されない点。
(相違点4)
本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あるのに対し、甲2-1発明は吸湿率が特定されない点。
(相違点5)
本件発明11は「熱可塑性樹脂を更に含有する」のに対し、甲2-1発明は熱可塑性樹脂を含有しない点。
(イ)当審の判断
a 事案に鑑み、相違点4及び5から検討する。また、相違点4及び5は関連するので、まとめて検討する。
樹脂組成物が含有する材料が異なれば、その吸湿率も異なることは技術常識から明らかであるところ、下記「(4)イ(ア)f」、「(5)ア」、
「(6)イ(ア)e」のとおり、甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7には少なくとも「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あることは記載されていない。そのため、仮に、甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7に記載された事項に基づき、甲2-1発明のネガ型感光性樹脂に熱可塑性エラストマを含有させた場合、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率は1%以下とはならず、相違点4に係る本件発明11の構成とすることはできない。
よって、甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7に記載された事項を考慮しても、甲2-1発明を相違点4及び5に係る本件発明11の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
b 申立人2の主張について
なお、申立人2は、異議申立書の第86頁第9行~第87頁第19行において、本件特許明細書に記載された実施例7の組成物と甲2-1発明の樹脂組成物とは実質的に同一であるから、甲2-1発明は、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である旨の主張をしている。
仮にそうであるとしても、上記aにおいて検討したとおり、樹脂組成物が含有する材料が異なればその吸湿率も異なるから、甲2-1発明を熱可塑性樹脂を含有するものとすることにより、吸湿率は変化し、相違点4に係る本件発明11の構成を備えたものではなくなる。
よって、上記申立人2の主張を採用することはできない。
c まとめ
以上のとおりであるから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2-1に記載された発明と、甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明13~18について
本件訂正後の請求項13~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記アのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明13~18も、甲2-1に記載された発明と、甲2-3~甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11、13~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2-2には理由がない。
(3)請求項11、13~18に係る申立理由2-4(甲2-2を主引用例とする進歩性)、請求項11、13~18に係る申立理由2-8(甲2-4を主引用例とする進歩性)について
ア 請求項11について
甲2-2及び甲2-4に記載された発明は、いずれも、少なくとも上記(2)イ(ア)eで挙げた相違点4及び5と同じ点で本件発明11と相違し、その点については上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2-2に記載された発明と甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2-4に記載された発明と甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 請求項13~18について
本件訂正後の請求項13~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記アのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明13~18は、甲2-2に記載された発明と甲2-1、甲2-3~甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2-4に記載された発明と甲2-1、甲2-3~甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11、13~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、請求項11、13~18に係る申立理由2-4及び2-8には理由がない。
(4)請求項11に係る申立理由2-5(甲2-3を主引用例とする新規性)及び請求項11~18に係る申立理由2-6(甲2-3を主引用例とする進歩性)について
ア 甲2-3の記載事項、発明
(ア)甲2-3には、以下の事項が記載されている。
「【0051】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物におけるエポキシ化ポリブタジエン化合物は、得られる硬化物に柔軟性を向上させるだけでなく、ソルダーレジスト過硬化時の応力緩和付与のために用いられる。これにより、優れたクラック耐性が得られ、冷熱サイクル耐性を向上させることが可能となる。」
「【0116】
このように構成される本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、所定の組成で調製した後、例えば、有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、揮発乾燥して乾燥塗膜が形成される。」
「【0122】
このとき、乾燥塗膜が形成される基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。」
「【0131】
[カルボキシル基含有樹脂(A-1)の合成]
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子社製、商品名:ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。
【0132】
次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0133】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。
【0134】
その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、不揮発分71%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。以下、この反応溶液を樹脂溶液A-1と称す。」
「【0138】
【表1】
[図:0001403617000007.jpg]
備考
*1:ZFR-1401H(固形分:65.0%、固形分酸価:100 日本化薬社製)
*2:ZCR-1601H(固形分:65.0%、固形分酸価:100 日本化薬社製)
*3:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*4:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]1,1-(O-アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*5:エポキシ化ポリブタジエン化合物(ダイセル化学社製)
*6:ビスマレイミド化合物(DIC社製 MIA-200)
*7:4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業社製 BMI-1000H)
*8:3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業社製 BMI-5100)
*9:1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業社製 BMI-TMH)
*10:2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(三協化成社製 ジスネット F)
*11:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工社製 カレンズ MTBD1)
*12:2-メルカプトベンゾチアゾール(川口化学工業社製 アクセル M)
*13:ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製)
*14:ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製)
*15:メチル化メラミン樹脂(三和ケミカル社製)
*16:酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*17:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製)
*18:B-30(堺化学社製)
*19:C.I.Pigment Blue 15:3
*20:C.I.Pigment Yellow 147
*21:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」
「【0145】
<加湿試験(HAST)後の絶縁性>
表1に記載の各実施例及び比較例の組成物を、クシ型電極(ライン/スペース=50μm/50μm)が形成された基板に塗布し、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、192時間、HAST(Highly Accelerated Stress Test)を行った。HAST後の電気絶縁性を測定した。」
「【0149】
<基板作製>
回路形成された基板をバフ研磨した後、上記方法にて作製したドライフィルムを、真空ラミネーター(名機製作所製 MVLP(登録商標)-500)を用いて加圧度:0.8MPa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、未露光のソルダーレジスト層を有する基板(未露光の基板)を得た。
評価結果を表2に示す。
【表2】
[図:0001403617000008.jpg]
」
(イ)甲2-3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
a 段落0051には「本実施形態の光硬化性樹脂組成物におけるエポキシ化ポリブタジエン化合物は、得られる硬化物に柔軟性を向上させるだけでなく、ソルダーレジスト過硬化時の応力緩和付与のために用いられる。これにより、優れたクラック耐性が得られ、冷熱サイクル耐性を向上させることが可能となる。」と記載されている。
b 段落0116には「光硬化性樹脂組成物は」「有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に」「塗布し、揮発乾燥して乾燥塗膜が形成される。」と記載されている。
よって、光硬化性樹脂組成物は、有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整され、基材上に塗布され、揮発乾燥されて乾燥塗膜となるものである。
c 段落0122には「乾燥塗膜が形成される基材としては」「銅張積層版」「を挙げることができる。」と記載されている。
よって、乾燥塗膜が形成される基材は銅張積層版であるといえる。
d 段落0131~段落0134には「[カルボキシル基含有樹脂(A-1)の合成]」について「オートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子社製、商品名:ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温し」、「次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させ」、「その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得」、「得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを」「反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させ」、「その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗し」、「その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得」、「次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを」「反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ」、「カルボキシル基含有感光性樹脂を得」、「この反応溶液を樹脂溶液A-1と称す。」と記載されている。
e 段落0145には「<加湿試験(HAST)後の絶縁性>について「表1に記載の各実施例及び比較例の組成物を、クシ型電極(ライン/スペース=50μm/50μm)が形成された基板に塗布し、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、192時間、HAST(Highly Accelerated Stress Test)を行った。HAST後の電気絶縁性を測定した。」と記載されている。
よって、クシ型電極(ライン/スペース=50μm/50μm)が形成された基板に塗布し、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製し、この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、192時間、HAST(Highly Accelerated Stress Test)を行った後に電気絶縁性を測定することが記載されている。
f 段落0149の表2には「実施例8」について「HAST」が6(×108Ω)であることが示されている。
g 上記a~f及び表8の実施例8より、甲2-3には次の発明(以下、「甲2-3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2-3発明)
「オートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子社製、商品名:ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温し、次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させ、その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させ、その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗し、その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得、次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させて得たカルボキシル基含有感光性樹の反応溶液と、
2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]1,1-(O-アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からなる重合開始剤と、
エポキシ化ポリブタジエン化合物(ダイセル化学社製)からなるエポキシ化ブタジエンと、
3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業社製 BMI-5100)からなるビスマレイミド化合物と、
2-メルカプトベンゾチアゾール(川口化学工業社製 アクセル M)からなるメルカプト化合物と、
ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製)、ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製)、メチル化メラミン樹脂(三和ケミカル社製)、ベンゾグアナミン、フェノチアジン、酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ハイドロタルサイト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製)、B-30(堺化学社製)、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Yellow 147、シリコーン系消泡剤、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、
からなる光硬化性樹脂組成物であって、
有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整され、基材上に塗布され、揮発乾燥されて乾燥塗膜となるものであり、
乾燥塗膜が形成される基材は銅張積層版であり、
クシ型電極(ライン/スペース=50μm/50μm)が形成された基板に塗布し、露光・現像した後、熱硬化して、評価基板を作製し、この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5Vを荷電し、192時間、HAST(Highly Accelerated Stress Test)を行った後に測定した電気絶縁性が6(×108Ω)である
光硬化性樹脂組成物。」
イ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と甲2-3発明とを対比する。
a 甲2-3発明の「光硬化性樹脂組成物」は「2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]1,1-(O-アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からなる重合開始剤」を含有する硬化性樹脂であるから、本件発明11の「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有」する「樹脂組成物」に相当する。
b 甲2-3発明の「光硬化性樹脂組成物」は「乾燥塗膜と」なり、「乾燥塗膜が形成される基材は銅張積層版で」あり、乾燥塗膜が銅張積層版の上面の銅配線を絶縁するものであることは明らかであるから、甲2-3発明の「光硬化性樹脂組成物」は、本件発明11の「銅配線の」「層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」に相当する。
しかし、本件発明11は「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」であるのに対し、甲2-3発明は、銅配線と接するか否かは不明である点で相違する。
c 甲2-3発明の「エポキシ化ポリブタジエン化合物(ダイセル化学社製)からなるエポキシ化ブタジエン」は、上記ア(イ)aを踏まえると、本件発明11の「熱可塑性樹脂」に相当する。
d 本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である」のに対し、甲2-3発明は吸湿率が特定されない点で相違する。
f 上記a~dより、本件発明11と甲2-3発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、
銅配線の配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂を更に含有する、樹脂組成物。」
(相違点6)
本件発明11は「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」であるのに対し、甲2-3発明は、「銅配線の層間絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物」であるものの、銅配線と接するか否かは不明である点。
(相違点7)
本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である」のに対し、甲2-3発明は吸湿率がそのように特定されない点。
(イ)当審の判断
事案に鑑み、相違点7から検討する。
本件特許明細書の段落0220には「<b-HAST耐性>」について「無電解・電解銅メッキなどによりめっきアップし、CMPにより表面を平たん化した。なお、L/S(μm/μm)は3/3、5/5となるようにマスクサイズを調整した。次に、得られた配線上に、スピンコートでワニスを積層し、90℃で5分間乾燥させた。・・・(中略)・・・樹脂膜の膜厚は、5μmとなるようにスピンコート条件を調整した。UVを1000mJ/cm2照射した後、180℃/1時間加熱して樹脂膜を硬化させた。なお、基材となるウェハ(6インチ径、厚さ400μm)と配線層の間には、パターンを形成する以外は全く同様の方法で作製した樹脂層がある。得られた配線に、湿度85%、130℃の条件下において第1の接続配線55cと第2の接続配線55dとに3.3Vの電圧を印加し、所定の時間にわたって静置した。これにより、時間経過に伴う第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の変化を測定した。この試験では、第1の配線55aと第2の配線55bとの間の抵抗値が、300時間以上、1×106Ω以上だったものを「A」(b-HAST耐性あり)とし、そうでなかったものを「B」(b-HAST耐性なし)として評価した。」と記載され、段落0221の表2には「実施例7~13」の「b-HAST耐性」がいずれも「A」であったことが示されている。
しかし、本件特許明細書には「b-HAST耐性」を示す第1の配線55aと、第2の配線55bとの絶縁性の具体的な数値は記載されていない。また、本件特許明細書に記載された実施例おいて「L/S(μm/μm)は3/3、5/5」であるのに対し、甲2-3発明は「クシ型電極(ライン/スペース=50μm/50μm)」を測定しているから、両者は絶縁性を測定する配線間の距離が異なる。
したがって、甲2-3発明においてHASTにより評価した絶縁性が、本件特許明細書に記載された実施例の電気絶縁性と同程度であるとはいえないから、甲2-3発明の吸湿率が本件発明11の吸湿率と同程度であるともいえない。よって、相違点7は実質的なものである。
そして、下記「(5)ア」のとおり、甲2-6には、樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であることは記載されていないため、甲2-3発明に甲2-6に記載された事項を適用しても、相違点7に係る本件発明11の構成とすることはできない。
さらに、上記「(2)イ(ア)e」及び「(3)ア」のとおり、甲2-1、甲2-2及び甲2-4は熱可塑性樹脂を含有するものではないから、熱可塑性樹脂を含有する甲2-3発明に適用することはできない。
よって、甲2-1、甲2-2、甲2-4及び甲2-6に記載された事項を考慮しても、甲2-3発明を、上記相違点7に係る本件発明11の構成を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)まとめ
したがって、相違点6について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2-3に記載された発明ではなく、また、甲2-3に記載された発明と、甲2-1、甲2-2、甲2-4及び甲2-6に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明12~18について
本件訂正後の請求項12~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記イのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18も、甲2-3に記載された発明と、甲2-1、甲2-2、甲2-4及び甲2-6に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、また、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもなく、請求項11~18に係る申立理由2-5及び2-6には理由がない。
(5)請求項11及び17に係る申立理由2-9(甲2-5を主引用例とする新規性)、請求項11~18に係る申立理由2-10(甲2-5を主引用例とする進歩性)、請求項11及び12に係る申立理由2-11(甲2-6を主引用例とする新規性)、請求項11~18に係る申立理由2-12(甲2-6を主引用例とする進歩性)について
ア 請求項11について
甲2-5及び甲2-6に記載された発明は、いずれも、少なくとも上記(4)イ(ア)fで挙げた相違点7と同じ点で本件発明11と相違し、その点については上記(4)イ(イ)において説示したとおりである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2-5又は甲2-6に記載された発明ではなく、また、甲2-5に記載された発明と甲2-1~甲2-4及び甲2-6に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、甲2-6に記載された発明と甲2―1及び甲2-4に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 請求項12~18について
本件訂正後の請求項12~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記アのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明17は、甲2-5に記載された発明ではなく、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18は、甲2-5に記載された発明と甲2-1~甲2-4及び甲2-6に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12は、甲2-6に記載された発明ではなく、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18は、甲2-6に記載された発明と甲2―1及び甲2-4に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11、12及び17に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、また、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもないから、請求項11~18に係る申立理由2-9~2-12には理由がない。
(6)請求項11~18に係る申立理由2-13(甲2-7を主引用例とする進歩性)について
ア 引用文献、引用発明
(ア)甲2-7には、以下の事項が記載されている。
「[0117] [樹脂層付き支持体]
本実施形態では、上記の樹脂組成物を用いて、樹脂フィルムを製造することができる。なお、樹脂フィルムとは未硬化又は半硬化のフィルム状の樹脂組成物を指す。」
「[0129] 本実施形態に係る樹脂フィルムを用いた多層プリント配線板の製造方法を、図1に沿って説明する。図1は、本実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程を模式的に示す図である。本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法は、(a)内層回路基板に樹脂フィルムを積層して樹脂層を形成する工程(以下、「工程(a)」という)と、(b)樹脂層を加熱・加圧して硬化する工程(以下、「工程(b)」という)と、(c)硬化した樹脂層上にアンテナ回路層を形成する工程(以下、「工程(c)」という)とを有する。
[0130] 図1の(a)に示すように、工程(a)では、内層回路基板11に本実施形態に係る樹脂フィルム12を積層して樹脂フィルム12からなる樹脂層を形成する。
[0131] 積層方法は特に限定されないが、例えば、多段プレス、真空プレス、常圧ラミネーター、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いて積層する方法等が挙げられ、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いる方法が好ましい。これにより、内層回路基板11が表面に微細配線回路を有していてもボイドがなく回路間を樹脂で埋め込むことができる。
・・・(中略)・・・
[0134] 後述するアンテナ回路層14をエッチングにより樹脂層12a上に形成する場合、樹脂フィルム12上に更に金属箔13を積層して金属層13aを形成してもよい。金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛等が挙げられ、導電性の観点からは銅が好ましい。金属箔は合金であってもよく、例えば、銅合金として、ベリリウム又はカドミウムを少量添加した高純度銅合金が挙げられる。金属箔の厚みは、3~200μmが好ましく、5~70μmがより好ましい。
[0135] 図1の(b)に示すように、工程(b)では、工程(a)で積層した内層回路基板11及び樹脂層12aを加熱加圧して熱硬化させる。条件は特に限定されないが、温度100℃~250℃、圧力0.2~10MPa、時間30~120分間の範囲が好ましく、150℃~220℃がより好ましい。
[0136] 図1の(c)に示すように、工程(c)では、樹脂層12a上にアンテナ回路層14を形成する。アンテナ回路層14の形成方法は特に限定されず、例えば、サブトラクティブ法等のエッチング法、セミアディティブ法等によって形成してもよい。
[0137]サブトラクティブ法は、金属層13aの上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解し除去することによって、所望の回路を形成する方法である。薬液としては、例えば、塩化銅溶液、塩化鉄溶液等を使用することができる。・・・(中略)・・・」
「実施例
[0151] 以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
[0152][樹脂組成物]
下記手順に従って、各種の樹脂組成物を調製した。実施例1~8、実施例A1~A4及び比較例1~4の樹脂組成物の調製に用いた各原材料の使用量(質量部)は、表1及び表2にまとめて示す。
[0153] 温度計、還流冷却管及び攪拌装置を備えた300mLの4つ口フラスコに、表1又は2に示す各成分を投入し、25℃で1時間攪拌した後、#200ナイロンメッシュ(開口75μm)によりろ過して樹脂組成物を得た。
[0154] なお、表1及び2における各材料の略号等は、以下のとおりである。
・・・(中略)・・・
(3)BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]
・・・(中略)・・・
(6)BMI-4000[2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、大和化成工業株式会社製、商品名]
・・・(中略)・・・
(9)B-3000[ブタジエンホモポリマー、Mn:約3000、日本曹達株式会社製、商品名]
(10)PPO640[ポリフェニレンエーテル、Mn:約16000、SABICイノベーティブプラスチックス社製、商品名]
・・・(中略)・・・
(16)シリカスラリー[球状溶融シリカ、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/スラリー中の全固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:0.5μm、密度:2.2g/cm3、株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」]
(17)パーヘキシン25B[2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名]
・・・(中略)・・・
[0155]
[表1]
[図:0001403617000009.jpg]
」
「[0171][吸水率]
吸水率は、両面金属張硬化樹脂フィルムの両面の銅箔をエッチングし、50mm角に切断したものを試験片として、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理し、処理前後の質量を測定することで、処理前後の増加割合(重量%)を算出した。」
「[0173]
[図:0001403617000010.jpg]
」
(イ)上記(ア)より、甲2-7には「実施例8」について、次の発明(以下、「甲2-7発明」という。)が記載されている。
(甲2-7発明)
「温度計、還流冷却管及び攪拌装置を備えた300mLの4つ口フラスコに、
BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]16.0質量部、
BMI-4000[2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、大和化成工業株式会社製、商品名]3.1質量部、
B-3000[ブタジエンホモポリマー、Mn:約3000、日本曹達株式会社製、商品名]6.5質量部、
PPO640[ポリフェニレンエーテル、Mn:約16000、SABICイノベーティブプラスチックス社製、商品名]0.8質量部、
シリカスラリー[球状溶融シリカ、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/スラリー中の全固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:0.5μm、密度:2.2g/cm3、株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」]104.4質量部、
パーヘキシン25B[2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名]を0.53質量部、
トルエン6.9質量部、
及び、メチルエチルケトン4.5質量部
を投入し、25℃で1時間攪拌した後、#200ナイロンメッシュ(開口75μm)によりろ過して得た樹脂組成物であって、
樹脂組成物をプレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理し、処理前後の質量を測定し、算出した処理前後の増加割合(重量%)である吸水率が0.22wt%であり、
樹脂組成物を用いて樹脂フィルムを製造することができ、
内層回路基板に樹脂フィルムを積層して樹脂フィルムからなる樹脂層を形成し、
内層回路基板は表面に微細配線回路を有し、
樹脂フィルム上に更に金属箔を積層して金属層を形成し、
金属箔は銅であり、
内層回路基板及び樹脂層を加熱加圧して熱硬化させ、
金属層の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解し除去することによって、所望の回路を形成する、
樹脂組成物。」
イ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と甲2-7発明とを対比する。
a 甲2-7発明の「樹脂組成物」は、「樹脂組成物を用いて樹脂フィルムを製造することができ」、「樹脂フィルムからなる樹脂層を形成し」、「樹脂層を加熱加圧して熱硬化させ」るものであるから、本件発明11の「硬化性樹脂」「を含有」する「樹脂組成物」に相当する。
しかし、本件発明11は「硬化剤」を含有するのに対し、甲2-7発明は硬化剤を含有しない点で相違する。
b 甲2-7発明は「樹脂組成物を用いて樹脂フィルムを製造することができ」、「内層回路基板に樹脂フィルムを積層して樹脂フィルムからなる樹脂層を形成し、内層回路基板は表面に微細配線回路を有し」、「樹脂フィルム上に更に金属箔を積層して金属層を形成し、金属箔は銅であり」、「レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解し除去することによって、所望の回路を形成」するものであり、樹脂組成物は、内層回路基板の表面の微細配線回路と、銅である金属層から形成された回路との間に設けられた樹脂層となること、樹脂が絶縁性を有することは技術常識であること、樹脂層上に銅からなる金属層が積層され、金属層は回路となることから、樹脂組成物を用いて形成される樹脂層は、配線層間絶縁層となり、回路となる銅層と接するといえる。
よって、甲2-7発明の「樹脂組成物」は、本件発明11の「銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物」に相当する。
c 甲2-7の段落0004には、「従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、優れた高周波特性を示す耐熱性熱可塑性ポリマーとしてポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂が使用されている。」と記載されている。よって、甲2-7発明が「4つ口フラスコに」少なくとも「PPO640[ポリフェニレンエーテル、Mn:約16000、SABICイノベーティブプラスチックス社製、商品名]」「を投入し」「攪拌した後」「ろ過して得た樹脂組成物」であることは、本件発明11の「熱可塑性樹脂を更に含有する、樹脂組成物」であることに相当する。
d 本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あるのに対し、甲2-7発明は「プレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理し、処理前後の質量を測定し、算出した処理前後の増加割合(重量%)である吸水率が0.22wt%で」あるものの、本件発明11の「吸湿率」の条件を満たすものではない点で相違する。
e 上記a~dより、本件発明11と甲2-7発明とは以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「硬化性樹脂を含有し、
銅配線と接する配線層間絶縁層を形成するために用いられる、樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂を更に含有する、樹脂組成物。」
(相違点8)
本件発明11は「硬化剤」を含有するのに対し、甲2-7発明は硬化剤を含有しない点。
(相違点9)
本件発明11は「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あるのに対し、甲2-7発明は「プレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理し、処理前後の質量を測定し、算出した処理前後の増加割合(重量%)である吸水率が0.22wt%で」あるものの、本件発明11の「吸湿率」の条件を満たすものではない点。
(イ)当審の判断
a 相違点8について検討する。
甲2-7発明は、硬化剤を用いることなく硬化するよう調整された樹脂組成物であるから、さらに硬化剤を加える動機はない。よって、甲2-1~甲2-6に記載された事項を考慮しても、甲2-7発明を相違点8に係る本件発明11の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
b 相違点9について検討する。
甲2-7発明の「プレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理し」た条件は、本件発明11における「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた」条件よりも、処理時間が短く処理温度が低いこと、並びに、相対湿度が特定されていないため、甲2-7発明において樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下であるとはいえない。
また、樹脂組成物の吸湿率が、樹脂組成物を構成する材料により決まるものであることは技術常識から明らかであるから、甲2-7発明の光硬化性樹脂組成物の材料を変更することなく、吸湿率のみを変更して、相違点9に係る本件発明11の構成とすることはできない。そして、甲2-1~甲2-6には、甲2-7発明と同じ樹脂組成物は記載されていないから、甲2-1~甲2-6に記載された事項を考慮しても、甲2-7発明を、上記相違点9に係る本件発明11の構成を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
c まとめ
したがって、本件発明11は、甲2-7に記載された発明と、甲2-1~甲2-6号証に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明12~18について
本件訂正後の請求項12~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記イのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18も、甲2-7に記載された発明と、甲2-1、甲2-4及び甲2-4に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、請求項11~18に係る申立理由2-13には理由がない。
(7)請求項11~18に係る申立理由2-14(甲2-8を主引用例とする進歩性)について
ア 請求項11について
(ア)甲2-8の記載事項、発明
甲2-8は、上記「1 (2)ア」の甲1-1であり、甲2-8に記載された発明は、甲1-1発明である。
(イ)本件発明11について
a 対比
(a)本件発明11と甲1-1発明とを対比すると、上記「1(2)イ」のとおり、両者は相違点1及び2で相違する。
b 当審の判断
相違点1及び2は関連するので、まとめて検討する。
樹脂組成物が含有する材料が異なれば、その吸湿率も異なることは技術常識から明らかであるところ、上記のとおり、甲2-3、甲2-5、甲2-6及び甲2-7には少なくとも「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下で」あることは記載されておらず、甲2-1、甲2-2及び甲2-4には少なくとも「熱可塑性樹脂」を含有することは記載されていないから、甲2-1~甲2-7のいずれにも、相違点1及び2に係る本件発明11の構成の両方を備えた技術事項は記載されていない。
したがって、甲2-1~甲2-7に記載された事項を考慮しても、甲1-1発明を相違点1及び2に係る本件発明11を満たす構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明11は、甲2-8に記載された発明と、甲2-1~甲2-7に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明12~18について
本件訂正後の請求項12~18は、本件訂正後の請求項11を引用し、その構成をすべて含むものである。そして、上記アのとおりであるから、本件発明11の構成をすべて含む本件発明12~18も、甲2-8に記載された発明と、甲2-1~甲2-7に記載された事項とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件の請求項11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、請求項11~18に係る申立理由2-14には理由がない。
(8)申立理由2-16(サポート要件)について
本件訂正後の請求項11の「樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物」は、樹脂組成物が膜厚10μmの状態から完全に硬化したものと解されるから、本件発明11の「樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物」の成膜条件は、樹脂組成物が膜厚10μmで完全に硬化するのに適した条件であることを、当業者は理解することができる。
そして、上記1(3)イにおいて検討したとおり、本件発明11~18は、上記「130℃、相対湿度85%の環境に200時間放置された後の配線層間絶縁層の吸湿率が1質量%以下である」構成を備えるから、当業者は、本件発明11により、本件特許明細書に記載された課題を解決できることを理解できるといえる。
よって、本件発明11~18は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、本件特許の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たす。
したがって、請求項11~18に係る申立理由2-16は理由がない。
(9)申立理由2-17(明確性要件)について
本件訂正後の請求項11に記載された「前記樹脂組成物の膜厚10μmの硬化物の、130℃、相対湿度85%の環境に200時間置かれた後の吸湿率が1質量%以下である」は、「吸湿率」の数値範囲を「1質量%以下」という特定の範囲に規定するものであり、当業者は、上記発明特定事項の範囲を明確に理解できる。
よって、本件発明11と、請求項11を引用する請求項12~18に係る本件発明12~18は明確であり、本件特許の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
したがって、請求項11~18に係る申立理由2-17は理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明11~18に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件発明11~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により請求項1~10及び請求項19~25に係る特許は削除され、請求項1~10及び請求項19~25に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700274