特許異議申立
2021-701203
吸水性樹脂粒子、吸収性物品、吸水性樹脂粒子を製造する方法、及び吸収性物品の液漏れを抑制する方法
- 審判番号
- 2021-701203
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-556832
- 登録番号
- 6889811
- 請求日
- 2021年12月17日
- 審決日
- 2023年01月26日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友精化株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】沖田 英樹
- 【権利者代理人】阿部 寛
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6889811号発明「吸水性樹脂粒子、吸収性物品、吸水性樹脂粒子を製造する方法、及び吸収性物品の液漏れを抑制する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6889811号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕、6及び7について訂正することを認める。
特許第6889811号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6889811号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)4月16日(優先権主張 平成31年4月23日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年5月25日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月17日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされ、令和4年4月1日付けで取消理由が通知され、同年6月3日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月9日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、特許異議申立人から応答がなく、同年9月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月4日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和4年6月3日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和4年11月4日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5ないし7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年11月4日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「液透過比率Aが、1%以上60%以下」
とあるのを、
「液透過比率Aが、1%以上17%以下」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「 吸水量Bが、」
とあるのを、
「 吸水量Cが40~65g/gであり、
吸水量Bが、」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、」
とあるのを、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、
「生理食塩水の質量である、」
とあるのを、
「生理食塩水の質量であり、
当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μmである、」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「液透過比率Aが1%以上60%以下」
とあるのを、
「液透過比率Aが1%以上17%以下」
と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」
とあるのを、
「で、吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである、吸水性樹脂粒子を選別する工程」
と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、」
とあるのを、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、」
と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に、
「液透過比率Aが1%以上60%以下」
とあるのを、
「液透過比率Aが1%以上17%以下」
と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に、
「とすることを含み、」
「とし、吸水量Cを40~65g/gとし、吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μmとすることを含み、」
と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、」
とあるのを、
「前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、」
と訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「液透過比率A」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「吸水量C」の数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「吸水量B」を決定するために用いられる「スパンボンド不織布」の構造を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項1についての訂正は、「吸水性樹脂粒子」の「中位粒子径」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし5についての訂正について
訂正事項1ないし4による請求項2ないし5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項2及び3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項6についての訂正について
訂正事項5による請求項6についての訂正は、「液透過比率A」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項6についての訂正は、「吸水量C」の数値範囲を限定した上で、「吸水性樹脂粒子」の「中位粒子径」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7による請求項6についての訂正は、「吸水量B」を決定するために用いられる「スパンボンド不織布」の構造を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項5ないし7による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項7についての訂正について
訂正事項8による請求項7についての訂正は、「液透過比率A」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項9による請求項7についての訂正は、「吸水量C」の数値範囲を限定した上で、「吸水性樹脂粒子」の「中位粒子径」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10による請求項7についての訂正は、「吸水量B」を決定するために用いられる「スパンボンド不織布」の構造を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項8ないし10による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし10による請求項1ないし7についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし10による請求項1ないし7についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし4による請求項1ないし5についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項5ないし7による請求項6についての訂正及び訂正事項8ないし10による請求項7についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし7に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕、6及び7について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものであり、
下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり、
吸水量Cが40~65g/gであり、
吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、
前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、
吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、
当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μmである、
吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
当該吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量が20mL/g以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子を含む、吸収性物品。
【請求項4】
前記液体透過性シートが、スパンボンド層を有するスパンボンド不織布を含む、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリオレフィン繊維によって形成された不織布である、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものであり、
当該方法が、下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが1%以上17%以下で、吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである、吸水性樹脂粒子を選別する工程を含み、
吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、
前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、
吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である、吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【請求項7】
エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものであり、
当該方法が、下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される吸水性樹脂粒子の液透過比率Aを1%以上17%以下とし、吸水量Cを40~65g/gとし、吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μmとすることを含み、
吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、
前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、
吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である、方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年12月17日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第6号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(甲第17号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第17号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第17号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 申立理由8(甲第19号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第19号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第19号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
9 申立理由9(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明が解決する課題と効果(スパンボンド不織布を含む吸収性物品からの液漏れ抑制(【0004】及び【0009】)に対して、本件明細書の実施例では、【0120】~【0124】にて、吸水性樹脂10gを含む吸収性物品を用いて、人工尿80mLを10分間隔で3回注入して漏れ量(g)を確認している。ここで液漏れを抑制するためには所定の吸水量や吸水速度が必要なことは自明であり、すなわち吸水性樹脂10gが人工尿80mL×3回=240mLを吸収するだけの吸水量B、吸水量C(例えば、本件明細書における実施例1~3の吸水量C=44~59g/g、【0019】に記載の「吸水量Cは、40~65g/g」)が課題解決に必須であることは言うまでもない。
さらに、本件明細書の【0122】の実施例で使用される人工尿の組成(NaCl:1.0%、CaCl2:0.03%、MgCl2:20.06%、界面活性剤、青色色素)は生理食塩水(NaCl:0.9%)より高い塩濃度のため、吸水量B/吸水量Cの測定に使用される生理食塩水に比べて、おむつ評価に使用される人工尿では吸水性樹脂の吸水倍率はさらに低くなることも自明である。
ところが、本件特許発明1、6及び7では液透過比率A(=吸水量B/吸水量C)=1~60%は規定されているものの、吸水量B及び吸水量Cの絶対値など吸水性樹脂の吸水特性は一切規定されていない。これについて本件特許権者は、令和3年4月1日付の審判請求書で、「本願発明を実施するにあたり「液透過比率A」の値を制御できれば足りるのであって、「吸収量B」及び「吸収量C」のいずれかのみを制御する必要はない。」と主張している。
しかしながら、吸水量B及び吸水量Cの絶対値を規定せず、液透過比率Aというパラメータの比率で規定された本件特許発明1、6及び7は、吸収性物品の液保持力が不十分であろう低吸収倍率の吸水性樹脂(例えば、吸水量C=5g/g、吸水量B=1g/g)といった、本件特許発明の課題を解決できないことが明らかな範囲を包含している。
このことから、本件特許発明1、6及び7は液透過比率A(=吸水量B/吸水量C)=1~60%のみ規定することでは課題を解決できないことは明らかであり、吸水量B及び吸水量Cの絶対量(具体的には生理食塩水よりさらに吸収されない人工尿240mlを吸収できる吸水倍率の絶対値)を規定しない本件特許発明1、6及び7は課題を解決し得ない範囲、本件明細書に記載されていない発明を含んでいることは明らかである。
さらに補足すると、例えば甲1~甲4では、吸収性物品用の吸水性樹脂として、吸収性物品の課題解決に、“吸収倍率の絶対値を含めたパラメータ”で規定した吸水性樹脂が開示されている。
本件特許発明1、6及び7の課題解決のためには“吸収倍率の絶対値”が必要なことは自明であり、甲1~甲4の開示からも、本件特許発明1、6及び7は課題を解決し得ない範囲を含み、本件明細書の範囲を超えていることは明らかである。
よって、本件特許発明1、6、7及び本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでなく、サポート要件欠如により取り消されるべきである。
(2)本件特許権者は、令和3年4月1日付の審判請求書にて「無機微粒子が架橋比率Aの達成手段である」主張を行い、本件特許発明1、6及び7に「0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子を含む」を規定する補正を行った。
しかしながら、まず、本件明細書の【0065】で液透過比率Aの達成手段とされる無機粒子の例示は“非晶質シリカ”のみであり、実施例1~3では“非晶質シリカ=2%または0.2%”が使用されている。これらの記載から、無機粒子の粒径や構成元素や親水化度の如何にも関わらず、すべての無機粒子で本件の液透過比率A=1~60%を達成できるかどうかは判じ得ない。
よって、無機粒子を非晶質シリカに限定しない本件特許発明1、6及び7は、本件明細書の範囲を超え、本件特許発明1、6及び7の課題を解決し得ない範囲を包含している。
また、本件特許権者は、本件明細書の【0065】における「無機粒子を多く含む吸水性樹脂粒子は、より小さな液透過比率Aを示す傾向がある。」との記載を以て、令和3年4月1日付の審判請求書にて、「無機粒子が架橋比率Aの達成手段である」との主張を行っている。しかしながら、本件明細書の比較例3(非晶質シリカ=2.0%/液透過比率=74%)と比較例4(非晶質シリカ=0.2%/液透過比率=64%)との対比にて、「無機粒子を多く含む吸水性樹脂粒子は、より大きな液透過比率Aを示す」ことが示されている。
よって、本件特許発明1、6及び7に規定された「0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子を含む」では、本件特許発明1、6及び7に規定された「液透過比率A」を達成する手段が反映されていないことは明らかであり、その結果、これら発明の課題の解決手段が反映されていない。
さらに、本件明細書の比較例3及び4に示される、「無機粒子を多く含む吸水性樹脂粒子にて、吸水量C(飽和吸水量)はほぼ変化無しで、吸収量B(無加圧DW5分値)が向上し、結果的に、より大きな液透過比率Aを示す」ことは吸水性樹脂の技術常識である。
例えば、甲5で、「シリカなどの無機微粒子が、重合体粒子の吸水速度や通液性を向上する点で好ましい(【0058】)」等、シリカ等の無機粒子にて吸収速度が向上、すなわち短時間の吸収量評価である無加圧DW5分値が向上することが開示されている。すなわち、「無機粒子が架橋比率Aの達成手段である」という主張による、本件特許発明1、6及び7における「0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子を含む」の規定について、【0065】の「無機粒子を多く含む吸水性樹脂粒子は、より小さな液透過比率Aを示す傾向」は、本件明細書にも記載されておらず、甲5(シリカ等の無機粒子にてDW5分が向上することを開示する)からも、本件特許権者の主張(無機粒子が液透過比率Aの達成手段)は成り立たない。
従って、本件特許発明1、6、7及び本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5は、発明の課題を解決し得ない範囲を包含し、本件特許発明の課題の解決手段が反映されていない。
(3)本件特許権者は、令和2年12月15日付の意見書にて、「架橋重合体」が「内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたもの」と補正した上で、吸水性樹脂粒子が「架橋重合体」を含み、その単量体が主として「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物」であることが特定され、その上で、「架橋重合体」が「内部架橋剤」及び「表面架橋剤」によって架橋されたものであることが特定された旨を述べている。
一方で、本件明細書に記載された実施例3の吸水性樹脂粒子では内部架橋剤を使用していない。よって、本件明細書の記載を参酌すると、本件特許発明1~7は内部架橋剤が必須な要件であるかが明確でない。従って、内部架橋剤が規定されたとしても依然として、本件特許発明1~7は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでない。
10 申立理由10(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1、6及び7では、吸水量Bを規定するために、スパンボンド不織布(目付11~15g/m2)が使用され、本件明細書の【0014】では「親水化処理されたスパンボンド不織布」が記載されるものの、本件特許発明1、6及び7ではスパンボンド不織布の“構造/材質/繊維長/親水化の程度/繊維太さ(デニール)”などが一切規定されていない。しかしながら、本件明細書に記載のスパンボンド不織布は、“材質/構造/親水化度/繊維太さ(デニール)”がさまざまである。本件明細書の【0014】には「吸水量Bを測定するために用いられるスパンボンド不織布は・・・親水化処理されたポリプロピレン繊維よって形成された不織布・・・4層構成を有し、・・・」、【0084】には「液体透過性シート30は、・・・(SS不織布)、(SMS不織布)、(SMMS不織布)・・・」、【0085】には、「親水度は、10~150であってもよい・・・」、【0087】には「厚さは、20~1400μmであってもよい・・・」と記載されているにすぎない。
ここで、本件特許発明1、6及び7における吸水量Bは「スパンボンド不織布を透過する生理食塩水の吸水量(g/g)」で規定されるものであるから、スパンボンド不織布(目付11~15g/m2)の“構造/材質/繊維長/親水化の程度/繊維太さ(デニール)”などによって、その絶対値が変わるのは自明である。目付量により、スパンボンド不織布の液透過性を規定、評価できるものではない。
よって、スパンボンド不織布の“構造/材質/繊維長/親水化の程度/繊維太さ(デニール)”などを規定しない本件請求項1、6及び7は、吸水量B及びそれに由来する液透過比率Aが一義的に評価できないことは明らかであり、本件特許発明1、6及び7は明確でない。
また、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~4も、本件特許発明1、6及び7と同じく明確でない。
(2)本件特許発明5について、本件明細書の【0085】及び【0086】に、不織布の親水化の手法や親水度が例示されているものの、本件特許発明5の「スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリオレフィン繊維によって形成された不織布である・・・」との記載では、親水化の程度や手法が規定されていない。
よって、本件特許発明5は明確でない。
(3)本件特許発明6に規定された「液透過比率Aが1%以上60%以下である、吸水性樹脂粒子を選別する工程を含み、」は実施例で示されているのか不明である。単に液透過比率Aが1%以上60%以下を満たす吸水性樹脂が得られることで選別されたと言えるのか、あるいは、液透過比率Aが1%以上60%以下を満たさないものが必須に存在する中から液透過比率Aが1%以上60%以下を満たすものを選別するのか明確ではない。仮に液透過比率Aが1%以上60%以下を満たさないものが必須に存在する中から選別するとすれば、1粒ごとに選別するのか、他の方法で選別するのか不明である。
よって、本件特許発明6は明確でない。
11 申立理由11(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)上記10(1)で示したように、透過比率Aが一義的に評価できない本件特許発明1~7は、本件明細書の発明の詳細な説明に、当業者が実施することができるように明確かつ十分に記載されたものではない。
(2)上記9(2)で示したように、本件特許発明1~7は本件特許発明の課題の解決手段が反映されていないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~7を実施することができるように明確かつ十分に記載されたものではない。
(3)上記9(3)で示したように、本件明細書に記載された実施例3の吸水性樹脂粒子では内部架橋剤を使用していないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~7を実施することができるように明確かつ十分に記載されたものでない。
12 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2018/155591号
甲第2号証:特開2010-142808号公報
甲第3号証:特開2006-57075号公報
甲第4号証:特開2018-127508号公報
甲第5号証:特開2009-19065号公報
甲第6号証:特許第5485805号公報
甲第7号証:特開平7-25917号公報
甲第8号証:特開平9-157313号公報
甲第9号証:特開平6-293802号公報
甲第10号証:特開平7-33804号公報
甲第11号証:特開2003-26706号公報
甲第12号証:実験成績証明書(甲第1号証の製造例2の追試)
甲第13号証:実験成績証明書(甲第2号証の実施例3の追試)
甲第14号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例12の追試)
甲第15号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology(発行1998)
甲第16号証:国際公開第2004/110328号
甲第17号証:国際公開第2012/043821号
甲第18号証:実験成績証明書(甲第17号証の実施例11の追試)
甲第19号証:特開2001-98170号公報
甲第20号証:実験成績証明書(甲第19号証の実施例10の追試)
甲第21号証:特開2014-39684号公報
甲第22号証:国際公開第2013/099557号
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和4年9月2日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。
・取消理由(決定の予告)(甲3を主引用文献とする進歩性)
本件特許発明4及び5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項4及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由(決定の予告)は申立理由3のうち、本件特許発明4及び5に対する進歩性とおおむね同旨である。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 甲3に記載された発明
甲3は、「不定形破砕状の粒子状吸水剤」に関するものであり、その【0126】、【0127】、【0175】、【0195】ないし【0197】、【0206】及び【0208】に記載された事項を、特に実施例12、【0126】及び【0127】に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3吸収性物品発明」とにいう。)が記載されていると認める。
<甲3吸収性物品発明>
「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とし、次に、この反応液を脱気したのち、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は約1~4mmの粒子に細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き450μmと106μmの金網で連続的に分級し、450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕し、106μmの金網を通過した粒子は、粉砕を行った全量に対して13質量%を占めており、106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(d)を収率98%で得、次いで、得られた吸水性樹脂粒子(d)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、プロピレングリコール0.3質量部と、水0.3質量部とからなる表面架橋剤水溶液0.7質量部を混合し、上記の混合物を210℃に加熱されたモルタルミキサー内で20分間加熱処理することにより吸水性樹脂(4)を得、得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)100質量部に、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムを0.01質量部、ツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS-80MO、販売者:白井松新薬株式会社(所在地:滋賀県甲賀郡水口町宇川37-1))0.1質量部、水3質量部からなる混合溶液を噴霧混合し、得られた混合物を60℃で含水率3質量%を維持したまま1時間加熱および硬化し、目開き600μmの金網を通し、得られた粒子状吸水剤100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200)0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た造粒粒子を35質量%含む粒子状吸水剤(10)と親水性繊維とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体を作成し、該吸収体、液透過性を有する表面シート及び液不透過性を有する背面シートを備える吸水性物品。」
2 本件特許発明4について
(1)対比
本件特許発明4と甲3吸収性物品発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粒子を含み、
前記吸水性樹脂粒子が、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含み、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸収性物品。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-4a>
本件特許発明4においては、「下記式:
液透過率比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」(当審注:「吸水量B[g/g]」は「吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、
前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と定義され、「吸水量C[g/g]」は「吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり」と定義される。以下、この定義に相当する記載は省略する。)と特定されているのに対し、甲3吸収性物品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-4b>
本件特許発明4においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲3吸収性物品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-4c>
本件特許発明4においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲3吸収性物品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-4d>
本件特許発明4においては、「前記液体透過性シートが、スパンボンド層を有するスパンボンド不織布を含む」と特定されているのに対し、甲3吸収性物品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-4e>
本件特許発明4においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲3吸収性物品発明においては、そのようには特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み相違点3-4eについて検討する。
甲14(甲3の実施例12の追試の実験成績証明書)によると、甲3吸収性物品発明における「吸水性樹脂粒子の中位粒子径」は「320μm」であり、「365~850μm」の条件を満たさない。
そうすると、相違点3-4eは実質的な相違点である。
また、甲3を含め他のいずれの証拠にも、甲3吸収性物品発明において、相違点3-4eに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3吸収性物品発明において、相違点3-4eに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲3吸収性物品発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明5について
本件特許発明5は請求項4を引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明5は、本件特許発明4と同様に、甲3吸収性物品発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 取消理由(決定の予告)についてのむすび
したがって、本件特許発明4及び5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、取消理由(決定の予告)によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立ての理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立ての理由は、申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由2(甲2を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由3(甲3を主引用文献とする新規性・進歩性)のうち本件特許発明1ないし3、6及び7に対する新規性・進歩性、申立理由4(甲4を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由5(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由6(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由7(甲17を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由8(甲19を主引用文献とする新規性・進歩性)、申立理由9(サポート要件)、申立理由10(明確性要件)及び申立理由11(実施可能要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1は、「吸水性シート、長尺状吸水性シートおよび吸収性物品」に関するものであり、その[0503]、[0504]、[0563]ないし[0565]、[0575]ないし[0590]並びに[0629]の[表4-1]及び[表4-2]に記載された事項を、特に製造例2に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲1発明1>
「アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングし、次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得、得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得、上記短冊状の含水ゲル(b)を、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得、なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率25.6%、厚さ10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであり、ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(b)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われ、なお、該含水ゲル(b)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであり、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9J/g、ゲル粉砕エネルギー粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は17.5J/gであり、次に、上記ゲル粉砕の終了後、1分間以内に上記粒子状含水ゲル(2)を通気ベルト式連続乾燥機の通気ベルト上に載置し、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥し、熱風の平均風速は、通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0m/sであり、次いで、上記乾燥後に得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕し、その後、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合し、その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理し、その後、60℃まで強制冷却し、次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(2)について、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与し、その後、吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合し、その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させ、その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合し、以上の操作によって、得た粒子状吸水剤(2)。」
<甲1発明2>
「甲1発明1の粒子状吸水剤(2)を製造する方法。」
<甲1発明3>
「甲1発明1の粒子状吸水剤(2)を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1c>
本件特許発明1においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1d>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μm」と特定されているのに対し、甲1発明1においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点1-1aについて検討する。
甲12(甲1の製造例2の追試の実験成績証明書)によると、甲1発明1における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「58%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲1発明1は、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点1-1aは実質的な相違点である。
また、甲1を含め他のいずれの証拠にも、甲1発明1において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明1において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲1発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-6a>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-6b>
本件特許発明6においては、「吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-6c>
本件特許発明6においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲1発明2においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点1-6aについて検討する。
甲12によると、甲1発明2における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「58%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲1発明2は、相違点1-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点1-6aは実質的な相違点である。
また、甲1を含め他のいずれの証拠にも、甲1発明2において、相違点1-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明2において、相違点1-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲1発明2であるとはいえないし、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-7a>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-7b>
本件特許発明7においては、「吸水量Cを40~65g/gとし、中位粒子径が365~850μmとする」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-7c>
本件特許発明7においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲1発明3においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点1-7aについて検討する。
甲12によると、甲1発明3における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「58%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲1発明3は、相違点1-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点1-7aは実質的な相違点である。
また、甲1を含め他のいずれの証拠にも、甲1発明3において、相違点1-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明3において、相違点1-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲1発明3であるとはいえないし、甲1発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2は、「吸収剤組成物および吸収体、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品」に関するものであり、その【0119】、【0128】ないし【0134】及び【0148】に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲2発明1>
「アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL-アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、30℃~80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和し、その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得、得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm3)1/2(0.0258(J/m3)1/2)〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm3)1/2(0.0207(J/m3)1/2)〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合し、上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得、次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS-20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、得た吸収剤組成物。」
<甲2発明1>
「甲2発明1の吸収剤組成物を製造する方法。」
<甲2発明3>
「甲2発明1の吸収剤組成物を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-1a>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1b>
本件特許発明1においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1c>
本件特許発明1においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1d>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μm」と特定されているのに対し、甲2発明1においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-1aについて検討する。
甲13(甲2の実施例3の追試の実験成績証明書)によると、甲2発明1における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「54%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲2発明1は、相違点2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点2-1aは実質的な相違点である。
また、甲2を含め他のいずれの証拠にも、甲2発明1において、相違点2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2発明1において、相違点2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2及び3は、本件特許発明1と同様に、甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明4及び5は、本件特許発明1と同様に、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲2発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-6a>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-6b>
本件特許発明6においては、「吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-6c>
本件特許発明6においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲2発明2においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-6aについて検討する。
甲13によると、甲2発明2における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「54%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲2発明2は、相違点2-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点2-6aは実質的な相違点である。
また、甲2を含め他のいずれの証拠にも、甲2発明2において、相違点2-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2発明2において、相違点2-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲2発明2であるとはいえないし、甲2発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲2発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-7a>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-7b>
本件特許発明7においては、「吸水量Cを40~65g/gとし、中位粒子径が365~850μmとする」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-7c>
本件特許発明7においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲2発明3においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-7aについて検討する。
甲12によると、甲2発明3における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「54%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲2発明3は、相違点2-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点2-7aは実質的な相違点である。
また、甲2を含め他のいずれの証拠にも、甲2発明3において、相違点2-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2発明3において、相違点2-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲2発明3であるとはいえないし、甲2発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲3を主引用文献とする新規性・進歩性)のうち本件特許発明1ないし3、6及び7に対する新規性・進歩性について
(1)甲3に記載された発明
甲3の【0175】、【0195】ないし【0197】、【0206】及び【0208】に記載された事項を、特に実施例12に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲3発明1>
「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とし、次に、この反応液を脱気したのち、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は約1~4mmの粒子に細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き450μmと106μmの金網で連続的に分級し、450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕し、106μmの金網を通過した粒子は、粉砕を行った全量に対して13質量%を占めており、106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(d)を収率98%で得、次いで、得られた吸水性樹脂粒子(d)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、プロピレングリコール0.3質量部と、水0.3質量部とからなる表面架橋剤水溶液0.7質量部を混合し、上記の混合物を210℃に加熱されたモルタルミキサー内で20分間加熱処理することにより吸水性樹脂(4)を得、得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)100質量部に、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムを0.01質量部、ツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS-80MO、販売者:白井松新薬株式会社(所在地:滋賀県甲賀郡水口町宇川37-1))0.1質量部、水3質量部からなる混合溶液を噴霧混合し、得られた混合物を60℃で含水率3質量%を維持したまま1時間加熱および硬化し、目開き600μmの金網を通し、得られた粒子状吸水剤100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200)0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た造粒粒子を35質量%含む粒子状吸水剤(10)。」
<甲3発明2>
「甲3発明1の粒子状吸水剤(10)を製造する方法。」
<甲3発明3>
「甲3発明1の粒子状吸水剤(10)を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1a>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-1b>
本件特許発明1においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-1c>
本件特許発明1においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-1d>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μm」と特定されているのに対し、甲3発明1においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点3-1dについて検討する。
甲14によると、甲3発明1における「吸水性樹脂粒子の中位粒子径」は「320μm」であり、「365~850μm」の条件を満たさない。
そうすると、相違点3-1dは実質的な相違点である。
また、甲3を含め他のいずれの証拠にも、甲3発明1において、相違点3-1dに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明1において、相違点3-1dに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2及び3は、本件特許発明1と同様に、甲3発明1であるとはいえないし、甲3発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲3発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-6a>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-6b>
本件特許発明6においては、「吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-6c>
本件特許発明6においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲3発明2においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点3-6bについて検討する。
甲14によると、甲3発明2における「吸水性樹脂粒子の中位粒子径」は「320μm」であり、「365~850μm」の条件を満たさない。
そうすると、相違点3-6bは実質的な相違点である。
また、甲3を含め他のいずれの証拠にも、甲3発明2において、相違点3-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明2において、相違点3-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲3発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-7a>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-7b>
本件特許発明7においては、「吸水量Cを40~65g/gとし、中位粒子径が365~850μmとする」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-7c>
本件特許発明7においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲3発明3においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点3-7bについて検討する。
甲14によると、甲3発明3における「吸水性樹脂粒子の中位粒子径」は「320μm」であり、「365~850μm」の条件を満たさない。
そうすると、相違点3-7bは実質的な相違点である。
また、甲3を含め他のいずれの証拠にも、甲3発明3において、相違点3-7bに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明3において、相違点3-7bに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲3発明3であるとはいえないし、甲3発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由3のうち本件特許発明1ないし3、6及び7に対する新規性・進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3のうち本件特許発明1ないし3、6及び7に対する新規性・進歩性によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲4を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
甲4は、「吸収性樹脂粒子及びその製造方法」に関するものであり、その【請求項1】、【請求項5】、【請求項11】、【請求項12】及び【0003】に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲4発明1>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)及びHLB値が10以下の少なくとも1種類の界面活性剤(B)を架橋重合体(A)の重量に基づいて0.01~0.5%含有する吸収性樹脂粒子であって、
(i)Demand Wettability試験法に基づく5分後吸収量が10~35g/g、
(ii)0.9重量%生理食塩水の保水量が単位重量あたり36~50g/g、
(iii)ゲル弾性率が1.8~3.0kN/m2、
(iv)Drop試験法に基づく初期濡れ時間が5~20秒、
である吸収性樹脂粒子。」
<甲4発明2>
「甲4発明1の吸収性樹脂粒子を製造する方法。」
<甲4発明3>
「甲4発明1の吸収性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明1を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲4発明1においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲4を含め他のいずれの証拠にも、甲4発明1において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4発明1において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲4発明2を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点4-6>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲4を含め他のいずれの証拠にも、甲4発明2において、相違点4-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4発明2において、相違点4-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明6は甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲4発明3を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点4-7>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲4発明3においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲4を含め他のいずれの証拠にも、甲4発明3において、相違点4-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4発明3において、相違点4-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明7は甲4発明3であるとはいえないし、甲4発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲5に記載された発明
甲5は、「重合体粒子の製造方法」に関するものであり、その【請求項1】、【請求項7】及び【0007】に記載された事項を整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲5発明1>
「重合に不活性な疎水性有機溶媒と水溶性モノマーを用いて該水溶性モノマーを重合させるに際し、分散剤として一般式(I)で表される陰イオン界面活性剤及び一般式(II)で表される陰イオン界面活性剤を存在させる、重合体粒子。
【化1】
[図:0001397170000001.jpg]
(式中、R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数5~29のアルキル基、アルケニル基又は2-ヒドロキシアルキル基を示し、M1及びM2はそれぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は水素原子を示し、nは1又は2を示す。)
R2O[(PO)p(EO)q]SO3M1 (II)
(式中、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数6~22のアルキル基若しくはアルケニル基を示すか、又は総炭素数12~28のアリール基を示す。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、POとEOはブロック結合をしており、POとEOの結合順序は(PO)p(EO)qの順、(EO)q(PO)pの順の何れでも良い。pはオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す0より大きく22以下の数、qはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す0より大きく22以下の数である。M3はアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は水素原子を示す。)」
<甲5発明2>
「甲5発明1の重合体粒子を製造する方法。」
<甲5発明3>
「甲5発明1の重合体粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明1を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲5発明1においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲5を含め他のいずれの証拠にも、甲5発明1において、相違点5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲5発明1において、相違点5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は甲5発明1であるとはいえないし、甲5発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲5発明1であるとはいえないし、甲5発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲5発明2を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点5-6>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲5発明2においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲5を含め他のいずれの証拠にも、甲5発明2において、相違点5-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲5発明2において、相違点5-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明6は甲5発明2であるとはいえないし、甲5発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲5発明3を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点5-7>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲5発明3においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲5を含め他のいずれの証拠にも、甲5発明3において、相違点5-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲5発明3において、相違点5-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明7は甲5発明3であるとはいえないし、甲5発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。
6 申立理由6(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲6に記載された発明
甲6は、「吸水性樹脂」に関するものであり、その【請求項1】及び【0009】に記載された事項を整理すると、甲6には次の発明(以下、順に「甲6発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲6発明1>
「不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸塩の重合体を表面架橋処理および疎水性材料による疎水処理してなり、吸水開始から30秒後における人工尿の加圧吸水量が10g/g以下であり、吸水開始から30分後における人工尿の加圧吸水量が30g/g以上であり、生理食塩水に対する飽和吸水量が52g/g以上である吸水性樹脂であって、吸収性物品における逆戻り量が12.6g以下であり、前記疎水材料が、ソルビタン脂肪酸エステル、無水マレイン酸変性ポリエチレン、セルロース類誘導体、および疎水化された無機粉末からなる群より選択される1種以上であり、吸水性樹脂100重量部に対して0.001~10重量部の疎水性材料により疎水処理されている、吸水性樹脂。」
<甲6発明2>
「甲6発明1の吸収性樹脂を製造する方法。」
<甲6発明3>
「甲6発明1の吸収性樹脂を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明1を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点6-1>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲6発明1においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲6を含め他のいずれの証拠にも、甲6発明1において、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲6発明1において、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は甲6発明1であるとはいえないし、甲6発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2及び3は、本件特許発明1と同様に、甲6発明1であるとはいえないし、甲6発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲6発明2を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点6-6>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲6発明2においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲6を含め他のいずれの証拠にも、甲6発明2において、相違点6-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲6発明2において、相違点6-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明6は甲6発明2であるとはいえないし、甲6発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲6発明3を対比するに、両者は少なくとも次の点で実質的に相違する。
<相違点6-7>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲6発明3においては、そのようには特定されていない点。
そして、甲6を含め他のいずれの証拠にも、甲6発明3において、相違点6-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲6発明3において、相違点6-7に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明7は甲6発明3であるとはいえないし、甲6発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
7 申立理由7(甲17を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲17に記載された発明
甲17は、「粒子状吸水剤及びその製造方法」に関するものであり、その[0253]ないし[0255]、[0274]、[0275]、[0300]、[0301]及び[0330]に記載された事項を、特に実施例11に関して整理すると、甲17には次の発明(以下、順に「甲17発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲17発明1>
「内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、アクリル酸425.2g、37重量%のアクリル酸ナトリウム水溶液4499.5g、純水538.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)6.17g及びジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.21gを投入して反応液とした後、窒素ガス雰囲気下で20分間脱気し、続いて、10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液28.3g及び0.1重量%のL-アスコルビン酸水溶液23.6gをそれぞれ別個に、上記反応液を攪拌しながら添加したところ、約25秒後に重合が開始し、そして、生成した含水ゲル状架橋重合体を解砕しながら25~95℃で重合し、重合開始から30分経過後に含水ゲル状架橋重合体を反応器から取り出し、上記細粒化された含水ゲル状架橋重合体を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、170℃で65分間熱風乾燥をした後、ロールミルで粉砕し、更に目開きが850μmのJIS標準篩で分級、調合し、得られた吸水性樹脂粒子(1)100重量部に、プロピレングリコール0.5重量部、1,4-ブタンジオール0.3重量部及び純水1.0重量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、210℃で40分間加熱処理を行うことで表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を得、尚、当該加熱処理は、オイルバスに浸漬したステンレス製容器中で上記混合物を攪拌することで行い、次いで、上記吸水性樹脂粉末(1)100重量部に、水不溶性微粒子(Aerosil(登録商標)200;日本アエロジル社製)0.10重量部を添加し混合し、その後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して得た粒子状吸水剤(11)。」
<甲17発明2>
「甲17発明1の粒子状吸水剤(11)を製造する方法。」
<甲17発明3>
「甲17発明1の粒子状吸水剤(11)を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲17発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点17-1a>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲17発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-1b>
本件特許発明1においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲17発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-1c>
本件特許発明1においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲17発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-1d>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μm」と特定されているのに対し、甲17発明1においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点17-1aについて検討する。
甲18(甲17の実施例11の追試の実験成績証明書)によると、甲17発明1における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「35%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲17発明1は、相違点17-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点17-1aは実質的な相違点である。
また、甲17を含め他のいずれの証拠にも、甲17発明1において、相違点17-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲17発明1において、相違点17-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲17発明1であるとはいえないし、甲17発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲17発明1であるとはいえないし、甲17発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲17発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲17発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点17-6a>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲17発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-6b>
本件特許発明6においては、「吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲17発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-6c>
本件特許発明6においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲17発明2においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点17-6aについて検討する。
甲18によると、甲17発明2における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「35%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲17発明2は、相違点17-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点17-6aは実質的な相違点である。
また、甲17を含め他のいずれの証拠にも、甲17発明2において、相違点17-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲17発明2において、相違点17-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲17発明2であるとはいえないし、甲17発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲17発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点17-7a>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲17発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-7b>
本件特許発明7においては、「吸水量Cを40~65g/gとし、中位粒子径が365~850μmとする」と特定されているのに対し、甲17発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-7c>
本件特許発明7においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲17発明3においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点17-7aについて検討する。
甲18によると、甲17発明3における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「35%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲17発明3は、相違点17-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点17-7aは実質的な相違点である。
また、甲17を含め他のいずれの証拠にも、甲17発明3において、相違点17-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲17発明3において、相違点17-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲17発明3であるとはいえないし、甲17発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。
8 申立理由8(甲19を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲19に記載された発明
甲19は、「吸水剤組成物およびその用途」に関するものであり、その【0061】ないし【0064】及び【0072】に記載された事項を、特に実施例10に関して整理すると、甲19には次の発明(以下、順に「甲19発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲19発明1>
「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)、次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL-アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、25~90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得、得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得、次に、上記の吸水性樹脂(b)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、得た吸水剤組成物(10)。」
<甲19発明2>
「甲19発明1の吸水剤組成物(10)を製造する方法。」
<甲19発明3>
「甲19発明1の吸水剤組成物(10)を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲19発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点19-1a>
本件特許発明1においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり」と特定されているのに対し、甲19発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-1b>
本件特許発明1においては、「吸水量Cが40~65g/gであり」と特定されているのに対し、甲19発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-1c>
本件特許発明1においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲19発明1においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-1d>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が365~850μm」と特定されているのに対し、甲19発明1においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点19-1aについて検討する。
甲20(甲19の実施例10の追試の実験成績証明書)によると、甲19発明1における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「38%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲19発明1は、相違点19-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点19-1aは実質的な相違点である。
また、甲19を含め他のいずれの証拠にも、甲19発明1において、相違点19-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲19発明1において、相違点19-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲19発明1であるとはいえないし、甲19発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲19発明1であるとはいえないし、甲19発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明3ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲19発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲19発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、吸水性樹脂粒子を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点19-6a>
本件特許発明6においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下」と特定されているのに対し、甲19発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-6b>
本件特許発明6においては、「吸水量Cが40~65g/gで、中位粒子径が365~850μmである」と特定されているのに対し、甲19発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-6c>
本件特許発明6においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲19発明2においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点19-6aについて検討する。
甲20によると、甲19発明2における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「38%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲19発明2は、相違点19-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点19-6aは実質的な相違点である。
また、甲19を含め他のいずれの証拠にも、甲19発明2において、相違点19-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲19発明2において、相違点19-6aに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲19発明2であるとはいえないし、甲19発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲19発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法であって、
前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものである、方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点19-7a>
本件特許発明7においては、「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下とし」と特定されているのに対し、甲19発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-7b>
本件特許発明7においては、「吸水量Cを40~65g/gとし、中位粒子径が365~850μmとする」と特定されているのに対し、甲19発明3においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-7c>
本件特許発明7においては、「前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定されているのに対し、甲19発明3においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点19-7aについて検討する。
甲20によると、甲19発明3における「下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率A」は「38%」であり、「1%以上17%以下」の条件を満たさない。
したがって、甲19発明3は、相違点19-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点19-7aは実質的な相違点である。
また、甲19を含め他のいずれの証拠にも、甲19発明3において、相違点19-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲19発明3において、相違点19-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲19発明3であるとはいえないし、甲19発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由8についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。
9 申立理由9(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明にはおおむね次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
吸水性樹脂粒子、吸収性物品、吸水性樹脂粒子を製造する方法、及び吸収性物品の液漏れを抑制する方法
【背景技術】
【0002】
従来、尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている(例えば、特許文献1~3)。
・・・(略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スパンボンド不織布を含む液体透過シートの内側に吸水性樹脂粒子が配置された吸収性物品からの液漏れを抑制できる吸水性樹脂粒子、及びこれを用いた吸収性物品を提供する。」
・「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、下記式:
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
によって算出される液透過比率Aが、0%を超えて60%以下である、吸水性樹脂粒子に関する。吸水量Bは、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2である。吸水量Cは、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。
【0006】
本発明の別の一側面は、液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品に関する。前記吸収体が、上記吸水性樹脂粒子を含む。
【0007】
本発明の更に別の一側面は、上記液透過比率Aが0%を超えて60%以下である、吸水性樹脂粒子を選別する工程を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【0008】
本発明の更に別の一側面は、吸水性樹脂粒子の上記液透過比率Aを0%を超えて60%以下とすることを含む、吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品からの液漏れを抑制する方法に
関する。」
・「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スパンボンド不織布を含む液体透過シートの内側に吸水性樹脂粒子が配置された吸収性物品からの液漏れを抑制できる吸水性樹脂粒子、及びこれを用いた吸収性物品が提供される。」
・「【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
吸水性樹脂粒子の液透過比率Aは、下記式によって算出される。一実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、0%を超えて60%以下の液透過比率Aを示す。
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
吸水量Bは、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後まで吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。
【0014】
吸水量Bを測定するために用いられるスパンボンド不織布は、単位面積当たりの質量が、11~15g/m2である。より詳細には、吸水量Bを測定するために用いられるスパンボンド不織布は、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であって、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体である。
【0015】
図1は、吸水量Bを測定する方法を示す模式図である。図1に示される測定装置は、無加圧DW値を測定するための装置と同様の構成を有しており、ビュレット部2、導管5、測定台13、スパンボンド不織布15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部2は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部2はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部2のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0016】
吸水量Bは、温度25℃、湿度50±10%の環境下で以下の工程を含む方法によって測定される。
(1)ビュレット部2のコック22とコック24を閉め、25℃の生理食塩水50(濃度0.9質量%の食塩水)をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れる。生理食塩水の濃度0.9質量%は、生理食塩水の質量を基準とする濃度である。
(2)ゴム栓23でビュレット管21の開口を密栓した後、コック22及びコック24を開ける。気泡が入らないように、導管5内部を生理食塩水50で満たす。
(3)貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整する。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とする。
(4)測定台13上の貫通孔13aの近傍にてスパンボンド不織布15を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置く。このシリンダー内に、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを投入する。
(5)シリンダーを注意深く取り除き、スパンボンド不織布15の中央部の円状の領域に、吸水性樹脂粒子10aを配置する。次いで、吸水性樹脂粒子10aが配置されたスパンボンド不織布15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始する。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とみなす。
(6)ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸収した生理食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取る。吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して5分後の生理食塩水50の減量分Wc(g)を読み取る。Wcと生理食塩水の密度(1.0028g/mL)から、下記式により吸水量Bを求める。吸水量Bは、吸収された生理食塩水の吸水性樹脂粒子1.00g当たりの質量である。
吸水量B[g/g]=Wc×1.0028/1.00
【0017】
吸水量Cは、2.0gの吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。吸水量Cは、温度25℃、湿度50±10%の環境下で以下の工程を含む方法によって測定される。
(1)内容積500mLのビーカー中で生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)500gを600rpmで攪拌し、そこに吸水性樹脂粒子2.0gを分散させる。
(2)生理食塩水を攪拌した状態で60分間放置し、それにより吸水性樹脂粒子を膨潤させる。
(3)目開き75μm標準篩を用いたろ過により膨潤ゲルを取り出す。
(4)取り出された膨潤ゲルが載った篩いを、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で、30分間放置することにより余剰の水分を除去する。
(5)膨潤ゲルが載った篩いの質量Wb(g)を測定する。Wbと予め測定した篩の質量Wa(g)から、下の式により、吸水量Cを求める。
吸水量C=(Wb-Wa)/2.0
【0018】
液透過比率Aが適度に小さいことは、吸水性樹脂粒子が過剰量の生理食塩水との接触によって十分に生理食塩水を吸収したときの吸水量Cと比較して、吸水性樹脂粒子がスパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を吸収したときの吸水量Bが小さいことを意味する。吸水量Bの測定において、比較的早い段階で生理食塩水の吸水様態が大幅に減速傾向となり、その結果、5分経過後の吸水量Bが小さい値にとどまることがある。この理由は明確ではないが、本発明者は、スパンボンド不織布と特定の吸水性樹脂粒子との組み合わせにおいて、予期せず液体の吸収が適度に局所的な吸収様態になるのではないかと推察している。したがって、液透過比率Aが60%以下のように小さいことは、スパンボンド不織布を介して生理食塩水を吸収するときの、吸水性樹脂粒子の初期の吸水速度がある程度以上に大きいことを意味すると考えられ、そのことが、スパンボンド不織布を含む液体透過シートの内側に吸水性樹脂粒子が配置された吸収性物品からの液漏れ抑制に寄与するものと考えられる。
【0019】
液漏れ抑制の観点から、液透過比率Aは、50%以下であってもよい。液透過比率Aは、1%以上、5%以上、又は8%以上であってもよい。吸水量Cは、40~65g/gであってもよい。」
・「【0020】
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量(以下「荷重下吸水量」ということがある。)が、20mL/g以上であってもよい。荷重下吸水量が大きいと、吸収性物品の装着者の荷重を受けた状態でも、高い吸水能力を維持することができる。同様の観点から、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量が、25mL/g以上、又は30mL/g以上であってもよく、50mL/g以下、又は45mL/g以下であってもよい。」
・「【0022】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0023】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法を適用してもよい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0024】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、・・・(略)・・・
【0025】
工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。」
・「【0027】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体として、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってもよい。(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってもよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。」
・「【0029】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0030】
界面活性剤としては、・・・(略)・・・
【0033】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、・・・(略)・・・
【0035】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6~8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、・・・(略)・・・
【0038】
ラジカル重合開始剤は水溶性であってもよい。水溶性ラジカル重合開始剤の例としては、・・・(略)・・・
【0042】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、・・・(略)・・・」
・「【0043】
重合の際に自己架橋による架橋が生じ得るが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、・・・(略)・・・
【0044】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0ミリモル以上、0.02ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.04ミリモル以上、又は0.05ミリモル以上であってもよく、0.1モル以下であってもよい。」
・「【0048】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2段又は3段で行ってもよい。
【0049】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。」
・「【0056】
重合反応時の攪拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、・・・(略)・・・」
・「【0059】
重合反応は、攪拌翼を有する各種攪拌機を用いて行うことができる。攪拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(攪拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(攪拌部)とを有している。さらに、平板部は、スリット等を有していてもよい。攪拌翼として平板翼を用いると、形成される重合体粒子における重合体の架橋の均一性が高くなる傾向がある。架橋の均一性が高い重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子は、適度に低い液透過比率Aを示す傾向がある。」
・「【0060】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われてもよい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋される含水ゲル状重合体の含水率が、5~50質量%、10~40質量%、又は15~35質量%であってもよい。含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えることで算出される含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0061】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤の例としては、・・・(略)・・・
【0062】
表面架橋剤の量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001~0.02モル、0.00005~0.01モル、又は0.0001~0.005モルであってもよい。表面架橋剤の量が0.00001モル以上であると、吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度が充分に高められ、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高めやすい。表面架橋剤の量が0.02モル以下であると、吸水性樹脂粒子の吸水量を高めやすい。」
・「【0063】
表面架橋後、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子の乾燥品である重合体粒子を得ることができる。」
・「【0064】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分は、流動性向上剤(滑剤)であってもよい。流動性向上剤は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0065】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。」
・「【0066】
一実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子を含有する。本実施形態に係る吸収体は、繊維状物を含有することが可能であり、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物である。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された構成であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた構成であってもよい。」
・「【0075】
一実施形態に係る吸収性物品は、本実施形態に係る吸収体を備える。本実施形態に係る吸収性物品は、吸収体を保形するコアラップ;吸液対象の液が浸入する側の最外部に配置される液体透過性シート;吸液対象の液が浸入する側とは反対側の最外部に配置される液体不透過性シート等が挙げられる。吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0076】
図2は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図2に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性シート30がこの順に積層されている。図2において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。」
・「【0081】
液体透過性シート30は、当該技術分野で通常用いられる樹脂又は繊維から形成されたシートであってよい。液体透過性シート30は、吸収性物品に用いられる際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、並びにレーヨンのような合成樹脂、又はこれら合成樹脂を含む合成繊維を含んでいてもよいし、・・・(略)・・・
【0084】
液体透過性シート30は、スパンボンド不織布であることが好ましい。スパンボンド不織布は、単層のスパンボンド不織布であってもよいし、少なくとも単層のスパンボンド不織布をスパンボンド層として有する複層の積層体不織布であってもよい。積層体のスパンボンド不織布の場合、通常、その片方又は両方の最表層がスパンボンド層である。積層体のスパンボンド不織布の積層構成の例としては、スパンボンド層/スパンボンド層(SS不織布)、スパンボンド層/メルトブロー層/スパンボンド層(SMS不織布)、及びスパンボンド層/メルトブロー層/メルトブロー層/スパンボンド層(SMMS不織布)が挙げられる。これら積層構成では、各層が記載順に積層される。
【0085】
液体透過性シート30として用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していてもよい。その観点から、液体透過性シート30は、紙パルプ技術協会による紙パルプ試験方法No.68(2000)の測定方法に従って測定される親水度が5~200の不織布であってもよい。不織布の上記親水度は、10~150であってもよい。紙パルプ試験方法No.68の詳細については、例えばWO2011/086843号を参照することができる。
【0086】
親水性を有する不織布は、例えば、レーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維を含んで形成されたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を親水化処理して得た繊維によって形成されたものであってもよい。」
・「【実施例】
【0093】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
1.吸水性樹脂粒子の作製
実施例1
<第1段目の重合反応>
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。攪拌機に図3に概形を示す攪拌翼200を取り付けた。攪拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されると共に、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されている。内側の二つのスリットSの幅は1cmである。外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。
【0095】
準備したセパラブルフラスコ内でn-ヘプタン293g、及び分散剤(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を、攪拌機で攪拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成された反応液を50℃まで冷却した。
【0096】
内容積300mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れた。ビーカーを外部から冷却しつつ、アクリル酸水溶液に20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液に、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、及び過硫酸ナトリウム0.0162g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えてこれらを溶解させて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0097】
第1段目の単量体水溶液を、上述のセパラブルフラスコ内の反応液に添加し、反応液を10分間攪拌した。次いで、n-ヘプタン6.62g及びショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.736gを含む界面活性剤溶液を反応液に添加し、攪拌翼の回転数を425rpmとして反応液を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。この重合反応により、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。
【0098】
<第2段目の重合反応>
内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸ナトリウム0.0226g(0.095ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを溶解し、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0099】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、攪拌翼の回転数を650rpmとして攪拌しながら25℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加し、続いて系内を窒素で30分間かけて置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分かけて第2段目の重合反応を進行させた。
【0100】
第2段目の重合反応後の反応液に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴にセパラブルフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、239.6gの水を系外へ抜き出した。その後、反応液に表面架橋剤として濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、反応液を83℃で2時間保持することにより、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0101】
表面架橋剤による架橋反応後の反応液から、125℃での加熱によりn-ヘプタンを留去して、重合体粒子の乾燥品を得た。得られた重合体粒子に目開き850μmの篩を通過させた。その後、重合体粒子の質量に対して2.0質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子230.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子の中位粒子径は367μmであった。
【0102】
実施例2
第1段目の水性液の調製において使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0648g(0.272ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0156g(0.090ミリモル)に変更したこと、第1段目重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機回転数を350rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0907g(0.381ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0129g(0.074ミリモル)に変更したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を254.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、235.3gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は365μmであった。
【0103】
実施例3
実施例1と同様の還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。準備したセパラブルフラスコ内でn-ヘプタン536.3g、及び分散剤(ソルビタンモノラウレート、日油株式会社製、ノニオンLP-20R、HLB値8.6)1.237gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を、攪拌機で攪拌しつつ、50℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成された反応液を40℃まで冷却した。
【0104】
内容積500mLの三角フラスコに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液103.1g(1.15モル)を入れた。三角フラスコを外部から氷冷しつつ、アクリル酸水溶液に濃度20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液165.3gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.10g(0.420ミリモル)を加え、単量体水溶液を得た。
【0105】
準備した単量体水溶液を、セパラブルフラスコ内の上述の反応液に添加し、フラスコ内を窒素で十分に置換した。その後、攪拌翼の回転数を300rpmとして反応液を攪拌しながら、セパラブルフラスコを70℃の水浴中に60分間保持し、それにより重合反応を進行させた。
【0106】
重合反応後の反応液を攪拌翼の回転数を650rpmとして攪拌しながら、反応液に、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)0.103g及びn-ヘプタン100gを含む分散液を添加し、攪拌を更に10分間継続した。その後、反応液を含むフラスコを125℃の油浴に浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、116.5gの水を系外へ抜き出した。続いて、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液9.28g(1.07ミリモル)を反応液に添加し、反応液を内温83±2℃で2時間保持することにより、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0107】
表面架橋剤による架橋反応後の反応液からn-ヘプタンを留去して、0.1質量%の非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子の乾燥品を得た。吸水性樹脂粒子の乾燥品に目開き850μmの篩を通過させて、吸水性樹脂粒子96.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子の中位粒子径は420μmであった。」
・「【0112】
2.評価
2-1.中位粒子径
・・・(略)・・・
【0113】
2-2.荷重下吸水量
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量を、温度25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で、図4に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部71、導管72、測定台73、及び、測定台73上に置かれた測定部74から構成される。ビュレット部71は、鉛直方向に伸びるビュレット71aと、ビュレット71aの上端に配置されたゴム栓71bと、ビュレット71aの下端に配置されたコック71cと、コック71cの近傍において一端がビュレット71a内に伸びる空気導入管71dと、空気導入管71dの他端側に配置されたコック71eとを有している。導管72は、ビュレット部71と測定台73との間に取り付けられている。導管72の内径は6mmである。測定台73の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管72が連結されている。測定部74は、円筒74a(アクリル樹脂(プレキシグラス)製)と、円筒74aの底部に接着されたナイロンメッシュ74bと、重り74cとを有している。円筒74aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ74bの目開きは75μm(200メッシュ)である。測定時にはナイロンメッシュ74b上に測定対象の吸水性樹脂粒子75が均一に撒布される。重り74cの直径は19mmであり、重り74cの質量は59.8gである。重り74cは、吸水性樹脂粒子75上に置かれ、吸水性樹脂粒子75に対して2.07kPaの荷重を加えることができる。
【0114】
測定装置Yの円筒74aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子75を入れた後、重り74cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット71aの内部に供給されるため、ビュレット71aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット71aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されている。生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット71aの目盛りVaと、吸水開始から60分後のビュレット71aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下吸水量(2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量)を算出した。
荷重下吸水量[mL/g]=(Vb-Va)/0.1
【0115】
2-3.吸水量C
吸水量Cは、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。まず、内容積500mLのビーカーに、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)500gを量り取った。600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように生理食塩中に分散させた。攪拌した状態で60分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。ビーカーの内容物を目開き75μm標準篩を用いてろ過した。取り出された膨潤ゲルが載った篩いを、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で30分間放置することにより余剰の水分を除去した。膨潤ゲルが載った篩いの質量Wb(g)を測定した。Wbと、予め測定した篩の質量Wa(g)から、下の式により、吸水量Cを求めた。
吸水量C[g/g]=(Wb-Wa)/2.0
【0116】
2-4.吸水量B
図1に示す測定装置を用いて、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で吸水量Bを測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。まずビュレット部2のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された生理食塩水50(濃度0.9質量%の食塩水)をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。ゴム栓23でビュレット管21の開口を密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を生理食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0117】
親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成されたスパンボンド不織布(SMMS不織布、目付量13g/m2、Toray Polytech(Nantong)Co.,Ltd.製、LIVSEN(商品名)、1.6Dtex)を準備した。100mm×100mmのサイズのスパンボンド不織布15を、測定台13上の貫通孔13aの近傍に敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダー内に、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、スパンボンド不織布15の中央部の円形の領域に吸水性樹脂粒子10aを均一に載置した。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたスパンボンド不織布15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0118】
ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した生理食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して5分後の生理食塩水50の減量分Wc(mL)を読み取った。Wcと生理食塩水の密度(1.0028g/mL)から、下記式により吸水量Bを求めた。吸水量Bは、吸収された生理食塩水の吸水性樹脂粒子1.00g当たりの質量である。
吸水量B[g/g]=Wc×1.0028/1.00
【0119】
2-5.液透過比率A
吸水量B、及び吸水量Cから、下記式により液透過比率Aを求めた。
液透過比率A[%]=(吸水量B/吸水量C)×100
【0120】
2-6.吸収性物品の作製とその評価
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子10.0g及び粉砕パルプ9.5gを空気抄造によって均一混合することにより、32cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。吸収体の上下を、吸収体と同じ大きさの2枚のスパンボンド不織布で挟んだ。スパンボンド不織布として、吸水量Bの測定に用いたスパンボンド不織布と同様のものを用いた。その状態で、全体に588kPaの荷重を30秒間加えることにより、試験用のコアラップ付吸収体を吸収性物品として得た。
【0121】
図5は、吸収性物品の漏れ性を評価する方法を示す模式図である。平坦な傾斜面S1を有する長さ45cmの支持板1(ここではアクリル樹脂板)を、水平面S0に対して30±2度に傾斜した状態で架台41によって固定した。支持板1の表面は滑らかであり、支持板1に液体が滞留したり吸収されたりすることはなかった。温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で、固定された支持板1の傾斜面S1上に、試験用の吸収性物品100の上端を、吸収性物品100の長手方向が支持板1の長手方向に沿う向きとなるように粘着テープで貼り付けた。吸収性物品100の下端は支持板1に貼り付けなかった。次いで、吸収性物品100中の吸収体の中央から8cm上方の位置に目印をマークした。滴下ロート42は内径3.4mmの投入口を有していた。滴下ロート42を、その投入口の先端が目印から鉛直上方で距離10±1mmになる位置で架台41に対して固定した。滴下ロート42のコックの絞りを、3mL/秒の速度で液が投入されるように調整した。支持板1の下方に天秤43を配置し、天秤43に金属製トレイ44を載せた。
【0122】
天秤43を起動させ、表示をゼロに補正した後、滴下ロート42に、25±1℃に調整した試験液55(人工尿)80mLを一度に投入した。滴下ロート42から滴下され、吸収性物品100に吸収されずに流れ落ちて金属製トレイ44に入った試験液の重量を、1回目の漏れ量[g]として記録した。1回目の試験液投入開始から10分間隔で、1回目と同様に2回目、及び3回目の試験液を投入し、それぞれの漏れ量[g]を記録した。漏れ量の数値が小さいほど、吸収性物品の着用時における液体漏れ量が少ないと判断される。試験液として用いられた人工尿は以下の成分を混合して調製した。
・イオン交換水:5919.6g
・NaCl:60.0g
・CaCl2・H2O:1.8g
・MgCl2・6H2O:3.6g
・食用青色1号(着色用):0.15g
・トリトン X-100(1%)(オクチルフェノールエトキシレート水溶液):15.0g
【0123】
【表1】
[図:0001397170000002.jpg]
【0124】
表1に評価結果を示す。液透過比率Aが特定の数値を示す実施例の吸水性樹脂粒子を用いて作製された吸収性物品は、漏れ性の評価試験において3回目の試験液投入まで少量の液漏れしか発生させなかった。」
・「
[図:0001397170000003.jpg]
[図:0001397170000004.jpg]
」
(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】によると、本件特許発明1及び2が解決しようとする課題は、「スパンボンド不織布を含む液体透過シートの内側に吸水性樹脂粒子が配置された吸収性物品からの液漏れを抑制できる吸水性樹脂粒子」を提供することであり、本件特許発明3ないし5が解決しようとする課題は、上記「吸水性樹脂粒子」を用いた「吸収性物品」を提供することであり、本件特許発明6が解決しようとする課題は、上記「吸水性樹脂粒子」を「製造する方法」を提供することであり、本件特許発明7が解決しようとする課題は、上記「吸水性樹脂粒子」を含む「吸収性物品からの液漏れを抑制する方法」を提供すること(以下、総称して「発明の課題」という。)である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0005】ないし【0008】、【0012】ないし【0020】、【0022】ないし【0025】、【0027】、【0043】、【0044】、【0060】ないし【0062】、【0064】ないし【0066】、【0075】、【0076】及び【0081】ないし【0086】には、本件特許発明1ないし7に対応する記載及び各発明特定事項の技術的意義を説明する記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0093】ないし【0124】において、「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものであり、液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり、吸水量Cが40~65g/gであり、吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である」という条件を満たす「吸水性樹脂粒子」を用いて作成された「吸収性物品」は、上記条件を満たさない「吸収性樹脂粒子」を用いて作成された「吸収性物品」と比べて、漏れ性の評価試験において3回目の試験液投入まで少量の液漏れしか発生させなかったことを確認している。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記単量体全量に対して70~100モル%であり、前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、表面架橋剤によって表面架橋され、且つ、前記架橋重合体を含む重合体粒子の表面上に前記重合体粒子の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の量の割合の無機粒子が配置されたものであり、液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100によって算出される液透過比率Aが、1%以上17%以下であり、吸水量Cが40~65g/gであり、吸水量Bが、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの当該吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、当該吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後までに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量であり、前記スパンボンド不織布の単位面積当たりの質量が11~15g/m2であり、前記スパンボンド不織布が、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり、吸水量Cが、2.0gの当該吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である」という条件を満たす「吸水性樹脂粒子」、その「吸水性樹脂粒子」の「製造方法」及びその「吸水性樹脂粒子」を用いた「吸収性物品からの液漏れを抑制する方法」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし5は上記発明の課題を解決できると認識できる「吸収性樹脂粒子」をさらに限定したものであり、本件特許発明6は上記発明の課題を解決できると認識できる「製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明7は上記発明の課題を解決できると認識できる「吸収性物品からの液漏れを抑制する方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(5)特許異議申立人の主張について
上記第3 9における特許異議申立人の主張について検討するに、以下のとおり、いずれの主張も、サポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。
ア 上記第3 9(1)の主張について
本件訂正により、本件特許発明1ないし7における「吸水量C」の絶対値が「40~65g/g」の範囲内の値に特定された。
したがって、上記第3 9(1)の主張は、採用できない。
イ 上記第3 9(2)の主張について
当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲は上記(4)のとおりであり、無機粒子の種類は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものかどうかの判断とは関係がない。
したがって、上記第3 9(2)の主張は、採用できない。
ウ 上記第3 9(3)の主張について
実施例3は「内部架橋剤」を使用していない上に、「液透過比率A」の値が「1%以上17%以下」の範囲外であるから、本件特許発明1ないし7の実施例でないことは明らかである。
したがって、上記第3 9(3)の主張は、採用できない。
(6)申立理由9についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由9によっては取り消すことはできない。
10 申立理由10(明確性要件)について
(1)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし7の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
上記第3 10における特許異議申立人の主張について検討するに、以下のとおり、いずれの主張も、明確性要件の判断を左右するものではなく、採用できない。
ア 上記第3 10(1)の主張について
本件訂正により、本件特許発明1ないし7における「スパンボンド不織布」の構造が「親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であり、前記スパンボンド不織布が、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体であり、前記ポリプロピレン繊維の太さが1.6Dtexであり」と特定された。
したがって、上記第3 10(1)の主張は、採用できない。
イ 上記第3 10(2)の主張について
上記(2)のとおり、本件特許の請求項5の記載は、それ自体に不明確な記載はなく、明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、上記第3 10(2)の主張は、採用できない。
ウ 上記第3 10(3)の主張について
本件特許の請求項6に記載された「選別する」ことが、「液透過比率Aが1%以上17%」を満たす吸水性樹脂を製造することであることは、明細書の記載から明らかである。
そして、上記(2)のとおり、本件特許の請求項6の記載は、それ自体に不明確な記載はなく、明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、上記第3 10(3)の主張は、採用できない。
(4)申立理由10についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由10によっては取り消すことはできない。
11 申立理由11(実施可能要件)について
(1)判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし5は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
また、本件特許発明6は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
さらに、本件特許発明7は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記9(3)のとおりであり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし7の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明6を使用し、本件特許発明6により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明7の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
上記第3 11における特許異議申立人の主張について検討する。
上記第3 11(1)ないし(3)の主張は、本件特許の請求項1ないし7に係る特許出願に、サポート要件違反及び明確性要件違反があることを前提にした主張であるところ、上記9及び10のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許に係る特許出願に、サポート要件違反及び明確性要件違反はない。
したがって、上記第3 11(1)ないし(3)の主張は、いずれも採用できない。
(4)申立理由11についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由11によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701203