特許異議申立
2021-701095
吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品及び止水材
- 審判番号
- 2021-701095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-024345
- 登録番号
- 6872503
- 請求日
- 2021年11月19日
- 審決日
- 2022年12月13日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友精化株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】沖田 英樹
- 【権利者代理人】吉川 絵美
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 原 賢一
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6872503号発明「吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品及び止水材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6872503号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-8〕について訂正することを認める。
特許第6872503号の請求項1、2、4-8に係る特許を維持する。
特許第6872503号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6872503号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)7月23日(優先権主張 平成23年8月3日(6件)、同年9月30日(2件) 日本国)を国際出願日とする特願2013-526820号の一部を新たな特許出願として平成30年2月14日に出願されたものであり、令和3年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~8(全請求項)に係る特許について、同年11月19日に特許異議申立人株式会社日本触媒(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和4年4月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月17日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、異議申立人からは意見書の提出がなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
令和4年6月17日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~8について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に」とあるのを、「請求項1又は2に」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に」とあるのを、「請求項1、2及び4のいずれか一項に」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか一項に」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~5のいずれか一項に」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか一項に」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、訂正前の請求項4~6、8が、それぞれ請求項3を引用していたのを、訂正事項1により請求項3が削除されたことに伴い、これに整合させるため引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2~5は、訂正前の請求項4~6、8が、それぞれ引用していた請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
3 小括
本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔3~8〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔3~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、生理食塩水の吸水速度が1~15秒であり、中位粒子径が100~600μmであり、残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であり、前記残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
比表面積が0.08m2/g以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
生理食塩水の吸水量が30~90g/gである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
平衡膨潤性能が20mm以上である、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とを含む、吸収体。
【請求項7】
液体透過性シート、液体不透過性シート及び請求項6に記載の吸収体を備え、対向して配置された前記液体透過性シートと前記液体不透過性シートとの間に、前記吸収体が配置されている、吸収性物品。
【請求項8】
第一の液体透過性シート、第二の液体透過性シート及び請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を備え、対向して配置された前記第一の液体透過性シートと前記第二の液体透過性シートとの間に、前記吸水性樹脂粒子が配置されている、止水材。」
第4 令和4年4月19日付けで通知した取消理由、及びこの取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和4年4月19日付けで通知した取消理由の概要
・特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「取消理由」とする。)
本件訂正前の請求項3~8に係る特許は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~8の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由1」とする。)
ア 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、同甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は同甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1-1)。
イ 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、同甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は同甲第2証に記載された発明及び下記甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1-2)。
ウ 本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、下記甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、同甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は同甲第3号証に記載された発明及び下記甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1-3)。
エ 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、下記甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は同甲第4号証に記載された発明及び下記甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1-4)。
オ 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、下記甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、同甲第5号証に記載された発明に基づいて、又は同甲第5号証に記載された発明及び下記甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1-5)。
記
甲第1号証:特開平3-195709号公報
甲第2号証:国際公開第2011/065368号
甲第3号証:国際公開第2009/025235号
甲第4号証:特開2006-68731号公報
甲第5号証:国際公開第2007/126002号
(以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。)
(2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)及び同法同条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)(以下、「申立理由2」とする。)
本件訂正前の請求項1~8に係る特許は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載が後記第5の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
当審は、本件訂正の内容に照らし、上記取消理由及び申立理由1、2のいずれにも理由がないと判断する。
以下、その理由について詳述する。
1 取消理由について
取消理由は、特許請求の範囲の訂正前の請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~8の記載に対して、明確性要件違反を通知するものであるところ、本件訂正によって、訂正前の請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~8は、削除された。
これにより、取消理由は、理由がないものとなった。
2 申立理由1(新規性欠如及び進歩性欠如)について
(1)甲1~甲5に記載の事項
ア 甲1に記載の事項
(ア)「2.特許請求の範囲
水溶性ラジカル重合開始剤の存在下、アクリル酸および(または)メタクリル酸とそれらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩とを主成分とするアクリル酸系モノマーを、分散剤としてHLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルを使用し、アクリル酸系モノマーを重合反応の進行に従って分散媒中に逐次供給される油中水滴型逆相懸濁重合法によって重合させるに際し、分散剤量をアクリル酸系モノマーに対して0.001~1重量%とし、かつ重合反応を還流温度未満の温度下で行なうことを特徴とする、高吸水性ポリマーの製造法。」(1頁左下欄4~16行)
(イ)「<従来技術>
近年、高吸水性ポリマーは、紙おむつや生理用品等の衛生材料のみならず、止水剤、結露防止材、鮮度保持材、溶剤脱水材等の産業用途、緑化、農園芸用途等にも利用されるようになってきており、これまでに種々のものが提案されている。
この種の高吸水性ポリマーとしては、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸(塩)-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキシド等が知られている。
しかしながら、これらの高吸水性ポリマーはいずれも吸水能、吸水速度、ゲル強度、凝集性および安全性等の全ての要求性能を同時に満足するものとは言い難たかった。例えば、アクリル酸アルカリ金属塩等の油中水滴型逆相懸濁重合において、分散剤として、特公昭54-30710号公報記載のHLB3~6のソルビタン脂肪酸エステル、特開昭57-167302号公報記載のHLB6~9のノニオン系界面活性剤あるいは特公昭60-25045号公報記載のHLB8~12の界面活性剤を使用した場合、いずれも粒径が約10~100μmと細かい高吸水性ポリマーが得られるため、取扱いに際しては粉じん対策が必要となり、また膨潤時にいわゆるままこ現象を起こしやすくて、その結果、吸水速度がおそくなるという問題点があった。」(1頁右下欄12行~2頁左上欄18行)
(ウ)「〔発明の概要〕
<要旨>
本発明は、上記の問題点を改良して、吸水能、吸水速度、ゲル強度、凝集性および安全性等の全ての要求性能を同時に満足する高吸水性ポリマーを製造する方法を提供しようとするものである。
本発明者等は、アクリル酸系モノマーが重合反応の進行に従って分散媒中に逐次供給される油中水滴型逆相懸濁重合法は、分散媒中の未反応モノマー濃度が一定範囲内であり、重合反応温度を制御出来るため安定な懸濁条件が得られ易い点に着目して鋭意研究した結果、分散剤としてHLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルを使用する逆相懸濁重合法においては、分散剤の使用量に反比例してポリマー粒径が大きくなり、同時にポリマー中の残存有機溶媒量も減少すること、ならびに分散剤の使用量をモノマーに対して1重量%以下と少なくしても、重合反応を還流温度未満に行うことにより凝集、付着などの無い大粒径ポリマーが安定的に得られることを見いだして、本発明に到達したものである。
・・・
<効果>
本発明によれば、吸水能、吸水速度、ゲル強度、凝集性および安全性等の全ての要求性能を同時に満足する高吸水性ポリマーを製造することができる。」(3頁左上欄6行~左下欄3行)
(エ)「<分散剤>
本発明においては分散剤としてHLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルが使用される。本発明では、特に室温で固体であるもの、たとえばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウリレートが好ましい。HLBが3未満の分散剤を使用すると、生成ポリマーがべとつき易く容易に凝集してしまうという欠点がある。また、HLBが12を越えるものは安定な懸濁状態を形成することができない。
分散剤の使用量は、アクリル酸系モノマーに対して0.001~1重量%である。0.001重量%未満では安定な懸濁状態を保てず、1重量%を越えるとポリマーの粒径は小さくなり、同時に残存有機溶媒量が増大するので好ましくない。一般に、懸濁粒子の粒径は、攪拌動力、二層の界面張力および分散媒の粘度に影響され、分散剤量を少なくすると界面張力を高めるため、ポリマー粒径が大きくなるものと考えられる。
<分散媒>
本発明に用いられる分散媒は、原則として重合反応にあずからず、且つ水と混合しない限りほとんど全ての液体が使用可能である。例えば、(イ)芳香族炭化水素、例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等、(ロ)脂環族炭化水素、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等、(ハ)脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン等、(ニ)ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。これらの中でも特に脂環族炭化水素、就中シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等、脂肪族炭化水素、就中ヘキサン、ヘプタン等がそのような液体の好ましい具体例として挙げられる。また、これらの分散媒は実質的に一種のみからなるものであっても、上記各群内または各群間の複数種の混合物であってもよい。 これらの分散媒の使用量は、重合反応系を油中水滴型にするため、及び重合反応熱の除去の点からして、アクリル酸系モノマーを含有する水溶液に対して、0.5~10重量比、好ましくは1~4重量比、にするのが望ましい。
・・・
<具体的な製造法>
本発明による高吸水性ポリマーの製造法に関する具体的な実施態様の一例を示せば、次の通りである。
予めアクリル酸及び(又は)メタアクリル酸を中和してアルカリ金属塩水溶液又はアンモニウム塩水溶液とし、これに水溶性ラジカル重合開始剤、および場合によって架橋剤を添加溶解し、窒素等の不活性ガスを導入して脱気を行う。
別に、HLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルを分散媒中へ添加し、還流温度未満の所定温度に加温して懸濁させ、窒素など不活性ガスを導入して脱気を行う。これに上記アクリル酸系モノマーを含有する水溶液を重合反応の進行に応じて逐次供給して重合させる。
重合後のポリマーは湿潤したピース状の粒子からなっていて、これはそのままあるいは共沸脱水した後、デカンテーションまたは蒸発操作等を行なえば分散媒と容易に分離することができる。そして、その湿潤ポリマーを、例えば120℃以下の温度で乾燥すれば、粉末状のポリマーが得られる。このようにして得られたポリマーは通常その粒径が100μm以上のものであって、真球状一次粒子ないしそれらが一部的に二次凝集した二次粒子をわずかに含む粒体状のものである。この二次粒子は、僅かな機械力によって容易に一次粒子に解砕することができる。」(4頁右下欄10行~5頁右下欄18行)
(オ)「実施例1
容量200ccのコニカルフラスコ中でアクリル酸30.0gを外部より冷却しながら、これに予め水44.7g及び25%水酸化ナトリウム46.6gより調製したアルカリ水溶液を添加して、カルボキシル基の70%を中和した。この場合の水に対するモノマー濃度は、中和後のモノマー濃度として30重量%に相当する。次いで、これに架橋剤としてN、N’-メチレンビスアクリルアミド0.042g、及び水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.104gを加え溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および滴下チューブを付設した容量500ccの五つ口丸底フラスコに、分散媒としてシクロヘキサン182g、及び分散媒(当審注:「分散剤」の誤記であると認められる。)としてソルビタンモノステアレート(HLB4.7)0.30g(0.8重量%対モノマー)を添加し、窒素ガスを導入し溶存酸素を追い出しながら、内温を69℃に昇温した。
この五つ口丸底フラスコの内容物に、前記の200ccコニカルフラスコの内容物を攪拌下、重合反応温度を68~70℃に保ちながら定量ポンプにより1時間かけて滴下し更に同温度で30分間重合させた。引き続いてシクロヘキサン還流下、4時間半共沸脱水を行った。尚、攪拌は250rpmで行った。
攪拌を停止すると、湿潤ピース状ポリマー粒子がフラスコの底に沈降し、デカンテーションによりシクロヘキサン層と容易に分離することができた。分離したポリマーを減圧乾燥機に移し80~90℃に加熱して付着したシクロヘキサン及び水を除去したところ、さらさらとした粉末状ポリマーが得られた。ポリマーの平均粒径は211μmであり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより残存有機溶媒を分析した結果、ポリマー中にシクロヘキサンが35ppm含有されていた。
実施例2
実施例1において、分散剤としてのソルビタンモノステアレートの使用量を0.15g(0.4重量%対モノマー)にかえた以外は同様に操作して平均粒径278μm、残存シクロヘキサン2ppmのポリマーを得た。
実施例3
実施例1において、重合反応を0.2kg/cm2の加圧下、74~76℃にて行う以外は同様に操作して平均粒径208μm、残存シクロヘキサン29ppmのポリマーを得た。
実施例4
実施例1において、モノマー水溶液の仕込みを12分割した逐次供給で行う以外は同様に操作して平均粒径205μm、残存シクロヘキサン22ppmのポリマーを得た。
実施例5
実施例1において、分散媒としてシクロヘキサンにかえノルマルヘキサンを使用して、重合反応を64~66℃に行う以外は同様に操作して平均粒径198μm、残存ノルマルヘキサン19ppmのポリマーを得た。
実施例6
実施例1において、分散媒としてのシクロヘキサンの使用量を121gにかえ、分散剤としてのソルビタンモノステアレートの使用量を0.2g(0.5重量%対モノマー)にかえて使用した以外は同様に操作して平均粒径241μm、残存シクロヘキサン14ppmのポリマーを得た。
実施例7
実施例1において、分散剤としてソルビタンモノステアレート(HLB8.6)を使用した以外は同様に操作して平均粒径220μm、残存シクロヘキサン27ppmのポリマーを得た。
・・・
比較例1
実施例1において、分散剤としてのソルビタンモノステアレートの使用量を1.35g(3.7重量%対モノマー)にかえた以外は同様に操作して平均粒径152μmの微粉末ポリマーを得た。残存シクロヘキサンは1550ppmと著しく高かった。」(6頁右上欄6行~7頁右下欄1行)
(カ)「
[図:0001395186000001.jpg]
」(8頁)
イ 甲2に記載の事項
(ア)「請求の範囲
[請求項1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8~12の界面活性剤の存在下、炭化水素溶媒中で逆相懸濁重合することにより含水ゲル状重合体を調製する工程、及び、
前記含水ゲル状重合体の水分率を、前記含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30~110質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を有することを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
・・・
[請求項6] 請求項1、2、3、4又は5記載の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
[請求項7] 平衡膨潤性能が10~28mm、吸水速度が1~20秒、及び、中位粒径が80~400μmであることを特徴とする請求項6記載の吸水性樹脂粒子。」
(イ)「[0005] 吸水性樹脂粒子の膨潤性能を向上させる方法としては、吸水性樹脂粒子の架橋密度をコントロールする方法が考えられる。例えば、アクリル酸/アクリル酸塩水溶液をHLB8~12の界面活性剤共存下に逆相懸濁重合させたのち(重合後直ぐに)架橋剤を加えて架橋反応を行う方法(特許文献4参照)、カルボキシル基含有ポリマーの含水率を10~30重量%としたのち、表面の架橋反応を開始する方法(特許文献5参照)等が提案されている。しかし、これらの方法によっても、止水材用途に求められるような膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子を得るには至っていない。
よって、高い平衡膨潤性能を有し、優れた吸水速度あるいは速い初期膨潤性能を有しながら、かつ粒径が適度な大きさでハンドリング性が良好である吸水性樹脂粒子の製造技術が待ち望まれている。
・・・
[0007] 本発明の目的は、高い平衡膨潤性能を有しながら、優れた吸水速度または速い初期膨潤性能を併せ持ち、かつ、粒径が適度でハンドリング性が良好である吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、該吸水性樹脂粒子を用いた止水材及び吸収性物品を提供することにある。」
(ウ)「[0010] 上記水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタアクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及び、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。なかでも、工業的に入手が容易という観点から、アクリル酸、メタアクリル酸又はそのアルカリ塩、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。」
(エ)「[0018] 本発明では、HLBが8~12の界面活性剤を用いる。上記HLBが8~12の界面活性剤を用いることで、W/O型逆相懸濁の状態が良好となり、好適な粒子径を有する粒子が得られる。なお、上記界面活性剤のHLBは8.5~10.5が好ましい。」
(オ)「[0025] 通常、逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂粒子およびその前駆体(含水ゲル状重合体)は、球状、顆粒状、破砕状、金平糖状およびそれらの凝集物などの様々な形態で得られるが、本発明においては、乾燥工程において粒子同士が粘着して凝集しにくく、かつ止水材用途に好適な形態の粒子がより簡便に得られる観点から、含水ゲル状重合体は顆粒状で得られることが好ましく、表面に一様な凹凸のある顆粒状がより好ましい。」
(カ)「[0040] 本発明の吸水性樹脂粒子は、平衡膨潤性能(10分値)が10~28mmであることが好ましい。このように高い膨潤性能を有することで、ケーブル外部素材の亀裂による初期浸水を防止した後、長時間の浸水防止効果を維持し、かつケーブルの素材劣化を促進しない程度の適度な膨潤圧力を発揮することができる。また、上記平衡膨潤性能は、11~24mmであることがより好ましく、12~20mmであることが更に好ましく、13~18mmが特に好ましい。
[0041] 本発明の吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の吸水速度が1~20秒であることが好ましい。このように優れた吸水速度を有することで、ケーブルの亀裂による浸水をより速く防止することができる。また、上記吸水速度は、1~15秒がより好ましく、2~10秒が更に好ましい。
[0042] 本発明の吸水性樹脂粒子は、中位粒径が80~400μmであることが好ましい。このような中位粒径を有することで、止水材の製造時における粉体としてのハンドリング性を良好に保ち、かつ、止水材を薄くすることができる。また、上記中位粒径は、100~350μmが好ましく、120~300μmがより好ましく、130~250μmが更に好ましい。」
(キ)「[0056] [実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン550mLをとり、界面活性剤としてのHLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP-20R)0.84gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、40℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液70g(0.783モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液112.3gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.084gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液のポリマー固形分相当量は69.3g、水分量は113gであった。
撹拌機の回転数を800rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、78.4gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液1.40g(0.00016モル)を添加した〔1次乾燥工程〕。このときの水分量は1.37gであり、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率(対ポリマー固形分)は、52質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。
その後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって〔2次乾燥工程〕、顆粒状の吸水性樹脂粒子を72.1g得た。
[0057] [実施例2~4]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を、それぞれ74.9g、64.5g、81.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液量をそれぞれ、1.05g(0.00012モル)、0.7g(0.00008モル)、1.75g(0.0002モル)とし、水分率(対ポリマー固形分)をそれぞれ、57質量%、71質量%、48質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子をそれぞれ72.8g、72.7g、73.1g得た。
[0058] [実施例5]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を81.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルに代えて、ポリグリセロールグリシジルエーテルの2%水溶液2.47g(0.00019モル)を添加し、水分率(対ポリマー固形分)を49質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を72.4g得た。
[0059] [実施例6]
実施例1において、界面活性剤としてHLB9.4のジグリセリンモノラウレート(理研ビタミン社製、ポエムDL-100)1.40gを添加する以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を70.8g得た。
[0060] [実施例7]
実施例1において、界面活性剤としてHLB9のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、S-970)1.75gを添加する以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を71.1g得た。
[0061] [実施例8]
実施例1において、重合終了後の重合液に、非晶質シリカ粉末(徳山ソーダ社製、トクシールP)0.02gを入れた以外は実施例1と同様の操作を行い、凝集した顆粒状の吸水性樹脂粒子73.2gを得た。
[0062] [比較例1]
実施例1において、1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を97.8gとして、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の添加量を4.2g(0.00048モル)とし、水分率(対ポリマー固形分)を28質量%とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を71.8g得た。
[0063] [比較例2]
攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、窒素ガス導入管を付した500mlの四つ口丸底フラスコにシクロヘキサン213gをとり、HLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP-20R)1.9gを仕込んだ。攪拌下室温にて界面活性剤を溶解させたのち、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に200mlの三角フラスコ中に80質量%のアクリル酸水溶液48.8g(0.542モル)をとり、外部より冷却しつつ、25.9質量%の苛性ソーダ水溶液67.0gを滴下して80モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.13gを加えて溶解した。なお、この単量体水溶液のポリマー固形分相当量は48.6g、水分量は67.1g(水分率:138質量%)であった。
このアクリル酸部分中和水溶液を四つ口フラスコに加えて分散させ再び系内を窒素で充分に置換したのち昇温を行い、浴温を55~60℃に保持して3時間重合反応を行った。この重合液にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05g(0.00029モル)を加えた後、水及びシクロヘキサンを蒸留で除去、乾燥することによって微顆粒状の乾燥重合体48.5gを得た。
[0064] [比較例3]
実施例2において、内部架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド7.0mg(45μモル)を重合前の単量体水溶液に追加した以外は、実施例2と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子を72.1g得た。
[0065] [比較例4]
内容積500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38質量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジエーテル18.4mg(106μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mgを添加し、これを第1段目重合用の単量体水溶液(a)とした。一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n-ヘプタン340g(500mL)と、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ社製、商品名:S-370、HLB値3.0〕0.92gを加えてn-ヘプタンに溶解させた後、内温を35℃にした。その後、上記の第1段目重合用の単量体水溶液(a)を加えて35℃に保ち、攪拌下で懸濁し、系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行った。
次に、これとは別に、内容積500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38質量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(53μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム18.4mgを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)とした。第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを50℃に冷却し、界面活性剤が溶解している状態で、第2段目重合用の単量体水溶液(b)を系内に滴下し、50℃に保ちながら30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで充分に置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を1.5時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、250gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテル110mg(0.00063モル)を添加した〔1次乾燥工程〕。このとき、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率(対ポリマー固形分)は、25質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。
その後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって〔2次乾燥工程〕、球状の吸水性樹脂粒子を188.3g得た。」
(ク)「[0066](評価)
実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
・・・
[0068] (2)吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水速度
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂粒子の吸水速度とした。
[0069] (3)吸水性樹脂粒子の中位粒径
吸水性樹脂粒子100gに、滑剤として、0.5gの非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン社製、商品名:Sipernat 200)を混合した。
前記吸水性樹脂粒子を、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50質量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50質量%以上が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒径とした。
・・・
[0071][表1]
[図:0001395186000002.jpg]
」
ウ 甲3に記載の事項
(ア)「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中で界面活性剤の存在下に逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂であって、前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂。」
(イ)「[0007] 吸水性樹脂を逆相懸濁重合法により製造する従来技術としては、ラジカル重合開始剤を用いて石油系炭化水素溶媒中でα,β-不飽和カルボン酸およびそのアルカリ金属塩水溶液を架橋剤の存在下または不存在下に重合させるに際し、ショ糖脂肪酸エステルを保護コロイド剤として使用することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法(特許文献1参照)や、ラジカル重合開始剤を用いて石油系炭化水素溶媒中で、α,β-不飽和カルボン酸およびそのアルカリ金属塩の25質量%以上の水溶液を架橋剤の存在下または不存在下に重合させるに際し、界面活性剤としてHLB2~16のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することを特徴とする製造法(特許文献2参照)等が知られているが、これらの製造技術は、いずれも臭気の低減に着目しておらず、得られた吸水性樹脂の臭気は充分に低いものではなかった。
・・・
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明の目的は、逆相懸濁重合法で製造された吸水性樹脂において、前記吸水性樹脂中に含まれる逆相懸濁重合に使用された石油系炭化水素分散媒の残存量が少なく、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気が低減された、衛生材用途に適した吸水性樹脂、吸収体および吸収性物品を提供することにある。
[0009] 本発明者らは、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気と、吸水性樹脂の製造時に使用された石油系炭化水素分散媒との関係を鋭意検討した結果、吸水性樹脂の製造において、2段以上の多段の逆相懸濁重合を行うこと、ならびに1段目の逆相懸濁重合において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の石油系炭化水素分散媒への分散後に得られた分散液に界面活性剤を添加することにより、前記吸水性樹脂中の石油系炭化水素分散媒の残存量が特定量以下である吸水性樹脂が得られ、それにより、従来技術により得られた吸水性樹脂と比較して、吸水性樹脂において有意に臭気が低減されることを見出した。
[0010] すなわち、本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中で界面活性剤の存在下に逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂であって、前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂に関する。」
(ウ)「[0024] 水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の単量体濃度は、20質量%~飽和濃度である。
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等が含まれていてもよい。
・・・
[0026] 増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
[0027] 石油系炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、n-オクタン等の炭素数6~8の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の炭素数6~8の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。」
(エ)「[0054] 2段目の逆相懸濁重合における攪拌は、全体が均一に混合されていればよい。凝集粒子の中位粒子径は、界面活性剤の析出状態や1段目のエチレン性不飽和単量体に対する2段目のエチレン性不飽和単量体の量に応じて制御することができる。
なお、衛生材料用途に好適な凝集粒子の中位粒子径としては、200~600μmが好ましく、250~500μmがより好ましく、300~450μmがさらに好ましい。
・・・
[0057] これらの多段の逆相懸濁重合終了後、得られた吸水性樹脂の前駆体に、水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応性を有する官能基を2個以上含有する架橋剤を添加することが好ましい。重合後に架橋剤を添加し反応させることにより、吸水性樹脂粒子の表面層の架橋密度が高まり、加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として好適な性能が付与される。
[0058] 前記架橋反応に用いられる後架橋剤としては、重合に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応しうるものであれば特に限定されない。
・・・
[0060] 前記後架橋剤の添加量は、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.02~3質量部である。
[0061] 後架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合、得られる吸水性樹脂の加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができず、5質量部を超える場合、吸水能が低くなりすぎるため好ましくない。」
(オ)「実施例
[0071] 以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[0072] 各実施例および比較例で得られた吸水性樹脂の、中位粒子径、水分率、生理食塩水吸水能、残存分散媒量(吸水性樹脂粒子内部に残存する石油系炭化水素分散媒の量)および臭気官能試験は、以下に示す方法により評価した。
[0073] (1)中位粒子径
吸水性樹脂50gを、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50質量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50質量%以上が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒子径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩および受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩および受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂約50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
・・・
[0077] (b)サンプルの残存分散媒量の測定
測定するサンプルを約2g、アルミカップに入れ、105℃の熱風乾燥機にて2時間乾燥させ、含有する水分量を調整した。
20ml容のバイアル瓶(マルエム社製、No.5)に上記サンプルを0.10g精秤し、DMFを0.75g加え、更に蒸留水0.75gを加えて瓶を振り軽く撹拌した後、セプタムゴム、アルミキャップで栓をして締め付けた。(DMF存在下で蒸留水を加えることで、吸水性樹脂をゆっくりと均一に膨潤させ、内包された分散媒を抽出・検出させた。)
このバイアル瓶を110℃で2時間加温し、気相部を1ml採取し、ガスクロマトグラフに注入し、クロマトグラムを得た。
得られたクロマトグラムのピーク面積を基に先に作成した検量線から、サンプル0.10gに含まれる分散媒量を算出し、サンプル1gあたりに含まれる分散媒量[ppm]に換算した。」
(カ)「[0081] [実施例1]
500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。(このとき単量体水溶液は、中和度75モル%、濃度38質量%であった)
50mmφの2段傾斜パドル翼を備えた攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、61℃まで加温し、500rpmの撹拌速度下で前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌し分散させた。(工程(A))
[0082] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を更に分散させた。(工程(B))
[0083] 次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
1段目重合終了後、撹拌速度を1000rpmに増速し、内温を21℃付近まで冷却した。
別途、500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸128.8gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム142.9gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.15gとエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgと蒸留水16.7gを加えて2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。(このとき2段目の単量体水溶液は、中和度75モル%、濃度44質量%であった)
[0084] 次に冷却した1段目の重合液に前記2段目単量体水溶液を滴下ロートにて添加し、系内を充分窒素置換した後、70℃湯浴にて1時間加温し、2段目の逆相懸濁重合を行った。
2段目の重合反応後、120℃の油浴を用いて加熱し、共沸蒸留により、n-ヘプタンをフラスコに還流しながら水約260gを系外に除去することによりヘプタンに分散された脱水重合体を得た。得られたヘプタン分散脱水重合体に、後架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2gを添加し、83℃で2時間、後架橋反応を行なった。
その後、120℃の油浴を用いて加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂234gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は310μmで生理食塩水吸水能は63g/g、水分率は4.5%であった。(1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0085] [実施例2]
実施例1の工程(B)において、界面活性剤の溶解液を添加した後に、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を添加した以外は、実施例1と同様にし、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂236gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は403μmで生理食塩水吸水能は65g/g、水分率は3.7%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0086] [実施例3]
500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
50mmφの2段傾斜パドル翼を備えた攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、61℃まで冷却し、500rpmの撹拌速度下で前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌し分散させた。(工程(A))
[0087] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を更に分散させた。(工程(B))
[0088] 次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
1段目重合終了後、撹拌速度を1000rpmに増速し、内温を23℃付近まで冷却した。
[0089] 別途、500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸128.8gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム142.9gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.15gとエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgと蒸留水16.7gを加えて2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。次に冷却した重合液に前記2段目単量体水溶液を滴下ロートにて添加し、系内を充分窒素置換した後、70℃湯浴にて1時間加温し、2段目の逆相懸濁重合を行った。
2段目の重合反応後、120℃の油浴を用いて加熱し、共沸蒸留により、n-ヘプタンをフラスコに還流しながら水を約260gを系外に除去することによりヘプタンに分散された脱水重合体を得た。得られたヘプタン分散脱水重合体に、後架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2gを添加し、83℃で2時間、後架橋反応を行なった。
その後、120℃の油浴を用いて加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂238gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は352μmで生理食塩水吸水能は62g/g、水分率は5.6%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0090] [実施例4]
実施例3の工程(B)において、界面活性剤に続いて高分子系分散剤として酸化型エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス220MP)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を添加した以外は、実施例3と同様にして球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂237gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は368μmで生理食塩水吸水能は60g/g、水分率は5.1%であった。(1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0091] [実施例5]
実施例3の工程(B)において、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gに代えて、ステアリン酸テトラグリセリル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:TS4)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を用いたことと、1段目重合終了後に20℃付近まで冷却を行ったこと以外は、実施例3と同様にして球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂234gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は293μmで生理食塩水吸水能は58g/g、水分率は3.0%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約70μmである。)
[0092] [実施例6]
実施例3の工程(A)において、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gに代えて、酸化型エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス4052E)0.92gを用いた以外は、実施例3と同様にし、球状粒子の凝集した形状が吸水性樹脂240gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は353μmで生理食塩水吸水能は63g/g、水分率は5.8%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0093] [実施例7]
500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
50mmφの2段傾斜パドル翼を備えた攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、61℃まで冷却し、300rpmの撹拌速度下で前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌し分散させた。(工程(A))
[0094] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、撹拌速度500rpmにて水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を更に分散させた。(工程(B))
[0095] 次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
1段目重合終了後以降の操作は、実施例3と同様にし、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂237gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は372μmで生理食塩水吸水能は62g/g、水分率は4.8%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0096] [実施例8]
実施例7の工程(A)において、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gに代えて、酸化型エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス4052E)0.46gと無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.46gを混合して用いた以外は、実施例7と同様にし、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂235gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は356μmで生理食塩水吸水能は63g/g、水分率は4.5%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0097] [比較例1]
500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
50mmφの2段傾斜パドル翼を備えた攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン342gを加え、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gを加え61℃まで加温溶解した後、500rpmの撹拌速度下で前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。
1段目重合終了後以降は、実施例1と同様にし、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂236gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は318μmで生理食塩水吸水能は62g/g、水分率は4.6%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0098] [比較例2]
500mLの三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
50mmφの2段傾斜パドル翼を備えた攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン342gを加え、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gと、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、61℃まで冷却し、500rpmの撹拌速度下で前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。
1段目重合終了後以降は、実施例3と同様にし、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂237gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は348μmで生理食塩水吸水能は61g/g、水分率は4.9%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
[0099] [比較例3]
比較例2において界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gに代えて、ステアリン酸テトラグリセリル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:TS4)0.92gを用いたことと、1段目重合終了後に20℃付近まで冷却を行ったこと以外は、比較例2と同様にして、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂235gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は273μmで生理食塩水吸水能は60g/g、水分率は3.5%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約70μmである。)
[0100] [比較例4]
比較例2と同様にして得られたサンプルを、更に熱風乾燥機にて180℃で3時間加熱して、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂230gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は356μmで生理食塩水吸水能は68g/g、水分率は0.5%であった。(この吸水性樹脂の1次粒子の中位粒子径は約60μmである。)
上記実施例1~8および比較例1~4で得られた吸水性樹脂の残存分散媒量と臭気感応試験結果を表2に示す。
[0101] [表2]
[図:0001395186000003.jpg]
[0102] 表2より、本発明の吸水性樹脂は、該吸水性樹脂の重合時に使用した石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下まで大きく低減され、分散媒由来の臭気が低減されていることがわかる。また、残存分散媒量が500ppm以下の実施例6~8の吸水性樹脂は、臭気官能試験においても分散媒由来の臭気は感じられなかった。」
エ 甲4に記載の事項
(ア)「【請求項1】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下」
(イ)「【0011】
上記のように多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツ等の吸収体において吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸水性樹脂濃度が高い(吸水性樹脂の質量比が高い)吸収体となる傾向を示しており、従来の吸水性樹脂では、高濃度での使用に十分な性能が示されず、また高濃度では消臭性能も十分とはいえないという問題がある。また、オムツ中の吸水性樹脂の使用量が増加するに伴い、残存モノマーの低減がより求められるようになっている。
【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来、吸水性樹脂の消臭性能の検討において、尿の臭いに注目されていたが、本発明者は、さらなる付加機能として、吸水性樹脂の消臭性能を鋭意検討する過程で、吸水性樹脂、特に逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂自体が特異的な臭気を有することを見出し、この吸水性樹脂自体の臭気が実使用時の消臭性能を低下させていることを見出した。さらに、オムツでの実使用に重要な因子として、吸水性樹脂が特定の狭い粒度分布及び特定の吸収倍率を有すること、そして粒子形状が重要であることが見出された。
【0014】
そして、逆相懸濁重合による吸水性樹脂自体が特異的な臭気を有する原因を鋭意検討した結果、逆相懸濁重合による吸水性樹脂は、従来残存モノマー量が少ないと考えられていたが、実は残存モノマーが発生増加することを見出した。そして、臭気の原因を探った結果、この残存モノマーの増加、逆相懸濁重合で使用される揮発性有機溶媒、及びその他の逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物に由来する臭気の発生が見出された。
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の逆相懸濁重合による吸水剤においては低沸点の有機溶媒中(例えば、シクロヘキサン/沸点80.7℃)で重合、表面架橋、及び乾燥・造粒が行なわれていたため、従来の製法や市販の製品等では微量の有機溶媒が残存し、この有機溶媒がオムツでの実使用時の臭気となっていることを見出した。本発明においては、臭気低減の手段として、モノマー、特にアクリル酸中の微量成分(酢酸、プロピオン酸、アクリル酸ダイマー等)を制御した上で、逆相懸濁重合後の表面架橋時に実質有機溶媒を使用せず、かつ高温加熱(好ましくは150℃以上250℃以下)を行い、造粒時にも実質有機溶媒を使用しないことでかかる問題を解決した。」
(ウ)「【0040】
(6)重合方法
本発明の吸水剤を得るために前述のモノマーを重合するに際しては、このモノマーの水溶液を分散剤の存在下、重合不活性な疎水性有機溶剤中に分散して重合を行う逆相懸濁重合が適用され得る。・・・
【0041】
逆相懸濁重合は重合性モノマーの水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁又は乳化させて、モノマーを分散させる重合方法である。モノマーを分散させる界面活性剤(米国特許6458896号)又は分散剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤(US2003-153887)、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が例示される。例えば、使用できる界面活性剤は、米国特許6107358号にも例示されている。
【0042】
具体的に、用いられるアニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石鹸、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等がある。カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤としてはアルキルアミン類やアルキルベタイン等がある。また、その他分散剤としてエチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等がある。
【0043】
これら界面活性剤ないし分散剤の使用量は、重合の種類によって適宜選択される。一般には、重合性モノマーと架橋性モノマーとからなるモノマー成分全体100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~5質量部である。また、これらの分散剤又は界面活性剤の使用量は、後述する有機溶媒に対して0.001~10質量%、好ましくは0.001~1質量%である。
【0044】
逆相懸濁重合に使用する有機溶媒(別称;分散溶媒)としては、基本的に水に溶け難く重合に不活性であればいかなるものも使用できる。その一例として、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環状炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。このうち、工業的入手の安定性、品質等の観点から、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい溶媒として挙げられる。これらの疎水性溶媒の使用量は、重合性モノマー含有水溶液1質量部に対して0.5~10質量部、好ましくは0.6~5質量部である。」
(エ)「【0098】
(16)本発明の粒子状吸水剤のその他の物性
・・・
【0103】
(1)ボルテックス吸収速度
本発明の吸水剤の吸収速度は60秒以下、好ましくは1~55秒、より好ましくは2~50秒である。吸収速度が60秒を超える場合、オムツ等の吸収体に吸水性樹脂を使用した場合に十分な吸収能力を発揮しない場合がある。」
(オ)「【実施例】
【0110】
以下に、本発明の実施例と比較例とを具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、吸水性樹脂、粒子状吸水剤(以下、吸水剤という)、吸収性物品の諸性能は以下の方法で測定した。下記測定方法の説明においては、吸水剤の物性を測定する場合として説明する。・・・
【0115】
(3)質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率
吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるい(JIS Z-8801-1(2000))で分級篩い分けし、粒子径150μm未満の質量百分率を実測するとともに、各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ = 0.5 × ln(X2/X1)(X1はR=84.1質量%、X2は15.9質量%のときのそれぞれの粒子径)
・・・
【0117】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報等にあるように一定目開きの標準ふるいで、粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
・・・
【0138】
(6)吸収速度評価(Vortex法)
予め調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000質量部に食品添加物である食用青色1号0.02質量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、後述する実施例又は比較例で得られた吸水剤2.0gを投入し、吸収速度(秒)を測定した。終点は、JIS K 7224(1996)「高吸水性樹脂の吸収速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。
・・・
【0141】
(8)揮発性有機物の含有量(ppm)
ガラスシャーレ(株式会社相互理化学硝子製作所発行のGENERAL CATALOGUE A-1000(2003年発行)に記載、コード:305-07、外径×高さ=120mm×25mm)に、吸水剤6.00gを均一に撒布した。次いで、円形(直径116mm)に切った通気性で通液性のヒートロンペーパー(南国パルプ工業株式会社、品種:GSP-22)1枚で吸水剤を覆い(ヒートロンペーパーでない場合は不織布で代用)、ヒートロンペーパー(又は不織布)の円周3箇所をガラスシャーレ内壁にテープ(10mm×10mm)で固定した。3Lの臭い袋(近江オドエアーサービス(株)製)の一辺を開口し、吸水剤を撒布したガラスシャーレを入れた後、臭い袋の開口部分を粘着テープで隙間がないように閉じた。臭い袋に備えられたガラス管部から、臭い袋内を一旦減圧にした後、無臭空気1.2Lを注入し、続いて、外気の混入を防ぎながら臭い袋内のシャーレにテフロン(登録商標)チューブを備えたガラス漏斗を用いて、25±2℃に調温した0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)30mlを一気に注ぎ、吸水剤を均一に膨潤させ、シリコンゴム栓で密栓した。膨潤させ、37℃の恒温機で放置し、60分後に取り出した後、室温20~30℃で放置した。室温放置から10分後、シリコンゴム栓をはずし、外気の混入を防ぎながら、ガス採取器((株)ガステック製、GV-100S)及びガス検知管((株)ガステック製、No.102L)を用いて雰囲気濃度を測定した。ガス検知管の先端と膨潤させた吸水剤との距離は、測定開始から終了までの間、5~10cmに保持した。ガス採取器及びガス検知管の測定については、該ガス検知管に定められた方法に準じて行った。求められた雰囲気濃度を揮発性有機物含有量(ppm)とした。なお、この測定方法では、吸水剤を用いずに生理食塩水のみを用いて同様の操作を行ってもガス検知管が検知・変色することがある。この場合、生理食塩水のみを用いた該変色域から検出されたブランクを減じて補正した(検出限界10ppm)。」
(カ)「【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。
【0153】
[比較例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。別にフラスコ中に市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、市販のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、含水ゲル状物から共沸脱水により水を系外に取り出した。
【0154】
脱水した含水ゲル状物に、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル85.0mgを添加した後、浴温を80℃で2時間保持し、表面架橋を行った。その後、逆相懸濁(有機溶媒:シクロヘキサン)により造粒した後にろ過し、80℃で減圧乾燥し、比較用粒子状吸水剤(1)を得た。得られた比較用粒子状吸水剤(1)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。比較例1の加熱前の残存モノマー量は50ppmであった。
【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。
【0156】
[実施例3]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に、ジエチレントリアミン5酢酸水溶液とツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(白井松新薬株式会社(所在地:滋賀県甲賀郡水口町宇川37-1)販売、FS-80MO)とからなる水溶液2質量部(ジエチレントリアミン5酢酸が粒子状吸水剤(1)に対して50質量ppm、ツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液が粒子状吸水剤(1)に対して0.1質量%となるように調整)を噴霧混合した。得られた混合物を60℃で1時間硬化し、その後、微粒子状のステアリン酸カルシウム(関東化学株式会社製)0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(3)を得た。得られた粒子状吸水剤(3)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。
【0157】
[実施例4]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)を吸収体として性能評価するために上記(9)吸収体性能評価の方法に従って評価用吸収体(1)を作成し、10分戻り量を測定した。評価結果が表3に示される。
【0158】
[実施例5,6]
実施例4で用いた粒子状吸水剤(1)を、実施例2及び3で得られた粒子状吸水剤(2)、(3)に変更することにより、評価用吸収体(2)及び(3)をそれぞれ得た。得られた評価用吸収体(2)及び(3)の戻り量を測定した。その評価結果が表3に示される。
【0159】
〔比較例2〕
実施例4で用いた粒子状吸水剤(1)を、比較例1で得られた比較用粒子状吸水剤(1)に変更することにより、比較評価用吸収体(1)を得た。得られた比較評価用吸収体(1)の戻り量を測定した。その評価結果が表3に示される。
【0160】
[比較例3]
実施例1において、使用するアクリル酸を製造例1から製造例2に変更し、中和してアクリル酸ナトリムを得、以下、実施例1と同様に重合した。得られた比較用粒子状吸水剤(3)の評価結果が表1及び表2に示される。
【0161】
[比較例4]
実施例1において、使用するアクリル酸として市販のアクリル酸をそのまま使用し、中和によりアクリル酸ナトリムを得、以下、実施例1と同様に重合した。得られた比較用粒子状吸水剤(4)の評価結果が表1及び表2に示される。
【0162】
【表1】
[図:0001395186000004.jpg]
【0163】
【表2】
[図:0001395186000005.jpg]
【0164】
【表3】
[図:0001395186000006.jpg]
【0165】
本発明の粒子状吸水剤は、表1~3から分かるように、揮発性有機溶媒を含まないので、膨潤状態でゲルからの臭気がなく、吸収倍率、加圧下吸収倍率、吸収速度に優れたものである。質量平均粒子径及び対数標準偏差も、吸水剤の取り扱い性がよく、吸収性物品に使用された場合に高物性が示される範囲内にある。本発明の粒子状吸水剤を使用することにより、戻り量が少なく、高性能の吸収性物品(表3ではオムツ)が得られる。かかる本発明の粒子状吸水剤は、必要により無機微粒子、消臭剤等を添加することで、さらに高いブロッキング率、耐尿性、消臭性能をも示す。」
オ 甲5に記載の事項
(ア)「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて吸水性樹脂を製造する方法であって、
(A)水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒に添加して分散させ、
(B)得られた分散液に界面活性剤を添加して更に分散させた後、
(C)必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて逆相懸濁重合を行う、
ことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。」
(イ)「[0002] 吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ペットシート等の日用品、ケーブル用止水材等の工業材料等に幅広く用いられている。
紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料は、一般的に、トップシート、バックシート、ホットメルト接着剤、伸縮材、吸水性樹脂、パルプ繊維等からなり、多くの合成樹脂や改質剤が使用され、原料成分に由来する臭気が感じられる。これらの衛生材料は、人体に着用されるため、わずかな臭気であっても、使用者に不快感を与えることから、無臭化が望まれている。
これら衛生材料における構成材料の中で、吸水性樹脂についても、その製造過程で使用される物質に由来する臭気がわずかにあり、吸水時に発散しやすくなるため、臭気の低減が望ましいと考えられる。
・・・
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明の目的は、吸水時の臭気が低減された吸水性樹脂の製造方法および、そ れにより製造された吸水性樹脂を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0007] 従来の逆相懸濁重合法は、界面活性剤を溶解した分散媒に単量体水溶液を添加 し、攪拌下にて、単量体水溶液の液滴を分散させる方法が行なわれる。しかしながら、これらの重合方法にて得られた吸水性樹脂は、吸水時に分散媒に由来する臭気が感じられた。
[0008] また、逆相懸濁重合法による吸水性樹脂の製造においては、通常、分散媒として沸点が80~130℃程度の石油系炭化水素が用いられるため、例えば、分散媒の沸点以上の高温で乾燥することで、臭気の低減を図ることが考えられるが加熱処理では臭気は充分に低くならないことがわかった。
[0009] そこで、本発明者らは、逆相懸濁重合法によって得られた吸水性樹脂について、加熱によって臭気を低減できない原因を調べた結果、吸水性樹脂の粒子内部に少量の分散媒が閉じ込められていることをつきとめた。
本発明者らは、吸水性樹脂の粒子内部に分散媒が閉じ込められるのを防ぐため、鋭意研究を重ねた結果、逆相懸濁重合法において、界面活性剤を添加していない分散媒中に単量体水溶液を分散させ、得られた分散液に界面活性剤を添加して更に分散させた後、重合することで、吸水時の分散媒由来の臭気が極めて低い吸水性樹脂が得られることを発見し本発明に至った。」
(ウ)「[0018] 本発明で逆相懸濁重合の分散媒として用いられる石油系炭化水素としては、例えば、n-へキサン、n-ヘプタン、2-メチルへキサン、3-メチルへキサン、n-オクタン等の炭素数6~8の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロへキサン等の炭素数6~8の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
・・・
[0033] 必要に応じて使用される内部架橋剤としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール〔「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合を意味する。以下同じ〕、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のポリオール類、ポリオール類とアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸とを反応させて得られる二価以上のビニル基を 有するポリ不飽和エステル類、N,N’-メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリ グリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等の二個以上のグリシジル基を含有するポリグリシジル化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。」
(エ)「[0037] 本発明においては、前述の方法により工程(C)までを経て得られた吸水性樹脂に、水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応性を有する官能基を2個以 上含有する後架橋剤を添加して、吸水性樹脂の粒子表面層において後架橋反応を行なってもよい。吸水性樹脂の粒子表面層を後架橋することで、加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として好適な性能が付与される。
・・・
[0040] 後架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合、得られる吸水性樹脂の加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができず、5質量部を超える場合、吸水能が低くなりすぎるため好ましくない。」
(オ)「[0045] また、以上のようにして得られる吸水性樹脂の形状は、使用する界面活性剤種や分散媒種によって異なるが、通常は球状粒子または凹凸の多い不定形粒子である。本特許に記載の方法は、球状粒子に適用すれば、分散媒由来の臭気低減において効果が大きく好ましい。」
(カ)「実施例
・・・
[0047] 実施例1
500mLの三角フラスコに、80重量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行なった。これに 過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交 換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整した。
攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ッ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え加温し、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌した。(工程(A))
[0048] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散させた。(工程(B))
[0049] 次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
重合反応後、120℃の油浴を用いて加熱し、共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、水114gを系外に除去することにより脱水重合体を得た。
その後、120℃の油浴を用いて加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、吸水性樹脂93gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は127μmで生理食塩水吸水能は60g/g、水分率は2%であった。
・・・
[0054] 実施例3
500mLの三角フラスコに、80重量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行った。これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整した。
[0055] 攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌した。(工程(A))
[0056] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散させた。(工程(B))
次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
[0057] 重合反応後、実施例2と同様の操作を行い、吸水性樹脂95gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は56μmで生理食塩水吸水能55g/g、水分率は3%であった。
・・・
[0061] 実施例7
500mLの三角フラスコに、80重量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行な つた。これに過硫酸カリウム0.11gとN,N’-メチレンビスアクリルアミド8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整した。攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてシクロへキサン352gを加え、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌した。(工程(A))
[0062] 次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル (三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをシクロへキサン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散させた。(工程(B))
[0063] 次に前記分散液を含む丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。(工程(C))
[0064] 重合反応後、120℃の油浴を用いて加熱し、共沸蒸留により、シクロへキサンを還流しながら、水114gを系外に除去することにより脱水重合体を得た。得られた脱水 重合体に架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.6gを添加し、75℃で2時間、架橋反応を行なった。
[0065] その後、120℃の油浴を用いて加熱し、シクロへキサンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、吸水性樹脂97gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は 103μmで生理食塩水吸水能49g/g水分率は6%であった。
[0066] 実施例8
実施例3と同様に重合反応を工程(C)まで終えた重合液を第1段目の重合液として、温度を25℃に冷却した。
別途、500mLの三角フラスコに、80重量%アクリル酸128.8gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30重量%水酸化ナトリウム142.9gを滴下して中 和を行ない、これに過硫酸カリウム0.15gとエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgと蒸留水16.7gを加えて2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整した。
[0067] 2段目単量体水溶液を前記1段目重合液に添加し、系内を窒素置換した後、70℃湯浴にて1時間加温し、2段目の逆相懸濁重合を行った。
重合反応後、120℃の油浴を用いて加熱し、共沸蒸留により、n-ヘプタンを丸底フラスコに還流しながら水225gを系外に除去することにより脱水重合体を得た。得られた脱水重合体に、架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2gを添加し、80℃で2時間、架橋反応を行なった。
[0068] その後、120℃の油浴を用いて加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子の凝集した形状の吸水性樹脂232gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は335μmで生理食塩水吸水能53g/g、水分率は3%であった。
・・・
[0074] 比較例4
500mLの三角フラスコに、80重量%アクリル酸92.0gを加え、フラスコを外部から冷却しつつ、攪拌しながら30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行な つた。これに過硫酸カリウム0.11gとN,N’-メチレンビスアクリルアミド8.3mgイオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整した。
[0075] 攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた2L容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてシクロへキサン360gを加え、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gと、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、この界面活性剤存在下の分散媒に前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素ガス置換した後、70℃の湯浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった。
[0076] 重合反応後、実施例7と同様に操作し、吸水性樹脂96gを得た。この吸水性樹脂の中位粒子径は110μmで生理食塩水吸水能48g/g水分率は7%であった。
[0077] 各実施例および比較例で得られた吸水性樹脂の、中位粒子径、水分率および臭気官能試験は、以下に示す方法により評価した。
[0078](中位粒子径)
吸水性樹脂50gを、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50重量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50重量%以上が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒子径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩および受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩および受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、該吸水性樹脂約50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
[0079] 分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の重量を全量に対する重量百分率として計算し、粒子径の小さい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の重量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上の プロットを直線で結ぶことにより、積算重量百分率50重量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
・・・
[0082](臭気官能試験)
吸水性樹脂の膨潤時の分散媒由来の臭気を次の方法にて比較した。容量140mLの蓋付ガラス瓶(マヨネーズ瓶)に、25℃の0.9質量%食塩水20.0gを加え、長さ3cmの回転子を入れて攪拌した。吸水性樹脂4.0gを前記ガラス瓶に添加し密閉した。この該ガラス瓶中の分散媒由来の臭気を、次に示す「6段階臭気強度表示法」に準じて、5人のパネラーが判定し、その平均値で評価した。
[0083][表1]
[図:0001395186000007.jpg]
[0084] 上記実施例1~8および比較例1~4で得られた吸水性樹脂の臭気官能試験結果を表2に示す。
[0085][表2]
[図:0001395186000008.jpg]
表2より、同じ種類の分散媒で比較すれば、本発明の製造方法により得られた吸水性樹脂は、明らかに分散媒由来の臭気が低くなっていることがわかる。」
(2)甲1~甲5に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1には、上記(1)ア(ア)に記載される「高吸水性ポリマーの製造法」について、同(オ)には、「実施例1において、分散剤としてソルビタンモノステアレート(HLB8.6)を使用した以外は同様に操作して平均粒径220μm、残存シクロヘキサン27ppmのポリマーを得た。」とされる「実施例7」が記載されているところ、この実施例7で引用している同(オ)に記載される「実施例1」を、発明の対比、判断において必要な範囲でその要部を引用すると共に、実施例7において得られた粉末状ポリマーに着目すると、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「コニカルフラスコ中でアクリル酸30.0gに予め水44.7g及び25%水酸化ナトリウム46.6gより調製したアルカリ水溶液を添加して、カルボキシル基の70%を中和し、これに架橋剤としてN、N’-メチレンビスアクリルアミド0.042g、及び水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.104gを加え溶解させ、別に五つ口丸底フラスコに分散媒としてシクロヘキサン182g、及び分散剤としてソルビタンモノステアレート(HLB8.6)0.30g(0.8重量%対モノマー)を添加し、この五つ口丸底フラスコの内容物に、前記コニカルフラスコの内容物を攪拌下、重合反応温度を68~70℃に保ちながら重合させ、引き続いてシクロヘキサン還流下、共沸脱水を行い、攪拌を停止後、湿潤ピース状ポリマー粒子を分離し、分離したポリマーを減圧乾燥機に移し80~90℃に加熱して付着したシクロヘキサン及び水を除去して得られた粉末状ポリマーであって、平均粒径は220μmであり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより残存有機溶媒を分析した結果、ポリマー中にシクロヘキサンが27ppm含有されている、粉末状ポリマー。」
イ 甲2に記載された発明
甲2には、上記(1)イ(ア)の[請求項7]に記載される吸水性樹脂の具体例として、同(キ)の[0056]に記載される[実施例1]により得られる吸水性樹脂粒子が記載され、この吸水性樹脂粒子は、同(ク)の[表1]によれば、生理食塩水吸水速度[秒]が2、中位粒径[μm]が、160であることが記載されている。この実施例1における吸水性樹脂粒子について、上記[実施例1]の記載を、発明の対比、判断において必要な範囲でその要部も引用すると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「丸底円筒型セパラブルフラスコにn-ヘプタン550mLをとり、界面活性剤としてのHLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP-20R)0.84gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、40℃まで冷却し、一方、三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液70g(0.783モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液112.3gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.084gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製し、この単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得、次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、78.4gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液1.40g(0.00016モル)を添加し〔1次乾燥工程〕、後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持し、その後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって〔2次乾燥工程〕得た72.1gの顆粒状の吸水性樹脂粒子であって、生理食塩水吸水速度[秒]が2、中位粒径[μm]が、160である吸水性樹脂粒子。」
ウ 甲3に記載された発明
甲3には、上記(1)ウ(ア)の請求の範囲[1]に記載される吸水性樹脂の具体例として、同(オ)の[0091]に記載される[実施例5]により得られる吸水性樹脂粒子が記載され、この吸水性樹脂粒子は、中位粒子径が293μmであり、同(カ)の[0101][表2]によれば、残存分散媒量[ppm]が590であることが記載されている。この[実施例5]における吸水性樹脂粒子について、上記[実施例5]の記載、および[実施例5]が引用している同(カ)の[0086]~[0089]の[実施例3]の記載を、発明の対比、判断において必要な範囲でその要部を引用すると、甲3には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「三角フラスコに、80質量%アクリル酸92.0gを加え、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製し、五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、商品名:ハイワックス1105A)0.92gを加えて加温溶解した後、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を漏斗を用いて一括添加し、分散させ、次に、界面活性剤として、ステアリン酸テトラグリセリル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:TS4)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に漏斗を用いて添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を更に分散させ、次に前記分散液を加温し、重合反応を行い重合液を生成し、別途、三角フラスコに、80質量%アクリル酸128.8gを加え、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム142.9gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.15gとエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgと蒸留水16.7gを加えて2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製し、前記重合液に前記2段目単量体水溶液を滴下ロートにて添加し、2段目の逆相懸濁重合を行い、共沸蒸留により、n-ヘプタンをフラスコに還流しながら水を系外に除去することによりヘプタンに分散された脱水重合体を得、得られたヘプタン分散脱水重合体に、後架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2gを添加し、後架橋反応を行ない、その後、加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、乾燥して得た、238gの球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子であって、中位粒子径が293μm、残存分散媒量[ppm]が590である吸水性樹脂粒子。」
エ 甲4に記載された発明
甲4には、上記(1)エ(ア)に記載される粒子状吸水剤の具体例として、同(カ)の【0151】、【0152】に記載される[実施例1]により得られる粒子状吸水剤が記載され、この粒子状吸水剤は、同(カ)の【0162】【表1】及び【0163】【表2】によれば、吸収速度(sec.)が35、揮発性有機物の含有量(ppm)が1以下、質量平均粒子径D50(μm)が381であることが記載されている。この[実施例1]における粒子状吸水剤について、上記[実施例1]の記載を、発明の対比、判断において必要な範囲でその要部を引用すると、甲4には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、一方、フラスコ中に、アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、アクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させ、その後、重合反応を開始させ、重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、さらに、上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤であって、吸収速度(sec.)が35、揮発性有機物の含有量(ppm)が1以下、質量平均粒子径D50(μm)が381である粒子状吸水剤。」
オ 甲5に記載された発明
甲5には、上記(1)オ(ア)に記載される請求の範囲[1]の吸水性樹脂の具体例として、同(カ)の[0047]~[0049]に記載される実施例1により得られる吸水性樹脂が記載され、この吸水性樹脂は、中位粒子径が127μmであり、同(カ)の[0085][表2]によれば、臭気官能試験(パネラーの評価)が1.8であることが記載されている。この実施例1における吸水性樹脂について、上記実施例1の記載を、発明の対比、判断において必要な範囲でその要部を引用すると、甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
「三角フラスコに、80重量%アクリル酸92.0gを加え、30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整し、五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を一括添加し、次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散させ、重合反応を行ない、重合反応後、共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、水を系外に除去することにより脱水重合体を得、その後、加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥して得た、93gの吸水性樹脂であって、中位粒子径は127μmで、臭気官能試験(パネラーの評価)が1.8である吸水性樹脂。」
(3)申立理由1-1について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1の上記(1)ア(ア)に記載されるように甲1に記載される事項は、「高吸水性ポリマー」に関するものであるから、甲1発明の「粉末状ポリマー」は、本件発明1の「吸水性樹脂粒子」に相当する。
また、甲1発明の「粉末状ポリマー」は、「コニカルフラスコ中でアクリル酸30.0gに予め水44.7g及び25%水酸化ナトリウム46.6gより調製したアルカリ水溶液を添加して、カルボキシル基の70%を中和し、これに架橋剤としてN、N’-メチレンビスアクリルアミド0.042g、及び水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.104gを加え溶解させ、別に五つ口丸底フラスコに分散媒としてシクロヘキサン182g、及び分散剤としてソルビタンモノステアレート(HLB8.6)0.30g(0.8重量%対モノマー)を添加し、この五つ口丸底フラスコの内容物に、前記コニカルフラスコの内容物を攪拌下、重合反応温度を68~70℃に保ちながら重合させ」て得られるものであるから、本件発明1と同様に「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」むものである。
また、甲1発明における残存有機溶媒である「シクロヘキサン」は、本件発明1の「残存揮発成分」である「鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「生理食塩水の吸水速度が1~15秒であ」るのに対し、甲1発明では、生理食塩水の吸水速度が明らかでない点。
<相違点2>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「中位粒子径が100~600μmであ」るのに対し、甲1発明では、「平均粒径は220μmであ」る点。
<相違点3>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であ」るのに対し、甲1発明では、「ポリマー中にシクロヘキサンが27ppm含有され」ている点。
(イ)判断
a 相違点1について
まず、上記相違点1について、以下検討する。
(a)甲1の上記(1)ア(ウ)に「本発明は、上記の問題点を改良して、吸水能、吸水速度、ゲル強度、凝集性および安全性等の全ての要求性能を同時に満足する高吸水性ポリマーを製造する方法を提供しようとするものである。」等の記載によれば、甲1発明には、「吸水速度」に関する要求性能を満足しようとするものではあるが、実際、どの程度の吸水速度が達成されているのかは、不明であるから、上記相違点1は、実質的な相違点である。
(b)甲1発明を、上記相違点1に係る本件発明1の構成を有するものとすることが当業者にとり、容易に想到し得るものであるか否かについて以下検討する。
甲1発明は、同(イ)に記載される従来技術における「例えば、アクリル酸アルカリ金属塩等の油中水滴型逆相懸濁重合において、分散剤として、特公昭54-30710号公報記載のHLB3~6のソルビタン脂肪酸エステル、特開昭57-167302号公報記載のHLB6~9のノニオン系界面活性剤あるいは特公昭60-25045号公報記載のHLB8~12の界面活性剤を使用した場合、いずれも粒径が約10~100μmと細かい高吸水性ポリマーが得られるため、取扱いに際しては粉じん対策が必要となり、また膨潤時にいわゆるままこ現象を起こしやすくて、その結果、吸水速度がおそくなる」という問題点に対して、同(ウ)に記載されているように、「分散剤としてHLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルを使用する逆相懸濁重合法においては、分散剤の使用量に反比例してポリマー粒径が大きくなり、同時にポリマー中の残存有機溶媒量も減少すること、ならびに分散剤の使用量をモノマーに対して1重量%以下と少なくしても、重合反応を還流温度未満に行うことにより凝集、付着などの無い大粒径ポリマーが安定的に得られることを見いだし」、「吸水能、吸水速度、ゲル強度、凝集性および安全性等の全ての要求性能を同時に満足する高吸水性ポリマーを製造することができ」たものである。ここで、ままこ現象とは、粉末がだまになってしまう現象、すなわち、吸水作用を発揮しない粉末状ポリマーが一部存在するということであるから、甲1発明の吸水速度における要求性能に対する満足とは、粉末状ポリマーの粒径を大きくすることによる、粉末状ポリマー全てが吸水性作用を発揮することによる吸水速度の向上であるといえる。
一方、本件明細書の【0011】及び【0012】の「本発明は、生理食塩水の吸水速度が1~15秒であり、中位粒子径が100~600μmであり、残存揮発成分量が1.5質量%以下である、吸水性樹脂粒子を提供する。 上記吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径を有するためハンドリング性に優れ、吸水後の臭気の発生が抑制され、かつ吸水速度に優れる。」との記載によれば、本件発明1の吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径を有するものであるから、甲1発明における粉末状ポリマーのままこ現象を防止したことによる向上した吸水速度は、既に得られているといえるところ、同【0057】の「HLBが6以上の界面活性剤を用いた逆相懸濁重合では、連続相である油性液(O)と不連続相である水性液(W)とにより形成されるW/O型逆相懸濁の状態を良好に維持できるため、吸水性樹脂粒子の表面に微細な凹凸を均一且つ多数形成させることができる傾向がある。凹凸の程度は、吸水性樹脂粒子の比表面積で表すことができる。表面に凹凸の多い吸水性樹脂粒子は比表面積が大きく、吸水速度が速くなる傾向がある。」との記載によれば、本件発明1の吸水性樹脂粒子は、表面に、さらに微細な凹凸が均一且つ多数形成されていることにより、甲1発明における粉末状ポリマーに比べ、さらに高い吸水速度を有していると理解できる。
そうすると、上記相違点1に係る本件発明1の「1~15秒」の「生理食塩水の吸水速度」は、甲1発明の粉末状ポリマーの吸水速度よりも高い範囲であると共に、粉末状ポリマーにおけるままこ現象を防止することによる吸水速度の向上が達成された甲1発明には、さらに吸水速度を向上させ、上記相違点1に係る本件発明1の「1~15秒」の「生理食塩水の吸水速度」の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
(c)甲2の上記(1)イ(ク)の[0071][表1]には、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子が記載されているが、上記(b)で述べたように、粉末状ポリマーにおけるままこ現象を防止することにより吸水速度の向上を達成した甲1発明には、これ以上吸水速度を向上しようとする動機付けがあるとはいえないのであるから、甲2に、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子が記載されているとしても、甲1発明に、甲2に記載の事項を適用し、粉末状ポリマーの吸収速度を2、3秒としようとする動機付けがあるとはいえない。しかも、甲2において、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子は、甲2の同(キ)の[0056]~[0061]に記載される実施例1~8における具体的な製造工程及び製造条件で得られるものであるところ、同様に具体的な製造工程及び製造条件で得られる甲1発明の粉末状ポリマーにおいて、平均粒径や残存有機溶媒量等の粉末状ポリマーの特性が変化する可能性がありながらも、甲1発明における製造条件等を変更し、甲2における生理食塩水吸収速度を得ようとする動機付けが、甲1発明にあるとはいえない。
(d)上記(b)及び(c)によれば、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1から、又はさらに甲2を参照したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。
b 相違点3について
事案にかんがみ相違点3についても検討する。
上記相違点3において、甲1発明におけるポリマー中のシクロヘキサンの残存量の「27ppm」とは、「0.0027質量%」であり、本件発明1の範囲にはないから、上記相違点3は、実質的な相違点である。
甲1の上記(1)ア(ウ)の「分散剤としてHLB3~12のソルビタン脂肪酸エステルを使用する逆相懸濁重合法においては、分散剤の使用量に反比例してポリマー粒径が大きくなり、同時にポリマー中の残存有機溶媒量も減少すること・・・を見いだして、本発明に到達したものである。」等の記載によれば、甲1発明は、ポリマー中の残存有機溶媒量をなるべく低減しようとするものであるから、甲1発明において、残存有機溶媒量を逆に相当量増加させて、本件発明1の範囲内の溶媒量とすることには、阻害要因があるというべきである。
そうすると、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、上記相違点1、3は、実質的な相違点であるし、上記相違点1、3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、上記相違点2を判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
なお、平均粒径及び残存有機溶媒量が明示されている実施例7を基に甲1発明を認定したが、同様に平均粒径及び残存溶媒量が明示されている実施例1~6、8及び比較例1、4に基づいて甲1発明を認定したとしても、事情は同じである。
イ 本件発明2、4~8について
本件発明2、4~8は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、4、5は、甲1発明ではないし、本件発明2、4~8は、甲1発明に基づいて又は甲1発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(4)申立理由1-2について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「吸水性樹脂粒子」は、「80.5質量%のアクリル酸水溶液70g(0.783モル)」に、「20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液112.3gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、過硫酸カリウム0.084gを加えて溶解し」、「重合反応を2時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得、次いで」、「エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液1.40g(0.00016モル)を添加し」、「後架橋剤混合物を調製」するものであるから、本件発明1の「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」む、「吸水性樹脂粒子」に相当する。
そして、本件発明1の「生理食塩水吸水速度」は、本件明細書の【0170】の記載によれば、「恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gをマグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)で攪拌して、回転数600rpmで渦を発生させ」、「吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、上記生理食塩水中に一度に添加し、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)」である。これに対し、甲2発明における「生理食塩水吸水速度」は、同(ク)の[0068]の記載によれば、本件発明1の「生理食塩水の吸水速度」と同様に、「生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節し」、「マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)」であるから、甲2発明の「生理食塩水吸水速度」は、本件発明1の1~15秒である生理食塩水の吸水速度の範囲に含まれる。
また、本件発明1の「中位粒子径」は、本件明細書の【0174】の記載によれば、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるところ、甲2発明の「中位粒子径」も、甲2の上記(1)イ(ク)の[0069]の記載によれば、本件発明1の「中位粒子径」と同様に、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるから、甲2発明の「中位粒子径」は、本件発明1の100~600μmである中位粒子径の数値範囲に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、生理食塩水の吸水速度が1~15秒であり、中位粒子径が100~600μmである、吸水性樹脂粒子。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点4>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であり、前記残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲2発明では、重合の際の溶媒等に鎖状脂肪族炭化水素である「n-ヘプタン」などを用いているから、残存揮発成分が存在するとすれば、「残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である」が、残存揮発成分量は明らかでない点。
(イ)判断
上記相違点4について、以下検討する。
a まず、甲2には、甲2発明における吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量に関する何らの記載も無いから、上記相違点4は、実質的な相違点である。
また、甲2発明は、甲2の上記(1)イ(イ)の[0007]の記載によれば、「高い平衡膨潤性能を有しながら、優れた吸水速度または速い初期膨潤性能を併せ持ち、かつ、粒径が適度でハンドリング性が良好である吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子」を得ることを課題とし、吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量の低減、若しくは所定範囲への維持を意図するものではないから、甲2発明には、吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量を、本件発明1の範囲内のものとする動機付けはない。
b 甲1の上記(1)ア(カ)には、残存溶媒が2ppm~1550ppmの粉末状ポリマーが記載されているが、上記aで述べたように、甲2発明は、吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量の低減、若しくは所定範囲への維持を意図するものではないから、甲2発明に、甲1に記載の事項を適用し、甲2発明の吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量を、本件発明1の範囲内のものとする動機付けがあるとはいえない。また、そもそも、甲1に記載される粉末状ポリマーの残存溶媒の範囲は、本件発明1の残存揮発成分量の範囲と異なるのであるから、仮に、甲2発明に、甲1に記載の事項を適用したとしても、本件発明1の構成には至らない。
そうすると、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2から、又はさらに甲1を参照したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。
c 上記相違点4に関し、特許異議申立書では、「・残存揮発成分量
甲2には、残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であるということは明示的には記載されていない。
しかしながら、上述のイ(ア)b(a)欄で説明した通り、甲2の実施例1~8、比較例1、2の吸水性樹脂粒子は、本件明細書に記載された組成と同一の組成を有し、本件明細書に記載された製造方法2と同一又は類似する製造方法で製造されている。
よって、甲2の実施例1~8、比較例1、2の吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量を評価すると、構成要件Dを満たす蓋然性が高い。」(20頁下から5行~21頁4行)とされている。
ここで、本件明細書に記載された製造方法2とは、本件明細書の【0106】~【0117】に記載されるものであるところ、炭化水素分散媒を含む油性液(O)を連続相とし、水を含む水性液(W)を上記連続相中に分散される液滴状の不連続相として重合するW/O型逆相懸濁重合において、上記水性液は20℃において、20mPa・s以上の粘度を有する(【0107】)ことを特徴とするものであり、さらに、上記懸濁液はHLBが6以上の界面活性剤をさらに含み(【0107】)、上記水性液の粘度を得るために、具体的には、水溶性増粘剤を用いるものである(【0109】、【0111】)。
これに対し、実施例1の記載を基に認定した甲2発明は、単量体水溶液の20℃における粘度を20mPa・s以上とするものではないし、水溶性増粘剤に対応する添加剤は用いられていない。また、実施例1以外の、実施例2~8、比較例1、2、さらには比較例3、4を見ても、単量体水溶液の20℃における粘度を20mPa・s以上とすることや、水溶性増粘剤に対応する添加剤を用いることは記載されていない。
そうすると、甲2発明の吸水性樹脂粒子を含め、甲2に記載される吸水性樹脂粒子は、本件明細書に記載された製造方法2と同一又は類似する製造方法で製造されているとはいえないから、甲2発明の吸水性樹脂粒子を含め、甲2に記載される吸水性樹脂粒子は、残存揮発成分量が、本件発明1の範囲に重複する値を有しているとすることはできない。
(ウ)小括
以上のとおり、上記相違点4は、実質的な相違点であるし、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて、又は甲2発明及び甲1に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
イ 本件発明2、4~8について
本件発明2、4~8は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、4~8は、甲2発明ではないし、本件発明2、4~8は、甲2発明に基づいて又は甲2発明及び甲1に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(5)申立理由1-3について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の、少なくとも「80質量%アクリル酸128.8gを加え、攪拌しながら30質量%水酸化ナトリウム142.9gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.15gとエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgと蒸留水16.7gを加えて2段目の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製し、前記重合液に前記2段目単量体水溶液を滴下ロートにて添加し、2段目の逆相懸濁重合を行い」、「ヘプタンに分散された脱水重合体を得、得られたヘプタン分散脱水重合体に、後架橋剤として2%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2gを添加し、後架橋反応を行」なって得られた「吸水性樹脂粒子」は、本件発明1の「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」む、「吸水性樹脂粒子」に相当する。
そして、本件発明1の「中位粒子径」は、本件明細書の【0174】の記載によれば、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるところ、甲3発明の「中位粒子径」も、甲3の上記(1)ウ(オ)の[0073]の記載によれば、本件発明1の「中位粒子径」と同様に、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるから、甲3発明の「中位粒子径」は、本件発明1の100~600μmである中位粒子径の数値範囲に含まれる。
また、甲3発明において、「残存分散媒」であるn-ヘプタンは、本件発明1の「残存揮発成分」である「鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明は、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、中位粒子径が100~600μmであり、残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点5>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「生理食塩水の吸水速度が1~15秒であ」るのに対し、甲3発明では、生理食塩水の吸水速度が明らかでない点。
<相違点6>
吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量について、本件発明1では、「0.44質量%以上1.5質量%以下であ」るのに対し、甲3発明では、「590ppm」である点。
(イ)判断
a 相違点5について
まず、上記相違点5について、以下検討する。
(a)甲3の上記(1)ウ(エ)の[0057]等には、「重合後に架橋剤を添加し反応させることにより、吸水性樹脂粒子の表面層の架橋密度が高まり、加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として好適な性能が付与される。」等の記載があり、甲3発明は、衛生材料用途に必要な諸性能の一つとして好適な吸水速度を有するものであるといえるが、実際、どの程度の吸水速度を有しているのか、不明であるから、上記相違点5は、実質的な相違点である。
(b)甲3発明を、上記相違点5に係る本件発明1の構成を有するものとすることが当業者にとり、容易に想到し得るものであるか否かについて以下検討する。
甲3発明は、甲3の上記(1)ウ(イ)の記載によれば、「逆相懸濁重合法で製造された吸水性樹脂において、前記吸水性樹脂中に含まれる逆相懸濁重合に使用された石油系炭化水素分散媒の残存量が少なく、吸水性樹脂が吸水した際の石油系炭化水素分散媒に由来する臭気が低減された、衛生材用途に適した吸水性樹脂、吸収体および吸収性物品を提供すること」([0008])を課題とし、「吸水性樹脂の製造において、2段以上の多段の逆相懸濁重合を行うこと、ならびに1段目の逆相懸濁重合において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の石油系炭化水素分散媒への分散後に得られた分散液に界面活性剤を添加することにより、前記吸水性樹脂中の石油系炭化水素分散媒の残存量が特定量以下である吸水性樹脂が得られ、それにより、従来技術により得られた吸水性樹脂と比較して、吸水性樹脂において有意に臭気が低減されることを見出」([0009])すことにより得られた、「前記吸水性樹脂中の前記石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂」([0010])である。以上によれば、甲3発明は、吸水性樹脂中の石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下である吸水性樹脂を得ることを課題とし、吸水性樹脂の吸水速度の「さらなる」向上を意図するものではない。そして、同(エ)の[0057]等の吸水速度に関する記載は、衛生材料用途に必要な諸性能の一つとして「吸水速度」を得ようとすることにとどまるものであるから、吸水性樹脂の吸水速度に着目し、この特性をさらに高めようとする、若しくは最適化する動機付けが甲3発明にあるとはいえない。
(c)甲2の上記(1)イ(ク)の[0071][表1]には、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子が記載されているが、上記(3)ア(イ)a(c)で述べたのと同様の理由により、甲3発明に、甲2に記載の事項を適用し、粉末状ポリマーの吸収速度を2、3秒としようとする動機付けがあるとはいえない。
(d)上記(b)及び(c)によれば、上記相違点5に係る本件発明1の構成は、甲3から、又はさらに甲2を参照したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。
(e)上記相違点5に関し、特許異議申立書では、「甲3には、生理食塩水の吸水速度が1~15秒であるという構成要件Bは明示的に記載されていない。
しかしながら、上述の通り、甲3の実施例5及び比較例3の吸水性樹脂は、本件明細書に記載された組成と同一の組成を有し、本件明細書に記載された製造方法3で製造されている。
・・・
すなわち、甲3には、吸水速度を課題とし、吸水速度を調整する手段として、後架橋剤の添加量を調整することが記載されている。甲3には、構成要件Bを満たすための手段として後架橋剤の添加量が記載されている。
ここで、・・・甲3の実施例1~8、比較例1~4の吸水性樹脂は、構成要件Cに規定された中位粒子径の要件を満たす。また、甲3の実施例1~8、比較例1~4の吸水性樹脂の中位粒子径は、2次粒子の中位粒子径として測定されている。これについて、本件明細書の【0057】にも記載されているように、「表面に凹凸の多い吸水性樹脂粒子は比表面積が大きく、吸水速度が速くなる傾向がある。」と記載されている。このことから、甲3の実施例1~8、比較例1~4の吸水性樹脂の吸水速度を評価すると、構成要件Bを満たす蓋然性が高い。」(28頁下から3行~29頁下から4行)とされている。
ここで、仮に、甲3発明の認定の基礎となった実施例5を含め他の実施例、比較例において、その製造方法が、具体的な製造条件を含めて、本件明細書に記載された製造方法3を採用した実施例における製造方法・製造条件と一致しているのであれば、甲3の実施例5を含め他の実施例、比較例における吸水性樹脂粒子は、本件発明1における吸水性樹脂粒子と同じものであるという余地がある。
しかしながら、本件明細書の【0118】~【0147】に記載される(製造方法3)における具体的な実施例は、同【0191】~【0201】に記載される実施例3、4、同【0220】~【0227】に記載される実施例5、6であるところ、これらの実施例は全て、第1重合工程に使用する界面活性剤として、HLB値が比較的高いソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP-20R;HLB8.6)を用いている(【0191】、【0220】)と共に、第1重合工程後に、「中間架橋工程」を有している(【0193】、【0222】)のに対し、甲3の実施例5を含め他の実施例、比較例は、例えば、実施例5を基に認定した甲3発明での特定にあるように、第1重合工程に使用する界面活性剤が相違していると共に、「中間架橋工程」を有していないなど、甲3の実施例5を含め他の実施例、比較例における製造方法・製造条件は、本件明細書に記載される上記の実施例に一致しているとはいえないから、甲3の実施例5を含め他の実施例、比較例で得られた吸水性樹脂粒子は、本件発明1における吸水性樹脂粒子と同じものであるということはできない。そうすると、甲3発明の吸水性樹脂粒子を含め、甲3に記載される実施例及び比較例の吸水性樹脂粒子は、吸水速度が、本件発明1の範囲に重複する値を有しているものであるということはできない。
また、甲3発明の吸水性樹脂粒子を含め、甲3に記載される吸水性樹脂粒子の中位粒子径が、本件発明1の中位粒子径の範囲内にあり、中位粒子径として測定される2次粒子が仮に、比表面積が大きく、吸水速度が速くなる傾向にある「表面に凹凸の多い吸水性樹脂粒子」であるとしても、単にこの点だけで、甲3発明の吸水性樹脂粒子を含め、甲3に記載される吸水性樹脂粒子は、吸水速度が、本件発明1の範囲に重複する値を有しているものであるということはできない。
b 相違点6について
次に、相違点6について検討する。
上記相違点6において、甲3発明における残存分散媒量である「590ppm」とは、「0.059質量%」であり、本件発明1の範囲にはないから、上記相違点6は、実質的な相違点である。
そして、上記a(b)で述べたように、甲3発明は、吸水性樹脂中の石油系炭化水素分散媒の残存量が2,000ppm以下(0.2質量%以下)である吸水性樹脂を得ることを発明の課題とするものであるから、甲3発明において、残存分散媒量を逆に相当量増加させて、本件発明1の範囲内の溶媒量とすることには、阻害要因があるというべきである。
そうすると、上記相違点6に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、上記相違点5、6は、実質的な相違点であるし、上記相違点5、6に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて、又は甲3発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
イ 本件発明2、4~8について
本件発明2、4~8は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、4~7は、甲3発明ではないし、本件発明2、4~8は、甲3発明に基づいて又は甲3発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(6)申立理由1-4について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明の「アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、アクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gを」「重合」して得た「球状のポリマー粉体」「100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を加熱処理し、表面架橋」した「粒子状吸水剤」は、本件発明1の「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」む、「吸水性樹脂粒子」に相当する。
そして、本件発明1の「中位粒子径」は、本件明細書の【0174】の記載によれば、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるところ、甲4発明の「質量平均粒子径D50」は、上記(1)エ(オ)の【0117】の記載によれば、粒子全体の50質量%に対応する(標準ふるいの)粒子径であるから、本件発明1の「中位粒子径」に相当すると共に、本件発明1の100~600μmである中位粒子径の数値範囲に含まれる。
また、甲4発明の「吸収速度(sec.)」は、同(オ)の【0138】の「予め調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)・・・50mlを・・・長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に・・・得られた吸水剤2.0gを投入し」、「JIS K 7224(1996)「高吸水性樹脂の吸収速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定」されるとの記載によれば、生理食塩水の吸収速度であるから、本件発明1の「生理食塩水の吸収速度」に相当する。
さらに、甲4発明において、「揮発性有機物の含有量(ppm)が1以下」の揮発性有機物とは、同(イ)の【0014】の記載によれば、残存モノマー、逆相懸濁重合で使用される揮発性有機溶媒(シクロヘキサン)、及び逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物であり、揮発性有機物の内の揮発性有機溶媒(シクロヘキサン)は、本件発明1の「鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である」「残存揮発成分」に相当するから、甲4発明は、本件発明1と、「鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である」「残存揮発成分」を含む点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲4発明は、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、中位粒子径が100~600μmであり、残存揮発成分を含み、残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点7>
吸水性樹脂粒子の「生理食塩水の吸水速度」について、本件発明1では、「1~15秒であ」るのに対し、甲4発明では、35秒である点。
<相違点8>
吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量について、本件発明1では、「0.44質量%以上1.5質量%以下であ」るのに対し、甲4発明では、本件発明1における残存揮発成分に相当する揮発性有機溶媒(シクロヘキサン)に加え、残存モノマー、及び逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物を含めた値であると共に、「1ppm」以下である点。
(イ)判断
a 相違点7について
(a)甲4発明は、甲4の上記(1)エ(イ)の記載によれば、「消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供」を課題とし(【0012】)、この消臭性能について、「逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂自体が特異的な臭気を有することを見出し、この吸水性樹脂自体の臭気が実使用時の消臭性能を低下させていることを見出し」(【0013】)、さらに、「臭気の原因を探った結果、この残存モノマーの増加、逆相懸濁重合で使用される揮発性有機溶媒、及びその他の逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物に由来する臭気の発生」を見出し(【0014】)、そして、「臭気低減の手段として、モノマー、特にアクリル酸中の微量成分(酢酸、プロピオン酸、アクリル酸ダイマー等)を制御した上で、逆相懸濁重合後の表面架橋時に実質有機溶媒を使用せず、かつ高温加熱(好ましくは150℃以上250℃以下)を行い、造粒時にも実質有機溶媒を使用しないことでかかる問題を解決した」ものである(【0015】)。以上によれば、甲4発明は、「消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供」することを課題とし、粒子状吸水剤の吸水速度の「さらなる」向上を意図するものではない。そして、同(エ)の【0103】には、「本発明の吸水剤の吸収速度は60秒以下、好ましくは1~55秒、より好ましくは2~50秒である。吸収速度が60秒を超える場合、オムツ等の吸収体に吸水性樹脂を使用した場合に十分な吸収能力を発揮しない場合がある。」との記載があり、記載上、吸収速度の範囲において、本件発明1の吸水速度の範囲との間に重複があるものの、この記載は、オムツ等の吸収体に必要な諸性能の一つとして必要な「吸水速度」を得ようとすることにとどまるものであるから、粒子状吸収剤の吸水速度に着目し、吸水速度を上記【0103】に記載される範囲の上限付近の範囲の吸水速度に高めようとする、若しくは最適化する動機付けが甲4発明にあるとはいえない。実際、甲4発明の認定の基礎となった実施例1以外の実施例2、3、比較例1、3、4等を見ても吸水速度の値は、35~46の範囲であり、本件発明1の1~15の範囲に比べると有意に低い値となっている。
また、甲4発明の粒子状吸収剤の吸収速度を高めるには、反応工程・反応条件を変更する必要があるところ、上述の甲4発明の課題の解決の観点で最適化された甲4発明の反応工程・反応条件を、吸水速度に着目して変更する動機付けが甲4発明にあるとはいえない。
(b)甲2の上記(1)イ(ク)の[0071][表1]には、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子が記載されているが、上記(3)ア(イ)a(c)で述べたのと同様の理由により、甲4発明に、甲2に記載の事項を適用し、粒子状吸収剤の吸収速度を2、3秒としようとする動機付けがあるとはいえない。
(c)上記(a)及び(b)によれば、上記相違点7に係る本件発明1の構成は、甲4から、又はさらに甲2を参照したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。
b 相違点8について
甲4発明における揮発性有機物の含有量の上限である1ppmとは、「0.0001質量%」である。そして、この含有量は、本件発明1における残存揮発成分に相当する逆相懸濁重合で使用される揮発性有機溶媒(シクロヘキサン)に加え、残存モノマー、及び逆相懸濁重合におけるモノマー中の不純物を含めた値であると共に、その上限である1ppmは、本件発明1の範囲に比べれば、相当小さい値であるといえる。
さらに、上記a(b)で述べたように、甲4発明は、「消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供」を発明の課題とするものであるから、甲4発明において、揮発性有機物の含有量を逆に相当量増加させて、本件発明1の範囲内の溶媒量とすることには、阻害要因があるというべきである。
そうすると、上記相違点8に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)小括
以上のとおり、上記相違点7、8に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明1は、甲4発明に基づいて、又は甲4発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
イ 本件発明2、4~8について
本件発明2、4~8は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、4~8は、本件発明2、4~8は、甲4発明に基づいて又は甲4発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(7)申立理由1-5について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の吸水性樹脂は、中位粒子径を有するものであるから吸水性樹脂粒子といえるものであると共に、エチレングリコールジグリシジルエーテルは、甲5の上記(1)オ(ウ)の[0033]の記載によれば、内部架橋剤として使用されるものであるから、「80重量%アクリル酸92.0gを加え、30重量%水酸化ナトリウム102.2gを滴下して中和を行ない、これに過硫酸カリウム0.11gとエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg、イオン交換水43.6gを加え、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調整し、五ツ口円筒形丸底フラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン334gを加え、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を一括添加し、次に、界面活性剤として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S-370)0.92gをn-ヘプタン8.28gに加温溶解させた液を、前記丸底フラスコ内に添加し、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散させ、重合反応を行ない、重合反応後、共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、水を系外に除去することにより脱水重合体を得、その後、加熱し、n-ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥して得た、93gの吸水性樹脂」は、本件発明1の「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」む、「吸水性樹脂粒子」に相当する。
そして、本件発明1の「中位粒子径」は、本件明細書の【0174】の記載によれば、「積算質量百分率50質量%に相当する粒子径」であるところ、甲5発明の「中位粒子径」は、上記(1)オ(カ)の[0079]の記載によれば、「積算重量百分率50重量%に相当する粒子径」であるから、本件発明1の「中位粒子径」に相当すると共に、本件発明1の100~600μmである中位粒子径の数値範囲に含まれる。
また、甲5発明において、臭気官能試験(パネラーの評価)の対象となる臭気は、同(イ)の[0007]~[0009]の記載によれば、「分散媒」である「n-ヘプタン」であり、この「n-ヘプタン」は、本件発明1の「残存揮発成分」である「鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲5発明は、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、中位粒子径が100~600μmであり、残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点9>
吸水性樹脂粒子について、本件発明1では、「生理食塩水の吸水速度が1~15秒であ」るのに対し、甲5発明では、生理食塩水の吸水速度が明らかでない点。
<相違点10>
吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量について、本件発明1では、「0.44質量%以上1.5質量%以下であ」るのに対し、甲5発明では、臭気官能試験(パネラーの評価)が1.8であるものの、残存揮発成分量については明らかでない点。
(イ)判断
a 相違点9について
(a)甲5には、上記(1)オ(エ)の[0037]に「吸水性樹脂の粒子表面層を後架橋することで、加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として好適な性能が付与される。」等の記載があり、甲5発明は、衛生材料用途に必要な諸性能の一つとして好適な吸水速度を有するものであるといえるが、実際、どの程度の特性を達成しているのか、不明であるから、上記相違点9は、実質的な相違点である。
(b)甲5発明を、上記相違点9に係る本件発明1の構成を有するものとすることが当業者にとり、容易に想到し得るものであるか否かについて以下検討する。
甲5発明は、甲5の上記(1)オ(イ)の記載によれば、「吸水時の臭気が低減された吸水性樹脂の製造方法および、それにより製造された吸水性樹脂を提供すること」を課題とし([0006])、「逆相懸濁重合法によって得られた吸水性樹脂について、加熱によって臭気を低減できない原因を調べた結果、吸水性樹脂の粒子内部に少量の分散媒が閉じ込められていることをつきとめ」([0009])、これに対し、「逆相懸濁重合法において、界面活性剤を添加していない分散媒中に単量体水溶液を分散させ、得られた分散液に界面活性剤を添加して更に分散させた後、重合することで、吸水時の分散媒由来の臭気が極めて低い吸水性樹脂が得られることを発見し本発明に至った」([0009])ものである。以上によれば、甲5発明は、吸水性樹脂の臭気の低減を発明の課題とし、吸水性樹脂の吸水速度の「さらなる」向上を意図するものではない。そして、同(エ)の[0037]等の吸水速度に関する記載は、衛生材料用途に必要な諸性能の一つとして「吸水速度」を得ようとすることにとどまるものであるから、吸水性樹脂の吸水速度に着目し、この特性をさらに高めようとする、若しくは最適化する動機付けが甲5発明にあるとはいえない。
(c)甲2の上記(1)イ(ク)の[0071][表1]には、生理食塩水吸収速度が2、3秒の吸水性樹脂粒子が記載されているが、上記(3)ア(イ)a(c)で述べたのと同様の理由により、甲5発明に、甲2に記載の事項を適用し、吸水性樹脂の吸収速度を2、3秒としようとする動機付けがあるとはいえない。
(d)上記(b)及び(c)によれば、上記相違点9に係る本件発明1の構成は、甲5から、又はさらに甲2を参照したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。
b 相違点10について
甲5発明における吸水性樹脂の残存揮発成分量(分散媒)に関する評価は臭気官能試験(パネラーの評価)であり、具体的な、残存揮発成分量の数値範囲が記載されているわけではないから、上記相違点10は、実質的な相違点である。
また、甲5発明における臭気官能試験(パネラーの評価)の結果と本件発明1における吸水性樹脂の残存揮発成分量の数値範囲との関係が、提出されている証拠等で明らかでない以上、甲5発明における臭気官能試験(パネラーの評価)の結果をもって、残存揮発成分量(分散媒)の量を、本件発明1における吸水性樹脂の残存揮発成分量の範囲にすることを、当業者が容易に想到し得るとすることはできない。
(ウ)小括
以上のとおり、上記相違点9、10は、実質的な相違点であるし、上記相違点9、10に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明1は、甲5発明ではないし、甲5発明に基づいて、又は甲5発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
なお、中位粒子径が本件発明1の範囲内にある実施例1を基に甲5発明を認定したが、同様に中位粒子径が本件発明1の範囲内にある実施例7、8及び比較例4に基づいて甲5発明を認定したとしても、事情は同じである。
イ 本件発明2、4~8について
本件発明2、4~8は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、4、5は、甲5発明ではないし、本件発明2、4~8は、甲5発明に基づいて又は甲5発明及び甲2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(8)申立理由1に関するまとめ
上記(3)~(7)で述べたとおり、本件特許1、2、4~8は、特許法第29条第1項及び同条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1には、理由がない。
3 申立理由2(明確性要件違反及び実施可能要件違反)について
(1)申立理由2の概要
申立理由2の概要は、以下のとおりである。
本件発明の課題は、本件明細書の【0009】【0010】に記載されるように、(1)ハンドリング性に優れ、吸水後の臭気の発生が抑制され、かつ吸水速度に優れる吸水性樹脂粒子と、吸収体、吸収性物品及び止水材を提供すること、(2)ハンドリング性に優れ、吸水速度に優れ、かつ残存揮発成分量の少ない吸水性樹脂粒子の製造を可能にする方法を提供することである。
本件明細書の【0039】には、本発明の吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径を有するため粒子としてのハンドリング性に優れ、かつ吸水後の臭気等の問題を低減することができる旨が記載されている。また、【0040】には、本件発明の方法により得られる吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径を有するため、粒子としてのハンドリング性に優れる旨、また、本件発明の方法により得られる吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量が少ないため、吸水後の臭気等の問題を低減することができる旨が記載されている。
ここで、本件発明1は、所定範囲の、吸水速度と粒子径と残存揮発成分量を有し、残存揮発成分は特定の3種の化合物のいずれかである吸水性樹脂粒子である。上述のとおり、本件明細書の【0039】等には、適度な粒子径であることがハンドリング性を優れたものにすることが記載され、また、【0008】や【0219】等には、残存揮発成分が臭気の原因であることが記載されている。すなわち、粒子径を制御することはハンドリング性を制御することと同義であり、残存揮発成分量を制御することは臭気を制御することと同義といえる。
してみると、本件発明1は解決すべき課題・達成すべき作用効果を特許請求の範囲に記載 したに過ぎず、いわゆる願望クレームである。
また、本件明細書の【0057】には凹凸の程度は比表面積で表すことができ、比表面積が高いと吸水速度が高くなる旨が記載されている。したがって、本件発明2および3も解決すべ き課題・達成すべき作用効果を特許請求の範囲に記載したに過ぎず、いわゆる願望クレームである。
さらに、本件明細書の【0002】には、吸水性樹脂粒子に求められる周知の性能の一つとして、高い吸水量が記載されている。したがって、本願発明4も、解決すべき課題・達成すべき作用効果を特許請求の範囲に記載したに過ぎず、いわゆる願望クレームである。
以上のとおり、本件発明1~4は、単なる願望クレームであって、発明の実施の形態の記載において、本件発明中の発明特定事項に対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明確である。また、その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
よって、本件発明1~4は明確性要件違反あるいは実施可能要件違反により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2についての検討
ア 明確性要件違反の有無について
請求項1の記載は、「吸水性樹脂粒子」を特定するものであるところ、請求項1の記載では、この「吸水性樹脂粒子」を、「アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含」むことの他、「生理食塩水の吸水速度が1~15秒であ」ること、「中位粒子径が100~600μmであ」ること、「残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であり、前記残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である」ことで特定し、請求項2の記載では、さらに「比表面積が0.08m2/g以上である」こと、請求項4の記載では、さらに「生理食塩水の吸水量が30~90g/gである」ことで特定している。ここで、「生理食塩水の吸水速度」、「中位粒子径」、「残存揮発成分量」、「比表面積」及び「生理食塩水の吸水量」の用語に不明確な点はないし、「生理食塩水の吸水速度」については本件明細書の【0170】に、「中位粒子径」については同【0171】~【0174】に、「残存揮発成分量」については同【0158】~【0166】に、「比表面積」については同【0175】に、「生理食塩水の吸水量」については同【0169】に、これらの測定方法が詳細に記載されている。そして、これらの測定方法により一義的に決定される上記の項目におけるそれぞれの数値範囲は、吸水性樹脂粒子の構造や特性における技術的範囲を明確に画定するものであり、上記の項目により特定される吸水性樹脂粒子に不明確な点はない。
なお、上記(1)における願望クレームがどの様なクレームを意味しているのか必ずしも明らかでないが、同【0181】~【0198】に記載される実施例1~4等では、上記の項目の数値範囲内の値を有する吸水性樹脂粒子が実際に製造されており(【0218】【表2】)上記の数値範囲が単なる願望に過ぎないとすることはできない。
そうすると請求項1、2、4及びそれらの請求項を直接又は間接的に引用する請求項5~8の記載は明確である。
イ 実施可能要件違反の有無について
本件発明1、2、4の吸水性樹脂粒子に関する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしているか否かは、本件発明1、2、4の吸水性樹脂粒子を実施することができる、すなわち、この吸水性樹脂粒子を生産することができるのに十分な記載があるか否かということになるので、この観点で検討を行う。
本件発明1、2、4の吸水性樹脂粒子は、「生理食塩水の吸水速度」、「中位粒子径」、「残存揮発成分量」、「比表面積」及び「生理食塩水の吸水量」が、それぞれ所定の範囲にあるものであるが、この吸水性樹脂粒子は、本件明細書の【0056】には、「HLBが6以上の界面活性剤と、親水性高分子分散剤を含む水性液とを用いて、逆相懸濁重合を行う方法(製造方法1)、HLBが6以上の界面活性剤と、20℃において20mPa・s以上の粘度を有する、及び/又は水溶性増粘剤を含む水性液とを用いて、逆相懸濁重合を行う方法(製造方法2)、又はHLBが6以上の界面活性剤及び水性液を含む懸濁液を用いて逆相懸濁重合することにより得られた含水ゲル状重合体を含む45℃以上の懸濁液に、別の水性液を加えてさらに逆相懸濁重合を行う方法(製造方法3)により」得られるとされ、製造方法1~3で使用される界面活性剤の例示とその使用量が、それぞれ同【0062】及び【0063】に記載され、製造方法1で使用される親水性高分子分散剤の例示とその使用量が、それぞれ同【0066】及び【0069】に記載され、さらに、同【0071】~【0105】には、製造方法1について、逆相懸濁重合を行うにあたり必要となる、水性液に含まれる水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤、油性液に含まれる炭化水素分散媒、逆相懸濁重合における重合工程、後架橋工程、乾燥工程等の詳細な説明がなされている。
また、製造方法2で使用される水溶性増粘剤の例示とその使用量が、それぞれ同【0111】及び【0112】に記載され、同【0116】には、製造方法のその他については、製造方法1と同様に行うことが記載されている。
さらに、製造方法3における第一重合工程及び第二重合工程に関し、同【0121】における、第一重合工程は、製造方法1の重合工程と同様の方法により行われるとの記載を含め、同【0118】~【0147】に、第一重合工程及び第二重合工程、さらにはその後の後架橋工程に関する詳細な説明がなされている。
そして、上記製造方法1について、同【0181】~【0185】に記載される実施例1、同【0250】~【0252】に記載される実施例9~12において、具体的な界面活性剤及び親水性高分子分散剤の明示を含め、具体的な製造手順及び製造条件が明示されると共に、実施例毎各種の製造条件で、吸水性樹脂粒子の製造が行われることが示され、同【0186】~【0190】に記載される実施例2、同【0243】、【0244】に記載される実施例7、8において、具体的な水溶性増粘剤と水性液の粘度の条件の明示を含め、具体的な製造手順及び製造条件が明示されると共に、実施例毎各種の製造条件で、吸水性樹脂粒子の製造が行われることが示され、同【0191】~【0198】に記載される実施例3、4、同【0220】~【0227】に記載される実施例5、6において、第一重合工程及び第二重合工程における具体的な製造手順及び製造条件が明示されると共に、実施例毎各種の製造条件で、吸水性樹脂粒子の製造が行われることが示され、これらの数多くの実施例により得られた吸水性樹脂粒子が、上記の各項目の数値範囲を満たすものであることが示されている(【0218】【表2】、【0240】【表3】、【0248】【表4】、【0260】【表5】)。
以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、上記複数の実施例の記載に従って、本件発明1、2及び4における「生理食塩水の吸水速度」、「中位粒子径」、「残存揮発成分量」、「比表面積」及び「生理食塩水の吸水量」の数値範囲を満足する吸水性樹脂粒子を製造することができるし、これらの項目の数値の範囲における、上記実施例における吸水性樹脂粒子の具体的な値以外の範囲の吸水性樹脂粒子についても、上記各実施例、及び本件明細書に記載される上記製造方法1~3に関する記載を参考にして、製造条件を調整することで、過度の試行錯誤なく製造することができるといえる。
そうすると、請求項1、2、4及びそれらの請求項を直接又は間接的に引用する請求項5~8に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしているといえる。
(3)申立理由2に関するまとめ
以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、2、4及びそれらの請求項を直接又は間接的に引用する請求項5~8の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないし、請求項1、2、4及びそれらの請求項を直接又は間接的に引用する請求項5~8に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由2には、理由がない。
第6 むすび
本件特許3に係る請求項3は、訂正により削除され、本件特許3に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
また、上記第5で検討したとおり、本件特許1、2、4~8は、同法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいうことはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記第4に記載の取消理由及び申立理由1、2によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、2、4~8を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701095