2021-700250
タイヤおよびタイヤの製造方法
- 審判番号
- 2021-700250
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-153247外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6756021
- 請求日
- 2021年03月09日
- 審決日
- 2021年10月22日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(B60C) / P1651.121-YAA(B60C) / P1651.537-YAA(B60C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1 手続の経緯
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特許第6756021号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和 1年 8月23日を出願日とする出願であって、令和 2年 8月28日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年 9月16日に特許公報が発行され、その後、その特許に対して、令和 3年 3月 8日に特許異議申立人 平田 和恵(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1)がされ、同年 6月 7日付けで取消理由が通知され、同年 8月 6日に特許権者 TOYO TIRE株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求書及び意見書が提出され、その後、当審から、同年 8月13日付けで特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年 9月13日に意見書を提出したものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和 3年 8月 6日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1のとおりである。なお、下線は、訂正箇所に当審が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記電子部品を、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有し」との記載を、
「前記電子部品を、タイヤ構成部材に対して、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程と、タイヤ構成部材に配置された前記電子部品と、各タイヤ構成部材が組み付けられ、生タイヤが形成される工程と、を有し」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
2 訂正の適否についての検討
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る「前記電子部品」の配置を「タイヤ構成部材に対して」行い、更にタイヤの製造方法を「タイヤ構成部材に配置された前記電子部品と、各タイヤ構成部材が組み付けられ、生タイヤが形成される工程」を有する態様に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、請求項1に係る本件訂正は、明細書の【0056】、【図6A】~【図6C】の記載事項から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、上記訂正に伴う、請求項1の従属請求項である請求項2及び3に係る訂正も同様である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材と、電子部品と、を備え、前記ジョイント部を有する複数の円環状のタイヤ構成部材は、タイヤ内腔面を覆うインナーライナーと、前記インナーライナーとは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を含む、タイヤの製造方法において、前記電子部品を、タイヤ構成部材に対して、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程と、タイヤ構成部材に配置された前記電子部品と、各タイヤ構成部材が組み付けられ、生タイヤが形成される工程と、を有し前記所定の範囲は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナーのジョイント部の回転位置を0°としたとき、-60°以上+60°以下の範囲である、タイヤの製造方法。【請求項2】前記電子部品は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナーのジョイント部の回転位置を0°としたとき、-60°以上-15°以下の範囲内、または+15°以上+60°以下の範囲内に配置される、請求項1に記載のタイヤの製造方法。【請求項3】前記電子部品は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナーのジョイント部の回転位置を0°としたとき、-45°以上+45°以下の範囲内に配置される、請求項1に記載のタイヤの製造方法。」
第4 特許異議申立理由の概要
令和3年3月8日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由はおおむね次のとおりである。
本件特許発明1ないし3の課題は、発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】に明記されているように「タイヤの内部にRFIDタグなどの電子部品を埋設する場合においても、ユニフォミティが良好なタイヤを提供すること」(【0005】)である。
しかしながら、本件特許発明1ないし3では、電子部品を所定の範囲に配置さえすれば、インナーライナー以外のタイヤ構成部材のジョイント部の配置に関わらず、タイヤのユニフォミティが確保できることについての作用機序は説明されていないし、また、そのような実施例、比較例も示されていないし、本件出願時における技術常識であったとも認められない。
よって、本件特許発明1ないし3はサポート要件を満たしていない。
4 証拠方法
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
当審が令和 3年 6月 7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 取消理由(甲1を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和 3年 8月 6日にされた訂正請求によって訂正された請求項1ないし3に係る特許は、取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
1 甲1の記載事項等
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(1)甲1の記載事項
甲1には、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【0018】
図1に示すタイヤ1は、一対のビード部2、一対のサイドウォール部3およびクラウン部4にわたってトロイド状に延在する少なくとも1枚のプライ、図1では1枚のプライからなるカーカス5と、カーカス5の内周側に配設した少なくとも1枚の空気不透過性ゴム、図1では1枚の空気不透過性ゴムからなるインナーライナー6とを具える。
【0019】
そして、この発明に従う空気入りタイヤの構成上の主な特徴は、インナーライナー6とカーカス5の間に電子チップ7を配設し、かつ、電子チップ7の配設位置に対応するタイヤ1の外面位置に電子チップ7のタイヤ周方向配設位置を識別できる表示部8を有することにある。」
・「【0023】
すなわち、発明者は、タイヤ1の内面が、空気不透過性ゴムからなるインナーライナーゴムを成型ドラム上に巻き付けることで形成されたインナーライナー6で構成されていることに着目し、グリーンタイヤ形成後にこのインナーライナーゴムの端部9から電子チップ7をタイヤ1内、より厳密には、インナーライナー6とカーカス5の間にに(当審注:「にに」は「に」の誤記と認める。)挿入できれば、タイヤ1内電子チップ7を損傷させずに配設できることを見出した。」
・「【0032】
第3発明および第4発明に従う空気入りタイヤの製造方法においては、まず、図3に示すように、インナーライナーゴム11の一方の端部9aを成型ドラム10上に貼り付けた後に、この一方の端部9a上から成型ドラム10の外面12上にはみ出す範囲にわたって剥離シート13を配設し、インナーライナーゴム11を成型ドラム10上に巻きつけた後、インナーライナーゴム11の他方の端部9bを剥離シート13上に貼り付ける。このように、剥離シート13をインナーライナーゴム11の両端部9a、9b間に配設することで、後述する後工程におけるタイヤ内部への電子チップ7の配設を容易にするとともに、インナーライナーゴム11の両端部9a、9bが完全に接着してしまうことを防止する。
【0033】
次いで、インナーライナーゴム11上に、第3発明の場合にはカーカスプライを、第4発明の場合には1枚以上のインナーライナーゴムをそれぞれ貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成する。このようにして形成されたグリーンタイヤの内面は、図4(a)に示すように、インナーライナー6の端部9から剥離シート13がはみ出した形状を有する。
【0034】
その後、剥離シート13のはみ出し部分14を、図4(a)の矢印Aで示すように、タイヤ内面側から引き抜きながら、第3発明の場合にはインナーライナー6とカーカス5の間に、第4発明の場合にはインナーライナー6の内外層ゴム間にそれぞれ電子チップ7を配設する。
【0035】
そして、電子チップ7を配設したグリーンタイヤを加硫し、これによって空気入りタイヤを製造することができる。この加硫により、インナーライナーゴム11の一方の端部9aと他方の端部9bも完全に接着されるので、剥離シート13が配設してあった部分からの空気漏れも発生しない。」
・「【0037】
電子チップ7の配設位置は、インナーライナー6の端部9から5~300mm離隔した位置が好ましい。5mm未満の場合には、端部9からの空気漏れが懸念されるからであり、300mmを超える場合には、電子チップ7の配設が困難となるからである。」
(2)甲1発明
甲1に記載された事項のうち,当審が付した下線部分について主に整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認める。
「一対のビード部2、一対のサイドウォール部3およびクラウン部4にわたってトロイド状に延在する少なくとも1枚のプライからなるカーカス5と、カーカス5の内周側に配設した少なくとも1枚の空気不透過性ゴムからなるインナーライナー6とを具え、インナーライナー6とカーカス5の間に電子チップ7を配設してなるタイヤの製造方法において、インナーライナーゴム11の一方の端部9aを成型ドラム10上に貼り付けた後に、この一方の端部9a上から成型ドラム10の外面12上にはみ出す範囲にわたって剥離シート13を配設し、インナーライナーゴム11を成型ドラム10上に巻きつけた後、インナーライナーゴム11の他方の端部9bを剥離シート13上に貼り付け、インナーライナーゴム11上に、カーカスプライを貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成してインナーライナーゴム11をインナーライナー6とし、剥離シート13のはみ出し部分14を、タイヤ内面側から引き抜きながら、インナーライナー6とカーカス5の間に電子チップ7を配設し、該電子チップ7の配設位置は、インナーライナー6の端部9から5~300mm離隔した位置である、タイヤの製造方法。」
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「一対のビード部2、一対のサイドウォール部3およびクラウン部4にわたってトロイド状に延在する少なくとも1枚のプライからなるカーカス5」及び「カーカス5の内周側に配設した少なくとも1枚の空気不透過性ゴムからなるインナーライナー6」は,いずれも本件特許発明1における「部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する(複数の)円環状のタイヤ構成部材」と「円環状のタイヤ構成部材」という限りにおいて一致する。
甲1発明における「インナーライナー6とカーカス5の間に」「配設してなる」「電子チップ」は本件特許発明1における「電子部品」に、「カーカス5の内周側に配設した少なくとも1枚の空気不透過性ゴムからなるインナーライナー6」は「タイヤ内腔面を覆うインナーライナー」にそれぞれ相当する。
そして、甲1における「一対のビード部2、一対のサイドウォール部3およびクラウン部4にわたってトロイド状に延在する少なくとも1枚のプライからなるカーカス5」は、インナーライナーとは異なるタイヤ構成部材であり、該カーカス5は一対のビード部2、一対のサイドウォール部及びクラウン部4にわたってトロイド上に延在する少なくとも1枚のプライという複数の部材から構成されるから、本件特許発明1における「前記インナーライナーとは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材」に相当する。
また、甲1発明において、「電子チップ7」は「インナーライナーゴム11の一方の端部9aを成型ドラム10上に貼り付けた後に、この一方の端部9a上から成型ドラム10の外面12上にはみ出す範囲にわたって剥離シート13を配設し、インナーライナーゴム11を成型ドラム10上に巻きつけた後、インナーライナーゴム11の他方の端部9bを剥離シート13上に貼り付け、インナーライナーゴム11上に、カーカスプライを貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成してインナーライナーゴム11をインナーライナー6とし、剥離シート13のはみ出し部分14を、タイヤ内面側から引き抜きながら」インナーライナー6とカーカス5の間に配設されるものであり、その配設位置は、「インナーライナー6の端部9から5~300mm離隔した位置である」から、甲1発明は本件特許発明1における「前記電子部品を、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有」するとの構成を有するといえる。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「円環状のタイヤ構成部材と、電子部品と、を備え、前記円環状のタイヤ構成部材は、タイヤ内腔面を覆うインナーライナーと、前記インナーライナーとは異なる少なくとも2つ以上のタイヤ構成部材を含む、タイヤの製造方法において、前記電子部品を、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有した、タイヤの製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
「円環状のタイヤ構成部材」に関して、本件特許発明1においては、「部材の一端側と他端側がジョイントされることにより形成されるジョイント部を有する」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのような特定事項を有しない点。
<相違点2>
「前記電子部品」を「配置する工程」に関して、本件特許発明1においては、「前記電子部品を、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程」であって、「前記所定の範囲は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナーのジョイント部の回転位置を0°としたとき、-60°以上+60°以下の範囲」と特定するのに対し、甲1発明においては、「インナーライナーゴム11の一方の端部9aを成型ドラム10上に貼り付けた後に、この一方の端部9a上から成型ドラム10の外面12上にはみ出す範囲にわたって剥離シート13を配設し、インナーライナーゴム11を成型ドラム10上に巻きつけた後、インナーライナーゴム11の他方の端部9bを剥離シート13上に貼り付け、インナーライナーゴム11上に、カーカスプライを貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成してインナーライナーゴム11をインナーライナー6とし、剥離シート13のはみ出し部分14を、タイヤ内面側から引き抜きながら、インナーライナー6とカーカス5の間に電子チップ7を配設し、該電子チップ7の配設位置は、インナーライナー6の端部9から5~300mm離隔した位置」とした工程と特定する点。
<相違点3>
「前記電子部品」を「配置する工程」に関して、本件特許発明1においては、「前記電子部品を、タイヤ構成部材に対して、前記インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程」と特定するのに対し、甲1発明においては、「インナーライナーゴム11の一方の端部9aを成型ドラム10上に貼り付けた後に、この一方の端部9a上から成型ドラム10の外面12上にはみ出す範囲にわたって剥離シート13を配設し、インナーライナーゴム11を成型ドラム10上に巻きつけた後、インナーライナーゴム11の他方の端部9bを剥離シート13上に貼り付け、インナーライナーゴム11上に、カーカスプライを貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成してインナーライナーゴム11をインナーライナー6とし、剥離シート13のはみ出し部分14を、タイヤ内面側から引き抜きながら、インナーライナー6とカーカス5の間に電子チップ7を配設」するとした工程と特定する点。
<相違点4>
本件特許発明1においては、「タイヤ構成部材に配置された前記電子部品と、各タイヤ構成部材が組み付けられ、生タイヤが形成される工程」と特定するのに対し、甲1発明においては、「グリーンタイヤを形成して」から「電子チップ7を配設する」と特定する点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点3及び相違点4について検討する。
本件特許発明1は、電子部品をタイヤ構成部材に対して、インナーライナーのジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置した後に、該タイヤ構成部材に配置された前記電子部品と、各タイヤ構成部材が組み付けられ、生タイヤが形成されることを特定するものである。
それに対して、甲1発明は、インナーライナーゴム11上にカーカスプライを貼り付け、さらに、他の必要なタイヤ部材を貼り付けた後、拡径成型してグリーンタイヤを形成した後に電子チップ7を配設することを特定するものである。
そして、甲1及び他の証拠の記載事項をみても、甲1発明において相違点3及び4に係る本件特許発明1の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
そして、甲1の【0023】には、「グリーンタイヤ形成後にこのインナーライナーゴムの端部9から電子チップ7をタイヤ1内、より厳密には、インナーライナー6とカーカス5の間に挿入できれば、タイヤ1内電子チップ7を損傷させずに配設できることを見出した」と記載されるように、甲1はグリーンタイヤ形成後に電子チップ7を配設することで、当該電子チップ7を損傷させないようにするものであるから、このような甲1においてグリーンタイヤ成形前に電子チップ7を配設すること、すなわち、グリーンタイヤを構成するタイヤ構成部材に電子チップ7を配設した後に各タイヤ構成部材を組み付けることには阻害要因があると認められる。
そうすると、甲1発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても相違点3及び相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
なお、令和 3年 9月13日に異議申立人が提出した意見書において、異議申立人は、甲1発明では、加硫されるべきグリーンタイヤは、電子チップの配設を以て完成するものであるから、上記相違点3及び相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲1発明を依然として包含するものである旨主張するが、上記で検討したとおり相違点3及び相違点4は工程として、実質的な相違点であるから、異議申立人の上記主張に理由はなく、採用できない。
上記のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
2 本件特許発明2及び3について
本件特許発明1が、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記1のとおりであるから、本件特許発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件特許発明2及び3についても同様に、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
3 取消理由1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではなく、取消理由1によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知で採用しなかった特許異議申立の理由は、申立理由1及び3である。
1 申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性)について
(1)本件特許発明1について
上記相違点3及び相違点4は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明1が、甲1発明であるとはいえないのは上記(1)のとおりであるから、本件特許発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件特許発明2及び3についても同様に、甲1発明であるともいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1号第3号に該当するものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すことはできない。
2 申立理由3(サポート要件)について
(1)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2に記載のとおりである。
(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
・「【0004】
特許文献1に示される技術においては、電子部品を、タイヤの周方向におけるどの位置に埋設するかについては特に考慮していない。しかしながら、周方向の埋設位置を特に決めずに電子部品を配置すると、電子部品の埋設位置や、タイヤを構成するゴム部材を周回させて重ね合わせるジョイント部といったゴム構造体の厚みの変動要因となる部分が不規則に複数箇所で生じてしまうため、ユニフォミティが悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤの内部にRFIDタグなどの電子部品を埋設する場合においても、ユニフォミティが良好なタイヤを提供することにある。」
・「【0078】
そこで、本実施形態においては、RFIDタグ40は、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に配置されている。この所定の範囲は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合におけるインナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。すなわち、-90°(+270°)よりも大きく、+90°よりも小さい領域である。本実施形態においては、RFIDタグ40を、+30°の位置Bに配置している。すなわち、図5に示すように、RFIDタグ40のタイヤ周方向における略中心(基準位置)が、+30°の位置Bとなるように配置されている。これにより、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部の配置位置の自由度が高まる。
例えば、RFIDタグ40をこのような位置に配置することにより、インナーライナー29以外のタイヤ構成部材のジョイント部を、+90°~+270°の範囲等、すなわち、+90°以上、+270°以下の範囲等を有効利用して、適切に配置することができる。なお、RFIDタグ40は、前述の±90°よりも小さい範囲内に全体が入るように配置されることが好ましい。」
・「【0144】
(17)本実施形態のタイヤ1の製造方法は、電子部品としてのRFIDタグ40を、タイヤ構成部材に対して、インナーライナー29のジョイント部の位置を基準として所定の範囲内に位置するように配置する工程を有し、前記所定の範囲は、タイヤ1の回転軸Oを回転基準とした場合における前記インナーライナー29のジョイント部の回転位置を0°としたとき、±90°よりも小さい範囲である。
このように、RFIDタグ40を、上述の±90°の範囲内に配置することにより、インナーライナー29以外の円環状のタイヤ構成部材のジョイント部の配置の自由度が高まる。よって、ジョイント部を分散して配置することが可能となり、タイヤ1の良好なユニフォミティを確保することができる。」
(3)当審の判断
本件特許発明1ないし3の課題(以下、「発明の課題」という。)は、本件明細書の【0005】の記載のとおり、「タイヤの内部にRFIDタグなどの電子部品を埋設する場合においても、ユニフォミティが良好なタイヤを提供すること」である。
そして、本件明細書の【0078】及び【0144】の記載から、電子部品を「±90°よりも小さい範囲」の範囲内に配置したものはタイヤの良好なユニフォミティを確保でき、上記発明の課題を解決できると当業者は理解する。
したがって、本件特許発明1ないし3は、上記「±90°よりも小さい範囲」を更に限定したものであるから、本件特許発明1ないし3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件、いわゆるサポート要件を満たすものといえる。
なお、異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1ないし3の課題は、発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】に明記されているように「タイヤの内部にRFIDタグなどの電子部品を埋設する場合においても、ユニフォミティが良好なタイヤを提供すること」(【0005】)であるが、本件特許発明1ないし3では、電子部品を所定の範囲に配置さえすれば、インナーライナー以外のタイヤ構成部材のジョイント部の配置に関わらず、タイヤのユニフォミティが確保できることについての作用機序は説明されていないし、また、そのような実施例、比較例も示されていないし、本件出願時における技術常識であったとも認められないから、本件特許発明1ないし3はサポート要件を満たしていない旨主張するが、本件特許発明1ないし3は上記課題を解決すると理解できるものであることは、上述のとおりであり、本件明細書の発明の詳細な説明の上記記載を離れて本件特許発明の課題を設定することは妥当ではないから、異議申立人のこの点の主張は採用できない。
(4)申立理由3のまとめ
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び第7のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700250