特許異議申立
2021-700910
硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法、かかるインナーライナーを含むタイヤを製造する方法、及びかかるインナーライナーを含むタイヤ
- 審判番号
- 2021-700910
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-531131
- 登録番号
- 6848062
- 請求日
- 2021年09月21日
- 審決日
- 2022年09月27日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
- 【権利者代理人】中島 淳
- 【権利者代理人】加藤 和詳
- 【異議申立人】佐藤 雅彦
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 八木 誠
- 分類
- P1651.113-YAA(B60C) / P1651.121-YAA(B60C) / P1651.537-YAA(B60C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6848062号発明「硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法、かかるインナーライナーを含むタイヤを製造する方法、及びかかるインナーライナーを含むタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6848062号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6848062号の請求項1、2、5~7に係る特許を維持する。
特許第6848062号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6848062号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月15日 US(米国))を国際出願日とする出願であって、令和3年3月5日にその特許権の設定登録がされ、同年3月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許の請求項1~7について、令和3年9月21日受付け(同年9月17日付け)で特許異議申立人佐藤雅彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年2月3日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、同年5月17日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をして意見を求め、その指定期間内である同年6月21日に意見書が提出された。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年5月9日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6848062号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記硬化したインナーライナーの前記処理済み表面上にポリマー含有コーティングを形成する」とあるのを、「前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載」とあるのを、「請求項1又は請求項2に記載」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。
したがって、訂正事項1~4に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の「前記硬化したインナーライナーの前記下面をコーティング組成物で処理することであって」、「これにより、前記硬化したインナーライナーの前記処理済み表面上にポリマー含有コーティングを形成する」という記載は、硬化したインナーライナーの下面をコーティング組成物で処理することにより、ポリマー含有コーティングを形成するものとも、コーティング組成物で処理済みの表面上に、さらに、コーティング組成物からなるポリマー含有コーティングを形成するものとも解し得るので明確でないところ、この明確でない記載を、「前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する」という記載にして明確にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
明細書の段落【0015】には、「インナーライナーの下面上にポリマー含有コーティングを生成する」と記載され、訂正前の請求項1には、「インナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法」及び「前記硬化したインナーライナーの前記下面をコーティング組成物で処理すること」すなわち実質的に「インナーライナーの下面上にポリマー含有コーティングを生成する」ことが記載されていることから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2及び訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2及び訂正事項3は、それぞれ、訂正前の請求項3及び請求項4を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれか一項を引用する記載であったものを、請求項1又は請求項2を引用する記載として、訂正事項2及び訂正事項3により削除する請求項3及び請求項4の記載を引用しないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項の削除に伴い引用する請求項を整合させる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
4 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明を含む、請求項1~7に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」ともいう。)は、令和4年5月9日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
タイヤの硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法であって、
a.ゴムを含む硬化したインナーライナーを準備することであって、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有する、ことと、
b.前記硬化したインナーライナーの前記下面をコーティング組成物で処理することであって、前記コーティング組成物は、
i.シリル末端ポリマーと、
iii.少なくとも1種の粘着付与剤と、
iv.少なくとも1種の接着促進剤と、
vi.少なくとも1種の触媒と、
を含み、
ii.少なくとも1種の可塑剤を更に含むか又は含まず、
v.少なくとも1種の水分捕捉剤を更に含むか又は含まず、
vii.少なくとも1種の抗酸化剤を更に含むか又は含まず、
viii.充填剤を更に含むか又は含まず、
前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて40~75重量%の量で存在し、
充填剤を含む場合、前記充填剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて0重量%超10重量%以下の量で存在し、
これにより、前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて40~60重量%の量で存在し、シリル末端ポリエーテル、シリル末端ポリウレタン、又はこれらの組み合わせを含み、
前記可塑剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて5~40重量%の量で存在し、フタレート、ジベンゾエート、脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化植物油、又はこれらの組み合わせを含み、
前記粘着付与剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて5~25重量%の量で存在し、炭化水素樹脂、低分子量ポリマー若しくはオリゴマー、又はこれらの組み合わせを含み、
前記少なくとも1種の接着促進剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて1~10重量%の量で存在し、二官能性シランを含み、
前記少なくとも1種の水分捕捉剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて0.5~5重量%の量で存在し、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、オキサゾリジン、酸化カルシウム、無水シリカ、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、ゼオライト、又はこれらの組み合わせを含み、
前記少なくとも1種の触媒は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて0.1~5重量%の量で存在し、アルカリ金属水酸化物、シラノレート、有機アミン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の塩基性化合物、又は硫酸、リン酸、塩酸、有機酸、ルイス酸、金属ハロゲン化物、有機スズ化合物、チタン化合物、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の酸性化合物を含み、
前記少なくとも1種の抗酸化剤(存在する場合)は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて0.1~3重量%の量で存在し、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、カテコール、リン酸エステル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた少なくとも1つの構成要素を備えるタイヤを製造することを更に含み、前記方法は、
a.処理済み表面上に前記ポリマー含有コーティングを有する、前記硬化したインナーライナーを備えるタイヤ本体を準備することであって、前記硬化したインナーライナーは、上面と、前記タイヤ本体内で半径方向内向きである下面と、を備える、ことと、
b.タイヤ構成要素を準備し、前記硬化したインナーライナーの前記半径方向内向き表面上で、前記構成要素を前記ポリマー含有コーティングに接着することと、を含み、
前記少なくとも1つの半径方向内側の構成要素は、ノイズバリア、空気バリア層、シーラント層、ランフラットインサート、又は電子通信モジュールのうちの少なくとも1つを備える、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
タイヤ本体と、硬化したインナーライナーと、前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた少なくとも1つの構成要素と、を備える、硬化タイヤであって、
前記硬化したインナーライナーはゴムを含み、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、
前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有し、前記下面は前記タイヤ内で半径方向内向きに位置付けられ、
前記硬化したインナーライナーの前記下面は、
i.シリル末端ポリマーと、
iii.少なくとも1種の粘着付与剤と、
iv.少なくとも1種の接着促進剤と、
vi.少なくとも1種の触媒と、
を含み、
ii.少なくとも1種の可塑剤を更に含むか又は含まない、
v.少なくとも1種の水分捕捉剤を更に含むか又は含まない、
vii.少なくとも1種の抗酸化剤を更に含むか又は含まない、
viii.充填剤を更に含むか又は含まない、
ポリマー含有コーティングを含み、
前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて40~75重量%の量で存在し、
充填剤を含む場合、前記充填剤は、前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて0重量%超10重量%以下の量で存在し、
前記ポリマー含有コーティングは、10~1000マイクロメートルの厚さを有し、
前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた前記少なくとも1つの構成要素は、前記硬化したインナーライナーの前記下面の前記ポリマー含有コーティングに接着される、硬化タイヤ。
【請求項7】
前記ポリマー含有コーティングは、
i.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて40~60重量%の量であり、シリル末端ポリエーテル、シリル末端ポリウレタン、又はこれらの組み合わせを含む、前記シリル末端ポリマーと、
ii.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて5~40重量%の量であり、フタレート、ジベンゾエート、脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化植物油、又はこれらの組み合わせを含む、前記可塑剤と、
iii.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて5~25重量%の量であり、炭化水素樹脂、低分子量ポリマー若しくはオリゴマー、又はこれらの組み合わせを含む、前記粘着付与剤と、
iv.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて1~10重量%の量であり、二官能性シランを含む、前記少なくとも1種の接着促進剤と、
v.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて0.5~5重量%の量であり、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、オキサゾリジン、酸化カルシウム、無水シリカ、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、ゼオライト、又はこれらの組み合わせを含む、前記少なくとも1種の水分捕捉剤と、
vi.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて0.1~5重量%の量であり、アルカリ金属水酸化物、シラノレート、有機アミン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の塩基性化合物、又は硫酸、リン酸、塩酸、有機酸、ルイス酸、金属ハロゲン化物、有機スズ化合物、チタン化合物、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の酸性化合物を含む、前記少なくとも1種の触媒と、
vii.前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて0.1~3重量%の量であり、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、カテコール、リン酸エステル、又はこれらの組み合わせを含む、前記少なくとも1種の抗酸化剤と、を含む、請求項6に記載の硬化タイヤ。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和4年2月3日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許は、特許請求の範囲の請求項1の「前記処理済み表面上」という記載が明確でなく、請求項3及び4は、プロダクト・バイ・プロセスの発明であり明確でなく、それらの請求項のいずれかを直接又は間接的に引用する請求項2、5に係る発明も、明確でなく、本件特許の請求項1~5に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
したがって、本件特許の請求項1~5についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
2 当審の判断
本件訂正により、本件訂正前の請求項1の「前記処理済み表面上」という記載は、「前記下面上」という記載に訂正され、請求項3及び4が削除され、請求項5の「請求項1~4のいずれか一項に記載の方法」という記載は、「請求項1又は請求項2に記載の方法」という記載に訂正されたから、特許請求の範囲の記載は明確になり、上記1の取消理由通知書に記載した取消理由は解消した。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
[特許異議申立理由]
本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、その請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・請求項1及び3~6 甲第1号証及び甲第2~4号証
・請求項2及び7 甲第1号証及び甲第2~5号証
甲第1号証:特開2013-91754号公報
甲第2号証:特開2005-89596号公報
甲第3号証:特開2015-182675号公報
甲第4号証:特開2015-107690号公報
甲第5号証:特開2015-131957号公報
上記甲第1~5号証(以下それぞれ「甲1」~「甲5」ともいう。)は、申立人が提出した甲号証である。
2 当審の判断
2-1 各甲号証に記載された事項及び発明
(1)甲1について
(1-1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性基としてジメトキシシリル基を有する有機重合体100質量部、
(B)反応性基としてトリメトキシシリル基を有する、ヒマシ油由来のポリエステル1~150質量部、及び
(C)硬化触媒を0.1~15質量部を含有する湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)有機重合体の主鎖がオキシアルキレン重合体及び/又はビニル重合体である請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)硬化触媒が4価のスズ触媒を含む請求項1又は2に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機重合体が、末端にジメトキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は末端にジメトキシシリル基を有するビニル重合体を含む請求項1~3のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。」
(1b)
「【0004】
しかしながら、本発明者はMSポリマーを使用した配合系が硬化速度が遅いことの他にもエラストマー接着性が低いという問題があることを見出した。
そこで、本発明は速硬化性、接着性(特にエラストマーに対する接着性)に優れる湿気硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
・・・
【0026】
本発明の組成物は、上記の成分の他に添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、例えば、シリカ、表面処理炭酸カルシウムのような充填剤、可塑剤、ビニルシランのような脱水剤、シランカップリング剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、接着付与剤、分散剤、溶剤、硬化剤、難燃剤が挙げられる。
・・・
【0029】
・・・
シランカップリング剤の量は、接着特性、貯蔵安定性に優れるという観点から、(A)有機重合体100質量部に対して、1~10質量部であるのが好ましい。
・・・
【0031】
本発明の組成物を適用することができる被着体は特に制限されない。例えば、金属、プラスチック、エラストマー(例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム)、ガラス、セラミックが挙げられる。本発明の組成物を被着体に適用する方法は特に制限されない。
【0032】
本発明の組成物の用途としては、例えば、シーリング材、接着剤、コーティング材、プライマー、塗料、ポッティング材が挙げられる。本発明の組成物は、各種電気・電子分野用、建築物用、自動車用、土木用、音響部材、音響機材等に使用可能である。」
(1-2)甲1に記載された発明
段落【0031】の「本発明の組成物を適用することができる被着体」という記載における「本発明の組成物」は、請求項1の「湿気硬化型樹脂組成物」であることが明らかであるから、当該記載から、「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する被着体」が特定でき、実質的に、「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する方法」も特定できる。
このことと、上記(1-1)の記載事項を踏まえると、甲1には、次の2つの発明(以下それぞれ「甲1発明1」及び「甲1発明2」という)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「反応性基としてジメトキシシリル基を有する、末端にジメトキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は末端にジメトキシシリル基を有するビニル重合体を含む有機重合体100質量部、
反応性基としてトリメトキシシリル基を有する、ヒマシ油由来のポリエステル1~150質量部、
硬化触媒を0.1~15質量部、及び、
シランカップリング剤を1~10質量部
を含有する湿気硬化型樹脂組成物を、
適用する方法。」
[甲1発明2]
「反応性基としてジメトキシシリル基を有する、末端にジメトキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は末端にジメトキシシリル基を有するビニル重合体を含む有機重合体100質量部、
反応性基としてトリメトキシシリル基を有する、ヒマシ油由来のポリエステル1~150質量部、
硬化触媒を0.1~15質量部、及び、
シランカップリング剤を1~10質量部
を含有する湿気硬化型樹脂組成物を、
適用する被着体。」
(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【請求項1】
p-アルキルスチレンとイソオレフィンの共重合体のハロゲン化物100質量部と、アミノシラン50質量部超とを含有する、タイヤとタイヤ用部材との接着用プライマー組成物。
・・・
【請求項7】
前記タイヤが、少なくともその内側表層がブチル系ゴムまたはエチレン-プロピレン-ジエンゴムを含有するゴム組成物により形成されるタイヤである請求項3~6のいずれかに記載のタイヤとタイヤ用部材との接着方法。」
(2b)
「【0003】
これらの情報を感知または測定する装置のタイヤ等への装着は、該装置が固定されるタイヤが使用状況下において熱、振動、応力等により変形等を起こし不安定となるため困難である。接着により該装置のタイヤの内側表層(内側表面)への装着は、タイヤの内側表層に特に好適に用いられるブチル系ゴムやエチレン-プロピレン-ジエンゴム等の極性の低いゴムと、各種接着剤、特にウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤および変成シリコーン系接着剤等とが互いに反応(架橋結合の形成等)しにくいため、特に困難である。
監視装置をタイヤに接着させる方法として、例えば、タイヤのインナーライナーの部分を選定し、インナーライナーの選定された部分の面を粗くし、監視装置と粗くされた部分との少なくも一方に接着剤を塗布し、インナーライナーの粗くされた部分に監視装置を置き、そして接着剤を硬化させる諸段階を含んだ方法が提案されている(特許文献1参照。)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タイヤとタイヤ用部材との接着において、タイヤの使用状況下におけるタイヤとタイヤ用部材との十分な接着性(本発明において、単に「使用状況下における十分な接着性」という。)を維持できるプライマー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、簡単で作業効率が高く、使用状況下における十分な接着性を発現するタイヤとタイヤ用部材との接着方法を提供することを目的とする。
・・・
【0009】
本発明者らは、上記タイヤとタイヤ用部材との接着方法について、用いられるプライマー組成物に着目して鋭意検討したところ、上記プライマー組成物の中でも、p-アルキルスチレンとイソオレフィンの共重合体のハロゲン化物と、アミノシランとを組み合わせ、さらに、該アミノシランの配合量を特定の範囲に調整したプライマー組成物を用いると、接着剤の種類にかかわらず、タイヤとタイヤ用部材との強固な接着が可能になることを知見し、本発明を完成させた。
・・・
【0034】
上記接着方法(I)および(II)において、塗布される本発明の組成物の乾燥後の厚さ(膜厚)は、特に限定されず、適宜調整できるが、例えば、1~50μmであるのが好ましい。同様に接着剤の乾燥後の厚さも特に限定されず、適宜調整できるが、例えば、0.05~5mmであるのが好ましい。
また、タイヤとタイヤ用部材との接着面積は、接着位置によっても異なるが、一般的には3~30cm2が好ましく、5~20cm2が好ましい。
【0035】
上記接着方法(I)および(II)において、タイヤ用部材の接着位置は、タイヤの内側であれば特に限定されないが、使用状況下での衝撃、動き等が少ない点で、タイヤのショルダー部等であるのが好ましい。
【0036】
上記接着方法(I)および(II)において用いられるタイヤは、特に限定されないが、例えば、自動車用タイヤ、バイク用タイヤ、自転車用タイヤ等のゴム製のタイヤが挙げられ、自動車用タイヤであるのが好ましい。
これらのタイヤは、ゴム製であれば、特に限定されないが、少なくとも、タイヤの内側表層(特にタイヤ用部材との接着面)が、ブチル系ゴムまたはエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を含有するゴム組成物により形成されるのが好ましい。
【0037】
ブチル系ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)等が挙げられる。EPDMとしては、特に限定されず、例えば、構成成分としてエチレン、プロピレンおよびブタジエンを含有してなるゴムが好ましい。
【0038】
上記接着方法(I)および(II)において用いられる接着剤は、特に限定されないが、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤または変成シリコーン系接着剤であるのが好ましい。接着剤は2種以上を併用して用いてもよい。
ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤または変成シリコーン系接着剤としては、通常用いられるものを特に制限されずに使用できる。例えば、イソシアネート基を有するオリゴマーまたはポリマー、アルコキシシリル基を有するオリゴマーまたはポリマーを含む接着剤が挙げられる。
これらの接着剤として、例えば、WS-202、スーパーワン(いずれも横浜ゴム(株)製)、KE4866(信越化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0039】
本発明において、タイヤに接着されるタイヤ用部材は、タイヤの内側表層に設置できる各種センサ、装置等であれば特に限定されない。各種センサ、装置等としては、例えば、空気圧センサ、温度センサ、回転数検出装置(例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)等に使用される磁気センサ等)、ICチップ(例えば、製造年月日・製造場所等の情報が記録された集積回路等)等が挙げられる。
【0040】
タイヤ用部材は、上記した各種センサ、装置等をそのまま用いてもよいが、各種センサ等を筐体内に備える構造としてもよく、また、各種センサ等の少なくとも接着剤が塗布される部分に板状部材を取り付けた構造としてもよい。
【0041】
各種センサ、装置等および上記筐体、板状部材の材質は、特に限定されないが、タイヤとの接着性を強固にできる点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン6、ナイロン66、熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等により形成されるのが好ましい。
【0042】
タイヤ用部材(各種センサ、装置等および上記筐体、板状部材)の形状は、接着位置により異なるため特に限定されず、例えば、平面状であっても、曲面状であってもよい。
タイヤ用部材の大きさは、タイヤの内側表層に装着できる程度であれば特に限定されず、また、タイヤ用部材の質量も同様に特に限定されないが、一般的には10~40g程度が好ましい。
・・・
【0046】
<タイヤとタイヤ用部材との接着>
(実施例2)
自動車用タイヤのブチルゴム組成物により形成された部分を切り出してゴム試験片(縦10cm、横5cm)とした。タイヤ用部材として、PBT製の筐体(縦5.5cm、横2.5cm、高さ1.0cm)にセンサを内装したものを用いた。
上記ゴム試験片に、実施例1で得たプライマー組成物を、乾燥後の膜厚が7μmとなるように塗布して、室温で5分間放置して乾燥させ、その上に、ウレタン系接着剤(WS202、横浜ゴム(株)製)を、乾燥後の膜厚が1.0mmとなるように塗布した。その後、接着剤の上に上記タイヤ用部材を載置し手で押圧した。相対湿度60RH%の条件下、温度23℃で7日間、プライマー組成物および接着剤を養生(硬化)させ、ゴム試験片とタイヤ用部材を接着させた。」
(3)甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内方に配されたベルト層と、前記カーカスのタイヤ半径方向内側に配された空気不透過性のゴムからなるインナーライナー層と、前記トレッド部の前記インナーライナー層のタイヤ半径方向の内側面に接着されかつ前記ベルト層よりもタイヤ軸方向の幅が大きいシーラント層とを具えた空気入りタイヤあって、
前記シーラント層が接着されている前記トレッド部の前記インナーライナー層の前記内側面は、下記式を充足するプロファイルを有していることを特徴とする空気入りタイヤ。
L1<L2<L3、L1≦5mm、L2≦9.5mm、L3≦11mm
ここで、L1、L2、L3は、次の通りである。
L1、L2及びL3:正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態でのタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端から、それぞれ、前記ベルト層の最大幅の5%、10%及び15%をタイヤ軸方向内側に隔てた各位置において、下記基準高さ位置からの前記インナーライナー層の前記内側面までのタイヤ半径方向高さ
基準高さ位置:前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を通るタイヤ半径方向線と、前記インナーライナー層の前記内側面との交点を通るタイヤ半径方向の位置」
(3b)
「【0010】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部のインナーライナー層のタイヤ半径方向の内側面にシーラント層を具えている。
・・・
【0030】
インナーライナー層9は、内のカーカスプライ6Aのタイヤ半径方向内側に配されている。本実施形態のインナーライナー層9は、一対のビード部4、4間に跨って連続してのびている。インナーライナー層9は、空気非透過性のゴム材からなり、タイヤ内腔内に充填される空気の漏出を防ぐ。空気不透過性のゴム材としては、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等が望ましい。
・・・
【0046】
タイヤ基体Tは、図1のタイヤ1のシーラント層10の接着前のものである。従って、タイヤ基体Tは、即ち、加硫済のものである。
・・・
【0052】
シーラント層10の製造は、このような態様に限定されるものではない。シーラント層10の製造は、例えば、2軸連続混練機の吐出口にノズルを接続し、このノズルをタイヤ基体Tの内側面9a近傍に配して、保持具17によって回転可能に保持されたタイヤ基体Tの内側面9aに、2軸混練機から直接的にゴムストリップ15をノズルから吐出して貼付ける態様でも良い。
【0053】
次に、ゴムストリップ15で形成されたシーラント層10を加熱して架橋する。加熱方法としては、例えば、タイヤ基体Tをオーブンに投入する他、熱風機による温熱送風や赤外線ランプによる照射等が望ましい。
【0054】
また、ゴムストリップ15の架橋には、ゴムストリップ自体の熱を利用することもできる。即ち、二軸連続混練機から吐出されるゴムストリップ15の温度を80~130度に制御して、接着後、徐々に架橋を促進させることができる。
【0055】
ゴムストリップ15の架橋を、さらに効果的に促進させるため、例えば、ゴムストリップ15の巻き付け時に、タイヤ基体Tの温度を40~70度に加温させておくのが望ましい。」
(4)甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)
「【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面の少なくとも前記トレッド部に対応する領域に熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナー層を配設すると共に、前記タイヤ内面の前記トレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着したことを特徴とする空気入りタイヤ。
・・・
【請求項6】
前記接着層は基材と該基材のタイヤ側の面に積層されたゴム系接着剤と該基材の吸音材側の面に積層されたアクリル系接着剤とを含む両面接着テープからなり、その引き剥がし粘着力が8N/20mm~40N/20mmの範囲にあることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
・・・
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の空気入りタイヤを製造する方法であって、前記インナーライナー層を備えた空気入りタイヤを加硫した後、タイヤ内面の少なくとも前記トレッド部に対応する領域に付着した離型剤を除去し、その離型剤が除去されたタイヤ内面の前記トレッド部に対応する領域にタイヤ周方向に沿って接着層を介して帯状の吸音材を接着することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。」
(4b)
「【0031】
接着層5は、例えば、図6に示すように、基材51と、基材51のタイヤ側の面に積層されたゴム系接着剤52と、基材51の吸音材側の面に積層されたアクリル系接着剤53とを含む両面接着テープ50から構成することができる。つまり、接着層5にはインナーライナー層14に対する接着力と吸音材6に対する接着力とが求められるので、基材51の両面にゴム系接着剤52及びアクリル系接着剤53を積層した両面接着テープ50は接着性の観点から好適である。」
(5)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
(5a)
「【0002】
感圧接着剤(自己接着剤またはPSAともよばれる)は、基材(下地)とよばれる支持体の層に室温で直ちに粘着性または接着性(一般に「タック」とよばれる)を与え、わずかな圧力で基材を瞬間的に接着できるようにする物質である。このPSAは情報(例えばバーコード、商品名、価格)を表示する目的および/または装飾の目的で接着剤によって物品に一時的または永久に固定される粘着ラベルまたは粘着フィルムの製造で広く使われている。また、PSAは各種用途の自己接着性テープの製造でも使われている。その例としては日常生活で広く使われている透明接着テープの他に、段ボール包装材料の組立て、塗装面の保護、建築または構造物の製造で使われる各種物品、例えばパネル、煉瓦、突出物の固定、平らまたは特定輪郭を有する金属、プラスチックまたはガラス部品、例えば電線ケーブル、プラスチックフィルム、特に運搬工業での窓ガラス、シート、表示物、ロゴ、座席部品、計器板、プラスチックまたはテキスタイル壁、流体輸送用パイプまたは管の固定、把持、両面接着テープを用いたカーペットの固定を挙げることができる。
・・・
【0007】
PSAの用途の中には結合力を与えている接着部(従って、ラベルおよび/またはテープを張り付けた物品)が広範囲の温度に曝された場合でもラベルおよび/またはテープのタックが基材上で維持されることが望ましい場合がある。その例としては自動車(その他の車両)のエンジンの近くに位置したある種の部品、あるいは、例えばタイヤのように生産ラインから出た時にホットな状態で貼り付けられる(hot-labelled)物品、あるいは、包装中に加熱された液体を受けるように設計された容器に取り付けられるラベルを挙げることができる。さらに、例えば飛行機、その他の車両の内部トリムの場合のように組立中に優れた耐熱性を必要とする接合部品用粘着テープの使用も挙げることができる。
・・・
【0015】
PETタイプの支持体を有する粘着物品の製造で使用可能な接着剤組成物は、その全てが形状適合性支持体を有する粘着物品の製造に使用できるわけではなく、接着ジョイント部が高い耐剪断性および高い破断温度を満足するような特性を有しているわけでもない。」
2-2 対比・判断
2-2-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア
甲1発明1の「湿気硬化型樹脂組成物」と、「ポリマー含有コーティング」とは、本件発明1の「組成物」において共通している。
そうすると、甲1発明1の「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する方法」と、本件発明1の「タイヤの硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法」とは、「組成物を適用する方法」において共通し、甲1発明1の「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する方法」と、本件発明1の「前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する、ことと、を含む、方法」とは、「組成物を適用する方法」において共通している。
したがって、
甲1発明1の「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する方法」と、
本件発明1の「タイヤの硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成する方法であって、
a.ゴムを含む硬化したインナーライナーを準備することであって、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有する、ことと、
b.前記硬化したインナーライナーの前記下面をコーティング組成物で処理することであって、
これにより、前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する、ことと、を含む、方法」とは、
「組成物を適用する方法」において共通している。
イ
上記アで述べたとおり、甲1発明1の「湿気硬化型樹脂組成物」と、本件発明1の「コーティング組成物」とは、「組成物」において共通している。
甲1発明1の「反応性基としてジメトキシシリル基を有する、末端にジメトキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は末端にジメトキシシリル基を有するビニル重合体を含む有機重合体」、「シランカップリング剤」及び「硬化触媒」は、それぞれ、本件発明1の「シリル末端ポリマー」、「少なくとも1種の接着促進剤」及び「少なくとも1種の触媒」に相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「組成物は、
シリル末端ポリマーと、
少なくとも1種の接着促進剤と、
少なくとも1種の触媒と、
を含み、
少なくとも1種の可塑剤を更に含むか又は含まず、
なくとも1種の水分捕捉剤を更に含むか又は含まず、
少なくとも1種の抗酸化剤を更に含むか又は含まず、
充填剤を更に含むか又は含まない、
組成物を適用する方法。」
<相違点1-1>
「組成物を適用する方法」に関して、「組成物」を、どこに、どのような態様として「適用する」かについて、
本件発明1では、
「タイヤの硬化したインナーライナー上にポリマー含有コーティングを生成」し、
「ゴムを含む硬化したインナーライナーを準備することであって、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有する、ことと、
前記硬化したインナーライナーの前記下面をコーティング組成物で処理することであって、
これにより、前記硬化したインナーライナーの前記下面上にポリマー含有コーティングを形成する、ことと、を含む」のに対して、
甲1発明1では、
「湿気硬化型樹脂組成物」を、どこに、どのような態様で適用するのか特定されていない点。
<相違点2-1>
「組成物」について、本件発明1では、「コーティング」組成物であり、「少なくとも1種の粘着付与剤」を含み、「シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて40~75重量%の量で存在し、充填剤を含む場合、前記充填剤は、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて0重量%超10重量%以下の量で存在」するのに対して、甲1発明1では、そのように特定されていない点。
(2)判断
相違点について以下検討する。
ア 相違点1-1について
(ア)
タイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に何らかの部材を接着することは、例えば、甲3(摘記(3a)、(3b)のインナーライナー層及びシーラント層に関する記載を参照。)又は甲4(摘記(4a)、(4b)のタイヤ内面及び帯状の吸音材に関する記載を参照。)に示すように、周知技術である。
しかしながら、甲3には、接着剤自体が記載されておらず(摘記(3a)、(3b)参照)、甲4には、接着テープを用いることが記載されており(摘記(4a)、(4b)参照)、
ブチル系ゴムを含有するタイヤの内側表層(特にタイヤ用部材との接着面)に特定のプライマー組成物を用いることが記載されているが(請求項1、7、段落【0036】参照)、その特定のプライマー組成物を他の組成物に替えると課題が解決できなくなってしまうものであり(段落【0007】、【0009】参照)、甲5には、感圧接着剤を生産ラインから出たホットな状態のタイヤに使用することが記載され(段落【0007】参照)、PETタイプの支持体を有する粘着物品の製造で使用可能な接着剤組成物が記載されているが(段落【0015】参照)、これらいずれの甲号証にも、タイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に直接用いるプライマーや接着剤として、甲1発明1の組成物を適用することについては、一切記載されていないしそのような示唆もない。
(イ)
甲1には、段落【0031】に「本発明の組成物を適用することができる被着体は特に制限されない。例えば、金属、プラスチック、エラストマー(例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム)、ガラス、セラミックが挙げられる。本発明の組成物を被着体に適用する方法は特に制限されない。」と記載され、段落【0032】には、「本発明の組成物の用途としては、例えば、シーリング材、接着剤、コーティング材、プライマー、塗料、ポッティング材が挙げられる。本発明の組成物は、各種電気・電子分野用、建築物用、自動車用、土木用、音響部材、音響機材等に使用可能である。」と記載されている。
この記載から、甲1発明の「湿気硬化型樹脂組成物」は、多様な用途のうち、自動車用に使用可能であるといえるが、自動車には、タイヤだけではなく、多数の部品(少なくとも数百から数千)が用いられており、その多数の部品に対しても、甲1発明の「湿気硬化型樹脂組成物」を使用することが想定されているといえる。
また、甲1発明の「湿気硬化型樹脂組成物」は、多様な材料のうち、エラストマーに使用可能であるといえるが、そのエラストマーもブチルゴムに限ることなく、多様なエラストマーが想定されているといえる。
(ウ)
しかしながら、甲1には、タイヤは記載されておらず、タイヤのインナーライナーについては一切記載されていないのであるから、しかも、上記(ア)で述べたとおり、甲2~5には、タイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に直接用いるプライマーや接着剤として、種々の甲1発明1の組成物を適用することについては、一切記載されておらずその示唆もないのであるから、タイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に何らかの部材を接着することが周知技術であったとしても、その接着に甲1発明1のコーティング材として使用ができる「湿気硬化型樹脂組成物を適用する」こと、要するに、上記(イ)の想定を踏まえると、甲1発明1のコーティング材として適用することができる「湿気硬化型樹脂組成物」を、多様な材料のうちの多様なエラストマーの中からブチルゴムに限定し、多様な用途うちの自動車の多数の部品からタイヤに限定し、さらに多数の部品及び多数のエラストマーを用いて構成されているタイヤにおける使用箇所を、ブチルゴムを含むインナーライナー下面にまで限定することで、タイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に用途を限定して「適用する」ことは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
また、甲1において、多様な材料のうちの多様なエラストマーのうちブチルゴムだけに着目し、そのブチルゴムから直ちにタイヤのブチルゴムを含むインナーライナーの下面に着目することは当業者であっても容易ではなく、このように着目することは、本件発明1を見た後知恵といわざるを得ない。
したがって、相違点1-1に係る本件発明1の構成を想到することは、甲1発明1及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
イ 相違点2-1について
相違点2-1に係る本件発明1の構成の「前記組成物の総重量」には、少なくとも1種の粘着付与剤、少なくとも1種の接着促進剤及び少なくとも1種の触媒の重量が含まれるところ、甲1発明1では、粘着付与剤が特定されておらず、仮に、甲1の段落【0026】の「本発明の組成物は、上記の成分の他に添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、例えば、・・・接着付与剤・・・が挙げられる。」という記載から、接着付与剤(本件発明1の「粘着付与剤」に相当。)を含むことが容易であるといえたとしても、その接着付与剤(粘着付与剤)の重量が不明であるから、湿気硬化型樹脂組成物の総重量は不明である。
そして、甲1の表1、表2等を見ても、甲1には、接着付与剤(粘着付与剤)、接着促進剤及び触媒の重量が全て示された具体的な実施例や接着付与剤(粘着付与剤)の重量は記載されていないから、また、甲2~5においても、同様で、シリル末端ポリマー、粘着付与剤、接着促進剤及び触媒の重量が全て示された具体的な実施例は記載されていないから、湿気硬化型樹脂組成物(組成物)の総重量が不明である甲1発明1において、相違点2-1に係る本件発明1の構成が備える「前記シリル末端ポリマーは」、「前記組成物の総重量に基づいて40~75重量%の量で存在」する構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
このことに併せ、上記アを踏まえると、相違点2-1に係る本件発明1の構成が備える「前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて40~75重量%の量で存在」する構成を想到することは、甲1発明1及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、上記の構成を含む相違点2-1に係る本件発明1の構成を想到することは、甲1発明1及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、異議申立書の29ページ15~17行において、「甲第1号証の表1の実施例3の配合によると、シリル末端ポリマーは湿気硬化型樹脂組成物の総重量に対して52%(120/228)である。」と主張している。
しかしながら、甲1の表1の実施例3の「ポリマー1」の「ビニル重合体」(20質量部)は、甲1の段落【0037】の「ビニル重合体はメチルジメトキシシリル基を末端、両末端及び側鎖のうちの少なくとも1つに有する。」という記載から、シリル末端ポリマーであることが明らかであり、また、同「ポリマー1」の「DMSポリマー」(100質量部)も、段落【0043】の「S-303:DMSポリマー。反応性基がメチルジメトキシシリル基であり、主鎖はポリオキシプロピレンであり、反応性基は主鎖の末端に結合する。S-303は商品名、カネカ社製」という記載及び本件明細書の段落【0019】の「Kaneka製の例示的なシリル末端ポリエーテルとしては、・・・S303・・・が挙げられる。」という記載から、シリル末端ポリマーであることが明らかであり、さらに、表1の実施例3の「化合物b-1」の「ヒマシ油ポリオール変性品」(100質量部)も、甲1の段落【0033】の「<反応性基としてトリメトキシシリル基を末端に有するヒマシ油由来のポリエステル(化合物b-1)の製造>」という記載から、シリル末端ポリマーであることが明らかである。そうすると、表1の実施例3のシリル末端ポリマーは220質量部であるというべきであり、「シリル末端ポリマーは湿気硬化型樹脂組成物の総重量に対して52%(120/228)」にはならないから、上記の主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-2 本件発明2、5について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2の発明特定事項を付加して限定したものであるから、また、本件発明5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに請求項5の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記2-2-1と同じ理由により、本件発明2及び本件発明5は、甲1発明1及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-3 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と甲1発明2とを対比する。
ア
甲1発明2の「湿気硬化型樹脂組成物」と、本件発明6の「ポリマー含有コーティング」とは、「ポリマー含有組成物」において、共通している。
甲1発明2の「被着体」と、本件発明6の「硬化タイヤ」とは、「被着体」において共通している。
そして、本件発明6の「硬化タイヤ」は、「前記硬化したインナーライナーの前記下面は、ポリマー含有コーティングを含」む「硬化タイヤ」であるから、甲1発明2の「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する被着体」と、本件発明6「硬化タイヤ」とは、「ポリマー含有組成物を適用する被着体」において共通している。
これらのことを踏まえると、
甲1発明2の「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する被着体。」と、
本件発明6の「タイヤ本体と、硬化したインナーライナーと、前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた少なくとも1つの構成要素と、を備える、硬化タイヤであって、
前記硬化したインナーライナーはゴムを含み、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、
前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有し、前記下面は前記タイヤ内で半径方向内向きに位置付けられ、
前記硬化したインナーライナーの前記下面は、
ポリマー含有コーティングを含み、
前記ポリマー含有コーティングは、10~1000マイクロメートルの厚さを有し、
前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた前記少なくとも1つの構成要素は、前記硬化したインナーライナーの前記下面の前記ポリマー含有コーティングに接着される、硬化タイヤ。」とは、
「ポリマー含有組成物を適用する被着体」において共通している。
イ
上記アで述べたとおり、甲1発明2の「湿気硬化型樹脂組成物」と、本件発明6の「ポリマー含有コーティング」とは、「ポリマー含有組成物」において、共通している。
また、甲1発明2の「反応性基としてジメトキシシリル基を有する、末端にジメトキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は末端にジメトキシシリル基を有するビニル重合体を含む有機重合体」、「シランカップリング剤」及び「硬化触媒」は、それぞれ、本件発明6の「シリル末端ポリマー」、「少なくとも1種の接着促進剤」及び「少なくとも1種の触媒」に相当する。
以上から、本件発明6と甲1発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点6>
「シリル末端ポリマーと、
少なくとも1種の接着促進剤と、
少なくとも1種の触媒と、
を含み、
少なくとも1種の可塑剤を更に含むか又は含まない、
少なくとも1種の水分捕捉剤を更に含むか又は含まない、
少なくとも1種の抗酸化剤を更に含むか又は含まない、
充填剤を更に含むか又は含まない、
ポリマー含有組成物を適用する被着体。」
<相違点1-6>
「ポリマー含有組成物を適用する被着体」について、
本件発明6では、
「タイヤ本体と、硬化したインナーライナーと、前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた少なくとも1つの構成要素と、を備える、硬化タイヤであって、
前記硬化したインナーライナーはゴムを含み、前記ゴムの大部分はハロゲン化されているか又はハロゲン化されていないブチルゴムを含み、
前記硬化したインナーライナーは、上面及び下面を有し、前記下面は前記タイヤ内で半径方向内向きに位置付けられ、
前記硬化したインナーライナーの前記下面は、
ポリマー含有コーティングを含み、
前記ポリマー含有コーティングは、10~1000マイクロメートルの厚さを有し、
前記硬化したインナーライナーの半径方向内側に位置付けられた前記少なくとも1つの構成要素は、前記硬化したインナーライナーの前記下面の前記ポリマー含有コーティングに接着される、硬化タイヤ」であるのに対して、
甲1発明2では、
「湿気硬化型樹脂組成物を、適用する被着体。」である点。
<相違点2-6>
「ポリマー含有組成物」について、本件発明6では、ポリマー含有「コーティング」であり、「少なくとも1種の粘着付与剤」を含み、「前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて40~75重量%の量で存在し、充填剤を含む場合、前記充填剤は、前記インナーライナーの前記下面に含まれる前記ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて0重量%超10重量%以下の量で存在」するのに対して、甲1発明2では、「湿気硬化型樹脂組成物」である点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1-6について
上記2-2-1(2)アにおいて、「甲1発明1」を「甲1発明2」に、「本件発明1」を「本件発明6」に、「相違点1-1」を「相違点1-6」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
そうすると、甲1発明2の「湿気硬化型樹脂組成物」を、硬化したタイヤのブチルゴムを含む硬化したインナーライナーの下面に用途を限定して適用し、硬化したインナーライナーの下面は、ポリマー含有コーティングを含む構成とすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点1-6に係る本件発明6の構成を想到することは、甲1発明2及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
イ 相違点2-6について
上記2-2-1(2)イにおいて、「甲1発明1」を「甲1発明2」に、「本件発明1」を「本件発明6」に、「相違点2-1」を「相違点2-6」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
そうすると、相違点2-6に係る本件発明6の構成が備える「前記シリル末端ポリマーは、前記インナーライナーの前記下面の処理に使用される前記組成物の総重量に基づいて40~75重量%の量で存在」する構成を想到することは、甲1発明2及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、上記構成を含む相違点2-6に係る本件発明6の構成を想到することは、甲1発明2及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、甲1発明2及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2-2-4 本件発明7について
本件発明7は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに請求項7の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記2-2-3で説示したのと同じ理由により、甲1発明2及び甲2~5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2及び5~7に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に本件特許の請求項1、2及び5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項3及び4に係る特許は削除された。これにより、申立人による請求項3及び4に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなり、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700910