特許異議申立
2021-700201
通信モジュール、通信システム及び通信方法
- 審判番号
- 2021-700201
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-517599外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6746826
- 請求日
- 2021年02月25日
- 審決日
- 2022年03月29日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社日立産機システム
- 【権利者代理人】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 分類
- P1652.121-ZDA(G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6746826号発明「通信モジュール、通信システム及び通信方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6746826号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔20〕について訂正することを認める。
特許第6746826号の請求項1ないし5及び10に係る特許を取り消す。
同請求項20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許6746826号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、令和元年12月13日を国際出願日とする出願であって、令和2年8月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月26日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 2月25日 特許異議申立人 加藤浩志(以下、「特許異
議申立人」という。)による請求項1ないし
5並びに10及び20に係る特許に対する特
許異議の申立て
令和3年 6月23日付け 取消理由通知書
令和3年 8月27日 特許権者による意見書および訂正請求書の提
出
令和3年10月 1日 特許異議申立人による意見書の提出
令和3年12月 7日付け 取消理由通知書(決定の予告)(以下、この
取消理由通知書(決定の予告)を「取消理由
通知」という。)
第2 訂正の適否
(1)訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項20を、以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項20】
異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースと、OS(Operating System)と、当該OS上で実行される第1アプリと監視アプリとを有する通信モジュールに、通信に使用される通信インターフェース規格に対応し当該OS上で実行され任意にアンインストール可能な第2アプリをインストールし、
前記OSと前記第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである第1アプリ経由で前記第2アプリについて設定された通信タイミングで、当該第2アプリが、当該第2アプリに対応した通信インターフェース規格上での通信プロトコルに従う通信を行い、
前記第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記通信モジュールが有するメモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する、
通信方法。」(下線は、訂正箇所を示す。)
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る請求項20についての訂正は、「OS上で実行される」「通信モジュール」について「監視アプリ」が実行されるとの限定を加え、「第2アプリ」について「前記第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記通信モジュールが有するメモリに格納されるようになっており、」との限定を加え、さらに、「前記監視アプリが、前記第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する、」との限定を加えたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に、
「【0068】
また、監視アプリ303B1は、第3アプリ303Bの一例である。フレームワーク303A及び監視アプリ303B1は、通信モジュール101の提供者によってインストール(例えば、プリインストール)されてよい。監視アプリ303B1については後述する。なお、フレームワーク303Aが、監視アプリ303B1のような第3アプリ303Bを兼ねてよい。すなわち、フレームワーク303Aが、監視アプリ303B1を兼ねてもよい。なお、「第3アプリ」とは、OS303上のアプリのうち第1アプリ及び第2アプリ以外のアプリでよい。」
「【0084】
さて、個々の第2アプリ303Cは、OS301によりプロセスとみなされて実行される。個々の第2アプリ303Cは、実行ログのような使用履歴(例えば、リソース量)を、当該第2アプリ303について設定された領域に書き込む。フレームワーク303Aは、個々の第2アプリ303Cの実行によって何が発生するか(例えば、いずれの種類のリソースがどの程度使用されるか)かまではわからない。
【0085】
そこで、本実施形態では、監視アプリ303B1が通信モジュール101にインストールされる。監視アプリ303B1は、例えば、第2アプリ303C毎に、定期的に、フレームワーク303Aに対し、当該第2アプリ303Cに対応した領域にデータがあるか否かを問合せる。フレームワーク303Aは、データがあれば、当該データを領域から読み出して監視アプリ303B1に返し、データが無ければ、データが無いことを監視アプリ303B1に回答する。
【0086】
監視アプリ303B1が問合せに応答してフレームワーク303Aから受信するデータは、第2アプリ303Cの使用履歴を表す情報を含んでいる。監視アプリ303B1は、フレームワーク303Aから受信したデータを、監視アプリ303B1のアプリIDと、当該データに対応した第2アプリ303CのアプリIDとに関連付けて、グローバルの第2アプリの一例であるMQTTアプリ303C3に渡す(例えば、メモリ223における所定の領域に書き込む)。MQTTアプリ303C3が、渡されたデータを管理サーバ115に送信する。」
と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項20については特許異議の申立てがされているので、訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項20のとおり訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
請求項1ないし19に係る発明、及び、本件訂正請求により訂正された、請求項20に係る発明(以下、請求項1ないし20に係る発明を、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明20」という。)は、その特許請求の範囲の請求に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースと、
OS(Operating System)を含む複数のプログラムが格納されるメモリと、
前記複数の通信インターフェースと前記メモリとに接続され前記複数のプログラムを実行するプロセッサと
を備え、
前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される第1アプリと、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである、
通信モジュール。
【請求項2】
前記一つ又は複数の第2アプリの各々について、
当該第2アプリの実行オブジェクトと、
当該第2アプリについて一つ以上の設定項目を表す設定定義オブジェクトと、
当該一つ以上の設定項目について一つ以上の設定値が入力された場合に当該入力された一つ以上の設定値が登録される設定オブジェクトと
を含んだアプリ構造体があり、
前記一つ又は複数の第2アプリの各々について、当該第2アプリの実行は、当該第2アプリの設定オブジェクトに基づいており、
前記第1アプリが、
指定された第2アプリの設定定義オブジェクトを基に、当該設定定義オブジェクトが表す一つ以上の設定項目について一つ以上の設定値を受け付けるUI(User Interface)である設定画面を生成し、
当該生成した設定画面を提供し、
当該設定画面が表す一つ以上の設定項目について当該設定画面に入力された一つ以上の設定値を、前記指定された第2アプリの設定オブジェクトに登録する、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記設定画面は、前記通信モジュールに通信可能に接続された計算機で実行されるWebブラウザにより表示可能な画面である、
請求項2に記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記一つ又は複数の第2アプリにそれぞれ対応した一つ又は複数のアプリ構造体は、ファイルシステムにおける所定のディレクトリに格納され、
各アプリ構造体において、実行オブジェクト、設定定義オブジェクト及び設定オブジェクトとは、それぞれ、実行ファイル、設定定義ファイル及び設定ファイルであり、
前記第1アプリは、前記所定のディレクトリを参照することで、前記一つ又は複数の第2アプリのインストール済を特定する、
請求項2に記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記通信モジュールのエンドユーザ以外のエンティティにより管理されるシステムから当該エンドユーザの要求無しに第2アプリのアプリ構造体が前記所定のディレクトリに格納される、
請求項4に記載の通信モジュール。
【請求項6】
第1の第2アプリが、当該第1の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、当該通信インターフェースに接続されている機器からデータを受信し、
前記第1の第2アプリとは別の第2アプリである第2の第2アプリが、前記第1の第2アプリが受信したデータ又は当該データの加工後のデータを、当該第2の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、所定のサーバに送信する、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項7】
前記複数のプログラムが、第3アプリとして監視アプリを含み、
少なくとも一つの第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記メモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記少なくとも一つの第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2の第2アプリに渡し、
前記第2の第2アプリが、渡されたデータを前記所定のサーバに送信する、
請求項6に記載の通信モジュール。
【請求項8】
前記複数のプログラムが、第3アプリとして監視アプリを含み、
少なくとも一つの第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記メモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記少なくとも一つの第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、いずれかの第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項9】
前記複数のプログラムが、第3アプリとして課金アプリを含み、
前記第1アプリが、第2アプリにより通信インターフェース経由で通信されたデータの量であるデータ通信量を特定し、
前記課金アプリが、前記特定されたデータ通信量に基づいて、通信モジュールの使用に関する課金額を決定する、
請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項10】
異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースを有する通信モジュールと、
サーバと
を備え、
前記通信モジュールが、OS(Operating System)と、当該OS上で実行される第1アプリと、当該OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを有し、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリであり、
第1の第2アプリが、当該第1の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、当該通信インターフェースに接続されている機器からデータを受信し、
前記第1の第2アプリそれ自体又は別の第2アプリである第2の第2アプリが、当該第2の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、前記サーバにデータを送信する、
通信システム。
【請求項11】
前記第2の第2アプリから送信されるデータが、第2アプリにより通信インターフェース経由で通信されたデータの量であるデータ通信量を含み当該第2アプリの使用履歴であるアプリ使用履歴を表すデータを含み、
前記サーバが、前記第2の第2アプリからのデータから特定される前記アプリ使用履歴に基づいて、前記通信モジュールの使用に関する課金額を決定する、
請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
前記アプリ使用履歴は、第2アプリと当該第2アプリのアクティベート時刻とを表す情報を含む、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記通信モジュールが、所定の通信網に対応し加入者識別情報を格納したカードを有しており、
前記第2の第2アプリが、前記カード内の加入者識別情報を含むデータを、前記第1アプリ経由で設定された通信タイミングで、前記サーバに送信する、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項14】
前記サーバが、前記決定された課金額が反映された料金を前記所定の通信網を管理する通信事業者が請求可能にするために、前記決定された課金額を表す情報を、当該通信事業者宛に送信する、
請求項13に記載の通信システム。
【請求項15】
前記通信モジュールとして、少なくとも第1の通信モジュールと第2の通信モジュールとがあり、
前記サーバが、前記第1の通信モジュールのアプリ利用履歴が表す或る第2アプリのアクティベート時刻と、前記第2の通信モジュールのアプリ使用履歴が表す同一の第2アプリのアクティベート時刻とを基に、前記第1の通信モジュールに関する第1の課金額と前記第2の通信モジュールに関する第2の課金額とを決定する、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項16】
前記第1の課金額のうち前記或る第2アプリの使用に関わる部分の料金と、前記第2の課金額のうち前記同一の第2アプリの使用に関わる部分の料金とのうち、当該第2アプリのアクティベート時刻が早い方の料金が安い、
請求項15に記載の通信システム。
【請求項17】
前記サーバは、決定された課金額の支払期限までの支払が無ければ、当該課金額が決定された通信モジュールの全部又は一部の使用を制限する、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項18】
前記通信モジュールが、複数のリージョンに属する複数の通信網の各々について当該通信網の加入者識別情報を格納したカードを有しており、
前記通信モジュールにおけるいずれかのアプリが、当該通信モジュールが存在するリージョンを特定し、
当該特定されたリージョンが所定のリージョンの場合、前記通信モジュールにおけるいずれかのアプリが、当該所定のリージョンに属する通信網に対応した加入者識別情報を用いた通信を制限する、
請求項10に記載の通信システム。
【請求項19】
前記サーバとして、複数の通信網が属する複数のリージョンに属する複数のサーバがあり、
前記通信モジュールが、前記複数の通信網の各々について当該通信網の加入者識別情報を格納したカードを有しており、
前記通信モジュールが存在するリージョンに属するサーバが、
当該通信モジュールの通信が許可されているリージョンである許可リージョンを特定し、
当該許可リージョンに、前記通信モジュールが存在するリージョンが該当しない場合、当該リージョンに属する通信網に対応した加入者識別情報を用いた通信を制限する、
請求項10に記載の通信システム。
【請求項20】
異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースと、OS(Operating System)と、当該OS上で実行される第1アプリと監視アプリとを有する通信モジュールに、通信に使用される通信インターフェース規格に対応し当該OS上で実行され任意にアンインストール可能な第2アプリをインストールし、
前記OSと前記第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである第1アプリ経由で前記第2アプリについて設定された通信タイミングで、当該第2アプリが、当該第2アプリに対応した通信インターフェース規格上での通信プロトコルに従う通信を行い、
前記第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記通信モジュールが有するメモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する、
通信方法。」
第4 取消理由通知について
1 取消理由の概要
請求項1ないし5及び10に係る特許に対して、当審が特許権者に取消理由通知で通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし5及び10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1ないし5及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証(伊藤厚 外3名、「情報処理機能を強化したIoT対応産業用コントローラ」、日立評論、Vol.99、No.6、[online]、2017年12月20日、日立評論社、[2021年2月24日検索]、インターネット<URL:https://d1.nd1.go.jp/view/download/digidepo_11180780_po_62-67_12A05.pdf?contentNo=1&alternativeNo=>)には、図面とともに以下の記載がある。
「1.はじめに
製造現場や設備・機械の動作を制御する制御用コントローラは、その制御をリアルタイムに行うために、設備や機械から必要なセンサーなどの入力信号を取り込み、制御内容を記述したプログラム(制御ロジック)に従って高速に演算し、その演算結果をアクチュエータなどへ出力信号として出力する構成となっている。」(第62頁左欄1行ないし7行)
「さらに、複数の設備や機械、情報システムとの連携による制御システムの高度化のため、ネットワークが使用されている。特に制御用コントローラが制御に使用する入力信号や出力信号をネットワーク化するためには、各種制御ネットワークが使用され、多くの対応機器がこのネットワークに参加することが一般的になっている。
今後、制御用コントローラは、標準化されたプログラミング方式や制御ネットワークの活用が拡大し、半導体技術の進歩によってリアルタイム性能が大幅に向上することに加え、製造現場のIoT(Internet of Things)化への適用が求められると予想される。製造現場のIoT化により期待される効果は、生産効率向上、品質確保、納期短縮、コスト低減や予兆保守などであり、制御用コントローラが扱う多くの信号を活用することが有効となる。
次章で、リアルタイムに扱う多くの信号を情報として活用することができるように、新たな機能を付加したIoT対応産業用コントローラの新モデルを紹介する。」(第62頁右欄7行ないし第63頁8行)
「2.IoT対応産業用コントローラ
IoT対応産業用コントローラ「HXシリーズハイブリッドモデル(以下、「HXハイブリッド」と記す。)は、PLC(Programmable Logic Controller)機能と各種ネットワーク機能に加え、情報処理機能を強化したものである。制御動作を行いながら製造現場でのIoT化を実現する情報処理プログラムを実行でき、製造現場と情報システムをシームレスに接続し、産業のIoT化を加速することができる(図1参照)。」(第63頁右欄9行ないし17行)
「2.2
情報処理の実行環境
HXシリーズは、製造現場のソフトウェア化をめざし、従来は専用のハードウェアで行っていた機能を、汎用プロセッサとOS(Opereating system)というオープンなハードウェアでコントローラに必要な制御性能をキャッチアップしている。HXハイブリッドは、PLC機能に加え、情報処理プログラミン言語(C/C++)を1台のコントローラで実行させるため、コンテナ技術を導入して制御動作と情報処理をそれぞれ独立に実行できるようにする仕組みの制御コンテナと情報コンテナを搭載している(図4参照)。
制御ロジック開発環境で制御動作を記述しデバッグを行い、情報プログラム開発環境で情報処理を記述しデバッグを行い、それぞれのコンテナに格納し実行することで、製造現場と情報システムの接続をシームレスに実現する。それぞれを独立に動作可能としたことで、制御動作を行っていても情報プログラムの変更が可能であり、製造現場の生産活動に影響を与えずに、情報プログラムの改良や更新をするオンライン変更も可能としている。
HXハイブリッドは、リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、制御ネットワークとして今後普及が見込まれるEtherCAT対応機能を標準で備えている。また、その他の制御ネットワークとして、PROFINETやPROFIBUS、DeviceNet、FL-net、Modbusなど広く普及している制御系ネットワークにも対応が可能となっており、情報システムからは制御系ネットワークとしてのゲートウェイ機能を提供し、製造現場と情報システムのシームレスな接続を可能とした。
一方、情報系ネットワークについては、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有しており、OPC UAサーバ機能を使って簡単に情報システムと双方向で制御データを交換することができる。加えて、HXハイブリットが提供する情報プログラム実行用の情報コンテナを利用したC/C++でのプログラムの実行も可能とする情報系エンジニア向けの開発環境を用意している。C/C++プログラムを使ってIP(Internet Protocol)の適用をスムーズに行うことも可能としている。
情報処理プログラムは最大4つの独立した情報コンテナで管理でき、制御動作を行っている最中にも情報処理プログラムを書き換えることができるオンライン変更機能を実現した。」(第64頁左欄3行ないし第65頁右欄10行)(当審注:上記記載の「情報処理プログラム」は「情報プログラム」の意味で使用されていると認められる。)
第63頁の図1「HXハイブリッド」のコンセプトでは、「HXハイブリッド」と「クラウドシステム/上位システム」は、情報系ネットワークを通じて接続されている。また、「各種産業用機械/装置」が接続される「フィールドネットワーク」と「クラウドシステム/上位システム」は、シームレスな接続で接続されている。
上記記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアを用いるHXハイブリッドモデルであって、
各種ネットワーク機能と、
制御ロジック(制御内容を記述したプログラム)と情報プログラムを備え、
制御動作と情報処理をそれぞれ独立に実行できるようにする仕組みの制御コンテナと情報コンテナを搭載し、
製造現場や設備・機械の動作を制御する制御ロジック(制御内容を記述したプログラム)は制御ロジック開発環境で制御動作を記述しデバッグを行い、情報プログラムは情報プログラム開発環境で情報処理を記述しデバッグを行い、それぞれのコンテナに格納し実行することで、製造現場と情報システムの接続をシームレスに実現し、
リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、制御ネットワークとしてEtherCATに対応し、その他の制御ネットワークとして、PROFINETやPROFIBUS、DeviceNet、FL-net、Modbusなどにも対応が可能となっており、
情報系ネットワークについては、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有し、C/C++プログラムを使ってIP(Internet Protocol)の適用をスムーズに行うことも可能としており、
情報プログラムは最大4つの独立した情報コンテナで管理でき、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えることができる、
HXハイブリッドモデル。」
また上記記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアを用いるHXハイブリッドモデルと、
クラウドシステム/上位システムと
を備え、
HXハイブリッドモデルは、
各種ネットワーク機能と、
制御ロジック(制御内容を記述したプログラム)と情報プログラムを備え、
制御動作と情報処理をそれぞれ独立に実行できるようにする仕組みの制御コンテナと情報コンテナを搭載し、
製造現場や設備・機械の動作を制御する制御ロジック(制御内容を記述したプログラム)は制御ロジック開発環境で制御動作を記述しデバッグを行い、情報プログラムは情報プログラム開発環境で情報処理を記述しデバッグを行い、それぞれのコンテナに格納し実行することで、製造現場と情報システムの接続をシームレスに実現し、
リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、制御ネットワークとしてEtherCATに対応し、その他の制御ネットワークとして、PROFINETやPROFIBUS、DeviceNet、FL-net、Modbusなどにも対応が可能となっており、
情報系ネットワークについては、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有しており、OPC UAサーバ機能を使って簡単に情報システムと双方向でデータを交換し、C/C++プログラムを使ってIP(Internet Protocol)の適用をスムーズに行うことも可能としており、
情報プログラムは最大4つの独立した情報コンテナで管理でき、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えることができ、
クラウドシステム/上位システムとフィールドネットワークとは、シームレスな接続がされている、
システム。」
(2)甲第2号証(打越浩幸、「超入門 Docker:第1回 Dockerとは」、[online]、2017年1月30日、アイティメディア株式会社、[2021年2月17日検索]、インターネット<URL:https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1701/30/news037.hml>)には、図面とともに以下の記載がある。
「『Docker(ドッカー)』とは、非常に軽量なコンテナ型のアプリケーション実行環境である。dotCloud社(現Docker社)が開発し、2013年にオープンソースのプロジェクトとして公開された。ソフトウェアの高速な配布・実行や容易なイメージのカスタマイズ、導入運用の手軽さ、豊富なプレビルドイメージの提供などの理由により、当初はソフトウェアの開発やテスト段階における利用が多かったが、現在ではパブリッククラウドからオンプレミスシステムまで、さまざまなシーンで急速に普及しつつある。」
「これに対してコンテナ型の仮想化環境とは、Linuxカーネルが持つ「コンテナ」機能などを使って、実行環境を他のプロセスから隔離し、その中でアプリケーションを動作させる技術である。」
「Dockerの実行環境
Dockerでは、最終的なアプリケーションはホストOS中の1つのプロセスとして実行されているため、余計なオーバーヘッドがない。ただし通常のLinuxのプロセスと違って、Linuxカーネルのサポートする「コンテナ」技術などをベースにしている。コンテナは、他のプロセスから隔離された、ある程度独立したプロセス実行環境である。コンテナごとにファイルシステムやネットワークインタフェース、名前空間などが独立している。図中の「Docker Engine」はDockerのコンテナの実行をサポートするためのモジュールであり、外部からはDocker APIを使って制御される。Docker機能をインストールして、コンテナを実行できるようにしたLinuxシステム全体をまとめてDockerホストと呼ぶ。1つのDockerホスト内では複数のコンテナを実行できる。」
図「Linux+Dockerサーバ」において、コンテナプロセスは、コンテナごとに仮想ネットワークI/Fを備え、このI/Fを介しLinux OS上に実装されたDocker Engineを通じてLinux OSと通信していると認められる。
上記記載から、甲第2号証には、以下の事項(以下、「甲第2号証記載事項」)が記載されている。
「Linuxカーネルが持つ「コンテナ」機能などを使って、実行環境を他のプロセスから隔離し、その中でアプリケーションを動作させる技術である、コンテナ型のアプリケーション実行環境であるDockerにおいて、各コンテナはコンテナごとに仮想ネットワークI/Fを備え、このI/Fを介しLinux OS上に実装されたDocker Engineを通じてLinux OSと通信していること。」
(3)甲第3号証(特開2017-138895号公報)には、図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想化環境管理システムおよび仮想化環境管理方法に関するものであり、具体的には、仮想環境における余剰リソースの抑制を図り、効率的なシステム運用を可能とする技術に関する。」
「【0016】
ここで、本実施形態の仮想化環境とは、コンテナ型仮想環境である。コンテナ型仮想化環境では、いわゆるハイパーバイザ型の仮想化環境とは異なり、1台のハードウェア上の1つのOSに、それぞれが単体のサーバ装置とみなせるコンテナを複数配置して構成した仮想化環境である。本実施形態の場合、各コンテナは各業務システムや業務アプリケーションなどを実現するものとなる。
【0017】
こうしたコンテナは、既に起動しているOS上のプロセスとして起動されるため、高速起動が可能である。また、各コンテナは、ミドルウェアとアプリケーションおよびそれらが利用するライブラリを一体に備える構成であり、異なるハードウェア(サーバ装置)やクラウド間で移動させることも容易という特徴もある。」
上記記載から、甲第3号証には、以下の事項(以下、「甲第3号証記載事項」)が記載されている。
「コンテナ型仮想環境において、各コンテナは、ミドルウェアとアプリケーションおよびそれらが利用するライブラリを一体に備える構成とすること。」
(4)甲第4号証(「IoT対応産業用コントローラ PACシステム HXシリーズ HF-W/IoTシリーズ」、株式会社日立産業システム、2017年10月)には、図面とともに以下の記載がある。
「HXシリーズ ハイブリッドモデル」(第9頁1行)
「1台のCPUで制御プログラムと情報処理プログラム(C言語プログラム)の実装と動作が可能」(第9頁中段)
「ハイブリッドモデル環境設定用Web管理ツール搭載
情報処理プログラムのアップロードや動作パラメータの設定、モニタは汎用Webブラウザで行えます。」(第9頁右下欄)
第9頁右下欄の「情報処理プログラムのアップロードや動作パラメータの設定、モニタは汎用Webブラウザで行えます。」の記載、および第10頁上段の図においてOS上にシステム設定Webサーバが実装されていることから、このシステム設定Webサーバは、情報処理プログラムの動作パラメータの設定に用いられていることがわかる。
第9頁中段の「1台のCPUで制御プログラムと情報処理プログラム(C言語プログラム)の実装と動作が可能」の記載から、情報処理プログラムは実行可能となっている。そして、プログラムが実行可能となるためには、実行オブジェクトが必要であることは明らかであるから、甲第4号証記載の「HXシリーズ ハイブリッドモデル」も、実行オブジェクトを備えていると認められる。
第9頁右下欄の「情報処理プログラムのアップロードや動作パラメータの設定、モニタは汎用Webブラウザで行えます。」の記載から、「情報処理プログラム」の「動作パラメータ」の設定を行う際に必要な項目の定義や、「パラメータ」の設定を行った結果としての設定結果を、甲第4号証記載の「HXシリーズ ハイブリッドモデル」も、当然備えていると認められる。
第10頁上段の「最大4本の情報処理プログラムを仮想コントローラとして並列動作可能」の図において、HXハードウェア上にOSが実装され、その上に、情報処理プログラムや制御プログラムが実装されているとともに、システム設定Webサーバや、アプリケーション管理が実装されていることがわかる。
上記記載から、甲第4号証には、以下の事項(以下、「甲第4号証記載事項」)が記載されている。
「HXシリーズ ハイブリッドモデルにおいて、情報処理プログラムには、その実行オブジェクトと、システム設定Webサーバを用いて汎用Webブラウザで情報プログラムの動作パラメータを設定する際に必要な項目の定義や、パラメータの設定を行った結果としての設定結果を備えること。」
(5)甲第5号証(「日立 IoT対応産業用コントローラ HXシリーズ アプリケーションマニュアル(サービスマニュアル)ハイブリッドモデル編」、株式会社日立産機システム、2018年2月、NJI-653)には、図面とともに以下の記載がある。
「C言語プログラム管理用Webサーバ機能
C言語プログラムの管理は、PCの汎用Webブラウザから本製品本体のWebサーバにアクセスして行います。専用ソフトのPCインストールは不要です。」(第2-3頁下段)
上記記載から、甲第5号証には、以下の事項(以下、「甲第5号証記載事項」)が記載されている。
「HXシリーズ ハイブリッドモデルにおいて、C言語プログラムの管理は、PCの汎用Webブラウザから本製品本体のWebサーバにアクセスして行うこと。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
(1-1)引用文献:甲第1号証、甲第2号証
ア 対比
(ア)引用発明1は、「各種ネットワーク機能」を備え、「制御ネットワークとしてEtherCATに対応」するとともに、「その他の制御ネットワーク」に対応可能であるから、このことは、本件発明1の「異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェース」を備えることに相当する。
(イ)引用発明1の「OS」を「汎用プロセッサ」で実行する際に、メモリに格納することは自明の事項である。
また、「制御ロジック」は「制御内容を記述したプログラム」であるから、プログラムの一種である。そして、「制御ロジック」や「情報プログラム」を「汎用プロセッサ」で実行するために、メモリに格納することも自明の事項である。
そうすると、引用発明1の「OS」や「制御ロジック」及び「情報プログラム」を実行するために、引用発明1は、本件発明1の「OS(Operating System)を含む複数のプログラムが格納されるメモリ」と同様の構成を備えている。
(ウ)引用発明1の「汎用プロセッサ」は、上記(ア)で検討した「複数の通信インターフェース」や、上記(イ)で検討した「メモリ」に接続されることは明らかであるから、引用発明1の「汎用プロセッサ」は、本件発明1の「前記複数の通信インターフェースと前記メモリとに接続され前記複数のプログラムを実行するプロセッサ」に相当する。
(エ)引用発明1の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、プログラムであるから「OS」上で実行されている。
また、「制御ロジック」及び「情報プログラム」をアプリと呼ぶことは任意であるから、引用発明1の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、本件発明1の「第2アプリ」に相当する。
引用発明1の「HXハイブリッドモデル」は、リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、「EtherCAT」、「PROFINET」、「PROFIBUS」、「DeviceNet」、「FL-net」、「Modbus」などの「制御ネットワーク」を使用しており、この「制御ネットワーク」を使用して「制御ロジック」は製造現場や設備・機械の動作を制御している。
また、引用発明1の「情報プログラム」が使用する「情報系ネットワーク」は、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有し、C/C++プログラムを使ってIP(Internet Protocol)の適用をスムーズに行うことも可能としているのであるから、引用発明1の「情報プログラム」は、IPの使用を前提として開発されたものである。
そうすると、引用発明1の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、本件発明1の「一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリ」に相当する。
加えて、引用発明1の「情報プログラム」は、「最大4つの独立した情報コンテナで管理でき、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えることができる」プログラムであり、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えるためには、プログラムのインストール及びアンインストールについて任意のタイミングで行うことが可能であることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「情報プログラム」は、本件発明1の「任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリ」に相当する。
してみると、引用発明1の「制御ロジック」及び「情報プログラム」と、本件発明1の
「前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される第1アプリと、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」こととは、
「前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリである」点で共通する。
(オ)引用発明1の「HXハイブリッドモデル」は、汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアを用いるものであり、また、「制御ネットワーク」や「IP」を利用するものであるから、汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアに適用された通信モジュールということができる。
そうすると、引用発明1の「HXハイブリッドモデル」は、本件発明1の「通信モジュール」に対応する。
(カ)してみると、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースと、
OS(Operating System)を含む複数のプログラムが格納されるメモリと、
前記複数の通信インターフェースと前記メモリとに接続され前記複数のプログラムを実行するプロセッサと
を備え、
前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリである、
通信モジュール。」
[相違点1]
本件発明1は「複数のプログラム」が
「前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される第1アプリと、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」
のに対して、引用発明1は、「複数のプログラム」について、上記「第2アプリ」に相当するプログラムであるとの明示はあるものの、「前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」、「第1アプリ」について明示されていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点1について、検討する。
引用発明1は、「制御ロジック」や「情報プログラム」を「コンテナ」に格納し実行しているが、この「コンテナ」について、甲第2号証記載事項にあるDockerを用いることは、当業者が容易に想到することである。
また、Dockerを利用する際には「Docker Engine」を必要とし、甲第2号証記載事項にある「Docker Engine」は、アプリケーションとOSとの間に存在するソフトウェアであるから、ミドルウェアということができる。
そして、引用発明1の「コンテナ」について、甲第2号証記載事項を適用した際に、引用発明1にミドルウェアである「Docker Engine」が採用されることとなるから、引用発明1は、「前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリ」を備えることとなる。
そうすると、本件発明1は、引用発明1及び甲第2号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(1-2)引用文献:甲第1号証、甲第3号証
上記相違点1について、検討する。
甲第3号証記載事項にあるように、
「コンテナ型仮想環境において、各コンテナは、ミドルウェアとアプリケーションおよびそれらが利用するライブラリを一体に備える構成とすること。」
は周知の構成であるから、引用発明1の各「コンテナ」について、「コンテナ」内のアプリケーションを実行する際に、OSとアプリケーションとの間にミドルウェアを設けるようにすることは、当業者が容易に想到することである。
そうすると、本件発明1は、引用発明1及び甲第3号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
引用文献:甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証
甲第4号証記載事項にあるように、
「HXシリーズ ハイブリッドモデルにおいて、情報処理プログラムには、その実行オブジェクトと、システム設定Webサーバを用いて汎用Webブラウザで情報プログラムの動作パラメータを設定する際に必要な項目の定義や、パラメータの設定を行った結果としての設定結果を備えること。」
は、公知の事項であるから、同じ「HXハイブリッドモデル」である引用発明1に上記甲第4号証記載事項を適用し、また、その際に、情報プログラムの実行オブジェクトと、情報プログラムの動作パラメータを設定するための項目の定義やパラメータの設定を行った結果としての設定結果を一つの構造体として格納することは、本件特許の出願時の技術常識からみて、当業者が容易になしえることである。
また、その際、汎用Webブラウザで情報プログラムの動作パラメータを設定するのであるから、本件発明2の
「前記第1アプリが、
指定された第2アプリの設定定義オブジェクトを基に、当該設定定義オブジェクトが表す一つ以上の設定項目について一つ以上の設定値を受け付けるUI(User Interface)である設定画面を生成し、
当該生成した設定画面を提供し、
当該設定画面が表す一つ以上の設定項目について当該設定画面に入力された一つ以上の設定値を、前記指定された第2アプリの設定オブジェクトに登録する、」
と同様の動作を行うこととなる。
そうすると、本件発明2は、引用発明1及び甲第2号証ないし甲第4号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
引用文献:甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証
甲第4号証記載事項や甲第5号証記載事項にあるように、HXシリーズ ハイブリッドモデルにおいて、アプリケーションの設定を行うための設定画面をWebブラウザにより表示することは公知の技術であり、引用発明1において、同様の技術を採用することに格別の困難性は認められない。
そうすると、本件発明3は、引用発明1及び甲第2号証記載事項ないし甲第5号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
引用文献:甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証
本件特許の出願時の技術常識からみて、汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアを用いる際、オブジェクトをファイルとして、ファイルシステムで管理することは普通に行われていることである。
また、ファイルを所定のディレクトリに格納し管理することも普通に行われることであるから、引用発明1において、本件発明4の「アプリ構造体」に対応する構造体を、ファイルシステムにおける所定のディレクトリに格納し、構造体を構成する各オブジェクトをファイルとして管理することは、当業者が容易に想到することである。
そして、ファイルのインストールが行われているか否かを、そのファイルが格納されるディレクトリを参照することにより確認することも、普通に行われることである。
そうすると、本件発明4は、引用発明1及び甲第2号証記載事項ないし甲第4号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5について
引用文献:甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証
甲第1号証第64頁記載の「図2|SDCコンセプト」を参照すると、工場B、Cの情報プログラムが、工場B、C以外のエンティティである、「開発環境」で示されるエンティティ(本件発明5の「前記通信モジュールのエンドユーザ以外のエンティティ」に相当する。)から更新されていることが示されている。
そうすると、本件発明5は、引用発明1及び甲第2号証記載事項ないし甲第4号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明10について
引用文献:甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証
ア 対比
(ア)上記(1)(1-1)アで検討したように、引用発明1の「HXハイブリッドモデル」は、本件発明1の「通信モジュール」に対応するから、引用発明2の「HXハイブリッドモデル」は、本件発明10の「通信モジュール」に対応する。
(イ)引用発明2の「HXハイブリッドモデル」は、「各種ネットワーク機能」を備え、「制御ネットワークとしてEtherCATに対応」するとともに、「その他の制御ネットワーク」に対応可能であるから、このことは、本件発明10の「通信モジュール」が「異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェース」を有することに相当する。
(ウ)本件特許の出願時の技術常識を参酌すると、引用発明2の「クラウドシステム/上位システム」は、通常サーバにより構成されるものであるから、引用発明2の「クラウドシステム/上位システム」は、本件発明10の「サーバ」に相当する。
(エ)引用発明2の「OS」は、本件発明10の「OS(Operating System)」に相当する。
また、引用発明2の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、プログラムであるから「OS」上で実行されている。
そして、「制御ロジック」及び「情報プログラム」をアプリと呼ぶことは任意であるから、引用発明2の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、本件発明10の「第2アプリ」に相当する。
引用発明2の「HXハイブリッドモデル」は、リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、「EtherCAT」、「PROFINET」、「PROFIBUS」、「DeviceNet」、「FL-net」、「Modbus」などの「制御ネットワーク」を使用し、「制御ロジック」が、製造現場や設備・機械の動作を制御している。
また、引用発明2の「情報プログラム」が使用する「情報系ネットワーク」は、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有し、C/C++プログラムを使ってIP(Internet Protocol)の適用をスムーズに行うことも可能としているのであるから、引用発明2の「情報プログラム」は、IPの使用を前提として開発されたものである。
そうすると、引用発明2の「制御ロジック」及び「情報プログラム」は、本件発明10の「一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリ」に相当する。
そして、引用発明2の「情報プログラム」は、「最大4つの独立した情報コンテナで管理でき、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えることができる」プログラムであり、制御動作を行っている最中にも情報プログラムを書き換えるためには、プログラムのインストール及びアンインストールについて任意のタイミングで行うことが可能であることは明らかである。
そうすると、引用発明2の「情報プログラム」は、本件発明10の「任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリ」に相当する。
してみると、引用発明2の「HXハイブリッドモデル」が「汎用OS」及び、「制御ロジック(制御内容を記述したプログラム)と情報プログラムを備え」ることと、本件発明10の
「OS(Operating System)と、当該OS上で実行される第1アプリと、当該OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを有し、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」こととは、
「OS(Operating System)と、当該OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを有し、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリである」点で共通する。
(オ)引用発明2の「HXハイブリッドモデル」は、リアルタイム制御動作のための入力信号や出力信号のほか、製造現場で使用される機器を接続するために、「EtherCAT」、「PROFINET」、「PROFIBUS」、「DeviceNet」、「FL-net」、「Modbus」などの「制御ネットワーク」を使用しており、この「制御ネットワーク」を使用して「制御ロジック」は製造現場や設備・機械の動作を制御している。その際に、製造現場や設備・機械から必要なデータを受信しているから、この「制御ロジック」は、本件発明10の「第1の第2アプリが、当該第1の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、当該通信インターフェースに接続されている機器からデータを受信」することと同様の動作を行っている。
(カ)引用発明2は「情報系ネットワークについては、OPC UA(Object Linking and Embedding for Process Contorol Unified Architecture)サーバ機能を有しており、OPC UAサーバ機能を使って簡単に情報システムと双方向でデータを交換し」ており、このサーバ機能を使ったデータ交換は、本件発明10の「前記第1の第2アプリそれ自体又は別の第2アプリである第2の第2アプリが、当該第2の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、前記サーバにデータを送信する」ことに相当する。
(キ)引用発明2の「汎用プロセッサとOSというオープンなハードウェアを用いるHXハイブリッドモデルと、クラウドシステム/上位システムとを備え」るシステムは、通信を行っているシステムであるから、本件発明10の「通信システム」に対応する。
(ク)してみると、本件発明10と引用発明2とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースを有する通信モジュールと、
サーバと
を備え、
前記通信モジュールが、OS(Operating System)と、当該OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを有し、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
第1の第2アプリが、当該第1の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、当該通信インターフェースに接続されている機器からデータを受信し、
前記第1の第2アプリそれ自体又は別の第2アプリである第2の第2アプリが、当該第2の第2アプリに対応した通信プロトコルに従う通信が行われる通信インターフェース規格に対応した通信インターフェース経由で、前記サーバにデータを送信する、
通信システム。」
[相違点2]
本件発明10は「複数のプログラム」が
「前記複数のプログラムは、前記OS上で実行される第1アプリと、前記OS上で実行される一つ又は複数の第2アプリとを含み、
前記一つ又は複数の第2アプリのうちの一つ以上の第2アプリの各々は、一つ以上の通信インターフェース規格上での一つ以上の通信プロトコルに従う通信を行うアプリであり、且つ、任意にインストールされ任意にアンインストール可能なアプリであり、
前記第1アプリは、前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」
のに対して、引用発明2は、「複数のプログラム」について、上記「第2アプリ」に相当するプログラムの明示はあるものの、「前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである」、「第1アプリ」について明示されていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点2について、検討する。
上記(1)の(1-1)や(1-2)で検討したように、甲第2号証記載事項や、甲第3号証記載事項に基づいて、引用発明2に「前記OSと前記一つ又は複数の第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリ」を備えることとすることは、当業者が容易になしえることである。
そうすると、本件発明10は、引用発明2及び甲第2号証記載事項ないし甲第3号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 取消理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし5及び10は、甲第1号証ないし甲第5号証に基づいて当業者が容易に発明ができたものであるから、本件発明1ないし5及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、本件発明20は、令和3年8月27日に特許権者から提出された訂正請求書により、上記第2で検討した
「【請求項20】
異なる複数種類の通信インターフェース規格に対応した複数の通信インターフェースと、OS(Operating System)と、当該OS上で実行される第1アプリと監視アプリとを有する通信モジュールに、通信に使用される通信インターフェース規格に対応し当該OS上で実行され任意にアンインストール可能な第2アプリをインストールし、
前記OSと前記第2アプリとの間のミドルウェアとしてのアプリである第1アプリ経由で前記第2アプリについて設定された通信タイミングで、当該第2アプリが、当該第2アプリに対応した通信インターフェース規格上での通信プロトコルに従う通信を行い、
前記第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記通信モジュールが有するメモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する、
通信方法。」(下線は、訂正箇所を示す。)
と訂正された。
そして、上記「前記第2アプリのリソース使用量が前記OSにより前記通信モジュールが有するメモリに格納されるようになっており、
前記監視アプリが、
前記第2アプリのリソース使用量を前記第1アプリに問い合わせ、
当該問合せに応答して前記第1アプリにより前記メモリから取得され前記第1アプリから回答されたリソース使用量を表すデータを、前記第2アプリ経由又は非経由で、サーバに送信する」ことは、甲第1号証ないし甲第3号証には記載されておらず、又周知の事項であるともいえない。
そうすると、本件発明20は、甲第1号証ないし甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1ないし5及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、請求項20に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消することはできない。さらに、他に請求項20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700201