特許異議申立
2024-700548
分析プログラム、情報処理装置、および分析方法
- 審判番号
- 2024-700548
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-147399
- 登録番号
- 7421740
- 請求日
- 2024年06月10日
- 審決日
- 2025年12月11日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】Patentfield株式会社
- 【権利者代理人】北原 悠樹
- 【異議申立人】パテント・インテグレーション 株式会社
- 【異議申立人代理人】IPTech弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 山崎 慎一
- 審判官 脇岡 剛
- 分類
- P1651.113-YAA(G06F) / P1651.121-YAA(G06F) / P1651.161-YAA(G06F) / P1651.536-YAA(G06F) / P1651.537-YAA(G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7421740号発明「分析プログラム、情報処理装置、および分析方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7421740号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、13、14について訂正することを認める。
特許第7421740号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7421740号の請求項1ないし14に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年9月12日に出願されたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和5年10月20日付け:特許査定
令和6年 1月17日 :特許権の設定登録
同年 1月25日 :特許掲載公報の発行
同年 6月10日 :特許異議の申立て(特許異議申立書の提出)
(特許異議申立人 パテント・インテグレーション株式会社)
同年 7月 5日 :手続補正書の提出(特許異議申立人)
同年11月 7日付け:取消理由通知
令和7年 1月 7日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 3月 7日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 4月 8日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年 6月 5日付け:取消理由通知
同年 8月 7日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 9月30日付け:訂正請求があった旨の通知
上記令和7年9月30日付けの通知で、特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかった。
なお、令和7年1月7日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2.訂正請求について
1.訂正の趣旨
令和7年8月7日提出の訂正請求書における訂正(以下、上記訂正請求書及び訂正について、それぞれ「本件訂正請求書」及び「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7421740号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」(本件訂正請求書第1頁)というものである。
2.本件訂正前の特許請求の範囲
本件特許権の設定登録時の特許請求の範囲は次のとおりである。なお、分説のために特許異議申立書(第14頁ないし17頁)に記載された符号(1A)ないし(14F)を付した。
「【請求項1】
(1A)特許情報の分析プログラムであって、
(1B)前記分析プログラムは、コンピュータに、 技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
(1C)前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
(1D)2つの情報の関連性を特定の観点から評価するための所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
(1E)前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを実行させる、
(1F)分析プログラム。
【請求項2】
(2A)前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を複数の観点から評価するよう規定されており、
(2B)前記出力するステップでは、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果が前記複数の観点の各々について出力される、
(2C)請求項1に記載の分析プログラム。
【請求項3】
(3A)前記複数の観点は、
(3B) 技術分野の観点と、
(3C) 課題の観点と、
(3D) 作用機能の観点と、
(3E) 内容示唆の観点と、
(3F) パラメータの観点と、
(3G) 数値限定の観点と、
(3H) 技術用語の観点との内の少なくとも1つを含む、
(3I)請求項2に記載の分析プログラム。
【請求項4】
(4A)前記分析プログラムは、前記コンピュータに、
(4B)さらに、前記観点の別の前記評価結果を纏めた総合評価結果を出力するステップを実行させる、
(4C)請求項2または3に記載の分析プログラム。
【請求項5】
(5A)前記複数の観点の各々には、重みが関連付けられており、
(5B)前記総合評価結果は、前記観点の別の前記評価結果に対して前記重みを付けて算出される、
(5C)請求項4に記載の分析プログラム。
【請求項6】
(6A)前記所定の指示文は、
(6B) 前記2つの情報の関連度を前記大規模言語モデルに出力させるための指示と、
(6C) 前記関連度の評価理由を前記大規模言語モデルに出力させるための指示とを含み、
(6D)前記評価結果は、
(6E) 前記技術情報と前記特許情報とに係る前記関連度と、
(6F) 前記技術情報と前記特許情報とに係る前記評価理由とを含む、
(6G)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項7】
(7A)前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
(7B)前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力を受け付けるステップを実行させ、
(7C)前記指定するステップは、さらに、前記概念レベルに関する入力を前記指示文に反映することを含む、
(7D)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項8】
(8A)前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
(8B)前記評価結果がディスプレイに表示されている際に、前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力を受け付けるステップと、
(8C)前記概念レベルに関する入力を反映した再評価のための指示文を生成するステップと、
(8D)前記再評価のための指示文を前記大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果を出力するステップとを実行させる、
(8E)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項9】
(9A)前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
(9B)予め定められたアルゴリズムに基づいて、前記技術情報と前記特許情報との類似度を算出するステップを実行させ、
(9C)前記評価結果は、前記大規模言語モデルから得られる前記結果と、前記類似度とに基づいて、前記観点の別に出力される、
(9D)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項10】
(10A)前記複数の観点は、 第1の観点と、 前記第1の観点とは異なる第2の観点とを含み、
(10B)前記大規模言語モデルは、
(10C) 第1の言語モデルと、 前記第1の言語モデルとは異なる第2の言語モデルとを含み、
(10D)前記第1の観点で前記技術情報と前記特許情報との関連性を評価するための前記指示文は、前記第1の言語モデルに入力され、
(10E)前記第2の観点で前記技術情報と前記特許情報との関連性を評価するための前記指示文は、前記第2の言語モデルに入力される、請求項2または3に記載の分析プログラム。
【請求項11】
(11A)前記技術情報は、図面を含み、
(11B)前記特許情報は、図面を含み、
(11C)前記観点は、図面の内容の観点を含む、
(11D)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項12】
(12A)前記指示文は、 前記2つの情報の関連性を特定の観点で評価させるための第1の指示と、
(12B)前記第1の指示に基づく前記2つの情報の関連性の評価結果を用いて、当該2つの情報の関連性を前記特定の観点でさらに評価させるための第2の指示とを含む、
(12C)請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項13】
(13A)特許情報を分析することが可能な情報処理装置であって、
(13B)前記情報処理装置をするための制御部を備え、
(13C)前記制御部は、
(13D) 技術的思想を含む技術情報を取得する処理と、
(13E) 前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得する処理と、
(13F) 2つの情報の関連性を観点から評価するための所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定する処理と、
(13G) 前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、
(13H)前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する処理とを実行する、
(13I)情報処理装置。
【請求項14】
(14A)コンピュータによって実行される特許情報の分析方法であって、
(14B) 技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
(14C) 前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
(14D) 2つの情報の関連性を複数の観点から評価するための所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
(14E) 前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを備える、
(14F)分析方法。」
3.本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲
本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【請求項1】
特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを実行させる、分析プログラム。
【請求項2】
前記特定の観点は、複数の観点を含み、
前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されており、
前記出力するステップでは、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果が前記複数の観点の各々について出力される、請求項1に記載の分析プログラム。
【請求項3】
前記複数の観点は、技術分野の観点と、課題の観点と、作用機能の観点と、内容示唆の観点と、パラメータの観点と、数値限定の観点と、技術用語の観点との内の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の分析プログラム。
【請求項4】
前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
前記観点別の前記評価結果を纏めた総合評価結果を出力するステップを実行させる、
請求項2または3に記載の分析プログラム。
【請求項5】
前記複数の観点の各々には、重みが関連付けられており、
前記総合評価結果は、前記観点別の前記評価結果に対して前記重みを付けて算出される、請求項4に記載の分析プログラム。
【請求項6】
前記所定の指示文は、
前記2つの情報の関連度を前記大規模言語モデルに出力させるための指示と、
前記関連度の評価理由を前記大規模言語モデルに出力させるための指示とを含み、
前記評価結果は、
前記技術情報と前記特許情報とに係る前記関連度と、
前記技術情報と前記特許情報とに係る前記評価理由とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項7】
前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力を受け付けるステップを実行させ、
前記指定するステップは、さらに、前記概念レベルに関する入力を前記指示文に反映することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項8】
前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
前記評価結果がディスプレイに表示されている際に、前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力を受け付けるステップと、
前記概念レベルに関する入力を反映した再評価のための指示文を生成するステップと、
前記再評価のための指示文を前記大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果を出力するステップとを実行させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項9】
前記分析プログラムは、前記コンピュータに、さらに、
予め定められたアルゴリズムに基づいて、前記技術情報と前記特許情報との類似度を算出するステップを実行させ、
前記評価結果は、前記大規模言語モデルから得られる前記結果と、前記類似度とに基づいて、前記観点の別に出力される、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項10】
前記複数の観点は、
第1の観点と、
前記第1の観点とは異なる第2の観点とを含み、
前記大規模言語モデルは、
第1の言語モデルと、
前記第1の言語モデルとは異なる第2の言語モデルとを含み、
前記第1の観点で前記技術情報と前記特許情報との関連性を評価するための前記指示文は、前記第1の言語モデルに入力され、
前記第2の観点で前記技術情報と前記特許情報との関連性を評価するための前記指示文は、前記第2の言語モデルに入力される、請求項2または3に記載の分析プログラム。
【請求項11】
前記技術情報は、図面を含み、
前記特許情報は、図面を含み、
前記観点は、図面の内容の観点を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項12】
前記指示文は、
前記2つの情報の関連性を特定の観点で評価させるための第1の指示と、
前記第1の指示に基づく前記2つの情報の関連性の評価結果を用いて、当該2つの情報の関連性を前記特定の観点でさらに評価させるための第2の指示とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析プログラム。
【請求項13】
特許情報を分析することが可能な情報処理装置であって、
前記情報処理装置を制御するための制御部を備え、
前記制御部は、
技術的思想を含む技術情報を取得する処理と、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得する処理と、
特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定する処理と、
前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する処理とを実行する、情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータによって実行される特許情報の分析方法であって、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
複数の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを備える、分析方法。」
4.訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するための所定の指示文」と記載されているのを、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~12も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を複数の観点から評価するよう規定されており」と記載されているのを、「前記特定の観点は、複数の観点を含み、前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されており」に訂正する(請求項2を引用する請求項3~12も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、「前記観点の別の前記評価結果を纏めた総合評価結果を出力するステップ」と記載されているのを、「前記観点別の前記評価結果を纏めた総合評価結果を出力するステップ」に訂正する(請求項4を引用する請求項5も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5において、「前記総合評価結果は、前記観点の別の前記評価結果に対して前記重みを付けて算出される」と記載されているのを、「前記総合評価結果は、前記観点別の前記評価結果に対して前記重みを付けて算出される」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13において、「前記情報処理装置をするための制御部」と記載されているのを、「前記情報処理装置を制御するための制御部」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13において、「2つの情報の関連性を観点から評価するための所定の指示文」と記載されているのを、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14において、「2つの情報の関連性を複数の観点から評価するための所定の指示文」と記載されているのを、「複数の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」に訂正する。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし12について、請求項2ないし12はそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし12に対応する訂正後の請求項1ないし12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
5.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1について、「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するための所定の指示文」と記載されていたものを、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」と限定するものであるから、当該訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に係る訂正は、本件設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落0041の記載に基づくものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2について、「前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を複数の観点から評価するよう規定されており」と記載されていたものを、「前記特定の観点は、複数の観点を含み、前記所定の指示文は、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されており」と限定するものであるから、当該訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、訂正事項2は、訂正後の請求項1に整合させるための訂正であるから、当該訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項2に係る訂正は、発明特定事項を限定するもの、または明瞭でない記載を釈明するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書の段落0047の記載に基づくものであるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア.訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4における「前記観点の別の前記評価結果」との記載を「前記観点別の前記評価結果」に訂正するものであり、「別の前記評価結果」が存在するように読み取れる余地を排除するものであるから、当該訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項3に係る訂正は、「別の前記評価結果」が存在するように読み取れる余地を排除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書の段落0111の記載に基づくものであるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア.訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5における「前記観点の別の前記評価結果」との記載を「前記観点別の前記評価結果」に訂正するものであり、「別の前記評価結果」が存在するように読み取れる余地を排除するものであるから、当該訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項4に係る訂正は、「別の前記評価結果」が存在するように読み取れる余地を排除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書の段落0126の記載に基づくものであるから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア.訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項13について、「前記情報処理装置をするための制御部」と記載されていたものを、「前記情報処理装置を制御するための制御部」と訂正するものであり、明白な誤記を訂正するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項5に係る訂正は、明白な誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5に係る訂正は、本件特許明細書の段落0063の記載に基づくものであるから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア.訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項13について、「2つの情報の関連性を観点から評価するための所定の指示文」と記載されていたものを、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」と限定するものであるから、当該訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項6に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6に係る訂正は、本件特許明細書の段落0041の記載に基づくものであるから、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7
ア.訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項14について、「2つの情報の関連性を複数の観点から評価するための所定の指示文」と記載されていたものを、「複数の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記複数の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」と限定するものであるから、当該訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項7に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7に係る訂正は、本件特許明細書の段落0041の記載に基づくものであるから、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(8)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
6.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1ないし14について訂正することを認める。
第3.本件特許発明
上記第2.のとおり、本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明14」という。)は、上記第2.2に記載した事項によって特定されるとおりのものである。
第4.特許異議の申立ての理由の概要及び証拠方法について
1.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人による特許異議の申立ての理由の概要は、以下のとおりと認められる。(特許異議申立書第1頁ないし第14頁、第113頁ないし第114頁)
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
ア.本件特許発明1、本件特許発明13、本件特許発明14は、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、あるいは、甲D6号証に開示された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
イ.本件特許発明2は、甲B3号証、甲D5号証、あるいは、甲D6号証に開示された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
ウ.本件特許発明3は、甲B3号証に開示された発明と同一であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。
エ.本件特許発明4は、甲D5号証、あるいは、甲D6号証に開示された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
オ.本件特許発明6は、甲D4号証、甲D5号証、あるいは、甲D6号証に開示された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
ア.本件特許発明1、13、14は、以下の(ア)ないし(イ)のとおりであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(ア)甲B3号証に開示された発明、甲D4号証に開示された発明、あるいは、甲D6号証に開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)甲D5号証に開示された発明及び甲F1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ.本件特許発明2は、以下の(ア)ないし(エ)のとおりであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(ア)甲B3号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)甲D4号証に開示された発明、及び、甲A1号証、甲B3号証、甲D5号証、甲E1号証、甲E2号証、甲G1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)甲D5号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)甲D6号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ.本件特許発明3は、以下の(ア)ないし(エ)のとおりであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(ア)甲B3号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)甲D4号証に開示された発明、及び、甲A1号証、甲B3号証、甲D5号証、甲E1号証、甲E2号証、甲G1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)甲D5号証に開示された発明、及び、甲A1号証、甲B3号証、甲D5号証、甲E1号証、甲E2号証、甲G1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)甲D6号証に開示された発明、及び、甲A1号証、甲B3号証、甲D5号証、甲E1号証、甲E2号証、甲G1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.本件特許発明4、5は、以下の(ア)ないし(エ)のとおりであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(ア)甲B3号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)甲D4号証に開示された発明、及び、甲A1号証、甲B3号証、甲D5号証、甲E1号証、甲E2号証、甲G1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)甲D5号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)甲D6号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ.本件特許発明6は、甲D4号証に開示された発明、甲D5号証に開示された発明、あるいは、甲D6号証に開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
カ.本件特許発明7ないし12は、甲B3号証に開示された発明、甲D4号証に開示された発明、甲D5号証に開示された発明、あるいは、甲D6号証に開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)申立理由3(特許法第36条第6項)
ア.「本件特許発明7の構成(7B)、(7C)において、「概念レベル」という用語の意味内容が不明確である(特許実用新案審査基準第II部 第2章 第3節 明確性要件 2.2類型(1)b)。明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、「概念レベル」が具体的にどのようなものを指すのか理解できない。
本件特許発明7の構成(7B)、(7C)において、「概念レベル」の技術的意味が理解できず、出願時の技術常識を考慮すると「概念レベル」に関する発明特定事項が不足している。「概念レベル」が技術情報と特許情報との比較においてどのように用いられるのかが不明確である(2.2類型(2)b)。
本件特許発明7の構成(7B)、(7C)において、「概念レベル」と他の発明特定事項(技術情報、特許情報、指示文など)との技術的な関連が不明確である。「概念レベル」がどのように他の発明特定事項と関連しているのか、それらの間にどのような技術的関連があるのか不明確である(2.2類型(2)d)。」
イ.「本件特許発明7の(7B)、(7C)と同様に、本件特許発明8の構成(8B)「概念レベル」という用語の意味内容が不明確である(特許実用新案審査基準第II部 第2章 第3節 明確性要件 2.2類型(1)b、(2)b、(2)d)。
本件特許発明8の構成(8C)にかかる「前記概念レベルに関する入力を反映した再評価のための指示文を生成するステップ」において、「概念レベル」と「指示文」との関係が不明確である。「概念レベル」をどのように指示文に反映させるのかが明らかでなく、両者の関係が不明確である(2.2類型(2)c)。」
ウ.「本件特許発明9の構成(9B)において、「予め定められたアルゴリズム」という用語の意味内容が不明確である。明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、「予め定められたアルゴリズム」が具体的にどのようなアルゴリズムを指すのか理解できない(2.2類型(1)b)。
本件特許発明9の構成(9B)において、「予め定められたアルゴリズム」の技術的意味が理解できず、出願時の技術常識を考慮すると「予め定められたアルゴリズム」に関する発明特定事項が不足していることが明らかな場合に該当する。具体的に、「予め定められたアルゴリズム」がどのように類似度を算出するのかが不明確である(2.2類型(2)b)。
本件特許発明9の構成(9C)において、「前記大規模言語モデルから得られる前記結果」と「前記類似度」の関係が不明確である。両者をどのように組み合わせて評価結果を出力するのかが明らかでなく、両者の関係が不明確である((2.2類型(2)c))。」
2.証拠方法
甲A1号証:”DWPI(Derwent World Patents Index)のような構造化抄録を作成する機能【サマリア】”、note株式会社、令和5年9月6日(掲載日)、<URL: https://note.com/ose_yosshy/n/nc186e6621401>
甲B1号証:”「サマリア」機能アップデート(2023-08-21)”、よろず知財戦略コンサルティング、令和5年8月22日(掲載日)、<URL: https://yorozuipsc.com/blog/2023-08-21>
甲B2号証:”クイックアシスト、一括処理ツール、その他改良”、パテント・インテグレーション株式会社、令和5年8月21日(掲載日)、<URL: https://patent-i.com/summaria/manual/R_20230821>
甲B3号証:”サマリア 20230821 アップデート”、YouTube、令和5年8月21日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/LDXy-4mzoO4>
甲C1号証:”特許読解アシスタント「サマリア」の分類作成機能を利用した特許文書の読み込みサポート”、note株式会社、令和5年8月4日(掲載日)、<URL: https://note.com/ose_yosshy/n/n0be0d8beae65>
甲D1号証:”特許読解アシスタント「サマリア」に知財実務を支援する革新的な3つの機能が追加【サービス無料提供中】”、株式会社PR TIMES、令和5年7月27日(掲載日)、<URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000086119.html>
甲D2号証:”スクリーニング支援、分類支援、発明評価支援機能”、パテント・インテグレーション株式会社、令和5年7月26日(掲載日)、<URL: https://patent-i.com/summaria/manual/R_20230726>
甲D3号証:”サマリア 20230726 アップデート”、YouTube、令和5年7月26日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/J_RxZJmUZ2E>
甲D4号証:”特許スクリーニング支援機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア”、YouTube、令和5年7月26日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/Dz9ZSrB6nwI>
甲D5号証:”分類支援機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア”、YouTube、令和5年7月26日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/vPz7f9PIgYI>
甲D6号証:”発明評価支援機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア”、YouTube、令和5年7月26日(掲載日)、<URL: https://www.youtube.com/watch?v=UjnMOUwHbGY>
甲E1号証:”サマリア 20230705 アップデート”、YouTube、令和5年7月5日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/aZHIQe-jQaw>
甲E2号証:”クイックアシスト機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア”、YouTube、令和5年7月5日(掲載日)、<URL: https://youtu.be/JLfJz6if5NQ>
甲F1号証:”サマリア 20230606 アップデート”、YouTube、令和5年6月6日(掲載日)、<URL:https://youtu.be/WD_WFQ6OWMc>
甲F2号証:”複数の特許文書に跨がった質問に対応、文末表現が「である」調”、パテント・インテグレーション株式会社、令和5年6月6日(掲載日)、<URL:https://patent-i.com/summaria/manual/R_20230606>
甲G1号証:”特許・実用新案審査基準第III部第2章第2節進歩性”、特許庁、令和2年12月(掲載日)、<URL:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202.pdf>
第5.取消理由について
令和6年11月7日付けで通知した取消理由(取消理由1ないし4)、及び、令和7年6月5日付けで通知した取消理由(取消理由5)の概要は次のとおりである。
1.取消理由1
(進歩性)請求項1、6、13、14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲D4号証及び甲D1号証、あるいは、甲D5号証及び甲D1号証に開示された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2.取消理由2
(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「請求項4の「前記観点の別の前記評価結果を纏めた」とは、「前記観点」について出力される「評価結果」と「別の前記評価結果」とを纏めることであるといえるところ、引用元の請求項2の「評価結果が前記複数の観点の各々について出力される」との事項によると、「前記観点」については、一の評価結果が出力されるものであって、「別の前記評価結果」は存在しないものと解される。よって、請求項4における「別の前記評価結果」の技術内容は明確ではない。」
3.取消理由3
(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「本件明細書では、段落0111において「観点別の評価結果を纏めた」ことが記載されているところ、「前記観点の別の前記評価結果を纏めた」ことに関する具体的な技術内容は、本件明細書には記載されておらず、本件出願時の技術常識であるともいえない。したがって、発明の詳細な説明は、「前記観点の別の前記評価結果を纏めた」ことについて、当業者が実施可能な程度に記載したものとはいえない。」
4.取消理由4
(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「本件明細書の記載によると、発明の解決しようとする課題は、「大規模言語モデルを特許情報の分析に利用し、新たな価値を提供する」(段落0005)ことであって、また、上記課題を解決する手段には、「技術情報123および特許情報125の関連性をどのような観点で評価するか規定」したものを大規模言語モデルに入力する「指示文」として用いることが含まれていると認められる。
他方、請求項1、7ないし14に係る発明には、上記●理由1(1)で説示したとおり、大規模言語モデルに入力する「指示文」として「所定の指示文」を用いることが規定されているものの、上記課題を解決するための手段である、「技術情報123および特許情報125の関連性をどのような観点で評価するか規定」した「指示文」が反映されているとはいえず、また、当該事項は、本件出願時における技術常識から自明なものともいえない。
また、請求項6に係る発明には、「前記2つの情報の関連度を前記大規模言語モデルに出力させるための指示と、前記関連度の評価理由を前記大規模言語モデルに出力させるための指示」とを含む「指示文」を用いることが規定されているものの、上記課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。
してみると、上記事項が反映されていない請求項1、6ないし14の記載は、発明の詳細な説明の記載や示唆又は本件出願時の技術常識に照らし、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
したがって、請求項1、6ないし14に係る発明は、本件出願時における技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものではないから、発明の詳細な説明に記載したものでない。」
5.取消理由5
(拡大先願)本件特許の請求項1ないし4、6、13、14に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた以下の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、上記請求項に係る発明は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
先願:特願2023-099801号(特許第7542812号)
第6.当審の判断
1.甲号証及び先願明細書等の開示事項
(1)甲A1号証の開示事項
甲A1号証には、次の事項が開示されていると認められる。
「「構造化抄録」機能では、複雑な操作なしに特許公報(明細書)の記載内容に基づいて自動的に「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」を抽出した「要約(サマリ)」を生成する機能です。
この機能により、発明の概要を、様々な観点から立体的に把握することができます。また、「構造化抄録」では、技術分野、用途、課題、解決手段、効果などの項目ごとに生成文書をダウンロードすることができるため、様々な資料で再利用する際も利便性よく活用することができます。」
(2)甲B3号証の開示事項
甲B3号証には、次の発明(以下、「甲B3発明」という。)が開示されていると認められる。
「特許情報サービス「サマリア」は、特許文書間の比較支援サービスを提供する分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第2特許文書(技術情報)であって、技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第1特許文書(特許情報)を取得するステップと、
2つの情報(第1特許文書と第2特許文書)の関連性を「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」等の項目についてまとめて整理して表示するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報との関連性を「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」の項目の各々について出力するステップとを実行させる、
分析プログラム。」
(ホームページ、文字起こし00:00ないし12:55、画面06:03、06:49、07:06)
(3)甲D1号証の開示事項
甲D1号証には、次の技術(以下、「甲D1技術」という。)が開示されていると認められる。
「特許読解アシスタント「サマリア」において、大規模言語モデル(LLM)を用い、「製品仕様」「対象発明」の入力に応じて、「関連度」、「理由」、「相違点」を回答するスクリーニング支援機能、及び、ユーザ独自の「分類定義」の入力に応じて、特許文献に対する「分類」、「関連度」、「検討結果」を回答する分類支援機能、を追加したこと。」
(4)甲D4号証の開示事項
甲D4号証は、「特許スクリーニング支援機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア」とのタイトルが付されたYouTube動画のホームページであって、次の発明(以下、「甲D4発明」という。)が開示されていると認められる。
なお、以下、「(ホームページ)」は、当該ホームページの画像を示すものであり、「(画面01:01)」は、当該ホームページに掲載された動画の再生開始から所定経過時間(1分1秒時点)における動画像の画面を示すものであり、また、「(文字起こし01:01から01:50)」は、同再生開始から所定経過時間(1分1秒から1分50秒)における動画像の音声について、YouTube動画の「文字起こし機能」によって当該ホームページ上に表示されたテキストを示すものである。
「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラムであって、
自社や他社の製品仕様を取得するステップと、
特許文書を取得するステップと、
関連性の検討の対象となる自社や他社の製品仕様、及び、特許文書を指定するステップと、
自社や他社の製品仕様と特許文書との関連性を検討し、関連度、関連度の算定理由・相違点に関する回答を出力するステップと、
を備えるプログラム。」
(ホームページ、文字起こし00:00から01:00、01:04から02:19、02:30から03:26、03:29から04:18、画面02:13、03:06、03:45など。)
(5)甲D5号証の開示事項
甲D5号証は、「分類支援機能|特許文書読解支援アシスタント・サマリア」とのタイトルが付されたYouTube動画のホームページであって、次の発明(以下、「甲D5発明」という。)が開示されていると認められる。
「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラムであって、
分類名及び分類定義を取得するステップと、
特許文書を取得するステップと、
解析対象となる分類名及び分類定義と、特許文書とを指定するステップと、
分類名及び分類定義と、特許文書とに基づいて、関連度、分類理由に関する回答を出力するステップと、
を備えるプログラム。」
(ホームページ、文字起こし00:00から01:19、01:22から02:09、02:13から04:08、04:08から05:11、画面01:42、03:19、03:38、03:56)
(6)甲D6号証の開示事項
甲D6号証には、次の発明(以下、「甲D6発明」という。)が開示されていると認められる。
「特許情報サービス「サマリア」は、特許文書の解析支援サービスを提供する分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、特許情報サービス「サマリア」の画面上で入力された評価項目ごとの評価基準であって、例えば「独創性・革新性」に関して「A:従来技術なし、B:複数の従来技術により構成示されるが示唆なし、C:組み合わせにより直接関連ある複数の従来技術あり、D:直接関連ある単独の従来技術あり」等の技術的思想を含む評価基準を取得するステップと、
特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第1特許文書(特許情報)を取得するステップと、
前記特許情報を「独創性・革新性」「発明の効果」「他社実施可能性」「侵害発見性」等の複数の評価項目で評価するために、前記特許情報において評価する箇所を指定するステップと、
前記特許情報について前記評価項目ごとの評価基準に従い評価し、前記評価項目ごとの評価ランクと評価理由を出力するステップとを実行させる、
分析プログラム。」
(ホームページ、文字起こし00:00ないし02:27、画面00:56、01:46、02:34、02:55)
(7)甲E1号証の開示事項
甲E1号証には、次の事項が開示されていると認められる。
「日本語の公報の「発明が解決しようとする課題」と「課題を解決するための手段」というところを抽出して、そちらを分かりやすく解説するための専用機能となっております。
もう一つ、この「発明の課題と解決手段を説明して(全文解析)」とあるんですが、こちらは特定の「課題解決手段」のところのフィールド以外の全部に基づいて課題とか解決手段というのを把握して説明してくれるような機能」
(ホームページ、文字起こし00:00ないし11:48、画面00:20、11:48)
(8)甲E2号証の開示事項
甲E2号証には、次の事項が開示されていると認められる。
「「課題解決手段をわかりやすく説明して」です。こちらは日本語の特許の発明が解決しようとする課題と、課題を解決するための手段というところを抽出し、それらを分かりやすく解説するための専門機能となっております。
「この発明の課題と解決手段を説明して(全文解析)」という機能もあります。こちらは特定の課題解決手段のフィールド以外の全部に基づいて、課題や解決手段を把握して説明してくれます。」
(ホームページ、文字起こし00:00ないし01:10、画面01:05)
(9)甲F1号証の開示事項
甲F1号証には、次の事項が開示されていると認められる。
「複数の特許文献、特許文書を読み込んで、比較させたりとか、それぞれについてまたがるような質問というのをAIアシスタントに行わせることができるようになりました。
…
特許文書1の「設定手段」と、特許文書2の「キャラクター予約部」っていうのがまあ一致してたり相違するのをどこ一致してどこ相違するのかっていうのを聞いてみましょうということで、こういった形で簡単に特許文書を指定するだけで質問文を作成することができます。」
(ホームページ、文字起こし00:00ないし07:34)
(10)甲G1号証の開示事項
甲G1号証には、次の事項が開示されていると認められる。
「主引用発明に副引用発明を適用する動機付けの判断指標の観点に「技術分野の関連性」「課題の共通性」「作用、機能の共通性」「引用発明の内容中の示唆」が含まれること」及び「「数値範囲の最適化又は好適化」など、進歩性にかかる審査における発明を評価する際の評価観点」
(第3頁、第8頁)
(11)先願明細書等の記載事項
先願の出願当初の明細書及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「特許文書に対して実行されるタスクに応じたプロンプトを生成し、生成したプロンプトを大規模言語モデルに送信し、大規模言語モデルから上記プロンプトに対する回答を受信して提示するプログラムであって、
特許文書に対して実行されるタスクとして「スクリーニング」を受け付けると、
『以下の「ターゲット発明」に記載された発明が、以下の「対象特許」に記載された発明に記載されているか否かの検討をしてください。ターゲット発明と対象特許との関連度を0~100の間で算定してください。そのように判断した理由を出力してください。
#ターゲット発明:<クエリ>(・・・手段と、・・・手段と、・・・を備える装置)
#対象特許:<抽出文書>(特許文書のうち要約書、特許請求の範囲、明細書の箇所(内容))』等のタスクデータを取得し、
特許文書に対して適用されるクエリとして、『・・手段と、・・・手段と、・・・を備える装置』等のターゲット発明を表すクエリを受け付け、
特許文書を取得し、
上記タスクデータの記述のうち、「<クエリ>」をクエリで、「<抽出文書>」を特許文書で置換することにより、
『以下の「ターゲット発明」に記載された発明が、以下の「対象特許」に記載された発明に記載されているか否かの検討をしてください。ターゲット発明と対象特許との関連度を0~100の間で算定してください。そのように判断した理由を出力してください。
#ターゲット発明:
・・・手段と、・・・手段と、・・・を備える装置#対象特許:
〔要約書〕
・・・
〔特許請求の範囲〕
・・・
〔明細書〕
・・・』等のプロンプトを生成し、
生成したプロンプトを大規模言語モデルに送信し、大規模言語モデルから、
『#関連度:40#理由:
ターゲット発明は、対象特許と、・・・の観点で一致しており、・・・の観点で相違する。
相違する部分が大きく、対象特許との関連度は40程度である。』等の回答を受信し、受信した回答を提示する
プログラム」
(段落0005、0009、0023、0037、0076、0082、0083、0085ないし0090、0100ないし0102、0104、0105、0107ないし0111、0122ないし0124、図13)
2.取消理由1について
(1)本件特許発明1について
ア.甲D4号証を主引例とした進歩性欠如について
(ア)対比
本件特許発明1と甲D4発明とを対比する。
a.甲D4発明の「特許文書」は、本件特許発明1の「特許情報」に相当する。また、甲D4発明の「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラム」は、自社や他社の製品仕様と特許文書との関連性を検討するものであるから、特許文書の分析に係るプログラムといえる。よって、甲D4発明の「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラム」は、本件特許発明1の「特許情報の分析プログラム」に相当する。
b.甲D4発明の「自社や他社の製品仕様」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報」に相当する。また、甲D4発明の「自社や他社の製品仕様を取得するステップ」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報を取得するステップ」に相当する。
c.甲D4発明の「特許文書を取得するステップ」は、本件特許発明1の「前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップ」に相当する。
d.コンピュータを用いて算出される関連度は、特定の観点(例えば、類似性、共起性など)に基づく関連度であることが、本件出願時の技術常識である。そうすると、甲D4発明において、「関連性の検討の対象となる自社や他社の製品仕様、及び、特許文書を指定する」ことは、特定の観点から製品仕様の情報と特許文書の情報という2つの情報の関連度(関連性)を評価するためになされる処理といえる。よって、甲D4発明の「関連性の検討の対象となる自社や他社の製品仕様、及び、特許文書を指定するステップ」と、本件特許発明1の「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」とは、「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」である点において共通する。
e.本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」とは、「2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価する」との事項をふまえると、「前記技術情報と前記特許情報との関連性を前記特定の観点から評価した評価結果を前記観点について出力する」ことであると解される。そして上記dにおいて説示した技術常識によると、甲D4発明の「自社や他社の製品仕様と特許文書との関連性を検討し、関連度、関連度の算定理由・相違点に関する回答を出力する」することは、特定の観点から製品仕様の情報と特許文書の情報という2つの情報の関連度(関連性)を評価し、関連度(関連性)を示す評価結果を前記観点について出力することであるといえるから、甲D4発明の「自社や他社の製品仕様と特許文書との関連性を検討し、関連度、関連度の算定理由・相違点に関する回答を出力するステップ」と、本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」とは、「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」である点において共通する。
f.したがって、本件特許発明1と甲D4発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
2つの情報の関連性を特定の観点から評価するために前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを実行させる、分析プログラム。」
【相違点】
(相違点D4-1)
本件特許発明1における技術情報と特許情報との指定は、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」に対して指定するものであるのに対して、甲D4発明における技術情報と特許情報との指定では、上記「指示文」に係る事項が特定されていない点。
(相違点D4-2)
本件特許発明1における評価結果の出力は、「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果」に基づくものであるのに対して、甲D4発明における評価結果の出力は、「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果」に基づくものであることが具体的に特定されていない点。
(イ)判断
まず、相違点D4-1を検討する。
甲D4号証は、「特許文書読解支援アシスタント・サマリア」の「特許スクリーニング支援機能」に関して説明したものであるから、甲D4発明は、「特許文書読解支援アシスタント・サマリア」の「特許スクリーニング支援機能」に係る発明であるといえる。そして、甲D1技術は、当該「サマリア」において、大規模言語モデル(LLM。以下、「LLM」という。)を用い、「製品仕様」「対象発明」の入力に応じて、「関連度」、「理由」、「相違点」を回答するスクリーニング支援機能を追加するものであるから、「製品仕様」「対象発明」の入力に応じて、「関連度」、「理由」、「相違点」を回答するという、甲D4発明における「特許スクリーニング支援機能」に関する構成には、LLMを用いていることを示すものと認められる。
ここで、LLMでは、ユーザからの入力、処理内容、あるいは、出力に関する事項を、自然言語の指示文として入力することが、本件出願時の技術常識であることからすると、甲D4発明において、LLMを用いた際に、ユーザから入力である「前記技術情報と前記特許情報を指定する」ことに係る構成として、「指示文」を用いて「前記技術情報と前記特許情報とを指定する」ことは、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
しかし、上記「指示文」として、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」を用いることは、甲D4号証、甲D1号証に開示あるいは示唆されておらず、本件特許出願時の技術常識であるともいえないことからすると、甲D4発明の「指示文」として、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」を用いることは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、相違点D4-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲D4号証及び甲D1号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.甲D5号証を主引例とした進歩性欠如について
(ア)対比
本件特許発明1と甲D5発明とを対比する。
a.甲D5発明の「特許文書」は、本件特許発明1の「特許情報」に相当する。また、甲D5発明の「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラム」は、分類名及び分類定義と、特許文書とに基づいて、関連度、分類理由を解析するものであるから、特許文書の分析に係るプログラムといえる。よって、甲D5発明の「人工知能技術を用いたAIアシスタントとして、コンピュータによって実行されるプログラム」は、本件特許発明1の「特許情報の分析プログラム」に相当する。
b.甲D5発明の「分類名及び分類定義」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報」に相当する。また、甲D5発明の「分類名及び分類定義を取得するステップ」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報を取得するステップ」に相当する。
c.甲D5発明の「特許文書を取得するステップ」は、本件特許発明1の「前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップ」に相当する。
d.コンピュータを用いて算出される関連度は、特定の観点(例えば、類似性、共起性など)に基づく関連度であることが、本件出願時の技術常識である。そして、甲D5発明における「解析対象」とは、「関連度」を得るための対象であると解されることからすると、甲D5発明の「解析対象となる分類名及び分類定義と、特許文書とを指定するステップ」は、特定の観点から、分類名及び分類定義と、特許文書とに基づく関連度(関連性)を評価するためになされる処理といえる。よって、甲D5発明の「解析対象となる分類名及び分類定義と、特許文書とを指定するステップ」と、本件特許発明1の「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」とは、「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」である点において共通する。
e.本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」とは、「2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価する」との事項をふまえると、「前記技術情報と前記特許情報との関連性を前記特定の観点から評価した評価結果を前記観点について出力する」ことであると解される。そして、上記dにおいて説示した技術常識によると、甲D5発明の「分類名及び分類定義と、特許文書とに基づいて、関連度、分類理由に関する回答を出力する」ことは、特定の観点から、分類名及び分類定義と、特許文書とに基づく関連度(関連性)を評価し、関連度(関連性)を示す評価結果を前記観点について出力することであるといえるから、甲D5発明の「分類名及び分類定義と、特許文書とに基づいて、関連度、分類理由に関する回答を出力するステップ」と、本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」とは、「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」である点において共通する。
f.したがって、本件特許発明1と甲D5発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
2つの情報の関連性を特定の観点から評価するために前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを実行させる、分析プログラム。」
【相違点】
(相違点D5-1)
本件特許発明1における技術情報と特許情報との指定は、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」に対して指定するものであるのに対して、甲D5発明における分類名及び分類定義と、特許文書との指定では、上記「指示文」に係る事項が特定されていない点。
(相違点D5-2)
本件特許発明1における評価結果の出力は、「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果」に基づくものであるのに対して、甲D5発明における評価結果の出力は、当該事項が特定されていない点。
(イ)判断
まず、相違点D5-1を検討する。
上記(3)ア.(ア)、(ウ)によると、甲D5は、「特許文書読解支援アシスタント・サマリア」の「分類支援機能」に関して説明したものであるから、甲D5発明は、「特許文書読解支援アシスタント・サマリア」の「分類支援機能」に係る発明であるといえる。そして、甲D1技術は、当該「サマリア」において、LLMを用い、分類名及び分類定義、特許文書の入力に応じて、「関連度」、「分類理由」を回答する分類支援機能を追加するものであるから、分類名及び分類定義と、特許文書との入力に応じて、「関連度」、「分類理由」を回答するという、甲D5発明における「分類支援機能」に関する構成には、LLMを用いていることを示すものと認められる。
ここで、LLMにおいて、ユーザからの入力、処理内容、あるいは、出力に関する事項を、自然言語の指示文として入力することが、本件出願時の技術常識であることからすると、甲D5発明において、LLMを用いた際に、ユーザから入力である「解析対象となる分類名及び分類定義と、特許文書とを指定する」ことに係る構成として、「指示文」を用いて「解析対象となる分類名及び分類定義と、特許文書とを指定する」ことは、当業者が容易に想到をすることができたものであるといえる。
しかし、上記「指示文」として、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」を用いることは、甲D5号証、甲D1号証に開示あるいは示唆されておらず、本件特許出願時の技術常識であるともいえないことからすると、甲D5発明の「指示文」として、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」を用いることは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、相違点D5-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲D5号証及び甲D1号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明6は、上記(1)で説示した相違点に係る本件特許発明1の構成を備えている。
したがって、本件特許発明6は、上記(1)での説示と同様であるから、甲D4号証、甲D5号証、甲D1号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明13、14について
本件特許発明13は、本件特許発明1を「情報処理装置」として特定したものであり、本件特許発明14は、本件特許発明1の構成を全て備える「分析プログラム」を「分析方法」として特定したものであるところ、上記(1)の説示を踏まえると、本件特許発明1と同様の理由により、甲D4号証、甲D5号証、甲D1号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1、6、13、14は、甲D4号証、甲D5号証、甲D1号証に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、取消理由1は、解消した。
3.取消理由2、3について
本件特許発明4の「前記観点別の前記評価結果を纏めた」との事項は、その文言どおりのものと解されるところ、引用元の本件特許発明2の「評価結果が前記複数の観点の各々について出力される」ことと矛盾するものではないから、明確ではないとはいえない。
また、本件特許発明4の「前記観点別の前記評価結果を纏めた」との事項は、本件特許明細書の段落0111の記載とも整合するものであるから、本件特許発明4について、発明の詳細な説明は、当業者が実施可能な程度に記載したものではないとはいえない。
そして、本件特許発明5についても同様である。
よって、取消理由2、3はいずれも解消した。
4.取消理由4について
本件特許明細書の段落0005、0040、0041の記載によると、発明の解決しようとする課題は、「大規模言語モデルを特許情報の分析に利用し、新たな価値を提供する」(段落0005)ことであって、また、上記課題を解決する手段には、「技術情報123および特許情報125の関連性をどのような観点で評価するか規定」したものを大規模言語モデルに入力する「指示文」として用いることが含まれていると認められる。
ここで、本件特許発明1について、本件訂正前の「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するための所定の指示文」との事項が、本件訂正により「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」と訂正されたところ、当該「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文」は、「技術情報123および特許情報125の関連性をどのような観点で評価するか規定」した「指示文」といえるから、本件特許発明1は、上記課題を解決するための手段を備えているといえる。
そして、本件特許発明6ないし14についても同様である。
したがって、本件特許発明1、6ないし14は、本件出願時における技術常識に照らして、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえるから、発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、取消理由4は、解消した。
5.取消理由5について
(1)本件特許発明1について
ア.対比
本件特許発明1と先願発明とを対比する。
(ア)先願発明の「ターゲット発明を表すクエリ」及び「特許文書」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報」及び「特許情報」に相当する。
そして、先願発明の「プログラム」は、「ターゲット発明を表すクエリ」と「特許文書」とを、大規模言語モデルを用いて分析するものであると解されることからすると、本件特許発明1の「特許情報を分析するプログラム」に相当する。
(イ)先願発明の「特許文書に対して適用されるクエリとして、『・・手段と、・・・手段と、・・・を備える装置』等のターゲット発明を表すクエリを受け付ける」ことは、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報を取得するステップ」に相当する。
(ウ)先願発明の「特許文書を取得する」ことは、本件特許発明1の「前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップ」に相当する。
(エ)大規模言語モデルは、上記「タスクデータ」の「以下の「ターゲット発明」に記載された発明が、以下の「対象特許」に記載された発明に記載されているか否かの検討をしてください。ターゲット発明と対象特許との関連度を0~100の間で算定してください。そのように判断した理由を出力してください。」との記述によって、「対象特許と、・・・の観点で一致しており、・・・の観点で相違する。」との回答を生成するものといえるところ、上記回答は、上記「タスクデータ」の記述に基づいて、「一致すると評価された観点」、及び、「相違すると評価された観点」という、複数の特定の観点から評価したものといえる。そうすると、先願発明の「タスクデータ」は、「2つの情報の関連性」について、複数の特定の観点から評価するように規定したものと解される。
(オ)先願発明の「生成したプロンプト」は、本願発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文」に相当する。そして、上記(エ)のとおりであるから、先願発明の「上記タスクデータの記述のうち、「<クエリ>」をクエリで、「<抽出文書>」を特許文書で置換する」こと及びそのことにより「プロンプト」を生成することと、本件特許発明1の「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」とは、「2つの情報の関連性を特定の観点から評価するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」である点において共通する。
(カ)先願発明の「生成したプロンプトを大規模言語モデルに送信し」、「回答を受信し、受信した回答を提示する」ことは、本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」に相当する。
(キ)以上によると、本件特許発明1と先願発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
2つの情報の関連性を特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップとを実行させる、分析プログラム。」
【相違点】
本件特許発明1における「指示文」は、「特定の観点」が指定されたものであるのに対して、先願発明における「プロンプト」は、当該事項が特定されていない点。
イ.判断
先願明細書等には、「プロンプト」について「特定の観点」を指定することに関する記載も示唆もない。そして、大規模言語モデルのプロンプトについて、「特定の観点」を指定することが周知技術であるといえる証拠もない。
そうすると、上記相違点が、周知技術の付加や転換に過ぎないということはできない。
また、本件特許明細書の段落0005、0040、0041の記載によると、発明の解決しようとする課題は、「大規模言語モデルを特許情報の分析に利用し、新たな価値を提供する」(段落0005)ことであって、本件特許発明1における上記相違点に係る構成は、上記課題の解決に資するものであるから、先願発明を具現化する上での微差であって新たな効果を奏さないものとはいえない。
したがって、本件特許発明1と先願発明との間には実質的な相違点があり、また、両者は実質同一であるともいえないから、本件特許発明1は先願発明と同一であるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし4、6について
本件特許発明2ないし4、6は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、上記(1)で説示した相違点に係る本件特許発明1の構成を備えている。
したがって、上記(1)での説示と同様であるから、本件特許発明2ないし4、6は、先願発明と同一であるとはいえない。
(3)本件特許発明13、14について
本件特許発明13及び14は、本件特許発明1を、それぞれ「情報処理装置」及び「情報処理方法」として特定したものであるところ、上記(1)の説示を踏まえると、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明13及び14は、先願発明と同一であるとはいえない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4、6、13、14は、先願発明と同一であるとはいえない。
よって、取消理由5は、解消した。
6.申立理由1、2について
(1)本件特許発明1について
ア.甲B3号証を主引例とした新規性、進歩性について
(ア)対比
本件特許発明1と甲B3発明とを対比する。
a.甲B3発明の「特許文書」は、本件特許発明1の「特許情報」に相当する。また、甲B3発明の「特許情報サービス「サマリア」」は、特許文書間の比較支援サービスを提供する分析プログラムであるから、特許文書の分析に係るプログラムといえる。よって、甲B3発明の「特許情報サービス「サマリア」」は、本件特許発明1の「特許情報の分析プログラム」に相当する。
b.甲B3発明の「第2特許文書(技術情報)」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報」に相当する。また、甲B3発明の「コンピュータに、特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第2特許文書(技術情報)であって、技術的思想を含む技術情報を取得するステップ」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報を取得するステップ」に相当する。
c.甲B3発明の「特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第1特許文書(特許情報)を取得するステップ」は、本件特許発明1の「前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップ」に相当する。
d.甲B3発明の「2つの情報(第1特許文書と第2特許文書)の関連性を「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」等の項目についてまとめて整理して表示するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」と、本件特許発明1の「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」とは、「2つの情報の関連性を処理するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」である点において共通する。
e.本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」とは、「前記技術情報と前記特許情報との関連性について出力する」ことであるといえる。
そうすると、甲B3発明の「前記技術情報と前記特許情報との関連性を「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」の項目の各々について出力するステップ」と、本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」とは、「前記技術情報と前記特許情報との関連性について出力するステップ」である点において共通する。
f.したがって、本件特許発明1と甲B3発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
2つの情報の関連性を処理するために、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップと、
前記技術情報と前記特許情報との関連性について出力するステップとを実行させる、
分析プログラム。」
【相違点】
(相違点B3-1)
本件特許発明1における「前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」は、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文」に対して指定するものであるのに対して、甲B3発明の「前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」は、当該事項が特定されていない点。
(相違点B3-2)
本件特許発明1における「関連性について出力するステップ」は、「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」ものであるのに対して、甲B3発明における「関連性について出力するステップ」は、「前記技術情報と前記特許情報との関連性を「技術分野」「用途」「課題」「解決手段」「効果」の項目の各々について出力する」ものである点。
(イ)判断
まず、相違点B3-1を検討する。
本件特許発明1の相違点B3-1に係る構成は、甲B3号証に開示ないし示唆されていない。
また、当該構成は、特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示されているとはいえず、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、本件特許発明1の相違点B3-1に係る構成は、甲B3発明に基づいて、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、相違点B3-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
上記のとおり、相違点B3-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲B3発明と同一ではない。また、本件特許発明1は、甲B3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.甲D4号証を主引例とした新規性、進歩性について
上記2.(1)ア.で説示したとおりであるから、本件特許発明1は、甲D4発明と同一ではない。また、本件特許発明1は、甲D4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.甲D5号証を主引例とした新規性、進歩性について
上記2.(1)イ.で説示したとおりであるから、本件特許発明1と甲D5発明とは、上記2.(4)イ.(ア)の一致点で一致し、相違点D5-1及びD5-2で相違するところ、本件特許発明1の相違点D5-1に係る構成は、甲D5号証、甲F1号証に開示ないし示唆されていない。
また、当該構成は、特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示されているとはいえず、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、本件特許発明1の相違点D5-1に係る構成は、甲D5発明に基づいて、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1の相違点D5-1に係る構成は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲D5発明と同一ではない。また、本件特許発明1は、甲D5発明、及び、甲F1号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.甲D6号証を主引例とした新規性、進歩性について
(ア)対比
本件特許発明1と甲D6発明とを対比する。
a.甲D6発明の「特許文書」は、本件特許発明1の「特許情報」に相当する。また、甲D6発明の「特許情報サービス「サマリア」」は、特許文書の解析支援サービスを提供する分析プログラムであるから、特許文書の分析に係るプログラムといえる。よって、甲D6発明の「特許情報サービス「サマリア」」は、本件特許発明1の「特許情報の分析プログラム」に相当する。
b.甲D6発明の「評価項目ごとの評価基準)」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報」に相当する。また、甲D6発明の「コンピュータに、特許情報サービス「サマリア」の画面上で入力された評価項目ごとの評価基準であって、例えば「独創性・革新性」に関して「A:従来技術なし、B:複数の従来技術により構成示されるが示唆なし、C:組み合わせにより直接関連ある複数の従来技術あり、D:直接関連ある単独の従来技術あり」等の技術的思想を含む評価基準を取得するステップ」は、本件特許発明1の「技術思想を含む技術情報を取得するステップ」に相当する。
c.甲D6発明の「特許情報サービス「サマリア」の画面上で読み込まれた第1特許文書(特許情報)を取得するステップ」は、本件特許発明1の「前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップ」に相当する。
d.甲D6発明の「前記特許情報を「独創性・革新性」「発明の効果」「他社実施可能性」「侵害発見性」等の複数の評価項目で評価するために、前記特許情報において評価する箇所を指定するステップ」と、本件特許発明1の「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するように規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定するステップ」とは、「前記特許情報とを指定するステップ」である点において共通する。
e.本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」とは、「前記特許情報の評価結果について出力する」ことであるといえる。
そうすると、甲D6発明の「前記特許情報について前記評価項目ごとの評価基準に従い評価し、前記評価項目ごとの評価ランクと評価理由を出力するステップ」と、本件特許発明1の「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力するステップ」とは、「前記特許情報の評価結果について出力するステップ」である点において共通する。
f.したがって、本件特許発明1と甲D6発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「特許情報の分析プログラムであって、
前記分析プログラムは、コンピュータに、
技術的思想を含む技術情報を取得するステップと、
前記技術情報と比較する対象の特許情報を取得するステップと、
前記特許情報とを指定するステップと、
前記特許情報の評価結果について出力するステップとを実行させる、
分析プログラム。」
【相違点】
(相違点D6-1)
本件特許発明1における「前記特許情報とを指定するステップ」は、「特定の観点が指定された指示文であって、2つの情報の関連性を前記特定の観点から評価するよう規定されている所定の指示文に対して、前記技術情報と前記特許情報とを指定する」ものであるのに対して、甲D6発明の「前記特許情報とを指定するステップ」では、当該事項が特定されていない点。
(相違点D6-2)
本件特許発明1における「前記特許情報の評価結果について出力するステップ」は、「前記技術情報と前記特許情報とが指定された前記指示文を大規模言語モデルに入力することで当該大規模言語モデルから得られる結果に基づいて、前記技術情報と前記特許情報との関連性を示す評価結果を前記観点について出力する」ものであるのに対して、甲D6発明の「前記特許情報の評価結果について出力するステップ」は、「前記特許情報について前記評価項目ごとの評価基準に従い評価し、前記評価項目ごとの評価ランクと評価理由を出力する」ものである点。
(イ)判断
まず、相違点D6-1を検討する。
本件特許発明1の相違点D6-1に係る構成は、甲D6号証に開示ないし示唆されていない。
また、当該構成は、特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示されているとはいえず、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、本件特許発明1の相違点D6-1に係る構成は、甲D6発明に基づいて、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
したがって、相違点D6-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲D6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
上記のとおり、相違点D6-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲D6発明と同一ではない。また、本件特許発明1は、甲D6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2ないし4、6について
本件特許発明2ないし4、6は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、上記(1)で説示した相違点に係る本件特許発明1の構成を備えている。
したがって、上記(1)での説示と同様であるから、本件特許発明2ないし4、6と、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、甲D6号証に開示された発明とは、同一ではなく、また、本件特許発明2ないし4、6は、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、甲D6号証に開示された発明及び特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明5、7ないし12について
本件特許発明5、7ないし12は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、上記(1)で説示した相違点に係る本件特許発明1の構成を備えている。
したがって、上記(1)での説示と同様であるから、本件特許発明5、7ないし12は、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、甲D6号証に開示された発明及び特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明13、14について
本件特許発明13及び14は、本件特許発明1を、それぞれ「情報処理装置」及び「情報処理方法」として特定したものであるところ、上記(1)の説示を踏まえると、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明13、14と、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、甲D6号証に開示された発明とは、同一ではなく、また、本件特許発明13、14は、甲B3号証、甲D4号証、甲D5号証、甲D6号証に開示された発明及び特許異議申立人が提出した他の甲号証に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、申立理由1、2には理由がない。
7.申立理由3について
(1)本件特許発明7、8について
「概念」とは、「事物の本質をとらえる思考の形式。事物の本質的な特徴とそれらの連関が概念の内容(内包)。概念は同一本質を持つ一定範囲の事物(外包)に適用されるから一般性を持つ。」(広辞苑第四版)ものであり、「レベル」とは、「水準、標準、水平面」(広辞苑第四版)であるところ、本件特許発明7の「概念レベル」とは、事物に関して具体的であるのか、あるいは、抽象的であるのかを示す水準を表すものであると解される。また、当該解釈を踏まえると、本件特許発明7の「前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力」とは、上記比較対象の概念の水準(抽象的であるのか具体的であるのか)を入力するものであると解するのが相当である。
ここで、本件特許明細書の「ユーザは、たとえば、「概念レベルに関する入力」として[「情報処理システムとその方法」といった概念は広すぎるため、「戦略を適切に評価する情報処理システム」、など具体的な概念で比較して下さい。]との文言を入力する。」(段落0132)、「「概念レベルに関する入力」は、評価結果画面400C内の選択欄(図示しない)において実現される。当該選択欄の選択肢には、評価時における概念レベルが示されている。選択肢としては、たとえば、概念「広い」、概念「普通」および概念「狭い」が挙げられる。」(段落0133)等の記載によると、本件特許明細書には、「概念レベル」として、「広い」あるいは「狭い」、すなわち、抽象的あるいは具体的であるかを入力することが記載されているといえることからすると、本件特許発明7の「前記特許情報を前記技術情報と比較する際における概念レベルに関する入力」に係る上記解釈は、本件特許明細書の記載とも整合するものである。
したがって、本件特許発明7の「概念レベル」について、その技術的意義、及び、他の発明特定事項との関係が不明確であるとは認められない。
そして、同様の理由により、本件特許発明8の「概念レベル」についても、不明確であるとは認められない。
(2)本件特許発明9について
ア.「予め定められたアルゴリズム」
本件特許発明9の「予め定められたアルゴリズムに基づいて、前記技術情報と前記特許情報との類似度を算出するステップ」は、「予め定められたアルゴリズム」に基づいて「類似度を算出する」ことを規定したものであるところ、上記「予め定められたアルゴリズム」とは、予め定められた、類似度を算出するアルゴリズムであると解される。
また、本件出願時において、類似度を算出するアルゴリズムとして、多種多様なものが広く知られていたと認められることから、本件特許発明9を実施する際に、上記「予め定められたアルゴリズム」として、どのようなアルゴリズムを採用するかは、本件特許明細書の実施例やその他の発明の詳細な説明の記載を参照しつつ、当業者が適宜設定し得る事項に過ぎない。
そうすると、上記「予め定められたアルゴリズム」について、具体的なアルゴリズムが特定されていないからといって、本件特許発明9が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
イ.「前記大規模言語モデルから得られる前記結果」と「前記類似度」
本件出願時において、所定の対象についての複数種別の分析を行い、それら複数の分析結果を組み合わせて出力する手法としては、多種多様なものが広く知られていたと認められるところ、本件特許発明9を実施する際に、上記「前記大規模言語モデルから得られる前記結果」と「前記類似度」とを、どのように組み合わせて出力するかは、本件特許明細書の実施例やその他の発明の詳細な説明の記載を参照しつつ、当業者が適宜設定し得る事項に過ぎない。
そうすると、上記「前記大規模言語モデルから得られる前記結果」と「前記類似度」とを、どのように組み合わせて出力するかについて、具体的に特定されていないからといって、本件特許発明9が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明7ないし9は明確であるから、申立理由3には理由がない。
8.特許異議申立人の主張について
(1)令和7年4月8日に提出した意見書における主張
上記意見書における特許異議申立人の主張の概要は次のとおりである。
ア.主張1
「令和6年11月7日起案の取消理由通知書(以下、取消理由通知書)の取消理由2(明確性)、取消理由3(実施可能要件)、取消理由4(サポート要件)については依然として、取り消されるべきものであると思料します。」
イ.主張2
「訂正請求書による訂正後の請求項1、6、13は、以下に説明するとおり、特許法第29条の2(同法第113条第2号)にかかる明らかな取消理由を有しております。このような、先行技術に対する何ら貢献がない発明が維持されることは、特許制度の趣旨に反しており、公益的実益はなく、異議申立制度の制度趣旨に従うと当然取り消されるべきものであると思料します。
…中略…
本件特許発明1および本件特許発明13は、資料発明1と一致し、本件特許発明6は、資料発明6と一致します。
資料1は、本件特許の出願日(令和5年9月12日)前の他の特許出願であって、本件特許出願後に特許公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載された発明であり、資料1は本件特許の特許法29条の2にかかる先願にあたります。
したがって、訂正後の請求項1、6、13は、以下に説明するとおり、特許法第29条の2(同法第113条第2号)にかかる取消理由を有します。
…中略…
参考資料1:特許第7542812号公報 」
(2)特許異議申立人の主張についての検討
上記特許異議申立人の主張1、2について検討する。
ア.主張1について
上記3.及び4.で説示したとおりであるから、上記取消理由2、3、4については解消された。
よって、上記主張1は採用できない。
イ.主張2について
上記5.で説示したとおりであるから、本件特許発明1、6、13は、先願発明(特願2023-099801号(特許第7542812号))と同一であるとはいえない。
よって、上記主張2は採用できない。
第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件請求項1ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700548