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特許異議申立

2021-701070

データ収集制御装置、データ収集制御システム、データ収集制御方法およびデータ収集制御プログラム

審判番号
2021-701070
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-536409
登録番号
6871389
請求日
2021年11月12日
審決日
2023年01月30日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社アイ・エル・シー
  • 【権利者代理人】酒井 昭徳
  • 【異議申立人】杉村 勝
審判長/審判官
  • 審判長 稲葉 和生
  • 審判官 中野 裕二
  • 審判官 野崎 大進
分類
P1651.121-ZAA(G06F) / P1651.832-ZAA(G06F) / P1651.851-ZAA(G06F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6871389号発明「データ収集制御装置、データ収集制御システム、データ収集制御方法およびデータ収集制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6871389号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]、[4-6]、7、8について訂正することを認める。 特許第6871389号の請求項1、3-8に係る特許を取り消す。 特許第6871389号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6871389号の請求項1-8に係る特許についての出願は、平成29年8月18日に出願され、令和3年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和3年5月12日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年11月12日 : 特許異議申立人杉村勝(以下、「申立人」と いう。)による請求項1-8に係る特許に対 する特許異議の申立て 令和4年 3月30日付け: 取消理由通知書 令和4年 6月 6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年 9月 7日 : 申立人による意見書の提出 令和4年10月18日付け: 取消理由通知書(決定の予告) なお、令和4年10月18日付け取消理由通知書(決定の予告)において、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、特許第6871389号の特許請求の範囲を、令和4年6月6日に提出した訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-8について訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は、以下の(1)-(6)からなる(下線は、訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項1 請求項1に「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信することを特徴とするデータ収集制御装置。」と記載されているのを、「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信 し、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行うことを特徴とするデータ収集制御装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3に「上層の前記管理シェルが設定された機器は、前記情報システムからの要求を、下層の管理シェルが設定された複数の前記機器に対してそれぞれ要求する処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ収集制御装置。」と記載されているのを、「上層の前記管理シェルが設定された機器は、前記情報システムからの要求を、下層の管理シェルが設定された複数の前記機器に対してそれぞれ要求する処理を行うことを特徴とする 請求項1に記載のデータ収集制御装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項4に「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、クラウド側の情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システムであって、 複数の前記機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 前記データ収集制御装置は、複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信し、 前記情報システムは、 複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し所定の制御情報を送信することを特徴とするデータ収集制御システム。」と記載されているのを、「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、クラウド側の情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システムであって、 複数の前記機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 前記データ収集制御装置は、複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信し、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行い、 前記情報システムは、 複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し所定の制御情報を送信することを特徴とするデータ収集制御システム。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 請求項7に「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置が、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信する、 処理を実行することを特徴とするデータ収集制御方法。」と記載されているのを、「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置が、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信 し、 上層の前記管理シェルが設定された機器が、 下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する、 処理を実行することを特徴とするデータ収集制御方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項8に「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置に、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信する、 処理を実行させることを特徴とするデータ収集プログラム。」と記載されているのを、「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置に、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信 する処理を実行させ、 上層の前記管理シェルが設定された機器に、 下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する、 処理を実行させることを特徴とするデータ収集プログラム。」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1-3は、訂正前に引用関係を有する請求項1-3に対して、請求されたものである。また、訂正事項4は、訂正前に引用関係を有する請求項4-6に対して、請求されたものである。よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-3〕、一群の請求項〔4-6〕、請求項7、請求項8について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1に係る発明について、「データ収集制御装置」に「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行う」という限定を付加するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アの訂正事項1の目的からみて、訂正事項1は、データ収集制御装置を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無 訂正事項1について、願書に添付した明細書の段落【0061】には、「家庭用ゲートウェイ機器501は、各機器101(熱交換機511c、照明器具511d、エアコン511e)が送信した消費電力の情報Dを取りまとめて情報システム(ITシステム)110に送信する。なお、管理シェル300aのオブジェクト管理リスト312には、収集した各機器101(熱交換機511c、照明器具511d、エアコン511e)が送信した消費電力の情報Dから消費電力の値を合計する処理実行する旨を記述しておく。」と記載されており、訂正事項1により追加される構成は、本件明細書に記載した事項である。 したがって、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 訂正事項2に係る訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2に係る訂正は、請求項の削除であるから、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに整合させるため、訂正前の請求項3が引用する請求項を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、請求項4に係る発明について、「データ収集制御装置」に「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行」うという限定を付加するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アの訂正事項4の目的からみて、訂正事項4は、データ収集制御装置を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無 上記(1)ウにおける検討と同様に、訂正事項4は、本件明細書に記載した事項である。 したがって、訂正事項4は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項7に係る発明について、「データ収集制御方法」に「上層の前記管理シェルが設定された機器が、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する」という限定を付加するものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アの訂正事項5の目的からみて、訂正事項5は、データ収集制御方法を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無 上記(1)ウにおける検討と同様に、訂正事項5は、本件明細書に記載した事項である。 したがって、訂正事項5は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、請求項8に係る発明について、「データ収集プログラム」に「上層の前記管理シェルが設定された機器に、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を実行させる」という限定を付加するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 イ 実質上の拡張・変更の有無 前記アの訂正事項6の目的からみて、訂正事項6は、データ収集プログラムを減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。 よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無 上記(1)ウにおける検討と同様に、訂正事項6は、本件明細書に記載した事項である。 したがって、訂正事項6は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 4 独立特許要件について 本件は、訂正前の請求項1-8について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 5 小括 上記のとおり、訂正事項1-6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、請求項〔4-6〕、請求項7、請求項8について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」-「本件特許発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本件特許発明1-8は、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信 し、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行うことを特徴とするデータ収集制御装置。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 上層の前記管理シェルが設定された機器は、前記情報システムからの要求を、下層の管理シェルが設定された複数の前記機器に対してそれぞれ要求する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のデータ収集制御装置。 【請求項4】 ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、クラウド側の情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システムであって、 複数の前記機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 前記データ収集制御装置は、複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信し、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行い、 前記情報システムは、 複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し所定の制御情報を送信することを特徴とするデータ収集制御システム。 【請求項5】 複数の前記機器は、異なるメーカおよび通信方式を有し、 前記管理シェルは、複数の前記機器が送信する情報をラッピングして前記情報システムに送信することを特徴とする請求項4に記載のデータ収集制御システム。 【請求項6】 前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器、および複数の前記機器が接続される機器、に階層化して設定し、 前記情報システムは、各階層の装置にそれぞれ対応する制御情報を送信することを特徴とする請求項4または5に記載のデータ収集制御システム。 【請求項7】 ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置が、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信し、 上層の前記管理シェルが設定された機器が、 下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する、 処理を実行することを特徴とするデータ収集制御方法。 【請求項8】 ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、前記管理シェルの設定に基づき、 複数の前記機器に接続されたデータ収集制御装置に、 前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信する処理を実行させ、 上層の前記管理シェルが設定された機器に、 下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する、 処理を実行させることを特徴とするデータ収集プログラム。」 第4 取消理由の概要 本件特許発明1、3-8に係る特許に対して、当審が令和4年10月18日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 本件特許発明1、3、4、6-8は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものである。また、本件特許発明5は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものである。よって、本件特許発明1、3-8に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 ・引用文献一覧 (以下、申立人の提示した甲第1号証を「甲1」などという。) 引用文献1: Plattform Industrie 4.0, “Relationships between I4.0 Components “Composite Components and Smart Production”, Federal Ministryfor Economic Affairs and Energy(BMWi), June 2017(甲1) 引用文献2: Axel Saleck, 松本 潤、「日経ものづくり」、2017年6月号、日経BP社、2017年6月1日発行、p.106-110(甲6) 引用文献3: 永野 博、「製造業と情報通信ネットワークの結合のもたらすインパクト-Industrie 4.0を中心として-」、電子情報通信学会誌 Vol.99 No.1 pp.16-23、2016年1月発行 第5 当審の判断 1 本件特許発明1について (1)本件特許発明1 本件特許発明1は、上記「第3」において示したとおりのものである。 (2)引用文献の記載 ア 引用文献1について 取消理由通知において引用した引用文献1(甲1)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「1.1 Objective and methodology of this document The RAMI4.0 model can be used to describe any I4.0 asset. The I4.0 component allows you to create an information technology link, using the administration shell, between any asset and Industrie 4.0.」(4ページ左欄17-23行) (当審訳: 1.1 この文献の目的および方法論 RAMI4.0モデルを使用して、任意のI4.0アセットを記述することができる。I4.0コンポーネントは、任意のアセットとIndustrie4.0との間に、管理シェルを使用して情報技術リンクを作成することを可能にする。) 「2.1 Concept of sub models The basic idea behind the I4.0 component is to wrap each I4.0 asset with an 'administration shell’, which is designed to provide a minimal but adequate description of each I4.0 asset or application in the information world. It must therefore also be possible to classify existing standards appropriately in the relevant administration shell.」(5ページ左欄8-15行) (当審訳: 2.1 サブモデルの概念 I4.0コンポーネントの背後にある基本的な考えは、各I4.0アセットを「管理シェル」でラップすることであり、これは、情報世界における各I4.0アセットまたはアプリケーションの最小限であるが適切な記述を提供するように設計される。したがって、関連する管理シェルにおいて既存の規格を適切に分類することも可能でなければならない。 「2.2 General structure of the administration shell The last published document on the administration shell [2] presented a general, logical view of its structure. Marked in blue in the illustration below, the administration shell comprises a 'Header’ and 'Body’. The 'Header’ contains identifying details about the administration shell and the represented assets. The 'Body’ contains a large number of sub models in order to shape the administration shell according to specific assets.」(6ページ左欄1-11行) (当審訳: 2.2 管理シェルの一般構造管理シェル [2]に関する最新の公開された文献は、その構造の一般的な論理的見解を提示した。以下の図において青色でマークされているように、管理シェルは、「Header」および「Body」を含む。「Header」は、管理シェルと代表的なアセットについての識別子を含む。「Body」は、特定のアセットに従って管理シェルを形成するために多数のサブモデルを含む。) 「 [図:0001398221000001.jpg] 図2」 「3.2.1 Terms The physical world consists of objects that are objects of value, or assets, in Industrie 4.0. An asset can be understood in Industrie 4.0 once it has been assigned a name or term that can be characterised by means of properties. A term is characterised by the following features: ・Identifier ・Term designation (name, e.g. asset name) is often just called a “term”. This document uses “designation” for clearer differentiation. ・Term definition ・Characteristic(s) An asset from the physical world is represented by a term and characterised by well defined properties e.g. “length”, "width”, “height”, “colour” etc. (Figure 3).」(7ページ左欄33行-右欄7行) (当審訳: 3.2.1 用語 物理的な世界は、Industrie4.0において、価値のある対象物、すなわちアセットで構成されている。アセットは、プロパティによって特徴付けられる名前又は用語が割り当てられると、Industrie4.0で理解することができる。用語は、以下の特徴によって特徴付けられる。 ・識別子 ・用語の指定(名前、例:アセット名)は、しばしば単に「用語」と呼ばれる。本文書では、より明確に区別するために「呼称」を使用する。 ・用語の定義 ・特性 物理的な世界のアセットは、用語で表現され、「長さ」、「幅」、「高さ」、「色」などのよく定義されたプロパティによって特徴付けられる。(図3)) 「 [図:0001398221000002.jpg] 図3」 「Figure 5 shows, by means of two machines (assets), the main procedure for generating types of cooperation (right side) using services as the equivalent of setting up cooperative relationships between people (left side). During a "becoming acquainted" phase, tests are run to check how and whether the parties can communicate (1). This includes establishing the communication link and agreeing on the language necessary for communication. The capabilities of the counterpart are then queried (2). If these meet the other party's requirements, the familiarisation phase is completed (3), the order issued and executed and its completion is reported (4).」(9ページ左欄1-12行) (当審訳: 図5は、2つのマシン(アセット)による、人々の間の協調関係をセットアップすること(左側)と同等なサービスを用いて協調のタイプを生成するための主要な手順(右側)を示す。知人化フェーズの間、当事者がどのように通信できるか、および通信できるかどうかをチェックするためにテストが実行される(1)。これは、通信リンクを確立し、通信に必要な言語に同意することを含む。次いで、相手の能力が照会される(2)。これらが他の当事者の要件を満たす場合、習熟フェーズが完了し(3)、注文が発行され実行され、その完了が報告される(4)。」 「 [図:0001398221000003.jpg] 図5」 「3.3.2 Scenario example of an flexible production line Based on [1], the figures 6 to 9 illustrate the principle of creating, configuring and displaying the decomposition of a flexible production line using the requirements to manufacture a particular product. The production line consists of a series of production units (PU) and a production manager (PM). Both instances are 14.0 components with information and features structured according to RAMI4.0. A PM’s function comprises parts of an ERP system and parts of an MES system, the parts of which can reside in the PM and in the PUs.」(10ページ左欄1-13行) (当審訳: 3.3.2柔軟な生産ラインのシナリオ例 図6-9は、[1]に基づいて、特定の製品を製造するための要件を使用した柔軟な生産ラインの分解を作成し、構成し、表示する原理を示す。生産ラインは、一連の生産ユニット(PU)と生産管理者(PM)で構成される。どちらのインスタンスも、RAMI4.0に基づいて構造化された情報と特徴をもつI4.0コンポーネントである。PMの機能は、ERPシステムの一部とMESシステムの一部で構成されており、これらの一部はPMとPUに存在する。) 「 [図:0001398221000004.jpg] 図6」 「According to Figure 6, the Production Manager accepts a production request and, based on the services displayed in Figure 3, right side, checks the production options with the abilities of the PUs available in the pool using requests to the PUs. This check based on the PU quote includes the availability of the PUs and the price of each production step to enable an order price to be determined (Figure 7).」(10ページ左欄14-20行) (当審訳: 図6によると、生産管理者は、生産要求を受け付け、図3の右側に表示されているサービスに基づいて、PUへの要求を使用して、プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックする。PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれる(図7)。) 「 [図:0001398221000005.jpg] 図7」 「First, the PM is as an instance that accepts a digital request after production of a product under human control e.g. in a lot size of one. This means that a computer operating as a customer uses a request service of the PM. The PM’s algorithm determines the necessary production functions and uses requests to scour the PU pool (production resources) of the "shop floor” for suitable and available PUs. If the PM is successful and if certain basic conditions are fulfilled, e.g. availability of the PUs and their price per manufacturing step, and if approval from the responsible person in the relevant department is available, the PM sends the customer a digital quote.」(11ページ左欄9-20行) (当審訳: 第1に、PMは、人間の制御下で、例えば1のロットサイズで製品を生産した後に、デジタル要求を受け付けるインスタンスである。これは、顧客として動作するコンピュータがPMのリクエストサービスを使用することを意味する。PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用する。PMが成功し、例えば、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされ、関連部門の責任者からの承認が得られる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信する。) 「3.4.1 Asset hierarchies Since the features of an asset can be described in any level of granularity, the engineering task can be started as soon as a minimum quantity of information is available (Figure 11). Subsequently, the modelling can be extended to include parts of the asset, or assets can be aggregated (treated as one). This allows for a highly flexible system design.Figure 12 shows the methodology based on the recursive description of assets with RAMI 4.0. If assets are hierarchically arranged, that is, if an asset is formed from several subassets (detailed composition) for example, the arrangement remains consistent due to the uniform description methodology. Similarly, assets can be grouped together and represented by a higher-level asset (aggregation). In this case, the sum of the features of two interconnected assets is greater than the sum of their individual features.」(12ページ左欄1行-右欄5行) (当審訳: 3.4.1 アセット階層 アセットの特徴は、任意のレベルの細かさで記述することができるので、エンジニアリングタスクは、最小量の情報が利用可能になるとすぐに開始することができる(図11)。その後、モデリングは、アセットの一部を含むように拡張することができ、またはアセットを集約する(1つとして扱う)ことができる。これは、非常に柔軟なシステム設計を可能にする。図12は、RAMI4.0を用いたアセットの再帰的記述に基づく方法を示す。アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫している。同様に、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができる。この場合、2つの相互接続されたアセットの特徴の合計は、それらの個々の特徴の合計よりも大きい。) 「 [図:0001398221000006.jpg] 図11」 「 [図:0001398221000007.jpg] 図12」 上記図12には、各アセットがRAMI4.0に基づいて管理シェルにおいて記述され、左側のアセットは階層的に配置され、右側の外部のアセットとは左側の最上層のアセットとの間に管理シェルの特性(properties)による関係が結ばれ、左側の階層的に配置された複数のアセットも階層ごとに同様に管理シェルの特性(properties)による関係が結ばれ、管理シェルにより情報技術リンクを作成すること(上記第4頁)、及び当該関係とは、作成した情報技術リンクを用いて情報通信を行う関係であり、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの情報の送信を行うことが示されているといえることから、図12からは「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」構成が見て取れる。 したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「I4.0コンポーネントは、任意のアセットとIndustrie4.0との間に、管理シェルを使用して情報技術リンクを作成することを可能であり、14.0コンポーネントの背後にある基本的な考えは、各I4.0アセットを「管理シェル」でラップすることであり、管理シェルは、「Header」および「Body」を含み、「Header」は、管理シェルと代表的なアセットについての識別子を含み、「Body」は、特定のアセットに従って管理シェルを形成するために多数のサブモデルを含み、 生産ラインは、一連の生産ユニット(PU)と生産管理者(PM)で構成され、どちらのインスタンスも、RAMI4.0に基づいて構造化された情報と特徴をもつI4.0コンポーネントであり、 生産管理者は、生産要求を受け付け、PUへの要求を使用して、プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックし、PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、 PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用し、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信し、 アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫しており、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができ、階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる、I4.0コンポーネント。」 イ 引用文献2について 取消理由通知において引用した引用文献2(甲6)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「稼側状況に合わせたサービスを可能に ここまで紹介してきたPlattform I4.0やアプリケーション・シナリオ、IICとの国際連携、openAASなどのキーワードがすべて関わってくる取り組みが「Industrie 4.0 Demonstrator」と呼ばれる生産ラインのコンセプトです(図2)。この生産ラインは、Plattform I4.0のWG2が取りまとめている9つのアプリケーション・シナリオのうち、「Adaptable Factory (AF)」「Value-Based Service (VBS)」「Seamless and Dynamic Plant Engineering (SDP)」の一部を実現したものです。 この生産ラインは2016年のハノーバーメッセでも展示されていましたが、2017年はopenAASによる管理シェルが新たに実装されていました(図3)。さらに、VBSをIICとの共通シナリオとするという提言に基づき、IIRAのコアとなる4つのViewpointに則ってVBSシナリオの詳細を定義しました。 VBSのシナリオは、機器の実際の稼働状況をクラウドなどのITプラットフォームに集約することで、その稼働状況に合わせてさまざまなサービスを提供するというものです。この生産システムでは、化粧品や飲料といった製品の工程(充填/キャッピング/ラベリング)における容器の搬送システムの稼働状況が対象となります。搬送システムを提供しているメーカーやアフターサービスを請け負っている企業などが、クラウドを介して顧客の工場における搬送システムの稼働状況にアクセスできるという想定になっています。 このように稼働状況をリアルタイムで把握することによって、最適なタイミングで部品を交換する予知保全サービスを提供したり、複数の稼働状況を分析することで生産性改善のアイデアを提案したりするなど、より価値の高いサービスを可能にするというシナリオです。」(108ページ左欄1行-右欄15行) 以上によれば、引用文献2は、以下の周知技術(以下、「引用文献2記載周知技術」という。)が開示されていると認められる。 「「Industrie 4.0 Demonstrator」と呼ばれる生産ラインのVBS(Value-Based Service)のシナリオは、機器の実際の稼働状況をクラウドなどのITプラットフォームに集約することで、その稼働状況に合わせてさまざまなサービスを提供し、搬送システムを提供しているメーカーやアフターサービスを請け負っている企業などが、クラウドを介して顧客の工場における搬送システムの稼働状況にアクセスできること。」 (3)対比 本件特許発明1と引用発明とを対比する。 ア 一般に、情報技術分野において、「アセット」とは情報システムを構成する機器を意味する用語であるから、引用発明の「任意のアセット」は、情報世界におけるI4.0コンポーネントにおいて「機器」を意味し、「Industrie4.0との間に」「管理シェルを使用して情報技術リンクを作成することを可能」としていることから、「ネットワーク接続可能」であるといえる。また、引用発明における「各I4.0アセット」との記載から、当該「アセット」は複数存在することは明らかである。したがって、引用発明の「任意のアセット」は、本件特許発明1の「ネットワーク接続可能な複数の機器」に相当する。 イ 上述したように、引用発明では、「管理シェルを使用」することで「情報技術リンクを作成することを可能」としていることから、当該「管理シェル」の「Header」に含まれる「管理シェルと代表的なアセットについての識別子」は、「ネットワーク上で用いられる属性」と言い得るものであり、したがって、本件特許発明1の「ネットワーク接続に関する属性」に相当するといえる。また、引用発明の「情報技術リンク」は、「任意のアセットとIndustrie4.0との間」のアクセスに関する情報が含まれるといえることから、本件特許発明1の「前記機器に対するアクセスが登録設定され」たものといえる。更に、引用発明の「管理シェル」は、アセットを「Header」及び「Body」によって情報技術リンク上で扱えるものにすることから、前記アセットをオブジェクト化しているといえるため、結局、引用発明の「管理シェル」は、上記アを踏まえると、本件特許発明1の「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェル」に相当する。 ウ 引用発明の「管理シェル」は、「アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫しており、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができる」ものであるから、「情報技術リンク」が「作成」されたアセットについて、複数の下層のアセットを上層のアセットによりグループ化し、「階層化」していることは明らかである。また、引用文献1の図11に示されているように、各階層に管理シェルが配置されるものであり、最下層のアセットは、本件特許発明1の「エッジ側」に配置される機器に相当する。更に、引用文献1の図11に示されているように、最下層のアセット(e.g. Part)は、上層のアセット(e.g. Machine)内に複数存在することは技術常識であるから、エッジ側に複数の機器が配置されているといえる。 以上から、引用発明の「管理シェル」を「各階層」に「配置」して「階層化」した構成は、上記アを踏まえると、本件特許発明1の「前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定」する構成に相当するものといえる。 エ 引用発明の「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ」ることは、階層化されていることから複数のアセットが存在し、アセットは上記アを参酌すると「機器」を意味するため、「複数の機器」が存在するといえ、階層間にて情報通信が行われることは当該複数の機器は何らかの接続がされているといえることから、本件特許発明1の「複数の機器に接続」されるものといえる。 次に、引用発明の「外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」ことについて、「管理シェルの特性による」ことは、本件特許発明1における「管理シェルの設定に基づ」くものに相当し、上述のとおり「階層化されたアセット」は本件特許発明1における「複数の機器」に相当し、引用発明の「外部のアセット」は、本件特許発明1における「情報システム」といえるものである。 よって、引用発明における「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」ことは、本件特許発明1の「複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信すること」とは、「複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報を情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された情報を複数の前記機器に送信すること」という点で共通する。 オ 引用発明の「I4.0コンポーネント」は、階層化されたアセット間や、階層化されたアセットと外部のアセットとの間で情報通信を行うものであり、情報通信とは通常何らかのデータを通信していることからデータの収集を行っているものといえ、当該I4.0コンポーネントを何らかのハードウェアにより実現することは技術常識であるから、後述する相違点を除き、本件特許発明1の「データ収集制御装置」に相当する。 カ 引用発明において、「生産ラインは、一連の生産ユニット(PU)と生産管理者(PM)で構成され、どちらのインスタンスも、RAMI4.0に基づいて構造化された情報と特徴をもつI4.0コンポーネントであ」ることから、PU及びPMは管理シェルがラップされたアセットであることが明らかである。また、PMが上層であり、PUが下層であることも明らかである。したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「生産管理者(PM)」及び「生産ユニット(PU)」は、本件特許発明1の「上層の前記管理シェルが設定された機器」及び「下層の前記管理シェルが設定された機器」に相当する。 キ 引用発明において、「生産管理者は」、「プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックし、PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用し、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信し」ていることから、PMは、PUの見積もりという情報を集め、その結果であるデジタル見積もりを顧客に送信しているといえる。また、引用発明の「顧客」は外部のアセットであることは明らかであるから、上記エを踏まえると、引用発明の「顧客」は、本件特許発明1の「情報システム」に相当する。 ク 上記カ及びキを踏まえると、本件特許発明1の「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行う」ことと引用発明は、「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報を集め、当該結果を前記情報システムに送信する処理を行う」という点で共通する。 よって、本件特許発明1と引用発明とは、下記の一致点・相違点があるといえる。 [一致点] 「ネットワーク接続可能な複数の機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報を情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された情報を複数の前記機器に送信し、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報を集め、当該結果を前記情報システムに送信する処理を行うことを特徴とするデータ収集制御装置。」 [相違点] (相違点1-1) 情報システムは、本件特許発明1では「クラウド」にあるのに対し、引用発明では、クラウド上であるかどうか特定されていない点。 (相違点1-2) 情報システムから複数の機器に送信される情報が、本件特許発明1では「制御情報」であるのに対し、引用発明では、「制御情報」であるとは明示されていない点。 (相違点1-3) 上層の前記管理シェルが設定された機器における下層の前記管理シェルが設定された機器の情報に対する処理について、本件特許発明1では「情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を」「送信する」のに対し、引用発明では、PMがPUの情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を送信しているのか、明確に特定されていない点。 (4)判断 相違点1-1について 上記(2)イの「引用文献2記載周知技術」で示したように、Industrie4.0において、情報の送受信先をクラウドとすることは周知技術であるから、引用発明においても情報システムをクラウド上にあるようにすることは当業者にとって容易になし得たことである。 相違点1-2について 情報システムから複数の機器への情報の送信において、複数の機器へ送信される情報に何らかの制御情報(例えば、情報取得のためのsysteminfoコマンドのような周知の制御情報)が含まれるようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 相違点1-3について 引用発明において、「生産管理者は」、「プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックし、PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用し、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信し」ていることから、PUの見積もりには、PUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMは、各PUの見積もりに含まれるPUの可用性と各生産ステップの価格に基づいてデジタル見積りを作成し、そのデジタル見積もりを顧客に送信しているといえる。ここで、ビジネス分野の技術常識に鑑みると、顧客へのデジタル見積もりは、各PUの見積もりを単にまとめたものではなく、各PUの見積もりに含まれたPUの可用性と各生産ステップの価格を考慮して作成した結果である、使用するPU及び合計価格などを示す内容になっていることは明らかである。そして、PUはアセット(情報システムを構成する機器)であるから、各PUの見積もりに含まれるPUの可用性と各生産ステップの価格は情報の値であり、また、PMもアセット(情報システムを構成する機器)であるから、使用するPU及び合計価格などを示す内容とするために、使用するPUの各生産ステップの価格という情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、その演算処理結果であるデジタル見積もりを顧客に送信していることも明らかである。 したがって、相違点1-3は実質的な相違点ではない。 また、仮に、相違点1-3が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、ビジネス分野及び情報処理分野の技術常識から、相違点1-3の構成とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 よって、本件特許発明1は、引用発明及び上記引用文献2記載周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である。 2 本件特許発明3について (1)本件特許発明3 本件特許発明3は、上記「第3」において示したとおりのものである。 (2)判断 引用発明には、「アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫しており、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができる」こと,及び「階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、階層化されたアセットの最上層のアセットと外部のアセットとの間で管理シェルの特性による情報通信が行われる」ことが記載されていることから、引用発明において、上層の管理シェルが設定された機器は、外部のアセットからの要求を、下層の管理シェルが設定された機器に対してそれぞれ要求する処理を行っていることは明らかである。 よって、本件特許発明3は、引用発明及び上記引用文献2記載周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である。 3 本件特許発明4について (1)本件特許発明4 本件特許発明4は、上記「第3」において示したとおりのものである。 (2)対比 本件特許発明4と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「任意のアセット」は、情報世界におけるI4.0コンポーネントにおいて、「機器」を意味し、「Industrie4.0との間に」「管理シェルを使用して情報技術リンクを作成することを可能」としていることから、「ネットワーク接続可能」であるといえる。また、引用発明における「各I4.0アセット」との記載から、当該「アセット」は複数存在することは明らかであり、「アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫しており、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができる」ものであるから、複数のアセットについて、複数の下層のアセットを上層のアセットによりグループ化し、「階層化」していることは明らかである。また、引用文献1の図11に記載されているように、各階層に管理シェルが配置されるものであり、最下層のアセットは、本件特許発明1の「エッジ側」に配置される機器に相当する。更に、引用文献1の図11に記載されているように、最下層のアセット(e.g. Part)は、上層のアセット(e.g. Machine)内に複数存在することは技術常識であるから、エッジ側に複数の機器が配置されているといえる。 したがって、引用発明の「任意のアセット」は、本件特許発明4の「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器」に相当する。 イ 引用発明の「I4.0コンポーネント」は、階層化されたアセット間や、階層化されたアセットと外部のアセットとの間で情報通信を行うものであり、情報通信とは通常何らかのデータを通信していることからデータの収集を行っているものといえ、当該I4.0コンポーネントを何らかのハードウェアにより実現することは技術常識であるから、後述する相違点を除き、本件特許発明4の「データ収集制御システム」に相当する。また、引用発明の「I4.0コンポーネント」とは、「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、階層化されたアセットの最上層のアセットと外部のアセットとの間で管理シェルの特性による情報通信が行われる」ものであり、外部のアセットは「情報システム」といえるものであるから、上記アを参酌すると、本件特許発明4の「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、クラウド側の情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システム」とは、「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システム」という点で共通する。 ウ 引用発明では、「管理シェルを使用」することで「情報技術リンクを作成することを可能」としていることから、当該「管理シェル」の「Header」に含まれる「管理シェルと代表的なアセットについての識別子」は、「ネットワーク上で用いられる属性」と言い得るものであり、したがって、本件特許発明4の「ネットワーク接続に関する属性」に相当するといえる。また、引用発明の「情報技術リンク」は、「任意のアセットとIndustrie4.0との間」のアクセスに関する情報が含まれるといえることから、本件特許発明4の「前記機器に対するアクセスが登録設定され」たものといえる。更に、引用発明の「管理シェル」は、アセットを「Header」及び「Body」によって情報技術リンク上で扱えるものにすることから、前記アセットをオブジェクト化しているといえるため、結局、引用発明の「管理シェル」は、上記アを参酌すると、本件特許発明4の「複数の前記機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェル」に相当する。 エ 引用発明の「管理シェル」は、「アセットが階層的に配置される場合、すなわち、例えば、アセットがいくつかのサブアセット(詳細な構成)から形成される場合、記述方法が統一されているため、配置は一貫しており、アセットを一緒にグループ化し、より高いレベルのアセット(集約)によって表すことができる」ものであるから、「情報技術リンク」が「作成」されたアセットについて、複数の下層のアセットを上層のアセットによりグループ化し、「階層化」していることは明らかである。また、引用文献1の図11に記載されているように、各階層に管理シェルが配置されるものであるから、引用発明の「管理シェル」を「各階層」に「配置」して「階層化」した構成は、上記アを踏まえると、本件特許発明4の「前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定」する構成に相当するものといえる。 オ 引用発明の「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ」ることは、階層化されていることから複数のアセットが存在し、アセットは上記アを参酌すると「機器」を意味するため、「複数の機器」が存在するといえ、階層間にて情報通信が行われることは当該複数の機器は何らかの接続がされているといえることから、本件特許発明4の「複数の機器に接続」されるものといえる。 次に、引用発明の「外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」ことについて、「管理シェルの特性による」ことは、本件特許発明4における「管理シェルの設定に基づ」くものに相当し、上述のとおり「階層化されたアセット」は本件特許発明4における「複数の機器」に相当し、引用発明の「外部のアセット」が、本件特許発明4における「情報システム」といえるものである。 よって、引用発明における「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」ことは、本件特許発明4の「複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された制御情報を複数の前記機器に送信」することとは、「複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報をクラウドの情報システムに送信するとともに、前記情報システムから送信された情報を複数の前記機器に送信」するという点で共通する。 カ 引用発明の「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、外部のアセットから階層化されたアセットの最上層のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信、及び階層化されたアセットの最上層のアセットから外部のアセットへの管理シェルの特性による情報の送信が行われる」ことについて、上記イを参酌すると、引用文献1の図12に記載された外部のアセットは、本件特許発明4の「情報システム」に相当し、引用文献1の図12の外部のアセットは、左側に記載された各アセットの情報を収集し、また各アセットに対して情報を送信しているため、引用発明の「階層化されたアセットにおいては、階層間にて管理シェルの特性による情報通信が行われ、階層化されたアセットと外部のアセットとの間では、階層化されたアセットの最上層のアセットと外部のアセットとの間で管理シェルの特性による情報通信が行われる」ことは、本件特許発明4の「前記情報システムは、複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し所定の制御情報を送信する」こととは、「前記情報システムは、複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し情報を送信する」という点で共通する。 キ 引用発明において、「生産ラインは、一連の生産ユニット(PU)と生産管理者(PM)で構成され、どちらのインスタンスも、RAMI4.0に基づいて構造化された情報と特徴をもつI4.0コンポーネントであ」ることから、PU及びPMは管理シェルがラップされたアセットであることが明らかである。また、PMが上層であり、PUが下層であることも明らかである。したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「生産管理者(PM)」及び「生産ユニット(PU)」は、本件特許発明4の「上層の前記管理シェルが設定された機器」及び「下層の前記管理シェルが設定された機器」に相当する。 ク 引用発明において、「生産管理者は」、「プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックし、PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用し、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信し」ていることから、PMは、PUの見積もりという情報を集め、その結果であるデジタル見積もりを顧客に送信しているといえる。また、引用発明の「顧客」は外部のアセットであることは明らかであるから、上記オを踏まえると、引用発明の「顧客」は、本件特許発明4の「情報システム」に相当する。 ケ 上記キ及びクを踏まえると、本件特許発明4の「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を前記情報システムに送信する処理を行」うことと引用発明は、「上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報を集め、当該結果を前記情報システムに送信する処理を行う」という点で共通する。 よって、本件特許発明4と引用発明とは、下記の一致点・相違点があるといえる。 [一致点] 「ネットワークのエッジ側に配置される複数の機器と、情報システムとの間をデータ収集制御装置を介してネットワーク接続するデータ収集制御システムであって、 複数の前記機器毎にネットワーク接続に関する属性、および前記機器に対するアクセスが登録設定され、前記機器をオブジェクトとして抽象化する管理シェルを有し、前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器に対応して最下層に配置した管理シェルと、複数の前記機器が接続され複数の前記機器を管理する機器に対応して前記最下層より上層に配置した管理シェルと、に階層化して設定し、 前記データ収集制御装置は、複数の前記機器に接続され、前記管理シェルの設定に基づき、複数の前記機器の情報を情報システムとの間で情報通信が行われ、 上層の前記管理シェルが設定された機器は、下層の前記管理シェルが設定された機器の情報を集め、当該結果を前記情報システムに送信する処理を行い、 前記情報システムは、 複数の前記機器の情報を収集し、当該収集した情報に基づき複数の前記機器に対し情報を送信することを特徴とするデータ収集制御システム。」 [相違点] (相違点4-1) 情報システムは、本件特許発明4では「クラウド」にあるのに対し、引用発明では、クラウド上であるかどうか特定されていない点。 (相違点4-2) 情報システムから複数の機器に送信される情報が、本件特許発明4では「制御情報」であるのに対し、引用発明では、「制御情報」であるとは明示されていない点。 (相違点4-3) 上層の前記管理シェルが設定された機器における下層の前記管理シェルが設定された機器の情報に対する処理について、本件特許発明4では「情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を」「送信する」のに対し、引用発明では、PMがPUの情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、当該演算処理結果を送信しているのか、明確に特定されていない点。 (3)判断 ア 相違点4-1について 上記1(2)イの「引用文献2記載周知技術」で示したように、Industrie4.0において、情報の送受信先をクラウドとすることは周知技術であるから、引用発明においても情報システムをクラウド上にあるようにすることは当業者にとって容易になし得たことである。 イ 相違点4-2について 情報システムから複数の機器への情報の送信において、複数の機器へ送信される情報に何らかの制御情報(例えば、情報取得のためのsysteminfoコマンドのような周知の制御情報)が含まれるようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 ウ 相違点4-3について 引用発明において、「生産管理者は」、「プール内で利用可能なPUの能力で生産オプションをチェックし、PUの見積もりに基づくこのチェックには、注文価格を決定することができるためのPUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMのアルゴリズムは、必要な生産機能を決定し、適切で利用可能なPUを求めて、「生産現場」のPUプール(生産リソース)を探索するための要求を使用し、PUの可用性と製造ステップごとの価格など、ある基本的な条件が満たされる場合、PMは顧客にデジタル見積りを送信し」ていることから、PUの見積もりには、PUの可用性と各生産ステップの価格が含まれ、PMは、各PUの見積もりに含まれるPUの可用性と各生産ステップの価格に基づいてデジタル見積りを作成し、そのデジタル見積もりを顧客に送信しているといえる。ここで、ビジネス分野の技術常識に鑑みると、顧客へのデジタル見積もりは、各PUの見積もりを単にまとめたものではなく、各PUの見積もりに含まれたPUの可用性と各生産ステップの価格を考慮して作成した結果である、使用するPU及び合計価格などを示す内容になっていることは明らかである。そして、PUはアセット(情報システムを構成する機器)であるから、各PUの見積もりに含まれるPUの可用性と各生産ステップの価格は情報の値であり、また、PMもアセット(情報システムを構成する機器)であるから、使用するPU及び合計価格などを示す内容とするために、使用するPUの各生産ステップの価格という情報の値を集計する所定の演算処理を実行し、その演算処理結果であるデジタル見積もりを顧客に送信していることも明らかである。 したがって、相違点4-3は実質的な相違点ではない。 また、仮に、相違点4-3が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、ビジネス分野及び情報処理分野の技術常識から、相違点4-3の構成とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 よって、本件特許発明4は、引用発明及び上記引用文献2記載周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である。 4 本件特許発明5について (1)本件特許発明5 本件特許発明5は、上記「第3」において示したとおりのものである。 (2)引用文献3について 取消理由通知において引用した引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「2.6 ドイツにおけるスマートファクトリーの研究開発2015年4月に開かれたハノーバー見本市は,どのブースを見てもインダストリー 4.0一色であった.しかし,情報通信技術の活用による新製品の提案をインダストリー 4.0と称しているものも多く,つながる工場という意味での展示ブースは必ずしも多くなかった.その中でも最も注目されていたのは,ドイツ中西部のカイザースラウテルン市にある世界的に有名な人工知能研究所のチュールケ教授を中心としたグループの展示であった.(中略)さて,チュールケ教授のスマートファクトリーとはどのようなものであろうか.ハノーバー見本市での展示はデモ用に作成された名刺ホルダーを作成する装置群である.名刺ホルダーといっても受注から始まり,ケースの張合せ,エッチングによる模様の刻印,色の選択,所有者の名入れなど様々な工程がある.これらの工程を作業する装置メーカは全て異なるが,異なる企業の製造装置が横一列でつながり,製造速度を落とすことなく作業が進行する.」(19ページ左欄39行-右欄29行) 「 [図:0001398221000008.jpg] 図5」 上記図5からは、通信規格の異なる各社の装置をつなげる構成が見て取れる。 (3)判断 引用発明のIndustrie4.0とは、引用文献3にも記載されているように、異なるメーカ及び通信規格の装置を結びつけることを可能とするものであるから、引用発明における「階層化されたアセット」のそれぞれのアセットについても、引用文献3に記載された異なるメーカ及び通信方式を有するアセットを採用することは、当業者が容易になし得たことである。また、引用発明の「管理シェル」は、各I4.0アセットをラップすること、及び階層化されたアセットと外部のアセットとの間で情報通信を行うことが記載されていることから、本願発明5の「前記管理シェルは、複数の前記機器が送信する情報をラッピングして前記情報システムに送信すること」に相当する。 よって、本件特許発明5は、引用発明、上記引用文献2記載周知技術、及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である。 5 本件特許発明6について (1)本件特許発明6 本件特許発明6は、上記「第3」において示したとおりのものである。 (2)判断 引用文献1の図12に示されているように、引用発明の管理シェルは、ネットワークの各アセットに階層化して設定されていることから、引用発明の「各I4.0アセットを「管理シェル」でラップする」ことは、本件特許発明6の「前記管理シェルを、ネットワークのエッジ側に配置される複数の前記機器、および複数の前記機器が接続される機器、に階層化して設定」することに相当する。 また、情報システムから各階層の装置に送信される情報が、本件特許発明6では「制御情報」であるのに対し、引用発明では、「制御情報」であるとは明示されていないものの、引用発明において、情報システムから各階層の装置への情報の送信する際に、各階層の装置へ送信される情報に何らかの制御情報(例えば、情報取得のためのsysteminfoコマンドのような周知の制御情報)が含まれるようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 よって、本件特許発明6は、引用発明及び上記引用文献2記載周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である。 6 本件特許発明7及び8について 本件特許発明7及び8は、本件特許発明1の「データ収集制御装置」の発明を、それぞれ、「データ収集制御方法」及び「データ収集プログラム」の発明として記載したものであるから、上記「1 本件特許発明1について」で検討したことと同様のことがいえる。 したがって、本件特許発明7、8は、引用発明及び上記引用文献2記載周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許発明1、3、4、6-8は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明5は、引用文献1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1、3-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件特許発明1、3-8の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701070

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