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特許異議申立

2023-701354

ログ解析システム及びログ解析方法

審判番号
2023-701354
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-103848外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7300317
請求日
2023年12月21日
審決日
2025年03月06日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZDA(G06F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

結論

結 論
特許第7300317号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3、5~8〕、9、10、12~15について訂正することを認める。
特許第7300317号の請求項1、2、9、10に係る特許を取り消す。
特許第7300317号の請求項3~8、11~15に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 33項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7300317号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、2019年(令和元年)6月3日を出願日とする特願2019-103848号であって、令和5年6月21日にその特許権についての設定登録がされ、同年6月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月21日に、特許異議申立人である鈴木 沙希子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた(以下、当該申立てを「申立て」という。)

その後の経緯は、以下のとおりである。

令和6年 2月27日付け: 取消理由通知書

同年 4月24日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)

同年 5月17日付け: 手続補正指令書(方式)

同年 5月30日 : 手続補正書(方式)

同年 7月25日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)

同年10月31日付け: 取消理由通知書(決定の予告)

なお、令和6年7月25日付けの「訂正請求があった旨の通知」に対し、申立人からの応答はなかった。

また、同年10月31日付けの「取消理由通知書(決定の予告)」に対し、特許権者から意見書の提出はなかった。

第2 特許異議申立理由の概要

申立人が、本件訂正前の請求項1~11に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の概略、及び、証拠方法として提出した甲第1号証~甲第3号証(以下、例えば、「甲第1号証」を「甲1」などという。)は、次のとおりのものである。

1 特許異議申立理由

(1)甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性欠如

本件特許の請求項1~11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 証拠方法

甲第1号証:特開2016-114985号公報
甲第2号証:特開2002-297540号公報
甲第3号証:特開2017-059926号公報

第3 訂正請求について

1 令和6年5月30日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)について

本件補正は、令和6年4月24日提出の訂正請求書の「7請求の理由」において、適用条文の誤記を補正するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

したがって、本件補正による訂正請求書の補正を認める(特許法第120条の5第9項において準用する特許法第131条の2第1項)。

2 訂正の趣旨

令和6年4月24日に提出され、本件補正により補正された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)による訂正請求の趣旨は、「特許第7300317号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3、5~10及び12~15について訂正することを求める。」というものである。

3 訂正の内容

上記訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(各訂正事項中の下線は、訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「データ」と記載されているのを、「ユーザデータ」に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「受信データ」と記載されているのを、「受信ユーザデータ」に訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記VPN装置は、前記受信データが画像データであって、予め定めた対象を含む画像データである場合には前記予め定めた対象を含む画像データをログとして記憶する、請求項2に記載のログ解析システム。」と記載されているのを、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、前記収集されたログを解析する、解析装置と、を含み、前記VPN装置は、受信データの特性に応じて前記受信データをログとして記憶するか否かを定め、前記VPN装置は、前記受信データが画像データであって、予め定めた対象を含む画像データである場合には前記予め定めた対象を含む画像データをログとして記憶する、ログ解析システム。」に訂正する。

(4)訂正事項4

(訂正事項4-1)

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項3又は4を引用するものについて、「請求項3又は4のいずれか一項に記載のログ解析システム。」に訂正する。

(訂正事項4-2)

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、前記収集されたログを解析する、解析装置と、を含み、前記VPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶し、前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する、ログ解析システム。」と記載し、新たに請求項12とする。

(訂正事項4-3)

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、前記収集されたログを解析する、解析装置と、を含み、前記VPN装置は受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定め、前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する、ログ解析システム。」と記載し、新たに請求項13とする。

(5)訂正事項5

(訂正事項5-1)

特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項3乃至6を引用するものについて、「請求項3乃至6のいずれか一項に記載のログ解析システム。」に訂正する。

(訂正事項5-2)

特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、前記収集されたログを解析する、解析装置と、を含み、前記VPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶し、前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する、ログ解析システム。」と記載し、新たに請求項14とする。

(訂正事項5-3)

特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか一項に記載のログ解析システム。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、前記収集されたログを解析する、解析装置と、を含み、前記VPN装置は、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定め、前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する、ログ解析システム。」と記載し、新たに請求項15とする。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項9に「データ」と記載されているのを、「ユーザデータ」に訂正する。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項10に「受信データ」と記載されているのを、「受信ユーザデータ」に訂正する。

4 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1~3、5~8について、請求項5~8は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであり、請求項3、5~8は、請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであるから、請求項3、5~8は、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1~3に連動して訂正されるものである。

また、訂正後の請求項12は、訂正前の請求項1を引用する請求項5を独立項としたものであり、訂正後の請求項13は、訂正前の請求項2を引用する請求項5を独立項としたものであり、訂正後の請求項14は、訂正前の請求項1を引用する請求項7を独立項としたものであり、訂正後の請求項15は、訂正前の請求項2を引用する請求項7を独立項としたものである。

したがって、訂正前の請求項1~3、5~8に対応する訂正後の請求項〔1~3、5~8、12~15〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

5 訂正の適否についての判断

(1)訂正事項1

ア 訂正の目的

訂正前の請求項1に係る特許発明は、「データ」を特定している。これに対して、訂正後の請求項1は、「ユーザデータ」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるデータの内容をより具体的に特定し、更に限定するものである。

すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項1は、明細書記載の第1の実施形態に基づいて導き出される構成である。この第1の実施形態に係る説明として、段落【0019】には、「・・・VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。・・・」との記載がなされていることから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「データ」という発明特定事項を概念的により下位の「ユーザデータ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2

ア 訂正の目的

訂正前の請求項2に係る特許発明は、「受信データ」を特定している。これに対して、訂正後の請求項2は、「受信ユーザデータ」との記載により、訂正後の請求項2に係る発明における受信データの内容をより具体的に特定し、更に限定するものである。

すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項2は、明細書記載の第1の実施形態に基づいて導き出される構成である。この第1の実施形態に係る説明として、段落【0019】には、「・・・VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。・・・」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、「受信データ」という発明特定事項を概念的により下位の「受信ユーザデータ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項2について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3

ア 訂正の目的

訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

訂正事項3は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)訂正事項4、5

ア 訂正の目的

訂正事項4は、訂正事項4-1により、訂正前の請求項5が「請求項1乃至4のいずれか一項」を引用していたものを「請求項3又は4のいずれか一項」を引用するものとすることで、引用関係の一部を削除し、訂正事項4-2により、訂正前の請求項1を引用する請求項5を、独立形式請求項へ改めて新たに請求項12とし、訂正事項4-3により、訂正前の請求項2を引用する請求項5を、独立形式請求項へ改めて新たに請求項13とするものである。

また、訂正事項5は、訂正事項5-1により、訂正前の請求項7が「請求項1乃至6のいずれか一項」を引用していたものを「請求項3乃至6のいずれか一項」を引用するものとすることで、引用関係の一部を削除し、訂正事項5-2により、訂正前の請求項1を引用する請求項7を、独立形式請求項へ改めて新たに請求項14とし、訂正事項5-3により、訂正前の請求項2を引用する請求項7を、独立形式請求項へ改めて新たに請求項15とするものである。

そして、上記訂正事項4及び訂正事項5の結果として、請求項1を直接または間接的に引用する請求項5~8のうち、請求項1を引用する請求項5(新たな請求項12)、及び請求項1を引用する請求項7(新たな請求項14)以外の請求項は全て削除され、請求項2を直接または間接的に引用する請求項3、5~8のうち、請求項2を引用する請求項5(新たな請求項13)、及び、請求項2を引用する請求項7(新たな請求項15)以外の請求項は全て削除された。

また、訂正事項4-2及び訂正事項5-2は、「データ」を「ユーザデータ」と限定するものであり、訂正事項4-3及び訂正事項5-3は、「受信データ」を「受信ユーザデータ」と限定するものである。

したがって、訂正事項4及び訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項4-1及び訂正事項5-1は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

訂正事項4-2、訂正事項4-3、訂正事項5-2、及び訂正事項5-3は、明細書記載の第1の実施形態に基づいて導き出される構成である。この第1の実施形態に係る説明として、段落【0019】には、「・・・VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。・・・」との記載がなされていることから、当該訂正事項4-2、訂正事項4-3、訂正事項5-2、及び訂正事項5-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項4-1及び訂正事項5-1は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

訂正事項4-2及び訂正事項5-2は、「データ」を「ユーザデータ」と限定するものであり、訂正事項4-3及び訂正事項5-3は、「受信データ」を「受信ユーザデータ」と限定するものであり、訂正事項4-2、訂正事項4-3、訂正事項5-2、及び訂正事項5-3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項5について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項4-1、訂正事項4-2及び訂正事項4-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

また、本件においては、訂正前の請求項7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項5-1、訂正事項5-2及び訂正事項5-3に関して、許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(5)訂正事項6

ア 訂正の目的

訂正前の請求項9に係る特許発明は、「データ」を特定している。これに対して、訂正後の請求項9は、「ユーザデータ」との記載により、訂正後の請求項9に係る発明におけるデータの内容をより具体的に特定し、更に限定するものである。

すなわち、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項6は、明細書記載の第1の実施形態に基づいて導き出される構成である。この第1の実施形態に係る説明として、段落【0019】には、「・・・VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。・・・」との記載がなされていることから、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、「データ」という発明特定事項を概念的により下位の「ユーザデータ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項9について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項9に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(6)訂正事項7

ア 訂正の目的

訂正前の請求項10に係る特許発明は、「受信データ」を特定している。これに対して、訂正後の請求項10は、「受信ユーザデータ」との記載により、訂正後の請求項10に係る発明における受信データの内容をより具体的に特定し、更に限定するものである。

すなわち、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項7は、明細書記載の第1の実施形態に基づいて導き出される構成である。この第1の実施形態に係る説明として、段落【0019】には、「・・・VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。・ ・・」との記載がなされていることから、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

上記アの理由から明らかなように、訂正事項7は、「受信データ」という発明特定事項を概念的により下位の「受信ユーザデータ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

本件においては、訂正前の請求項10について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項10に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

6 別の訂正単位とする求めについて

訂正後の請求項〔1~3、5~8、12~15〕については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正する求めがあり、上記5(1)~(4)のとおり訂正が認められるから、別の訂正単位とすることを認める。

7 訂正請求についての結論

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3、5~8〕、9、10、12~15について訂正することを認める。

第4 訂正後の本件特許

本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】(本件発明1)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶する

ログ解析システム。

【請求項2】(本件発明2)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定める

ログ解析システム。

【請求項3】(本件発明3)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、受信データの特性に応じて前記受信データをログとして記憶するか否かを定め、

前記VPN装置は、前記受信データが画像データであって、予め定めた対象を含む画像データである場合には前記予め定めた対象を含む画像データをログとして記憶する、

ログ解析システム。

【請求項4】(本件発明4)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、前記サーバから暗号化されたデータを受信した際、前記サーバから受信したデータに前記端末が正常な応答をしない場合には、前記端末とサーバ間の通信を復号しない

ログ解析システム。

【請求項5】(本件発明5)

前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する、請求項3又は4のいずれか一項に記載のログ解析システム。

【請求項6】(本件発明6)

前記解析装置は、前記アクセスフローを生成する際の段数を外部から取得する、請求項5に記載のログ解析システム。

【請求項7】(本件発明7)

前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、

前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する、請求項3乃至6のいずれか一項に記載のログ解析システム。

【請求項8】(本件発明8)

前記解析装置は、前記ログ解析動作設定情報に基づき前記ログ収集動作設定情報を生成し、前記生成されたログ収集動作設定情報を前記VPN装置に送信する、請求項7に記載のログ解析システム。

【請求項9】(本件発明9)

VPN装置のプロセッサによって、

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集するステップと、

解析装置のプロセッサによって、

前記収集されたログを解析するステップと、

を含み、さらに

前記VPN装置のプロセッサによって、

暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶するステップを含む

ログ解析方法。

【請求項10】(本件発明10)

VPN装置のプロセッサによって、

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集するステップと、

解析装置のプロセッサによって、

前記収集されたログを解析するステップと、

を含み、さらに

前記VPN装置のプロセッサによって、

受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めるステップを含む

ログ解析方法。

【請求項11】(本件発明11)

VPN装置のプロセッサによって、

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集するステップと、

解析装置のプロセッサによって、

前記収集されたログを解析するステップと、

を含み、さらに

前記VPN装置のプロセッサによって、

前記サーバから暗号化されたデータを受信した際、前記サーバから受信したデータに前記端末が正常な応答をしない場合には、前記端末とサーバ間の通信を復号しないステップを含む

ログ解析方法。

【請求項12】(本件発明12)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network) 装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶し、

前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する

ログ解析システム。

【請求項13】(本件発明13)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定め、

前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する、

ログ解析システム。

【請求項14】(本件発明14)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶し、

前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、

前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する、

ログ解析システム。

【請求項15】(本件発明15)

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記VPN装置は、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定め、

前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、

前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する、

ログ解析システム。

第5 取消理由の概要

本件訂正前の請求項1、2、9、10に係る特許に対して、令和6年2月27日付けで当審が特許権者に通知した取消理由は、概略、次のとおりのものである。

1 進歩性について

(1)本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明9は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明10は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 甲号証及び引用文献の記載事項

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1 甲第1号証について

(1) 甲第1号証に記載された事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

ア 「【0018】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係るシステム構成の一例を示す図である。図1のシステムは、会社等のような所定の組織が利用するイントラネット(内部ネットワークとも呼ぶ)であるローカル・エリア・ネットワーク(LAN:Local Area Network)1と、インターネット等の外部ネットワーク2と、本発明に係る解析処理を行う解析装置3とを含む。なお、外部ネットワーク2には、図示していないウェブサーバやメールサーバ、その他の様々なオンラインサービスを提供するサーバ等が接続されているものとする。なお、解析装置3は、LAN1内に接続される構成であってもよい。
【0019】
LAN1には、LAN1の一端であって外部ネットワーク2との境界に設けられるプロキシサーバ11と、ウェブサーバ、メールサーバ、ファイルサーバ等であるサーバ12と、LAN1を利用する組織の構成員(メンバー)が利用するコンピュータである端末13(図1の例では、13a及び13b)と、無線LANルータ14とを含む。なお、LAN1に含まれる機器は、図示していないルータやスイッチ、ハブ等を介して、有線又は無線により接続される。プロキシサーバ11は、LAN1に接続された端末13と外部ネットワーク2との通信を仲介する代理サーバである。本実施形態では、プロキシサーバ11は、LAN1に接続された端末13と外部ネットワーク2との通信履歴(通信ログ)を蓄積し、所定のタイミングで通信ログを解析装置3に送信する。なお、端末13のユーザ(すなわち、LAN1を利用する組織のメンバー)ごとに外部ネットワーク上のサービスに対する通信の可否を定めておき、プロキシサーバ11は、端末13ごとにアクセスを制御するようにしてもよい。また、端末13の各々が閲覧したウェブサイトの情報を所定期間キャッシュしておき、当該期間内にいずれかの端末13から同一のウェブサイトへの閲覧要求があった場合には、プロキシサーバ11はキャッシュしている情報を返すようにしてもよい。また、サーバ12が外部ネットワーク2に公開される場合は、サーバ11は非武装地帯(DMZ:DeMilitarized Zone)に設置されていてもよい。端末13は、例えばデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、ワークステーション、スレートPC、スマートフォン、携帯電話機等のコンピュータである。図1の例では端末13a及び端末13bを示したが、LAN1に接続される端末13の数は特に限定されない。」
イ 「【0030】
また、本実施形態に係るプロキシサーバは、SSL(/TLS)通信を復号し、ログを平文で蓄積する。図4A、図4Bは、SSL通信を説明するための模式的なシーケンス図である。図4Aは、SSL暗号化通信の開始までに行うハンドシェイクを説明するための図である。まず、端末13は外部ネットワークに存在するサーバ(ここでは、ウェブサーバとする)に対してSSL通信の開始を要求する。このとき、プロキシサーバ11は通信を仲介する(図4A:(1)、(2))。一方、ウェブサーバはサーバ証明書を端末13に向けて送信する(図4A:(3))。このとき、ウェブサーバの公開鍵が送信される。また、これを中継するプロキシサーバ11は、ウェブサーバの公開鍵を保持し(図4A:(4))、端末13へは、例えばウェブサーバの証明書に記述されている識別名(Subject DN(Distinguished Name))等に基づいて生成及び署名した証明書を送信する(図4A:(5))。なお、秘密鍵を利用可能な既存の証明書を送信するようにしてもよい。このような中間者攻撃の手法を用いた処理は、例えばSSLsplitのような既存のツールを用いて実行することもできる。その後、端末13は、共通鍵を生成し(図4A:(6))、プロキシサーバ11から受信した公開鍵で暗号化して、ウェブサーバへ向けて送信する(図4A:(7))。これを中継するプロキシサーバ11は、例えば自身が生成及び署名して端末13に送信した証明書の公開鍵と対になる秘密鍵を用いて、端末13から受信した共通鍵を復号し、記憶部に保持する。また、プロキシサーバ11は、復号化された共通鍵をウェブサーバの公開鍵で暗号化し、ウェブサーバへ送信する(図4A:(9))。そして、ウェブサーバは端末13が生成した共通鍵を受信する(図4A:(10))。
【0031】
図4Bは、SSL暗号化通信が確立した後の通信を示す模式的なシーケンス図である。まず、端末13は、共通鍵を用いて、送信する平文から暗号文を生成し(図4B:(11))、暗号文をウェブサーバへ送信する(図4B(12))。これを中継するプロキシサーバ11は、自身が保持している共通鍵を用いて通信の内容を復号し、ログにレコードを記録する(図4B:(13))。そして、端末から受信した暗号文をウェブサーバへ転送する(図4B(14))。一方、ウェブサーバは、共通鍵を用いて受信した暗号文を復号する(図4B:(15))。そして、応答の内容を、共通鍵を用いて暗号化し(図4B:(16))、暗号文を端末13へ送信する(図4B(17))。これを中継するプロキシサーバ11は、自身が保持している共通鍵を用いて通信の内容を復号し、ログにレコードを記録する(図4B:(18))。そして、ウェブサーバから受信した暗号文を端末13へ転送する(図4B(19))。その後、端末13は、共通鍵を用いて受信した暗号文を復号する(図4B:(20))。以上のように、本実施形態に係るプロキシサーバ11は、SSL暗号化通信の内容もログに蓄積することができる。」
ウ 「【図1】
[図:0001426797000001.jpg]
」
エ 「【図4A】
[図:0001426797000002.jpg]
」
オ 「【図4B】
[図:0001426797000003.jpg]
」

(2) 甲1発明

上記ア~オの記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「LAN1に含まれ、端末13がウェブサーバへ送信する暗号文を中継して通信の内容を復号し、ログにレコードを記録し、端末から受信した暗号文をウェブサーバへ転送し、ウェブサーバが端末13へ送信する暗号文を中継して通信の内容を復号してログにレコードを記録し、ウェブサーバから受信した暗号文を端末13へ転送する、プロキシサーバ11と、
解析処理を行う解析装置3と、
を含み、
前記プロキシサーバ11は、暗号文を受信し、通信の内容を復号し、ログにレコードを記録する
システム。」

2 甲第2号証について

(1) 甲第2号証に記載された事項

甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0020】
ログ収集システムは、ログ収集サーバ10と複数のクライアント11とネットワーク・タイム・サーバ12とがネットワークによって相互に接続されて構成されている。ログ収集サーバ10およびクライアント11は、CPU、メモリ、ハードディスク、入力装置、出力装置等を含むコンピュータ・システムである。ネットワーク・タイム・サーバ12は、CPU、メモリ、ハードディスク等を含むコンピュータ・システムである。ここで、クライアントとは、ログ収集サーバ10との関係におけるクライアントを意味する。すなわち、このログ収集システムにおけるクライアントは、WWWサーバ、メール・サーバ等のサーバ機能を有するコンピュータ・システムを含む。ログ収集システムにおいては、WWWサーバやメール・サーバ等も、ログ収集サーバ10にネットワークを介して接続されるクライアントとして位置づけられる。
【0021】
ネットワーク・タイム・サーバ12は、衛星13から送信されるGPS(Global Positioning System)の時間同期信号を受信するレシーバを備えている。クライアント11とサーバ10とで構成されるネットワークとは独立した時間信号発信源から、正確な時間が取得される。ログ収集サーバ10は、ネットワーク・タイム・サーバ12を介して、正確な時間を得ることができる。
【0022】
ログ収集サーバ10は、後述するように、クライアント11において作成されるログを収集し、収集したログを保存する。また、クライアント11の認証とともに、クライアント11から送られてくるログの証拠性をチェックする機能を有している。」
イ 「【0049】
処理108では、前記ヘッダが公開鍵で暗号化される(図5(3))。
【0050】
処理109では、クライアントAは上記暗号化ヘッダと前記セッション鍵で暗号化されたログ(暗号化ログ)とを統合する。上記暗号化ヘッダと暗号化ログとの間には制御コードが挿入される。
続きを表示(全22行)
【0051】
処理110では、クライアントAは前記統合されたデータ(暗号化ヘッダと暗号化ログ)をログ収集サーバ10に送信する(図5(4))。
【0052】
処理207では、ログ収集サーバ10はクライアントAより送信された前記統合化されたデータを受信する。ログ収集サーバ10は制御コードに基づいて、統合化されたデータにおける暗号化ヘッダと暗号化ログとの区切り(境界)を認識する。統合化データが、暗号化ヘッダと暗号化ログとに分離(分解)される(図6(1))。
【0053】
処理208において、ログ認証サーバ10は、復号プログラムを用いて前記暗号化ヘッダを秘密鍵で復号する。ハッシュダイジェスト(A)と、セッション鍵と、暗号化タイムスタンプからなるヘッダが生成される(図6(2))。制御コードに基づいて、ハッシュダイジェスト(A)と、セッション鍵と、暗号化タイムスタンプとに分離される。
【0054】
処理209では、ログ収集サーバ10は復号プログラムを用いて前記暗号化タイムスタンプを前記タイムスタンプ用鍵で復号する。タイムスタンプが得られる(図6(3))。
【0055】
処理210では、さらに、ログ収集サーバ10は、復号プログラムを用いて、暗号化ログをセッション鍵で復号する。ログが得られる(図6(4))。
【0056】
処理211では、ログ収集サーバ10は、復号によって得られたログをハッシュ関数にかけ、ハッシュダイジェスト(C)を作成する(図6(5))。
【0057】
処理212において、ログ収集サーバ10は、図2(B)に示すテーブルにアクセスし復号によって得られたタイムスタンプをキーにして、ハッシュダイジェスト(B)を取得する。
【0058】
処理213では、ログ収集サーバ10は復号によって得られたヘッダに含まれているハッシュダイジェスト(A)と、テーブルに保持されているハッシュダイジェスト(B)と、復号によって得られたログにハッシュ関数をかけることによって得られたハッシュダイジェスト(C)とを比較、確認する。不一致があった場合は処理を中止し、全てが一致した場合は処理214へ進む。
【0059】
処理214では、ログ収集サーバ10はヘッダとログとを保存する。」
ウ 「【図1】
[図:0001426797000004.jpg]
」
エ 「【図4】
[図:0001426797000005.jpg]
」

(2) 甲2発明

上記ア~エの記載からみて、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「ログ収集サーバ10と複数のクライアント11とがネットワークによって相互に接続されたログ収集システムにおいて、
クライアントAは、暗号化ヘッダと暗号化されたログ(暗号化ログ)とを統合して、ログ収集サーバ10に送信し、
前記ログ収集サーバ10は、クライアントAより送信された前記統合化されたデータを受信し、前記統合化されたデータを暗号化ヘッダと暗号化ログとに分離(分解)し、前記暗号化ヘッダを復号し、暗号化ログを復号してログを得、前記ヘッダと前記ログとを保存する、
ログ収集システム。」

3 甲第3号証について

(1) 甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0022】
まず、以下、本発明にかかる本実施の形態のシステムの概要について説明し、その後、本実施の形態の構成および処理等について詳細に説明する。ここで、図1は、本実施の形態にかかる無線通信共有システムの全体概要を示す構成図である。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態にかかる無線通信共有システムは、仮想プライベートネットワーク(VPN)サーバ200と、当該VPNサーバにネットワーク300を介して接続されたアクセスポイント(AP)装置400と、当該AP装置400に無線LANを介して接続された端末装置100とを備えて構成される。なお、端末装置100やAP装置400は、携帯可能な端末であってもよく、それぞれ複数台備えていてもよい。一例として、これら複数台の端末装置100と複数のAP装置400は、Wi-Fiなどの無線LANの電波到達範囲内で、任意の組合せで分散型無線ネットワークを構築可能である。なお、本実施の形態にかかる無線通信共有システムは、図1に示すように、更に、認証課金システム100と、ログ解析広告システム800と、APIサーバを備えてもよい。
続きを表示(全75行)
また、ネットワーク300は、VPNサーバ200やAP装置400やAPIサーバ500や認証課金システム600やログ解析広告システム800等を相互に接続する機能を有し、例えば、インターネットや携帯電話通信網等であってもよい。
・・・中略・・・
【0039】
また、図2において、VPNサーバ200は、ネットワーク300を介して、AP装置400と相互に接続され、VPNサーバ機能を有する。図2に示すように、端末装置100からVPNサーバ200へのVPN通信が正しく確立すると、AP装置400やネットワーク300を介したVPNサーバ200との通信が暗号化されるので、ネットワーク300がインターネット等の公衆ネットワークであっても仮想的な通信トンネルとなり、悪意ある通信傍受を妨げることができる。
・・・中略・・・
【0048】
[無線通信共有処理]
次に、このように構成された本実施の形態における無線通信共有システムの処理の一例について、以下に図3および図4を参照して詳細に説明する。
【0049】
[処理例(AndroidOS)]
図3は、OS種別がAndroidOSである場合の端末装置100の処理の一例を示すフローチャートである。ここで、一例として、あらかじめ他の端末装置100は、自分のWi-Fiを選択して、パスワード、Wi-Fi名、Wi-FiのMACアドレス、および、位置情報を登録することにより、AP装置400として挙動してもよい(SA-0参照)。
【0050】
図3に示すように、まず、端末装置100のアプリケーション部102cは、APIサーバ500から、パスワードやVPN設定等を含むVPN接続情報を取得する(ステップSA-1)。より具体的には、アプリケーション部102cは、通信制御インターフェース部104を介して、共有可能なWiFi(シェアWiFi)一覧表を出力部114に表示させ、入力部114を介して利用者にWiFi一覧中の一つをタップ選択させることにより、APIサーバ500からVPN接続情報を取得して、アプリ記憶部106bに保存してもよい。
【0051】
つづいて、アプリケーション部102cは、アプリ記憶部106bに記憶されたVPN接続情報を参照して、AP装置400を介したVPNサーバ200へのVPN通信を確立し、安全にWiFiを共有する(ステップSA-2)。
【0052】
そして、アプリケーション部102cは、VPサーバ200経由で、インターネット等に接続する(ステップSA-3)。
【0053】
一方、アプリケーション部102cは、AP装置400を介した通信期間中、OS部102aによる直接通信が行われないように監視するため、アプリ内Serviceを起動させる(ステップSA-4)。
【0054】
そして、アプリケーション部102cは、アプリ内Serviceの処理により、シェアWiFi接続時はVPN通信を行っているか、OS通信状況を監視する(ステップSA-5)。
【0055】
そして、アプリケーション部102は、OS部102cがOS通信制御部102bの処理により、直接インターネット接続を行おうとするときは、通信を強制的に遮断する(ステップSA-6)。
【0056】
なお、AndroidOSの構成上、Serviceを消さないとアプリを消すことはできない。そのため、Serviceを消すときは、アプリ記憶部106bのシェアWiFi設定も削除することになる(ステップSA-7)。そのため、シェアWiFiを介したAP装置400へはVPN経由でしか接続できないので、情報漏えいや盗み見を防止することができる。
【0057】
以上が、AndroidOSである場合の端末装置100の処理の一例である。
【0058】
[処理例(iOS)]
図4は、OS種別がiOSである場合の端末装置100の処理の一例を示すフローチャートである。ここで、一例として、あらかじめ他の端末装置100は、自分のWi-Fiを選択して、パスワード、Wi-Fi名、Wi-FiのMACアドレス、および、位置情報を登録することにより、AP装置400として挙動してもよい(SB-0参照)。
【0059】
図4に示すように、まず、端末装置100のアプリケーション部102cは、入力部112を介して得た位置情報に基づいて、周辺のシェアWiFiを出力部114に表示させ、その中の一つを利用者に選択させる(ステップSB-1)。
【0060】
つづいて、端末装置100のアプリケーション部102cは、APIサーバ500から、パスワードやVPN設定等を含むVPN接続情報を取得する(ステップSB-2)。より具体的には、アプリケーション部102cは、シェアWiFi一覧表を出力部114に表示させ、入力部を介して利用者にWiFi一覧中の一つをタップ選択させることにより、APIサーバ500からVPN接続情報を取得して、OS記憶部106aの通信プロファイル情報に保存してもよい。
【0061】
そして、アプリケーション部102cは、AP装置400の接続期間中、必ずOS通信制御部がVPN通信をするように通信プロファイル情報を制御する(ステップSB-3)。
【0062】
そして、OS部102aは、OS通信制御部102bの処理により、OS記憶部106aに記憶されたVPN接続情報を参照して、AP装置400を介したVPNサーバ200へのVPN通信を確立し、安全にWiFiを共有する(ステップSB-4)。
【0063】
そして、OS部102aは、OS通信制御部102bの処理により、VPサーバ200経由で、インターネット等に接続する(ステップSB-5)。
【0064】
ここで、iOSの構成上、OS記憶部106aのProfileを削除すると、シェアWiFiのパスワードも削除される(ステップSB-6)。そのため、OS部102aは、OS通信制御部102bの処理による接続ができなくなる(ステップSB-7)。一方、アプリを削除すると、必ずVPN通信をするよう通信プロファイル情報が書き換えられているので、OS部102aは、OS通信制御部102bの処理により、すべてのWiFi接続でVPN通信をするようになる。そのため、シェアWiFiを介したAP装置400へはVPN経由でしか接続できないことが担保され、情報漏えいや盗み見を防止することができる。
【0065】
以上が、本実施の形態における端末装置100の処理の一例である。
・・・中略・・・
【0081】
[ログ解析広告システムの処理]
つづいて、本実施の形態におけるログ解析広告システム800の処理の一例について、以下に図7を参照して詳細に説明する。図7は、本実施の形態にかかるログ解析広告システムの構成例とデータフローを示すフローチャートである。
【0082】
図7に示すように、一例として、ログ解析広告システム800は、行動ログや閲覧ログを収集するログサーバ801と、収集されたログからユーザ属性を分析する解析サーバ802と、種々の広告データを蓄積する広告データベース(DB)803を備える。以下に、各装置間のデータフローと処理の一例について、図7を参照して説明する。
【0083】
一例として、図7に示すように、まず、端末装置100は、AP装置400を介してVPNサーバ200に対して、特定のIDとパスワードでVPN接続を試行する(ステップSE-1)。
【0084】
そして、VPNサーバ200は、認証サーバ601に対して、IDおよびパスワードの照会を行い(ステップSE-2)、認証サーバ601は、IDおよびパスワードに基づいて会員登録の有無やVPN利用開始日、VPN利用終了予定日を確認し(ステップSE-3)、VPNサーバ200に認証結果を返却する(ステップSE-4)。
【0085】
そして、VPNサーバ200は、認証結果が会員であるか、利用終了予定日前の場合に、インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する(ステップSE-5)。
【0086】
また、端末装置100は、アプリケーション部102cの処理により、位置情報(GPSおよび接続したWiFi等の情報)を取得し、ユーザ行動履歴をログサーバ801に保存すべく送信する(ステップSE-6)。
【0087】
そして、ログサーバ801は、VPNIDをキーとして、受信したログデータを対応付けて保存する(ステップSE-7)。
【0088】
そして、解析サーバ802は、定期的にログサーバ801の集積ログを取得して解析を行う(ステップSE-8)。
【0089】
そして、解析サーバ802は、解析結果としてユーザの属性(特定のURLの閲覧、特定の位置に移動するパターンがある等)を分析し、ユーザ属性に基づいて広告DB803から条件に合う広告データを抽出する(ステップSE-9)。
【0090】
そして、解析サーバ802は、ユーザ属性と現在の行動(位置や閲覧サイト等)に基づいて、広告データを端末装置100のアプリ内に配信する(ステップSE-10)。これにより広告が訴求しうる適切なタイミングで配信を行うことができる。
【0091】
以上で、本実施の形態のログ解析広告システムの処理の例の説明を終える。
・・・中略・・・
【0094】
また、認証課金システム600やログ解析広告システム800は、複数の筐体に分散して保存・処理を行う例を説明したが、これに限られず、単一の筐体にて、スタンドアローンの形態で処理を行うよう一体として構成されてもよい。」
イ 「【図1】
[図:0001426797000006.jpg]
」
ウ 「【図3】
[図:0001426797000007.jpg]
」
エ 「【図4】
[図:0001426797000008.jpg]
」
オ 「【図7】
[図:0001426797000009.jpg]
」

(2) 甲3発明

上記(1)アの段落0052及び0063の「VPサーバ200」は、「VPNサーバ200」の誤記であり、また、上記(1)ウの図3及び上記(1)エの図4における「VPNサーバ400」は、「VPNサーバ200」の誤記であると認められる。

そうすると、上記ア~オの記載からみて、甲第3号証には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「 端末装置100と、VPNサーバ200と、ログ解析広告システム800とを備え(段落0023、図1)、
端末装置100からVPNサーバ200へのVPN通信が正しく確立すると、AP装置400やネットワーク300を介したVPNサーバ200との通信が暗号化され(段落0039)、端末装置100は、VPNサーバ200経由でインターネット等に接続し(段落0052、0063、図3~4)、
ログ解析広告システム800は、行動ログや閲覧ログを収集するログサーバ801と、収集されたログからユーザ属性を分析する解析サーバ802とを備え(段落0082)
VPNサーバ200は、インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する(段落0085)
無線通信共有システム。」

第7 取消理由についての当審の判断

上記第3のとおり本件訂正は認められたところ、上記第4に示した本件発明1、2、9、10に係る特許が上記第5で示した取消理由によって取り消されるべきものであるかについて、以下検討する。

2 本件発明1について

(1) 本件発明1と甲3発明の対比

本件発明1と甲3発明を対比する。

ア 甲3発明の「端末装置100」は、本件発明1の「端末」に相当する。

イ 甲3発明において、「端末装置100は、VPNサーバ200経由でインターネット等に接続」するものであって、「インターネットにアクセスしたログ」は「アクセスしたURL」を含むところ、端末装置100がVPNサーバ200経由でURLにアクセスするものであることからすると、甲3発明の「VPNサーバ200」は、端末装置100と当該URLにより特定される“サーバ”間の通信を“仲介する”といえる。更に、甲3発明において、「端末装置100からVPNサーバ200へのVPN通信が正しく確立すると、AP装置400やネットワーク300を介したVPNサーバ200との通信が暗号化され」るところ、甲3発明の「VPNサーバ200」は、前記特定される“サーバ”から端末装置100への通信を“仲介する”にあたって、VPNサーバ200から端末装置100への通信を暗号化するものである。したがって、VPNサーバ200は、前記特定される“サーバ”から端末装置100への通信を暗号化するものといえるから、上記アの検討を踏まえると、甲3発明の「VPNサーバ200」は、“端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介する”といえる。

ウ 甲3発明において、「端末装置100は、VPNサーバ200経由でインターネット等に接続」するものであって、「インターネットにアクセスしたログ」は、端末装置100が「アクセスしたURL」を含むところ、甲3発明の「インターネットにアクセスしたログ」における「アクセス」は、端末装置100と前記特定される“サーバ”間の通信にあたる。したがって、上記アの検討を踏まえれば、甲3発明の「インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)」は、本件特許1の「前記端末とサーバ間の通信に関するログ」に相当する。

エ 甲3発明の「VPNサーバ200は、インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する」ところ、甲3発明の「VPNサーバ200」が「インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)を」“収集”していることは明らかである。したがって、上記ウの検討を踏まえれば、甲3発明の「VPNサーバ200」は、「前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する」といえる。

オ 上記イ、エの検討を踏まえると、甲3発明の「VPNサーバ200」は、本件発明1の「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置」に相当する。

カ 甲3発明において、「ログ解析広告システム800は、行動ログや閲覧ログを収集するログサーバ801と、収集されたログからユーザ属性を分析する解析サーバ802とを備え」、「VPNサーバ200は、インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する」ところ、上記エの検討を踏まえれば、甲3発明の「行動ログや閲覧ログを収集するログサーバ801と、収集されたログからユーザ属性を分析する解析サーバ802とを備え」る「ログ解析広告システム800」は、本件発明1の「前記収集されたログを解析する、解析装置」に相当する。

キ 上記ア~カの検討を踏まえれば、甲3発明の「無線通信共有システム」は、本件発明1の「ログ解析システム」に対応する。

ク 上記ア~キのことから、本件発明1と甲3発明とは、次の点で一致し、また相違する。

<一致点>

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含む、

ログ解析システム。

<相違点>

本件発明1のVPN装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶するのに対して、甲3発明は、その点が特定されていない点。

(2) 相違点の判断

上記相違点について検討する。

本件発明1においてVPN装置が受信する「ユーザデータ」について、本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0019】
VPN装置30は、端末10とサーバ20の間の通信を仲介する通信装置(プロキシサーバ)として動作する。VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。」
「【0042】
端末10やサーバ20から取得するデータの内容に応じたログ収集動作がログ収集動作設定情報に含まれてもよい。
【0043】
例えば、端末10からサーバ20に送られるリクエストにリファラが含まれている場合に、ログとして残すと言った設定であってもよい。リファラはリンク元のURL(Uniform Resource Locator)を示す情報であって、ログ解析時に重要な情報となる。従って、リファラを含むリクエスト(アクセスログ)だけを残すことで、ログのサイズを削減できる。
【0044】
特定の属性を有するデータをログとして残すといった設定や、特定の属性を有するデータをログとして残さないといった設定も可能である。例えば、取得されたデータが「画像」であれば、当該画像に係るデータをログとして残さない設定が可能である。
【0045】
あるいは、特定の種類の画像に限ってログとして残す設定も可能である。例えば、画像データのうち、特定の対象(例えば、スマートフォン等)に関する画像だけをログとして残すような設定も可能である。」
「【0050】
図5は、ログ収集部302が収集したログ情報の一例を示す図である。図5に示すように、ログ収集部302は、ログを取得した日時、ログの送信元、アクセスログを対応付けて記憶する。なお、図5に記載した「備考」はログの内容に関する理解を容易にするためのものであり、実際のログ情報には含まれない。」
「図5
[図:0001426797000010.jpg]
」

上記記載、特に下線部を参酌すると、受信した「ユーザデータ(パケット)」の内容に応じて記憶されるログには、「リファラを含むリクエスト(アクセスログ)」や「画像データ」等、「ユーザ(端末)」からサーバ20に向けて送信されるあらゆる「データ」が含まれると解されるところ、その内容が具体的に特定されていない。したがって、本件発明1のログとして記憶される「ユーザデータ」には、「端末がアクセスするURLなどのインターネットへのアクセスに係る情報(以下「アクセス情報」という。)」も含まれるといえる。

そして、甲3発明は、「端末装置100からVPNサーバ200へのVPN通信が正しく確立すると、AP装置400やネットワーク300を介したVPNサーバ200との通信が暗号化され」るものであるから、甲3発明において、端末装置100からVPNサーバ200が受信するデータは暗号化されており、VPNサーバ200は、前記暗号化されたデータを復号するものである。ここで、端末がVPNサーバ経由でインターネットにアクセスする場合の端末からVPNサーバへのVPN通信において、アクセス情報も暗号化されていることは技術常識である。そして、甲3発明のVPNサーバ200は、「インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する」ものであるから、VPNサーバ200がURL等のアクセス情報をログサーバ801に送信するために、端末装置100から受信した暗号化されているアクセス情報を復号し、復号した状態でログとして記憶するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(3) 特許権者の主張について

特許権者は、令和6年4月24日に提出した意見書において、概略、以下の点を主張している。

ア 「ユーザデータ」について

(ア)ユーザデータは、ユーザ又はユーザの端末のデータであることは明らか。

(イ)甲3発明から審判官が認定した「アクセス情報」は、本件発明1の「ユーザデータ」と一対一に対応するものではない。

(ウ)ユーザデータ(位置情報やユーザ行動履歴)が端末からログサーバヘ直接送信されるため、甲3発明のVPNサーバは「ユーザデータ」を復号する必要はない。

(エ)「ユーザデータ」について甲第3号証には記載も示唆もされていない。

イ ユーザデータの「復号」について

(ア)甲第3号証には「復号」についても記載されていない。

(イ)仮に、一般的なVPNサーバで「アクセス情報」を復号することが技術常識であったとしても、VPNサーバで「ユーザデータ」の復号を行うことまでは技術常識ではない。

(ウ)甲3発明のVPNサーバは、復号される前の「ユーザデータ」をログとして記憶しているのか、復号された後の「ユーザデータ」をログとして記憶しているのか、いずれの記憶態様であるのかが不明。

(エ)「ユーザデータを復号した後に、当該復号されたユーザデータをログとして記憶すること」についても、甲第3号証に記載も示唆もされていないことは明らか。

(4) 上記特許権者の主張についての検討

上記(2)で検討したとおり、「ユーザデータ」には、「アクセス情報」を含め、「ユーザ(端末)」からサーバ20に向けて送信されるあらゆる「データ」が含まれると解される。そして、甲3発明のVPNサーバ200は、「インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信するものであるから、上記(3)アの「ユーザデータ」についての主張を採用することはできない。

また、甲3発明は、上記1(1)アの段落0062、0063、及びイの図1、エの図4のとおり、端末装置100からVPNサーバ200へVPN通信をしており、その後、ログ解析広告システムへは、(VPN通信ではない)インターネット接続されていると認められる。甲3発明のように、VPNサーバ200がアクセスログをログサーバ801に保存すべく送信し、解析サーバ802にてログを解析するという発明において、ログサーバ801や解析サーバ802では、暗号化されていては、解析ができないことや、VPNの暗号化を復号できるのはVPN通信にかかる復号の鍵を所有している必要があることからすれば、VPNサーバ200にて復号してログを送信するのが自然である。したがって、上記(2)で検討したとおり、VPNサーバ200が、端末装置100から受信した暗号化されているアクセス情報を復号し、復号した状態でログとして記憶するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものであり、上記(3)イのユーザデータの「復号」についての主張を採用することはできない。

(5) 小括

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件発明2について

(1) 甲3発明との一致点及び相違点

本件発明2と甲3発明を対比すると、本件発明2と甲3発明とは、次の点で一致し、また相違する。

<一致点>

端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含む、

ログ解析システム。

<相違点>

本件発明2のVPN装置は、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めるのに対して、甲3発明は、その点が特定されていない点。

(2) 相違点の判断

上記相違点について検討する。

本件発明2においてVPN装置がログとして記憶する「受信ユーザデータ」について、本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0019】
VPN装置30は、端末10とサーバ20の間の通信を仲介する通信装置(プロキシサーバ)として動作する。VPN装置30は、端末10からサーバ20に向けて送信されるユーザデータ(パケット)を受信し、当該受信データをその宛先となるサーバ20に転送する。」

上記記載を参酌すると、「受信ユーザデータ」とは、サーバ20が端末10から受信した「ユーザデータ」のことである。そして、本件発明2において、「ユーザデータ」の内容は具体的に特定されていないところ、上記2(2)における検討によれば、本件発明2の「受信ユーザデータ」には、「アクセス情報」も含まれるものである。

そして、ログ解析において、解析の目的に応じて解析に必要となる特性のデータだけをログとして記憶することは技術常識である。甲3発明は、「端末装置1 00は、VPNサーバ200経由でインターネット等に接続し」、「VPNサーバ200は、インターネットにアクセスしたログ(アクセス日、アクセスしたURL、利用したアプリ等)をログサーバ801に保存すべく送信する」ものであって、「収集されたログ」により「ユーザ属性を分析する」ものであるところ、VPNサーバ200が、ユーザ属性を分析するために必要な特性のユーザデータだけをログサーバ801に送信するために、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めるように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(3) 特許権者の主張について

特許権者は、令和6年4月24日に提出した意見書において、概略、上記2(3)のアに加え、甲3発明のVPNサーバ200は、受信ユーザデータの特性を判別し、当該受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めることを行っていないし、受信ユーザデータの特性を判別し、当該受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めるようにすることの動機がない旨を主張している。

しかしながら、有限なリソースであるログサーバのストレージや通信負荷を低減することは、当業者にとって当然の課題であり、解析の目的に応じて解析に必要となる特性のデータだけをログとして記憶することによって、ログサーバのストレージや通信負荷を軽減することは技術常識であるから、上記(2)で検討した通り、甲3発明のVPN装置が、ユーザ属性を分析するために必要な特性のユーザデータ(例えば、上記1(1)アの段落0089の「特定のURLの閲覧」に係るアクセス情報)だけをログサーバ801に送信するために、受信ユーザデータの特性に応じて前記受信ユーザデータをログとして記憶するか否かを定めるように構成することに十分な動機付けがあるといえる。

したがって、上記主張を採用することはできない。

(4) 小括

以上のとおりであるから、本件発明2は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 本件発明9について

本件発明9は、本件発明1を方法として記載したものである。

よって、上記2で検討したのと同様に、本件発明9も甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 本件発明10について

本件発明10は、本件発明2を方法として記載したものである。

よって、上記3で検討したのと同様に、本件発明10も甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件発明3について

甲3発明と、本件発明3とを対比する。

甲3発明は、本件発明3の“前記VPN装置は、受信データの特性に応じて前記受信データをログとして記憶するか否かを定め、前記VPN装置は、前記受信データが画像データであって、予め定めた対象を含む画像データである場合には前記予め定めた対象を含む画像データをログとして記憶する”構成(以下、「相違点2」という。)を有するものとはいえず、少なくともこの点において本件発明3とは相違する。

そして、第6の1、2に記載した甲第1、2号証に記載された事項を含め、上記「相違点2」に係る構成が、本件特許出願前に周知技術であったとする証拠もない。

よって、本件発明3は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

7 本件発明4について

甲3発明と、本件発明4とを対比する。

甲3発明は、本件発明4の“前記VPN装置は、前記サーバから暗号化されたデータを受信した際、前記サーバから受信したデータに前記端末が正常な応答をしない場合には、前記端末とサーバ間の通信を復号しない”構成(以下、「相違点3」という。)を有するものとはいえず、少なくともこの点において本件発明4とは相違する。

そして、第6の1、2に記載した甲第1、2号証に記載された事項を含め、上記「相違点3」に係る構成が、本件特許出願前に周知技術であったとする証拠もない。

よって、本件発明4は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

8 本件発明5~8について

本件発明5~8は、本件発明3または4を直接または間接的に引用するものであって、上記「相違点2」または「相違点3」に対応する構成を備えるものであるから、上記「6 本件発明3について」または「7 本件発明4について」と同様のことがいえる。

よって、本件発明5~8は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

9 本件発明11について

本件発明11は、本件発明4に対応する方法の発明であり、上記「相違点3」に対応する構成を備えるものであるから、上記「7 本件発明4について」と同様のことがいえる。

よって、本件発明11は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

10 本件発明12、13について

甲3発明と、本件発明12、13とを対比する。

甲3発明は、本件発明12または13の“前記解析装置は、前記収集されたログに基づき、特定のサイトを基準とするアクセスフローを生成する”構成(以下、「相違点4」という。)を有するものとはいえず、少なくともこの点において本件発明12、13とは相違する。

そして、第6の1、2に記載した甲第1、2号証に記載された事項を含め、上記「相違点4」に係る構成が、本件特許出願前に周知技術であったとする証拠もない。

よって、本件発明12、13は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

11 本件発明14、15について

甲3発明と、本件発明14、15とを対比する。

甲3発明は、本件発明14または15の“前記VPN装置は、前記ログを収集する際の動作を定めたログ収集動作設定情報に基づきログを収集し、前記解析装置は、前記ログを解析する際の動作を定めたログ解析動作設定情報に基づき前記収集されたログを解析する”構成(以下、「相違点5」という。)を有するものとはいえず、少なくともこの点において本件発明14、15とは相違する。

そして、第6の1、2に記載した甲第1、2号証に記載された事項を含め、上記「相違点5」に係る構成が、本件特許出願前に周知技術であったとする証拠もない。

よって、本件発明14、15は、上記甲第1、2号証に記載された事項を参酌しても、甲3発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

12 まとめ

以上のとおり、本件発明1、2、9、10は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本件発明1、2、9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性欠如(上記第2の1(1))について

ア 本件発明1について

(ア)甲第1号証に記載された事項及び甲1発明

甲第1号証に記載された事項、及び甲1発明は、上記第6の1(1)、(2)に記載したとおりのものである。

(イ)対比・判断

甲1発明と、本件発明1とを対比する。

<一致点>

端末とサーバ間の通信を仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、装置と、

前記収集されたログを解析する、解析装置と、

を含み、

前記装置は、暗号化されたユーザデータを受信し、前記暗号化されたユーザデータを復号した後に、前記復号されたユーザデータをログとして記憶する

ログ解析システム。

<相違点A>

本件発明1は、「VPN装置」が、端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集するものであるのに対し、甲1発明は、「プロキシサーバ11」が、端末とサーバ間の通信を仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集するものである点。

(ウ)相違点の判断

上記「相違点A」について検討する。

上記第6の2によれば、甲2発明は、「VPN装置」を有しない。

一方、上記第6の3、及び上記第7の2(1)によれば、甲3発明は、「端末とサーバ間の通信を暗号化しつつ仲介すると共に、前記端末とサーバ間の通信に関するログを収集する、VPN(Virtual Private Network)装置」を有するものであるものの、「プロシキサーバ」と「VPN装置」とは実現する機能が異なることは本件出願時における技術常識であり、また、甲第1号証には、甲1発明において「システム」が含む「プロシキサーバ11」を、甲3発明の「無線通信共有システム」が含む「VPN装置」に置き換える動機付けが存在しない。

よって、本件発明1は、上記甲第2、3号証に記載された事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

(エ)小括

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明2~15について

甲1発明と、本件発明2~15とを対比する。

甲1発明は、上記「相違点A」に係る構成を有するものとはいえず、少なくともこの点において本件発明2~15とは相違する。

よって、上記アの検討のとおり、本件発明2~15は、上記甲第2、3号証に記載された事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。

第9 むすび

以上のとおり、請求項1、2、9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

また、請求項3~8、11~15に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項3~8、11~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2023-701354

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