特許異議申立
2025-700280
情報提供装置、端末、本人確認システム、情報提供方法及び記録媒体
- 審判番号
- 2025-700280
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-071184
- 登録番号
- 7567978
- 請求日
- 2025年03月07日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本電気株式会社
- 【権利者代理人】岡部 讓
- 【権利者代理人】吉澤 弘司
- 【異議申立人】南 ヒメ子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 伊藤 隆夫
- 分類
- P1651.113-Y (G06F) / P1651.121-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7567978号発明「情報提供装置、端末、本人確認システム、情報提供方法及び記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7567978号の請求項1-6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7567978号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-6に係る特許についての出願は、令和元年5月20日(優先権主張 平成30年5月22日)を国際出願日とする特願2020-521227号の一部を令和5年4月25日に新たな特許出願としたものであって、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月16日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年3月7日に特許異議申立人南ヒメ子(以下、「申立人」という。)により本件特許の全請求項に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和7年6月24日付けで取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、令和7年8月21日に意見書を提出した。
第2 本件発明
本件特許の請求項1-6に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信する受信部と、
前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定し、特定された前記渡航者の在留資格情報を取得する取得部と、
前記在留資格情報に含まれる在留期間に基づいて、前記渡航者の滞在が前記在留期間内であるか否かを判定する管理部とを備える情報提供装置。
【請求項2】
前記管理部は、前記渡航者の前記生体情報を含む渡航履歴情報に基づき、前記渡航者の本人確認情報を作成する請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記管理部は、前記在留資格情報の前記渡航者の入国日又は在留期間に基づいて前記本人確認情報を作成する請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記管理部は、前記渡航者の前記滞在が前記在留期間内である場合に、前記本人確認情報を抽出する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
コンピュータが、渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信し、
前記コンピュータが、前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定し、特定された前記渡航者の在留資格情報を取得し、
前記コンピュータが、前記在留資格情報に含まれる在留期間に基づいて、前記渡航者の滞在が前記在留期間内であるか否かを判定する情報提供方法。
【請求項6】
コンピュータに、
渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信し、
前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定し、特定された前記渡航者の在留資格情報を取得し、
前記在留資格情報に含まれる在留期間に基づいて、前記渡航者の滞在が前記在留期間内であるか否かを判定する
ことを実行させるプログラム。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年3月7日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 本件発明1、5、6は、特許出願前に頒布された甲第1号証に記載されており、請求項1、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきである。
2 本件発明1-6は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術または周知技術を適用することで、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2017-224050号公報
甲第2号証:特開2017-182388号公報
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件発明1-6に対して、当審が令和7年6月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件発明1-6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 当審の判断
1 甲号証の記載
(1)甲第1号証(特開2017-224050号公報)
甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下、同様。)
「【0004】
しかしながら、前記ポイントカードによるシステムにおいては、例えば、顧客がポイントカードを忘れると会員認証ができない、また、認証に煩雑な手続きが必要である、というような場合がある。また、例えば、顧客がポイントカードを提示するまで、システム上、店員が顧客の情報を取得することができない。
【0005】
そこで、本発明は、例えば、ポイントカード等を必須とすることなく、簡便にサービスの提供が可能なシステムの提供を目的とする。」
「【0017】
<第1のサービス提供システム>
本発明の第1のサービス提供システムは、前述のように、
対象者の顔画像(以下、対象者顔画像ともいう)を取得する顔画像取得手段と、
登録者の認証用顔画像および前記登録者に関する情報(以下、登録者情報ともいう)を記憶する記憶手段と、
前記顔画像と前記認証用顔画像とを照合する顔照合手段と、
サービスに関連する情報を出力する出力手段と、
を備え、
前記顔照合手段において、前記対象者が前記登録者であると判定されたとき、
前記出力手段は、前記サービス関連情報として、前記登録者情報を出力することを特徴とする。本発明の第1のサービス提供システムにおいて、その他の構成および条件は、特に制限されない。」
「【0020】
図1は、本発明のサービス提供システムの構成の一例を示す模式図である。図示のように、本発明のサービス提供システムにおいて、システム1は、顔情報取得手段11、記憶手段12、顔照合手段13、および出力手段14を備える。図1に示すように、システム1において、例えば、顔照合手段13は、顔情報取得手段11、記憶手段12、および出力手段14と、電気的に接続されている。
【0021】
システム1は、例えば、端末とサーバとを含み、前記端末と前記サーバとは、システム外の通信回線網を介して、接続可能であってもよい。この場合、前記端末は、顔情報取得手段11および出力手段14を含み、前記サーバは、記憶手段12および顔照合手段13を含んでもよい。前記端末は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PC(パーソナルコンピュータ)等があげられる。
【0022】
顔画像取得手段11は、前記対象者顔画像を取得する。前記対象者顔画像は、例えば、前記対象者の入力により取得されてもよいし、前記システム使用者の入力により取得されてもよい。この場合、顔画像取得手段11は、例えば、顔画像のスキャナー等があげられる。また、顔画像取得手段11が、例えば、カメラ等の撮像手段の場合、撮像により直接的に取得されてもよい。この場合、前記撮像は、例えば、自動的に行われてもよいし、前記対象者または前記サービス提供者により行われてもよい。前記撮像手段は、例えば、カメラ等があげられる。前記顔画像取得手段は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PC等の端末に搭載されてもよい。前記顔画像取得手段は、例えば、施設等の必要箇所に固定されてもよいし、使用者が携帯してもよい。本発明において、画像は、例えば、静止画像でもよいし、動画でもよい。
【0023】
記憶手段12は、前記登録者の認証用顔画像および前記登録者情報を記憶する。記憶手段12は、特に制限されず、例えば、データベース、サーバ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等があげられる。
【0024】
前記登録者の認証用顔画像および前記登録者情報は、例えば、記憶手段12に、前記登録者により登録されてもよいし、前記システム使用者により登録されてもよいし、その他の者により登録されてもよい。
【0025】
前記登録者情報は、前記登録者に関連する情報であればよく、その情報の種類は、特に制限されず、本発明のシステムの用途に応じて選択でき、また、その情報の数は、特に制限されず、1つでもよいし、複数でもよい。
【0026】
前記登録者は、一人でもよいし、複数人でもよい。
【0027】
顔照合手段13は、前記対象者の顔画像と前記登録者の認証用顔画像とが一致するか否かを照合する。顔照合手段13は、特に制限されず、例えば、中央処理装置(CPU)等があげられる。前記対象者の顔画像と前記認証用顔画像との照合方法は、特に制限されず、例えば、前記顔画像と前記認証用顔画像との類似度計算による方法、目、鼻もしくは口等の特徴点の距離の比、または前記特徴点を結んだ線の向き等の特徴量を用いる方法等、従来公知の顔認証方法を用いてよい。
【0028】
本発明の第1のサービス提供システムは、例えば、さらに、分析手段を備えてもよい。前記分析手段は、例えば、前記登録者の認証用顔画像または前記登録者情報のうち少なくとも1つを分析する分析手段でもよく、前記対象者の顔画像を分析する分析手段でもよく、前者と後者の両方を分析する手段でもよい。前記登録者の認証用顔画像または前記登録者情報のうち少なくとも1つを分析した場合、前記記憶手段は、例えば、前記分析手段により得られる分析情報を、さらに、前記登録者に関する予測情報として記憶し、前記顔照合手段において、前記対象者が前記登録者であると判定されたとき、前記出力手段は、前記サービス情報として、前記登録者に関する予測情報を出力する。前記対象者の顔画像を分析した場合、前記顔照合手段において、前記対象者が前記登録者であると判定されたときは、前記記憶手段は、前記分析手段により得られる分析情報を、さらに、前記登録者に関する予測情報として記憶し、前記出力手段は、前記サービス関連情報として、前記登録者に関する情報および前記登録者に関する予測情報の少なくとも一方を出力する。これにより、例えば、よりきめ細かいサービスを提供できる。」
「【0065】
(5)第5形態:入国管理局(難民対応)
本発明の第1のサービス提供システムが、入国管理局用、特に難民対応を例にあげて、説明する。
【0066】
前記登録者は、例えば、難民等があげられる。前記難民は、例えば、これまでに難民申請が許可された難民、難民申請が却下された難民があげられる。前記登録者情報は、例えば、年齢、性別、国籍、言語、宗教、住所、名前、難民申請回数、難民申請理由、パスポートナンバー、渡航回数、犯罪情報等である。前記対象者は、例えば、入国者である。
【0067】
この第4形態(当審注:「第4」は「第5」の誤記と認める。)は、対象者の顔画像を取得するのが、入国管理局である以外は、前記第3形態を援用できる。具体的に、入国管理局における対象者(不審者)の顔画像と、前記登録者(難民)の認証用顔画像との照合が行われ、前記対象者と前記登録者とが一致すると判定されたとき、前記登録者情報が出力される。これにより、前記対象者からの情報の真偽を、出力された既存の情報から確認することができ、適切な対応が可能になる。
【0068】
前記顔画像取得手段は、例えば、施設に固定されてもよいし、使用者が携帯してもよい。前者の場合、例えば、施設の出入口、フロアの出入口、窓口、受付、管理室、エレベータ、エスカレータ、階段、トイレの出入口等があげられ、後者の場合、例えば、職員の端末等があげられる。」
【図1】
[図:0001427989000001.jpg]
以上を踏まえると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1のサービス提供システムは、
対象者の顔画像を取得する顔画像取得手段と、
登録者の認証用顔画像および登録者情報を記憶する記憶手段と、
前記顔画像と前記認証用顔画像とを照合する顔照合手段と、
サービスに関連する情報を出力する出力手段と、
を備え、
前記顔照合手段において、前記対象者が前記登録者であると判定されたとき、
前記出力手段は、前記サービス関連情報として、前記登録者情報を出力することを特徴とし、
前記対象者顔画像は、システム使用者の入力により取得され、
第1のサービス提供システムが、入国管理局用の場合、
前記登録者情報は、例えば、年齢、性別、国籍、言語、宗教、住所、名前、難民申請回数、難民申請理由、パスポートナンバー、渡航回数、犯罪情報等であり、前記対象者は、例えば、入国者であり、
具体的に、入国管理局における対象者の顔画像と、前記登録者の認証用顔画像との照合が行われ、前記対象者と前記登録者とが一致すると判定されたとき、前記登録者情報が出力されることにより、前記対象者からの情報の真偽を、出力された既存の情報から確認することができ、適切な対応が可能になる
第1のサービス提供システム。」
(2)甲第2号証(特開2017-182388号公報)
甲第2号証には、次の事項(以下「甲2記載技術」という。)が記載されている。
「【0043】
<パスポート情報登録処理>
次に、パスポート情報システム100でのパスポート情報登録処理を説明する。
これは、概要(図1)における(#2)の処理に該当する。
図9は、第1実施形態に係るパスポート情報システム100でのパスポート情報登録処理を示すフローチャートである。
【0044】
S10において、携帯情報端末1の制御部10(旅券取得部11)は、リーダライタ部28に、ユーザPのパスポート3を近接させることで、パスポート3のICチップに記憶されている旅券券面情報を取得する。
ここで、上述の方法によって旅券券面情報を取得できない場合には、制御部10は、旅券券面情報入力画面(図示せず)を、タッチパネルディスプレイ26に表示させて、ユーザPが入力した旅券券面情報を受け付けてもよい。
S11において、制御部10(旅券記憶制御部12)は、パスポート情報記憶部22に、取得した旅券券面情報を記憶させる。その際、制御部10は、記憶した旅券券面情報を、使用不可な状態にする。
【0045】
S12において、制御部10(端末位置取得部13)は、GPS受信部27を、GPS信号を受信できる状態に制御して、端末位置情報を取得する。
S13において、制御部10(情報送信部14)は、取得した端末位置情報が示す位置が日本国内であるか否かを判断する。日本国内である場合(S13:YES)には、制御部10は、処理をS14に移す。他方、日本国内ではない場合(S13:NO)には、制御部10は、本処理を終了する。つまり、パスポート情報システム100では、日本国内ではない場合に使用できないように制限している。
S14において、制御部10(情報送信部14)は、旅券券面情報に含まれる旅券番号を、管理サーバ4に対して送信する。
【0046】
S20において、管理サーバ4の制御部40(情報受信部41)は、旅券番号を受信する。
S21において、制御部40(登録確認部42)は、出入国サーバ5に対して旅券番号を送信することで、上陸許可情報に関する問合せを行う。
出入国サーバ5の制御部は、受信した旅券番号に対応する上陸許可情報が、上陸許可情報記憶部55aにあるか否かを確認する。そして、上陸許可情報があれば、出入国サーバ5の制御部は、その上陸許可情報を、旅券番号に対応付けて管理サーバ4に対して送信する。また、上陸許可情報がなければ、出入国サーバ5の制御部は、旅券番号のみを管理サーバ4に対して送信する。
【0047】
S22において、制御部40(登録確認部42)は、出入国サーバ5から受信した情報に基づいて、登録可否を判断する。例えば、受信した情報が旅券番号のみであった場合には、上陸許可情報がないため、制御部40は、登録不可と判断する。また、受信した情報が上陸許可情報を含む場合には、制御部40は、所定の条件を満たすことで、登録可能であると判断する。所定の条件とは、例えば、在留資格が、認められたものであるか、本日日付が上陸年月日と在留期間の間の日付であるか等である。
S23において、制御部40(結果送信部43)は、登録可否の結果情報を送信する。ここで、結果情報が登録可である場合には、制御部40は、上陸許可情報をあわせて送信する。その後、制御部40は、本処理を終了する。
【0048】
S15において、携帯情報端末1の制御部10(結果受信部15)は、結果情報を受信する。
S16において、制御部10は、登録可能の旨の結果情報であるか否かを判断する。登録可能の旨の結果情報である場合(S16:YES)には、制御部10は、処理をS17に移す。他方、登録不可の旨の結果情報である場合(S16:NO)には、制御部10は、処理をS17aに移す。
【0049】
S17において、制御部10(旅券記憶制御部12)は、受信した上陸許可情報をパスポート情報記憶部22に記憶させると共に、パスポート情報記憶部22に記憶されたパスポート情報を使用可能に制御する。なお、制御部10は、パスポート情報記憶部22の更新が終わったことに応じて、パスポート情報の登録が正常終了した旨を、タッチパネルディスプレイ26に表示させてもよい。その後、制御部10は、本処理を終了する。
他方、S17aにおいて、制御部10は、パスポート情報の登録ができなかった旨のエラー画面(図示せず)を、タッチパネルディスプレイ26に表示させる。その後、制御部10は、本処理を終了する。
【0050】
上述したパスポート情報登録処理によって、ユーザPの携帯情報端末1には、パスポート情報が記憶される。そして、記憶されたパスポート情報は、例えば、買物時の免税手続きにおいて必要な情報を全て含むものである。よって、ユーザPは、パスポート3を所持することなく、携帯情報端末1を所持するだけで、外出時において、パスポート3の情報を使用したい場合には、携帯情報端末1を代用できる。」
【図9】
[図:0001427989000002.jpg]
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「システム1」は、「出力手段14」から「サービス関連情報」として、「登録者に関する情報」を出力するものであるから、『情報提供装置』といえる。
イ 『渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信する受信部』について
(ア)甲1発明の「入国者」は、『渡航者』といえる。
(イ)甲1発明の「対象者顔画像」は、『生体情報』といえる。
(ウ)甲1発明の「登録者情報」は、「例えば、年齢、性別、国籍、言語、宗教、住所、名前、難民申請回数、難民申請理由、パスポートナンバー、渡航回数、犯罪情報等」であるから、『本人確認情報』といえる。
(エ)上記(ア)-(ウ)を踏まえると、甲1発明の「第1のサービス提供システム」は、「入国管理局における対象者の顔画像と、前記登録者の認証用顔画像との照合が行われ、前記対象者と前記登録者とが一致すると判定されたとき、前記登録者情報が出力されることにより、前記対象者からの情報の真偽を、出力された既存の情報から確認することができ、適切な対応が可能になる」というものであるから、「システム使用者」が「対象者顔画像」を入力することは、「登録者情報」の要求でもあるということができる。
(オ)甲1発明の「顔照合手段」が「顔画像取得手段」からの情報を受信する受信部を有することは、自明のことである。
そうすると、甲1発明と本件発明1は、「渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信する受信部』を備える点で一致する。
ウ 『前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定し、特定された前記渡航者の在留資格情報を取得する取得部』について
(ア)甲1発明の「認証用顔画像」は、『事前登録された生体情報』といえる。
(イ)甲1発明の「顔照合手段」は、「対象者顔画像」と「認証用顔画像」とを照合するものであり、これにより、「対象者(入国者)」が「登録者」であるかを判定するから、「対象者(入国者)」を『特定』する手段であるといえる。
そうすると、上記イ(ア)、(イ)を踏まえれば、甲1発明と本件発明1は、後述する相違点を除き、「前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定する手段」を備える点で共通する。
エ 『前記在留資格情報に含まれる在留期間に基づいて、前記渡航者の滞在が前記在留期間内であるか否かを判定する管理部』について
甲1発明において、本件発明1の『管理部』に相当ないし対応する手段については特定がない。
以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で、一致ないし相違する。
<一致点>
「渡航者の生体情報を含む本人確認情報の要求を受信する受信部と、
前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定する手段とを備える情報提供装置。」
<相違点>
(相違点1)「前記生体情報と事前登録された生体情報との照合により前記渡航者を特定する手段」について、本件発明1の『取得部』が、さらに『特定された前記渡航者の在留資格情報を取得する』のに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
(相違点2)本件発明1は、『前記在留資格情報に含まれる在留期間に基づいて、前記渡航者の滞在が前記在留期間内であるか否かを判定する管理部』を備えるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
(2)判断
上記相違点1と相違点2は関連するので、あわせて検討する。
上記1(2)で摘記したとおり、甲第2号証には、入国管理において、対象者の在留が有効か無効かを判断するための情報として、在留資格、在留期間等があり、当該情報を条件として用い、情報処理のフローを切り換える旨の技術的思想が記載されている。(特に段落【0047】を参照。)
しかしながら、当該情報は、旅券番号を用いた問い合わせにより得られるものである(段落【0046】)ところ、甲1発明は、「認証用顔画像との照合」の結果として「出力される」「登録者情報」に「パスポートナンバー」が含まれているものである。
そうすると、 甲1発明と甲2記載技術とは、入出力の関係が対応していないから、甲1発明に、甲2記載技術を組み合わせることに動機付けは存在しない。
また、甲2記載技術における情報処理のフローは、対象者の所持する「携帯情報端末1」に、「パスポート情報」を登録可とするか否かを切り換えるものであるから、「顔照合」により、対象者がポイントカード等の情報媒体を所持しないことを前提とする甲1発明に、「携帯情報端末1」の所持を前提とする甲2記載技術を組み合わせることの動機付けも存在しない。
してみれば、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明2-6について
本件発明2-4は、請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そうすると、本件発明2-4は、甲1発明と対比して、上記相違点1及び相違点2を有するから、本件発明1と同様に甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明5、6は、本件発明1の「情報提供装置」を「情報提供方法」、「プログラム」とした発明のカテゴリが異なるのみの発明であるから、本件発明1と同様な発明特定事項を有するものである。
そうすると、本件発明5、6は、甲1発明と対比して、上記相違点1及び相違点2を有するから、本件発明1と同様に甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 上記第3の1(新規性)について
上記第5の2、3で述べたとおり、甲1発明と本件発明1、5、6とは上記相違点1及び相違点2で相違するから、申立人の主張する上記特許異議申立理由(新規性)は採用できない。
2 上記第3の2(進歩性)について
上記第5の2(1)で述べた上記相違点1及び相違点2が、周知技術であったとも認められないから、上記第5の2、3で述べたとおり、申立人の主張する上記特許異議申立理由(進歩性)は採用できない。
第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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