審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-701304

フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び眼鏡

審判番号
2023-701304
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-571719
登録番号
7290809
請求日
2023年12月11日
審決日
2024年10月04日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
  • 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】加藤 浩志
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 本田 博幸
  • 審判官 廣田 健介
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第113条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7290809号発明「フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び眼鏡」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7290809号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-24〕について訂正することを認める。 特許第7290809号の請求項1~12、14~24に係る特許を維持する。 特許第7290809号の請求項13に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第7290809号の請求項1~24に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2022-571719号)は、令和3年(2021年)12月24日(先の出願に基づく優先権主張 令和2年12月24日、令和3年2月8日)を国際出願日とする出願であって、令和5年6月5日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月13日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和5年12月11日に、特許異議申立人 加藤 浩志(以下「特許異議申立人」という。)から、全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和6年2月 9日付け:取消理由通知書 令和6年5月14日 :意見書(特許権者)の提出 令和6年5月14日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂 正の請求を以下「本件訂正請求」という。) また、令和6年7月2日付けで特許法120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に対して行ったところ、特許異議申立人から何ら応答がなかったものである。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 (1)訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第7290809号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~24について訂正することを求める、というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。 なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「一般式A中、R1~R3、R5、R6、B1及びB2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基又はシアノ基を表す。」との記載を、「一般式A中、R1~R3、R5、B1及びB2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基又はシアノ基を表し、R6は水素原子又は電子吸引性基を表す。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~12及び請求項14~24も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1における「一般式C中、R15~R20、B5及びB6は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R21及びR22は、一方が水素原子を表し他方が電子供与性基を表す。」との記載を、「一般式C中、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基を表し、R17~R20、B5及びB6は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R21及びR22は、一方が水素原子を表し他方が電子供与性基を表す。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~12及び請求項14~24も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5における「R3~R6は、それぞれ独立に水素原子又は電子吸引性基を表し、ただしR3~R6の1つ以上は電子吸引性基を表す」との記載を、「R3~R6の中で、 R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R3、R5及びR6は水素原子を表すか、 R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R6は電子吸引性基を表し、R3及びR5は水素原子を表すか、又は、 R3及びR5は同一若しくは異なる電子吸引性基を表し、R4及びR6は水素原子を表す」に訂正する(請求項5を引用する請求項6~12及び請求項14~24も同様に訂正する)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9における「R1~R3、R5、R6、B1、B2、一般式B中のR7~R12、B3、B4、一般式C中のR15~R20」との記載を、「R1~R3、R5、B1、B2、一般式B中のR7~R12、B3、B4、一般式C中のR17~R20」に訂正する(請求項9を引用する請求項10~12及び請求項14~24も同様に訂正する)。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14における「請求項1~13のいずれか1項」との記載を、「請求項1~12のいずれか1項」に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項15における「請求項1~14のいずれか1項」との記載を、「請求項1~12及び請求項14のいずれか1項」に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項16における「請求項1~15のいずれか1項」との記載を、「請求項1~12、請求項14及び請求項15のいずれか1項」に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項17における「請求項1~16のいずれか1項」との記載を、「請求項1~12及び請求項14~16のいずれか1項」に訂正する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項24における「請求項19に記載の」との記載を、「請求項20に記載の」に訂正する。 (3)一群の請求項 本件訂正請求は、訂正後の一群の請求項である請求項〔1~24〕に対して請求されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載された「一般式A」中の「R6」について、「水素原子又は電子吸引性基を表す」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の明細書の【0033】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 加えて、訂正事項1に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 請求項1の記載を引用して記載された請求項2~12、14~24についても、同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載された「一般式C」中の「R15及びR16」について、「それぞれ独立に、炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基を表」すことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項13の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 そうすると、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 加えて、訂正事項2に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。 そうすると、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 請求項1の記載を引用して記載された請求項2~12、14~24についても、同様である。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、請求項5における「R3~R6」を、R3~R6の中で、「R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R3、R5及びR6は水素原子を表す」か、「R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R6は電子吸引性基を表し、R3及びR5は水素原子を表す」か、又は、「R3及びR5は同一若しくは異なる電子吸引性基を表し、R4及びR6は水素原子を表す」場合のいずれかに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3に係る訂正は、本件特許の明細書の【0033】及び【0034】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 そうすると、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 加えて、訂正事項3に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。 そうすると、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 請求項5の記載を引用して記載された請求項6~12、14~24についても、同様である。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、請求項9における「一般式A中のR1~R3、R5、R6、B1、B2、一般式B中のR7~R12、B3、B4、一般式C中のR15~R20」から、「R6、R15及びR16」を削除することによって、結果として、「R6、R15及びR16」を、請求項9が引用する請求項1において上記訂正事項1、2に係る訂正によって限定されたものに特定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 または、訂正事項4に係る訂正は、上記訂正事項1、2に係る訂正によって、「一般式A」中の「R6」及び「一般式C」中の「R15及びR16」が限定されたことによって、訂正前の請求項9における「一般式A」中の「R6」及び「一般式C」中の「R15及びR16」との間に生じた矛盾を解消するためのものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項4に係る訂正は、上記(1)、(2)のとおり、本件特許の明細書の【0033】、訂正前の請求項13の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 そうすると、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 加えて、訂正事項4に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。 そうすると、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 請求項9の記載を引用して記載された請求項10~12、14~24についても、同様である。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、請求項13を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項5に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (6)訂正事項6~9について 訂正事項6~9に係る訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項の削減を行う訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項6~9による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (7)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項24について、取消理由通知書の理由3(明確性要件)で指摘した引用請求項番号の誤記を訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 また、訂正事項10による訂正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (8)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~24〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~24に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明24」という。また、これらの発明を総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項によって特定される、以下のものである。 「【請求項1】 下記一般式Aで表される化合物の1種以上と、下記一般式Bで表される化合物の1種以上と、下記一般式Cで表される化合物の1種以上と、を含むフォトクロミック組成物。 【化1】 [図:0001418226000001.jpg] (一般式A中、R1~R3、R5、B1及びB2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基又はシアノ基を表し、R6は水素原子又は電子吸引性基を表す。) 【化2】 [図:0001418226000002.jpg] (一般式B中、 R7~R12、B3及びB4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、 R13及びR14は、それぞれ独立に電子供与性基を表す。) 【化3】 [図:0001418226000003.jpg] (一般式C中、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基を表し、R17~R20、B5及びB6は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、 R21及びR22は、一方が水素原子を表し他方が電子供与性基を表す。) 【請求項2】 一般式A中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基を表す、請求項1に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項3】 一般式A中、R1及びR2は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基を表す、請求項1又は2に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項4】 一般式A中のB1及びB2、一般式B中のB3及びB4並びに一般式C中のB5及びB6は、それぞれ独立に、置換又は無置換のフェニル基を表し、フェニル基が置換基を複数有する場合、当該置換基が結合して環を形成してもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項5】 一般式A中、R3~R6の中で、 R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R3、R5及びR6は水素原子を表すか、 R4はハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基若しくはシアノ基を表し、R6は電子吸引性基を表し、R3及びR5は水素原子を表すか、又は、 R3及びR5は同一若しくは異なる電子吸引性基を表し、R4及びR6は水素原子を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項6】 前記電子吸引性基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、パーフルオロフェニル基、パーフルオロアルキルフェニル基又はシアノ基である、請求項5に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項7】 前記ハロゲン原子はフッ素原子である、請求項6に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項8】 前記パーフルオロアルキル基はトリフルオロメチル基である、請求項6に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項9】 一般式A中のR1~R3、R5、B1、B2、一般式B中のR7~R12、B3、B4、一般式C中のR17~R20、B5及びB6からなる群から選ばれる1つ以上は置換基を表し、該置換基は、 ヒドロキシ基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数5~18の単環若しくはビシクロ環等の複環の環状脂肪族アルキル基、構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、構成原子数1~24の非芳香族環状置換基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のパーフルオロアルキル基、直鎖若しくは分岐のパーフルオロアルコキシ基、構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルキルスルフィド基、アリール基、アリールオキシ基、アリールスルフィド基、ヘテロアリール基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、テトラヒドロキノリノ基、テトラヒドロイソキノリノ基等の環状アミノ基、エチニル基、メルカプト基、シリル基、スルホン酸基、アルキルスルホニル基、ホルミル基、カルボキシ基、シアノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基Rm; Rmに更に1つ以上の同一若しくは異なるRmが置換した置換基;又は 可溶化基 である、請求項1~8のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項10】 一般式B中、R7及びR8は、それぞれ独立に、炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基を表す、請求項1~9のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項11】 一般式B中、R7及びR8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基を表す、請求項1~10のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項12】 一般式B中、R13及びR14は、それぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、ジメチルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びチオモルホリノ基からなる群から選択される電子供与性基を表す、請求項1~11のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 一般式C中、R15及びR16は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基を表す、請求項1~12のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項15】 一般式C中、R21又はR22で表される電子供与性基は、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、ジメチルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びチオモルホリノ基からなる群から選択される電子供与性基である、請求項1~12及び請求項14のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項16】 質量基準で、一般式Bで表される化合物及び一般式Cで表される化合物の合計含有率が、一般式Aで表される化合物の含有率より多い、請求項1~12、請求項14及び請求項15のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項17】 重合性化合物を更に含む、請求項1~12及び請求項14~16のいずれか1項に記載のフォトクロミック組成物。 【請求項18】 請求項17に記載のフォトクロミック組成物を硬化した硬化物を含むフォトクロミック物品。 【請求項19】 基材と、前記硬化物であるフォトクロミック層とを有する、請求項18に記載のフォトクロミック物品。 【請求項20】 眼鏡レンズである、請求項18又は19に記載のフォトクロミック物品。 【請求項21】 ゴーグル用レンズである、請求項18又は19に記載のフォトクロミック物品。 【請求項22】 サンバイザーのバイザー部分である、請求項18又は19に記載のフォトクロミック物品。 【請求項23】 ヘルメットのシールド部材である、請求項18又は19に記載のフォトクロミック物品。 【請求項24】 請求項20に記載の眼鏡レンズを備えた眼鏡。」 第4 特許異議申立人が提示した証拠方法及び取消理由について 1 特許異議申立人が提示した証拠方法 甲第1号証:国際公開第2004/085568号(以下「甲1」という。) 甲第2号証:国際公開第2007/073462号(以下「甲2」という。) 甲第3号証:国際公開第2015/077177号(以下「甲3」という。) 甲第4号証:国際公開第2019/189875号(以下「甲4」という。) (当合議体注:甲1及び甲3は主引用文献である。甲2は副引用文献である。甲4は周知技術を示す文献である。) 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1~24に係る特許に対して、当合議体が令和6年2月9日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由は、概略次のとおりである。 理由1:(新規性)本件特許の請求項1~4、9~12、15、16に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された国際公開第2004/085568号に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~4、9~12、15、16に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~4、9~12、15~24に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された国際公開第2004/085568号に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、9~12、15~24に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1~4、9~12、15~24に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3:(明確性要件)本件特許の請求項1~24に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でないから、請求項1~24に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、請求項1~24に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当合議体の判断 1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について (1)甲1の記載 令和6年2月9日付け取消理由通知書で引用された甲1には、次の事項が記載されている。なお、日本語訳は当合議体による仮訳であり、訳文の下線は当合議体が付したものであって、甲1に記載された発明の認定に用いた箇所を示す。 ア 「 BACKGROUND OF THE INVENTION [0001] The present invention relates to novel photochromic articles demonstrating a more consistent photochromic response over a broad temperature range and methods for preparing such articles. More particularly, this invention relates to photochromic articles having reduced temperature dependency. Temperature dependency is a particular problem in photochromic articles, e.g., spectacle lenses. The coloration of the photochromic article is effected by the temperature at which it is used. Typically, a photochromic article demonstrating the temperature dependency effect will not get dark enough when it is hot and/or will get too dark when it is cold.」 日本語訳:「発明の背景 [0001] 本発明は、広い温度範囲にわたって、より一貫したフォトクロミック応答を示す新規なフォトクロミック物品およびそのような物品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、温度依存性の低減されたフォトクロミック物品に関する。温度依存性は、フォトクロミック物品、たとえば、眼鏡レンズにおいて特に問題である。フォトクロミック物品の着色は、その物品が使用される温度によって影響を受ける。典型的には、温度依存効果を示すフォトクロミック物品は、暑いときには十分に暗くならず、および/または、寒いときには暗くなり過ぎてしまう。」 イ 「[0004] In one approach, the temperature dependency of photochromic compositions and articles was reduced by switching to all naphthopyran photochromic compounds from the earlier used oxazines or mixtures of oxazines and naphthopyrans. While this improvement was substantial and welcomed, there remains a need to improve these and other photochromic systems by further reducing the temperature dependency effect.」 日本語訳:「[0004] 1つの手法では、フォトクロミック組成物及びフォトクロミック物品の温度依存性が、以前使用したオキサジンあるいはオキサジンとナフトピランの混合物から全てナフトピランフォトクロミック化合物に切り替えることにより減少した。この改善は実質的で歓迎されたが、温度依存性の影響をさらに減少させることによって、これらおよびその他のフォトクロミックシステムを改良する必要性が依然として存在する。」 ウ 「[0011] In one non-limiting embodiment, the use of at least one photochromic material having a temperature dependent variable absorbance within it's activating spectral absorbance in a photochromic article can adapt the article to be less temperature dependent. The photochromic material having the temperature dependent variable absorbance is referred to as a TDVA material herein.」 日本語訳:「[0011] 1つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック物品の活性化分光吸光度内で温度依存可変吸光度を有する少なくとも1つのフォトクロミック材料を使用することにより、温度依存性が低くなるように物品を適合させることができる。温度依存可変吸光度を有するフォトクロミック材料を、本明細書ではTDVA材料と呼ぶ。」 エ 「[0017] In a further non-limiting embodiment, the TDVA material can be used alone or combined with the other photochromic materials in the substrate, in a coating or film on the surface of the substrate or both, or the TDVA material can be interposed between the other photochromic materials and the source of radiation. This can be accomplished, in one non-limiting embodiment, by adding the TDVA materials and other optional photochromic materials to the ingredients used to form the substrate, coating or film and/or by imbibing the TDVA materials and other optional photochromic materials into the substrate, coating or film.」 日本語訳:「[0017] さらなる非限定的な実施形態において、TDVA材料は、単独で使用されるか、または基板に他のフォトクロミック材料と組み合わせて、基板の表面上または両方のコーティングまたはフィルムであってもよく、あるいはTDVA材料は、他のフォトクロミック材料と放射線源との間に介在させることができる。これは、1つの非限定的な実施形態において、基板は、コーティングまたはフィルムを形成するために用いる成分TDVA材料及びその他の任意のフォトクロミック材料を添加し、および/またはTDVA材料及びその他の任意のフォトクロミック材料を吸収材、コーティング又はフィルムにすることができる。」 オ 「[0022] ・・・中略・・・ In one non-limiting embodiment, the TDVA materials are chosen from the following naphthopyrans and mixtures thereof. ・・・中略・・・ [0023] In one non-limiting embodiment, the naphthopyran can be represented by the following graphic formula I: [図:0001418226000004.jpg] I ・・・中略・・・ [0027] In another non-limiting embodiment, the substituents of the naphthopyran represented by graphic I include: (a) R1 and R2 are each independently chosen from: (i) hydrogen, hydroxy, C1-C6 alkyl, C1-C6 haloalkyl, C3-C7 cycloalkyl, benzyl or mono-substituted benzyl, said benzyl substituent being C1-C6 alkyl or C1-C6 alkoxy; ・・・中略・・・ (b) R4 and R7 are each independently chosen from hydrogen (provided that both are not hydrogen), the group -OR7’, wherein R7’, is chosen from C1-C3 alkyl, phenyl (C1-C2) alkyl or C1-C3 alkoxy (C1-C3) alkyl or a nitrogen- containing group chosen from: (i) -N(R15)R16 wherein R15 and R16 are each independently chosen from C1-C8 alkyl, phenyl, C1-C8 alkylaryl, or C3-C20 cycloalkyl, wherein said aryl group is phenyl or naphthyl; (ii) a nitrogen containing ring represented by the following graphic formula: [図:0001418226000005.jpg] wherein each Y is independently chosen for each occurrence from -CH2-, or -CH(R17)-, and X is chosen from -Y-, -0-, -S-, -NH-, -N(R17)- or -N(aryl)-, wherein R17 is C1-C6 alkyl, said aryl being phenyl or naphthyl, m is the integer 1, 2 or 3, and p is the integer 0, 1, 2, or 3 and when p is 0, X is Y; ・・・中略・・・ (c) R5 and R6 are each independently chosen from hydrogen, C1-C6 alkyl, C3-C7 cycloalkyl, aryloxy(C1-C6)alkyl, the group T, described hereinbefore in (a)(vii), -OR7’, described hereinbefore in (b), or nitrogen-containing group (b)(i), (ii) or (iii); and (d) B and B' are each chosen from: (i) mono-T-substituted phenyl; said T-group being the same as described hereinbefore in (a)(vii); ・・・中略・・・ [0028] Non-limiting examples of photochromic materials represented by graphic formula I include: (a) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,7,10,11-tetramethoxy-13-ethyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (b) 3,3-di(4-methoxyphenyl)-6,11-dimethoxy-13-butyl-13-ethoxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho [1,2-b]pyran; (c) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-methyl-13-(2-(2-hydroxyethoxy)ethoxy)-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (d) 3,3-di(4-methoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (e) 3-(4-morρholinophenyl)-3-phenyl-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (f) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-10,11-dimethoxy-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2- b]pyran; (g) 3-(4-methoxyphenyl)-3-pheny1-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (h) 3,3-di(4-methoxyethoxyphenyl) -11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (i) 3,3-diphenyl-6,11-dimethoxy-13-acetoxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (j) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,10,11-trimethoxy-13-methyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]aphtho[l,2-b]pyran; (k) 3-(4-morpholinophenyl)-3-(4-methoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (1) 3-(3,4-dimethoxyphenyl)-3-(4-methoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (m) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,7,10,11-tetramethoxy-13-13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (n) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,7,10,11-tetramethoxy-13-trifluromethyl-13-hydroxy-l3H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (o) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,10,11-trimethoxy-13-butyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[l,2-b]pyran; (p) 3-(4-morpholinophenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-methoxy-13-methyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (q) 3,3-di(4-dimethoxyphenyl)-6,7,10,11-tetramethoxy-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (r) 3,3-diphenyl-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; (s) 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-ethyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; or (t) mixtures thereof.」 日本語訳:「[0022]・・・中略・・・。1つの非限定的な実施形態において、TDVA材料は、以下のナフトピランおよびこれらの混合物から選択される。・・・中略・・・。 [0023] 1つの非限定的な実施形態において、ナフトピランは次の構造式Iにより表される。 [図:0001418226000006.jpg] I ・・・中略・・・ [0027] 別の非限定的な実施形態において、構造式Iで表されるナフトピランの置換基は以下のものを含む。 (a)R1およびR2は、各々独立して、以下から選択される。 (i)水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C3-C7シクロアルキル、ベンジル、または置換ベンジルであり、前記ベンジルの置換基はC1-C6アルキルまたはC1-C6アルコキシである。 ・・・中略・・・ (b)R4およびR7は、それぞれ独立して水素(双方ともが水素でないことを条件とする)、-OR7’基、ここでR7’は、C1-C3アルキル、フェニル(C1-C2)アルキルまたはC1-C3アルコキシ(C1-C3)アルキルまたは以下から選択される窒素含有基から選択される。 (i)-N(R15)R16、ここで、R15およびR16は、それぞれ独立して、C1-C8アルキル、フェニル、C1-C8アルキルアリール、またはC3-C20シクロアルキルから選択され、ここで、前記アリール基がフェニルまたはナフチルである。 (ii)下記の構造式によって表される窒素含有環。 [図:0001418226000007.jpg] ここで、各Yは独立して、-CH2-あるいは-CH(R17)-から選択され、Xは-Y-、-O-、-S-、-NH-、-N(R17)-あるいは-N(aryl)-から選択され、ここでR17はC1-C6アルキルであり、前記アリールはフェニルまたはナフチルであり、mが整数1、2または3であり、そしてpは整数0、1、2又は3であり、pが0である場合、XがYである。 ・・・中略・・・ (c)R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、C1-C6アルキル、C3-C7シクロアルキル、アリールオキシ(C1-C6)アルキル、(a)(vii)に先に記載されたT基、(b)に先に記載された-OR7’、又は(b)(i)、(ii)又は(iii)の窒素含有基である。そして、 (d)B及びB’は各々以下から選択される。 (i)1つのTで置換されたフェニル;前記T基は(a)(vii)に先に記載されたT基である。 ・・・中略・・・ [0028] 式Iによって表されるフォトクロミック材料の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。 (a)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,7,10,11-テトラメトキシ-13-エチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (b)3,3-ジ(4-メトキシフェニル)-6,11-ジメトキシ-13-ブチル-13-エトキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (c)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-メチル-13-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (d)3,3-ジ(4-メトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (e)3-(4-モルフォリノフェニル)-3-フェニル-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (f)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-10,11-ジメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (g)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (h)3,3-ジ(4-メトキシエトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (i)3,3-ジフェニル-6,11-ジメトキシ-13-アセトキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (j)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,10,11-トリメトキシ-13-メチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (k)3-(4-モルフォリノフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (l)3-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (m)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,7,10,11-テトラメトキシ-13-13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (n)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,7,10,11-テトラメトキシ-13-トリフルオロメチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (o)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,10,11-トリメトキシ-13-ブチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (p)3-(4-モルフォリノフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-メトキシ-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (q)3,3-ジ(4-ジメトキシフェニル)-6,7,10,11-テトラメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (r)3,3-ジフェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; (s)3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-エチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン;あるいは、 (t)それらの混合物。」 カ 「[00116] The following photochromic materials were used in the examples described hereinafter. Photochromic materials A through W represent TDVA materials. Photochromic materials AA through HH represent other photochromic materials that were used in conjunction with the TDVA materials. Photochromic materials X, Y and Z represent other organic photochromic materials prepared by methods described in U.S. Patent 5,645,767 and were used in Comparative Examples 1-3. Photochromic Materials (PM) PM-A 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,7,10,11-tetramethoxy-13-ethyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-B 3,3-di(4-methoxyphenyl)-6,11-dimethoxy-13-butyl-13-ethoxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-C 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-methyl-13-(2-(2-hydroxyethoxy)ethoxy)-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-D 3-(4-morpholinophenyl)-3-phenyl-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-E 3,3-di(4-methoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtha[1,2-b]pyran PM-F 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-10,11-dimethoxy-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-G 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtha[1,2-b]pyran PM-H 3,3-di(4-methoxyethoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-I 2,2-diphenyl-5-(2-hydroxy)propyl)-8-methoxy-2H-naphtho[1,2-b]pyran PM-J 3,3-diphenyl-6,11-dimethoxy-13-acetoxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-K 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,10,11-trimethoxy-13-methyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-L 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,10,11-trimethoxy-13-butyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-M 2,2-diphenyl-5-carbomethoxy-6-phenyl-9-methoxy-2H-naphtho[1,2-b]pyran PM-N 3-(3,4-dimethoxyphenyl)-3-(4-methoxyphenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4] naphtho[1,2-b]pyran PM-O 7-(4-morpholino-2-fluorophenyl)-7-(3,4-dimethoxyphenyl)-2-pentyl-4-oxo-4H-7H-[1,3]dioxino[5',4':3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-P 3-(4-methoxyphenyl)-3-(4-morpholinophenyl)-11-morpholino-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-Q 3,3-diphenyl-13,13-dimethyl-13H-3H- indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-R 3-(4-morpholinophenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-methoxy-13-methyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-S 2,2,7,7-tetraphenyl-4-oxo-2,3,4,7-tetrahydro-1H-pyrimidino[5',4':3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-T 3,3 di(4-dimethoxyphenyl)-6,7,10,11-tetramethoxy-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-U 3-(4-methoxyphenyl)-3-phenyl-6,11-dimethoxy-13-ethyl-13-hydroxy-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran; PM-V 2,2 diphenyl-5-(2-(2-hydroxyethoxy)ethoxy)carbolic,6-(4-methoxyphenyl)-9-methoxy-2H-naphtho[1,2.6]pyran; PM-W 3-phenyl-3-(2-fluorophenyl)-3H-naphtho[2,1-b]pyran. PM-X 2,2 diphenyl-5-(2-ethoxy-2-oxo-ethoxycarbonyl)8-methyl-2H-naphtho[1,2-b]pyran PM-Y 2,2 diphenyl-5-methoxycarbonyl-8-methyl-2H-naphtho-[1,2-b]pyran PM-Z 3,3-di(4methoxyphenyl)-6,11-dimethyl-13-(1-methylethyl)-13-hydroxy-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran PM-AA A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a blue-purple color when irradiated with ultraviolet light. PM-BB A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a orange color when irradiated with ultraviolet light. PM-CC A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a yellow-orange color when irradiated with ultraviolet light. PM-DD A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a yellow-green color when irradiated with ultraviolet light. PM-EE A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a red color when irradiated with ultraviolet light. PM-FF A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a purple color when irradiated with ultraviolet light. PM-GG A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a red-orange color when irradiated with ultraviolet light. PM-HH A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a purple color when irradiated with ultraviolet light. PM-II A naphtho[1,2-b]pyran that exhibits a greenish-blue color when irradiated with ultraviolet light.」 日本語訳:「[00116] 次のフォトクロミック材料が、以下に記載される実施例において使用された。フォトクロミック材料A~Wは、TDVA材料を表している。フォトクロミック材料AA~HHは、TDVA材料と組み合わせて使用される他のフォトクロミック材料を表している。フォトクロミック材料X、Y及びZは、米国特許5,645,797号に記載される方法により用意され、比較例1-3において使用される他の有機フォトクロミック材料を表している。 フォトクロミック材料(PM) PM-A 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,7,10,11-テトラメトキシ-13-エチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-B 3,3-ジ(4-メトキシフェニル)-6,11-ジメトキシ-13-ブチル-13-エトキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-C 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-メチル-13-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-D 3-(4-モルフォリノフェニル)-3-フェニル-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-E 3,3-ジ(4-メトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-F 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-10,11-ジメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-G 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-H 3,3-ジ(4-メトキシエトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-I 2,2-ジフェニル-5-(2-ヒドロキシ)プロピル)-8-メトキシ-2H-ナフト[1,2-b]ピラン PM-J 3,3-ジフェニル-6,11-ジメトキシ-13-アセトキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-K 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,10,11-トリメトキシ-13-メチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-L 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,10,11-トリメトキシ-13-ブチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-M 2,2-ジフェニル-5-カルボメトキシ-6-フェニル-9-メトキシ-2H-ナフト[1,2-b]ピラン PM-N 3-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-O 7-(4-モルフォリノ-2-フルオロフェニル)-7-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-ペンチル-4-オキソ-4H-7H-[1,3]ジオキシノ[5’,4’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-P 3-(4-メトキシフェニル)-3-(4-モルフォリノフェニル)-11-モルフォリノ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-Q 3,3-ジフェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-R 3-(4-モルフォリノフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-メトキシ-13-メチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-S 2,2,7,7-テトラフェニル-4-オキソ-2,3,4,7-テトラヒドロ-1H-ピリミジノ[5’,4’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-T 3,3 ジ(4-ジメトキシフェニル)-6,7,10,11-テトラメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン(当合議体注:上記「PM-T」における「4-dimethoxyphenyl(4-ジメトキシフェニル)」は、「4-methoxyphenyl(4-メトキシフェニル)」の誤記と認める。) PM-U 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-エチル-13-ヒドロキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン; PM-V 2,2 ジフェニル-5-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)カルボリック,6-(4-メトキシフェニル)-9-メトキシ-2H-ナフト[1,2.6]ピラン; PM-W 3-フェニル-3-(2-フルオロフェニル)-3H-ナフト[1,2-b]ピラン. PM-X 2,2 ジフェニル-5-(2-エトキシ-2-オキソ-エトキシカルボニル)8-メチル-2H-ナフト[1,2-b]ピラン PM-Y 2,2 ジフェニル-5-メトキシカルボニル-8-メチル-2H-ナフト[1,2-b]ピラン PM-Z 3,3-ジ(4メトキシフェニル)-6,11-ジメチル-13-(1-メチルエチル)-13-ヒドロキシ-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン PM-AA 紫外光を照射されると青紫色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-BB 紫外光を照射されるとオレンジ色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-CC 紫外光を照射されると黄-オレンジ色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-DD 紫外光を照射されると黄緑色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-EE 紫外光を照射されると赤色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-FF 紫外光を照射されると紫色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-GG 紫外光を照射されると赤-オレンジ色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-HH 紫外光を照射されると紫色を呈するナフト[1,2-b]ピラン PM-II 紫外光を照射されると緑がかった青色を呈するナフト[1,2-b]ピラン」 キ 「 Example 31 [00158] PM-AA, PM-BB, PM-CC, PM-B, PM-T, PM-C and PM-Q in a 17/15/03/10/20/24/11 weight ratio were used as the Photochromic Composition in the Imbibition Coating. Example 32 [00159] PM-AA, PM-BB, PM-CC, PM-T, PM-C, PM-Q and PM-R in a 17/13/03/20/25/12/10 weight ratio were used as the Photochromic Composition in the Imbibition Coating.」 日本語訳:「 実施例31 質量比が17/15/03/10/20/24/11のPM-AA、PM-BB、PM-CC、PM-B、PM-T、PM-C及びPM-Qが吸収コーティングのフォトクロミック組成物として使用された。 実施例32 質量比が17/13/03/20/25/12/10のPM-AA、PM-BB、PM-CC、PM-T、PM-C、PM-Q及びPM-Rが吸収コーティングのフォトクロミック組成物として使用された。」 (2)甲1発明 上記第5 1(1)カ、キの特に「実施例31」の記載から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「質量比が17/15/03/10/20/24/11の下記PM-AA、PM-BB、PM-CC、PM-B、PM-T、PM-C及びPM-Qを含むフォトクロミック組成物。 ・PM-AA 紫外光を照射されると青紫色を呈するナフト[1,2-b]ピラン ・PM-BB 紫外光を照射されるとオレンジ色を呈するナフト[1,2-b]ピラン ・PM-CC 紫外光を照射されると黄-オレンジ色を呈するナフト[1,2-b]ピラン ・PM-B 3,3-ジ(4-メトキシフェニル)-6,11-ジメトキシ-13-ブチル-13-エトキシ-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン ・PM-T 3,3 ジ(4-メトキシフェニル)-6,7,10,11-テトラメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン ・PM-C 3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-6,11-ジメトキシ-13-メチル-13-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン ・PM-Q 3,3-ジフェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン」 (3)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 (ア)一般式Aで表される化合物 甲1発明の「PM-Q 3,3-diphenyl-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran(PM-Q 3,3-ジフェニル-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン)(以下「PM-Q」という。)」は、本件特許発明1の「下記一般式Aで表される化合物」 「【化1】 [図:0001418226000008.jpg] (一般式A中、R1及びR2は、それぞれ置換基であるメチル基を表し、R3~R6は、それぞれ水素原子を表し、B1及びB2は、それぞれ置換基であるフェニル基を表す。)」に該当するから、甲1発明は、本件特許発明1の「下記一般式Aで表される化合物の1種以上と、」「を含む」という要件を満たす。 (当合議体注:以降、「一般式A」の化学式の摘記を省略することがある。) (イ)一般式Bで表される化合物 甲1発明の「PM-T 3,3 di(4-dimethoxyphenyl)-6,7,10,11-tetramethoxy-13,13-dimethyl-13H-3H-indeno[2,'3,'3,4]naphtho[1,2-b]pyran(PM-T 3,3 ジ(4-メトキシフェニル)-6,7,10,11-テトラメトキシ-13,13-ジメチル-13H-3H-インデノ[2,’3,’3,4]ナフト[1,2-b]ピラン)(以下「PM-T」という。)」)は、本件特許発明1の「下記一般式Bで表される化合物」 「【化2】 [図:0001418226000009.jpg] (一般式B中、 R7及びR8は、それぞれ置換基であるメチル基を表し、R9及びR12は、それぞれ水素原子を表し、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ電子供与性基(置換基)であるメトキシ基を表し、B3及びB4は、それぞれ置換基である4-メトキシフェニル基を表す。)」に該当するから、甲1発明は、本件特許発明1の「下記一般式Bで表される化合物の1種以上と、」「を含む」という要件を満たす。 (当合議体注:以降、「一般式B」の化学式の摘記を省略することがある。) (ウ)フォトクロミック組成物 甲1発明の「Photochromic Composition(フォトクロミック組成物)」は、本件特許発明1の「フォトクロミック組成物」に相当する。 イ 一致点及び相違点 両者は下記(ア)の点で一致し、また、下記(イ)の点で相違する。 (ア)一致点 「一般式Aで表される化合物の1種以上と、」「一般式Bで表される化合物の1種以上と、」「を含むフォトクロミック組成物。」 (イ)相違点 本件特許発明1は、「一般式Cで表される化合物の1種以上」「を含む」のに対し、甲1発明は、「一般式Cで表される化合物の1種以上」を含まない点。 ウ 判断 (ア)新規性について 上記相違点は実質的な差異であることは明らかであるから、本件特許発明1は、甲1発明ではない。 (イ)進歩性について 上記相違点について検討する。 甲1発明の「PM-B」及び「PM-C」は、本件特許発明1の「一般式Cで表される化合物」と類似する化学構造を有する化合物であるが、「PM-B」及び「PM-C」は、「一般式C中」の「R15及びR16」に相当する置換基の一方が、それぞれ「ブチル基」及び「メチル基」であって、「炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基」に該当するものの、他方は、それぞれ「エトキシ基」及び「2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ基」であって、「炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基」ではないから、本件特許発明1の「下記一般式Cで表される化合物」には該当しない。 そして、フォトクロミック化合物の吸光特性等の物性が、置換基の種類により大きな影響を受けることは、当業者の技術常識であるところ、甲1発明の「PM-B」及び「PM-C」において、電子供与性基である「エトキシ基」及び「2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ基」をそれぞれ「炭素数1~20の置換又は無置換のアルキル基」に変更する動機付けはない。 また、甲1の[0023]、[0027]~[0028]には、フォトクロミック材料である「式Iで表されるナフトピラン」の「R1-R7及びB、B’」として、様々な置換基が挙げられているが、本件特許発明1の「一般式Cで表される化合物」に該当する具体的な化合物は記載も示唆もされていないから、甲1発明において、「式Iで表されるナフトピラン」の「R1-R7及びB、B’」を適宜選択して本件特許発明1の「一般式Cで表される化合物」を作製し、フォトクロミック組成物に含有させる動機付けもない。 したがって、当業者であっても、甲1発明に基づいて上記相違点に係る本件特許発明1の構成に容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 以上のことから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。また、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)本件特許発明2~12、14~24について 本件特許発明2~12、14~24は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明2~12、14~24も、本件特許発明1と同じ理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2 理由3(明確性要件)について 本件特許の特許請求の範囲の請求項1が、上記「第3」のとおりに訂正されたことにより、請求項1に係る発明及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~12、14~24に係る発明は明確となった。 したがって、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではない。 第6 取消理由通知書により通知しなかった特許異議の申立ての理由の概要 令和6年2月9日付け取消理由通知書により特許権者に通知しなかった特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 1 新規性(甲1を主引例とした場合) 本件特許の請求項17~20及び24に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項17~20及び24に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 2 進歩性(甲1を主引例とした場合) 本件特許の請求項5~8、13及び14に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5~8、13及び14に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 3 進歩性(甲3を主引例とした場合) 本件特許の請求項1~24に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~24に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 4 サポート要件 本件特許の請求項1~24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、請求項1~請求項24に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 5 明確性要件 本件特許の請求項1~24に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、請求項1~24に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第7 取消理由通知書により通知しなかった特許異議の申立ての理由についての合議体の判断 1 新規性及び進歩性(甲1を主引例とした場合) 本件特許発明5~8、13、14、17~20、24は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明5~8、13、14、17~20、24も、本件特許発明1と同じ理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2 進歩性(甲3を主引例とした場合) 甲3の「Coating C-1」(コーティングC-1)の発明(以下「甲3a発明」という。)は、「photochromic compounds」(フォトクロミック化合物)「PC-1」~「PC-5」を含んでおり、「Coating C-2」(コーティングC-2)の発明(以下「甲3b発明」という。)は、「photochromic compounds」(フォトクロミック化合物)「PC-6」~「PC-8」を含んでいる([0196]~[0209])。 そして、甲3の「PC-1」~「PC-3」は、本件特許発明1における「一般式Aで表される化合物」に該当し、「PC-4」~「PC-7」は、本件特許発明1における「一般式Bで表される化合物」に該当し、「PC-8」は、本件特許発明1における「一般式Cで表される化合物」に該当する。 したがって、甲3a発明は、「一般式Cで表される化合物」を含んでおらず、甲3b発明は、「一般式Aで表される化合物」を含んでいない点で、それぞれ本件特許発明1と相違する。 ここで、特許異議申立人は、特許異議申立書の82~83頁において、当業者が甲3a発明と甲3b発明とを組み合わせることは容易である旨を主張している。 しかしながら、フォトクロミック組成物のフォトクロミック特性は、含有するフォトクロミック化合物の種類に大きく影響を受けることは、当業者の技術常識であるところ、甲3には、異なる実施例であって、フォトクロミック特性も当然異なる甲3a発明と甲3b発明を組み合わせてもよいことは、記載も示唆もされていないから、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 したがって、本件特許発明1は、当業者であっても、甲3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本件特許発明1を直接あるいは間接的に引用する本件特許発明2~12、14~24についても同様である。 3 サポート要件 (1)特許異議申立人は特許異議申立書の102~103頁において、一般式A、B、Cの各置換基は多様な置換基を含む表現であるところ、実施例では限られた置換基を有する化合物を用いた例しか開示されておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張している。 しかしながら、請求項1においては、「一般式A~Cで表される化合物」について、化合物の骨格部分の構造、及び、フォトクロミック特性に大きな影響を与える置換基(「一般式A」の「R4」、「一般式B」の「R13及びR14」及び「一般式C」の「R21及びR22」)の特性について明確に規定されている。 さらに、本件特許明細書には、実施例において使用された化合物以外にも、「一般式Aで表される化合物」(【0036】~【0066】)、「一般式Bで表される化合物」(【0067】~【0093】)及び、「一般式Cで表される化合物」(【0094】~【0110】)の具体例が非常に多数記載され、また、これらのいくつかを実際に組み合わせて本件特許発明を具現化した多様な例(実施例1~48)のいずれにおいても、「可視域における着色時の着色濃度が高いフォトクロミック物品を提供する」(【0005】)という、本件特許発明が解決しようとする課題が実際に解決できたことが開示されている(【0150】~【0158】)。 したがって、本件特許明細書の上記開示内容に照らせば、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるものと認められるから、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 (2)また、特許異議申立人は特許異議申立書の103頁において、一般式Aの要件及び一般式Cの要件を何れも満たす化合物が存在し得るため、請求項1の範囲には、2種の化合物を含むフォトクロミック組成物が含まれると解釈し得るが、本件特許明細書の実施例には、3種の化合物を含むフォトクロミック組成物を用いた例しか開示されていないため、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張しているが、当該主張の内容は、上記第4 2の「理由3(明確性要件)」と実質的に同一であるところ、当該取消理由は、上記第5 2で示したとおり解消した。 したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 4 明確性要件 特許異議申立人は特許異議申立書の103~105頁において、「電子供与性基」に関し、本件特許の発明の詳細な説明には、置換基の電子供与性の測定方法については何ら記載されておらず、具体的にどのような条件を満たす置換基が、請求項1に記載された「電子供与性基」に該当するかを当業者が明確に判断することができない旨を主張している。 しかしながら、特許異議申立人も特許異議申立書の104頁において指摘しているように、本件特許明細書の【0025】には、「「電子供与性基」とは、水素原子と比較して、結合している原子側に電子を与えやすい置換基をいう。」と記載されており、「電子供与性基」について明確に定義されている。 してみれば、どのような置換基が「電子供与性基」に該当するのかは、技術的にみて当業者にとって明確であるといえるから、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 したがって、本件特許発明は明確である。 第8 むすび 本件特許発明1~12、14~24は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件特許発明1~12、14~24を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正請求により、請求項13は削除されたから、本件特許発明13についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。 したがって、本件特許発明13についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701304

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決76件(ホヤ レンズ タイランド リミテッド、加藤 浩志)
  • 2024-700176異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容フォトクロミック化合物、フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び眼鏡
    同じ当事者: ホヤ レンズ タイランド リミテッド、加藤 浩志
  • 2023-701196異議申立 / 2024-07-22 / 訂正認容光学物品用コーティング組成物、眼鏡レンズ、眼鏡および眼鏡レンズの製造方法、ならび…
    同じ当事者: ホヤ レンズ タイランド リミテッド、加藤 浩志
  • 2025-701154異議申立
    同じ当事者: ホヤ レンズ タイランド リミテッド、加藤 浩志
  • 2023-701051異議申立 / 2024-12-26 / 訂正認容光学フィルム
    同じ当事者: 加藤 浩志
  • 2023-700813異議申立 / 2024-11-08 / 訂正認容表面処理フィルム
    同じ当事者: 加藤 浩志
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,895件(113・G02B、121・G02B、537・G02B)
  • 2025-700999異議申立 / 2026-02-16 / 維持光学フィルムおよび画像表示装置
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B、537・G02B
  • 2024-701111異議申立 / 2026-01-27 / 維持反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B、537・G02B
  • 2024-700176異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容フォトクロミック化合物、フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び眼鏡
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B、537・G02B
  • 2025-700200異議申立 / 2025-12-26 / 訂正認容液晶化合物配向層転写用配向フィルム
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B、537・G02B
  • 2025-700522異議申立 / 2025-12-22 / 維持蛍光体プレート、及び発光装置
    共通の審決分類: 113・G02B、121・G02B、537・G02B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存