2020-701023
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2020-701023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-125595外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6773249
- 請求日
- 2020年12月28日
- 審決日
- 2023年08月29日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZDA(B32B) / P1651.4 -ZDA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第39条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 28項目
第1 手続の経緯
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特許第6773249号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年4月26日に出願した特願2016-88441号の一部を、令和2年3月10日に新たな特許出願とした特願2020-41305号の一部を、同年7月22日に新たな特許出願としたものであって、同年10月5日にその特許権の設定登録がされ、同年10月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
同年 4月 1日 :申立人による上申書の提出
同年 9月28日付け :取消理由通知書
同年 3月29日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月30日 :特許権者による意見書の提出
同年 9月 6日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年11月 8日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
以下、上記令和4年11月8日提出の訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、訂正そのものを「本件訂正」という。
なお、上記令和3年11月30日にされた訂正請求は、本件訂正請求がされたことから、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6773249号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える紙カップ用積層体であって、紙カップの胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。」を、
「少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える紙カップ用積層体であって、紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4の
「胴部と、底部と、を備える紙カップであって、胴部を構成する積層体が、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、をこの順に備え、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記紙カップの胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ。」を、
「胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された紙カップであって、胴部を構成する積層体が、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、をこの順に備え、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記紙カップの胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3-1
本件訂正前の請求項3の「請求項1または2に記載の紙カップ用積層体」を、「請求項2に記載の紙カップ用積層体」に訂正する。
(4) 訂正事項3-2
本件訂正前の請求項3の「請求項1または2に記載の紙カップ用積層体」においての、請求項1を引用するものについて、請求項1を引用しない独立形式に改め、
「少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、さらに印刷層を有する紙カップ用積層体であって、紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。」
と訂正し、新たに請求項7とする。
(5) 訂正事項4-1
本件訂正前の請求項6の「請求項4または5に記載の紙カップ」を、「請求項5に記載の紙カップ」に訂正する。
(6) 訂正事項4-2
本件訂正前の請求項6の「請求項4または5に記載の紙カップ」においての、請求項4を引用するものについて独立形式に改め、
「胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された紙カップであって、胴部を構成する積層体が、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、をこの順に備え、さらに印刷層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含め、バイオマスポリオレフィンを2種以上混合したものを含んでなり、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記紙カップの胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ。」
と訂正し、新たに請求項8とする。
(7) 別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項7及び8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~3は、請求項2、3が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、
また、本件訂正前の請求項4~6は、請求項5、6が、本件訂正請求の対象である請求項4の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~3〕、〔4~6〕、請求項7及び8について請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1に係る請求項1ないし3の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の「紙カップの胴部」について、「紙カップ用の底部とは別体」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の段落【0075】、【0096】、【0097】の記載からみて、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、課題を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項1を引用する請求項2及び請求項3の訂正も同様である。
(2) 訂正事項2に係る請求項4ないし6の訂正について
訂正事項2に係る請求項4の訂正は、本件訂正前の請求項4に係る発明の「胴部と、底部と、を備える紙カップ」について、「胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2に係る請求項4の訂正は、本件訂正前の上記【0075】、【0096】及び【0097】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項2に係る請求項4の訂正は、本件訂正前の請求項4に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、課題を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項4を引用する請求項5及び請求項6の訂正も同様である。
(3) 訂正事項3-1に係る請求項3の訂正について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1及び2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用するもののみとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項3-2に係る請求項3の訂正について
訂正事項3-2に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1および2の記載を引用する記載であるところ、請求項1のみを引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項7へ改めるとともに、さらに、「紙カップの胴部」について、「紙カップ用の底部とは別体」であることを限定し、「ポリオレフィン樹脂層」について「化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり」という構成、並びに「前記バイオマス由来の低密度ポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり」という構成を加える特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、本件特許明細書等の【0077】~【0098】の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項4-1に係る請求項6の訂正について
訂正事項4-1に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が請求項4または5の記載を引用する記載であるところ、請求項5を引用するもののみとするとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6) 訂正事項4-2に係る請求項6の訂正について
訂正事項4-2に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が請求項4または5の記載を引用する記載であるところ、請求項4のみを引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項8へ改めるとともに、さらに、「胴部と、底部と、を備える紙カップ」について「胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された」ものに限定し、「ポリオレフィン樹脂」について「バイオマスポリオレフィンを2種以上混合したものを含んでなり」という構成を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等の【0027】、【0028】、【0086】~【0098】の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-6〕、7、8について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える紙カップ用積層体であって、紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、続きを表示(全42行)前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。【請求項2】前記紙カップ用積層体がさらにバリア層を有する、請求項1に記載の紙カップ用積層体。【請求項3】前記紙カップ用積層体がさらに印刷層を有する、請求項2に記載の紙カップ用積層体。【請求項4】胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された紙カップであって、胴部を構成する積層体が、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、をこの順に備え、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記紙カップの胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ。【請求項5】前記胴部を構成する積層体が、さらにバリア層を有する、請求項4に記載の紙カップ。【請求項6】前記胴部を構成する積層体が、さらに印刷層を有する、請求項5に記載の紙カップ。【請求項7】少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、さらに印刷層を有する紙カップ用積層体であって、紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。【請求項8】胴部と、前記胴部とは別体の底部とが密接着された紙カップであって、胴部を構成する積層体が、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、をこの順に備え、さらに印刷層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含め、バイオマスポリオレフィンを2種以上混合したものを含んでなり、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記紙カップの胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
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申立人による本件特許に対する特許異議の申立て(全請求項に対して)の理由の概要及び証拠方法は、令和2年12月28日提出の特許異議申立書、及び、本件特許に対する特許異議の申立てができる期間内の令和3年3月31日に提出した特許異議申立書に対する手続補正書の記載からみて、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、以下の甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第11号証に基づく特許法第39条第2項)
本件特許の請求項4ないし6に係る発明は、同一出願人が同日出願した以下の甲第11号証に係る特許(特許第6743990号)の請求項1を引用する請求項4に係る発明と同一と認められ、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項4ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第7号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に当業者が、以下の甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第12号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に当業者が、以下の甲第12号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 証拠方法
甲第6号証 :” Complex Packaging Structures Based on Wood Derived Products: Actual and Future Possibilities for 1-Way Food Packages” Journal of Materials Science Research;Vol.3,No.4、Gustaaf Schoukens et.al.、2014年
また、令和4年1月11日提出の意見書に添付して以下の証拠を提出する。
さらに、令和4年12月23日提出の意見書に添付して以下の証拠を提出する。
証拠の表記については、おおむね証拠説明書の記載に従った。以後、甲第1号証を、「甲1」のようにいう。
第5 令和4年9月6日付け取消理由通知書<決定の予告>で通知した取消理由の概要
当審が通知した令和4年9月6日付け取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 取消理由1(甲7に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 上記取消理由1についての当審の判断
以下に記載するように、当審が令和4年9月6日付けで通知した取消理由通知<決定の予告>に記載の取消理由1における請求項1ないし6及び8に対する取消理由には理由があり、請求項7に対しては取消理由がないと判断する。
1 甲7の記載事項及び甲7に記載された発明
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(1) 甲7の記載事項
甲7には以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】筒状の胴部材と、筒状の前記胴部材の一方の開口部を密封する底部材とからなる紙カップであって、前記胴部材と前記底部材を形成する胴部材用ブランクと底部材用ブランクは、紙層とこの紙層の内面に設けられた内側熱可塑性樹脂層との積層材料からなり、前記内側熱可塑性樹脂層が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなることを特徴とする紙カップ。【請求項2】前記積層材料が前記紙層の外面にも外側熱可塑性樹脂層が設けられ、前記外側熱可塑性樹脂層が植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ。」
「【技術分野】【0001】本発明は、紙カップに関するものである。特に、環境負荷が低減された紙カップに関するものである。【背景技術】【0002】近年、地球温暖化防止ならびに枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、従来の石油由来プラスチック材料からカーボンニュートラルな植物由来プラスチック材料への置き換えが検討されている。製品中の植物由来プラスチックの重量比率が25%以上の基準を満たしている場合、日本バイオプラスチック協会よりバイオマスプラマークの使用が許可される。・・・【0004】該植物由来LLDPEは、C4-LLDPEもしくはC6-LLDPEと表記される炭素数4もしくは6のα-オレフィンを側鎖に有するものである。該植物由来LLDPEや植物由来HDPEなどのポリエチレンを用いて、従来の石油由来ポリエチレンからの置き換えが検討されている(特許文献1~4参照)。」
「【発明の効果】【0016】本発明の紙カップは、紙と低密度バイオマスポリエチレン樹脂からできているので、環境負荷が低減され環境にやさしい。且つ、押し出し製膜適性やヒートシール性がよいので、生産性や密封性が良好である。」
「【0018】以下、本発明を実施するための形態につき説明する。図1は、本発明の紙カップの一例を模式的に縦断面で示した説明図、図2(A)(B)は、本発明の紙カップの一例に用いるブランクの積層材料を模式的に断面で示した説明図である。【0019】本例の紙カップ100は、図1の断面図に示すように、円筒状の胴部材1と、該円筒状の胴部材1の一方の開口部を密封する底部材2とからなっている。胴部材1は、胴部材用ブランクの両端部どうしが重ね合わせられてシールされた胴部材貼り合わせ部3が設けられて円筒状となっている。そして、胴部材1の下端部は内側に折り返されていて、折り返し部4が設けられている。」
「【0028】さらにまた、紙層31と内側熱可塑性樹脂層32の間に、バリア層を設けることもできる。バリア層としては、ポリ乳酸の2軸延伸フィルムや植物由来のポリエチレンテレフタレートフィルムなどに酸化珪素や酸化アルミニウムなどの無機物を蒸着したガスバリア性のある蒸着フィルムを使用することができる。植物由来のポリ乳酸やポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いることで、環境への影響を低減して、バリア性を付与させることができる。【0029】本例の紙カップ100は以下のようにしてカップ成形機で成形する。続きを表示(全13行)図3は、本発明の紙カップの一例の製造方法を説明する概略図である。【0030】胴部材用積層材料と底部材用積層材料は、カップ成形機用にスリットされ、カップ成形機に掛けられる。カップ成形機上で、胴部材用積層材料は扇状に打ち抜かれ、胴部材用ブランク11になる。この胴部材用ブランク11を筒状に巻いて、重なり部をシールして胴部貼り合わせ部3を設け、胴部材1を成形する。【0031】同様に、底部材用積層材料は円形に打ち抜かれ、底部材用ブランク21になる。この円形の底部材用ブランク21の周縁部を下方に折り曲げて周縁折り曲げ部5を設け、底部材2を成形する。【0032】この底部材2を周縁折り曲げ部5が外向きになるように、胴部材1の下端に挿入し、胴部材1の下端部分を内側に折返し、周縁折り曲げ部5に重ね合わせ、全体を融着させて、脚部を形成させる。次に、胴部材1の上端を外側にカールさせてトップカール部6を設け、本例の紙カップ100を成形する。【0033】このように成形された紙カップ100は、内面に設けられた内側熱可塑性樹脂層32が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなっているので、環境負荷が低減され環境にやさしく。また、成形に当たっても、ポリエチレン樹脂であるので、生産性や密封性が良好である。」
「【実施例】【0040】以下に、本発明の具体的実施例について説明する。【0041】紙層1として、坪量260g/m2のカップ原紙を用意した。このカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設けた。【0042】続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設け、胴部材用積層材料と底部材用積層材料を作成した。【0043】この胴部材用積層材料と底部材用積層材料をカップ成形機用にスリットして、カップ成形機に掛けて、前述した製造方法に基づいて、紙カップ100を成形した。」
「[図:0001405763000001.jpg]」
(2) 甲7に記載された発明
以上を総合すると、甲7には、紙コップの胴部材を構成する胴部材用ブランクに係る発明として、次の発明(以下「甲7-1発明」という。)が記載されている。
<甲7-1発明>
「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる内側熱可塑性樹脂層と、紙層と、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる外側熱可塑性樹脂層と、をこの順に備える胴部材用ブランクであって、紙カップ用の底部材とは別体の胴部材として、前記胴部材用ブランクの両端部どうしが重ね合わせられてシールされた胴部材貼り合わせ部が形成されて円筒状となるように用いられる、胴部材用ブランク。」
また、甲7には、紙カップに係る発明として、次の発明(以下「甲7-2発明」という。)が記載されている。
<甲7-2発明>
「胴部材と、前記胴部材とは別体の底部材とが融着された紙カップであって、胴部材を構成する胴部材用ブランクが、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる内側熱可塑性樹脂層と、紙層と、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる外側熱可塑性樹脂層と、をこの順に備え、前記胴部材は、前記胴部材用ブランクの両端部どうしが重ね合わせられてシールされた胴部材貼り合わせ部が形成されて円筒状となっている、紙カップ。」
2 本件発明1について
本件発明1を甲7-1発明と対比する。
甲7-1発明の「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる」「内側熱可塑性樹脂層」、「紙層」、「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる」「外側熱可塑性樹脂層」、「胴部材」、「底部材」、「胴部材用ブランク」は、それぞれ、本件発明1の「ポリオレフィン樹脂層」、「紙基材層」、「熱可塑性樹脂層」、「胴部」、「底部」、「積層体」に相当する。
甲7-1発明の「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂」は、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン」に相当する。
甲7-1発明の「低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる」「外側熱可塑性樹脂層」のバイオマス度は、当該層の樹脂が「バイオマス」であるのだから、明らかに本件発明1における「ポリオレフィン樹脂層」の「バイオマス度が5%以上」含まれるものである。
また、甲7-1発明における「紙カップ用の底部材とは別体の胴部材として、前記胴部材用ブランクの両端部どうしが重ね合わせられてシールされた胴部材貼り合わせ部が形成されて円筒状となるように用いられる」という態様は、本件発明1の「紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる」という態様に相当する。
また、甲7-1発明における「内側熱可塑性樹脂層」は、甲7の明細書段落【0033】、図2の記載等からみて、紙カップ100の内面に設けられるものであるから、本件発明1における「ポリオレフィン樹脂層」が、「前記紙カップ用積層体の最内面」であることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲7-1発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える紙カップ用積層体であって、紙カップ用の底部とは別体の胴部として用いられ、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより胴部シール部が形成されるように用いられる紙カップ用積層体において、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が低密度ポリエチレンであり、前記紙カップ用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層である、紙カップ用積層体。」
<相違点7>
「熱可塑性樹脂層」について、本件発明1は「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」であるのに対して、甲7-1発明の「外側熱可塑性樹脂層」は、「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなる」ものである点。
<相違点7>について検討する。
従来の石油由来プラスチック材料からなる内側熱可塑性樹脂層あるいは従来の石油由来プラスチック材料からなる外側熱可塑性樹脂層を備えた胴部材用ブランクないし紙コップは、甲7-1発明の前提として当業者が当然に認識するものである。
そうすると、甲7-1発明において、製造費用等の要請を考慮して、外側熱可塑性樹脂層を化石燃料由来のものに置換することは、当業者にとって格別の創意工夫を要するものではない。
したがって、本件発明1は、甲7-1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
3 本件発明2及び3について
甲7には、積層体においてさらに「バリア層」を設けることが記載されており(段落【0028】)、また、紙カップの胴部に印刷層を設けることは、例示するまでもなく周知かつ当業者が適宜採用する程度の技術的事項にすぎないから、本件発明2及び3も、甲7-1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
4 本件発明4について
本件発明4を甲7-2発明と対比すると、本件発明1を甲7-1発明と対比した際と同様の相当関係が成り立ち、さらに、甲7-2発明の「融着」について、上記摘記した甲7の【0032】によれば、「底部材2」の「周縁折り曲げ部5」と「胴部材1」の「下端部分」に「重ね合わせ」るものであるから、本件発明4の「密接着」に相当する。
そうすると、本件発明4と甲7-2発明の相違点は、本件発明1を甲7-1発明と対比した際の<相違点7>と同様のものであるが、これについては、既に本件発明1について述べたことと同様の判断が成り立つ。
したがって、本件発明4は、甲7-2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
5 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、それぞれ本件発明2及び3と同様な限定が付加されたものであるから、上記3において検討したとおりであり、本件発明5及び6も、甲7-2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
6 本件発明7について
本件発明7と甲7-1発明とを対比すると、本件発明1を甲7-1発明と対比した際と同様の相当関係が成り立つから、上記2に記載の一致点で一致し、上記2に記載の<相違点7>に加えて以下の点でも相違する。
<相違点7-1>
積層体に関し、本件発明7は「さらに、印刷層を有する」と特定するのに対し、甲7-1発明はこの点を特定しない点
<相違点7-2>
最内層となるバイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂層に関し、本件発明7は、さらに「化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり」と特定するのに対し、甲7-1発明は、植物由来の低密度バイオマスポリエチレンからなるものである点
事案に鑑み、<相違点7-2>から検討する。
紙カップ用の積層体の最内層となる樹脂層に関して、相違点7-2に係る構成を開示する証拠は申立人から提示されていない。
そして、甲7-1発明において、相違点7-2に係る発明特定事項とする動機もない。
そうすると、当業者において、甲7-1発明において、相違点7-2に係る構成を備えたものとすることは、容易に想到し得たことではない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲7-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
7 本件発明8について
本件発明8と甲7-2発明とを対比すると、本件発明4を甲7-2発明と対比した際と同様の相当関係が成り立つから、上記2及び4に記載の<相違点7>に加えて以下の点でも相違する。
<相違点7-3>
紙カップに関し、本件発明8は、「さらに、印刷層を有し」と特定するのに対し、甲7-2発明はこの点を特定しない点。
<相違点7-4>
紙カップの最内層となるバイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂層に関し、本件発明8は、「バイオマスポリオレフィンを2種以上混合したものを含んでなり」と特定するのに対し、甲7-2発明は、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなるものである点。
<相違点7>について検討する。
上記2及び4に示したことを踏まえると、甲7-2発明において、<相違点7>に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点7-3>について検討する。
紙カップの胴部に印刷層を設けることは、例示するまでもなく周知かつ当業者が適宜採用する程度の技術的事項に過ぎないから、甲7-2発明において、<相違点7-3>に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点7-4>について検討する。
甲13の段落【0079】には、紙カップのポリオレフィン樹脂層に異なる2種以上のバイオマスポリオレフィンを利用してもよい旨記載され、加えて、甲23の段落【0007】、及び、甲25の段落【0065】の記載からみて、バイオマスポリオレフィンを2種以上混合して利用すること自体は周知といえる。
してみると、甲7-2発明の低密度バイオマスポリエチレンを、2種以上のバイオマスポリオレフィンを混合したものとすることすることは、上記周知の事項を単に採用するという設計事項といえるものであるから、当業者が甲7-2発明に基づき、<相違点7-4>に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本件発明8は、甲7-2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
8 まとめ
以上のとおり、取消理由通知<決定の予告>に記載の取消理由1における請求項1ないし6及び請求項8には理由があり、請求項7に対しては理由がない。
第7 取消理由通知<決定の予告>に採用しなかった申立理由について
取消理由通知<決定の予告>に採用しなかった申立理由は、本件発明7が訂正前の請求項3に対応することを考慮すると、本件特許の請求項7に対する上記第4における申立理由1(甲1に基づく進歩性)及び本件特許の請求項7に対する申立理由4(甲12に基づく進歩性)であるので、順次検討する。
1 申立理由1(甲1を主たる引用文献とする進歩性)について
(1) 本件発明7について
甲1の実施例に着目すると、甲1には、以下に示した<甲1-1>発明が記載されている。そして、本件発明7と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも上記第6の6に記載した以下の<相違点1A>で相違するから、当該<相違点1A>について検討すると、以下に示すとおり、<相違点1A>は、当業者においても容易に想到し得たということはできない。
<甲1-1発明>
「板紙を基材とし、内層及び外層がヒートシール可能な熱可塑性部材からなる紙製容器用の積層シートであって、内層及び外層の熱可塑性樹脂が、MFRが1.6のLDPE(三井石油化学株式会社製のミラソン401PC)である紙製容器用の積層シート。」
本件発明7と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも以下の<相違点1A>で相違する。
<相違点1A>
紙カップ用積層体の低密度ポリエチレン樹脂の熱可塑性樹脂層である最内層に関し、本件発明7は、「ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり」と特定するのに対し、甲1-1発明は、このような特定がない点
当該<相違点1A>について検討する。
上記<相違点7-2>で検討したように紙カップ用の積層体の最内層となる樹脂層に関して、<相違点7-2>に係る構成、すなわち、最内層となるバイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂層に関し、さらに「化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下」とすることを開示する証拠は申立人から提示されていない。そして、甲1-1発明において、<相違点7-2>に係る構成を開示する証拠は申立人から提示されていない。さらに、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であることを示す証拠も提出されていない。
そうすると、当業者において、甲1-1発明において、<相違点1A>に係る構成を備えたものとすることは、容易に想到し得たことではない。
2 申立理由4(甲12に基づく進歩性)について
(1) 甲12に記載された発明
甲12には、以下の発明が記載されていると認める。
<甲12発明>
「単層のポリエステルフィルムであって、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むバイオマスポリエステルと、ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるリサイクルポリエステルと、を含む単層のポリエステルフィルムの内面側及び外面側にシーラント層として低密度ポリエチレンを用いたシーラント層を設けた紙カップ用の積層体。」
(2) 本件発明7について
本件発明7と甲12発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点11A>
積層体を構成する基材として、本件発明7は「紙基材層」と特定するのに対し、甲12発明は、「単層のポリエステルフィルム」であって、「ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むバイオマスポリエステルと、ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるリサイクルポリエステルと、を含む」ものである点
以下、<相違点11A>について検討する。
上記<相違点7-2>で検討したように紙カップ用の積層体の最内層となる樹脂層に関して、<相違点7-2>に係る構成、すなわち、最内層となるバイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂層に関し、さらに「化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記化石燃料由来のポリオレフィンの割合は、前記ポリオレフィン樹脂層全体に対して30質量%以上95質量%以下であり」とすることを開示する証拠は申立人から提示されていない。そして、甲12発明において、<相違点7-2>に係る構成を開示する証拠は申立人から提示されていない。
そうすると、当業者において、甲12発明において、<相違点11A>に係る構成を備えたものとすることは、容易に想到し得たことではない。
以上のとおりであるから、申立人の本件特許の請求項7に対する申立理由1及び4には理由がない。
第8 むすび
上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし6及び8に係る特許は、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項7に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-701023