特許異議申立
2024-700232
積層フィルム及び包装袋
- 審判番号
- 2024-700232
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-535697
- 登録番号
- 7347718
- 請求日
- 2024年03月12日
- 審決日
- 2025年10月16日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 【異議申立人】片桐 麻希子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 田口 傑
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1652.113-ZDA(B32B) / P1652.121-ZDA(B32B) / P1652.161-ZDA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7347718号発明「積層フィルム及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7347718号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、6、11、12〕、〔3、5、7、14〕、8、9、10、13について訂正することを認める。
特許第7347718号の請求項1、2、4、6、9~12、14に係る特許を取り消す。
特許第7347718号の請求項3、5、7に係る特許を維持する。
特許第7347718号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7347718号の請求項1~14に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)2月14日(優先権主張 令和4年2月14日)を国際出願日とする出願であって、令和5年9月11日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 3月12日 :特許異議申立人弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人1」という。)による請求項1、2、4~12、14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和6年 3月15日 :特許異議申立人片桐麻希子(以下「申立人2」という。)による請求項1~6、8~12、14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立2」という。)
令和6年 6月28日付け:取消理由通知書
令和6年 8月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年11月14日 :申立人1による意見書の提出
令和6年11月14日 :申立人2による意見書の提出
令和6年12月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 2月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 3月18日 :特許権者による手続補正書の提出(以下、手続補正書(方式)による補正後の訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 4月24日 :申立人1による意見書の提出
令和7年 4月25日 :申立人2による意見書の提出
令和7年 6月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、令和6年8月30日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
また、令和7年6月5日付け取消理由通知(決定の予告)に対して、指定期間内に特許権者から応答はなかった。
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含む、積層フィルム。」を、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が、同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含み、
前記少なくとも1つの隣接層として、シーラント層を含む、積層フィルム。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4、6、11、12も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項3を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、
前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であり、
前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む、積層フィルム。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項14も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項5を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、
前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であり、
前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である、積層フィルム。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項14も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項7を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上である、積層フィルム。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項14も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項8を削除する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項9を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリプロピレン樹脂を含み、
前記ポリプロピレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上であり、
前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む、積層フィルム。」に訂正する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項10を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含み、
前記ポリエチレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上であり、
前記隣接層が、前記ポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含み、
前記樹脂組成物が、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物である、積層フィルム。」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項13を独立形式に改め、
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、
前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万である、積層フィルム。」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項14に記載された、
「請求項1~13のいずれか一項に記載の積層フィルムを用いてなる、包装袋。」を、
「請求項3、5及び7のいずれか一項に記載の積層フィルムを用いてなる、包装袋。」に訂正する。
2 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~14は、請求項2~14が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~14〕について請求されたものである。
(2)別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項〔3、5、7、14〕、8、9、10、13に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「バリア基材」、「隣接層」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0029】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3について、独立形式に改めたうえで、本件訂正前の請求項1に記載された「バリア基材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項2は、本件特許明細書の【0023】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5について、独立形式に改めたうえで、本件訂正前の請求項1に記載された「バリア基材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項3は、本件特許明細書の【0023】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項7について、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項9について、独立形式に改めたうえで、本件訂正前の請求項1に記載された「樹脂組成物」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項6は、本件特許明細書の【0013】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、本件訂正前の請求項9に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項10について、独立形式に改めたうえで、本件訂正前の請求項1に記載された「隣接層」、「樹脂組成物」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項7は、本件特許明細書の【0029】、【0035】、【0036】、【0039】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項7は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項13について、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
なお、請求項13は特許異議の申立てがされていないが、訂正事項8は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項で規定される要件は課されない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項14について、引用する請求項を3、5、7に限定して引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項5によって削除された請求項8を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、6、11、12〕、〔3、5、7、14〕、8、9、10、13について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~7、9~12、14に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7、9~12、14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~7、9~12、14の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が、同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含み、
前記少なくとも1つの隣接層として、シーラント層を含む、積層フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、
前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であり、
前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む、積層フィルム。
【請求項4】
前記コート層が、前記コート層の長手方向に沿って延在し且つアルミニウム粒子を含まない領域を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、
前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であり、
前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である、積層フィルム。
【請求項6】
前記コート層の厚さが0.1μm以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上である、積層フィルム。
【請求項9】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリプロピレン樹脂を含み、
前記ポリプロピレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上であり、
前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む、積層フィルム。
【請求項10】
バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含み、
前記ポリエチレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上であり、
前記隣接層が、前記ポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含み、
前記樹脂組成物が、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物である、積層フィルム。
【請求項11】
水蒸気透過度が5g/m2・day以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
酸素透過度が1cc/m2・day・atm以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項14】
請求項3、5及び7のいずれか一項に記載の積層フィルムを用いてなる、包装袋。
第4 令和7年6月5日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審において、請求項1、2、4、6、9~12、14に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
請求項1、2、4、6、11、12、14に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4、6、11、12、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)
請求項10に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(進歩性)
請求項9、10に係る発明は、下記引用文献3に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2021-183416号公報(申立1の甲第1号証)
引用文献2:特開2020-157718号公報(申立2の甲第1号証)
引用文献3:特開2020-157729号公報(申立2の甲第2号証)
引用文献5:特開2021-024112号公報(周知技術として当審が発見した文献)
引用文献7:特開2021-160266号公報(申立人2が令和7年4月25日に提出した参考資料1)
引用文献8:特開2021-160255号公報(申立人2が令和7年4月25日に提出した参考資料2)
引用文献9:特開2022-23460号公報(申立人2が令和7年4月25日に提出した参考資料3)
第5 当審の判断
1 引用文献等の記載
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(以下、下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。)。
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0016】
図3は、真空断熱材用積層体(2)の一部を構成するバリアフィルムの一実施形態を説明するための断面模式図である。
バリアフィルム(10)はガスバリア層を成すものであって、その構成はフィルム基材層(11)上に蒸着層(12)を積層し、さらにその上にバリア性の保護機能を保持するためのバリアコート層(13)を積層してなる。
【0017】
図2は、真空断熱材用積層体(2)の部分断面模式図である。本実施形態においては、真空断熱材用積層体(2)の基材(4)としてポリアミドフィルムを用いる。基材(4)は、真空断熱材(1)の最外層となる。
【0018】
基材(4)上には、ガスバリア層(9)が積層されている。本実施形態では、バリアコートアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(以下、「バリアVM-PET」と称する。)フィルム(5)と、アルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「VM-EVOH」と称する)フィルム(6)との2つのフィルムがガスバリア層(9)として用いられている。バリアVM-PETフィルム(5)は、ドライラミネート層(8)により基材(4)と接合されている。VM-EVOHフィルム(6)は、ドライラミネート層(8)によりバリアVM-PETフィルム(5)と接合されている。
【0019】
VM-EVOHフィルム(6)には、熱融着層(7)が形成されている。熱融着層(7)は、ドライラミネート層(8)によりVM-EVOHフィルム(6)と接合されている。
ドライラミネート層(8)としては、ドライラミネーションに用いる各種接着剤を適宜選択して使用できる。ドライラミネーションに代えて、無溶剤型接着剤を用いたノンソルベントラミネーションが用いられてもよい。
【0020】
図2に示されるバリアVM-PETフィルム(5)は、図3に示したバリアフィルム(10)のように、フィルム基材層(11)、蒸着層(12)、およびバリアコート層(13)の3つの層を有する。蒸着層(12)は厚さ10nm~100nmのアルミ蒸着層である。VM-EVOHフィルム(6)は、バリアフィルム(10)からバリアコート層(13)を除いた二層構成を有する。
ガスバリア層(9)の層の数には、特に制限がなく、バリア性を発揮する層を少なくとも1つ有すればよい。ガスバリア層(9)の層構成や材質等は、真空断熱材の用途等を考慮して適宜決定できる。
【0021】
(基材)
次に真空断熱材用積層体(2)の各構成要素について説明を加える。
基材(4)には、高分子材料を素材としたプラスチックフィルムを用いることができる。高分子フィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
例えば図2に示した実施形態例はポリアミドフィルムを用いた例であるが、真空断熱材を被覆する最外層の材料として、強度の点でより好ましい。
【0022】
真空断熱材用積層体(2)は、内部の真空状態を維持するためにガスバリア性が求められる。そのために、積層体を構成する層中にガスバリア層を設けてガスバリア性を付与するが、ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属箔を用いることもでき、また表面にガスバリア層を設けたガスバリアフィルムを用いることもできる。
【0023】
(バリアフィルム)
バリアフィルム(10)は、たとえばプラスチック材料からなるフィルム基材層(11)を用い、その片面に蒸着層を設けて形成されるが、蒸着層(12)とバリアコート層(13)を順次積層したものを用いてもよい。
プラスチック材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等を用いることができる。
・・・
【0027】
(蒸着層)
次に蒸着層(12)は、例えばアルミニウム(アルミ)の蒸着膜からなり、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する。
【0028】
蒸着層の厚さは、用いられる化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、10~100nmの範囲内が望ましく、その厚さは適宜選択することができる。ただし、膜厚が10nm未満の場合は、均一な膜が得られず、膜厚が十分とはいえない。
【0029】
蒸着層をフィルム上に形成する方法としては、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法としてスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(PCVD)などを用いることも可能である。生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れる。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかが好ましい。
また、蒸着層と基材の密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
【0030】
(バリアコート層)
さらに、ガスバリア層を形成するために蒸着層に重ねて形成することのできる、コーティングによるバリアコート層(13)を説明する。
バリアコート層は、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を調整し溶液とする。この溶液を無機化酸化物からなる蒸着層(12)にコーティング後、加熱乾燥し形成される。
【0031】
コーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を用いるとガスバリア性が最も優れる。このPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等までを含み、特に限定されない。
・・・
【0033】
更にコーティング剤に用いられる金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C2H5等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2'-C3H7)3〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0034】
コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
・・・
【0036】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の手段を用いることができる。被膜の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって異なる。乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題がある。そのため厚さは0.01~50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1~10μmの範囲にあることである。
【0037】
なお、蒸着層、バリアコート層上にさらに蒸着層、バリアコート層を同様に設けることも可能であり、必要に応じて複数層を積層して設けることができる。
・・・
【0039】
(熱融着層)
熱融着層(7)の材質としては、ポリオレフィン樹脂を含むものである。上記熱融着層(7)は、通常、本発明の真空断熱材用積層体の積層方向の一方において最表層を担う層である。
【0040】
熱融着層(7)は、詳しくは直鎖状ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を選定することができ、本発明の真空断熱材用積層体を用いた真空断熱材において、上記真空断熱材の端部の接着を強固にすることができる。
【0041】
熱融着層の厚さとしては、所望の接着力を有することができる厚さであればよく、例えば20μm~100μmの範囲内であり、中でも25μm~90μmの範囲内が好ましく、特に30μm~80μmの範囲内が好ましい。熱融着層の厚さが上記範囲よりも大きいと、真空断熱材用積層体全体としてのガスバリア性や外観等が悪化する場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られず、高温下で長時間使用する間に剥離が生じる場合がある。」
「【0051】
発明者らは、アルミ蒸着層上にバリアコート層が形成されたバリアフィルムをガスバリア層(9)に使用した真空断熱材用積層体の開発を進める中で、全く同一の層構成を有するフィルムを用いているにも関わらず、蒸着層とバリアコート層との界面で剥離(デラミネーション)を生じやすい積層体と生じにくい積層体が存在することに気づいた。
検討を進めたところ、製造の際にアルミ蒸着層形成後速やかにバリアコート層が形成されたバリアフィルムを使用した積層体では、デラミネーションが生じにくかった。一方、アルミ蒸着層形成後、バリアコート層が形成されるまでに一定の時間が経過したバリアフィルムを使用した積層体では、デラミネーションが生じやすかった。発明者らは、さらに検討を進めることにより、アルミ蒸着層表面におけるアルミニウムの酸化がデラミネーションの増加に関与していることを突き止めた。」
「【実施例】
【0056】
本実施形態に係る真空断熱材用積層体および真空断熱材について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、実施例および比較例の具体的内容には限定されない。
【0057】
<実施例1>
基材(4)として厚さ25μmのポリアミド(NY)フィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 製品名:ボニールRX)を用いた。
厚さ12μmのVM-PETフィルム(5)を、ドライラミネート層(8)を介して基材(4)上に積層した。ドライラミネート層(8)として、ウレタン系接着剤を使用した。VM-PETフィルム(5)におけるアルミ蒸着層の厚みは70nmであり、アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成されている。
厚さ約12μmのVM-EVOHフィルム(6)(株式会社クラレ製 製品名:VM-XL)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-PETフィルム(5)上に積層した。VM-EVOHフィルム(6)におけるアルミ蒸着層の厚みは40nmである。
さらに、熱融着層(7)として厚さ50μmの直鎖状ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:FCS)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-EVOHフィルム(6)上に積層し、実施例1に係る真空断熱材用外装材を得た。
ドライラミネート層(8)は、いずれもウレタン系接着剤とした。
【0058】
実施例1の真空断熱材用外装材2枚を、熱融着層(7)を対向させて重ね、三辺を熱融着により接合して袋状にした。この中に、芯材(3)としてガラス繊維を封入し、真空包装装置にて袋内の圧力を1.0Paに保持しつつ、未接合状態の一辺を熱融着により封止した。
以上の手順により、実施例1に係る真空断熱材を得た。
【0059】
<実施例2>
VM-EVOHフィルム(6)に代えてVM-PETフィルム(5)を使用し、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を2組設けた点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例2に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。」
「【0069】
<比較例1>
VM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
VM-PETフィルム(5)およびVM-PETフィルム(5-2)と、VM-PETフィルム(5-Oxy)とは、アルミ蒸着層形成後バリアコート層が形成されるまでの時間が異なっている。VM-PETフィルム(5)およびVM-PETフィルム(5-2)は、アルミ蒸着層形成後24時間以内にバリアコート層が形成され、VM-PETフィルム(5-Oxy)は、アルミ蒸着層形成後96時間以上経過してからバリアコート層が形成されている。
【0070】
<比較例2>
基材4に最も近いVM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例2と同様の手順で、比較例2に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。」
「【0083】
【表1】
[図:0001435151000001.jpg]
【0084】
【表2】
[図:0001435151000002.jpg]
」
「【0085】
表1に示すように、各実施例においては、バリアコート層に接するアルミ蒸着層表面のAL-OとALとのピーク面積値の比は、いずれも2以下であった。これに対し、各比較例に使用されたVM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)のバリアフィルムは、いずれもピーク面積値の比が2を超えていた。また、炭素の割合は、いずれの実施例も5%以下であったのに対し、比較例におけるVM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)では、いずれも10%を超えていた。
各真空断熱材のラミネート強度は、各実施例において値が3.0N/15mm前後と大きな強度を示したが、各比較例では、VM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)のアルミ蒸着層側の界面において、0.2以下となり、デラミネーションを生じやすくなっていた。」
「【図2】
[図:0001435151000003.jpg]
【図3】
[図:0001435151000004.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された技術的事項
引用文献1の【0018】、【0020】、【0023】の記載から、実施例1、2(【0057】、【0059】)における「アルミ蒸着層の厚みは70nmであり、アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成されている」「VM-PETフィルム(5)」は、「ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層の片面に、厚み70nmのアルミ蒸着層が形成され、アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成されたバリアフィルム」であると理解できる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア、イから、特に実施例2に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「基材(4)として厚さ25μmのポリアミド(NY)フィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 製品名:ボニールRX)を用い、厚さ12μmのVM-PETフィルム(5)を、ウレタン接着剤を使用したドライラミネート層(8)を介して基材(4)上に2組設け、さらに、熱融着層(7)として厚さ50μmの直鎖状ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:FCS)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-PETフィルム(5)上に積層して形成された真空断熱材用外装材であって、
上記VM-PETフィルム(5)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層の片面に、アルミ蒸着層が形成され、アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を塗布、加熱乾燥してバリアコート層が形成されたバリアフィルムである、真空断熱材用外装材。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料などの作製に使用される積層体に関し、さらに詳細には、ポリエチレンから構成される基材と、ポリエチレン重合体から構成されるドライラミネート層およびポリエチレンから構成されるヒートシール層とを備える積層体に関する。
また、本発明は、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチに関する。
・・・
【0004】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料などには高いリサイクル性が求められている。しかしながら、従来の包装材料は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ポリエチレンフィルムに対し、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方を施すことにより、その強度および耐熱性を著しく改善することができ、包装材料などの作製に使用される積層体が備える基材としての使用が可能となるとの知見を得た。
さらに、ヒートシール層をポリエチレンから構成すると共に、基材とヒートシール層とを密着させるドライラミネート層を構成する材料として、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含むポリエチレン重合体を使用することにより、積層体のリサイクル性を顕著に高めることができると共に、包装材料に、内容物としてエタノールなどのアルコールや酸性やアルカリ性の内容物等を充填した場合に、経時的な層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)との知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、十分な強度および耐熱性を有し、かつリサイクル性および耐内容物性にも優れる包装材料などの作製を可能とする、積層体を提供することである。
【0008】
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチを提供することである。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
(積層体)
本発明の積層体10は、図1に示すように、基材11と、ドライラミネート層12と、ヒートシール層13とを備えることを特徴とする。
本発明において、基材と、ドライラミネート層と、ヒートシール層とが同一の材料、すなわち、ポリエチレンにより構成されており、これにより、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
また、一実施形態において、本発明の積層体10は、図2に示すように、基材と、ドライラミネート層12と、中間層14と、ドライラミネート層12と、ヒートシール層13とを備える。
【0020】
(基材)
本発明の積層体を構成する基材は、ポリエチレンから構成され、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されていることを特徴とする。
本発明の積層体において、基材およびヒートシール層がポリエチレンから構成されていることにより、そのリサイクル性を顕著に改善することができる。また、該基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、その耐熱性および強度が著しく向上しており、包装材料などの外層として要求される物性を満足することができる。
なお、図3になど示すように、基材に電子線照射処理が施されている場合、電子線照射面が最表面となるように基材は設けられる。
・・・
【0045】
一実施形態において、基材は、その表面であって、ドライラミネート層側に蒸着膜を備えていてもよい。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0046】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0047】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。また、積層体のリサイクル性を維持することができる。
【0048】
一実施形態において、基材は、ドライラミネート層側表面に、バリアコート層を備え、これにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
基材が、蒸着膜を備える場合、該バリアコート層は、上記蒸着膜上に設けられていても、蒸着膜下に設けられていてもよい。
【0049】
一実施形態において、バリアコート層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む。これらの中でも、酸素バリア性および水蒸気バリア性という観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
また、上記蒸着膜が、無機酸化物から構成される場合、バリアコート層にポリビニルアルコールを含有させることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
・・・
【0052】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、積層体のリサイクル性を維持することができる。
・・・
【0054】
また、他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。
基材が、無機酸化物から構成される蒸着膜を備える場合、該形態のバリアコート層を、蒸着膜と隣接するように設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
・・・
【0058】
また、上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。
・・・
【0060】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましく、酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性という観点からは、これらを併用することが好ましい。
・・・
【0062】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましい。これにより、リサイクル性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。また、無機酸化物から構成される蒸着膜と隣接するように設けた場合に、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。
・・・
【0067】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について以下に説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶媒および必要に応じてシランカップリング剤などを混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、基材上に、上記従来公知の方法により、該組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、アルコキシドおよび水溶性高分子(組成物が、シランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。
最後に、該組成物を20~250℃、好ましくは50~220℃の温度で、1秒~10分間加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
・・・
【0075】
(ドライラミネート層)
本発明の積層体を構成するドライラミネート層は、ポリエチレン重合体を含むものであり、該ポリエチレン重合体は、共重合成分として、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む。
ドライラミネート層が該ポリエチレン重合体を含むことで、積層体のリサイクル性をより向上することができる。
また、本発明の積層体により作製した包装材料へエタノールなどのアルコールや酸性やアルカリ性の内容物を充填した場合における層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)。
・・・
【0095】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、基材と同一材料、すなわち、ポリエチレンにより構成されていることを特徴とする。本発明の積層体が、ポリエチレンから構成されるヒートシール層を備えることにより、該積層体のリサイクル性を向上することができる。」
「【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
実施例1-1
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。
【0123】
得られた基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0124】
ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm3)を準備した。
【0125】
基材Aの蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが3.0μmとなるように塗工・乾燥し、ドライラミネート層を形成すると共に、上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの一方の面と貼り合わせ、約100℃の熱ロールで圧着させ、積層体を得た。」
「【0143】
<<耐内容物性試験>>
上記耐熱性評価において作製した小袋状の包装材料に、エタノール80vol%水溶液、酢酸5wt%水溶液、アンモニア10wt%水溶液を各々20mL充填し、40℃1ヶ月保存した。
保存後の基材とシーラント間のラミネート強度を測定し、ラミネート強度の低下の有無を確認した。
【0144】
【表1】
[図:0001435151000005.jpg]
」
「【図1】
[図:0001435151000006.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された発明
上記アから、特に実施例1-1に着目すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得て、このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得て、
得られた基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、
ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm3)を準備し、
基材Aの蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが3.0μmとなるように塗工・乾燥し、ドライラミネート層を形成すると共に、上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの一方の面と貼り合わせ、約100℃の熱ロールで圧着させて得た、積層体。」
(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料などの作製に使用される積層体に関し、さらに詳細には、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成される基材と、ポリエチレン重合体またはポリプロピレン重合体から構成されるドライラミネート層と、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成されるヒートシール層とを備える積層体に関する。
また、本発明は、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチに関する。
・・・
【0004】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料などには高いリサイクル性が求められている。しかしながら、従来の包装材料は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムに対し、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方を施すことにより、その強度および耐熱性を著しく改善することができ、包装材料などの作製に使用される積層体が備える基材としての使用が可能となるとの知見を得た。
さらに、基材と同様に、ヒートシール層をポリエチレンまたはポリプロピレンから構成すると共に、基材とヒートシール層とを密着させる接着層を構成する材料として、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリエチレン重合体またはポリプロピレン重合体を使用することにより、積層体のリサイクル性を顕著に高めることができると共に、包装材料に、内容物としてエタノールなどのアルコールを充填した場合に、経時的な層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)との知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、十分な強度および耐熱性を有し、かつリサイクル性および耐内容物性にも優れる包装材料などの作製を可能とする、積層体を提供することである。」
「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層体は、基材と、接着層と、ヒートシール層とを備え、
基材およびヒートシール層が同一の材料により構成され、
同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであり、
基材に対し、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
接着層は、
(A)基材およびヒートシール層が共にポリエチレンを含む場合、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリエチレン重合体を含んでなり、
(B)基材およびヒートシール層が共にポリプロピレンを含む場合、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリプロピレン重合体を含んでなり、
基材および/またはヒートシール層が、ポリエチレンまたはポリプロピレンとして、バイオマス由来のポリエチレンまたはポリプロピレンを含むことを特徴とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
(積層体)
本発明の積層体10は、図1に示すように、基材11と、接着層12と、ヒートシール層13とを備えることを特徴とする。
本発明において、基材と、接着層と、ヒートシール層とが同一の材料、すなわち、ポリエチレンまたはポリプロピレンにより構成されており、これにより、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0018】
(基材)
本発明の積層体を構成する基材は、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成されており、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されていることを特徴とする。
該延伸処理、電子線照射処理を施すことにより、基材の耐熱性および強度を著しく向上させることができ、包装材料などの外層として要求される物性を満足することができる。
なお、基材に電子線照射処理が施されている場合、電子線照射面が最表面となるように基材は設けられる。
・・・
【0041】
一実施形態において、基材は、その表面であって、ドライラミネート層側に蒸着膜を備えていてもよい。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0042】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0043】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。また、積層体のリサイクル性を維持することができる。
【0044】
一実施形態において、基材は、ドライラミネート層側表面に、バリアコート層を備え、これにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
基材が、蒸着膜を備える場合、該バリアコート層は、上記蒸着膜上に設けられていても、蒸着膜下に設けられていてもよい。
【0045】
一実施形態において、バリアコート層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む。これらの中でも、酸素バリア性および水蒸気バリア性という観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
また、上記蒸着膜が、無機酸化物から構成される場合、バリアコート層にポリビニルアルコールを含有させることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
・・・
【0048】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、積層体のリサイクル性を維持することができる。
・・・
【0050】
また、他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。
基材が、無機酸化物から構成される蒸着膜を備える場合、該形態のバリアコート層を、蒸着膜と隣接するように設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
・・・
【0054】
また、上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。
・・・
【0058】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましい。これにより、リサイクル性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。また、無機酸化物から構成される蒸着膜と隣接するように設けた場合に、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。
・・・
【0071】
(接着層)
接着層は、(A)基材およびヒートシール層が共にポリエチレンを含む場合、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリエチレン重合体を含んでなり、(B)基材およびヒートシール層が共にポリプロピレンを含む場合、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリプロピレン重合体を含んでなることを特徴とする。これにより、積層体のリサイクル性をより向上することができる。また、本発明の積層体により作製した包装材料へエタノールなどのアルコールや酸性やアルカリ性の内容物を充填した場合における層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)。
【0072】
本発明の積層体が、ヒートシール層として、ポリオレフィンフィルム層のみを備える場合、接着層は、ポリエチレン重合体またはポリプロピレン重合体を含むドライラミネート層である。
・・・
【0076】
ポリエチレン重合体は、エチレン成分と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分とを共重合成分として含む。
ポリプロピレン重合体は、プロピレン成分と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分とを共重合成分として含む。
・・・
【0093】
(ヒートシール層)
一実施形態において、ヒートシール層13は、図2に示すように、ポリエチレンまたはポリプロピレンにより構成されるポリオレフィンフィルム層14からなる。
一実施形態において、ヒートシール層13は、図3に示すように、ポリエチレンまたはポリプロピレンにより構成される、ポリオレフィン押出樹脂層15からなる。また、図4に示すように、ポリオレフィン押出樹脂層15下に、上記ポリオレフィンフィルム層14を備えていてもよい。
ヒートシール層がこのように、基材と共に、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成されることにより、該積層体のリサイクル性を向上することができる。」
「【実施例】
【0116】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0117】
実施例1-1
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。
【0118】
得られた基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0119】
基材Aの蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが0.2μmとなるように塗工・乾燥し、アンカーコート層を形成した。
【0120】
次いで、アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm3)を溶融押出し、厚さ15μmのポリオレフィン押出樹脂層を形成すると共に、ポリオレフィンフィルム層として、厚さ40μmのバイオマス由来のポリエチレンを含む、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm3)の一方の面を貼り合わせ、本発明の積層体を得た。」
「【0157】
<<耐内容物性試験>>
上記耐熱性評価において作製した小袋状の包装材料に、エタノール80vol%水溶液、酢酸5wt%水溶液、アンモニア10wt%水溶液を各々20mL充填し、40℃1ヶ月保存した。
保存後の基材とヒートシール層間のラミネート強度を測定し、ラミネート強度の低下の有無を確認した。結果を表1および2にまとめた。
【0158】
【表1】
[図:0001435151000007.jpg]
」
「【図1】
[図:0001435151000008.jpg]
」
イ 引用文献3に記載された発明
上記アから、特に【0072】、【0076】の記載とともに、実施例1-1に着目すると、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得て、このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得て、
得られた基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、
基材Aの蒸着膜形成面に、エチレン成分と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分とを含み、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが0.2μmとなるように塗工・乾燥し、アンカーコート層を形成し、
次いで、アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm3)を溶融押出し、厚さ15μmのポリオレフィン押出樹脂層を形成すると共に、ポリオレフィンフィルム層として、厚さ40μmのバイオマス由来のポリエチレンを含む、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm3)の一方の面を貼り合わせて得た、積層体。」
(4)周知技術
ア 引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0004】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装体などには高いリサイクル性が求められている。しかしながら、従来の包装体は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の態様に係る積層体)
第1の態様において、積層体10は、図1に示すように、基材11と、ヒートシール層12とを備えることを特徴とする。
一実施形態において、図2に示すように、本発明の積層体は、基材11とヒートシール層12との間に、接着剤層13を備える。
また、一実施形態において、図3に示すように、本発明の積層体10は、基材11と、ヒートシール層12との間に中間層14を備える。
なお、本発明の積層体10は、中間層14を2層以上備えていてもよい。
【0020】
第1の態様にかかる積層体において、基材およびヒートシール層は、同一の材料である、ポリエステルにより構成される。このような構成を有する積層体を用いて、包装体を作製することにより、リサイクル性に優れる包装体とすることができる。」
【0021】
本発明の積層体全体におけるポリエステルの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明の積層体全体におけるポリエステルの含有量を、60質量%以上とすることにより、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
・・・
【0045】
(ヒートシール層)
第1の態様において、ヒートシール層は、基材と同一の材料である、ポリエステルにより構成されていることを特徴とする。上記したポリエステルの中でも、PETが好ましい。
また、ポリエステルとして、リサイクルポリエステルを含有させることが好ましい。
また、ヒートシール層にバイオマス由来のポリエステルを含有させることもできる。
さらに、本発明の特性を損なわない範囲において、ヒートシール層は、上記添加剤を含むことができる。」
イ 引用文献7
引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着膜形成用基材、蒸着基材、積層体および包装容器に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用することができ、かつ蒸着膜との密着性が高く、包装容器とした場合のデラミネーションを効果的に防止することのできる、蒸着膜形成用基材を提供することである。
【0009】
また、本発明の解決しようとする課題は、上記した蒸着膜形成用基材を備える積層体、積層体および包装容器を提供することである。」
「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用することができ、蒸着膜との層間の密着性を顕著に向上することができ、好ましいガスバリア性を達成することができる、基材を提供することができる、
また、本発明によれば、上記した基材と、蒸着膜とを備える蒸着基材を提供することができる。
また、本発明によれば、上記した基材と、蒸着膜と、シーラント層とを備える積層体からなる包装容器を提供することができる。」
「【0029】
第1のポリエチレン樹脂層に含まれる密度0.943g/cm3以下のポリエチレン樹脂は、バイオマス由来のポリエチレン樹脂、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレン樹脂であってもよい。」
「【0034】
その他のポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン樹脂により構成される。
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)および超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)を使用することができる。
また、ポリエチレン樹脂として、エチレンと、その他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。
さらに、ポリエチレン樹脂として、バイオマス由来のポリエチレン樹脂や、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレン樹脂を使用することもできる。」
ウ 引用文献8
引用文献8には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、蒸着基材、積層体および包装容器に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0008】
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モノマテリアル包装容器の基材として好適に使用することができ、蒸着膜との層間の密着性を顕著に向上することができ、好ましいガスバリア性を達成することができる、基材を提供することである。
【0009】
また、本発明の解決しようとする課題は、上記した基材を備える蒸着基材、積層体および包装容器を提供することである。」
「【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、モノマテリアル包装容器の基材として好適に使用することができ、蒸着膜との層間の密着性を顕著に向上することができ、好ましいガスバリア性を達成することができる、基材を提供することができる、
また、本発明によれば、上記した基材と、蒸着膜とを備える積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、上記した基材と、蒸着膜と、シーラント層とを備える積層体からなる包装容器を提供することができる。」
「【0037】
(ポリエチレン樹脂層)
ポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン樹脂により構成される。
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)および超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)を使用することができる。
また、ポリエチレン樹脂として、エチレンと、その他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。
さらに、ポリエチレン樹脂として、バイオマス由来のポリエチレン樹脂や、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレン樹脂を使用することもできる。」
エ 引用文献9
引用文献9には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の包装袋として用いられる積層体に関し、特に自立性を有する自立袋に適した積層体に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異種材質フィルムの積層体からなる包装袋は、ゴミとして回収された後に材質ごとに分別するのが容易でなく、リサイクル性が低い。積層体をポリエチレンだけで構成すれば、リサイクルが容易になるが、破袋されやすく強度確保が課題となる。
本発明は、かかる事情に鑑み、自立袋などの包装袋用の積層体のリサイクルを容易化するとともに所要の強度を確保することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自立袋などの包装袋用の積層体のリサイクルを容易化でき、かつ包装袋の所要の強度を確保することができる。」
「【0029】
あるいは、積層体10を構成するポリエチレンの少なくとも一部が、ポリエチレン製品をリサイクルしたリサイクルポリエチレンであってもよい。リサイクルポリエチレンは、メカニカルリサイクルされたポリエチレンでもよく、ケミカルリサイクルされたポリエチレンでもよい。」
オ 周知技術1
上記アから、以下の事項は周知技術と認められる。
「循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装体などには高いリサイクル性が求められている背景がある中で、包装体を構成する層を同一の材料で作製することにより、リサイクル性に優れる包装体を作成することができ、また、包装体の積層体全体の内で同一樹脂の割合を高めることでリサイクル性を向上することができること。」(以下「周知技術1」という。)
カ 周知技術3
上記イ~エから、以下の事項は周知技術と認められる。
「ポリエチレン樹脂として、ケミカルリサイクルされたポリエチレン樹脂を使用すること。」(以下「周知技術3」という。)
2 取消理由1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「VM-PETフィルム(5)」は「バリアフィルム」であるから、「基材(4)上に2組設け」られた「VM-PETフィルム(5)」のうち、少なくとも基材(4)側のものは、本件発明1における「バリア層」に相当する。そうすると、熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」と「熱融着層(7)」を合わせたものは、上記基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」からみれば隣接する層に相違ないから、「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当する。
引用発明1における基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」の「ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層」は、本件発明1の「バリア基材」に相当する。
また、引用発明1において、基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」と、熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」と「熱融着層(7)」を合わせたものとは、いずれも「VM-PETフィルム(5)」に「ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層」を含むから、本件発明1における「前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、前記バリア基材及び前記隣接層が、同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含」むことを充足する。
引用発明1の「熱融着層(7)」は本件発明1の「シーラント層」に相当する。そして、引用発明1における熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」と「熱融着層(7)」を合わせたものは、上記のとおり本件発明1における「隣接層」に相当するから、当該合わせた層をまとめると、本件発明1における「前記少なくとも1つの隣接層として、シーラント層を含む」ことを充足する。
引用発明1における「真空断熱材用外装材」は、フィルムを積層したものであるから、本件発明1の「積層フィルム」に相当する。
引用発明1の「VM-PETフィルム(5)」は、「フィルム基材層の片面に、アルミ蒸着層が形成され」、「アルミ蒸着層上」に「バリアコート層が形成された」ものであるから、本件発明1の「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し」という事項のうち、「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に設けられるコート層とを有し」という点に限り一致する。
引用発明1の「アルミ蒸着層」と「アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成され」という態様を合わせたものと、本件発明1の「アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからな」る「コート層」とは、「アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、樹脂組成物とからな」る「コート層」の限りで一致する。
以上のことから、本件発明1と引用発明1とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点1】
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が、同一の樹脂としてポリエステル樹脂を含み、
前記少なくとも1つの隣接層として、シーラント層を含む、積層フィルム。」
【相違点1-1】
コート層に関して、本件発明1は、「前記隣接層に対向するように設けられる」のに対して、引用発明1は、本件発明1の「バリア層」相当である基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」における「アルミ蒸着層」について、本件発明1の「隣接層」相当である熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」に対向しているといえるか不明である点。
【相違点1-2】
コート層に関して、本件発明1は、「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」ものであるのに対して、引用発明1の「バリアコート層」は、「アルミ蒸着層」上に設けられてはいるものの、当該「アルミ蒸着層」におけるアルミニウム粒子層の隙間にまで充填されているか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1-1について
引用文献1における比較例2(【0070】)は、引用発明1に係る実施例2における「VM-PETフィルム(5)」のうち「基材4」に近いものとして、「アルミ蒸着層形成後96時間以上経過してからバリアコート層が形成され」(【0069】)た「VM-PETフィルム(5-Oxy)」を使用したものであるところ、【0070】の記載によると、当該バリアコート層の形成手法以外は実施例2と同一であることがわかる。すなわち、VM-PETフィルムにおけるバリアコート層の配置は、実施例2と比較例2は同一であると理解される。
ここで、【0083】【表2】の実施例2と【0084】【表2】の比較例2のラミネート強度を参照すると、比較例2のものは、「層2/層3」のラミネート強度が大きく低下していることから、【0085】の記載も勘案すると、当該層間の境界でデラミネーションが生じている、すなわち、この境界においてバリアコート層が形成されていることが分かる。
してみれば、引用発明1において、基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」のバリアコート層は、熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム」、すなわち隣接層に対向するように設けられていると理解される。
したがって、相違点1-1は実質的な相違点ではない。
また、仮にそうではないとしても、引用発明1における両「VM-PETフィルム(5)」間にバリアコート層が設けられていることには変わらず、基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」のバリアフィルムコート層を熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム」と対向するにように設けることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
(イ)相違点1-2について
引用発明1の「アルミ蒸着層」は、「ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層(11)の片面に」「形成され」ており、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を有しているから、当該アルミニウム粒子層に隙間が存在するものと認められる。
その上で、引用文献1の【0051】、【0085】の記載によると、引用発明1は、アルミ蒸着層形成後速やかにバリアコート層が形成されたバリアフィルムを使用したことで、蒸着層とバリアコート層との界面でのデラミネーションを生じにくくさせ、ラミネート強度を高めたものであることが理解できる。
ここで、引用発明1における「アルミ蒸着層」のアルミニウム粒子層に隙間にコーティング剤が入り込んでなければ、アルミ蒸着層とバリアコート層との界面のラミネート強度が十分に得られないことは明らかであるし、そもそも引用発明1においてコーティング剤を用いている技術的理由に鑑みれば、引用発明1は、「アルミ蒸着層」のアルミニウム粒子層の隙間に「バリアコート層」のコーティング剤の樹脂組成物が充填することを意図したものであると解される。そして、上述の記載のとおり、アルミ蒸着層形成後速やかにバリアコート層を形成しているのだから、アルミニウム粒子層が酸化する前にその隙間にコーティング剤の樹脂組成物が充填されたものである蓋然性が高い。
さらに、この点は、(ア)で指摘した実施例2と比較例2におけるバリアコート層の形成手法に起因するラミネート強度の差からみても整合的である。
したがって、相違点1-2は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点1-2が実質的な相違点であるとしても、引用発明1における「アルミ蒸着層」と「バリアコート層」とのラミネート強度を高めるために、「アルミ蒸着層」のアルミニウム粒子層の隙間に「バリアコート層」のコーティング剤の樹脂組成物が充填されるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
引用発明1の「バリアコート層」は、「テトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を塗布、加熱乾燥して」形成されたものであるところ、これは、本件発明2の「水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物」に相当する。
よって、本件発明2は引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明4について
引用発明1の「バリアコート層」は、「アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を塗布、加熱乾燥して」形成されたものであるところ、コーティング剤としての技術的意義からみて、少なくともアルミ蒸着膜全体をまんべんなく覆う必要があり、現実的には、アルミ蒸着膜を超える領域まで形成されているものと理解される。そうすると、「長手方向に沿って延在し且つアルミニウム粒子を含まない領域を含む」ことは、当業者からみて明らかである。
よって、本件発明4は引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明6について
引用発明1の「バリアコート層」の厚みに関し、引用文献1の【0036】には「厚さは0.01~50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1~10μmの範囲にあること」と記載されている。
以上のことから、引用発明1においてバリアコート層の膜厚を0.1μm以上とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。
よって、本件発明6は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明11、12について
引用文献1の【0027】において、アルミニウムの蒸着膜により酸素、水蒸気等のガスバリア性を付与することが記載されている。
そうしてみると、引用発明1において、必要に応じて酸素バリア性、水蒸気バリア性を向上させることは当業者が容易になし得たことであり、その具体的な数値として、水蒸気透過度を5g/m2・day以下、酸素透過度を1cc/m2・day・atm以下とすることに格別の困難性はない。
よって、本件発明11、12は引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明14について
引用発明1の基材(4)、VM-PETフィルム(5)、及び熱融着層(7)を積層して構成される積層フィルムが酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであることを考慮すれば、当該積層フィルムの用途として包装袋を選択することは、当業者であれば容易になし得たことである。
よって、本件発明14は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 取消理由2について
(1)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「基材A」は、「基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成」したものであるから、本件発明10の「バリア基材」に相当する。また、引用発明2の「基材A」と「アルミニウム蒸着膜」からなる層は、本件発明10の「バリア層」に相当する。
引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」は、本件発明10の「アルミニウム粒子層」に相当するとともに、同「コート層」にひとまず相当する。
引用発明2の「ヒートシール層」は、「基材Aの蒸着膜形成面に」「貼り合わせ」られているから、本件発明10の「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当するとともに、同「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有」することを充足する。
引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」は、本件発明10の「前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり」のうち、「前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層」を含む限り一致する。
引用発明2の「基材A」と、「ヒートシール層」は、いずれもポリエチレン樹脂から構成されるものであるから、本件発明10の「バリア基材及び隣接層が同一の樹脂を含み、前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含」むことに相当する。
引用発明2の「積層体」は、「基材A」と、「ヒートシール層」を積層して構成されるから、本件発明10の「積層フィルム」に相当する。
以上のことから、本件発明10と引用発明2とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点2】
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含む、積層フィルム。」
【相違点2-1】
本件発明10の「コート層」は、「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填され」、また、「前記樹脂組成物が、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物である」のに対して、引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」はそのような樹脂組成物を有していない点。
【相違点2-2】
本件発明10は、「前記ポリエチレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上」であるのに対して、引用発明2はそのようなものであるか不明である点。
【相違点2-3】
本件発明10は、「前記隣接層が、前記ポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含」むのに対して、引用発明2における「ヒートシール層」がポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含むか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点2-1について
引用文献2には、基材のドライラミネート層側表面の蒸着膜上に、バリアコート層を備えることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができること(【0048】)、バリアコート層を、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜とすること(【0054】)、当該金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されること(【0058】)、金属アルコキシド、水溶性高分子、シランカップリング剤などを混合した組成物を塗布乾燥し、さらに、加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成すること(【0067】)が記載されている。
そうすると、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上するために、引用文献2の当該記載を参考にして、引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」上に、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物であるガスバリア性塗布膜を形成することは、当業者が容易になし得たことである。
ここで、引用発明2は「基材Bの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し」たものであるから、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を有しており、当該アルミニウム粒子層に隙間が存在するものと解される。
そして、引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」上に、ガスバリア性塗布膜を設けた場合、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間に当該組成物が入り込むと考えられ、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間にガスバリア性塗布膜の組成物が充填されたものとなる蓋然性が高い。
仮にそうではないとしても、引用発明2の「アルミニウム蒸着膜」上に形成されるガスバリア性塗布膜との密着性を高めるために、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間にガスバリア性塗布膜の組成物が充填されるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(イ)相違点2-2について
積層フィルム全量に対して同一樹脂の割合を高めることでリサイクル性を向上することができることが周知技術(周知技術1)であることを考慮すれば、引用発明2においてポリエチレンの割合を高めることは、当業者であれば容易になし得たことであり、積層フィルムの全量を基準として90質量%以上とすることに格別の困難性はない。
(ウ)相違点2-3について
ポリエチレン樹脂として、ケミカルリサイクルされたポリエチレン樹脂を使用することことが周知技術(周知技術3)であることを考慮すれば、引用発明2における隣接層に含まれるポリエチレン樹脂を、ケミカルリサイクル樹脂を含むものとすることに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明10は、引用発明2、引用文献2に記載された事項及び周知技術1、3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 取消理由3について
(1)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「基材A」は、「基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成」したものであるから、本件発明9の「バリア基材」に相当する。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」は、本件発明9の「アルミニウム粒子層」に相当する。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」と「アンカーコート層」を合わせたものは、本件発明9の「コート層」に相当する。また、引用発明3の「基材A」、「アルミニウム蒸着膜」、「アンカーコート層」を合わせたものは、本件発明9の「バリア層」に相当する。
引用発明3の「ポリオレフィンフィルム層」は、「アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm3)を溶融押出し」して「貼り合わせ」られているから、本件発明9の「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当するとともに、同「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有」することを充足する。
引用発明3の「エチレン成分と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分とを含み、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体」は、本件発明9の「不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む」「樹脂組成物」に相当する。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」、「アンカーコート層」は、合わせて本件発明9の「前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり」のうち、「前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と樹脂組成物とからなり」の限りで一致する。
引用発明3の「基材A」と、「ポリオレフィンフィルム層」は、いずれもポリエチレン樹脂から構成されるものであるから、本件発明9の「バリア基材及び隣接層が同一の樹脂を含」むことに相当する。
引用発明3の「積層体」は、「基材A」と、「ポリオレフィンフィルム層」を積層して構成されるから、本件発明9の「積層フィルム」に相当する。
以上のことから、本件発明9と引用発明3とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点3-1】
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、樹脂組成物とからなり、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む、積層フィルム。」
【相違点3-1】
本件発明9は、「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」ものであるのに対して、引用発明3における「アンカーコート層」の樹脂組成物は、アルミニウム粒子層の隙間に充填されているか不明である点。
【相違点3-2】
本件発明9は、「前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリプロピレン樹脂を含み、前記ポリプロピレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上である」のに対して、引用発明3は、「基材A」と「ポリオレフィンフィルム層」がポリエチレン樹脂を含むものである点。
イ 判断
(ア)相違点3-1について
引用発明3は「基材Bの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し」たものであるから、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を有しており、当該アルミニウム粒子層に隙間が存在するものと認められる。
引用文献3の【0157】、【0158】【表1】の記載によると、引用発明3に係る実施例1-2は、エタノール、酢酸、アンモニアを内容物とした場合であっても、ラミネート強度の低下がほとんどなかったことが確認されている。
ここで、引用発明3の「アンカーコート層」は、「当該アルミニウム蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが0.2μmとなるように塗工・乾燥して」形成したものであり、引用発明3における「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間に「アンカーコート層」の樹脂組成物が入り込んでいなければ、「アルミニウム蒸着膜」と「アンカーコート層」との界面のラミネート強度が十分に得られないため、引用発明3は、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間に「アンカーコート層」の樹脂組成物が充填されたものである蓋然性が高い。
したがって、相違点3-1は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点3-1が実質的な相違点であるとしても、引用発明3における「アルミニウム蒸着膜」と「アンカーコート層」とのラミネート強度を高めるために、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間に「アンカーコート層」の樹脂組成物が充填されるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(イ)相違点3-2について
引用文献3においては、基材と接着層とヒートシール層とに、同種の樹脂材料としてポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを選択的に用いて構成することで、リサイクル性を高めるものである(引用文献3の【0006】、【0009】)から、引用発明3における「基材A」、「ポリエチレン重合体」、「ポリオレフィンフィルム層」に含まれるポリエチレンに替えてポリプロピレンとすることは、当業者が適宜選択し得たことである。
また、積層フィルム全量に対して同一樹脂の割合を高めることでリサイクル性を向上することができることが周知技術(周知技術1)であることを考慮すれば、引用発明3における「基材A」、「ポリエチレン重合体」、「ポリオレフィンフィルム層」のポリエチレンに替えてポリプロピレンとしたものにおいて、ポリプロピレンの割合を高めることは、当業者であれば容易になし得たことであり、積層フィルムの全量を基準として90質量%以上とすることに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明9は、引用発明3、引用文献3に記載された事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「基材A」は、「基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成」したものであるから、本件発明10の「バリア基材」に相当する。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」、は、本件発明10の「アルミニウム粒子層」、「コート層」に相当する。
引用発明3の「基材A」、「アルミニウム蒸着膜」を合わせたものは、本件発明10の「バリア層」に相当する。
引用発明3の「ポリオレフィンフィルム層」は、「アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm3)を溶融押出し」して「貼り合わせ」られているから、本件発明10の「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当するとともに、同「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有」することを充足する。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」、「アンカーコート層」は、合わせて本件発明10の「前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり」のうち、「前記コート層が、アルミニウム粒子」を含む限りで一致する。
引用発明3の「基材A」と、「ポリオレフィンフィルム層」は、いずれもポリエチレン樹脂から構成されるものであるから、本件発明10の「バリア基材及び隣接層が同一の樹脂を含み、前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含」むことに相当する。
引用発明3の「積層体」は、「基材A」と、「ポリオレフィンフィルム層」を積層して構成されるから、本件発明10の「積層フィルム」に相当する。
以上のことから、本件発明10と引用発明3とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点3-2】
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂としてポリエチレン樹脂を含む、積層フィルム。」
【相違点3-3】
本件発明10は、「コート層」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物」を含み、「前記樹脂組成物が、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物である」のに対して、引用発明3は、「アルミニウム蒸着膜」がそのような樹脂組成物を有していない点。
【相違点3-4】
本件発明10は、「前記ポリエチレン樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上」であるのに対して、引用発明3はそのようなものであるか不明である点。
【相違点3-5】
本件発明10は、「前記隣接層が、前記ポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含」むのに対して、引用発明3における「ポリオレフィンフィルム層」がポリエチレン樹脂としてケミカルリサイクル樹脂を含むか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点3-3について
引用文献3には、積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上するため、基材が、ドライラミネート層側表面に、バリアコート層を備え、基材が、蒸着膜を備える場合、該バリアコート層は、蒸着膜上に設けられること(【0044】)、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜であること(【0050】)、金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されること(【0054】)、金属アルコキシド、水溶性高分子、シランカップリング剤などを混合した組成物を塗布乾燥し、さらに、加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成すること(【0063】)が記載されている。
そうすると、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上するために、引用文献3の当該記載を参考にして、引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」上に、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物であるガスバリア性塗布膜を形成することは、当業者が容易になし得たことである。
ここで、引用発明3は「基材Bの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し」たものであるから、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層を有しており、当該アルミニウム粒子層に隙間が存在するものと認められる。
引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」上に、水溶性高分子と、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物を塗布することにより、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間に当該組成物が入り込むと考えられ、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間にガスバリア性塗布膜の組成物が充填されたものとなる蓋然性が高い。
仮にそうではないとしても、引用発明3の「アルミニウム蒸着膜」上に形成されるガスバリア性塗布膜との密着性を高めるために、「アルミニウム蒸着膜」のアルミニウム粒子層の隙間にガスバリア性塗布膜の組成物が充填されるようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(イ)相違点3-4について
積層フィルム全量に対して同一樹脂の割合を高めることでリサイクル性を向上することができることが周知技術(周知技術1)であることを考慮すれば、引用発明3においてポリエチレンの割合を高めることは、当業者であれば容易になし得たことであり、積層フィルムの全量を基準として90質量%以上とすることに格別の困難性はない。
(イ)相違点3-5について
ポリエチレン樹脂として、ケミカルリサイクルされたポリエチレン樹脂を使用することことが周知技術(周知技術3)であることを考慮すれば、引用発明3における隣接層に含まれるポリエチレン樹脂を、ケミカルリサイクル樹脂を含むものとすることに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明10は、引用発明3、引用文献3に記載された事項及び周知技術1、3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 令和7年6月5日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 令和7年6月5日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要
請求項3、5、7について、令和7年6月5日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立1における甲1(引用文献1)に基づく進歩性(申立理由1)
請求項5、7に係る発明は、甲1(引用文献1)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立2における甲1(引用文献2)に基づく新規性・進歩性(申立理由2)
請求項3、5に係る発明は、甲1(引用文献2)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項3、5に係る発明は、甲1(引用文献2)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立2における甲2(引用文献3)に基づく新規性・進歩性(申立理由3)
請求項3、5に係る発明は、甲2(引用文献3)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項3、5に係る発明は、甲2(引用文献3)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)申立2における甲3に基づく新規性・進歩性(申立理由4)
請求項3、5に係る発明は、甲3(特開2020-157715号公報。以下「引用文献4」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項3、5に係る発明は、甲3(引用文献4)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)申立2における甲4に基づく拡大先願(申立理由5)
請求項3、5に係る発明は、本件特許の出願日前の特許出願である特願2021-146109号(特開2023-39112号公報。申立2の甲4)(以下「先願」という。)であって、本件特許の出願後に出願公開がされた願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許を受けることができないものであるため、本件特許の請求項3、5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
2 申立理由1について
(1)本件発明5について
ア 対比
申立1の甲1(引用文献1)に記載された発明は、上記第5の1(1)ウの引用発明1のとおりであるところ、本件発明5と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明1における「VM-PETフィルム(5)」は「バリアフィルム」であるから、「基材(4)上に2組設け」られた「VM-PETフィルム(5)」のうち、少なくとも基材(4)側のものは、本件発明5における「バリア層」に相当する。そうすると、熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」と「熱融着層(7)」を合わせたものは、上記基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」からみれば隣接する層に相違ないから、「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当する。また、引用発明1における「基材(4)」は、その層構造からみて、本件発明5の「基材層」に相当するところ、基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」に隣接する層であるから、当該「基材(4)」も本件発明5における「前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層」に相当する。
そうすると、引用発明は、本件発明5における「前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である」ことを充足する。
引用発明1における基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」の「ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム基材層」は、本件発明5の「バリア基材」に相当する。
引用発明1における「真空断熱材用外装材」は、フィルムを積層したものであるから、本件発明1の「積層フィルム」に相当する。
引用発明1の「VM-PETフィルム(5)」は、「フィルム基材層の片面に、アルミ蒸着層が形成され」、「アルミ蒸着層上」に「バリアコート層が形成された」ものであるから、本件発明5の「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し」という事項のうち、「前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に設けられるコート層とを有し」という点に限り一致する。
引用発明1の「アルミ蒸着層」と「アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成され」という態様を合わせたものと、本件発明1の「アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、前記アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからな」る「コート層」とは、「アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、樹脂組成物とからな」る「コート層」の限りで一致する。
以上のことから、本件発明5と引用発明1とは以下の一致点及び相違点を有する。
【一致点A】
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に設けられるコート層とを有し、
前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、樹脂組成物とからなり、
前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である、積層フィルム。」
【相違点A-1】
本件発明5は、「隣接層」として「バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層」を有した上で、「コート層」を「前記隣接層に対向するように設け」ている、すなわち「コート層」をバリア層の両側に設けているのに対して、引用発明1は、本件発明1の「バリア層」相当である基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」は、「アルミ蒸着層」をその一方側にしか設けていない点。
【相違点A-2】
コート層に関して、本件発明5は、「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」ものであるのに対して、引用発明1の「バリアコート層」は、「アルミ蒸着層」上に設けられてはいるものの、当該「アルミ蒸着層」におけるアルミニウム粒子層の隙間にまで充填されているか不明である点。
【相違点A-3】
本件発明5は、「前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含み、前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明1は、本件発明5の隣接層に相当する「基材(4)」がポリアミドであり、同バリア基材に相当する「VM-PETフィルム(5)」の「フィルム基材層」が「ポリエチレンテレフタレート(PET)」であり、少なくともこれらの層についてそもそも同一の樹脂を含んでいない点。
イ 判断
相違点A-1について検討する。
引用文献1には、「VM-PETフィルム(5)」である「バリアフィルム」に関して、「バリアフィルム(10)は、たとえばプラスチック材料からなるフィルム基材層(11)を用い、その片面に蒸着層を設けて形成される」(【0023】)、「蒸着層、バリアコート層上にさらに蒸着層、バリアコート層を同様に設けることも可能であり、必要に応じて複数層を積層して設けることができる。」(【0037】)と記載されているものの、「バリアフィルム」の両側に「蒸着層」を設けることは記載も示唆もされていない。
したがって、基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」における「アルミ蒸着層」を、「基材層(4)」側及び熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」の両方に対向するように設けることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と引用発明1とを対比すると、次の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点A-4】
コート層に関して、本件発明7は、「前記隣接層に対向するように設けられる」のに対して、引用発明1は、本件発明7の「バリア層」相当である基材(4)側の「VM-PETフィルム(5)」における「アルミ蒸着層」について、本件発明7の「隣接層」相当である熱融着層(7)側の「VM-PETフィルム(5)」に対向しているといえるか不明である点。
【相違点A-5】
コート層の樹脂組成物に関して、本件発明7は、「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」ものであるのに対して、引用発明1の「バリアコート層」は、「アルミ蒸着層」上に「コーティング剤」が塗布、乾燥して設けられてはいるものの、当該「コーティング剤」が当該「アルミ蒸着層」におけるアルミニウム粒子層の隙間にまで充填されているか不明である点。
【相違点A-6】
本件発明7は、「前記ポリエステル樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上である」のに対して、引用発明1はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点A-6について検討する。
引用発明1は、「基材(4)として厚さ25μmのポリアミド(NY)フィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 製品名:ボニールRX)を用い、厚さ12μmのVM-PETフィルム(5)を、ウレタン接着剤を使用したドライラミネート層(8)を介して基材(4)上に2組設け、さらに、熱融着層(7)として厚さ50μmの直鎖状ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:FCS)」を「積層して形成」したものであるところ、フィルムの総厚99μm(=25+12×2+50)のうち、ポリエステルは24μmに過ぎない。
引用文献1には、「基材(4)」に関しては、「基材(4)には、高分子材料を素材としたプラスチックフィルムを用いることができる。高分子フィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、・・・、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、・・・などが使用でき、用途に応じて適宜選択される。」(【0021】)とあるように、ポリエステル樹脂を用いることが記載されているが、「熱融着層(7)」に関しては、「熱融着層(7)は、詳しくは直鎖状ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を選定することができ」(【0040】)と記載されているものの「ポリエステル樹脂」を用いることは記載も示唆もされておらず、また、同じく「熱融着層の厚さとしては、所望の接着力を有することができる厚さであればよく、例えば20μm~100μmの範囲内であり」(【0041】)と記載されているものの、厚さの下限の「20μm」を取り得たとしても、熱融着層(7)の厚さは各フィルムの総厚(69μm)の約29%が直鎖状ポリエチレンとなる。
そうすると、引用発明1において、「熱融着層(7)」の直鎖状ポリエチレン樹脂をポリエステル樹脂に変更したり、「熱融着層(7)」の割合を減らすなどによって、ポリエステル樹脂の合計質量が、積層フィルムの全量を基準として、90質量%以上となるようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由2について
(1)本件発明3について
ア 対比
申立2の甲1(引用文献2)に記載された発明は、上記第5の1(2)イの引用発明2のとおりであるところ、本件発明3と引用発明2とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点B-1】
本件発明3は、「コート層」の「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填され」、また、「前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む」のに対して、引用発明2は、「アルミニウム蒸着膜」がそのような樹脂組成物を有していない点。
【相違点B-2】
本件発明3は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明2の「基材A」はポリエチレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B-2について検討する。
引用文献2には、「従来の包装材料は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である」(【0004】)という問題が記載されたうえで、課題を解決する手段として、「本発明の積層体は、基材と、ドライラミネート層と、ヒートシール層とを備え、基材、ドライラミネート層およびヒートシール層が、同一の材料により構成され、・・・該同一材料が、ポリエチレンであり」(【0009】)と記載されている。
すなわち、引用文献2には、積層体をポリエチレンから構成し、ポリエチレンとは異種の樹脂材料を用いないようにすることが記載されているところ、引用発明2の「基材A」を、ポリエチレンではない異種の樹脂を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
本件発明3は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明2でなく、また、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明5について
本件発明5と引用発明2とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点B-3】
本件発明5は、「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填され」るものであるのに対して、引用発明2は、「基材A」がそのような状態であるか不明な点。
【相違点B-4】
本件発明5は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明2の「基材A」はポリエチレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
【相違点B-5】
本件発明5は、「前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である」のに対して、引用発明2は、そのようなものではない点。
相違点B-4は、相違点B-2と同様のものであり、その判断は上記(1)イで説示したとおりである。
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明2でなく、また、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由3について
(1)本件発明3について
ア 対比
申立2における甲2(引用文献3)に記載された発明は、上記第5の1(3)イの引用発明3のとおりであるところ、本件発明3と引用発明3とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点C-1】
本件発明3は、「コート層」における「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」のに対して、引用発明3は、「アンカーコート層」の組成物が「アルミニウム蒸着層」に対してそのような状態にあるか不明である点。
【相違点C-2】
本件発明3は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明3の「基材A」はポリエチレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点C-2について検討する。
引用文献3には、「従来の包装材料は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である」(【0004】)という問題が記載されたうえで、課題を解決する手段として、「本発明の積層体は、基材と、接着層と、ヒートシール層とを備え、基材およびヒートシール層が同一の材料により構成され、同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであり、・・・」(【0009】)と記載されている。
すなわち、引用文献3には、積層体をポリエチレン(又はポリプロピレン)から構成し、これとは異種の樹脂材料を用いないようにすることが記載されているところ、引用発明3の「基材A」を、ポリエチレンではない異種の樹脂を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
本件発明3は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明3でなく、また、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明5について
本件発明5と引用発明3とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点C-3】
本件発明3は、「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填され」るものであるのに対して、引用発明3は、「基材A」がそのような状態であるか不明な点。
【相違点C-4】
本件発明5は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明3の「基材A」はポリエチレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
【相違点C-5】
本件発明5は、「前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である」のに対して、引用発明3は、そのようなものではない点。
相違点C-4は、相違点C-2と同様のものであり、その判断は上記(1)イで説示したとおりである。
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明3でなく、また、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由4について
(1)引用文献4に記載された発明
引用文献4(【0004】、【0006】、【0007】、【0017】、【0019】、【0021】、【0035】、【0043】~【0045】、【0049】、【0050】、【0054】、【0064】、【0070】、【0119】、【0125】~【0129】)には、特に実施例1(【0125】~【0129】)に着目すると、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ18μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製、商品名:P2108)の基材の一方の面に、溶剤型グラビアインキ(DICグラフィックス(株)製、フィナート)を用いて、グラビア印刷法により画像を形成し、
厚さ18μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製、商品名:P2108)の一方の面に、PVD法により、厚さ30nmのアルミニウム蒸着膜を形成させ、さらに、アルミニウム蒸着膜上に、ポリビニルアルコール系バリアコート剤(Michelman(株)製、MFB7010)をグラビア法により塗布、乾燥し、厚さ1μmのバリアコート層を形成させ中間層を作製し、
上記基材の印刷面と、中間層のバリアコート層形成面とを、2液硬化型ポリウレタン接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-3600/H-689)を介して積層し、
上記中間層面と、ヒートシール層としてポリプロピレン(TPC(株)製、商品名:FL7540L、密度:0.90g/cm3、融点:138℃、MFR:7.0g/10分)をTダイ法により押出製膜し、厚さ35μmの未延伸ポリプロピレンフィルムとを上記接着剤で貼り合わせた積層体であって、
積層体における同一ポリオレフィン(PP)の割合は、92質量%である積層体。」
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と引用発明4とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点D-1】
本件発明3は、「コート層」の「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填され」、また、「前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む」のに対して、引用発明4は、「中間層」の「バリアコート層」がそのようなものではない点。
【相違点D-2】
本件発明3は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明4の「中間層」はポリプロピレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点D-2について検討する。
引用文献4には、「従来の包装体は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である」(【0004】)という問題が記載されたうえで、課題を解決する手段として、「本発明の包装材料用積層体は、基材と、中間層と、ヒートシール層と、を少なくとも備えた包装材料用積層体であって、基材、中間層およびヒートシール層が同一の材料により構成されており、基材および中間層は、延伸処理が施されたものであり、同一材料がポリオレフィンであることを特徴とする」(【0008】)と記載されている。
すなわち、引用文献4には、積層体をポリオレフィンから構成し、ポリオレフィンとは異種の樹脂材料を用いないようにすることが記載されているところ、引用発明4の「中間層」を、ポリプロピレン(ポリオレフィン)ではない異種の樹脂を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
本件発明3は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明4でなく、また、引用発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と引用発明4とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点D-3】
本件発明3は、「樹脂組成物」が「アルミニウム粒子層の隙間に充填される」ものであるのに対して、引用発明4における「中間層」のポリビニルアルコール系バリアコート剤は、アルミニウム蒸着膜の隙間に充填されているか不明である点。
【相違点D-4】
本件発明5は、「前記バリア基材が、ポリエステル樹脂を含み、前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、引用発明4の「中間層」はポリプロピレンであり、そのようなポリエステル樹脂を含んでいない点。
【相違点D-5】
本件発明5は、「前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である」のに対して、引用発明4は、そのようなものではない点。
相違点D-4は、相違点D-2と同様のものであり、その判断は上記(2)イで説示したとおりである。
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明4でなく、また、引用発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 申立理由5について
(1)先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明
先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(明細書の【0025】、【0057】、特許請求の範囲の【請求項1】、【請求項2】)には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「バリア層と、前記バリア層に隣接する少なくとも1つの隣接層とを含む積層フィルムであって、
前記バリア層が、バリア基材と、前記バリア基材の一面上に、前記隣接層に対向するように設けられるコート層とを有し、前記コート層が、アルミニウム粒子からなるアルミニウム粒子層と、アルミニウム粒子層の隙間に充填される樹脂組成物とからなり、前記樹脂組成物が、不飽和脂肪酸又はその無水物を含むポリオレフィン樹脂を含み、
前記バリア基材及び前記隣接層が同一の樹脂を含む、積層フィルムであって、(【請求項1】)
前記同一の樹脂が、ポリエステル樹脂であり、(【0025】、【0057】)
前記少なくとも1つの隣接層が、前記バリア層の両側にそれぞれ設けられる基材層及びシーラント層である、積層フィルム。(【請求項2】)」
(2)本件発明3について
本件発明3と先願発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点E-1】
本件発明3は、「前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、先願発明は、バリア基材に含まれるポリエステル樹脂の質量平均分子量が不明である点。
【相違点E-2】
本件発明3は、「前記樹脂組成物が、不飽和カルボン酸、そのエステル及びその酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により変性されたポリオレフィン樹脂を含む」のに対して、先願発明は、「前記樹脂組成物が、不飽和脂肪酸又はその無水物を含むポリオレフィン樹脂を含」む点。
相違点E-1について検討するに、相違点E-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明3は、先願発明と同一ではない。
(3)本件発明5について
本件発明5と先願発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点E-3】
本件発明5は、「前記バリア基材に含まれる前記ポリエステル樹脂の質量平均分子量が、1万~100万であ」るのに対して、先願発明は、バリア基材に含まれるポリエステル樹脂の質量平均分子量が不明である点。
相違点E-3について検討するに、相違点E-3は実質的な相違点である。
よって、本件発明5は、先願発明と同一ではない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4、6、11、12、14に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項9に係る発明は引用文献3に記載された発明、引用文献3に記載された事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項10に係る発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術1、3に基いて、又は引用文献3に記載された発明、引用文献3に記載された事項及び周知技術1、3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許を受けることができないものである。
よって、請求項1、2、4、6、9~12、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、請求項3、5、7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項3、5、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項8は、本件訂正により削除されたため、請求項8に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700232