2022-700189
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2022-700189
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-088441外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6957838
- 請求日
- 2022年03月03日
- 審決日
- 2023年03月03日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.113-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第6957838号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年4月26日の出願であって、令和3年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月2日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯の概要は、次のとおりである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~6の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層と、の2層からなる積層体を備える紙カップであって、前記紙カップの最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成され、続きを表示(全24行)前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有し、且つ、8.1g/10分以上~10g/10分以下のメルトフローレートを有する、紙カップ。【請求項2】紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層と、の2層からなる積層体を備える紙カップであって、前記紙カップの最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの2種のみで構成され、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとを含まず、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有し、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、8.1g/10分以上~10g/10分以下のメルトフローレートを有する、紙カップ。【請求項3】前記紙カップの胴部が、前記積層体により構成されている、請求項1または2に記載の紙カップ。【請求項4】前記紙カップの底部が、前記積層体により構成されている、請求項1または2に記載の紙カップ。【請求項5】前記紙カップの胴部および底部が、前記積層体により構成されている、請求項1または2に記載の紙カップ。【請求項6】請求項1~5のいずれか一項に記載の紙カップの製造方法であって、前記紙基材層上に、前記ポリオレフィン樹脂層を形成する、紙カップの製造方法。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、請求項1~6に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件発明1~6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
(以下、甲各号証は甲1等という。)
2 引用文献等の記載
(1)引用文献1の記載事項
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引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】【請求項1】筒状の胴部材と、筒状の前記胴部材の一方の開口部を密封する底部材とからなる紙カップであって、前記胴部材と前記底部材を形成する胴部材用ブランクと底部材用ブランクは、紙層とこの紙層の内面に設けられた内側熱可塑性樹脂層との積層材料からなり、前記内側熱可塑性樹脂層が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなることを特徴とする紙カップ。続きを表示(全12行)【請求項2】前記積層材料が前記紙層の外面にも外側熱可塑性樹脂層が設けられ、前記外側熱可塑性樹脂層が植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ。【請求項3】植物由来の前記低密度バイオマスポリエチレン樹脂の密度が、0.910×103kg/m3以上、0.930×103kg/m3以下、且つ、メルトフローレート(190℃/2.16kg)が、2g/10min以上、10g/10min以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップ。【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、紙カップに関するものである。特に、環境負荷が低減された紙カップに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】【0011】前述のポリ乳酸を熱可塑性樹脂層として用いた紙カップの場合、ポリ乳酸は押し出し製膜適性が乏しく、また、カップ成形時のヒートシール性が悪く、生産性や密封性に問題があった。【0012】本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、環境負荷が低減され環境にやさしく、生産性や密封性が良好な紙カップを提供することを課題としている。」
「【発明の効果】【0016】本発明の紙カップは、紙と低密度バイオマスポリエチレン樹脂からできているので、環境負荷が低減され環境にやさしい。且つ、押し出し製膜適性やヒートシール性がよいので、生産性や密封性が良好である。」
「【発明を実施するための形態】【0018】以下、本発明を実施するための形態につき説明する。図1は、本発明の紙カップの一例を模式的に縦断面で示した説明図、図2(A)(B)は、本発明の紙カップの一例に用いるブランクの積層材料を模式的に断面で示した説明図である。続きを表示(全18行)【0019】本例の紙カップ100は、図1の断面図に示すように、円筒状の胴部材1と、該円筒状の胴部材1の一方の開口部を密封する底部材2とからなっている。胴部材1は、胴部材用ブランクの両端部どうしが重ね合わせられてシールされた胴部材貼り合わせ部3が設けられて円筒状となっている。そして、胴部材1の下端部は内側に折り返されていて、折り返し部4が設けられている。【0020】底部材2は、周縁部が下方に折り曲げられ、周縁折り曲げ部5が設けられていて、この周縁折り曲げ部5が、胴部材1の下端部分と折り返し部4の間に挟みこまれ密着し、密封されている。また、胴部材1の上端は外側に丸められ、トップカール部6が形成されている。【0021】前記胴部材1と底部材2を形成する胴部材用ブランク11と底部材用ブランク21は、図2(A)のように、紙層31と、この紙層31の内面に積層された内側熱可塑性樹脂層32との積層材料30からなっている。紙層31は、カップ原紙などの板紙を用いることが出来る。用いる板紙の坪量は、150g/m2~400g/m2のものが好ましく用いられる。【0022】そして、内側熱可塑性樹脂層32は、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなっている。植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂は、植物を発酵させて得られたアルコールを原料として合成されたエチレンを、重合して製造されたもので、植物由来の炭素のみを含有している。【0023】内側熱可塑性樹脂層32の厚さは、10μm~40μmが好ましく用いられる。内側熱可塑性樹脂層32に用いる低密度バイオポリエチレン樹脂は、密度が0.910×103kg/m3以上、0.930×103kg/m3以下であることが好ましい。本発明において、密度はJIS-K7112に準拠して測定される値である。【0024】また、メルトフローレート(190℃/2.16kg)は、2g/10min以上、10g/10min以下であることが好ましい。メルトフローレート(MFR)は、JIS-K7210に準拠して測定される値である。【0025】密度やメルトフローレートがこの範囲であると、紙層31に積層するときの製膜加工性や、胴部材貼り合わせ部3のヒートシールで、確実に密封することができる。」
「【0029】本例の紙カップ100は以下のようにしてカップ成形機で成形する。図3は、本発明の紙カップの一例の製造方法を説明する概略図である。【0030】胴部材用積層材料と底部材用積層材料は、カップ成形機用にスリットされ、カップ成形機に掛けられる。カップ成形機上で、胴部材用積層材料は扇状に打ち抜かれ、胴部材用ブランク11になる。この胴部材用ブランク11を筒状に巻いて、重なり部をシールして胴部貼り合わせ部3を設け、胴部材1を成形する。【0031】同様に、底部材用積層材料は円形に打ち抜かれ、底部材用ブランク21になる。この円形の底部材用ブランク21の周縁部を下方に折り曲げて周縁折り曲げ部5を設け、底部材2を成形する。【0032】この底部材2を周縁折り曲げ部5が外向きになるように、胴部材1の下端に挿入し、胴部材1の下端部分を内側に折返し、周縁折り曲げ部5に重ね合わせ、全体を融着させて、脚部を形成させる。次に、胴部材1の上端を外側にカールさせてトップカール部6を設け、本例の紙カップ100を成形する。」
「【0033】このように成形された紙カップ100は、内面に設けられた内側熱可塑性樹脂層32が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなっているので、環境負荷が低減され環境にやさしく。また、成形に当たっても、ポリエチレン樹脂であるので、生産性や密封性が良好である。【0034】また、用いた植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂の密度が、0.910×103kg/m3以上、0.930×103kg/m3以下、且つ、メルトフローレート(190℃/2.16kg)が、2g/10min以上、10g/10min以下である。【0035】そのため、紙層31に押し出しラミネーションで、内側熱可塑性樹脂層32や外側熱可塑性樹脂層33を積層するときの製膜性が良好で、また、シールするとき、溶融樹脂の流動も適切で、紙カップ100の脚部のシールでも、ブランクの厚さで生じる隙間を溶融樹脂が埋めることができ、完全に密封することができる。【0036】図4は、本発明の紙カップの一例を紙カップ容器として用いた説明図で、(A)は、紙カップ容器に用いる蓋材を模式的に断面で示した説明図、(B)は、蓋材で紙カップの開口部を密封した状態を示した説明図である。」
「【実施例】【0040】以下に、本発明の具体的実施例について説明する。【0041】続きを表示(全22行)紙層1として、坪量260g/m2のカップ原紙を用意した。このカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設けた。【0042】続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設け、胴部材用積層材料と底部材用積層材料を作成した。【0043】この胴部材用積層材料と底部材用積層材料をカップ成形機用にスリットして、カップ成形機に掛けて、前述した製造方法に基づいて、紙カップ100を成形した。【0044】蓋材200の紙層41として、模造紙(坪量52.3g/m2)を用意し、その裏面にコロナ処理を行い、共押し出しラミネーションによって、紙層41側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート8.1g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.918kg/m3、ブラスケム社製)20μmと、シール面側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート30g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.915kg/m3、ブラスケム社製)15μmの多層の樹脂膜を積層し、厚さ35μmの内側熱可塑性樹脂層42を設け、紙カップ100の開口部のトップシール部の形状に合わせて打ち抜き、円形の蓋材200を作成した、この作成した紙カップ100の開口部のトップシール部に蓋材200を、カップシーラーを用いて、シール温度130℃、シール圧力0.15MPa、シール時間1秒の条件でシールし、紙カップ容器を作成した。【0045】この紙カップ容器の胴部材貼り合わせ部3の上端のトップシール部にできた段差部を、リークチェック液で確認したところ、漏れはなく、密封されていた。【0046】また、胴部材用積層材料と底部材用積層材料に用いた積層材料、および、蓋材200のバイオマス度を測定したところ、いずれも95%以上であった。【0047】バイオマス度は、下記の式に基づいて求めた。バイオマス度(%)=(バイオマス由来の炭素質量/全炭素質量)×100この測定は、放射性炭素年代測定法を応用して、加速器質量分析法(AMS法)により、行うことができる。すなわち、全炭素元素中の放射性同位元素14Cの比率を測定して、換算して求めることができる。【0048】このように、紙カップ100や、蓋材200は、植物由来の紙や低密度バイオマスポリエチレン樹脂を用いているので、バイオマス度が95%以上であるので、環境負荷が低減され環境にやさしいものであった。」
「【図2】(A)[図:0001395204000001.jpg]」
「【図3】[図:0001395204000002.jpg]」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)から、実施例として記載された「紙カップ100」に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「紙層1としての坪量260g/m2のカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設け、続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成した胴部材用積層材料と底部材用積層材料をカップ成形機用にスリットして、カップ成形機上で、胴部材用積層材料は扇状に打ち抜かれ、胴部材用ブランク11になり、この胴部材用ブランク11を筒状に巻いて、重なり部をシールして胴部貼り合わせ部3を設け、胴部材1を成形し、同様に、底部材用積層材料は円形に打ち抜かれ、底部材用ブランク21になり、この円形の底部材用ブランク21の周縁部を下方に折り曲げて周縁折り曲げ部5を設け、底部材2を成形し、この底部材2を周縁折り曲げ部5が外向きになるように、胴部材1の下端に挿入し、胴部材1の下端部分を内側に折返し、周縁折り曲げ部5に重ね合わせ、全体を融着させて、脚部を形成させ、次に、胴部材1の上端を外側にカールさせてトップカール部6を設けて成形した、紙カップ100。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「紙層1」は本件発明1の「紙基材層」に相当し、同様に、「紙カップ100」は「紙カップ」に相当する。
引用発明の「内側熱可塑性樹脂層32」は、ポリオレフィン樹脂である「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂」を積層して設けたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
引用発明において、「カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設け」たことは、本件発明1において、「ポリオレフィン樹脂層」が「単層」であり、「前記紙カップの最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であ」ることに相当する。
引用発明における「紙層1としての坪量260g/m2のカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設け、続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成した胴部材用積層材料と底部材用積層材料」と、本件発明1における「紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層と、の2層からなる積層体」とは、紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体の限りで一致する。
引用発明において、「胴部材用積層材料と底部材用積層材料」を「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成し」、「胴部材用積層材料と底部材料用積層材料に用いた積層材料のバイオマス度が95%以上である」ことと、本件発明1において「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成され、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有し、且つ、8.1g/10分以上~10g/10分以下のメルトフローレートを有する」こととは、ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成され、バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有する限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体を備える紙カップであって、前記紙カップの最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成され、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有する、紙カップ。」
[相違点1-1]
紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体に関して、本件発明1は、「紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層と、の2層からなる積層体」であるのに対して、引用発明は、「紙層1としての坪量260g/m2のカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設け、続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成した胴部材用積層材料と底部材用積層材料」である点。
[相違点1-2]
ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成され、バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有することに関して、本件発明1は、「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成され、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有し、且つ、8.1g/10分以上~10g/10分以下のメルトフローレートを有する」のに対して、引用発明は、「胴部材用積層材料と底部材用積層材料」を「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成し」、「胴部材用積層材料と底部材料用積層材料に用いた積層材料のバイオマス度が95%以上である」点。
イ 判断
事案に鑑み、最初に、相違点1-2について検討する。
引用発明は、「胴部材用積層材料」から打ち抜かれた「胴部材用ブランク11を筒状に巻いて」、その表裏面の「外側熱可塑性樹脂層33」と「内側熱可塑性樹脂層32」の「重なり部をシール」するものであり、引用発明の「内側熱可塑性樹脂層32」を設けるために「カップ原紙の裏面に」積層される「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂」の密度やメルトフローレートが特定されている。
「内側熱可塑性樹脂層32」に用いる「低密度バイオポリエチレン樹脂」関して、引用文献1には、「内側熱可塑性樹脂層32に用いる低密度バイオポリエチレン樹脂は、密度が0.910×103kg/m3以上、0.930×103kg/m3以下であることが好ましい。・・・また、メルトフローレート(190℃/2.16kg)は、2g/10min以上、10g/10min以下であることが好ましい。・・・密度やメルトフローレートがこの範囲であると、紙層31に積層するときの製膜加工性や、胴部材貼り合わせ部3のヒートシールで、確実に密封することができる。」(【0023】~【0025】)と記載されている。
そこで当該記載について検討すると、引用文献1には、「内側熱可塑性樹脂層32に用いる低密度バイオポリエチレン樹脂」の「メルトフローレート(190℃/2.16kg)」の好ましい数値範囲として、「2g/10min以上、10g/10min以下」と記載されているものの、実施例から認定した引用発明における紙カップの「胴部材貼り合わせ部3のヒートシール」のメルトフローレートは「3.8g/10min(190℃/2.16kg)」であり、本件発明1の「8.1g/10分以上~10g/10分以下」の範囲の下限値から離れた低い値である。
そこで、引用文献1の上記「好ましい」とされる「10g/10min以下」の「メルトフローレート」について検討すると、引用文献1の実施例には、紙カップの開口部に取り付けられる「蓋材」に「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂」として「8.1g/10min」の「メルトフローレート」のものを用いるとされている。
そうすると、引用発明の「紙カップ」の「胴部材」に用いられるメルトフローレートの値である「3.8g/10min(190℃/2.16kg)」を、本件発明1で特定する「8.1g/10分以上~10g/10分以下」へと変更することの動機付けはない。
また、相違点1-2に係る本件発明1の構成については、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、引用発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体を備える紙カップであって、前記紙カップの最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成され、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有する、紙カップ。」
[相違点2-1]
紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層とを備える積層体に関して、本件発明2は、「紙基材層と、単層のポリオレフィン樹脂層と、の2層からなる積層体」であるのに対して、引用発明は、「紙層1としての坪量260g/m2のカップ原紙の表面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ20μmの外側熱可塑性樹脂層33を設け、続いて、カップ原紙の裏面にコロナ処理を行い、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成した胴部材用積層材料と底部材用積層材料」である点。
[相違点2-2]
ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンで構成され、バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有することに関して、本件発明2は、「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの2種のみで構成され、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとを含まず、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンが、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下の密度を有し、且つ、8.1g/10分以上~10g/10分以下のメルトフローレートを有する」のに対して、引用発明は、「胴部材用積層材料と底部材用積層材料」を「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート3.8g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.922kg/m3、ブラスケム社製)を押し出しラミネーションによって積層し、厚さ30μmの内側熱可塑性樹脂層32を設けて作成し」、「胴部材用積層材料と底部材料用積層材料に用いた積層材料のバイオマス度が95%以上である」点。
イ 判断
相違点2-2について検討するに、上記(1)イにおける相違点1-2と同様であり、引用発明において、相違点2-2に係る本件発明2の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明2は、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)イ、(2)イで検討したのと同じ理由により、本件発明3~6は、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第4 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由(新規性)の概要
請求項1~6に係る発明は、甲1(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1(引用文献1)に記載された上記引用発明との一致点及び相違点は、上記第3の3(1)アに示したとおりの相違点1-1及び相違点1-2であるところ、これら相違点は実質的なものであるから、本件発明1は甲1(引用文献1)に記載された発明ではない。
(2)本件発明2について
本件発明2と甲1(引用文献1)に記載された上記引用発明との一致点及び相違点は、上記第3の3(2)アに示したとおりの相違点2-1及び相違点2-2であるところ、これら相違点は実質的なものであるから、本件発明2は甲1(引用文献1)に記載された発明ではない。
(3)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)、(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明3~6は、甲1(引用文献1)に記載された発明ではない。
第5 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700189