2020-700999
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2020-700999
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-041305外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6743990
- 請求日
- 2020年12月22日
- 審決日
- 2022年09月27日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
理 由
第1 手続の経緯
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特許第6743990号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4についての出願は、平成28年4月26日に出願された特願2016-88441号の一部を令和2年3月10日に新たな特許出願(特願2020-41305号)としたものであって、令和2年8月3日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年8月6日の訂正の請求は、令和4年3月22日の訂正の請求がなされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 令和4年3月22日の訂正請求書による訂正の内容
令和4年3月22日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、「特許第6743990号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に
「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。」と訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項4に
「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1及び2を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、前記胴材用積層体は、さらにバリア層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性紺脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。」と訂正し、新たに請求項5とする。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項4に
「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1及び3を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、前記胴部材用積層体は、さらに印刷層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)。」と訂正し、新たに請求項6とする。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項4に
「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1、2及び3を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、前記胴部材用積層体は、さらにバリア層及び印刷層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシ―ル可能な熱可性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)。」と訂正し、新たに請求項7とする。
2 訂正目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項、別の訂正単位とする求め
本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるので、本件訂正は、一群の請求項について請求されている。
なお、特許権者は、本件訂正後の請求項4~7に係る訂正については、当該訂正が認められる場合には、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、バイオマス由来の低密度ポリエチレンに関して、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定し、さらに、胴部材用積層体及び底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂に関して、「(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4は、本件訂正前の請求項4から、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン」を「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定することは、本件特許の明細書【0045】の記載に基づくものである。また、「前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの」という引用文献1に記載された事項の重なりのみを除くものであって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、本件訂正前の請求項4に係る発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1及び2を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、バイオマス由来の低密度ポリエチレンに関して、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定し、さらに、胴部材用積層体及び底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂に関して、「(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項5は、本件訂正前の請求項4から、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン」を「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定することは、本件特許の明細書【0045】の記載に基づくものである。また、「前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの」という引用文献1に記載された事項の重なりのみを除くものであって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、本件訂正前の請求項4に係る発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1及び3を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、バイオマス由来の低密度ポリエチレンに関して、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定し、さらに、胴部材用積層体及び底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂に関して、「(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項6は、本件訂正前の請求項4から、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン」を「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定することは、本件特許の明細書【0045】の記載に基づくものである。また、「前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むもの」という引用文献1に記載された事項の重なりのみを除くものであって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、本件訂正前の請求項4に係る発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に記載の紙カップ用積層体を備える、紙カップ。」とあるうち、請求項1、2及び3を引用するものについて、独立項形式に改めるとともに、バイオマス由来の低密度ポリエチレンに関して、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定し、さらに、胴部材用積層体及び底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂に関して、「(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項7は、本件訂正前の請求項4から、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン」を「バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)」と限定することは、本件特許の明細書【0045】の記載に基づくものである。また、「前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むもの」という引用文献1に記載された事項の重なりのみを除くものであって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項7は、本件訂正前の請求項4に係る発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4、5、6、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項4~7に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項4~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、訂正特許請求の範囲の請求項4~7に係る発明を「本件発明4」などという。
【請求項4】
胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、
前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、
前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、
紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。
【請求項5】
胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、
前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、
前記胴材用積層体は、さらにバリア層を有し、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記熱可塑性紺脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、
前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、
紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。
【請求項6】
胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、
前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、
前記胴部材用積層体は、さらに印刷層を有し、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、
前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、
紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)。
【請求項7】
胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、
前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、
前記胴部材用積層体は、さらにバリア層及び印刷層を有し、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、
前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層であり、
前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている、
紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシ―ル可能な熱可性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいもの、及び前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く)。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項4~7に係る特許に対して、当審が令和4年1月17日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項4~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1又は引用文献4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項
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(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】胴部材と底部材から形成され、板紙を基材とし、内層および外層がヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなる積層シートで構成された紙製容器において、胴部材を構成する内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレイト(MFR)よりも、底部材を構成する内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレイト(MFR)の方を大きく設定したことを特徴とする紙製容器。」
イ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板紙を基材とし内層および外層がヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなる積層シートで形成され、胴部材と底部材を加熱成形して得られる紙製容器に関し、特には紙カップ、紙缶等に関する。
【0002】
【従来の技術】牛乳、ジュース等の飲料やヨーグルト等の液体食品を収納する、例えば紙カップの構造を説明すると、この紙カップは、下方に向かうにしたがって先細る円筒状の胴部材と、ほぼ円形で、かつ外周縁部が下向きに起立した底部材とから成り、胴部材の下部内面に、底部材の外周縁部の内面が接合し、さらに外周部を覆うように前記胴部材の下端縁部が内方に折り曲げられ、前記底部材の外周縁部の外面に接合してなる底部構造を有するものである。
【0003】ここで、前記胴部材および底部材の層構成を示すと、一般的にはポリエチレン/板紙/ポリエチレンとすることが多く、使用するポリエチレンは一般的にMFR;2~8、融点;105~115℃、密度;0.91~0.93の物性を有する低密度ポリエチレンが用いられ、内層および外層とも同じ種類のポリエチレンである場合が多い。収納物の種類によっては、内層のポリエチレンと板紙の間に、例えば、アルミニウム箔、ポリエステルフィルム、金属蒸着薄膜層を形成させたポリエステルフィルム等のガスバリヤー層を設けても良い。また、特にバリア性を必要とする紙カップの場合には、成形時の段差の埋め込みや、耐ピンホール性を重視して内層のポリエチレン層の厚みを50~70μm程度に設定することが多い。ここで、MFRとは、JIS K7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)により測定した溶融流れ速度をいう。
【0004】また、胴部材下部内面と底部材外周縁部内面、および胴部材下端縁部と底部材外周縁部外面のそれぞれの接合は、図3(a)、(b)に示すように、成形マンドレル40の上部に載置された周縁部が絞られて下方に(図では上方に)起立した底部材3に、成形マンドレル40に巻き付けられた胴部材2の底部材側先端部を熱風を吹き付け加熱し、インカール金型(図示せず)を用いて内方に折り込み、ローレット(図示せず)をあてて、胴部材の内面側と起立した底部材の内面側、折り込んだ胴部材の内面側と起立した底部材の外面側をそれぞれ圧着して接合させる。」
ウ「【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明する。
〈実施例1〉胴部材用の内層22、外層23の熱可塑性樹脂としてMFRが1.6のLDPE(軟化点 94℃、融点 109℃、密度 0.920、ミラソン401PC、三井石油化学株式会社製)を、また、底部材用の内層32、外層33の熱可塑性樹脂としてMFRが3.7のLDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)を用意する。
【0016】基材21である坪量295g/m2の板紙の表裏に、内層22として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層23として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、胴部材用積層シート20を作製した(図2(a)参照)。
【0017】基材31である坪量260g/m2の板紙の表裏に、内層32として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層33として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、底部材用積層シート30を作製した(図2(b)参照)。
【0018】積層シートから紙製容器である紙カップを作製する工程の一例を示す。胴部材用積層シート20を打抜機にセットし、所定の寸法形状を有する扇形の胴部材ブランクを得た。また、底部材用積層シート30は、所定寸法にスリットして底部材巻き取りとした。
【0019】一般的な紙カップ成形機を用いて、先ず胴部材のブランクは下方に向かうに従って先細る円筒状の胴部材2に成形し、また、底部材の巻き取りはほぼ円形状であると共に、外周縁部が下向きに起立する底部材3に打抜き、成形する。つぎに、図3(a)、(b)に示すように、前記胴部材2の下部内面に、前記底部材3の外周縁部の外面を接合させながら胴部材2の内面側と、底部材3の外面側に熱風50を吹き付ける。ついで、底部材の起立した外周部を覆うように胴部材の下端縁部(図では上側端部になる)をインカール金型(図示せず)を用いて内方に折り返し、この折り返した胴部材と底部材の起立した外周部をローレット(図示せず)を用いて圧着すると、折り返した胴部材の内面は底部材の外面に融着して完全な底部構造を有する紙カップとなる。この際、折り返す胴部材の内面側と底部材の起立部は、熱風により溶融状態になっているが、胴部材の内面側のLDPEは底部材の内面側のLDPEに比較して熱流動性が小さいため、胴部材の内層の厚さが60μmあるにも係わらず、折り返した胴部材と底部材の起立部をローレットを用いて圧着しても胴部材内層のLDPEは折り返した胴部材の端縁から底部材の外側にはみ出しは無く、外観のきれいな紙カップであった。
【0020】〈実施例2〉胴部材用の内層22、外層23の熱可塑性樹脂として実施例1で底部材用の内層、外層の熱可塑性樹脂に用いたMFRが3.7のLDPEを用意する。また、底部材用の内層32、外層33の熱可塑性樹脂としてMFRが7.2のLDPE(軟化点 86℃、融点 106℃、密度 0.917、ミラソン11P、三井石油化学株式会社製)を用意する。
【0021】実施例1と同じ基材(板紙)、方法を用いて胴部材用積層シートと底部材用積層シートとを作製し、実施例1と同様に紙カップを成形したが、底部材の外側にLDPEのはみ出しは見られず外観のきれいな紙カップが作製できた。
【0022】〈比較例1〉胴部材用の内層、外層の熱可塑性樹脂、底部材用の内層、外層の熱可塑性樹脂とも同じMFR3.7のLDPE(ミラソン16P)を用いて、実施例1と同様に胴部材用積層シートおよび底部材用積層シートを作製し、実施例1と同様の紙カップを成形した。出来上がった紙カップは、底部に胴部材の端縁からはみ出したLDPEが認められ外観のきれいなものではなかった。」
エ 以上の記載から、比較例1に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(引用発明1)
「胴部材用積層シートと底部材用積層シートとを備える紙カップであって、胴部材用積層シートは、熱可塑性樹脂としてMFR3.7のLDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)の内層、基材である坪量295g/m2の板紙、熱可塑性樹脂としてMFR3.7のLDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)の外層を順に備え、底部材用の内層、外層は、胴部材用と同じ熱可塑性樹脂である、紙カップ。」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「三井・デュポン ポリケミカルとプライムポリマーは17日、プライムポリマーが高圧法低密度ポリエチレン「ミラソン(R)」事業を三井・デュポン ポリケミカルに譲渡することで合意したと発表した。」
イ 「ミラソン事業は、1960年に三井・デュポン ポリケミカルが米国デュポン社のポリエチレン高圧法製造技術により開始した」
(3)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】筒状の胴部材と、筒状の前記胴部材の一方の開口部を密封する底部材とからなる紙カップであって、前記胴部材と前記底部材を形成する胴部材用ブランクと底部材用ブランクは、紙層とこの紙層の内面に設けられた内側熱可塑性樹脂層との積層材料からなり、前記内側熱可塑性樹脂層が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなることを特徴とする紙カップ。」
イ 「【0001】本発明は、紙カップに関するものである。特に、環境負荷が低減された紙カップに関するものである。【0002】近年、地球温暖化防止ならびに枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、従来の石油由来プラスチック材料からカーボンニュ―トラルな植物由来プラスチック材料への置き換えが検討されている。製品中の植物由来プラスチックの重量比率が25%以上の基準を満たしている場合、日本バイオプラスチック協会よりバイオマスプラマークの使用が許可される。【0003】植物由来ポリエチレン樹脂は、バイオマスポリエチレン樹脂とも呼ばれ、2011年度にBraskem社によって直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)のグレードが製造・販売開始されている。【0004】該植物由来LLDPEは、C4-LLDPEもしくはC6-LLDPEと表記される炭素数4もしくは6のα-オレフィンを側鎖に有するものである。該植物由来LLDPEや植物由来HDPEなどのポリエチレンを用いて、従来の石油由来ポリエチレンからの置き換えが検討されている。」
ウ 「【0022】そして、内側熱可塑性樹脂層32は、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂からなっている。植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂は、植物を発酵させて得られたアルコールを原料として合成されたエチレンを、重合して製造されたもので、植物由来の炭素のみを含有している。【0023】内側熱可塑性樹脂層32の厚さは、10μm~40μmが好ましく用いられる。内側熱可塑性樹脂層32に用いる低密度バイオポリエチレン樹脂は、密度が0.910×103kg/m3以上、0.930×103kg/m3以下であることが好ましい。本発明において、密度はJIS-K7112に準拠して測定される値である。」
エ 「【0025】密度やメルトフローレートがこの範囲であると、紙層31に積層するときの製膜加工性や、胴部材貼り合わせ部3のヒートシールで、確実に密封することができる。」
オ 「【0028】さらにまた、紙層31と内側熱可塑性樹脂層32の間に、バリア層を設けることもできる。バリア層としては、ポリ乳酸の2軸延伸フィルムや植物由来のポリエチレンテレフタレートなどに酸化珪素や酸化アルミニウムなどの無機物を蒸着したガスバリア性のある蒸着フィルムを使用することができる。植物由来のポリ乳酸やポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いることで、環境への影響を低減して、バリア性を付与させることができる。」
カ 「【0030】胴部材用積層材料と底部材用積層材料は、カップ成形機用にスリットされ、カップ成形機に掛けられる。カップ成形機上で、胴部材用積層材料は扇状に打ち抜かれ、胴部材用ブランク11になる。この胴部材用ブランク11を筒状に巻いて、重なり部をシールして胴部貼り合わせ部3を設け、胴部材1を成形する。」
キ 「【0044】蓋材200の紙層41として、模造紙(坪量52.3g/m2)を用意し、その裏面にコロナ処理を行い、共押し出しラミネーションによって、紙層41側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート8.1g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.918kg/m3、ブラスケム社製)20μmと、シール面側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート30g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.915kg/m3、ブラスケム社製)15μmの多層の樹脂膜を積層し、厚さ35μmの内側熱可塑性樹脂層42を設け、紙カップ100の開口部のトップシール部の形状に合わせて打ち抜き、円形の蓋材200を作成した、この作成した紙カップ100の開口部のトップシール部に蓋材200を、カップシーラーを用いて、シール温度130℃、シール圧力0.15MPa、シール時間1秒の条件でシールし、紙カップ容器を作成した。」
(4)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
100~700g/m2の坪量を有する板紙基材と、
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる、積層体。」
「【請求項11】前記積層体が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有してなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体。」
イ「【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0003】
バイオマス由来の樹脂としては、乳酸発酵を経由して製造されるポリ乳酸(PLA)が先行して商業生産が始まったが、生分解性であることをはじめ、プラスチックとしての性能が現在の汎用プラスチックとは大きく異なるため、製品用途や製品製造方法に限界があり広く普及するには至っていない。また、PLAに対しては、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価が行われており、PLA製造時の消費エネルギーおよび汎用プラスチック代替時の等価性等について議論がなされている。
【0004】
ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。
【0005】
そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。」
ウ「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン積層体の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリオレフィンのバイオマスポリオレフィン樹脂層を有する積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、板紙基材と、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含むバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された樹脂層を有する積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないバイオマスポリオレフィン樹脂の積層体を提供することである。」
エ「【発明を実施するための形態】
・・・
【0028】
積層体
本発明による積層体は、板紙基材と、バイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなるものである。積層体は、バイオマスポリオレフィン樹脂層を有することで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。」
「【0030】板紙基材本発明において、板紙基材は、基材層としての機能を果たすものであり、バイオマスポリオレフィン樹脂層を押出成形により積層する工程に耐える強度を有することが必要である。板紙基材として用いる紙は、100~700g/m2、好ましくは150~600g/m2、より好ましくは200~500g/m2の坪量を有するものである。板紙基材としては、白板紙全般を対象とするが、特に安全性の観点から天然パルプを用いたアイボリー紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙等の使用が好ましい。」
「【0032】バイオマスポリオレフィン樹脂層本発明において、バイオマスポリオレフィン樹脂層は、下記のバイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなるものである。バイオマスポリオレフィン樹脂層は、少なくとも2層以上からなるものであってもよく、例えば、板紙基材側から順に第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層と第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる。積層体のシール層およびコア層は、両者がバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよく、いずれか一方のみがバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよい。」
「【0060】バイオマスポリオレフィン本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。」
「【0068】ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。」
オ「【0083】
非バイオマスポリオレフィン樹脂層
本発明よる積層体は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有してもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる樹脂層であり、バイオマス度は0%である。積層体のコア層およびシール層のいずれか一方のみがバイオマスポリオレフィン樹脂層である場合には、他方は非バイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層は、従来公知の原料を用いて形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。積層体が、非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有することで、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、およびその他の物性を付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有してもよい。非バイオマスポリオレフィン樹脂層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0084】
非バイオマスポリオレフィン樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等樹脂を使用できる。これらの樹脂を押し出しラミネート法により形成しても良いし、予め、Tダイ法またはインフレーション法等により製膜したフィルムとして、耐熱性基材層とドライラミネートあるいは押出ラミネート法等により積層しても良い。」
カ「【0086】
バリア層
本発明よる積層体は、バリア層をさらに有してもよい。バリア層は、無機物および/または無機酸化物からなるものであり、無機物もしくは無機酸化物の蒸着膜または金属箔からなるものが好ましい。蒸着膜は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。積層体が、バリア層をさらに有することで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性を、付与ないし向上させることができる。なお、積層体は、バリア層を2層以上有してもよい。バリア層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。」
キ「【0092】
その他の層
本発明による積層体は、上記の層以外に、その他の層を少なくとも1層さらに有してもよい。その他の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。その他の層は、上記の層のいずれか1層または2層以上の上に、形成することができる。その他の層としては、例えば、印刷層や接着層を挙げることができる。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。また、接着層は、いずれか2層をラミネートにより貼合するために形成される、接着剤層または接着樹脂層である。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネート用接着剤を使用することができる。上記の接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。その塗布量としては、0.1g/m2~10g/m2(乾燥状態)位が好ましく、1g/m2~5g/m2(乾燥状態)位がより好ましい。」
ク「【0103】
実施例2
紙カップ容器の胴材および底材として、板紙基材にはカップ原紙(日本製紙社製:坪量220g/m2)を用い、コロナ処理を施してから、そのコロナ処理面に化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂を、320℃の樹脂温で押し出し(25μm)、ライン速度100m/分にて押出しコーティングして、バイオマスポリエチレン積層体を得た。押出し層のバイオマス度は41%であった。」
「【0106】紙カップの作製次いで、上記で製造した積層体を使用し、当該積層体から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工した。次に、上記のブランク板を筒状に巻いて、その両端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレーム処理を行い、上記の重合部分に存在する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融した。続いて、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シール部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。」
「【0114】実施例3液体紙容器用途として、紙基材にはミルクカートン原紙(クリアウォーター社製:坪量320g/m2)を用い、その表面側にフレーム処理を施してから、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923)を320℃の樹脂温にて押し出した(20μm)。続けて、裏面側へもフレーム処理を施した後、このフレーム処理面(裏面側)に、共押出しの1層目に化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:NH745(MFR:8.0、密度:0.913)50質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)50質量部とをドライブレンドした樹脂(20μm)を、2層目に化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923、20μm)を共に300℃の樹脂温にて押し出し(ライン速度100m/分)、バイオマスポリエチレン積層体を得た。紙基材を除く積層体全体のバイオマス度は15%であった。」
ケ 以上の記載から、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
(引用発明2)
「胴材用積層体と底材用積層体とを備える紙カップ容器であって、胴材用積層体と底部材用積層体は、板紙基材と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520、MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Brakem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層とからなり、胴材用積層体は、さらにバリア層及び印刷層を有し、当該積層体から紙カップ容器の胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、上記のブランク板を筒状に巻いて、その両端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分に存在する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融して胴シール部を形成した、紙カップ容器。」
(5)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
ア 「バイオエタノールから化学合成で生産したポリエチレンなどが商業生産されつつあります。」(18ページ左欄8~10行)
イ 「バイオマスプラスチックは石油由来のものよりコストが高いため、機能に影響しない場合、バイオマス由来であることが認証される最低量(日本バイオプラスチック協会の認証基準25重量%以上など)を混合する傾向があります。」(18ページ左欄22~28行)
ウ 「もちろん、オールバイオマス由来を特徴とする場合、すべての組成物をバイオマス由来にしなければなりません。」(18ページ31~34行)
(6)引用文献6
引用文献6には、次の事項が記載されている。
ア 「【0037】上記低密度ポリエチレンとは、密度が0.880g/cm3以上0.940g/cm3未満のポリエチレンをいう。上記低密度ポリエチレンの密度は、0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下であることが特に好ましい。上記低密度ポリエチレンとは、エチレンモノマーを高圧法により重合して得られる、長鎖分岐(分岐鎖長は特に限定されない)を有するもの、いわゆる「低密度ポリエチレン」や「超低密度ポリエチレン」と称するもの、及びエチレンと炭素数が3~8のα-オレフィンモノマーとを低圧法により重合して得られる「直鎖状低密度ポリエチレン」(この場合の短鎖分岐の長さは炭素数1~6)と称するもの、さらには上記密度範囲に包含される「エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマー」の総称として定義される。なお、低密度ポリエチレンの密度は、JIS K 7112に準拠して測定し得る。」
(7)引用文献7
取消理由で提示した引用文献に加えて、下記引用文献7を追加して提示する。
引用文献7には、次の事項が記載されている。
ア「
[図:0001393968000001.jpg]
」
「[図:0001393968000002.jpg]」
「[図:0001393968000003.jpg]」
イ 以上から、引用文献7には、次の事項が記載されている。
「LPDE(Braskem社製:SPB608、MFR:30、密度:0.915、バイオマス度95%)、LDPE(Braskem社製:SBC818、MFR:8.1、密度:0.918、バイオマス度95%)、LDPE(Braskem社製:SBC818R50、MFR:8.1、密度:0.918、バイオマス度45%)」
2 引用文献1を主引用例とする理由
(1)本件発明4について
ア 本件発明4と引用発明1との対比
引用文献2(上記1(2))の、高圧法低密度ポリエチレンに係る「ミラソン」の製造事業が、バイオマス由来のエチレンが開発される以前の1960年より開始されているとの記載からみて、引用発明1の「内層」、「外層」の「LDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)」は、「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」であるから、引用発明1の「熱可塑性樹脂としてMFR3.7のLDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)の外層」は、本件発明4の「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の「熱可塑性樹脂層」に相当する。
引用発明1の「坪量295g/m2の板紙」の「基材」は、本件発明4の「紙基材層」に相当し、引用発明1の「胴部材用積層シート」は、本件発明4の「胴部材用積層体」に相当し、引用発明1の「底部材用積層シート」は、本件発明4の「底部材用積層シート」に相当する。
また、引用発明1の「底部材用の内層、外層は、胴部材用と同じ熱可塑性樹脂」であることは、本件発明4の「前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く」態様に相当する。
また、引用発明1の「熱可塑性樹脂としてMFR3.7のLDPE(軟化点 95℃、融点 111℃、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)の内層」と本件発明4の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含」む「ポリオレフィン樹脂層」とは、低密度ポリエチレン(LDPE)を含むポリオレフィン樹脂層という限りで一致する。
そうすると、本件発明4と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。
<<一致点1>>
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、前記胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え、前記ポリオレフィン層が低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり、前記胴部材用積層体の最内層が前記ポリオレフィン樹脂層であり、前記胴部材用積層体の最外層が前記熱可塑性樹脂層である、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。」
<<相違点1>>
低密度ポリエチレン(LDPE)を含むポリオレフィン樹脂層に関して、本件発明4の「ポリオレフィン樹脂層」は、「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上」であるのに対し、引用発明1の「内層」は、「熱可塑性樹脂としてMFR3.7のLDPE(軟化点95℃、融点111℃、密度0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)」である点。
<<相違点2>>
本件発明4は、「前記胴部材用積層体の胴シール部が、前記熱可塑性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている」のに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。
イ 相違点の検討
(ア)相違点1について
紙カップを作成するための積層体において、積層体を構成する材料は、求められる要求の解決のために、適宜、選択されるものであるところ、引用文献3(上記1(3)イ【0002】)、引用文献4(上記1(4)イ【0002】~【0005】)に記載されるように、地球温暖化防止等の観点からプラスチックや樹脂製品等の原料としてのバイオマスを使用するようにすることは、一般的な課題である。その解決のため、化石燃料由来の材料に換えてバイオマス由来の材料を選択する動機付けがあり、また、引用文献3(上記1(3)ウ【0022】~【0023】)、引用文献4(上記1(4)キ【0103】)には、紙カップを作製するための積層体の最内層に、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であるポリオレフィン樹脂層を採用することが記載されている。
また、引用文献3(上記1(3)イ【0003】~【0004】、上記1(3)【0022】~【0023】)には、「直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)」と「低密度バイオマスポリエチレン樹脂」とが区別して記載されているから、引用文献3に記載された「低密度バイオマスポリエチレン樹脂」が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)であることは、明らかである。
なお、引用文献3(上記1(3)キ【0044】)には、「共押し出しラミネーションによって、紙層41側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート8.1g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.918kg/m3、ブラスケム社製)20μmと、シール面側が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート30g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.915kg/m3、ブラスケム社製)15μmの多層の樹脂膜を積層し、厚さ35μmの内側熱可塑性樹脂層42を設け、紙カップ100の開口部のトップシール部の形状に合わせて打ち抜き、円形の蓋材200を作成した」と記載されており、引用文献7(上記1(7)ア)の記載からみて、引用文献3に記載された「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート8.1g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.918kg/m3、ブラスケム社製)」及び「植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(メルトフローレート30g/10min(190℃/2.16kg)、密度0.915kg/m3、ブラスケム社製)」は、LDPEであることが把握できる。
他方で、引用文献5(上記1(5)イの左欄22~28行)に示されるように、バイオマス由来のプラスチックは、石油由来のものよりコストが高いため、バイオマス由来であることが認証される範囲で、石油由来のプラスチックを混合する等により、バイオマス由来のプラスチック使用量を減らすように調整することが行われている。
そうすると、引用発明1の紙カップにおいて、地球温暖化防止や枯渇資源である石油使用量の低減の要求の解決とともにコストを考慮して、化石燃料由来の材料全量を換えるのではなく、一部をバイオマス由来の材料に換えることは、当業者が通常行う事であって、その際、最内層と最外層のうちの最内層の樹脂層のみバイオマス由来の材料に換えることは、適宜なし得たものである。
(イ)相違点2について
積層体から紙カップの胴部を打ち抜き加工し、この打ち抜き加工した部分を筒状に巻いて、その両端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分に存在する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融させて紙カップの胴部分を成形する方法は、引用文献3(上記1(3)カ【0030】)、引用文献4(上記1(4)キ【0106】)に記載されるように周知の技術であり、引用発明1における「胴部材用積層シート」から紙カップの胴部分を成形する際に、この周知の成形方法を用いて、胴部材用積層シートを筒状に巻いて両端部を部分的に重ね合わせ、最内層である「内層」と最外層である「外層」のLDPE(低密度ポリエチレン)同士を接着してシールすることは、当業者が容易になし得たものである。
ウ 効果について検討
本件発明4の効果について、本件明細書【0010】には、「本発明による積層体は、少なくとも、紙基材層と、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層とを備えることで、従来に比べて化石燃料の使用量を削除することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。」と記載されているが、本件明細書に記載された上記効果は、引用発明1及び引用文献3~5に記載された技術的事項から、当業者が予測できる範囲のものである。
エ よって、本件発明4は、引用発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明5について
ア 本件発明5と引用発明1との対比
本件発明5と引用発明1とは、一致点1で一致し、相違点1及び2に加えて以下の点でも相違する。
<<相違点3>>
本件発明5は、「前記胴部材用積層体がさらにバリア層を有」するのに対して、引用発明1は、そのようなバリア層を有していない点。
イ 相違点の検討について
(ア)相違点1及び2について
相違点1及び2に対する判断は、上記2(1)イで述べたとおりである。
(イ)相違点3について
胴部材用積層体がバリア層を有する紙カップは、引用文献3(上記1(3)オ【0028】)や、引用文献4(1(4)エ【0086】)に記載されるように、周知の技術であり、引用発明1における紙カップの胴部材用積層体にさらにバリア層を設けることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ よって、本件発明5は、引用発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明6について
ア 本件発明6と引用発明1との対比
本件発明6と引用発明1とは、一致点1に加えて、前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く点で一致し、相違点1及び2に加えて以下の点でも相違する。
<<相違点4>>
本件発明6は、「前記胴部材用積層体は、さらに印刷層を有」するのに対して、引用発明1は、そのような印刷層を有していない点。
イ 相違点の検討
(ア)相違点1及び2について
相違点1及び2に対する判断は、上記2(1)イで述べたとおりである。
(イ)相違点4について
装飾等のため、紙カップに印刷層を設けることは、文献を挙げるまでもなく周知の技術であり、引用発明1の紙カップにおいても、印刷層を設けることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ よって、本件発明6は、引用発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明7について
ア 本件発明7と引用発明1との対比
本件発明7と引用発明1とは、一致点1に加えて、前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除く点で一致し、相違点1ないし4で相違する。
イ 相違点の検討について
(ア)相違点1ないし4について
相違点1及び2に対する判断は、上記2(1)イで述べたとおりである。また、相違点3に対する判断は、上記2(2)イで述べたとおりである。また、相違点4に対する判断は、上記2(3)イで述べたとおりである。
ウ よって、本件発明7は、引用発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 引用文献4を主引用例とする理由
(1)本件発明4について
ア 本件発明4と引用発明2との対比
引用発明2の「板紙基材」は、本件発明4の「紙基材層」に相当する。
また、引用発明2の「胴材用積層体と底材用積層体」は、「化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520、MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層とからな」ることは、本件発明4の「前記胴部材用積層体及び底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層のメルトフローレートの方が大きいものを除く」態様に相当する。
また、引用発明2の「化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520、MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層」は、本件発明4の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を含み」「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度5%以上」である「ポリオレフィン樹脂層」とは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含みポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度5%以上であるポリオレフィン樹脂層という限りで一致する。
また、引用発明2の「板紙基材」と化石燃料由来の低密度ポリエチレンとバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンとをドライブレンドした樹脂の「押出し層」とからなる「胴部材用積層体を備える紙カップ容器」と、本件発明4の「胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える紙カップ」とは、胴部材用積層体は、紙基材層とポリオレフィン樹脂層を備える紙カップという限りで一致する。
そうすると、本件発明4と引用発明2とは、以下の点で一致し、相違する。
<<一致点2>>
「胴部材用積層体と底部材用積層体とを備える紙カップであって、胴部材用積層体は、紙基材層とポリオレフィン樹脂層とを備え、ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含み、ポリオレフィン樹脂中のバイオマス度が5%以上である、紙カップ(但し、前記胴部材用積層体及び前記底部材用積層体の最内層が、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなり、前記胴部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートよりも、前記底部材用積層体の最内層の熱可塑性樹脂のメルトフローレートの方が大きいものを除く)。」
<<相違点5>>
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含みポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度5%以上であるポリオレフィン樹脂層の低密度ポリエチレンに関して、本件発明4は、低密度ポリエチレン(LDPE)であるのに対して、引用発明2は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)である点。
<<相違点6>>
紙基材層とポリオレフィン樹脂層を含む紙カップに関して、本件発明4の紙カップが、「胴部材用積層体は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層とをこの順に備え」、「熱可塑性樹脂層が化石燃料由来の低密度ポリエチレンであり」、「胴部材用積層体の最内層がポリオレフィン樹脂層であり」、「胴部材用積層体の最外層が熱可塑性樹脂層であり」、「胴部材用積層体の胴シール部が、熱可塑性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを接着することにより形成されている」のに対し、引用発明2の紙カップ容器は、ブランク板を筒状に巻いて、その両端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分に存在する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融して胴シール部を形成するものの、「板紙基材」を挟んで「化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層」の反対側に熱可塑性樹脂層を備えておらず、この「押出し層」と熱可塑性樹脂層を接着して胴シール部を形成するものではない点。
イ 相違点の検討
(ア)相違点5について
バイオマスポリオレフィンに関して、引用文献4(上記1(4)ウ【0068】)には、「ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。」と記載されているから、引用発明2において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含みポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度5%以上であるポリオレフィン樹脂層の低密度ポリエチレンを低密度ポリエチレン(LDPE)とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
(イ)相違点6について
a 引用文献4の記載事項
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引用文献4には、「前記積層体が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなる非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有してなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体。」(上記1(4)ア【請求項11】)と記載され、「非バイオマスポリオレフィン樹脂層」を、請求項1の紙板基材とバイオマスポリオレフィン樹脂層を有する積層体に、さらに付加して設ける態様が想定されており、この「非バイオマスポリオレフィン樹脂層」により、「積層体が、非バイオマスポリオレフィン樹脂層をさらに有することで、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、およびその他の物性を付加ないし向上させることができる。」(上記1(4)オ【0083】)とされ、材料として「例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、・・・・等樹脂を使用できる。」(上記1(4)オ【0084】)と記載されている。実際、引用文献4には、液体紙容器の表面側に化石燃料由来の低密度ポリエチレンを、「紙基材」を挟んでバイオマスポリオレフィン樹脂としての「バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含む層」の反対側に設けた実施例3が記載されている。
上記記載から、積層体に非バイオマスポリオレフィン樹脂層を付加し得ること、非バイオマスポリオレフィン樹脂層を付加すると耐水性やヒートシール性等が向上できること、この非バイオマスポリオレフィン樹脂層を低密度ポリエチレンで構成し得ること、化石燃料由来の低密度ポリエチレンの層を最外層に設け得ることが示唆されている。
b 判断
上記引用文献4の示唆に基づき、引用発明2の胴材用積層体において、板紙基材を挟んで押出し層の反対側に、耐水性やヒートシール性等の向上のために、熱可塑性樹脂である化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂の層を紙基材を挟んでバイオマスポリオレフィン樹脂層の最外層にさらに設けることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂の層を最外層にさらに設けた際には、紙カップを作製するために、引用発明2の積層体を筒状に巻いて、その両端部を部分的に重ね合わせると、最内層の「化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520(MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR:2.7、密度:0.918、バイオマス度87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層」と、最外層の化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂の層とが重なり合うい、加熱することにより、接着して胴シール部が形成できることは明らかである。
ウ 効果について検討
本件発明4の効果について、本件明細書【0010】には、「本発明による積層体は、少なくとも、紙基材層と、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層とを備えることで、従来に比べて化石燃料の使用量を削除することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。」と記載されているが、本件明細書に記載された上記効果は、引用発明2及び引用文献4に記載された技術的事項から、当業者が予測できる範囲のものである。
エ よって、本件発明4は、引用発明2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明5について
ア 本件発明5と引用発明2との対比
本件発明5と引用発明2とは、一致点2に加えて、前記胴部材用積層体は、さらにバリア層を有する点でも一致し、相違点5及び6で相違する。
イ 相違点の検討
相違点5及び6に対する判断は、上記3(1)イで述べたとおりである。
ウ よって、本件発明5は、引用発明2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明6について
ア 本件発明6と引用発明2との対比
本件発明6と引用発明2とは、一致点2に加えて、前記胴部材用積層体は、さらに印刷層を有する点でも一致し、相違点5及び6に加えて以下の点で相違する。
<<相違点7>>
ポリオレフィン樹脂層に関して、本件発明6では、前記ポリオレフィン樹脂層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むものを除くのに対して、引用発明2では、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:LC520、MFR:3.6、密度:0.923)55質量部とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、MFR2.7、密度:0.918、バイオマス度:87%)45質量部とをドライブレンドした樹脂の押出し層である点。
イ 相違点の検討
(ア)相違点5及び6について
相違点5及び6に対する判断は、上記3(1)イで述べたとおりである。
(イ)相違点7について
バイオマスポリオレフィンに関して、引用文献4(上記1(4)ウ【0068】)には、「ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。」と記載され、バイオマスポリオレフィンとして、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが示唆されているといえるから、引用発明2における押出し層中のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンに代えて、低密度ポリエチレン(LDPE)を採用することで相違点7に係る構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。
ウ よって、本件発明6は、引用発明2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明7について
ア 本件発明7と引用発明2との対比
本件発明7と引用発明2とは、一致点2に加えて、前記胴部材用積層体は、さらにバリア層及び印刷層を有する点でも一致し、相違点5ないし7で相違する。
イ 相違点の検討
(ア)相違点5及び6について
相違点5及び6に対する判断は、上記3(1)イで述べたとおりである。
(イ)相違点7について
相違点7に対する判断は、上記3(3)イで述べたとおりである。
ウ よって、本件発明7は、引用発明2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項4~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
請求項1~3に係る特許は、本件訂正により削除されたため、請求項1~3に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700999