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特許異議申立

2024-701105

積層体および包装袋

審判番号
2024-701105
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-057354外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7482384
請求日
2024年11月14日
審決日
2026年02月24日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(B32B) / P1651.537-ZAA(B32B) / P1651.113-ZAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7482384号発明「積層体および包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7482384号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7482384号の請求項1、4~6に係る特許を取り消す。 特許第7482384号の請求項2、3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7482384号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成31年3月25日を出願日とするものであって、令和6年5月2日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和6年5月14日発行)がされたものである。 その後の手続の経緯は、概略以下のとおり。 令和6年11月14日 :特許異議申立人平尾帆波(以下「申立人」という。)による全請求項に対する特許異議の申立て 令和7年 4月24日付け:取消理由通知 6月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 8月 8日 :申立人による意見書の提出 10月 3日付け:取消理由通知(決定の予告) 12月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和8年 2月 2日 :申立人による意見書の提出 なお、令和7年6月25日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 令和7年12月2日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7482384号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ものであり、その訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記基材と前記シーラント層との間に、バリアコート層を備え、」の後に、以下の記載を追加する。 「前記基材と前記バリアコート層との間に、酸化珪素または酸化アルミニウムを含む蒸着膜を備え、 前記バリアコート層と前記シーラント層との間に印刷が施されており、」 (請求項1を引用する請求項4~6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に記載の「請求項1~3のいずれか一項」を「請求項1」に訂正する。 (請求項4を引用する請求項5、6も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に記載の「請求項1~4のいずれか一項」を「請求項1又は4」に訂正する。 (請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。) 2 一群の請求項について 訂正前の請求項2~6は、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用するものであるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~6〕ごとに請求されたものである。 3 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に係る発明における積層体の層構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、この訂正事項は、願書に添付した明細書の【0075】における「一実施形態において、本発明の積層体は、基材とバリアコート層との間・・・に、蒸着膜を備えていてもよい。」との記載、同【0076】における「蒸着膜としては、・・・酸化アルミニウム、酸化珪素(シリカ)・・・などの無機酸化物から構成される」との記載、同【0081】における「一実施形態において、本発明の積層体は、バリアコート層と、シーラント層との間に遮光性印刷層を備える。」との記載に基づくものであるから、新規事項の追加には当たらない。 さらに、この訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (2)訂正事項2、3について これらの訂正事項は、請求項2、3を削除するものであるから、特許請求の範 囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加には当たらず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。 (3)訂正事項4、5について これらの訂正事項は、請求項2、3の削除に伴い、請求項4、5において引用する請求項を整理し減少させたものであるとともに、削除された請求項2、3を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものである。そうすると、これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、 新規事項の追加には当たらず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。 4 本件訂正についてのむすび 以上のとおり、訂正事項1~5は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、いずれも特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 よって、明細書及び特許請求の範囲を本件訂正のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1、4~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1、4~6に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 基材と、シーラント層とを備える積層体であって、 前記基材および前記シーラント層は、ポリエチレンにより構成され、 前記基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、 前記基材と前記シーラント層との間に、バリアコート層を備え、 前記基材と前記バリアコート層との間に、酸化珪素または酸化アルミニウムを含む蒸着膜を備え、 前記バリアコート層と前記シーラント層との間に印刷が施されており、 前記バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜であり、 前記バリアコート層の厚さが、0.01μm以上100μm以下である ことを特徴とする、リサイクル可能な積層体。」 「【請求項4】 包装袋用途に用いられる、請求項1に記載のリサイクル可能な積層体。 【請求項5】 請求項1又は4に記載のリサイクル可能な積層体により構成されることを特徴とする、包装袋。 【請求項6】 スパウトを備える、請求項5に記載の包装袋。」 第4 取消理由の概要 当審において通知した取消理由(決定の予告)は、次のとおりである。 ・(進歩性)本件発明1~6は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <刊行物> 引用文献A:国際公開第2013/004646 甲2:特開2018-171796 第5 当審における判断 1 証拠について (1)引用文献A ア 引用文献Aの記載 引用文献Aには、次の事項が記載されている。なお、日本語は当審訳であり、行数は各ページ左端の数字を用いた。また、「・・・」は摘記の省略を示したものであり、下線は当審において付したものである。以下同様。 (ア)「 [図:0001437357000001.jpg] 」(1頁5~6行) (和訳: 本発明は、小袋及びチューブのようなパッケージを製造するための積層体に関する。) (イ)「 [図:0001437357000002.jpg] 」(4頁23~25行) (和訳: 第一の態様によれば、ゾルゲルポリビニルアルコールのコーティングの上又は下に金属又は金属酸化物のコーティングを有するポリオレフィンフィルムを有する多層積層体が開示される。) (ウ)「 [図:0001437357000003.jpg] 」(5頁21~23行) (和訳: 特に好ましいポリオレフィンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。) (エ)「 [図:0001437357000004.jpg] 」(7頁6~11行) (和訳: ポリオレフィンフィルムは、金属化の前に二軸延伸することが好ましい。 二軸延伸は、縦方向または機械方向(MD)及び横方向(TD)においてフィルムの強度を均一に分配するために使用される。二軸配向フィルムは、より堅く及びより強くなる傾向があり、また、曲げ及び折りたたみ力に対して良好な抵抗性を示し、包装用途での利用性が大きくなる。) (オ)「 [図:0001437357000005.jpg] 」(8頁22~28行) (和訳: ゾルゲルポリビニルアルコールの塗布量は0.05~5g/m2が好ましい。任意の適切な塗布方法を用いることができる。塗布厚が薄い場合、ポリビニルアルコールは汚染物質として作用し、フィルムのリサイクルが容易になると考えられる。塗布後、熱風、輻射熱、またはその他の適切な方法で乾燥することができる。ゾルゲルポリビニルアルコールには、加水分解された有機ケイ酸塩、有機シロキサン又はシランカップリング剤が含まれてもよい。) (カ)「 [図:0001437357000006.jpg] 」(9頁11~14行) (和訳: 理論に縛られるつもりはないが、ゾルゲルポリビニルアルコールのコーティングは、バリア性をさらに向上させ、フィルム表面を滑らかにし、良好な接着性を提供し、酸素透過率と水蒸気透過率を大幅に低減すると考えられる。また、メタライゼーション後の空隙の充填にも役立つ。) (キ)「 [図:0001437357000007.jpg] [図:0001437357000008.jpg] ・・・ [図:0001437357000009.jpg] [図:0001437357000010.jpg] 」(9頁18~28行) (和訳: 金属又は金属酸化物の皮膜 金属または金属酸化物の被膜の厚さは、100~800オングストロームであることが好ましい。さらに好ましいフィルムにおいては、350~400オングストロームである。 ・・・ 金属酸化物をコーティングする場合、金属酸化物としては酸化アルミニウムまたは酸化シリコンであることが好ましく、より好ましくは酸化アルミニウムである。酸化物のコーティングによって透明な膜が形成され、そのような膜はジェル状物質、例えばジェル歯磨き粉などの包装に使用される。 被膜は蒸着によって堆積させることが好ましい。この方法は当技術分野において周知である。) (ク)「 [図:0001437357000011.jpg] 」(11頁6~11行) (和訳: 好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルムは、ドライラミネーションまたは押出ラミネーションによって第2のフィルムに積層される。第2のフィルムは、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、またはナイロンからなり、より好ましくはポリオレフィンである。ナイロンまたはPETとの積層は、リサイクルが困難となる可能性があるため、あまり好ましくない。第2の被膜は、複数の共押出層を有することが好ましい。) (ケ)「 [図:0001437357000012.jpg] [図:0001437357000013.jpg] 」(12頁26行~13頁3行) (和訳: 本フィルムは、小袋や絞り出し可能なラミチューブの製造など、あらゆる適切な包装用途にそのまま使用できる。パウチは、成形・充填・シール法などの既知の方法で製造できる。パウチの製造を目的とする場合、最内層はシール可能で、好ましくはヒートシールによりシール可能である必要がある。 しかしながら、本フィルムを用いてラミネートを製造し、さらにラミネートを用いて、好ましくは絞り出し可能なチューブを製造することが好ましいとされる。ラミチューブを製造するいくつかの方法は、当該技術分野において周知である。) (コ)「EXAMPLES Structures of some preferred and comparative multilayered laminates are described in table 1. [図:0001437357000014.jpg] 」(13頁15行~14頁) イ 引用文献Aの記載から認定される事項 上記ア(ケ)の記載からみて、引用文献Aに記載の積層体は、パウチなどの包装用途に用いることが想定されているところ、最内層はヒートシール可能、すなわちヒートシール層とすることが記載されている。 ウ 引用文献Aに記載の発明 上記ア、イより、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。 「ポリオレフィンフィルムとヒートシール層を有する包装用途に使用する積層体であって、 前記ポリオレフィンフィルムは、ゾルゲル法によるポリビニルアルコールの被膜を備えるとともに、その上面又は下面に金属又は金属酸化物の被膜を備え、 前記ポリオレフィンフィルムは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)からなり、 前記ポリオレフィンフィルムは、二軸延伸されており、 前記ポリビニルアルコールの被膜は、加水分解された有機ケイ酸塩、シロキサン又はシランカップリング剤を含み、 前記ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレンである、 包装用途に使用する積層体。」 (2)甲2 ア 甲2の記載 甲2には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 該易開封性ガスバリア積層体は、ガスバリア無機蒸着層(C)と接着剤層(B)とが隣接して積層された構成を有し、接着剤層(B)の厚みは0.5~6.0μmである、易開封性ガスバリア積層体、更には、ガスバリア塗布膜層(E)及び又は印刷層(F)とを有する、易開封性ガスバリア積層体、及び該易開封性ガスバリア積層体からなる、易開封性ガスバリア包装材料とピロー包装袋に関するものであり、特に、耐屈曲性と易開封性と酸素バリア性と水蒸気バリア性に優れた(酸素と水蒸気の透過度が低減された)積層体及び該積層体からなる包装材料とピロー包装袋に関するものである。 また、本発明の包装材料は、各種包装用袋やレトルト用袋に最適である。」 (イ)「【0041】 ガスバリア無機蒸着層(C)は、アルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、及び、シリカ蒸着層、なる群から選ばれる1種または2種以上を有する層であることが好ましく、特に 、アルミニウム蒸着層を有することが好ましい。 ガスバリア無機蒸着層(C)は、シーラント層(D)上に直接、接着剤層(B)等の接 着層を介さずに設けることができる。 ・・・ 【0046】 本発明の易開封性ガスバリア積層体においては、酸素ガスおよび水蒸気等に対するガスバリア性を更に高めるために、ガスバリア無機蒸着層(C)と同様なガスバリア無機蒸着層を、基材層(A)の接着剤層(B)と接する側にも設けることができる。前処理、蒸着種、蒸着膜形成方法等は、ガスバリア無機蒸着層(C)と同様である。」 (ウ)「【0050】 [ガスバリア塗布膜層(E)] 本発明においては、基材層(A)と接着剤層(B)との間に、酸素ガスおよび水蒸気等のガスへのバリア性を高めるために、更に、ガスバリア塗布膜層(E)を設けることができる。ガスバリア塗布膜層(E)は、基材層(A)に積層されたガスバリア無機蒸着層の上に設けられてもよい。 ガスバリア塗布膜層(E)は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水及び有機溶剤等の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物等の樹脂組成物から形成される層であることが好ましい。」 (エ)「【0062】 ガスバリア塗布膜層(E)は、1層または2層以上を重層した複合ポリマー層であってよい。また、乾燥後のガスバリア塗布膜層(E)の厚さは0.01~100μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.1~50μmである。乾燥後の厚さが0.01μmより小さいとガスバリア性の向上は小さすぎ、100μmより大きいと、クラックが発生しやすくなる。」 (オ)「【図3】 [図:0001437357000015.jpg] 」 イ 甲2に記載された事項 上記アからみて、甲2には、次の事項が記載されているものと認められる。 ・「包装材料に用いる積層体の層構成を、基材層(A)、ガスバリア無機蒸着層、ガスバリア塗布膜層(E)、印刷層(F)、シーラント層(D)とし、 ガスバリア無機蒸着膜をアルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、シリカ蒸着層から選ばれる1種または2種以上を有する層とすること。」(以下「甲2記載事項1」という。) ・「ガスバリア塗布膜層(E)を金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水及び有機溶剤等の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物等の樹脂組成物から形成し、乾燥後の厚さを0.01~100μmの範囲とすること。」(以下「甲2記載事項2」という。) 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明Aを対比する。 ・引用発明Aの「ポリオレフィンフィルム」、「ヒートシール層」、「積層体」は、それぞれ本件発明1の「基材」、「シーラント層」、「積層体」に相当する。また、引用発明Aの「包装用途に使用する積層体」は、当該「ポリオレフィンフィルムとヒートシール層を有する」ものであるから、本件発明1の「基材と、シーラント層とを備える積層体」に相当する。 ・引用発明Aにおいて、「ポリオレフィンフィルムは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)からな」るものであり、また、「ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレンである」から、双方ともポリエチレンにより構成されていることに相違ない。そうすると、引用発明Aにおける当該事項は、本件発明1の「前記基材および前記シーラント層は、ポリエチレンにより構成され」という事項に相当する。 ・引用発明Aにおける「前記ポリオレフィンフィルムは、二軸延伸されており」という事項は、本件発明1の「前記基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており」という事項に相当する。 ・引用発明Aにおける「ポリビニルアルコールの皮膜」は、上記1(1)ア(カ)の記載に鑑みれば、バリア性をさらに向上させ、酸素透過率と水蒸気透過率を大幅に低減するものであるから、本件発明1の「バリアコート層」にひとまず相当する。また、引用発明Aの当該「ポリビニルアルコールの皮膜」は、「ゾルゲル法」で形成されていることから、ガスバリア性塗布膜であると理解される。そうすると、当該「ポリビニルアルコールの皮膜」は、本件発明1の「前記バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜であり、」との関係において、「前記バリアコート層は、ガスバリア性塗布膜であり、」という点に限り一致する。 (2)一致点及び相違点 上記(1)に照らせば、本件発明1と引用発明Aの一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「基材と、シーラント層とを備える積層体であって、 前記基材および前記シーラント層は、ポリエチレンにより構成され、 前記基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、 バリアコート層を備え、 前記バリアコート層は、ガスバリア性塗布膜である、 積層体。」 <相違点1> 本件発明1では、「前記基材と前記シーラント層との間に、バリアコート層を備え、前記基材と前記バリアコート層との間に、酸化珪素または酸化アルミニウムを含む蒸着膜を備え、前記バリアコート層と前記シーラント層との間に印刷が施されて」いるのに対し、引用発明Aの積層体は、ガスバリア性塗布膜であるポリビニルアルコールの被膜を備えるものの、その層構成、蒸着膜の有無、印刷の有無等が不明である点。 <相違点2> バリアコート層のガスバリア性塗布膜について、本件発明1では「金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物を少なくとも1種含む」としているのに対して、引用発明Aでは「ゾルゲル法によるポリビニルアルコールの被膜」であり、「加水分解された有機ケイ酸塩、有機シロキサン又はシランカップリング剤を含」むとしている点。 <相違点3> 本件発明1では、「バリアコート層の厚さが、0.01μm以上100μm以下である」のに対し、引用発明Aの「ポリビニルアルコールの被膜」は、その厚さが不明である点。 <相違点4> 本件発明1の「積層体」が、「リサイクル可能」であるのに対し、引用発明Aの「包装用途に使用する積層体」は、そのように特定されていない点。 (3)判断 ア 相違点1について 相違点1について検討するに、引用発明Aは、「前記ポリオレフィンフィルムは、ゾルゲル法によるポリビニルアルコールの被膜を備えるとともに、その上面又は下面に金属又は金属酸化物の被膜を備え」るものであるから、層構成として、ポリビニルアルコールの被膜の下面、すなわち、ポリオレフィンフィルムとポリビニルアルコールの被膜との間に、金属酸化物の被膜を設けることが選択肢として挙げられている。また、上記1(1)ア(キ)のとおり、引用文献Aには、金属酸化物の被膜として、酸化アルミニウムを蒸着により形成することが好ましい旨記載されている。 さらに、引用発明Aは、包装用途に使用する積層体であって、「本発明は、小袋及びチューブのようなパッケージを製造するための積層体に関する。」(同(ア))、「本フィルムは、小袋や絞り出し可能なラミチューブの製造など、あらゆる適切な包装用途にそのまま使用できる。パウチは、成形・充填・シール法などの既知の方法で製造できる。」(同(ケ))と説明されるとおり、ラミチューブのほか、小袋やパウチなど様々なパッケージに用いるものであるから、そのような用途においては、いずれにせよ印刷層が必要になることは明らかである。 そして、引用発明Aと甲2記載事項1は、酸素や水蒸気のバリア性を高めた包装用の積層体であって、金属によるバリア層と塗布膜によるバリアコート層を有したものであり、技術分野の共通性、層構造の類似性、機能ないし作用の共通性に鑑みれば、蒸着膜として酸化アルミニウム又は酸化珪素を選択しつつ、引用発明Aに甲2記載事項1における層構成を適用し、当該相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ 相違点2、3について 相違点2、3は、バリアコート層に関するものであるから、まとめて検討するに、引用発明Aにおけるポリビニルアルコールの被膜は、加水分解された有機ケイ酸塩、シロキサン又はシランカップリング剤を含むものであるところ、そのガスバリア性塗布膜をゾルゲル法により形成したバリアコート層である。 そして、甲2記載事項2のガスバリア塗布膜層(E)は、上記1(2)ア(イ)のとおり、酸素ガスおよび水蒸気等に対するガスバリア性を更に高めるためのものであるから、引用発明Aにおけるバリアコート層と同様の機能を有するものにほかならない。 そうすると、引用発明Aにおけるポリビニルアルコールの被膜と甲2記載事項2におけるガスバリア塗布膜層(E)は、その材質、形成方法、機能の点で共通するものである。 してみれば、引用発明Aにおけるポリビニールアルコールの被膜に代えて、甲2記載事項によるガスバリア性塗布膜層(E)を適用し、その乾燥後の厚さも含め、当該相違点2、3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 相違点4について 引用発明Aには、上記1(1)ア(ク)のとおり、好ましい実施形態として、第2のフィルムに積層する場合も、当該第2のフィルムはポリオレフィンが好ましいとされ、ナイロン又はPETを積層すると、リサイクルが困難であり好ましくない旨記載されている。すなわち、引用発明Aにおいては、単一素材によりリサイクル性を向上させるという課題を念頭に置いたものであると理解される。その上で、引用発明Aにおけるポリオレフィンフィルムとヒートシール層は、ポリエチレンという単一素材を用いているものであるから、「リサイクル可能」なものであり、そうすると、当該相違点4は実質的なものではない。 また、仮にそうではないとしても、単一素材によりリサイクル可能なものとすることは、例を挙げるまでもなく周知である。 エ 効果について 本件発明1が奏する効果は、主に十分な強度及び耐熱性を有すること、リサイクル性に優れること、ガスバリア性に優れること等であるが、これらの効果は、いずれも引用発明A、甲2発明事項1及び2により得られるものであり、その相乗効果を超えるような格別なものはない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明1は、引用発明A、甲2発明事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 本件発明4~6について (1)本件発明4について 本件発明4と引用発明Aとを対比するに、引用発明Aの「包装用途に使用する積層体」は、本件発明4の「包装袋用途に用いられる」「積層体」に相当する。 その余の点は、上記2のとおりである。 (2)本件発明5について 本件発明5と引用発明Aとを対比するに、両発明は、以下の点で相違する。 <相違点5-1> 本件発明5では、「リサイクル可能な積層体」としているのに対して、引用発明Aではそのように特定されていない点。 <相違点5-2> 本件発明5は、「包装袋」であるのに対し、引用発明Aは、「包装用途に使用する積層体」である点。 当該相違点について検討するに、相違点5-1は、上記2(3)ウで検討したとおりである。 また、相違点5-2に関し、引用発明Aは、同アで検討したとおり、小袋やパウチなど様々なパッケージに用いることを想定したものであるから、当該相違点5-2は当業者が容易に想到し得たものである。 その余の点は、上記2のとおりである。 (3)本件発明6について 本件発明6と引用発明Aとを対比するに、本件発明6の「包装袋」は「スパウトを備える」ものであるところ、引用発明Aは、そもそも「包装用途に使用する積層体」である点で相違する。 当該相違点について検討するに、上記(2)のとおり引用発明Aの積層体は、パウチなどの包装袋に用いることを想定しているところ、スパウトを備えたパウチは、例を挙げるまでもなく周知のものであるから、当該相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。 その余の点は、上記2のとおりである。 (4)小括 以上のとおり、本件発明4~6は、引用発明A、甲2発明事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701105

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,217件(大日本印刷株式会社、平尾 帆波)
  • 2025-700199異議申立 / 2026-04-10 / 訂正認容積層体、チューブ容器本体およびチューブ容器
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社、平尾 帆波
  • 2024-700913異議申立 / 2026-09-08
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2026-700281異議申立 / 2026-07-30 / 維持化粧シート
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
同じ根拠条文の審決7,823件(特許法113条2号、特許法29条2項)
  • 2023-700958異議申立 / 2025-10-14 / 請求成立(取消)積層体、レトルト用またはボイル用パウチ
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法29条2項
  • 2021-701134異議申立 / 2023-09-05 / 請求成立(取消)化粧シート及び化粧材
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法29条2項
  • 2020-700794異議申立 / 2021-09-07 / 訂正認容表面処理鋼板
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法29条2項
  • 2024-700232異議申立 / 2025-10-16 / 請求成立(取消)積層フィルム及び包装袋
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法29条2項
  • 2023-700806異議申立 / 2025-03-27 / 請求成立(取消)プレス成形体、車両用シートバックボード、およびプレス成形体製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法29条2項
同じ論点・分野の審決(審決分類)932件(113・B32B、121・B32B、537・B32B)
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2026-700157異議申立 / 2026-06-23 / 維持リサイクルフィルム
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2025-700024異議申立 / 2026-05-21 / 訂正認容化粧シート、化粧材及び樹脂組成物
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2024-700754異議申立 / 2026-04-28 / 訂正認容ヒートシール性積層体、包装材料用積層体、および包装材料
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B

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