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特許異議申立

2020-700182

印刷物、該印刷物を用いてなる容器、印刷物の製造方法及び印刷物の選択方法

審判番号
2020-700182
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-213018外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6578887
請求日
2020年03月17日
審決日
2021年12月08日
公報発行日
2022年04月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第2号、特許法第2条第3項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6578887号発明「印刷物、該印刷物を用いてなる容器、印刷物の製造方法及び印刷物の選択方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6578887号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、13、14について訂正することを認める。
特許第6578887号の請求項1、2、4~8、12~14に係る特許を維持する。
特許第6578887号の請求項3、9~11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6578887号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成27年10月29日(優先権主張 平成26年10月30日 日本国)に出願され、令和1年9月6日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和1年9月25日)がされたものであって、その特許について、令和2年3月17日に、特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、令和2年6月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年8月7日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和2年9月11日付けで訂正拒絶理由が通知され、令和2年10月14日に特許権者より意見書及び手続補正書が提出され、令和2年12月25日に申立人より意見書の提出がされ、令和3年3月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和3年6月1日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、令和3年7月8日に申立人より意見書の提出がされたものである。

なお、令和2年8月7日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求について

1.訂正の内容

本件訂正請求は、「特許第6578887号の明細書、特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める」ものであり、その訂正の内容は以下のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所について当審で付記したもの。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1において、

ア 「基材上の任意の箇所に、」とあるのを、「紙基材上の任意の箇所に、」に訂正し、

イ 「該基材と該光沢印刷層との間にハードコート層を有し、
該ハードコート層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、
該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08HA)が0.08μm以下であり、
該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8HA)が0.20~0.40μmであり、」との記載を追加し、
ウ 「該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08GL)が、0.010~0.100μmであり、
該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8GL)が0.250~0.500μmであり、
該光沢印刷層は、さらにバインダー樹脂を含み、
該金属鱗片が以下の条件(5)を満たし、
該金属鱗片の平均長さと該光沢印刷層の平均厚みが、以下の条件(6)を満たし、」との記載、及び
「金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (5)
10≦[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み] (6)」との記載を追加し、

エ 「該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有し、」との記載を追加し、

オ 「該表面保護層の樹脂成分は、10~30質量%の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、70~90質量%の紫外線硬化性化合物であり、」との記載を追加し、

カ 「以下の条件(1)、(2)を満たす印刷物。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.10μm≦Ra0.25≦0.50μm (2)」とあるのを、
「以下の条件(1)、(2)を満たし、
さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、Ra0.8が0.30~0.60μmを満たす、印刷物。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)」に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項2、4~8、12も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2において、

「以下の条件(3)、(4)を満たす請求項1に記載の印刷物。
1.00≦(Rv0.8-Rv0.25)/(Rv0.25-Rv0.08)≦2.00 (3)
0.50μm≦Rv0.25≦1.00μm (4)」とあるのを、
「以下の条件(3)、(4)を満たし、
さらに、Rv0.08が0.10~0.55μmを満たし、Rv0.8が1.00~2.00μmを満たす、請求項1に記載の印刷物。
1.00≦(Rv0.8-Rv0.25)/(Rv0.25-Rv0.08)≦2.00 (3)
0.50μm≦Rv0.25≦1.00μm (4)」

(請求項2の記載を引用する請求項4~8、12も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1又は2に記載の」に訂正する。

(請求項4の記載を引用する請求項5~8、12も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(請求項5の記載を引用する請求項6~8、12も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1~5のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(請求項6の記載を引用する請求項7、8、12も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1~6のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(請求項7の記載を引用する請求項8、12も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8

特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1~7のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(請求項8の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9

特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(10)訂正事項10

特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(11)訂正事項11

特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(12)訂正事項12

特許請求の範囲の請求項12において、「請求項1~11のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4~8のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(13)訂正事項13

特許請求の範囲の請求項13において、

ア 「基材上の任意の箇所に、金属鱗片を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなる印刷物の製造方法であって、」とあるのを、「紙基材上の任意の箇所に、金属鱗片及びバインダー樹脂を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなり、該基材と該光沢印刷層との間に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層であるハードコート層を有し、該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有してなる印刷物の製造方法であって、」に訂正し、

イ 「金属鱗片を含む光沢印刷層用インキから該光沢印刷層を形成する工程、表面保護層用インキから該表面保護層を形成する工程を行うことにより、」とあるのを、「下記の行程1~4を行うことにより、」に訂正し、さらに

「<工程1>
該紙基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含むインキから、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層である該ハードコート層を形成し、該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJISB0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08HA)を0.08μm以下、該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJISB0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8HA)を0.20~0.40μmとする工程。
<工程2>
該ハードコート層上に、以下の条件(5)を満たす金属鱗片及びバインダー樹脂を含む光沢印刷層用インキから該光沢印刷層を形成し、該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08GL)を0.010~0.100μm、該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8GL)を0.250~0.500μmとするとともに、該金属鱗片の平均長さと該光沢印刷層の平均厚みが以下の条件(6)を満たすようにする工程。
金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (5)
10≦[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み] (6)
<工程3>
該光沢印刷層上の任意の箇所に、バインダー樹脂及び顔料を含むインキから該絵柄層を形成する工程。
<工程4>
樹脂成分として、10~30質量%の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、70~90質量%の紫外線硬化性化合物とを含む表面保護層用インキから、該絵柄層上に該表面保護層を形成する工程。」との記載を追加し、
ウ 「該表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.25)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)とが、以下の条件(1)、(2)を満たすようにする、印刷物の製造方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.10μm≦Ra0.25≦0.50μm (2)」とあるのを、
「該表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.25)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)とが、以下の条件(1)、(2)を満たし、さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、Ra0.8が0.30~0.60μmを満たすようにする、印刷物の製造方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)」に訂正する。

(14)訂正事項14

特許請求の範囲の請求項14において、

ア 「基材上の任意の箇所に、金属鱗片を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなる印刷物を選択する際に、」とあるのを、「紙基材上の任意の箇所に、金属鱗片を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなり、該基材と該光沢印刷層との間にハードコート層を有し、該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有してなる印刷物を選択する際に、」に訂正し、

イ 「以下の条件(1)、(2)を満たすことを判定条件とする、印刷物の選択方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.10μm≦Ra0.25≦0.50μm (2)」とあるのを、
「以下の条件(1)、(2)を満たし、
さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、かつRa0.8が0.30~0.60μmを満たすことを判定条件とする、印刷物の選択方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)」に訂正する。

(15)訂正事項15

明細書の段落【0014】において、「本発明の印刷物は、光沢印刷層の表面が上記条件(1)、(2)を満たすものである。」とあるのを、「本発明の印刷物は、表面保護層の表面が上記条件(1)、(2)を満たすものである。」に訂正する。

2.訂正の適否

(1)一群の請求項について

訂正前の請求項2~12は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

(2)訂正事項1について

訂正事項1は、基材、光沢印刷層、ハードコート層及び表面保護層について限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項1は、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)には、基材について段落【0022】に、ハードコート層の配置について段落【0024】に、ハードコート層の組成物について段落【0032】に、ハードコート層表面の算術平均粗さについて段落【0028】及び【0029】に、光沢印刷層の組成について段落【0055】に、光沢印刷層表面の算術平均粗さについて段落【0062】及び【0063】に、条件(5)(6)について段落【0050】及び【0051】に、絵柄層の配置について段落【0065】に、絵柄層の組成について段落【0066】に、表面保護層の組成について段落【0069】に、表面保護層表面の算術平均粗さについて段落【0016】及び【0017】に、それぞれ記載されていることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

(3)訂正事項2について

訂正事項2は、表面保護層表面の算術平均粗さについて限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項2は、上記のように、訂正前の請求項2の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

そして、本件特許明細書の段落【0020】には、表面保護層表面の算術平均粗さについて記載されていることから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

(4)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(5)訂正事項4~8、12について

訂正事項4~8、12は、訂正事項3により請求項3が削除されることに伴い、請求項4~8、12がそれぞれ引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項4~8、12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(6)訂正事項9~11について

訂正事項9~11は、訂正前の請求項9~11をそれぞれ削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項9~11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(7)訂正事項13について

訂正事項13は、基材、光沢印刷層、ハードコート層及び表面保護層について限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項13は、上記のように、訂正前の請求項13の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

そして、本件特許明細書には、基材について段落【0022】に、光沢印刷層の組成について段落【0055】に、ハードコート層の配置について段落【0024】に、ハードコート層の組成物について段落【0032】に、絵柄層の配置について段落【0065】に、絵柄層の組成について段落【0066】に、ハードコート層を形成する工程について段落【0024】、【0032】及び【0038】に、ハードコート層表面の算術平均粗さについて段落【0028】及び【0029】に、光沢印刷層を形成する工程について段落【0045】、【0050】、【0055】、【0064】及び【0075】に、光沢印刷層表面の算術平均粗さについて段落【0062】及び【0063】に、条件(5)(6)について段落【0050】及び【0051】に、絵柄層を形成する工程について段落【0065】及び【0066】に、表面保護層を形成する工程について段落【0068】、【0069】及び【0075】に、表面保護層表面の算術平均粗さについて段落【0016】及び【0017】に、それぞれ記載されていることから、訂正事項13は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

(8)訂正事項14について

訂正事項14は、基材、光沢印刷層、ハードコート層及び表面保護層について限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、訂正事項14は、上記のように、訂正前の請求項14の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

そして、本件特許明細書には、基材について段落【0022】に、ハードコート層の配置について段落【0024】に、絵柄層の配置について段落【0065】に、絵柄層の組成について段落【0066】に、表面保護層表面の算術平均粗さについて段落【0016】及び【0017】に、それぞれ記載されていることから、訂正事項14は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

(9)訂正事項15について

訂正事項15は、明細書の段落【0014】において、本来、「本発明の印刷物は、表面保護層の表面が上記条件(1)、(2)を満たすものである。」と記載されるべきところを、「本発明の印刷物は、光沢印刷層の表面が上記条件(1)、(2)を満たすものである。」と記載されているのを訂正しようとするものであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

また、訂正事項15は、上記のように、誤記の訂正を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書」という。)の段落【0012】には、「表面保護層」の表面が、条件(1)、(2)を満たす旨記載されており、「光沢印刷層」ではないから、本件特許明細書の段落【0014】の記載を、「本発明の印刷物は、表面保護層の表面が上記条件(1)、(2)を満たすものである。」と訂正することは、当初明細書の記載に整合するものであり、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされたものといえる。

3.小括

したがって、訂正事項1~15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕、13、14について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件特許発明

上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、2、4~8、12~14に係る発明(以下「本件発明1」等といい、また、本件発明1、2、4~8、12~14を「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~8、12~14に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
紙基材上の任意の箇所に、金属鱗片を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなる印刷物であって、
該基材と該光沢印刷層との間にハードコート層を有し、
該ハードコート層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、
続きを表示(全25行)
該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08HA)が0.08μm以下であり、
該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8HA)が0.20~0.40μmであり、
該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08GL)が、0.010~0.100μmであり、
該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8GL)が0.250~0.500μmであり、
該光沢印刷層は、さらにバインダー樹脂を含み、
該金属鱗片が以下の条件(5)を満たし、
該金属鱗片の平均長さと該光沢印刷層の平均厚みが、以下の条件(6)を満たし、
該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有し、
該表面保護層の樹脂成分は、10~30質量%の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、70~90質量%の紫外線硬化性化合物であり、
該表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.25)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)とが、以下の条件(1)、(2)を満たし、
さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、Ra0.8
が0.30~0.60μmを満たす、印刷物。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)
金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (5)
10≦[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み] (6)
【請求項2】
前記表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の最大谷深さ(Rv0.08)と、前記表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の最大谷深さ(Rv0.25)と、前記表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の最大谷深さ(Rv0.8)とが、以下の条件(3)、(4)を満たし、
さらに、Rv0.08が0.10~0.55μmを満たし、Rv0.8が1.00~2.00μmを満たす、請求項1に記載の印刷物。
1.00≦(Rv0.8-Rv0.25)/(Rv0.25-Rv0.08)≦2.00 (3)
0.50μm≦Rv0.25≦1.00μm (4)」
「【請求項4】
前記金属鱗片の平均長さが5.0~30.0μmである請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項5】
前記金属鱗片の平均厚みが0.10μm以下である請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項6】
前記光沢印刷層の厚みが0.15~1.50μmである請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項7】
前記金属鱗片が前記光沢印刷層の上方に偏在している請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項8】
前記光沢印刷層により絵柄が形成されてなる請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載の印刷物。」
「【請求項12】
請求項1、2、4~8のいずれか1項に記載の印刷物を用いてなる容器。
【請求項13】
紙基材上の任意の箇所に、金属鱗片及びバインダー樹脂を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなり、該基材と該光沢印刷層との間に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層であるハードコート層を有し、該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有してなる印刷物の製造方法であって、
続きを表示(全24行)
下記の工程1~4を行うことにより、
該表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.25)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)とが、以下の条件(1)、(2)を満たし、さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、Ra0.8が0.30~0.60μmを満たすようにする、印刷物の製造方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)
<工程1>
該紙基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含むインキから、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層である該ハードコート層を形成し、該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08HA)を0.08μm以下、該ハードコート層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8HA)を0.20~0.40μmとする工程。
<工程2>
該ハードコート層上に、以下の条件(5)を満たす金属鱗片及びバインダー樹脂を含む光沢印刷層用インキから該光沢印刷層を形成し、該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.08GL)を0.010~0.100μm、該光沢印刷層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さRa(Ra0.8GL)を0.250~0.500μmとするとともに、該金属鱗片の平均長さと該光沢印刷層の平均厚みが以下の条件(6)を満たすようにする工程。
金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (5)
10≦[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み] (6)
<工程3>
該光沢印刷層上の任意の箇所に、バインダー樹脂及び顔料を含むインキから該絵柄層を形成する工程。
<工程4>
樹脂成分として、10~30質量%の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、70~90質量%の紫外線硬化性化合物とを含む表面保護層用インキから、該絵柄層上に該表面保護層を形成する工程。
【請求項14】
紙基材上の任意の箇所に、金属鱗片を含む光沢印刷層を有し、さらに該光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有してなり、該基材と該光沢印刷層との間にハードコート層を有し、該光沢印刷層と該表面保護層との間であって該光沢印刷層上の任意の箇所にバインダー樹脂及び顔料を含む絵柄層を有してなる印刷物を選択する際に、
該表面保護層の表面のカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.08)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.25mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.25)と、該表面保護層の表面のカットオフ値を0.8mmとした際のJIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)とが、以下の条件(1)、(2)を満たし、
さらに、Ra0.08が0.05~0.20μmを満たし、かつRa0.8が0.30~0.60μmを満たすことを判定条件とする、印刷物の選択方法。
0.50≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.50 (1)
0.15μm≦Ra0.25≦0.45μm (2)」

2.取消理由(決定の予告)の要旨

本件発明に対して、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は以下のとおりである。

(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る理由1

発明の詳細な説明には、本件発明の表面保護層について、樹脂の粘度・塗工量や、塗工方式・条件が記載されてないし、下層については、表面保護層との間に光沢印刷層と絵柄層が介在するハードコート層の樹脂材質が記載されているだけであって、ハードコート層の表面形状に影響を与える硬化時間の具体的な態様が不明であり、樹脂の粘度・塗工量や、塗工方式・条件が記載されておらず、さらに、光沢印刷層と絵柄層については、樹脂の材質・粘度・塗工量や、塗工方式・条件が不明であるため、技術常識を勘案しても、本件発明を実施するために、過度の試行錯誤を要するものである。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る理由2

ア 本件発明1、13、14において、「低周波成分のRa」であるRa0.8について適切な値とする条件は規定されておらず、課題を解決できないものを含むものである。

イ 本件発明2において、「低周波成分のRv」であるRv0.8について適切な値とする条件は規定されておらず、課題を解決できないものを含むものである。

ウ 本件発明1~14において、「基材」、「光沢印刷層」、「表面保護層」、「ハードコート層」の材質、組成、厚さ等を特定しておらず、課題を解決できないものを含むものである。

3.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る理由について

(1)実施可能要件について

ア 明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることを要するものである(特許法第36条第4項第1号)。

本件発明1、2、4~8、12は「印刷物、該印刷物を用いてなる容器」の物の発明、本件発明13は「印刷物の製造方法」の物を生産する方法の発明、本件発明14は「印刷物の選択方法」の方法の発明であるところ、物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産等をする行為をいい(特許法第2条第3項第1号)、方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為をいい(特許法第2条第3項第2号)、物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為等をいう(特許法第2条第3項第3号)から、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、本件発明を「実施」をすることができるとは、本件発明に係る「印刷物」を製造方法を使用して生産し、選択方法を使用することができるのであれば、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものといえる。

イ そこで、本件特許の発明の詳細な説明を参照すると、基材について(段落【0022】~【0023】)、ハードコート層について(段落【0024】~【0038】)、光沢印刷層について(段落【0045】~【0064】)、絵柄層について(段落【0065】~【0067】)、表面保護層について(段落【0068】~【0073】)、印刷物の製造方法について(段落【0075】~【0079】)、印刷物の選択方法について(段落【0080】~【0084】)、それぞれ記載されている。

さらに、具体的な材料名、製造元及び含有量を示した、実施例、比較例が記載され、それらの実施例、比較例の記載に基づき生産された印刷物について、「金属光沢」、「防眩性」及び「カール」について評価し、印刷物の良否を判定したことが記載されている。

ウ そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件発明に係る「印刷物」を製造方法を使用して生産し、選択方法を使用することができるといえるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

(2)取消理由(決定の予告)で通知した理由1の判断

ア 表面保護層の樹脂の粘度・塗工量や、塗工方式・条件

表面保護層の樹脂の粘度は、粘度が高いと下層の表面形状が反映されやすく、粘度が低いと下層の表面形状が反映されにくいことから、下層の表面形状を踏まえ、樹脂の粘度を調整すれば良く、塗工量に相当する厚みについては、発明の詳細な説明の段落【0073】に記載され、表面保護層の樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と紫外線硬化性化合物であるから、その樹脂に適合した塗工方式・条件を採用すればよいことは明らかである。

イ ハードコート層の硬化時間、樹脂の粘度・塗工量や、塗工方式・条件

ハードコート層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層であることから、その硬化時間は瞬時であり(乙3:DICグラフィックス株式会社インキ機材事業部、「UVインキ製品を安全に使用するためにくダイキュア製品の取り扱い>-改定第6版-」、2012年3月29日、インターネット<URL:https://www.dic-graphics.co.jp/navi/trouble_shooting/pdf/uvinks_6.pdf>)、ハードコート層の樹脂の粘度とともに、下層の表面形状を踏まえて調整すれば良く、塗工量についても、厚さが段落【0037】に記載されている。塗工方式・条件についても、電離放射線硬化性樹脂組成物に適合したものを採用すれば良いことは明らかである。

ウ 光沢印刷層の樹脂の材質・粘度・塗工量や、塗工方式・条件

光沢印刷層の樹脂の材質は段落【0055】に記載されており、塗工量についても、厚さが段落【0057】に記載されている。光沢印刷層の樹脂の粘度は、下層の表面形状を踏まえて調整すれば良く、塗工方式・条件についても、樹脂の材質に適合したものを採用すれば良いことは明らかである。

エ 絵柄層の樹脂の材質・粘度・塗工量や、塗工方式・条件

絵柄層の樹脂の材質は段落【0066】に記載されており、塗工量についても、厚さが段落【0067】に記載されている。絵柄層の樹脂の粘度は、下層の表面形状を踏まえて調整すれば良く、塗工方式・条件についても、樹脂の材質に適合したものを採用すれば良いことは明らかである。

オ よって、取消理由(決定の予告)で通知した理由1には理由がない。

(3)申立人の令和3年7月8日の意見書での意見

申立人は、令和3年7月8日の意見書(「イ」)において、明細書には、表面保護層の硬化時間の条件の開示、及び、ハードコート層の硬化時間の条件の開示がなく、本件発明を実施することができる程度に記載されていない旨主張する。

しかし、表面保護層及びハードコート層の紫外線硬化性化合物や電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化時間については、上述のように瞬時に硬化するものであり、明細書に具体的な硬化時間の開示がなくとも、当業者であれば、混合する他の樹脂も加えた粘度を下層の表面形状に対応して調整することができるものといえるから、申立人の上記主張は採用できない。

4.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る理由について

(1)サポート要件について

ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、本件特許の特許請求の範囲の記載について検討する。

イ そこで、本件発明の課題についてみると、発明の詳細な説明には「本発明は、金属光沢を有しつつ、高級感のある防眩性を有する印刷物及び容器を提供することを目的とする。また、本発明は、金属光沢を有しつつ、高級感のある防眩性を有する印刷物を製造又は選択する方法を提供する」(段落【0008】)ことと記載されている。

この発明の課題の解決のために、発明の詳細な説明には、

「【0015】
条件(1)は、Ra0.8-Ra0.25(低周波成分のRaと中周波成分のRaの差分)と、Ra0.25-Ra0.08(中周波成分のRaと高周波成分のRaの差分)との比を規定している。条件(2)は、所定の中周波成分のRaが適度に存在することを意味している。すなわち、条件(1)、(2)を満たさない場合は、高周波成分、中周波成分及び低周波成分のRaが適度に存在していないことになる。ここで、高周波成分のRaは高角度の拡散、中周波成分のRaは中程度の拡散、低周波成分のRaは低角度の拡散に寄与する。したがって、高周波成分、中周波成分及び低周波成分のRaがバランスよく存在していない場合は、特定の角度の拡散が弱くなる。特定の角度の拡散が弱くなると、拡散の変化に特異点が生じ、違和感のある防眩となる。
高周波成分のRaが過度に存在している場合は、角度の大きい拡散が増加するので、拡散光により光沢印刷層の金属光沢が大幅に低下してしまい、印刷物の金属光沢が消失してしまう。また、角度の大きい拡散が増加すると、白茶け感があり高級感が出ない。また、角度の大きい拡散が増加することで、正反射方向の反射光の割合が少なくなり、光沢感が低下してしまう。
低周波成分のRaが過度に存在している場合は、角度の小さい拡散が増加するので、正反射方向の反射光の割合が少なくなり、光沢感が低下してしまう。低周波成分のRaが適度に存在していない場合は、角度の小さい拡散がなくなり、正反射方向の反射光の割合が多くなり視認性が低下する。
続きを表示(全11行)
中周波成分のRaは、適度に存在することで、高周波成分と低周波成分のつなぎとしての役割を果たし、急峻な視認性の変化防止を担保できる。
【0016】
条件(1)は、0.60≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.40を満たすことがより好ましく、0.70≦(Ra0.8-Ra0.25)/(Ra0.25-Ra0.08)≦1.30を満たすことがさらに好ましい。
条件(2)は、0.15μm≦Ra0.25≦0.45μmを満たすことがより好ましく、0.20μm≦Ra0.25≦0.40μmを満たすことがさらに好ましい。
【0017】
表面保護層の表面のRa0.08は、0.20μm以下であることが好ましく、0.18μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることがさらに好ましい。表面保護層の表面のRa0.08の下限は、0.05μm程度である。
表面保護層の表面のRa0.8は、0.60μm以下であることが好ましく、0.55μm以下であることがより好ましく、0.50μm以下であることがさらに好ましい。表面保護層の表面のRa0.8の下限は、0.30μm程度である。」と記載されている。

上記記載からみて、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(2)取消理由(決定の予告)で通知した理由2の判断

本件訂正により、本件発明1に「低周波成分のRa」であるRa0.8が「0.30~0.60μmを満たす」こと、本件発明2に「低周波成分のRv」であるRv0.8が「1.00~2.00μmを満たす」ことが特定されたため、理由2の上記ア、イの取消理由は解消した。

また、本件訂正により、基材が「紙基材」であること、

光沢印刷層が「さらにバインダー樹脂を含み、該金属鱗片が以下の条件(5)を満たし、該金属鱗片の平均長さと該光沢印刷層の平均厚みが、以下の条件(6)を満たし、

金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (5)

10≦[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み](6)」であること、

表面保護層が「表面保護層の樹脂成分は、10~30質量%の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と、70~90質量%の紫外線硬化性化合物」であること、

ハードコート層が「電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層」であることが、それぞれ特定されて、理由2の上記ウの取消理由は解消した。

よって、取消理由(決定の予告)で通知した理由2には理由がない。

(3)申立人の令和3年7月8日の意見書での意見

申立人は、令和3年7月8日の意見書(「ウ」)において、明細書には、ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物のうちの電離放射線硬化性化合物が90質量%以上であると達成しやすいと記載(段落【0036】)されているところ、本件発明には、ハードコート層を「電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層」と特定するだけで、ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物のうちの電離放射線硬化性化合物について特定しないため、明細書に記載されるような作用効果を奏するための課題解決手段が特定されているとはいえず、本件特許明細書に記載される発明とはいえない旨主張する。

しかし、上記(1)アで述べたように、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、ハードコート層の電離放射線硬化性化合物の含有割合まで特定することを要しないものであるから、申立人の上記主張は採用できない。

5.取消理由(決定の予告)で通知しなかった申立理由

(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る申立理由

申立人は、「本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~14の「条件(1)、(2)を満たす印刷物」を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載していない。」、「本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項2~12の「条件(3)、(4)を満たす印刷物」を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」旨(特許異議申立書18~19頁)主張する。

しかし、上述(「3.」)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、印刷物を構成する基材、ハードコート層、絵柄層及び表面保護層について、印刷物の製造方法について、並びに印刷物の選択方法について、それぞれ記載されており、実施例1~4には、条件(1)~(4)を満たす印刷物を生産することができ、生産された印刷物について、「金属光沢」、「防眩性」及び「カール」について良好な結果が得られることが確認されているから、申立人の、実施可能要件に係る上記申立理由は、採用できない。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る申立理由

申立人は、「請求項1~14の条件(1)、(2)の数値範囲は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであり、請求項1~14の発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。」、「請求項2~12の条件(3)、(4)の数値範囲は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」とはいえず、請求項2~12の発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。」、「基材の全面にハードコート層を形成することを特定していない請求項1~14は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであり、請求項1~14の発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。」旨(特許異議申立書20~21頁)主張する。

しかし、上述(「4.」)のとおり、本件発明の課題は、「金属光沢を有しつつ、高級感のある防眩性を有する印刷物及び容器を提供すること」、「金属光沢を有しつつ、高級感のある防眩性を有する印刷物を製造又は選択する方法を提供する」ことであるところ、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の、サポート要件に係る上記申立理由は、採用できない。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)に係る申立理由

ア 申立人は、以下の甲第1号証~項第5号証を提出して、

甲第1号証には、

「a バッカー基材上に、バインダー樹脂に金属光沢性粉末を分散させた塗料により形成される金属光沢を有する金属光沢印刷層と、前記金属光沢印刷層の上層側にマット剤含有層16用塗工剤を塗布して形成されたマット剤含有層と、を備える化粧シートであって、
b 前記マット剤含有層について、表面粗さRaが0.2μm~2.0μmである化粧シート」の「甲1発明」が記載され、

甲第2号証には、

「a 金属基体1の外面に、金属フレーク及び微粒子被覆パール顔料から成る群より選択された光輝性顔料を含有するコーティング層2と、このコーティング層の上に施される仕上げワニス3(クリヤー塗膜)を有する金属製包装体であって、
b 前記仕上げワニス層の平均表面粗さ(Ra)が0.3μm以下である金属製包装体」の「甲2発明」が記載されており、

本件発明1~11、13、14は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、あるいは、本件発明1~10、12~14は、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第5号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨(特許異議申立書21~53頁)主張する。

甲第1号証:特開2007-83643号公報
甲第2号証:特開2002-80023号公報
甲第3号証:特開2003-2322号公報
甲第4号証:国際公開第2013/027275号
甲第5号証:特開2010-162787号公報

イ しかし、甲1発明、甲2発明とも、本件発明のように、表面保護層の高周波成分、中周波成分及び低周波成分のRaに着目して、それらの関係式を特定したものではなく、また、他の甲第3号証~甲第5号証にも、そのことを示唆する記載はないから、甲1発明、又は甲2発明に基いて、本件発明を想到することはできず、申立人の、進歩性に係る上記申立理由は、採用できない。

6.むすび

以上のとおりであるから、本件発明1、2、4~8、12~14に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。

また、他に本件発明1、2、4~8、12~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

本件訂正請求に係る訂正により、請求項3、9~11に係る特許は削除されたため、請求項3、9~11に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700182

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  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700024異議申立 / 2026-05-21 / 訂正認容化粧シート、化粧材及び樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B

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