2020-390086
第VIII因子キメラタンパク質及びその使用
- 審判番号
- 2020-390086
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2016-545930外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月16日
- 審決日
- 2021年01月06日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P141 .852-Y (C12N) / P141 .853-Y (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
本件特許第6749836号に係る出願(特願2016-545930号)は、平成27年1月9日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2014年1月10日 米国、2014年5月2日 米国)として出願されたものであって、その請求項1~24に係る発明について令和2年8月14日に特許権の設定登録がなされた。
これについて、令和2年9月16日に本件訂正審判が請求された。
第2 請求の趣旨および訂正の内容
本件審判の請求の趣旨は、特許第6749836号の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正することを認める、との審決を求めるものである。
そして、本件審判の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、概ね、以下のとおりである。
「配列表における配列番号65のアミノ酸配列(4492残基のアミノ酸からなる。具体的なアミノ酸配列の記載は省略する。)を正しいアミノ酸配列(2332残基のアミノ酸からなる。具体的なアミノ酸配列の記載は省略する。)に訂正する。」(以下、「訂正事項1」という。)
第3 当審の判断
1 願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載事項
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願書に添付した特許請求の範囲及び明細書には、次の事項が記載されている。下線は当審による。
(1)特許請求の範囲
ア 「第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質であって、前記第1のポリペプチド鎖は、(i)第VIII因子(「FVIII」)タンパク質、(ii)第1の免疫グロブリン(「Ig」)定常領域、および続きを表示(全15行)(iii)前記FVIIIタンパク質に挿入された第1のXTEN配列を含み、ここで、前記第1のXTEN配列は、成熟FVIIIタンパク質(配列番号65)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入されており、前記第1のXTEN配列が、配列番号8のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、(iv)フォンウィルブランド因子(「VWF」)のD’ドメインとD3ドメインを含むVWFタンパク質、(v)第2のIg定常領域、(vi)前記VWFタンパク質と前記第2のIg定常領域とを連結する第2のXTEN配列、および(vii)トロンビン切断可能リンカーを含み、前記トロンビン切断可能リンカーは、前記第2のXTEN配列を前記第2のIg定常領域に連結しており、前記リンカーは、配列番号88のアミノ酸配列を含み、前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1のIg定常領域および前記第2のIg定常領域の間の共有結合によって前記第2のポリペプチド鎖に連結されている、キメラタンパク質。」(請求項1)
(2)明細書
イ 「FVIIIのポリペプチド及びポリヌクレオチドの配列は、多数の機能的な断片、変異体及び修飾型と同様に既知である。ヒトのFVIII配列(完全長)の例を以下に示す。【表3-1】・・・【表3-2】」(【0144】)
ウ 「ネイティブのヒト成熟FVIIIの配列は配列番号65として提示されている。ネイティブのFVIIIタンパク質は以下の式:A1-a1-A2-a2-B-a3-A3-C1-C2を有し、式中、A1、A2及びA3は構造的に関連する「Aドメイン」であり、Bは「Bドメイン」であり、C1及びC2は構造的に関連する「Cドメイン」であり、a1、a2及びa3は酸性スペーサー領域である。配列番号65における一次アミノ酸配列の位置を参照して、ヒトFVIIIのA1ドメインはAla1からほぼArg336まで伸び、a1スペーサー領域はほぼMet337からほぼVal374まで伸び、A2ドメインはほぼAla375からほぼTyr719まで伸び、a2スペーサー領域はほぼGlu720からほぼArg740まで伸び、BドメインはほぼSer741からほぼArg1648まで伸び、a3スペーサー領域はほぼGlu1649からほぼArg1689まで伸び、A3ドメインはほぼSer1690からほぼLeu2025まで伸び、C1ドメインはほぼGly2026からほぼAsn2072まで伸び、C2ドメインはほぼSer2073からほぼTyr2332まで伸びる。」(【0146】)
エ 「ヒトのFVIII遺伝子は単離され、哺乳類細胞で発現されている(・・・Vehar,G.A.ら,Nature,312:337-342(1984)・・・)。」(【0147】)
オ 「一実施形態では、FVIII(またはキメラタンパク質のFVIII部分)は、配列番号67のアミノ酸1~1438または配列番号65のアミノ酸1~2332(シグナル配列なしで)のFVIIIアミノ酸配列または配列番号64のアミノ酸1~19及び配列番号67の1~1438または配列番号64のアミノ酸1~19及び配列番号65のアミノ酸1~2332(シグナル配列を伴った)のFVIIIアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であってもよく、その際、FVIIIは凝固活性を有し、たとえば、補因子として第IX因子を活性化し、第X因子を活性化された第X因子に変換する。」(【0150】)
カ 「<210> 65<211> 4492<212> PRT続きを表示(全14行)<213> Artificial Sequence<220><223> Mature Factor VIII<400> 65Ala Thr Arg Arg Tyr Tyr Leu Gly Ala Val Glu Leu Ser Trp Asp Tyr1 5 10 15・・・Gln Asp Leu Tyr4490」(配列表の配列番号65)
2 訂正事項1についての判断
(1)訂正の目的について
審判請求人は、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである旨説明しているので、以下に検討する。
ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65(上記摘記事項ア、イ)については、明細書の【0144】に、2332残基のアミノ酸配列が記載されており(上記摘記事項イ)、配列表に、4492残基のアミノ酸配列が記載されている(上記摘記事項カ)。そして、後者は、そのN末端側に、前者の1~2160番目のアミノ酸残基(Ala1~Ser2160)が付加されている点で、両者は相違している。
ここで、明細書の【0146】、【0150】には、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65が2332残基のアミノ酸配列であることが記載されている(上記摘記事項ウ、オ)。
また、明細書の【0147】において引用されている(上記摘記事項エ)、本件特許の優先日の時点で公知の文献である、「ヒト第VIII因子の構造」と題する甲第1号証(Vehar,G.A.ら,Nature,312:337-342(1984)、以下、「甲1」という。)には、ヒト第VIII因子について、「成熟タンパク質は2332残基のアミノ酸を含む。」と記載されており(第337頁右欄下から第7~6行目。甲1は英語で記載されているため、当審による翻訳文で示す。)、本件特許の優先日の時点で公知の文献である、「第VIII因子のBドメインの機能的役割」と題する甲第2号証(Pipe, S.W.,Haemophilia, 15:1187-1196(2009)、以下、「甲2」という。)にも、「第VIII因子の遺伝子は26個のエクソンで構成され、それは、19残基のアミノ酸であるシグナルペプチドと2332残基のアミノ酸である成熟タンパク質であるポリペプチド鎖をコードしている。」と記載されている(第1187頁右欄第5~7行目。甲2は英語で記載されているため、当審による翻訳文で示す。)。
さらに、甲1には、
「」と記載されており(甲1の図3)、甲1に記載されている、このヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列は、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列と同一である。
そうすると、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65は、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列が正しく、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列は誤記であると理解できる。
よって、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へと訂正する、上記訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。
また、審判請求人は、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある旨説明しているので、以下に検討する。
ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65について、配列表の記載内容(配列番号65は、4492残基のアミノ酸からなる。)は、明細書の【0146】および【0150】の記載内容(配列番号65は、2332残基のアミノ酸からなる、)や【0147】において引用された甲1及び甲2の記載内容(ヒト成熟第VIII因子は2332残基のアミノ酸からなる。)との関係において、不合理を生じている。
よって、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へと訂正する、上記訂正事項1は、上記不合理を正し、この不明瞭な記載を訂正により明瞭とするものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
(2)新規事項を追加するものではないこと
訂訂正事項1による訂正後の配列表の配列番号65のアミノ酸配列は、願書に最初に添付した外国語書面(国際公開第2015/106052号)の明細書の[0157]の表3の配列番号65のアミノ酸配列の記載と一致する。
また、訂正事項1による訂正後の配列表の配列番号65のアミノ酸配列は、願書に添付した明細書の【0144】の表3の配列番号65のアミノ酸配列の記載と一致する。
したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては、外国語書面)に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でもあるから、特許法第126条第5項に規定される要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列は、上記(1)のとおり、願書に添付された特許請求の範囲及び明細書の記載、ならびに、本願特許の優先日における当業者の技術常識から、誤記であることが明らかであり、かつ、正しい記載も自明である。
訂正事項1は、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列の誤記を正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
また、上記(1)のとおり、配列表に記載されている配列番号65のアミノ酸配列を、明細書の【0144】に記載されている配列番号65のアミノ酸配列へ訂正する、上記訂正事項1は、ヒト成熟第VIII因子のアミノ酸配列である配列番号65のアミノ酸配列についての不合理を正し、明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定される要件に適合する。
(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正後の請求項1~24に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明でないとする理由は見出せない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項に規定される要件に適合する。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第2号及び/又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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