特許訂正審判
2024-390083
非ヒト動物におけるヒト化T細胞媒介性免疫応答
- 審判番号
- 2024-390083
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-552483
- 登録番号
- 6796597
- 請求日
- 2024年08月05日
- 審決日
- 2024年10月09日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 浩
- 審判官 小暮 道明
- 審判官 高堀 栄二
- 分類
- P141 .851-Y (C12N) / P141 .852-Y (C12N) / P141 .853-Y (C12N) / P141 .856-Y (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条、特許法第184条の19
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6796597号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6796597号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6796597号は、平成28年4月6日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2015年4月6日、2015年5月8日及び2015年6月30日 いずれも米国(US))として出願され、その請求項1~37に係る発明について令和2年11月18日に特許権の設定登録がされたものであり、その後、令和6年8月5日に本件の訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨および訂正の内容
本件審判の請求の趣旨は、特許第6796597号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
そして、本件審判の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、概ね、以下の訂正事項1~14のとおりである(下線は訂正箇所を示すために当審が付した。)。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載される
「(e)再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びに再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、
「(e)マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びにマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に記載される
「前記CD4共受容体」を、
「前記キメラCD4共受容体」に訂正する。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に記載される
「内在性マウスMHC IIαポリペプチドのマウス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」を、
「内在性マウスMHC IIαポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」に訂正する。
4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項20に記載される
「前記キメラヒト/マウスMHCIIαポリペプチド及び前記キメラMHC IIβポリペプチドを含むキメラヒト/マウスMHC II複合体」を、
「前記キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチド及び前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチドを含むキメラMHC II複合体」に訂正する。
5 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項20に記載される
「第6の核酸」を、
「第6の核酸配列」に訂正する。
6 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項20に記載される
「(e)T細胞において再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びにT細胞において再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、
「(e)マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びにマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」に訂正する。
7 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項24に記載される
「前記マウス内因性β2ミクログロブリン遺伝子ののエキソン2、エキソン3、及びエキソン4」を、
「前記マウス内因性β2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、エキソン3、及びエキソン4」に訂正する。
8 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項26に記載される
「前記CD4共受容体」を、
「前記キメラCD4共受容体」に訂正する。
9 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項26に記載される
「請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物」を、
「請求項1に記載の遺伝子改変マウス」に訂正する。
10 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項30に記載される
「(e)T細胞において再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びにT細胞において再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、
「(e)マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列、並びにマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」に訂正する。
11 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項32に記載される
「内在性マウスCD8α T細胞共受容体プロモータ及び調節配列」を、
「内在性CD8α T細胞共受容体プロモータ及び調節配列」に訂正する。
12 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項33に記載される
「内在性マウスMHC IIαポリペプチドのマウス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」を、
「内在性マウスMHC IIαポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」に訂正する。
13 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項34に記載される
「内在性マウスCD8αポリペプチド座」を、
「内在性CD8αポリペプチド座」に訂正する。
14 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項36に記載される
「(i)ヒトTCRα定常領域に操作可能に連結しているTCRα可変ドメインをコードする核酸配列、(ii)ヒトTCRβ定常領域に操作可能に連結しているTCRβ可変ドメインをコードする核酸配列」を、
「(i)ヒトTCRα定常領域に操作可能に連結しているTCRα可変ドメインをコードする核酸配列、および(ii)ヒトTCRβ定常領域に操作可能に連結しているTCRβ可変ドメインをコードする核酸配列」に訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正事項1の内容
訂正事項1に係る訂正は、請求項1の(e)において、
(1-1)本件訂正前の「再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」を、本件訂正後に「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」とする訂正事項、及び
(1-2)本件訂正前の「再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」とする訂正事項
という2つの訂正事項からなるものである(下線は強調のため当審が付した。以降も同様である。)。
そこで、訂正事項1については、上記(1-1)の訂正について「訂正事項1-1」といい、上記(1-2)の訂正について「訂正事項1-2」といい、以下では必要に応じて両者を分けて検討することとする。
(2)訂正の目的
ア 訂正事項1-1について
訂正事項1-1に係る上記(1)の下線部の記載からみて、本件訂正前の請求項1では、
(ア)「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVα/Jα配列を形成する」こと、及び当該「再配列ヒトVα/Jα配列」が「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」こと
が特定されているところ、本件訂正後は、
(イ)「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVα/Jα配列を形成する」こと、及び当該「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」こと
が特定されているといえる。
上記(ア)及び(イ)を対比すると、本件訂正前後で、「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVα/Jα配列を形成する」ことは共通するものの、「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」と特定される配列が、本件訂正前は「再配列ヒトVα/Jα配列」であったものが、本件訂正後は「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」となっている点で相違している。
ここで、TCR遺伝子の再配列に関する技術常識からみて、再配列前のTCRα可変領域配列がTCRα定常領域配列に操作可能に連結していれば、当該連結は再配列後も維持されるといえる。さらにいえば、本件訂正後の請求項1の(e)には、上記訂正部分の後に、「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している前記再配列ヒトVα/Jα配列」なる記載があり、この点からも、当該連結が再配列後も維持されていることは明らかである。
そうすると、本件訂正後の「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」との特定は、当該「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」が再配列後に形成する「再配列ヒトVα/Jα配列」も「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」ことを特定しているといえる。
したがって、「再配列ヒトVα/Jα配列」が「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」点について、本件訂正前後で相違はないことになる。
よって、訂正事項1-1に係る訂正は、「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」について、「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」との特定を追加してより限定するものであるといえるから、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1-2について
訂正事項1-2に係る上記(1)の下線部の記載からみて、本件訂正前の請求項1では、
(ア)「非再配列TCRβ可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する」こと、及び当該「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列」が「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」こと
が特定されているところ、本件訂正後は、
(イ)「非再配列TCRβ可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する」こと、及び当該「非再配列TCRβ可変領域配列」が「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」こと
が特定されているといえる。
上記(ア)及び(イ)を対比すると、本件訂正前後で、「非再配列TCRβ可変領域配列」が再配列後に「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する」ことは共通するものの、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」と特定される配列が、本件訂正前は「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列」であったものが、本件訂正後は「非再配列TCRβ可変領域配列」となっている点で相違しており、訂正事項1-2は、上記アで検討した訂正事項1-1と軌を一にするものであるといえる。
そして、TCR遺伝子の再配列に関する技術常識からみて、再配列前のTCRβ可変領域配列がTCRβ定常領域配列に操作可能に連結していれば、当該連結は再配列後も維持されるといえる。さらにいえば、本件訂正後の請求項1の(e)には、上記訂正部分の後に、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している前記再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列」なる記載があり、この点からも、当該連結が再配列後も維持されていることは明らかである。
そうすると、上記アで示したのと同様の理由により、「再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列」が「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」点について、本件訂正前後で相違はないことになる。
したがって、訂正事項1-2に係る訂正は、「非再配列TCRβ可変領域配列」について、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」との特定を追加してより限定するものであるといえるから、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(3)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0181】には、次の記載がある。
「【0181】 …本発明の一実施形態において、遺伝子改変マウスであって、マウスが、例えば、そのゲノム中に、(a)…、(b)少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含み、マウスTCRα定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座、及び/又は少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント、及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含み、マウスTCRβ定常遺伝子配列に操作可能に連結している非再配列TCRβ可変遺伝子座、並びに場合により、(c)…を含む、遺伝子改変マウスが提供される。」
訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、上記(1)のとおりであるところ、上記下線部のとおり、「非再配列T細胞受容体(TCR)α可変遺伝子座」が「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している」こと、及び「非再配列TCRβ可遺伝子座」が「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している」ことは、本件特許明細書に記載されていた事項である。
したがって、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、「国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面」(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(4)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、上記(2)で検討したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、上記(3)で検討したとおり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(5)独立して特許を受けることができるものであること
上記(2)で検討したとおり、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(いわゆる独立特許要件)。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項1に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項1-1及び1-2に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2は請求項2についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項2において「(a)前記CD4共受容体」としていたのを、本件訂正後に「(a)前記キメラCD4共受容体」とするものである。
ここで、請求項2は請求項1を引用し、請求項1に係る発明の「遺伝子改変マウス」をさらに特定するものである。そして、本件訂正前の請求項2における「前記CD4共受容体」との記載の前に、同項中に「CD4共受容体」又はそれに類する文言はないところ、請求項1には、「キメラCD4共受容体」との文言がある。そうすると、本件訂正前の請求項2は、本来であれば「前記キメラCD4共受容体」と記載されるべきところを、「前記CD4共受容体」という誤った記載がなされていることは明らかである。
そして、上記のように解することを妨げる記載や、矛盾する記載は本件特許明細書等には存在しない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本来その意であることが本件特許明細書等の記載から明らかな内容に正すものといえるから、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で検討したとおり、本件特許明細書等の記載から、本件訂正前の請求項2の「前記CD4共受容体」との記載が、「前記キメラCD4共受容体」であることは明らかであって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(2)で検討したとおり、訂正事項2に係る訂正の前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)で検討したとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項2に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項2に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項2に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的
訂正事項3は請求項5についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項5において「(c)…内在性マウスMHC IIαポリペプチドのマウス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」としていたのを、本件訂正後に、「(c)…内在性マウスMHC IIαポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項5には、「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」との文言が6か所存在するところ、上記した1か所以外は、いずれも、「内在性マウス…ポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」と記載されており、「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」の直前に「マウス」との文言は付されていない。
そして、請求項5は「遺伝子改変マウス」に係る発明であって、「内在性マウス…ポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」との記載における「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」がマウスのものであることは明らかであるにもかかわらず、上記のとおり、「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」について、「マウス」との文言を付したものと付していないものが混在していたことから、本件訂正前の請求項5には、不明瞭な記載が存在していたといえる。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」についての表記を統一することにより、不明瞭となっていた記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものといえるから、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で示したとおり、本件訂正前の請求項5において「(c)…内在性マウスMHC IIαポリペプチドのマウス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」との記載における「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」がマウスのものであることは明らかであって、「膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」の直前の「マウス」との文言の有無でその意味する範囲は変らないから、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(2)で検討したとおり、訂正事項3に係る訂正の前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
4 訂正事項4~6について
訂正事項4~6は請求項20についての訂正であるため、まとめて検討する。
(1)訂正事項4について
ア 訂正事項4の内容
訂正事項4に係る訂正は、請求項20において、
(4-1)本件訂正前の「前記キメラMHC IIβポリペプチド」を、本件訂正後に「前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチド」とする訂正事項、及び
(4-2)本件訂正前の「キメラヒト/マウスMHC II複合体」を、本件訂正後に「キメラMHC II複合体」とする訂正事項
という2つの訂正事項からなるものである。
そこで、訂正事項4については、上記(4-1)の訂正について「訂正事項4-1」といい、上記(4-2)の訂正について「訂正事項4-2」といい、以下では両者を分けて検討することとする。
イ 訂正の目的
(ア)訂正事項4-1について
本件訂正前の請求項20の(c)には、「(c)…前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチドが、…を含み、前記マウスは、前記キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチド及び前記キメラMHC IIβポリペプチドを含む」(当審注:改行は省略している。)との記載がある。
ここで、本件訂正前の請求項20には、「前記キメラMHC IIβポリペプチド」との記載の前に、「キメラMHC IIβポリペプチド」との文言はないところ、上記のとおり、「キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチド」との文言がある。そうすると、本件訂正前の請求項20において、本来であれば「前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチド」と記載されるべきところを、「前記キメラMHC IIβポリペプチド」という誤った記載がなされていることは明らかである。
そして、上記のように解することを妨げる記載や、矛盾する記載は本件特許明細書等には存在しない。
したがって、訂正事項4-1に係る訂正は、本来その意であることが本件特許明細書等の記載から明らかな内容に正すものといえるから、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(イ)訂正事項4-2について
本件訂正前の請求項20の(c)には、「(c)…前記マウスは、…を含むキメラヒト/マウスMHC II複合体を発現し、前記キメラMHC II複合体は、前記キメラヒト/マウスCD4共受容体と結合することができ」(当審注:改行は省略している。)との記載がある。
ここで、本件訂正前の請求項20には、「前記キメラMHC II複合体」との記載の前に、「キメラMHC II複合体」との文言はないところ、上記のとおり、「キメラヒト/マウスMHC II複合体」との文言がある。そうすると、本件訂正前の請求項20において、「前記キメラMHC II複合体」が、「キメラヒト/マウスMHC II複合体」のことであることは明らかであるにもかかわらず、両者の文言が統一されていないため、本件訂正前の請求項20には、不明瞭な記載が存在していたといえる。
したがって、請求項20において、本件訂正前の「キメラヒト/マウスMHC II複合体」を、本件訂正後に「キメラMHC II複合体」とする訂正事項4-2に係る訂正は、「キメラヒト/マウスMHC II複合体」及び「キメラMHC II複合体」という2種類の表記を「キメラMHC II複合体」に統一することにより、不明瞭となっていた記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものといえるから、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項4-1について
上記イ(ア)で検討したとおり、本件特許明細書等の記載から、本件訂正前の請求項20の「前記キメラMHC IIβポリペプチド」との記載が、「前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチド」であることは明らかであって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項4-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項4-1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ)訂正事項4-2について
訂正事項4に係る訂正により、本件訂正前の請求項20の「(c)…前記マウスは、前記キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチド及び前記キメラMHC IIβポリペプチドを含むキメラヒト/マウスMHC II複合体を発現し」との記載が、本件訂正後は「(c)…前記マウスは、前記キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチド及び前記キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチドを含むキメラMHC II複合体を発現し」となった。
訂正事項4-2に係る訂正は、本件訂正前の請求項20の「キメラヒト/マウスMHC II複合体」との記載から、「ヒト/マウス」という特定事項を削除して、「キメラMHC II複合体」とするものといえるものの、上記のとおり、本件訂正後の「キメラMHC II複合体」は、「キメラヒト/マウスMHC IIαポリペプチド」及び「キメラヒト/マウスMHC IIβポリペプチド」を含むものであるから、当該「キメラMHC II複合体」が、ヒト/マウスのキメラすなわち「キメラヒト/マウスMHC II複合体」であることは明らかである。
したがって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項4-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項4-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
エ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(ア)訂正事項4-1について
上記ウ(ア)で検討したとおり、訂正事項4-1に係る訂正の前後でその意味する範囲は変わらないから、訂正事項4-1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項4-2について
上記ウ(イ)で検討したとおり、訂正事項4-2に係る訂正の前後でその意味する範囲は変わらないから、訂正事項4-2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項20において「(d)…キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第6の核酸」としていたのを、本件訂正後に、「(d)…キメラヒト/マウスMHC Iポリペプチドをコードする第6の核酸配列」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項20には、「ポリペプチドをコードする…核酸配列」との文言が5か所存在し、上記した1か所のみが、「ポリペプチドをコードする…核酸」と「配列」との文言が付されていないものとなっている。
そして、本件出願時の技術常識からみて、請求項20に記載された「ポリペプチドをコードする…核酸配列」と「ポリペプチドをコードする…核酸」が同義であることは明らかであるにもかかわらず、2種類の文言が用いられているため、本件訂正前の請求項20には、不明瞭な記載が存在していたといえる。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、「核酸配列」及び「核酸」という2種類の表記を「核酸配列」に統一することにより、不明瞭となっていた記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものといえるから、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アで示したとおり、本件訂正前の請求項20において「ポリペプチドをコードする…核酸配列」と、「ポリペプチドをコードする…核酸」とが同義であることは明らかであって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記イで検討したとおり、訂正事項5に係る訂正の前後でその意味する範囲は変わらないから、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(3)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、請求項20の(e)において、
(6-1)本件訂正前の「T細胞において再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」を、本件訂正後に「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」とする訂正事項、及び
(6-2)本件訂正前の「T細胞において再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」とする訂正事項
という2つの訂正事項からなるものである。
そこで、訂正事項6については、上記(6-1)の訂正について「訂正事項6-1」といい、上記(6-2)の訂正について「訂正事項6-2」という。
ここで、訂正事項6-1及び6-2に関する上記下線部を、上記1(1)で示した訂正事項1-1及び1-2とそれぞれ対比すると、訂正事項6-1及び6-2が対象とする請求項20では「T細胞において」なる文言による特定が追加されてはいるものの、訂正事項6-1及び6-2に係る訂正は訂正事項1-1及び1-2に係る訂正とそれぞれ軌を一にするものである。
そうすると、上記1(2)~(4)で検討したのと同様の理由により、訂正事項6-1及び6-2に係る訂正は、いずれも、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法126条6項の規定に適合する。
(4)訂正後の請求項20に係る発明が独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)イ(ア)のとおり、訂正事項4-1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、また、上記(3)のとおり、訂正事項6-1及び6-2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項20に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項20に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項20に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項4-1、6-1及び6-2に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
5 訂正事項7について
(1)訂正の目的
訂正事項7は、請求項24についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項24において「前記マウス内因性β2ミクログロブリン遺伝子ののエキソン2、エキソン3、及びエキソン4」としていたのを、本件訂正後に「前記マウス内因性β2ミクログロブリン遺伝子のエキソン2、エキソン3、及びエキソン4」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項24は、本来であれば「遺伝子のエキソン2」と記載されるべきところを、「遺伝子ののエキソン2」という誤った記載がなされていることは明らかである。
そして、上記のように解することを妨げる記載や、矛盾する記載は本件特許明細書等には存在しない。
したがって、訂正事項7に係る訂正は、本来その意であることが本件特許明細書等の記載から明らかな内容に正すものといえるから、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で検討したとおり、本件特許明細書等の記載から、本件訂正前の請求項24の「遺伝子ののエキソン2」との記載が、「遺伝子のエキソン2」であることは明らかであって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項7に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項7に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(2)で検討したとおり、訂正事項7に係る訂正の前後で意味する範囲は変らないから、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(4)独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)で検討したとおり、訂正事項7に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項24に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項24に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項24に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項7に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
6 訂正事項8及び9について
訂正事項8及び9は請求項26についての訂正であるため、まとめて検討する。
(1)訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項26において「前記CD4共受容体」としていたのを、本件訂正後に「(a)前記キメラCD4共受容体」とするものである。
ここで、訂正事項8に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正と軌を一にするものであるから、上記2で検討したのと同様の理由により、訂正事項8に係る訂正は、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、本件訂正前の請求項26において「請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法」としていたのを、本件訂正後に「請求項1に記載の遺伝子改変マウスを作製する方法」とするものである。
ここで、請求項26は請求項1を引用し、請求項1に係る発明の「遺伝子改変マウス」をさらに特定するものであるから、本件訂正前の請求項2は、本来であれば「請求項1に記載の遺伝子改変マウス」と記載されるべきところを、「請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物」という誤った記載がなされていることは明らかである。
そして、上記のように解することを妨げる記載や、矛盾する記載は本件特許明細書等には存在しない。
したがって、訂正事項9に係る訂正は、本来その意であることが本件特許明細書等の記載から明らかな内容に正すものといえるから、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アで検討したとおり、本件特許明細書等の記載から、本件訂正前の請求項26の「請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物」との記載が、「請求項1に記載の遺伝子改変マウス」であることは明らかであって、本件訂正前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項9に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項9に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記イで検討したとおり、訂正事項9に係る訂正の前後で意味する範囲は変らないから、訂正事項9に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
(3)訂正後の請求項26に係る発明が独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)及び(2)アのとおり、訂正事項8及び9に係る訂正は、特許法126条1項ただし書き2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項26に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項26に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項26に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項8及び9に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
7 訂正事項10について
(1)訂正事項10に係る訂正は、請求項30の(e)において、
(10-1)本件訂正前の「T細胞において再配列してマウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」を、本件訂正後に「マウスTCRα定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVα/Jα配列を形成する少なくとも1つのヒトVαセグメント及び少なくとも1つのヒトJαセグメントを含む非再配列T細胞受容体(TCR)α可変領域配列」とする訂正事項、及び
(10-2)本件訂正前の「T細胞において再配列してマウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」を、「マウスTCRβ定常領域配列に操作可能に連結している、T細胞において再配列して再配列ヒトVβ/Dβ/Jβ配列を形成する少なくとも1つのヒトVβセグメント、少なくとも1つのヒトDβセグメント及び少なくとも1つのヒトJβセグメントを含む非再配列TCRβ可変領域配列」とする訂正事項
という2つの訂正事項からなるものである。
そこで、訂正事項10については、上記(10-1)の訂正について「訂正事項10-1」といい、上記(10-2)の訂正について「訂正事項10-2」という。
ここで、訂正事項10-1及び10-2に関する上記下線部を、上記1(1)で示した訂正事項1-1及び1-2とそれぞれ対比すると、訂正事項10-1及び10-2が対象とする請求項20では「T細胞において」なる文言による特定が追加されてはいるものの、訂正事項10-1及び10-2に係る訂正は訂正事項1-1及び1-2に係る訂正とそれぞれ軌を一にするものである。
そうすると、上記1(2)~(4)で検討したのと同様の理由により、訂正事項10-1及び10-2に係る訂正は、いずれも、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法126条6項の規定に適合する。
(2)独立して特許を受けることができるものであること
上記(1)で検討したとおり、訂正事項10-1及び10-2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項30に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項30に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項30に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項10-1及び10-2に係る訂正は特許法126条7項に適合する。
8 訂正事項11について
(1)訂正の目的
訂正事項11は請求項32についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項32において「(b)…内在性マウスCD8α T細胞共受容体プロモータ」としていたのを、本件訂正後に、「(b)…内在性CD8α T細胞共受容体プロモータ」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項32には、「内在性」との文言が16か所存在するところ、上記した1か所以外は、「内在性」の直後に「マウス」との文言は付されていない。
そして、請求項32は「遺伝子改変マウス胚性幹細胞」に係る発明であるから、「内在性」のものがマウスのものであることは明らかであるにもかかわらず、上記のとおり、「内在性」について、「マウス」との文言を付したものと付していないものが混在していたことから、本件訂正前の請求項32には、不明瞭な記載が存在していたといえる。
したがって、訂正事項11に係る訂正は、「内在性」についての表記を統一することにより、不明瞭となっていた記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものといえるから、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で示したとおり、本件訂正前の請求項32において、「内在性」のものがマウスのものであることは明らかであって、「内在性」の直後の「マウス」との文言の有無でその意味する範囲は変らないから、訂正事項11に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項11に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(2)で検討したとおり、訂正事項11に係る訂正の前後でその意味する範囲は変らないから、訂正事項11に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
9 訂正事項12について
訂正事項12は請求項33についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項33において「(c)…内在性マウスMHC IIαポリペプチドのマウス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」としていたのを、本件訂正後に、「(c)…内在性マウスMHC IIαポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン」とするものである。
ここで、上記下線部からみて、訂正事項12に係る訂正は、訂正事項3に係る訂正と軌を一にするものであるから、上記3で検討したのと同様の理由により、訂正事項12に係る訂正は、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法126条6項の規定に適合する。
10 訂正事項13について
訂正事項13は請求項34についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項34において「(b)…(i)…内在性マウスCD8αポリペプチド座」としていたのを、本件訂正後に、「(b)…(i)…内在性CD8αポリペプチド座」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項34には、「内在性」との文言が19か所存在するところ、上記した1か所以外は、「内在性」の直後に「マウス」との文言は付されていない点、及び請求項34は「遺伝子改変マウス胚性幹細胞」に係る発明である点で、訂正事項13に係る訂正は、訂正事項11に係る訂正と軌を一にするものであるから、上記8で検討したのと同様の理由により、訂正事項13に係る訂正は、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法126条6項の規定に適合する。
11 訂正事項14について
(1)訂正の目的
訂正事項14は請求項36についての訂正であるところ、本件訂正前の請求項36において「(i)…をコードする核酸配列、(ii)…をコードする核酸配列を発現させる」としていたのを、本件訂正後に、「(i)…をコードする核酸配列、および(ii)…をコードする核酸配列を発現させる」とするものである。
ここで、本件訂正前の請求項36の記載から、(i)の核酸配列と(ii)の核酸配列の両方を発現させると解するのが一般的であるとはいえるものの、そのように解することが接続詞等により明示的に示されてはいなかったため、本件訂正前の請求項36には、不明瞭な記載が存在していたといえる。
一方、本件訂正後の請求項36の記載からは、「および」との接続詞が追加されたため、(i)の核酸配列と(ii)の核酸配列の両方を発現させることが明示的に示されたといえる。
したがって、訂正事項14に係る訂正は、不明瞭となっていた記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものといえるから、特許法126条1項ただし書き3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で示したとおり、本件訂正前の請求項36においても、(i)の核酸配列と(ii)の核酸配列の両方を発現させると解するのが一般的であったところ、本件訂正後はそれを明瞭にしたものといえるから、訂正事項14に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項14に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法184条の19の規定によって読み換えて適用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(2)で検討したとおり、本件訂正前の請求項36においても、(i)の核酸配列と(ii)の核酸配列の両方を発現させると解するのが一般的であったところ、本件訂正後はそれをさらに明瞭にしたものであるから、訂正事項14に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条6項の規定に適合する。
第4 むすび
以上からみて、本件審判請求における特許請求の範囲に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号、2号又は3号に規定する事項を目的とし、かつ、同条5項~7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-390083