特許訂正審判
2026-390007
微小ガイダンス及びナビゲーションコントロール(miniGNC)抗体様タンパク質、その製造方法及び使用方法
- 審判番号
- 2026-390007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2022-555924
- 登録番号
- 7503642
- 請求日
- 2026年01月09日
- 審決日
- 2026年03月25日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】システィミューン, インク.
- 【請求人代理人】SK弁理士法人
- 【請求人】バイリ-バイオ(チェンドゥ)ファーマスーティカル シーオー.,エルティーディー.
- 【請求人代理人】SK弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 浩
- 審判官 高堀 栄二
- 審判官 竹内 祐樹
- 分類
- P141 .852-Y (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第184条の19、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7503642号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7503642号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7503642号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2022-555924号)は、令和 3年 3月17日(パリ条約による優先権主張2020年 3月 17日 米国(US))を国際出願日として出願されたものであって、その請求項1~12に係る発明(以下、これらを総称して「本件発明」という。)について令和 6年 6月12日に特許権の設定登録がなされた。
これについて、令和 8年 1月 9日に本件訂正審判が請求された。
第2 訂正の趣旨および訂正の内容
1 請求の趣旨
本件請求の趣旨は、特許第7503642号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
2 訂正の内容
請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部が本件訂正の箇所である。)。なお、本件訂正前の特許請求の範囲の記載からみて、本件審判請求書の「訂正事項」における「PD-LI」との記載は、「PD-L1」の誤記と認める。
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1に、
「配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、」
と記載されているのを、
「配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4がEGFRに対して結合特異性を有し、D5がHER3に対して結合特異性を有し、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~12も同様に訂正する。)。
第3 当審の判断
1 特許請求の範囲及び明細書の記載事項
本件特許の特許請求の範囲及び明細書には、次の事項が記載されている。下線は当審による。
(1)特許請求の範囲
ア 請求項1
「【請求項1】
N末端及びC末端を有する五重特異性抗体様タンパク質であって、
第1単量体及び第2単量体を含み、
前記第1単量体は、N末端からC末端まで第1結合単量体、CH1ドメイン、第1ヒンジ、第1CH2ドメイン、及び第1CH3ドメインを含み、前記第1単量体は、N末端に結合した第1結合ドメイン(D1)及び末端に結合した第4結合ドメイン(D4)を含み、
前記第2単量体は、N末端からC末端まで第2結合単量体、CLドメイン、第2ヒンジ、第2CH2ドメイン及び第2CH3ドメインを含み、前記第2単量体は、N末端に結合した第2結合ドメイン(D2)及びC末端に結合した第5結合ドメイン(D5)を含み、
前記第1結合単量体及び前記第2結合単量体は、二量体を形成するように構成され、
前記第1単量体及び前記第2単量体は、CH1ドメインとCLドメインの間の少なくとも1つのジスルフィド結合、及び第1ヒンジと第2ヒンジの間の少なくとも1つのジスルフィド結合を介して共有結合でペアとなり、
前記第1結合単量体は、VHドメインを含み、前記第2結合単量体は、VLドメインを含み、前記VH、CH1、VL、CLドメインは、Fab領域を第3結合ドメイン(D3)として形成し、或いは前記第1結合単量体及び前記第2結合単量体は、NKG2D受容体を第3結合ドメイン(D3)として形成し、
前記五重特異性抗体様タンパク質は、
配列番号17に示されるアミノ酸配列及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号21に示されるアミノ酸配列及び配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号25に示されるアミノ酸配列及び配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号29に示されるアミノ酸配列及び配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がCD3に対して結合特異性を有し、D3がHER3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号69に示されるアミノ酸配列及び配列番号71に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号73に示されるアミノ酸配列及び配列番号75に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号77に示されるアミノ酸配列及び配列番号79に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号81に示されるアミノ酸配列及び配列番号83に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号85に示されるアミノ酸配列及び配列番号87に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号89に示されるアミノ酸配列及び配列番号91に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がEGFRに対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号93に示されるアミノ酸配列及び配列番号95に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号129に示されるアミノ酸配列及び配列番号131に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD20に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号133に示されるアミノ酸配列及び配列番号135に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD20に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号149に示されるアミノ酸配列及び配列番号151に示されるアミノ酸配列を含み、D1がEGFRに対して結合特異性を有し、D2がHER3に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号169に示されるアミノ酸配列及び配列番号171に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がNKG2D受容体であり、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号173に示されるアミノ酸配列及び配列番号175に示されるアミノ酸配列を含み、D1がNKG2D受容体であり、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がCD3に対して結合特異性を有し、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、又は
配列番号177に示されるアミノ酸配列及び配列番号179に示されるアミノ酸配列を含み、D1がCD3に対して結合特異性を有し、D2がCD19に対して結合特異性を有し、D3がNKG2D受容体であり、D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有する、五重特異性抗体様タンパク質。」
(2)明細書
ア 段落【0050】
「【0050】
一実施形態において、前記抗体は、五重特異性である。一実施形態において、前記抗体様タンパク質は、EGFR、HER3、CD3、4-1BB及びPD-L1に対して結合特異性を有し得る。一実施形態において、五重特異性抗体様タンパク質は、配列番号17及び19、21及び23、25及び27、29及び31、69及び71、73及び75、77及び79、81及び83、85及び87、89及び91、93及び95、97及び99、129及び131、133及び135、149及び151、169及び171、173及び175、又は177及び179と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。」
イ 段落【0078】
「【0078】
本発明は、miniGNC抗体、特に五重特異性miniGNC抗体(ペンタminiGNC Ab)の製造及び使用方法に関する。・・・GNC抗体は通常、抗原結合ドメイン(AgBD)の数が増加したため、IgG抗体よりも大きく、T細胞と腫瘍細胞の両方に結合するための空間的柔軟性を提供する。一方、miniGNC抗体は、ヒトIgGの150kDと比較して、ヒトIgG抗体とおおよそ同じサイズを保持し、二重特異性では110-130kD、三重特異性では120-160、四重特異性では130-190kD、五重特異性では140-220kDである。・・・」
ウ 段落【0105】
「【0105】
構造的に多様化された1つ又は複数の抗原結合ドメインをD1、D2、D4又はD5としてminiGNC分子の2つのN末端及び2つのC末端に付加することにより、最大5つの結合特異性を形成することができる。これらの付加結合ドメインのそれぞれは、scFv及びVHHなどの可変配列に基づく構造、又はリガンド及び受容体などの非可変配列に基づく構造であり得る。図1に示すように、D1及びD2は、それぞれ鎖A及び鎖BのN末端に結合した結合ドメインを指し、D4及びD5は、それぞれ鎖A及び鎖BのC末端に結合した結合ドメインを指す。従って、五重特異性miniGNC(ペンタminiGNC)抗体の2つのポリペプチドは、以下のように構成され得る。
鎖A:N-D1-D3(VH)-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-D4-C
鎖B:N-D2-D3(VL)-CL-ヒンジ-CH2-CH3-D5-C
・・・」
エ 段落【0106】
「【0106】
結合ドメインの数及びそれらの結合特異性に応じて、1つ又は複数の結合ドメインを減少させてテトラ、トリ及びバイminiGNCにすることにより図1のペンタminiGNC抗体の構造を簡略化することができる。例えば、表1は、EGFR及びHER3を標的とする効果を最適化するための抗CD3miniGNC抗体のファミリーの生成及び特徴付けを示す。この場合、各結合ドメインは、1つの結合特異性を発揮する。その5つの結合ドメインのうちの2つが抗原の同じエピトープを標的とする(即ち、同じ結合特異性を有する)場合、このペンタminiGNC抗体は、四重特異性ペンタminiGNC抗体となる。」
オ 段落【0129】
「【0129】
第3グループの多重特異性miniGNC抗体は、EGFR及びHER3に対するVHH結合ドメインを有するように作成及び構成された(Gottlin et al.,2009;Eliseev et al.,2018)(表3)。五重、三重及び二重特異性単一ドメイン可変領域(VHH)が組み込まれたminiGNC分子は、合理的な力価で構築及び精製された。各多重特異性miniGNC(SI-75P5(配列番号93,95)、SI-75P8(配列番号97,99)、SI-75X4(配列番号101,103)、SI-75X17(配列番号105,107)、SI-75X19(配列番号109,111)、SI-75X9(配列番号113-115)、SI-75X11(配列番号117,119)、SI-75X15(配列番号121,123)及びSI-75X13(配列番号125,127)のドメインの結合活性は、Octetにより確定された。・・・ForteBio Data Analysisソフトウェア(バージョン11)の1対1結合モデルを用いてKD値を計算して表に示した。データは、VHHが組み込まれたminiGNCプラットフォームにおいてすべてのドメインが高い親和性を保持することを示している。」
カ 【表1】
「【0144】
【表1】
[図:0001437337000001.jpg]
」
キ 【表2】
「【0145】
【表2】
[図:0001437337000002.jpg]
」
ク 【表3】
「【0146】
【表3】
[図:0001437337000003.jpg]
」
ケ 段落【0153】
「【0153】
配列表
[図:0001437337000004.jpg]
・・・
[図:0001437337000005.jpg]
・・・
[図:0001437337000006.jpg]
・・・
[図:0001437337000007.jpg]
・・・
>Sequence ID 97: SI-75P8 Chain A Amino Acid Sequence
EVQLQESGGGLVQAGDSLSLSCLVSGRSFNSYTMGWFRQAPGKEREFVAAILWSGPTTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAALGVLVLAPGNVYSYWGQGTQVTVSSGGGGSGGGGSQVQLQESGGRLVQPGEPLSLTCKTSGIDLSSNAIGWVRQAPGKGLEWIGVIFGSGNTYYASWAKGRFTISRSTSTVYLKMNSLRSEDTAIYYCARGGYSSDIWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGGGGGSGGGGSQVQLQQSGPGLVKPSETLSITCTVSGFSLTNYGVHWIRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRFTITKDNSKNQVYFKLRSVRADDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEIVLTQSPSTLSVSPGERATFSCRASQSIGTNIHWYQQKPGKPPRLLIKYASESISGIPDRFSGSGSGTEFTLTISSVQSEDFAVYYCQQNNNWPTTFGPGTKLTVL
・・・
>Sequence ID 99: SI-75P8 Chain B Amino Acid Sequence
QVQLVQSGGGLVQAGGSLSLSCAFSGRTFSMYTMGWFRQAPGKEREFVAANRGRGLSPDIADSVNGRFTISRDNAKNTLYLQMDSLKPEDTAVYYCAADLQYGSSWPQRSSAEYDYWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSDPQLTQSPSSLSATVGQRVTINCQSSQSVAKNNNLAWFQQKPGKPPKLLIYSASTLAAGVPSRFSGSGSGTQFTLTITRVQSEDFATYYCSARDSGNIQSFGGGTRVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECGGDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGGGGGSGGGGSQVQLQESGGGLVKPGGSLSLSCAASGFTFSSYWMSWVRQAPGKGLEWVANINRDGSASYYVDSVKGRFTISRDDAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGVGYFDLWGRGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNFVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSDRPSGVSDRFSGSKSGNTASLIISGLQADDEADYYCSSYGSSSTHVIFGGGTKVTVL
・・・
>Sequence ID 203: αEGFR VH Amino Acid Sequence
QVQLQQSGPGLVKPSETLSITCTVSGFSLTNYGVHWIRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRFTITKDNSKNQVYFKLRSVRADDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSS
・・・
>Sequence ID 205: αEGFR VL Amino Acid Sequence
EIVLTQSPSTLSVSPGERATFSCRASQSIGTNIHWYQQKPGKPPRLLIKYASESISGIPDRFSGSGSGTEFTLTISSVQSEDFAVYYCQQNNNWPTTFGPGTKLTVL
・・・
>Sequence ID 255: αHER3 VH Amino Acid Sequence
QVQLQESGGGLVKPGGSLSLSCAASGFTFSSYWMSWVRQAPGKGLEWVANINRDGSASYYVDSVKGRFTISRDDAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDRGVGYFDLWGRGTLVTVSS
・・・
>Sequence ID 257: αHER3 VL Amino Acid Sequence
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNFVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSDRPSGVSDRFSGSKSGNTASLIISGLQADDEADYYCSSYGSSSTHVIFGGGTKVTVL
・・・
>Sequence ID 263: EGFR VHH Amino Acid Sequence
EVQLQESGGGLVQAGDSLSLSCLVSGRSFNSYTMGWFRQAPGKEREFVAAILWSGPTTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAALGVLVLAPGNVYSYWGQGTQVTVSS
・・・
>Sequence ID 265: HER3 VHH Amino Acid Sequence
QVQLVQSGGGLVQAGGSLSLSCAFSGRTFSMYTMGWFRQAPGKEREFVAANRGRGLSPDIADSVNGRFTISRDNAKNTLYLQMDSLKPEDTAVYYCAADLQYGSSWPQRSSAEYDYWGQGTTVTVSS
・・・」
2 訂正事項1についての判断
(1)訂正の目的について
ア 請求人は、訂正事項1について、誤記の訂正を目的とするものである旨を主張しているので、まず、訂正事項1が誤記の訂正を目的とするものであるか検討する。
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
そこで、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において(1(1)ア)、配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含む五重特異性抗体様タンパク質の結合特異性のうち、第4結合ドメイン(D4)が結合特異性を有する対象を「4-1BB」、第5結合ドメイン(D5)が結合特異性を有する対象を「PD-L1」と記載したものがそれぞれ明らかな誤りであって、かつ、当該記載は第4結合ドメイン(D4)が結合特異性を有する対象が「EGFR」であり、第5結合ドメイン(D5)が結合特異性を有する対象が「HER3」であることを意味すると客観的に認められるものであったかについて検討する。
イ 本件特許の明細書(以下、単に「明細書」ともいう。)には、五重特異性抗体様タンパク質の一例として配列番号97及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含むものが挙げられるとともに(1(2)ア)、配列番号97及び配列番号99に対応する多重特異性miniGNC抗体のサンプル番号が「SI-75P8」であることが示されている(1(2)オ、ケ)。また、明細書の表3には、多重特異性miniGNC抗体の各結合ドメインについて、1対1結合モデルを用いて計算したKD値が示されており(1(2)オ、ク)、「SI-75P8」の結合ドメインはD1が「αEGFR VHH」、D2が「αHER3 VHH」、D3が「αCD3*」、D4が「αEGFR」、D5が「αHER3」と記載されている。
ここで、「αEGFR」及び「αHER3」は、それぞれEGFR及びHER3に対して結合特異性を有する結合ドメインであると当然に解されるから、明細書には、配列番号97及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含む五重特異性抗体様タンパク質である「SI-75P8」がD4として「EGFR」に結合特異性を有するドメインを含み、D5として「HER3」に結合特異性を有するドメインを含むことが記載されていることになるが、これは、配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含む五重特異性抗体様タンパク質の結合特異性のうち、第4結合ドメイン(D4)が結合特異性を有する対象を「4-1BB」、第5結合ドメイン(D5)が結合特異性を有する対象を「PD-L1」と記載した本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載と整合せず、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載又は明細書の記載のいずれかに誤りがあることは明らかである。
ウ そこで、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載又は明細書の記載のいずれに誤りがあるかについて検討する。
明細書の段落【0153】には、配列表として、αEGFRのアミノ酸配列が配列番号203(VH)及び配列番号205(VL)であること、及び、αHER3のアミノ酸配列が配列番号255(VH)及び配列番号257(VL)であることが示されるとともに、配列番号97、配列番号99、配列番号203及び配列番号205の具体的なアミノ酸配列も示されている(1(2)ケ)。そして、これらのアミノ酸配列を比較すると、配列番号97はC末端側、すなわち、D4に対応する位置に配列番号203及び配列番号205を含み、配列番号99はC末端側、すなわち、D5に対応する位置に配列番号255及び配列番号257を含む関係にあり、これは、「SI-75P8」がD4として「αEGFR」を含み、D5として「αHER3」を含むとする表3の記載と整合する。
さらに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、配列番号97及び配列番号99以外にも多数の配列番号の組み合わせが列挙されているが(1(1)ア)、これらの配列番号は、本件特許の明細書の段落【0050】に五重特異性抗体様タンパク質のアミノ酸配列として列挙される配列番号の組み合わせ(1(2)ア)と、配列番号97及び配列番号99を含め全ての組み合わせで一致している。また、明細書の他の記載をみても、ほかに五重特異性抗体様タンパク質のアミノ酸配列を示すと解釈できるような配列番号の組み合わせの記載はない。
そうすると、本件明細書の記載が正しく、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載に誤りがあることが明らかであり、さらに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1においては、「配列番号97に示されるアミノ酸配列及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含み」が正しく記載されたものであるとともに、「D4が4-1BBに対して結合特異性を有し、D5がPD-L1に対して結合特異性を有し、」との記載に誤りがあることが客観的に認められる。
そして、上述した明細書の記載によれば、D4が結合特異性を有する対象は「4-1BB」ではなく「EGFR」であり、D5が結合特異性を有する対象は「PD-L1」ではなく「HER3」であるべきことも明らかである。
エ 本件訂正により特許請求の範囲の請求項1において、D4が結合特異性を有する対象が「EGFR」であり、D5が結合特異性を有する対象が「HER3」であるとすると、D1及びD2の結合対象と抗原が重複することとなり、請求項1における「五重特異性抗体様タンパク質」との記載との間に一見では不整合を生じ得るようにもみえることから、この点についても念のため検討する。
明細書の段落【0078】、【0105】及び【0106】をみると(1(2)イ~エ)、「五重特異性miniGNC」が「ペンタminiGNC」と言い換えられ、結合特異性の数に応じてminiGNCのサイズの範囲が記載されるとともに、結合ドメインの数及び結合特異性を減少させたものが「テトラ、トリ及びバイminiGNC」と称されている。
すなわち、明細書において、「~重特異性」とギリシャ語接頭辞(「ペンタ」、「テトラ」、「トリ」及び「バイ」)とは、原則的に結合ドメインの数及び結合特異性の数のいずれとも同義の語として扱われている。一方、明細書の段落【0106】にはその例外も記載されており(1(2)エ)、結合ドメインのうちの2つが抗原の同じエピトープを標的とする場合には、「~重特異性」が結合特異性の数を意味し、ギリシャ語接頭辞が結合ドメインの数を意味する語として区別して扱われている。この解釈は、明細書の他の記載、例えば、表1~2(1(2)カ~キ)におけるギリシャ語接頭辞の記載とも整合する。
そして、「SI-75P8」において、D1とD4及びD2とD5とは、結合対象の抗原は同一であるものの、明細書の配列表をみると(1(2)ケ)、CDRを含むアミノ酸配列が大きく異なっているし、明細書の他の記載をみても、両者において標的とするエピトープまでもが同一であると解すべき事情は見当たらない。
したがって、上記の明細書に記載される扱いに則れば、「SI-75P8」はその結合ドメインの数及び結合特異性の数に基づいて「五重特異性…」又は「ペンタ…」と称することになるのが明らかであって、これは、段落【0050】(1(2)ア)において「五重特異性抗体様タンパク質」の一例として配列番号97及び配列番号99に示されるアミノ酸配列を含むものが挙げられていることとも整合するから、本件訂正により、「五重特異性抗体様タンパク質」との記載との間に不整合が生じるものではない。
オ 以上より、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。
(2)国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
1(2)ア~ケに摘記した明細書の記載に対応する内容が本件国際出願日における国際出願の明細書にも記載されており(国際公開第2021/188736号の6頁第3段落、10頁第4段落~11頁第1段落、16頁第2~3段落、21頁第4段落~22頁第1段落、表1~3、32~114頁の配列表)、上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、明細書の記載と整合するように特許請求の範囲の請求項1の誤記を訂正するものであるから、「国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
よって、訂正事項は、特許法第184条の19により読み替えて適用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1において誤記があったものを正しく訂正するものであり、本件発明の内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1において誤記があったものを正しく訂正するものであり、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないから、訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定する要件に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2026-390007