特許訂正審判
2020-390069
マントルヒータ及びその製造方法
- 審判番号
- 2020-390069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2001-102589外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年08月07日
- 審決日
- 2020年12月03日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P141 .851-Y (F16L) / P141 .852-Y (F16L) / P141 .853-Y (F16L) / P141 .856-Y (F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第3752583号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第3752583号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る特許第3752583号(以下「本件特許」という。)は、平成13年3月30日に出願されたものであって、平成17年12月22日にその特許権の設定登録がなされ、令和2年8月11日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 審判請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」と記載されているのを、「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」に訂正し、また、特許請求の範囲の請求項1に「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シート」に訂正し、更に、特許請求の範囲の請求項1に「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし3も同様に訂正する)。
2 訂正事項2
明細書の段落【0007】に「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」と記載されているのを、「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、当該対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内層材と外層材」に訂正し、また、明細書の段落【0007】に「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した発熱体を取り付けた無機繊維製シート」に訂正し、更に、明細書の段落【0007】に「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」と記載されているのを、「前記形状に合わせて加工した断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に訂正する。
3 訂正事項3
明細書の段落【0032】に「同様にに」と記載されているのを、「同様に」に訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は、「対象物の外観形状に対応する形状に加工した柔軟性を有する合成樹脂シートからなる内装材と外装材」の「対象物」に対して「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれか」であること、
また、「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」及び「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に対して、「前記形状に合わせて加工した」ことをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
願書に添付した明細書の段落【0001】には、「本発明は、マントルヒータ及びその製造方法に係り、詳しくは精密器具や装置などの直管や曲管の配管、継手、弁など( 以下、配管という) の他、その精密器具や装置自体の保温または加熱を目的として用いるマントルヒータ及びその製造方法に関するものである。」と記載されており、マントルヒータを適用する対象物として、配管、継手、弁、精密器具及び装置自体が挙げられている。
また、上記明細書の段落【0027】には、「さらに、無機繊維製シート310及び不燃難燃繊維製シート410は、上記内層体110, 外層体210と同様に所定の曲がりを有し、かつ略半円筒状をなす2つの構成体311,411に成形されている。」、段落【0032】には、「さらに、マントルヒータ17の場合は、内層材110及び外層材210を屈曲形状に成形させ、無機繊維製シート310,410も同様にに屈曲形状を形成されている。」と記載されており、かつ、図7及び8には、無機繊維製シート310及び不燃難燃繊維製シート410が屈曲形状に成形されている様子が図示されており、発熱体を取り付けた無機繊維製シート及び断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを、(対象物の外観)形状に合わせて加工することが開示されている。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書及び図面の上記記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。よって、特許法第126条第5項に適合するものである。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否
訂正事項2は、上記1で検討した訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものであり、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項2は訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(1)のとおり、訂正事項2は訂正事項1による訂正に伴い生じる、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との齟齬を解消するものである。
そして、訂正事項2の訂正に対応する訂正事項1の訂正については、上記1(3)で検討したとおりであるので、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。よって、特許法第126条第5項に適合するものである。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的の適否
訂正前の明細書の段落【0032】の「同様にに」との記載は、「同様に」の誤記であることは明白であり、訂正事項3は当該誤記を訂正しようとするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(1)のとおり、訂正事項3は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(1)で検討したとおり、訂正事項3による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書の段落【0032】に記載の「同様にに」が本来「同様に」との記載であることは客観的に明らかであるといえるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
4 独立特許要件について
上記1、3で検討したとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を、訂正事項3は請求項1ないし3に関連するものであって誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当するから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けるものであるか否かについて検討する。
(1)本件出願前日本国内で頒布された刊行物等
ア 特開平10-64667号公報
本件明細書の段落【0003】において従来技術として挙げられている特開平10-64667号公報(以下「引用公報」という。)の段落【0011】-【0016】及び図1-3の記載を総合し、本件訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用公報には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「直管Bに巻き付けられるマントルヒータAであって、ガラスクロス製の袋状カバー部材3により、被熱電熱線4が表面に配置されるガラスクロス製のシート状芯部材1とガラス繊維のマット状断熱部材2とが包み込まれたマントルヒータA。」
イ 甲第1号証
本件審判請求書に添付して審判請求人が提出した甲第1号証(「ガラス繊維」佐野和夫、高分子、第13巻第149号8月号、昭和39年7月20日発行、表紙、第580-584ページ、奥付(公益社団法人高分子学会))の記載を総合すると、以下の技術的事項(以下「甲1技術的事項」という。)が記載されている。
「ガラス繊維の軟化点は約840℃であること。」
ウ 甲第2号証
本件審判請求書に添付して審判請求人が提出した甲第2号証(「高分子材料の耐熱性-アブレーションを中心として-」神戸博太朗、高分子、第11巻第126号9月号、昭和37年8月20日発行、表紙、第659-665、658ページ、奥付(公益社団法人高分子学会))の記載を総合すると、以下の技術的事項(以下「甲2技術的事項」という。)が記載されている。
「高分子材料の耐熱性は、最も耐熱性のあるフッ素樹脂でも200℃程度であること。」
(2)対比・判断
訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正発明1」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「マントルヒータA」は、直管Bに巻くものであるから、訂正発明1の「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物」とする構成を満たしている。
引用発明の「被熱電熱線4が表面に配置されるガラスクロス製のシート状芯部材1」、「ガラス繊維のマット状断熱部材2」はそれぞれ、訂正発明1の「発熱体を取り付けた無機繊維製シート」、「断熱性を有する不燃難燃繊維製シート」に相当する。
また、引用発明の「袋状カバー部材3」は、直管Bに巻かれるものであるから一定の柔軟性を有しており、「シート状芯部材1」と「マット状断熱部材2」とを包み込むものであり、当該カバー部材に直管Bに接する内側と、直管Bとは接しない外側があるのは明らかであるから、訂正発明1の「柔軟性を有する内層材と外層材」に相当する。
そして、引用発明において、シート状芯部材1、マット状断熱部材2、袋状カバー部材3が断面視で積層状になっていることは明らかであるから、引用発明は、訂正発明1の「・・・内層材と外層材との間に・・・無機繊維製シートと・・・不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなる」の構成を備えている。
そうすると、訂正発明1と引用発明との一致点・相違点は以下の通りである。
[一致点]
「配管、継手、弁、精密器具及び装置自体のいずれかを対象物とし、柔軟性を有する内層材と外層材との間に、発熱体を取り付けた無機繊維製シートと断熱性を有する不燃難燃繊維製シートを介在させて積層状に構成されてなるマントルヒータ。」
[相違点1]
訂正発明1の内層材、外層材は合成樹脂シートからなるのに対し、引用発明の袋状カバー部材3はガラスクロス製である点。
[相違点2]
訂正発明1の内層材、外層材、無機繊維製シート、不燃難燃繊維製シートは、対象物の外観形状に対応する形状に加工されているのに対し、引用発明のシート状芯部材1、マット状断熱部材2、袋状カバー部材3は対象物の外形形状に対応する形状に加工しているか不明な点。
上記相違点1について検討する。
甲2技術的事項によれば、高分子材料の耐熱性は、最も耐熱性のあるフッ素樹脂でも200℃程度であることから、訂正発明1の合成樹脂シートからなる内層材、外層材も、最も耐熱性のあるフッ素樹脂を用いたとしても耐熱性は200℃程度であると理解できる。
一方、引用発明の袋状カバー部材3に用いられているガラスクロスは、甲1技術的事項によれば軟化点が840℃であることから、訂正発明1の合成樹脂シートと比較してはるかに大きい耐熱性を備えていると理解できる。
そして、耐熱性が必要なマントルヒータにおいて、使用する材料の耐熱性をあえて下げる動機は見当たらず、引用発明において袋状カバー部材3をガラスクロスから合成樹脂シートに置き換えることは、当業者が容易になしえたとはいえない。
よって、当業者といえども、引用発明に基いて相違点1に係る訂正発明1の発明特定事項とすることは容易になし得たとすることはできない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、訂正発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
(3)訂正後の請求項2および3に係る発明について
訂正後の請求項2及び3に係る発明は、訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定を付加したものであるから、訂正発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
(4)まとめ
上記訂正事項1、3による訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項1、3による訂正は、特許法第126条第7項に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1ないし3号に掲げる事項を目的とし、また同条第5ないし7項に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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