特許異議申立
2019-701035
燃料ホース
- 審判番号
- 2019-701035
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-067143
- 登録番号
- 特許第6532261号(P6532261)
- 請求日
- 2019年12月18日
- 審決日
- 2020年06月29日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友理工株式会社
- 【権利者代理人】西藤 征彦
- 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
- 【権利者代理人】西藤 優子
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 紀本 孝
- 審判官 塚本 英隆
- 分類
- P1651.161-YAA(F16L) / P1651.537-YAA(F16L) / P1651.851-YAA(F16L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6532261号発明「燃料ホース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6532261号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第6532261号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6532261号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成27年3月27日に出願され、令和元年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和元年12月18日:特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 2月25日:取消理由通知書
同年 4月23日:意見書、訂正請求書(特許権者)
特許法120条の5第5項の規定に基づき、申立人に意見書を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。
2 訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
請求項1の「(A)ポリアミド9T、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、および酸変性ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一つ。」を「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ。」に訂正する。
イ 訂正事項2
明細書の段落【0009】及び【0018】の「(A)ポリアミド9T、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、および酸変性ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一つ。」を「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
明細書の段落【0019】の「上記のように、内層1材料としては、ポリアミド9T(PA9T)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(酸変性ETFE)、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、柔軟性と燃料バリア性の観点から、PA9Tが好ましく用いられる。ここで、上記酸変性ETFEや酸変性PEは、カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の酸により変性されたものである。」を「上記のように、内層1材料としては、ポリアミド9T(PA9T)、酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(酸変性ETFE)が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、柔軟性と燃料バリア性の観点から、PA9Tが好ましく用いられる。ここで、上記酸変性ETFEは、カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の酸により変性されたものである。」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1の「(A)」成分について、その選択肢から、エチレンビニルアルコール共重合樹脂と、酸変性ポリエチレンとを削除して、選択肢を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、訂正事項1のとおり請求項1を訂正したことに伴い、明細書中の(A)成分に関する記載を、訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
3 本件発明
請求項1~3に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、上記訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
下記(A)成分からなる管状の内層と、その内層外周面に接して設けられた下記(B)成分からなる中間層と、その中間層外周面に接して設けられた下記(C)成分からなる外層とを備え、かつ上記各層間が層間接着されていることを特徴とする燃料ホース。
(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ。
(B)下記の(b1)、(b2)、および(b3)が共重合してなるポリアミド三元共重合体であり、上記ポリアミド三元共重合体中の、(b1)の含有量が60~90重量%であり、(b2)の含有量が5~20重量%であり、(b3)の含有量が5~20重量%である、ポリアミド三元共重合体。
(b1)ポリアミド6。
(b2)ポリアミド66およびポリアミド610から選ばれた少なくとも一つ。
(b3)ポリアミド12。
(C)脂肪族ポリアミド樹脂(但し、ポリアミド6およびポリアミド66を除く)。
【請求項2】
上記脂肪族ポリアミド樹脂(C)が、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド1012、ポリアミド1010、ポリアミド612、およびポリアミド610からなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1記載の燃料ホース。
【請求項3】
上記(b2)成分がポリアミド66である、請求項1または2記載の燃料ホース。
4 取消理由の概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和2年2月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(理由1)29条の2
本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。
(理由2)36条6項1号
特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
すなわち、請求項1は、(A)成分について「ポリアミド9T、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、および酸変性ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一つ」と特定しているが、実施例で効果が確認されていないエチレンビニルアルコール共重合樹脂や酸変性ポリエチレンを用いた場合については、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるということはできない。
<甲号証一覧>
甲第1号証:PCT/JP2015/075856(国際公開第2016/039445号)(優先日2014年9月12日)
甲第2号証:特願2014-220010号(特開2016-83908号)(出願日2014年10月29日)
5 当審の判断
(1)理由1(29条の2)について
ア 甲第1号証に基づく理由1について
(ア)甲第1号証の記載
甲第1号証には以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審で付した。以下同様。)。
「[0011] 本発明の目的は、前記問題点を解決し、薬液透過防止性、層間接着性及びその耐久性、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性に優れた積層チューブを提供することにある。」
「[0219][実施例及び比較例で用いた材料]
ポリアミド12組成物(A-1)の製造
ポリアミド12(a-1)(宇部興産(株)製、UBESTA 3030UX1、相対粘度2.21)に、衝撃改良材として・・・真空乾燥して、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を(A-1)という。)。」
「[0226]ポリアミド6組成物(B1-1)の製造
・・・同様の方法にて、ポリアミド6 80質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤10質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6組成物を(B1-1)という。)。」
「[0227]ポリアミド6/66/12(b-2)の製造
・・・減圧乾燥し、相対粘度4.01のポリアミド6/66/12(カプロアミド単位/ヘキサメチレンアジパミド単位/ドデカンアミド単位=78/11/11質量%)を得た(以下、このポリアミド6/66/12を(b-2)という。)。
[0228]ポリアミド6/66/12組成物(B2-1)の製造
ポリアミド12組成物(A-1)の製造において、ポリアミド12(a-1)をポリアミド6/66/12(b-2)とポリアミド610(b-3)に変更した以外は、ポリアミド12組成物(A-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド6/66/12 50質量%、ポリアミド610 30質量%、衝撃改良材15質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6/66/12組成物を(B2-1)という。)。」
「[0231]ポリアミド6/66/12組成物(B2-4)の製造
・・・同様の方法にて、ポリアミド6/66/12 100質量%に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6/66/12組成物を(B2-4)という。)。」
「[0236]半芳香族ポリアミド組成物(D1-1)の製造
・・・真空乾燥して、半芳香族ポリアミド90質量%、衝撃改良材10質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなる半芳香族ポリアミド組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド組成物を(D1-1)という。)。」
「[0275]実施例1
上記に示すポリアミド12組成物(A-1)、ポリアミド6組成物(B1-1)、ポリアミド6/66/12組成物(B2-1)、EVOH(C-1)、及び半芳香族ポリアミド組成物(D1-1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A-1)を押出温度250℃、(B1-1)を押出温度260℃、(B2-1)を押出温度260℃、(C-1)を押出温度220℃、(D1-1)を押出温度300℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A-1)からなる(a)層(最外層)、(B2-1)からなる(b)層(外層)、(C-1)からなる(c)層(中間層)、(B1-1)からなる(b’)層(内層1)、(D1-1)からなる(d)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(b)/(c)/(b’)/(d)=0.35/0.15/0.10/0.25/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
「[0276]実施例2
実施例1において、ポリアミド6組成物(B1-1)をポリアミド6/66/12組成物(B2-1)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、(A-1)からなる(a)層(最外層)、(B2-1)からなる(b)層(外層、内層1)、(C-1)からなる(c)層(中間層)、(D1-1)からなる(d)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(b)/(c)/(b)/(d)=0.35/0.15/0.10/0.25/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
「[0300]比較例7
実施例2において、ポリアミド6/66/12組成物(B2-1)を(B2-4)に変更した以外は、実施例2と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
「[請求項1] ・・・積層チューブ。
・・・
[請求項13] 燃料チューブとして使用される請求項1から12のいずれかに記載の積層チューブ。」
以上によれば、甲第1号証に係る出願の当初明細書等には、実施例1又は比較例7に係る次の発明が記載されていると認められる。
「層構成が、(A-1)(最外層)/(B2-1)(外層)/(C-1)(中間層)/(B1-1)(内層1)/(D1-1)(最内層)の積層チューブ。」(実施例1に係る発明。以下「甲1発明1」という。)
「層構成が、(A-1)(最外層)/(B2-4)(外層)/(C-1)(中間層)/(B2-4)(内層1)/(D1-1)(最内層)の積層チューブ。」(比較例7に係る発明。以下「甲1発明2」という。)
但し、上記において、
(A-1)は、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物、
(B2-1)は、ポリアミド6/66/12(カプロアミド単位/ヘキサメチレンアジパミド単位/ドデカンアミド単位=78/11/11質量%の共重合体) 50質量%、ポリアミド610 30質量%、衝撃改良材15質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物、
(C-1)は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)、
(B1-1)は、ポリアミド6 80質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤10質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6組成物、
(D1-1)は、半芳香族ポリアミド90質量%、衝撃改良材10質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなる半芳香族ポリアミド組成物、
(B2-4)は、ポリアミド6/66/12 100質量%に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物
である。
(イ)甲1発明1との対比・判断
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
本件発明1において、「内層」の内周面に最内層を形成しても良い(【0031】)ことを踏まえると、甲1発明1の「(C-1)(中間層)」「(C-1)は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)」は、本件発明1の「下記(A)成分からなる管状の内層」「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ。」と、「管状の内層」との限りで一致する。
甲1発明1の「(B2-1)」に含まれる「ポリアミド6/66/12」は、カプロアミド単位/ヘキサメチレンアジパミド単位/ドデカンアミド単位=78/11/11質量%の共重合体であるから、本件発明1の「(B)下記の(b1)、(b2)、および(b3)が共重合してなるポリアミド三元共重合体であり、上記ポリアミド三元共重合体中の、(b1)の含有量が60~90重量%であり、(b2)の含有量が5~20重量%であり、(b3)の含有量が5~20重量%である、ポリアミド三元共重合体。/(b1)ポリアミド6。/(b2)ポリアミド66およびポリアミド610から選ばれた少なくとも一つ。/(b3)ポリアミド12。」に相当する。
そして、本件発明1において、「からなり」とは、他の材料の含有を妨げる趣旨ではないこと(【0018】、【0026】)を踏まえると、甲1発明1の「(B2-1)(外層)」は、ポリアミド6/66/12を約50質量%含むことから、本件発明1の「下記(B)成分からなる中間層」に相当する。
甲1発明1の「(A-1)(最外層)」は、「(B2-1)(外層)」の外周面に接して設けられており、脂肪族ポリアミドであるポリアミド12を約85質量%含むから、本件発明1の「中間層外周面に接して設けられた下記(C)成分からなる外層」「(C)脂肪族ポリアミド樹脂(但し、ポリアミド6およびポリアミド66を除く)」に相当する。
甲1発明1の「積層チューブ」は、燃料チューブとして用いることが想定され([請求項13])、層間接着されていることは明らか([0011])であるから、本件発明1の「各層間が層間接着されている」「燃料ホース」に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
管状の内層と、その内層外周面に接して設けられた下記(B)成分からなる中間層と、その中間層外周面に接して設けられた下記(C)成分からなる外層とを備え、かつ上記各層間が層間接着されている燃料ホース。
(B)下記の(b1)、(b2)、および(b3)が共重合してなるポリアミド三元共重合体であり、上記ポリアミド三元共重合体中の、(b1)の含有量が60~90重量%であり、(b2)の含有量が5~20重量%であり、(b3)の含有量が5~20重量%である、ポリアミド三元共重合体。
(b1)ポリアミド6。
(b2)ポリアミド66およびポリアミド610から選ばれた少なくとも一つ。
(b3)ポリアミド12。
(C)脂肪族ポリアミド樹脂(但し、ポリアミド6およびポリアミド66を除く)。
[相違点1]
「管状の内層」を構成する成分が、本件発明1は、「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ」であるのに対し、甲1発明1は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)である点。
以上のとおりの相違点1があり、当該相違点1は、単なる周知、慣用技術の付加や転換といえるものではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明1と同一ではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を更に限定した発明であるから、同様に、甲1発明1と同一ではない。
(ウ)甲1発明2との対比・判断
上記(イ)での検討に加え、甲1発明2の「(B2-4)(外層)」は、ポリアミド6/66/12を約100質量%含むことから、本件発明1の「下記(B)成分からなる中間層」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明2とを対比すると、両者の一致点、相違点は、上記(イ)に示した一致点、相違点と同じである。
したがって、上記(イ)で検討したのと同様に、本件発明1~3は甲1発明2と同一ではない。
イ 甲第2号証に基づく理由1について
(ア)甲第2号証の記載
甲第2号証には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
・・・積層チューブ。
・・・
【請求項9】
燃料チューブとして使用されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の積層チューブ。」
「【0008】
本発明の目的は、前記問題点を解決し、薬液透過防止性、層間接着性及びその耐久性、低温耐衝撃性、及び溶出に対する耐性に優れた積層チューブを提供することにある。」
「【0122】
[実施例及び比較例で用いた材料]
脂肪族ポリアミド(A)
ポリアミド12組成物(A-1)の製造
ポリアミド12(a-1)(宇部興産(株)製、UBESTA 3030UX1、相対粘度2.21)に、衝撃改良材として・・・真空乾燥して、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を(A-1)という。)。」
「【0128】
ポリアミド6/66/12組成物(B)
ポリアミド6/66/12(b-1)の製造
・・・減圧乾燥し、相対粘度4.01のポリアミド6/66/12(カプロアミド単位/ヘキサメチレンアジパミド単位/ドデカンアミド単位=78/11/11質量%)を得た(以下、このポリアミド6/66/12を(b-1)という。)。
【0129】
ポリアミド6/66/12組成物(B-1)の製造
ポリアミド12組成物(A-1)の製造において、ポリアミド12(a-1)をポリアミド6/66/12(b-1)とポリアミド610(b-2)に変更した以外は、ポリアミド12組成物(A-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド6/66/12 50質量%、ポリアミド610 30質量%、耐衝撃改良材15質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6/66/12組成物を(B-1)という。)。」
「【0132】
ポリアミド6/66/12組成物(B-4)の製造
・・・同様の方法にて、ポリアミド6/66/12 100質量%に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6/66/12組成物を(B-4)という。)。」
「【0136】
可塑剤を含有しない脂肪族ポリアミド組成物(D)
ポリアミド12組成物(D-1)の製造
・・・同様の方法にて、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材15質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を(D-1)という。)。」
「【0152】
ポリアミド6組成物(D-11)の製造
・・・同様の方法にて、ポリアミド6 85質量%、耐衝撃改良材15質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6組成物を(D-11)という。)。」
「【0154】
実施例1
上記に示すポリアミド12組成物(A-1)、ポリアミド6/66/12組成物(B-1)、EVOH(C-1)、及びポリアミド12組成物(D-1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A-1)を押出温度250℃、(B-1)を押出温度260℃、(C-1)を押出温度220℃、(D-1)を押出温度250℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A-1)からなる(a)層(最外層)、(B-1)からなる(b)層(外層、内層)、(C-1)からなる(c)層(中間層)、(D-1)からなる(d)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(b)/(c)/(b)/(d)=0.35/0.10/0.15/0.10/0.30mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
「【0167】
実施例14
上記に示すポリアミド12組成物(A-1)、ポリアミド6/66/12組成物(B-1)、EVOH(C-1)、及びポリアミド6組成物(D-11)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層チューブ成形機にて、(A-1)を押出温度250℃、(B-1)を押出温度260℃、(C-1)を押出温度220℃、(D-11)を押出温度260℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A-1)からなる(a)層(最外層)、(B-1)からなる(b)層(外層)、(C-1)からなる(c)層(中間層)、(D-11)からなる(d)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(b)/(c)/(d)=0.35/0.10/0.15/0.40mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
「【0177】
比較例5
実施例1において、ポリアミド6/66/12組成物(B-1)を(B-4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。」
以上によれば、甲第2号証に係る出願の当初明細書等には、実施例14又は比較例5に係る次の発明が記載されていると認められる。
「層構成が、(A-1)(最外層)/(B-1)(外層)/(C-1)(中間層)/(D-11)(最内層)の積層チューブ。」(実施例14に係る発明。以下「甲2発明1」という。)
「層構成が、(A-1)(最外層)/(B-4)(外層)/(C-1)(中間層)/(D-1)(最内層)の積層チューブ。」(比較例5に係る発明。以下「甲2発明2」という。)
但し、上記において、
(A-1)は、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物、
(B-1)は、ポリアミド6/66/12 50質量%、ポリアミド610 30質量%、耐衝撃改良材15質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物、
(C-1)は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)、
(D-11)は、ポリアミド6 85質量%、耐衝撃改良材15質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6組成物、
(B-4)は、ポリアミド6/66/12 100質量%に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6/66/12組成物、
(D-1)は、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材15質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12組成物
である。
(イ)甲2発明1との対比・判断
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
本件発明1において、「内層」の内周面に最内層を形成しても良い(【0031】)ことを踏まえると、甲2発明1の「(C-1)(中間層)」「(C-1)は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)」は、本件発明1の「下記(A)成分からなる管状の内層」「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ。」と、「管状の内層」との限りで一致する。
甲2発明1の「(B-1)」に含まれる「ポリアミド6/66/12」は、カプロアミド単位/ヘキサメチレンアジパミド単位/ドデカンアミド単位=78/11/11質量%の共重合体であるから、本件発明1の「(B)下記の(b1)、(b2)、および(b3)が共重合してなるポリアミド三元共重合体であり、上記ポリアミド三元共重合体中の、(b1)の含有量が60~90重量%であり、(b2)の含有量が5~20重量%であり、(b3)の含有量が5~20重量%である、ポリアミド三元共重合体。/(b1)ポリアミド6。/(b2)ポリアミド66およびポリアミド610から選ばれた少なくとも一つ。/(b3)ポリアミド12。」に相当する。
そして、本件発明1において、「からなり」とは、他の材料の含有を妨げる趣旨ではないこと(【0018】、【0026】)を踏まえると、甲2発明1の「(B-1)(外層)」は、ポリアミド6/66/12を約50質量%含むことから、本件発明1の「下記(B)成分からなる中間層」に相当する。
甲2発明1の「(A-1)(最外層)」は、「(B-1)(外層)」の外周面に接して設けられており、脂肪族ポリアミドであるポリアミド12を約85質量%含むから、本件発明1の「中間層外周面に接して設けられた下記(C)成分からなる外層」「(C)脂肪族ポリアミド樹脂(但し、ポリアミド6およびポリアミド66を除く)」に相当する。
甲2発明1の「積層チューブ」は、燃料チューブとして用いることが想定され(【請求項9】)、層間接着されていることは明らか(【0008】)であるから、本件発明1の「各層間が層間接着されている」「燃料ホース」に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
管状の内層と、その内層外周面に接して設けられた下記(B)成分からなる中間層と、その中間層外周面に接して設けられた下記(C)成分からなる外層とを備え、かつ上記各層間が層間接着されている燃料ホース。
(B)下記の(b1)、(b2)、および(b3)が共重合してなるポリアミド三元共重合体であり、上記ポリアミド三元共重合体中の、(b1)の含有量が60~90重量%であり、(b2)の含有量が5~20重量%であり、(b3)の含有量が5~20重量%である、ポリアミド三元共重合体。
(b1)ポリアミド6。
(b2)ポリアミド66およびポリアミド610から選ばれた少なくとも一つ。
(b3)ポリアミド12。
(C)脂肪族ポリアミド樹脂(但し、ポリアミド6およびポリアミド66を除く)。
[相違点2]
「管状の内層」を構成する成分が、本件発明1は、「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ」であるのに対し、甲2発明1は、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)である点。
以上のとおりの相違点2があり、当該相違点2は、単なる周知、慣用技術の付加や転換といえるものではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明1と同一ではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1を更に限定した発明であるから、同様に、甲2発明1と同一ではない。
(ウ)甲2発明2との対比・判断
上記(イ)での検討に加え、甲2発明2の「(B-4)(外層)」は、ポリアミド6/66/12を約100質量%含むことから、本件発明1の「下記(B)成分からなる中間層」に相当する。
よって、本件発明1と甲2発明2とを対比すると、両者の一致点、相違点は、上記(イ)に示した一致点、相違点と同じである。
したがって、上記(イ)で検討したのと同様に、本件発明1~3は甲2発明2と同一ではない。
(2)理由2(36条6項1号)について
本件訂正により、請求項1における(A)成分は、「(A)ポリアミド9T、および酸変性エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つ」となり、実施例で効果が確認されていないエチレンビニルアルコール共重合樹脂や酸変性ポリエチレンは含まれないものとなった。
よって、取消理由2は解消した。
6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、請求項1の「(A)成分からなる管状の内層」、「(B)成分からなる中間層」、「(C)成分からなる外層」との記載について、本件明細書の、「上記「からなり」とは、実質的に下記に示す樹脂からなるという趣旨であり、本発明に影響を及ぼさない樹脂以外の材料の含有までも妨げる趣旨ではない。」(【0018】)、「前記(A)~(C)に示す樹脂が用いられるが、その他、必要に応じ・・・有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカー等の補強剤、難燃剤等を含有しても差し支えない。」(【0026】)との記載を踏まえると、必要に応じて「樹脂」を添加するような態様を排除しているのか否かが明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない旨を主張する(特許異議申立書60~61ページ)。
しかし、上記明細書の記載を参酌すれば、「(A)成分からなる管状の内層」、「(B)成分からなる中間層」、「(C)成分からなる外層」との記載が、実質的に(A)成分、(B)成分、(C)成分からなるという趣旨であり、有機繊維のような「樹脂」を含有することを排除していないことは明らかである。
よって、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしており、上記申立人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-701035