特許異議申立
2023-700106
フランジ継手の締結過程の学習方法及びフランジ継手の締結過程の学習システム
- 審判番号
- 2023-700106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-208636
- 登録番号
- 7113807
- 請求日
- 2023年02月02日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ニチアス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人あしたば国際特許事務所
- 【異議申立人】久保 さおり
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1651.121-ZE (G09B) / P1651.537-ZE (G09B) / P1651.55 -ZE (G09B) / P1651.851-ZE (G09B) / P1651.853-ZE (G09B) / P1651.855-ZE (G09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第131条の2、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7113807号発明「フランジ継手の締結過程の学習方法及びフランジ継手の締結過程の学習システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7113807号の請求項5、1ないし2に係る特許を取り消す。
同請求項3、4、6、7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7113807号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、令和1年11月19日に出願され、令和4年7月28日にその特許権の設定登録がされ、同年8月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年2月2日付けで特許異議申立人 久保さおり(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1乃至7に対して特許異議の申立てがされ、同年4月18日付けで取消理由が通知され、同年6月16日に特許権者より意見書が提出され、同年9月27日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年12月1日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、令和6年3月5日付けで訂正拒絶理由通知が通知され、同年4月9日に特許権者より意見書及び手続補正書が提出され、同年5月7日に特許権者より手続補正書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求による訂正の適否について
1 令和6年5月7日に提出された手続補正書により補正された同年4月9日に提出された手続補正書(以下「本件手続補正書」という。)による補正の適否について
(1)要旨変更の有無について
特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項は、訂正請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならないものと規定しているが、同項第1号により、請求の理由についてされるときはこの限りでないと規定されているから、訂正請求書の「請求の趣旨」の補正について、要旨の変更が認められていないといえる。
そして、「請求の趣旨」の要旨を変更する補正とは、「請求の趣旨」の記載を変更することによって、補正前後で請求の基礎である「訂正を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更することである。
ここで、「請求の趣旨」は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲を引用することにより、請求の内容を記載しているから、訂正特許請求の範囲の記載は、訂正請求における「請求の趣旨」と一体不可分のものであり、そうすると、訂正特許請求の範囲を補正することも、「請求の趣旨の補正」として扱われることとなる。
また、特許法第131条の2の趣旨は、審理対象の拡張変更による審理遅延を防止することにあると解されるところ、訂正事項の同一性に変更があっても、例えば、ある請求項の訂正事項を当該請求項の削除という訂正事項に変更する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正、並びに請求項の削除という訂正事項を追加する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正は、審理遅延を生じさせるものではないから、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものとは取り扱わない。
この点を踏まえて、令和6年5月7日に提出された手続補正書により補正された同年4月9日に提出された手続補正書(以下「本件手続補正書」という。)による補正について検討する。
(2)本件手続補正書による補正の内容
特許権者は、本件手続補正書において、訂正請求書を以下のとおり補正することを求める(注:下線部分は訂正箇所を示す。)。
ア 補正事項1
「7 請求の理由 (2)訂正事項 イ 訂正事項2」に「特許請求の範囲の請求項1の締結過程表示工程の「該作図工程で連続した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」を「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」に訂正する。」と記載されていたのを、「特許請求の範囲の請求項1の締結過程表示工程の「該作図工程で連続した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」を「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続してモニターに表示させる」に訂正する。」へと補正する(以下「補正事項1」という。)。
イ 補正事項2
「7 請求の理由 (2)訂正事項 エ 訂正事項4」に「特許請求の範囲の請求項5のモニターの「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」を「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」に訂正する。」と記載されていたのを、「特許請求の範囲の請求項5のモニターの「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」を「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示し、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を示す図を各々個別に連続して表示するモニター」に訂正する。」へと補正する(以下「補正事項2」という。)。
ウ 補正事項3
「7 請求の理由 (3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について」に「訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1の締結過程表示工程の「該作図工程で連続した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」を「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」に訂正するものであって、この訂正は、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当するとともに、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。」と記載されていたのを、「訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1の締結過程表示工程の「該作図工程で連続した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」を「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続してモニターに表示させる」に訂正するものであって、この訂正は、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当するとともに、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。」へと補正する(以下「補正事項3」という。)。
エ 補正事項4
「7 請求の理由 (3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的について」に「訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項5のモニターの「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」を「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」に訂正するものであって、この訂正は、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当するとともに、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明に該当するものである。」と記載されていたのを、「訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項5のモニターの「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」を「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示し、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続して表示するモニター」に訂正するものであって、この訂正は、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当するとともに、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明に該当するものである。」へと補正する(以下「補正事項4」という。)。
オ 補正事項5
「添付書類」の「【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】」に「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、 該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する作図工程と、 該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、 を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。」と記載されていたのを、「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、 該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する作図工程と、 該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続してモニターに表示させる締結過程表示工程と、 を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。」へと補正する(以下「補正事項5」という。)。
カ 補正事項6
「添付書類」の「【書類名】特許請求の範囲 【請求項5】」に「フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されるセンサと、 締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、各センサにより計測される締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、取得した該データを記憶部に記憶させ、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成可能な演算部と、 取得した該データが記憶される記憶部と、 を有する電子計算機と、 該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示するモニターと、 を少なくとも有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習システム。」と記載されていたのを、「フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されるセンサと、 締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、各センサにより計測される締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、取得した該データを記憶部に記憶させ、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成可能な演算部と、 取得した該データが記憶される記憶部と、 を有する電子計算機と、 該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示し、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続して表示するモニターと、 を少なくとも有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習システム。」へと補正する(以下「補正事項6」という。)。
(3)補正の適否
ア 補正事項1について
令和5年12月1日に提出された訂正請求書による「訂正事項2」は、「連続してモニターに表示させて」「学習者に見せる」「作図工程で連続して作成した図」について、「レーダーチャート」、「経時変化を示す図」、もしくは「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の3つの場合があった。
補正事項1により、前記「連続してモニターに表示させて」「学習者に見せる」「作図工程で連続して作成した図」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」を各々個別に表示すること、すなわち、前記3つの場合のうちの2つの場合に減縮されることになるから、補正事項1は、審理対象を拡張し又は変更するものではない。
してみると、補正事項1は、上記(1)に照らせば、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
イ 補正事項2について
令和5年12月1日に提出された訂正請求書による「訂正事項4」は、「モニター」に「連続して表示する」「図」について、「レーダーチャート」、「経時変化を示す図」、もしくは「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の3つの場合があった。
補正事項2により、前記「モニター」に「連続して表示する」「図」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」を各々個別に表示すること、すなわち、前記3つの場合のうちの2つの場合に減縮されることになるから、補正事項2は、審理対象を拡張し又は変更するものではない。
してみると、補正事項2は、上記(1)に照らせば、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
ウ 補正事項3について
補正事項3は、「7 請求の理由 (3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について」において、上記補正事項1と同内容の補正をするものである。
そうすると、補正事項3は、上記補正事項1と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
エ 補正事項4について
補正事項4は、「7 請求の理由 (3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的について」において、上記補正事項2と同内容の補正をするものである。
そうすると、補正事項4は、上記補正事項2と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
オ 補正事項5について
補正事項5は、「添付書類」の「【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】」において、上記補正事項1と同内容の補正をするものである。
そうすると、補正事項5は、上記補正事項1と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
カ 補正事項6について
補正事項6は、「添付書類」の「【書類名】特許請求の範囲 【請求項5】」において、上記補正事項2と同内容の補正をするものである。
そうすると、補正事項6は、上記補正事項2と同じ理由により、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
(4)したがって、上記手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合するので、当該補正を認める。
2 訂正請求の趣旨
本件訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第7113807号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、5について訂正することを求める。」とするものである。
また、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」といい、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。
3 本件訂正請求の内容
令和6年5月7日に提出された手続補正書により補正された令和5年12月1日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して作成する作図工程」と記載されているのを、「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する作図工程」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「該作図工程で連続した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程」と記載されているのを、「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続してモニターに表示させる締結過程表示工程」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成させる演算部」と記載されているのを、「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成可能な演算部」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニター」と記載されているのを、「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示し、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を示す図を各々個別に連続して表示するモニター」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習方法」が「作図工程」を備えることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習方法」が備える「作図工程」を、「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、」と限定するものである。
同様に、訂正後の請求項2は、訂正後の請求項1を引用することにより、訂正後の請求項2に係る発明における「フランジ継手の締結過程の学習方法」が備える「作図工程」を、「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、」と限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「作図工程」という発明特定事項を、概念的により下位の「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、」「連続して作成する作図工程」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
同様に、訂正事項1は、訂正前の請求項2が引用する請求項1に記載されていた「作図工程」を、概念的により下位の「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部により、」「連続して作成する作図工程」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項1について、「作図工程」が「該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を生成可能な演算部によ」るものであることは、明細書等の段落【0021】の「作図工程では、締結作業後に、PC11の演算部で、記憶部に記憶されているボルトの伸び値及びボルトの伸び値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を算出し、トルク値を示す図を、連続して作成する。」との記載、段落【0022】の「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図3~図10に示すレーダーチャートが挙げられる。図3~図10中、レーダーチャートでは、各軸の項目は、ボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値であり、各取得時間におけるボルト3-1~ボルト3-8のトルク値が、それぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれている。」との記載、段落【0023】の「そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値が、レーダーチャートのそれぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれたレーダーチャートが作成される(図3)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のレーダーチャート(図4)、締結作業開始後145秒後のレーダーチャート(図5)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図6)、締結作業開始後210秒後のレーダーチャート(図7)、締結作業開始後220秒後のレーダーチャート(図8)、締結作業開始後280秒後のレーダーチャート(図9)、締結作業開始後390秒後のレーダーチャート(図10)が作成される。図3~図10では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。」との記載、段落【0025】の「また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図11~図18に示す各締結ボルトに負荷されているトルク値の経時変化を示すグラフが挙げられる。図11~図18中、トルク値の経時変化を示すグラフでは、ボルト3-1~3-8のそれぞれについて、横軸が取得時間であり、縦軸がボルトに負荷されたトルク値のグラフが示されている。図11~図18では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。」との記載、段落【0026】の「そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値の経時変化のグラフが作成される(図11)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図12)、締結作業開始後145秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図13)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図14)、締結作業開始後210秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図15)、締結作業開始後220秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図16)、締結作業開始後280秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図17)、締結作業開始後390秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図18)が作成される。」との記載、段落【0036】の「作図工程は、締結作業後に、締め付け強さを示す値及び締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を算出し、締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する工程である。つまり、作図工程では、パーソナルコンピューター等の演算部により、記憶部に記憶されている締め付け強さを示す値及び締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定時間毎、例えば、t1秒後、t2秒後、t3秒後、t4秒後、t5秒後、t6秒後、t7秒後・・・のそれぞれの締め付け強さの値を示す図を作成する。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習方法」が備える「締結過程表示工程」が、「該作図工程で連続して作成した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる」、すなわち、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に「連続してモニターに表示させて」学習者に見せることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習方法」が備える「締結過程表示工程」が、「該作図工程で連続して作成した図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、該作図工程で連続して作成した図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せ、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を各々個別に連続してモニターに表示させる」、すなわち、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の「各々」を「個別」に「連続してモニターに表示させて」学習者に見せることを特定している。
そうすると、訂正前の請求項1は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示して学習者に見せていたところ、訂正後の請求項1は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解される。
同様に、訂正前の請求項2は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示して学習者に見せていたところ、訂正後の請求項2は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解される。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。
また、訂正事項2が、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げるいずれの目的にも該当しないことは明らかである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記(ア)のとおり、訂正前の請求項1は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示して学習者に見せていたところ、訂正後の請求項1は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解されるから、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当する。
同様に、訂正前の請求項2は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示して学習者に見せていたところ、訂正後の請求項1は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解されるから、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当する。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものではない。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項2について、「締結過程表示工程」が、「レーダーチャート」、もしくは「経時変化を示す図」のいずれかを「連続してモニターに表示させて」いることは、明細書等の段落【0028】の「締結過程表示工程では、作図工程でPC11の演算部で連続して作成した所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図を、連続してモニター13に表示させて、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を、学習者に見せる。」との記載、段落【0029】の「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図3~図10に示すレーダーチャートの場合、図3~図10のレーダーチャートを、それぞれの軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図3~図10のレーダーチャートが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。」との記載、段落【0030】の「また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図11~図18に示すトルク値の経時変化のグラフの場合、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフを、縦軸と横軸の0秒の軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。」との記載、段落【0046】の「モニターには、演算部で連続して生成された所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して表示される。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(エ)令和6年4月9日に提出された意見書について
特許権者は、同意見書において、「訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの、又は、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。」及び「概念的に下位の特定、又は、曖昧な特定から具体的な態様を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。」と主張する。
原審での面接記録(面接日時 令和4年6月13日)によれば、
「[請求項1]
フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、
締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して作成する作図工程と、
該作図工程で連続して作成した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、
を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。」
なる補正案を提示し、
「レーダーチャートと経時変化を示すグラフとの両方を作図し、両方をモニターに同時に表示させることを限定する。」
と主張した。
上記補正案は、本件特許発明1そのものであり、特許権者は、本件特許発明1の「及び」との記載の解釈を「両方をモニターに同時に表示させる」と自白した。
そうすると、訂正事項2のついての、上記(ア)及び(イ)の判断は、特許権者が、本件特許発明1の特許請求の範囲を補正する際の主旨に則った判断であり、何ら、誤るところはない。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項5に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習システム」が備える「演算部」が「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成させる」ものであると、図の生成をあたかも指示する、曖昧な特定をしている。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習システム」が備える「演算部」が、「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成可能な」ものであると本来の機能を特定するものである。
してみると、訂正事項3は、訂正前の図の生成をあたかも指示するものと特定されていた「演算部」について、本来の機能である「生成可能な」と特定するものである。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項5に記載されていた「演算部」についての発明特定事項を、曖昧な特定から本来の機能を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項3について、「フランジ継手の締結過程の学習システム」が備える「演算部」が、「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成可能な」ものであることは、明細書等の段落【0021】の「作図工程では、締結作業後に、PC11の演算部で、記憶部に記憶されているボルトの伸び値及びボルトの伸び値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を算出し、トルク値を示す図を、連続して作成する。」との記載、段落【0022】の「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図3~図10に示すレーダーチャートが挙げられる。図3~図10中、レーダーチャートでは、各軸の項目は、ボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値であり、各取得時間におけるボルト3-1~ボルト3-8のトルク値が、それぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれている。」との記載、段落【0023】の「そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値が、レーダーチャートのそれぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれたレーダーチャートが作成される(図3)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のレーダーチャート(図4)、締結作業開始後145秒後のレーダーチャート(図5)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図6)、締結作業開始後210秒後のレーダーチャート(図7)、締結作業開始後220秒後のレーダーチャート(図8)、締結作業開始後280秒後のレーダーチャート(図9)、締結作業開始後390秒後のレーダーチャート(図10)が作成される。図3~図10では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。」との記載、段落【0025】の「また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図11~図18に示す各締結ボルトに負荷されているトルク値の経時変化を示すグラフが挙げられる。図11~図18中、トルク値の経時変化を示すグラフでは、ボルト3-1~3-8のそれぞれについて、横軸が取得時間であり、縦軸がボルトに負荷されたトルク値のグラフが示されている。図11~図18では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。」との記載、段落【0026】の「そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値の経時変化のグラフが作成される(図11)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図12)、締結作業開始後145秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図13)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図14)、締結作業開始後210秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図15)、締結作業開始後220秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図16)、締結作業開始後280秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図17)、締結作業開始後390秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図18)が作成される。」との記載、段落【0036】の「作図工程は、締結作業後に、締め付け強さを示す値及び締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を算出し、締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する工程である。つまり、作図工程では、パーソナルコンピューター等の演算部により、記憶部に記憶されている締め付け強さを示す値及び締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定時間毎、例えば、t1秒後、t2秒後、t3秒後、t4秒後、t5秒後、t6秒後、t7秒後・・・のそれぞれの締め付け強さの値を示す図を作成する。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項5に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習システム」が備える「モニター」が、「該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示する」、すなわち、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に「連続して表示する」ものであることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項5に係る発明は、「フランジ継手の締結過程の学習システム」が備える「モニター」が、「該演算部で連続して生成された図が、前記レーダーチャートである場合には、当該レーダーチャートを、連続して表示し、該演算部で連続して作成された図が、前記経時変化を示す図である場合には、当該経時変化を示す図を、連続して表示し、前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を示す図を各々個別に連続して表示する」、すなわち、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の「各々」を「個別」に「連続して表示する」ものであることを特定している。
そうすると、訂正前の請求項5の「モニター」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示していたところ、訂正後の請求項5の「モニター」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解される。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。
また、訂正事項4が、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げるいずれの目的にも該当しないことは明らかである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記(ア)のとおり、訂正前の請求項5の「モニター」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示していたところ、訂正後の請求項5の「モニター」は、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」の両者を同時に表示せず、「各々個別」に表示することとなり、表示対象が変更されると解されるから、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当する。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものではない。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項4について、「モニター」が、「レーダーチャート」、もしくは「経時変化を示す図」のいずれかを「連続して表示する」ことは、明細書等の段落【0028】の「締結過程表示工程では、作図工程でPC11の演算部で連続して作成した所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図を、連続してモニター13に表示させて、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を、学習者に見せる。」との記載、段落【0029】の「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図3~図10に示すレーダーチャートの場合、図3~図10のレーダーチャートを、それぞれの軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図3~図10のレーダーチャートが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。」との記載、段落【0030】の「また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図11~図18に示すトルク値の経時変化のグラフの場合、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフを、縦軸と横軸の0秒の軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。」との記載、段落【0046】の「モニターには、演算部で連続して生成された所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して表示される。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
オ 特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否か
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については、本件特許の請求項1、2及び5に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1、2及び5に係る発明については課されない。
カ 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 まとめ
上記のとおり、本件訂正前の請求項1、2及び5に係る訂正事項2及び4についての訂正は、拒絶すべきものである。
そして、請求項1、2及び5に係る訂正は認められないのであるから、訂正事項1乃至4からなる本件訂正は、いずれも認めることができないものである。
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1乃至4は、いずれもその訂正を拒絶すべきものである。
第3 本件特許発明
上記第2で検討したとおり、請求項1、2及び5に係る訂正を認めることはできないから、請求項1乃至7に係る特許についての各発明は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」乃至「本件特許発明7」といい、総称して「本件特許発明」という。)
「【請求項1】
フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、
締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して作成する作図工程と、
該作図工程で連続して作成した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、
を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。
【請求項2】
前記各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図は、各締結ボルトに負荷されるべきトルクの値の上限値及び下限値を示すことを特徴とする請求項1記載のフランジ継手の締結過程の学習方法。
【請求項3】
フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、
締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図であって各締結ボルトに負荷されるべきトルクの目標値の上限値及び下限値も示す図を、連続して作成する作図工程と、
該作図工程で連続して作成した所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、
を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。
【請求項4】
一対の配管と、
前記一対の配管を繋ぐためのフランジ部と、前記フランジ部の間に挟み込まれるガスケットと、前記フランジ部を締め付けるための締結ボルト及びナットと、を含むフランジ継手と、前記締結ボルトに設置された歪センサと、
前記一対の配管の両端をそれぞれ前記一対の配管に対して略垂直に固定支持するための架台と、を用い、
前記フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、前記歪センサから出力される、各締結ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、
締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して作成する作図工程と、
該作図工程で連続して作成した所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、
を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。
【請求項5】
フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されるセンサと、
締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、各センサにより計測される締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、取得した該データを記憶部に記憶させ、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して生成させる演算部と、
取得した該データが記憶される記憶部と、
を有する電子計算機と、
該演算部で連続して生成された前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続して表示するモニターと、
を少なくとも有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習システム。
【請求項6】
フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されるセンサと、
締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、各センサにより計測される締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、取得した該データを記憶部に記憶させ、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図であって各締結ボルトに負荷されるべきトルクの目標値の上限値及び下限値も示す図を、連続して生成させる演算部と、
取得した該データが記憶される記憶部と、
を有する電子計算機と、
該演算部で連続して生成された所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して表示するモニターと、
を少なくとも有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習システム。
【請求項7】
一対の配管と、
前記一対の配管を繋ぐためのフランジ部と、前記フランジ部の間に挟み込まれるガスケットと、前記フランジ部を締め付けるための締結ボルト及びナットと、を含むフランジ継手と、
前記締結ボルトに設置された歪センサと、
前記一対の配管の両端をそれぞれ前記一対の配管に対して略垂直に固定支持するための架台と、
前記フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、前記歪センサにより計測される締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、取得した該データを記憶部に記憶させ、締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して生成させる演算部と、
取得した該データが記憶される記憶部と、
を有する電子計算機と、
該演算部で連続して生成された所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を、連続して表示するモニターと、
を少なくとも有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習システム。」
第4 令和5年9月27日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要
通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(新規事項の追加)令和4年7月1日に提出した手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
下記補正事項1、2、6、7は、当初明細書等には記載されておらず、自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、上記補正事項1、2、6、7は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
1 補正事項1
補正前の請求項1の「締結作業後に、・・・所定時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図」との発明特定事項に対して、その「示す図」の内容として、補正前の請求項1を引用する 補正前の請求項2における「各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値であるレーダーチャートである」との事項(以下「技術事項ア」という。)と、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項3における「前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図」であるとの事項(以下「技術事項イ」という。)とを追加するとともに、さらに、上記「各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値であるレーダーチャートである」との技術事項アの「である」との特定を、「且つ経時変化する」へと変更した事項(以下「技術事項ウ」という。)とした上で、当該追加された技術事項アとウとを「及び」との用語で結合する補正事項。
2 補正事項2
補正前の請求項1の「該作図工程で連続して作成した所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を」との発明特定事項に対して、上記補正事項1において補正前の請求項2及び請求項3の技術事項アとイを追加し、かつ、当該技術事項アとウを「及び」との用語で結合したことに対応するように、「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値」との記載を削除するとともに、上記「示す図」が「レーダーチャート」「及び」「経時変化」に係るものであることを特定する補正事項。
3 補正事項6
補正前の請求項5の「締結作業後に、・・・所定時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図」との発明特定事項に対して、その「示す図」の内容として、補正前の請求項2における「各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値であるレーダーチャートである」との技術事項アと、補正前の請求項3における「前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図」であるとの技術事項イとを追加するとともに、さらに、上記「各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値であるレーダーチャートである」との技術事項アの「である」との特定を、「且つ経時変化する」へと変更した技術事項ウとした上で、当該追加された技術事項アとウとを「及び」との用語で結合する補正事項。
4 補正事項7
補正前の請求項5の「該演算部で連続して生成された所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図を」との発明特定事項に対して、上記補正事項6において補正前の請求項2及び請求項3の技術事項アとイを追加し、かつ、当該技術事項アとウを「及び」との用語で結合したことに対応するように、「所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値」との記載を削除するとともに、上記「示す図」が「レーダーチャート」「及び」「経時変化」に係るものであることを特定する補正事項。
第5 取消理由についての当審の判断
1 当初明細書等の記載
当初明細書等には、次の事項が記載されている。
(1)「【0021】
作図工程では、締結作業後に、PC11の演算部で、記憶部に記憶されているボルトの伸び値及びボルトの伸び値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を算出し、トルク値を示す図を、連続して作成する。
【0022】
各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図3~図10に示すレーダーチャートが挙げられる。図3~図10中、レーダーチャートでは、各軸の項目は、ボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値であり、各取得時間におけるボルト3-1~ボルト3-8のトルク値が、それぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれている。
【0023】
そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値が、レーダーチャートのそれぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれたレーダーチャートが作成される(図3)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のレーダーチャート(図4)、締結作業開始後145秒後のレーダーチャート(図5)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図6)、締結作業開始後210秒後のレーダーチャート(図7)、締結作業開始後220秒後のレーダーチャート(図8)、締結作業開始後280秒後のレーダーチャート(図9)、締結作業開始後390秒後のレーダーチャート(図10)が作成される。図3~図10では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。
【0024】
なお、図3~図10のように、各締結ボルトに実際に負荷されたトルク値を結んだ線の他に、各締結ボルトに負荷されるべきトルクの目標値の上限値を結んだ線(トルク値が70Nmの線)と、トルクの目標値の下限値を結んだ線(トルク値が45Nm付近の線)も示されていてもよい。」
(2)「【0025】
また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図11~図18に示す各締結ボルトに負荷されているトルク値の経時変化を示すグラフが挙げられる。図11~図18中、トルク値の経時変化を示すグラフでは、ボルト3-1~3-8のそれぞれについて、横軸が取得時間であり、縦軸がボルトに負荷されたトルク値のグラフが示されている。図11~図18では、ボルト3-1~3-8を、それぞれ、ボルト1~8と記載している。
【0026】
そして、作図工程では、PC11の演算部で、締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値の経時変化のグラフが作成される(図11)。その後は、順次、PC11の演算部で、締結作業開始後105秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図12)、締結作業開始後145秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図13)、締結作業開始後190秒後のレーダーチャート(図14)、締結作業開始後210秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図15)、締結作業開始後220秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図16)、締結作業開始後280秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図17)、締結作業開始後390秒後のトルク値の経時変化のグラフ(図18)が作成される。
【0027】
なお、図11~図18のように、各締結ボルトに実際に負荷されたトルク値のグラフの他に、各締結ボルトに負荷されるべきトルクの目標値の上限値を示す線(トルク値が70Nmの線)と、トルクの目標値の下限値を示す線(トルク値が45Nm付近の線)も示されていてもよい。」
(3)「【0028】
締結過程表示工程では、作図工程でPC11の演算部で連続して作成した所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図を、連続してモニター13に表示させて、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を、学習者に見せる。
【0029】
各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図3~図10に示すレーダーチャートの場合、図3~図10のレーダーチャートを、それぞれの軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図3~図10のレーダーチャートが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。
【0030】
また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図11~図18に示すトルク値の経時変化のグラフの場合、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフを、縦軸と横軸の0秒の軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。そして、締結過程表示工程で、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフが順次連続してモニター13に表示されることにより、モニター13を見ている学習者は、各ボルト3に負荷されたトルク値の推移を確認することができる。」
2 判断
(1)補正事項1、2、6、7について
ア まず、補正事項1における、上記技術事項アと技術事項イとを追加する補正事項についてみると、当該事項は前者が補正前の請求項2に、後者が補正前の請求項3に記載された技術事項であって、補正前の請求項1の「所定時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図」との発明特定事項に対して、その「示す図」についての限定をするものである。
イ 一方、補正事項1における、上記技術事項アの「である」との特定を、「且つ経時変化する」へと変更した技術事項ウとについてみると、当該技術事項ウに含まれる「レーダーチャート」について、上記1のとおり、当初明細書等の【0023】には、「締結作業開始後90秒後のボルト3-1~3-8のそれぞれに負荷されたトルク値が、レーダーチャートのそれぞれの軸にプロットされ、プロットされたトルク値が結ばれたレーダーチャートが作成される」と記載され、さらに、「その後は、順次」、「締結作業開始後105秒後」、「締結作業開始後145秒後」、「締結作業開始後190秒後」、「締結作業開始後210秒後」、「締結作業開始後220秒後」、「締結作業開始後280秒後」、「締結作業開始後390秒後」のレーダーチャートが作成されることが記載されている。
ウ したがって、当初明細書等には、上記の締結作業開始後の時間の経過に対応し、表示されるデータが変更されたその態様が変わるレーダーチャートが順次作成されることが記載されていると解されるから、上記技術事項ウの「且つ経時変化する」との事項は、当初明細書等に記載された事項であり、かつ、補正前の請求項2に記載され、補正前の請求項1に追加された技術事項アに対して限定をするものであると認められる。
エ また、上記1の【0029】には、「図3~図10のレーダーチャートを、それぞれの軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。」と記載されていることからみて、補正事項2における「前記レーダーチャート」との記載が、上記補正事項1の「且つ経時変化する」との事項を含むものとして解した場合においても、当初明細書等に記載された事項であると認められる。
オ 「及び」との用語で結合する補正事項について
さらに、補正事項1における、上記技術事項アとウとを「及び」との用語で結合する補正事項についてみると、当初明細書等には、上記1の【0021】における「作図工程」に関する、「所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を算出し、トルク値を示す図を、連続して作成する。」との記載の「トルク値を示す図」に関して、次の記載とおりの記載がある。
カ 上記1の【0022】には、「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図3~図10に示すレーダーチャートが挙げられる。」と記載されており、「作図工程」において作成される上記「示す図」として「レーダーチャート」が具体的な図の一例として記載されていると認められる。
キ これに対して、上記1の【0025】には、「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図としては、例えば、図11~図18に示す各締結ボルトに負荷されているトルク値の経時変化を示すグラフが挙げられる。」との、上記カのレーダーチャートに係る記載と同様かつこれと並列的に 、「作図工程」において作成される上記「示す図」の具体的な一例として「トルク値の経時変化を示すグラフ」が記載されていると認められる。
ク 一方、補正事項2についてみると、上記1の【0028】に記載された「締結過程表示工程」において、「作図工程で」「連続して作成した所定の時間毎の各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図を、連続してモニター13に表示させる」ことに関して、当初明細書等には次の記載がある。
ケ 上記1の【0029】には、「各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図3~図10に示すレーダーチャートの場合、図3~図10のレーダーチャートを、それぞれの軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。」と記載されており、「締結過程表示工程」において表示される上記「示す図」としての「レーダーチャート」が、表示される図の一の「場合」として示されていると認められる。
コ これに対して、上記1の【0030】には、「また、各ボルト3に負荷されたトルク値を示す図が、図11~図18に示すトルク値の経時変化のグラフの場合、図11~図18のトルク値の経時変化のグラフを、縦軸と横軸の0秒の軸の位置が同じになるようにして、順次連続してモニター13に表示する。」と記載されており、「締結過程表示工程」において表示される上記「示す図」としての「経時変化のグラフ」が、上記カのレーダーチャートに係る記載と同様かつこれと並列的に、表示される図の一の「場合」として示されていると認められる。
サ 以上のことからすると、当初明細書等には、「作図工程」と「締結過程表示工程」のいずれの工程にあっても、「レーダーチャート」と「経時変化のグラフ」とは並列的に記載されるに留まり、当初明細書等の他の箇所も含め、両者を同時に表示することは記載も示唆もされていない。
シ ここで、本件補正後の請求項1の記載についてみると、上記技術事項アとウとを「及び」との用語で結合する補正事項を含むものであるところ、当該「及び」との用語で両者を結合したことによって、「各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート」と、「前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図」とが、双方ともに並列的に作図されることを含むものであると認められるし、「締結過程表示工程」に関する補正事項2についても、双方ともに並列的すなわち同時に表示される態様を含むものであるともいえる。
ス そうすると、本件補正事項1及び2は、上記「ク」のとおりと解することができる補正事項を含むものであるところ、上記「キ」において示したとおり、当初明細書等には、「レーダーチャート」と「経時変化を示す図」とが、並列的に作成され表示されることが記載されていないし、これらが自明であるとの根拠も見いだせない。
セ さらに、補正事項6及び7についても、補正事項1及び2と同じ補正事項を含むものであるから、同様のことがいえる。
ソ 請求人は、令和5年6月16日に提出された意見書において、“ここで、段落【0025】に着目すると、「また、…」との記載があります。この冒頭の接続詞「また」について、デジタル大辞泉(小学館)によれば、以下の意味があります(乙第1号証)。
「1 事柄を並列・列挙するときに用いる。ならびに。「彼は、英語もドイツ語も、またフランス語も話せる」
2 さらに別の事柄を付け加えるときに用いる。その上。「おもしろいだけでなく、また役に立つ」「医者であり、また文学者でもある」
3 並列・列挙した事柄のうち、どれを選択してもいいときに用いる。あるいは。または。「行ってもいいし、行かなくてもいい」」
段落【0025】の冒頭の接続詞「また」は、上記1の事柄を並列・列挙するときの表現であるか、上記2のさらに別の事柄を付け加えるときに用いる表現であるかのいずれかであって、上記3の「あるいは。または。」のような、同類の物事の中のどれか一つであることを表すものや似通った二つ以上の事柄のうちどれか一つを選ぶときに用いるものの表現と解釈すべきではありません。
同様に、広辞苑第四版によれば、接続詞「また」には「1)その上に。そのほかに。2)ならびに。」の意味があります(乙第2号証)。新明解国語辞典第七版小型版によれば、接続詞「また」には「前に述べた事情のほかに、以下の事情も共存(継起)することを表す。」との意味があり、例文として「彼は、有数の政治家である。また(=同時に)すぐれた音楽家でもあった/浅草に行って映画を見た。また帰りに上野にも寄ってみた」との記載があります(乙第3号証)。
段落【0025】の冒頭の接続詞「また」は、「または」や「あるいは」のような、数ある選択肢の中の一つという意味合いではなく、段落【0022】~【0024】で挙げた「トルク値を示す図」としてのレーダーチャートの作図工程に加えて「トルク値を示す図」としてトルク値の経時変化を示すグラフも作図できることを説明する文章を続けることを意図したものです。「または」や「あるいは」ではなく「また」であるので、上記3ではなく、上記1と上記2のいずれかで解釈すべきです。さらに、上記1、2の意味合いでの「また」は、いずれか一つを意味するものではなく、列挙する、あるいは付け加える意味合いで用いられるものであることや、段落【0022】、【0025】で「例えば」との用語を用いて例示であることを明示していることを勘案すると、段落【0021】~【0027】で例示したレーダーチャートとトルク値の経時変化を示すグラフは、一方のみ作因されてもよいし、両方作図されてもよいと解釈すべきです。
つまり、本件明細書の段落【0021】~【0027】に開示されているのは、「トルク値を示す図」としてレーダーチャートを作図する工程、トルク値の経時変化を示すグラフを作図する工程、レーダーチャートとトルク値の経時変化を示すグラフとの両方を作図する工程の3つであることが自明です。
締結過程表示過程についての段落【0028】~【0030】も、段落【0030】に着目すると、「また、…」の記載があります。
段落【0030】の冒頭の接続詞「また」も、段落【0025】の冒頭の接続詞「また」と同様に解釈すべきであって、本件明細書の段落【0028】~【0030】に開示されているのは、「トルク値を示す図」としてレーダーチャートを表示する工程、トルク値の経時変化を示すグラフを表示する工程、レーダーチャートとトルク値の経時変化を示すグラフとの両方を表示する工程の3つであることが自明です。
よって、「レーダーチャート」と「経時変化を示す図」とが並列的に作成され表示されることは当初明細書等から自明であるといえます。”旨、主張する。
タ しかし、本件特許明細書の「また」が、請求人の主張する特定の意味になるのか、その理由が定かでないところ、上記辞書の例文の文意からすれば、本件特許明細書に記載された「また」は、択一的な意味と解するのが普通である。
よって、請求人の主張は採用できない。
チ 以上を総合すると、上記補正事項1、2、6、7は、当初明細書等には記載されておらず、自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、上記補正事項1、2、6、7は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許発明1、2及び5に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由の概要
1 申立理由1(進歩性)
(1)本件特許発明1は、甲第1号証に記載の発明と甲第2号証の記載、または甲第1号証に記載の発明と甲第3号証の記載から容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明2は、甲第1号証に記載の発明と甲第2号証および甲第3号証の記載、または甲第1号証に記載の発明と甲第3号証の記載から容易に発明をすることができたものである。
(3)本件特許発明3は、甲第1号証に記載の発明と甲第3号証の記載から容易に発明をすることができたものである。
(4)本件特許発明4は、甲第1号証に記載の発明から容易に発明をすることができたものである。
(5)本件特許発明5は、甲第1号証に記載の発明と甲第2号証の記載、または甲第1号証に記載の発明と甲第3号証の記載から容易に発明をすることができたものである。
(6)本件特許発明6は、甲第1号証に記載の発明から容易に発明をすることができたものである。
(7)本件特許発明7は、甲第1号証に記載の発明から容易に発明をすることができたものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許発明1、2、5は、明細書の記載に対するサポート要件違反であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。
第7 申立理由についての当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)各甲号証
ア 甲第1号証
本件特許の出願日前の平成29年9月14日に頒布された特開2017-161388号公報(甲第1号証)には、以下の記載がある。
(ア)「【0023】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0024】
(1)シールの締付け状態を表す分布図形を座標上にリアルタイムで提示でき、この分布図形の形状状態や中心からの距離により視覚的にシール材の締付け状態を容易に認識することができる。
【0025】
(2)軸力を増減した際に、フランジ締付け特有の弾性相互作用による緩みを軸力の分布図形の形状変化で容易に認識でき、係る認識を踏まえて目標締付け力に合致するボルト締めを行うことができ、最適な締付け力で適正なシールを実現できる。
【0026】
(3)ボルトに加えるトルクと軸力分布の関係を容易に把握できるので、熟練した作業者にあっては癖の矯正や、スキルアップを図ることができ、シール施工の信頼性を高めることができる。
【0027】
(4)シール材の実習支援ツールとして活用することができるとともに、スキルアップの迅速化に寄与することができる。」
(イ)「【0032】
このシール材の施工モニタリング装置(以下、単に「施工モニタリング装置」と称する)2はシール施工部4に設置される。このシール施工部4は施工モニタリング装置2のモニター対象であり、シール施工機器の一例である。このシール施工部4はフランジ継手6を備え、このフランジ継手6にシール材の一例であるガスケット8を挟み込んでシールする。
【0033】
フランジ継手6は配管10-1、10-2の連結手段であって、一対のフランジ6-1、6-2を備える。フランジ6-1は配管10-1の端部に一体に形成されており、フランジ6-2は配管10-2の端部に一体に形成されている。
…
【0035】
各フランジ6-1、6-2には複数のボルト12-1、12-2・・・12-8が備えられる。各ボルト12-1、12-2・・・12-8は、配管10-1、10-2の中心Oから等距離の周回位置で一定角度θの角度間隔で配置される。角度θは、軸力の位置情報の一例である。各ボルト12-1、12-2・・・12-8には、各フランジ6-1、6-2を等しい位置で貫通してフランジ6-1、6-2を挟んでナット14を取り付けてある。ボルト12-1、12-2・・・12-8の配置を以てナット14を締め付けるので、ガスケット8に均等な締付け力を付与することが可能である。
…
【0037】
各軸力Fを検出するセンサー群18が備えられる。このセンサー群18は、各ボルト12-1、12-2・・・12-8に対応し、複数のセンサー18-1、18-2・・・18-8が備えられる。各センサー18-1、18-2・・・18-8には軸力Fを電気信号で出力するセンサーを用いればよく、圧力センサー、歪ゲージ、変移計、荷重計などのいずれを用いてもよく、ガスケット8の締付け力を直接検出するセンサーであってもよい。
【0038】
センサー群18の各センサー出力はデータ集積部20に取り込まれて集積される。各検出軸力はたとえば、電気信号であり、データ集積部20に電気的に集積される。このデータ集積部20はコンピュータで構成してよく、既存のデータロガーを用いてよい。
【0039】
各検出軸力はデータ集積部20から所定のタイミングで情報生成部22に取り込まれる。この情報生成部22にはたとえば、コンピュータが用いられる。この情報生成部22は各検出軸力をディジタル化して取り込み、締付け力の作図化のための情報処理を実行する。
【0040】
この情報処理には
a)各検出軸力の取込みおよび記憶
b)各検出軸力の位置情報と、検出軸力の分布を表す作図情報の生成
c)軸力分布を展開する座標の生成
d)目標軸力と位置情報を用いて目標軸力の分布を表す作図情報の生成
などの処理が含まれる。目標軸力は、ガスケット8に対する適正な締付け力に必要な軸力である。
【0041】
この情報処理で得られる座標および作図情報はモニター24に提供され、モニター24の画面に座標とともに軸力図形が提示される。モニター24は、作業者や管理者などに対してシール状況を提示する情報提示部の一例である。モニター24は情報生成部22に有線または無線で接続すればよいし、パーソナルコンピュータ(PC)のディスプレイを用いてもよい。」
(ウ)「【0045】
ボルト12-1、12-2・・・12-8の締付けかを判断し(S101)、締付けであれば(S101のYES)、センサー群18からデータ集積部20に各センサー出力を取り込み、検出軸力を集積させる(S102)。この集積には、既述の情報処理のa)各検出軸力の取込みおよび記憶に相当する。
【0046】
検出軸力や目標軸力の作図処理を行う(S103)。この処理には既述のb)各検出軸力の位置情報と、検出軸力の分布を表す作図情報の生成、c)軸力分布を展開する座標の生成、d)目標軸力と位置情報を用いて目標軸力の分布を表す作図情報の生成が含まれる。
【0047】
この作図処理の後、座標上に検出軸力および目標軸力の分布図形をモニター24に表示する(S104)。」
(エ)「【0050】
図3は、軸力のモニタリングにおける検出軸力および目標軸力の各分布図形の一例を示している。
…
【0052】
この例では、ボルト数8に対応した座標軸数であるが、配置するボルト数に合わせて座標軸yの数を設定すればよい。各座標軸y1、y2・・・y8には0点から離れる方向に正の軸力レベルを表すスケールを備え、同一スケール上にx軸が設定されている。」
(オ)「【0061】
このような弾性相互作用による影響を分布図形26-2の変化から容易に認識することは極めて有益である。すなわち、弾性相互作用による軸力の低下現象を可視化することで、弾性相互作用による影響を視覚的な認識させ、軸力の増減感を締付け工具16によるトルクTで体感させることができ、フランジ締付けのスキルを作業者に習得させることができる。」
(カ)「【0094】
この施工モニタリングシステム30には第1および第2の架台32、34が備えられる。架台32は床36に強固に固定された固定架台である。架台34は、キャスター38により移動可能な可動台であり、架台32に対して床36上を所望の位置に移動させることができる。
【0095】
架台32には既述のシール施工部4が搭載され、各センサー18-1、18-2・・・18-8(図1)のケーブル40が架台32内を通過させて台座42側の側面部から引き出され、架台34側に導かれている。この例では、架台32側に既述の配管10-2が備えられる。」
(キ)「【0101】
図9は、この施工モニタリングシステム30の構成例を示している。PC48には、プロセッサ62、記憶部64、入出力部(I/O)66、通信部68、操作入力部70が備えられる。
【0102】
プロセッサ62は、記憶部64にあるOS(Operating System)や施工モニタリングプログラムなどの各種のコンピュータプログラムなどの情報処理を実行する。この情報処理には既述の処理a)ないしe)を含む処理の他、締付け力の演算、施工履歴の記録、モニター24の制御、施工のモニタリングないし施工管理など、コンピュータでの可能な各種の処理が含まれる。
【0103】
記憶部64には記憶デバイスとしてたとえば、ROM(Read-Only Memory)およびRAM(Random-Access Memory)が備えられ、ROMにはOSやモニタリングプログラムが格納される。この記憶部64には検出情報や作図情報などを格納するデータベース(DB)72が構築され、DB72にはデータロガー46から取り込まれる検出情報が格納される。検出情報には、センサー群18、28の各センサー出力が含まれる。」
(ク)「【0155】
検出軸力Fが目標軸力Frefの許容範囲たとえば、±15〔%〕にあるかを判定する(S603)。検出軸力Fが目標軸力Frefの許容範囲にあれば(S603のYES)、その判定結果として軸力は合格とし(S604)、検出軸力Fが目標軸力Frefの許容範囲外であれば(S603のNO)、その判定結果として軸力は不合格とする(S605)。」
(ケ)「【0160】
これらは、評価テーブル80に格納されるとともに、モニター24に表示されて作業者に告知される。「不合格」の軸力に対しては、赤色や赤色点滅などのアラート表示としてもよいし、「合格」の軸力に対しては、緑色などの安全なシールが達成されていることを表示してもよい。」
(コ)「【0167】
上記実施例では、シール施工部4のフランジ継手6を定位置に固定しているが、フランジ継手6は任意の位置に自由に変更してよく、図21のAに示すように、フランジ継手6の位置をたとえば、水平方向に変更してもよい。フランジ継手6の位置を任意に変更可能にすれば、実際の作業環境を模擬すれば、体勢が異なる場合にも適切に締付けを行うことを訓練できる。また、作業環境や作業者の体勢によって締付け力にばらつきが生じ、これがシール性能を低下させることを理解させることができる。」
(サ)上記(ア)及び(イ)より、シール材の施工モニタリング装置は、シールの締付け状態を表す分布図形を座標上にリアルタイムで提示し、視覚的にシール材の締付け状態を容易に認識するシール材の実習支援ツールとして活用することができるものであるから、甲第1号証には、シール材の施工モニタリング装置にシールの締付け状態を表す分布図形を座標上にリアルタイムで提示し、視覚的にシール材の締付け状態を容易に認識することによるシール材の締付け実習方法が記載されているものと認める。
上記記載事項(ア)乃至(コ)、及び認定事項(サ)より、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「シール材の施工モニタリング装置にシールの締付け状態を表す分布図形を座標上にリアルタイムで提示し、視覚的にシール材の締付け状態を容易に認識することによるシール材の締付け実習方法であって、
シール材の施工モニタリング装置は、フランジ継手6にシール材であるガスケット8を挟み込んでシールするシール施工部4に設置され、
フランジ継手6は配管10-1、10-2の連結手段であって、一対のフランジ6-1、6-2を備え、
各フランジ6-1、6-2には複数のボルト12-1、12-2・・・12-8が備えられ、
各ボルト12-1、12-2・・・12-8には、各フランジ6-1、6-2を等しい位置で貫通してフランジ6-1、6-2を挟んでナット14を取り付けてあり、ボルト12-1、12-2・・・12-8の配置を以てナット14を締め付けるので、ガスケット8に均等な締付け力を付与することが可能であり、
各軸力Fを検出する各ボルト12-1、12-2・・・12-8に対応した複数のセンサー18-1、18-2・・・18-8が備えられ、
センサーは、圧力センサー、歪ゲージ、変移計、荷重計などが用いられ、
各検出軸力は所定のタイミングで情報生成部22に取り込まれ、各検出軸力をディジタル化して取り込み、締付け力の作図化のための情報処理が実行され、各検出軸力の位置情報と、検出軸力の分布を表す作図情報の生成、ガスケット8に対する適正な締付け力に必要な軸力である目標軸力と位置情報を用いて目標軸力の分布を表す作図情報の生成の処理が行われ、
この情報処理で得られる座標および作図情報はモニター24に提供され、モニター24の画面に座標とともに軸力図形が提示される、
シール材の締付け実習方法。」
イ 甲第2号証
本件特許の出願日前の平成21年8月27日に頒布された特開2009-191932号公報(甲第2号証)には、以下の記載がある。
(ア)「【0021】
また、符号18ABの右側には、ボルト16Aとボルト16Bとの締め付けによって生じた締付力(kN)を示すグラフが表示されている。このグラフは、縦軸が締付力、横軸が時間軸とされている。同様に、符号18BCの下側には、ボルト16Bとボルト16Cとの締め付けによって生じた締付力(kN)を示すグラフが表示されている。このグラフも、縦軸が締付力、横軸が時間軸とされている。符号18CDの左側には、ボルト16Cとボルト16Dとの締め付けによって生じた締付力(kN)を示すグラフが表示されている。このグラフも、縦軸が締付力、横軸が時間軸とされている。符号18DAの上側には、ボルト16Dとボルト16Aとの締め付けによって生じた締付力(kN)を示すグラフが表示されている。このグラフも、縦軸が締付力、横軸が時間軸とされている。」
(イ)「【0029】
また、ディスプレイ20においては、ロードセル18AB、18BC、18CD、18DA毎の締付力が経時的に表示されているため、ボルト16A、16B、16C、16D毎の締付力の変化を直視することができ、作業者は前記変化を詳細に体感することができる。」
上記記載事項(ア)及び(イ)より、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「ディスプレイ20に、ボルト16A、16B、16C、16D毎の締付力の変化を示すグラフ(縦軸が締付力、横軸が時間軸)を表示すること。」
ウ 甲第3号証
本件特許の出願日前の平成27年12月7日に頒布された特開2015-217497号公報(甲第3号証)には、以下の記載がある。
(ア)「【0008】
また、本発明の一態様に係るフランジ締結スキル判定プログラムは、フランジを連結するために締め付けられる複数のボルトに対し、個別に対応して設けられた各締付力検出器から、被験者の前記複数のボルトの締付作業に伴って出力される出力信号を受信し、前記受信した前記複数のボルト各々の締付作業開始時から締付作業完了時までの各々の前記出力信号の変化の推移を示す複数の計測結果を得るとともに、複数の前記計測結果を演算して、前記複数のボルトの締付作業中における各々の前記締付力検出器の出力信号値のばらつきを示す第一演算結果と、前記複数のボルトの締付作業完了時における各々の前記締付力検出器の出力信号値のばらつきを示す第二演算結果と、前記複数のボルトの前記締付作業完了時における各締付力の程度を示す第三演算結果と、をそれぞれ技能判定項目として得る演算ステップと、各々の前記技能判定項目を判定基準と照合した結果に基づき、前記各ボルトの締付作業に係る被験者の技能を3つ以上の技能レベルのいずれであるかを判定する判定ステップと、前記判定ステップで得られた前記判定結果を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる。」
(イ)「【0031】
被験者が全てのボルト3について締付作業を完了したら、オペレータは、入力手段7から全てのボルト3(8本のボルト3a~3h)の締付作業を完了した旨を入力する。これにより、処理部50は、計測ステップを終了する(S3)。
…
【0033】
続いて、演算部50bは、判定プログラムに基づき、記憶部51に記憶した上記各計測結果を演算し、以下の3つの演算結果を得るための演算ステップを実施する(S4)。」
(ウ)「【0064】
図6に示すように、オペレータが判定画面10中のグラフ表示ボタン16を選択することで、グラフ判定画面20が判定画面10の上に重ねて表示される。グラフ判定画面20の中央に表示される第六表示部21は、一例として、判定試験におけるボルト締付作業の経過時間[sec]を横軸に表示し、ガスケット面圧(Gasket Load)[Mpa]を左側縦軸に表示し、各ボルト3の目標締付力Ftargetを100%とした場合における、Ftargetに対する各ボルトの締付力の割合[%]を右側縦軸とした二次元座標系のグラフを表示する。第六表示部21の右側縦軸は、選択ボタン22を操作することで、締付力の測定値[Mpa]を選択することもできる。第六表示部21では、各ボルト3のデータが互いに異なる態様、具体的には、互いに異なる色表示にて、経過時間とともに連続的に曲線状に表示される。これにより、第六表示部21では、各ボルト3の締付に伴う演算ステップS5の各技能判定項目(α、β、γ)の値が容易に確認できるようになっている。」
上記記載事項(ア)乃至(ウ)より、甲第3号証には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「フランジを連結するために締め付けられる複数のボルトに対し、個別に対応して設けられた各締付力検出器から、被験者の前記複数のボルトの締付作業に伴って出力される出力信号を受信し、前記受信した前記複数のボルト各々の締付作業開始時から締付作業完了時までの各々の前記出力信号の変化の推移を示す複数の計測結果を得、ボルト締付作業の経過時間[sec]を横軸に表示し、ガスケット面圧(Gasket Load)[Mpa]を左側縦軸に表示し、各ボルト3の目標締付力Ftargetを100%とした場合における、Ftargetに対する各ボルトの締付力の割合[%]を右側縦軸とした二次元座標系のグラフを表示するフランジ締結スキル判定プログラム。」
(2)請求項1について
ア 対比
本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「フランジ継手6」、「締付け実習」、「複数のボルト12-1、12-2・・・12-8」、「センサー18-1、18-2・・・18-8」、「各軸力F」、「『座標』と『軸力図形』」、「モニター24」及び「シール材の締付け実習方法」は、それぞれ、前者の「フランジ継手」、「締結作業」、「締結ボルト」、「センサ」、「各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値」、「各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図」、「モニター」及び「フランジ継手の締結過程の学習方法」に相当する。
(イ)後者の「情報生成部22」には、各検出軸力が取り込まれているから、各検出軸力のデータが取得されていることは明らかである。
(ウ)後者の「シール材の締付け実習方法」は、モニター24の画面に座標とともに軸力図形を提示しているから、軸力図形を作図する工程を備えているといえる。
(エ)後者の「シール材の締付け実習方法」は、「実習」としてモニター24の画面に座標とともに軸力図形を提示しているところ、実習の対象が学習者であることは明らかである。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に、該フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力される、各ボルトに負荷されている締め付け強さを示す値、及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータを取得し、記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程と、
締結作業後に、該締め付け強さを示す値及び該締め付け強さを示す値の取得時間のデータに基づいて、所定の時間毎の各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図を、連続して作成する作図工程と、
該作図工程で連続して作成した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、学習者に見せる締結過程表示工程と、
を有することを特徴とするフランジ継手の締結過程の学習方法。」
[相違点1]
本件特許発明1が、フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力を「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に」取得し、「締め付け強さを示す値の取得時間のデータ」を取得し、「記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程」を備えるのに対し、甲1発明は、所定のタイミングであるリアルタイムに取り込んでいる点。
[相違点2]
本件特許発明1が、「締結作業後」に、該締め付け強さを示す値及び「該締め付け強さを示す値の取得時間のデータ」に基づいて、「所定の時間毎の」各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値を示す図「として、各軸が前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値で且つ経時変化するレーダーチャート及び前記各締結ボルトに負荷されている締め付け強さの値の経時変化を示す図」を、「連続して」作成する作図工程を備えるのに対し、甲1発明は、所定のタイミングであるリアルタイム作図情報の生成の処理を行っている点。
[相違点3]
本件特許発明1が、「該作図工程で連続して作成した前記レーダーチャート及び前記経時変化を示す図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、」学習者に見せる「締結過程表示工程」を備えるのに対し、甲1発明は、所定のタイミングであるリアルタイムに軸力図形を提示する点。
イ 判断
甲2技術事項及び甲3技術事項には、締め付け強さの値の経時変化を示す図を表示することが示されている。
しかし、甲1発明は、リアルタイムに軸力Fを取得し、軸力図形を提示することにより、シール材の締付け状態を容易に認識するものであるから、締結作業後に、提示することは想定されていないから、甲1発明に、甲2技術事項及び甲3技術事項を適用する動機付けがないばかりか、適用する阻害要因があるといえる。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明から、当業者が容易に想到し得たものではない。
(3)請求項2乃至7について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件特許発明2と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1乃至3において相違するものである。
また、本件特許発明3及び4は、いずれも、フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力を「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に」取得し、「締め付け強さを示す値の取得時間のデータ」を取得し、「記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶させる記憶工程」及び「該作図工程で連続して作成した図を、連続してモニターに表示させて、各締結ボルトに負荷された締め付け強さの値の推移を、」学習者に見せる「締結過程表示工程」を備えているから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1及び2において相違するものである。
また、本件特許発明5乃至7は、いずれも、フランジ継手を締め付けるための締結ボルト毎に設置されているセンサから出力を「フランジ継手の締結作業の開始時から締結作業の終了時までの間、所定の時間毎に」取得し、「締め付け強さを示す値の取得時間のデータ」を取得し、「記憶部に該データをデータの取得毎に順次記憶」しているから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1において相違するものである。
そうすると、本件特許発明2乃至7は、甲1発明から、当業者が容易に想到し得たものではない。
(4)したがって、申立理由1によって、本件特許発明1乃至7を取り消すことができない。
2 申立理由2(サポート要件)について
本件特許発明1、2、5に対して、サポート要件違反の取消理由は通知していないところ、上記第5 2の通り、当初明細書等には、「レーダーチャート」及び「経時変化を示す図」とが、並列的に作成され表示されることが記載されていないし、これらが自明であるとの根拠も見いだせないから、本件特許発明1、2、5は、サポート要件を満たしていないといえる。
そうすると、本件特許発明1、2及び5は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとの見解は示しておく。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許発明1、2、及び本件特許発明5は、特許法第17条の2の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第1号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700106