2019-700626
複合部品、ポリオキシメチレン製樹脂部品、及び樹脂組成物
- 審判番号
- 2019-700626
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-212181外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月06日
- 審決日
- 2020年06月19日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第6473067号(設定登録時の請求項の数は6。以下「本件特許」という。)は、平成27年10月28日を出願日とする特許出願である特願2015-212181号に係るものであって、平成31年2月1日に、その特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1ないし6に係る特許について、令和1年8月6日に特許異議申立人 渋谷 都(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年11月28日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である令和2年1月31日に訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行うとともに意見書の提出を行った。そして、同年3月4日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人から何ら応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし13のとおりである。なお、下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「金属部品とポリオキシメチレン製樹脂部品を含み、」とあるのを、「金属部品とポリオキシメチレン製樹脂部品を含み、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物が、ポリオキシメチレンホモポリマーを含み、」と訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6についても同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される酢酸の量が、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して100質量ppm以下である」とあるのを、「密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される酢酸の量が、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して100質量ppm以下であり、
密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される全有機体炭素の量がポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下である」と訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6についても同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「複合部品」とあるのを、「複合部品(但し、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する前記樹脂組成物が、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含むものを除く)」と訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6についても同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(5) 訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1又は2に記載の複合部品」とあるのを、「請求項1に記載の複合部品」と訂正する。
(6) 訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合部品」とあるのを、「請求項1又は3に記載の複合部品」と訂正する。
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5及び6についても同様に訂正する。
(7) 訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合部品」とあるのを、「請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の複合部品」と訂正する。
(8) 訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合部品」とあるのを、「請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の複合部品」と訂正する。
(9) 訂正事項9
訂正前の段落【0092】にある4箇所の「実施例1~6」との記載を、すべて「参考例1~6」と訂正する。
(10) 訂正事項10
訂正前の段落【0093】の【表2】に、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」とあるのを、それぞれ、「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」、「参考例5」及び「参考例6」と訂正する。
(11) 訂正事項11
訂正前の段落【0094】にある4箇所の「実施例7~15」との記載を、すべて「参考例7~9、13~15、実施例10~12」と訂正する。
(12) 訂正事項12
訂正前の段落【0095】に、「実施例1」とあるのを、「参考例1」と訂正する。
(13) 訂正事項13
訂正前の段落【0096】の【表3】に、「実施例7」、「実施例8」、「実施例9」、「実施例13」、「実施例14」及び「実施例15」とあるのを、それぞれ、「参考例7」、「参考例8」、「参考例9」、「参考例13」、「参考例14」及び「参考例15」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されるポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物がポリオキシメチレンホモポリマーを含むことを限定するものであり、かかる限定は、ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物においてポリオキシメチレンホモポリマーを必須としていなかった訂正前の請求項1に係る複合部品を、ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物においてポリオキシメチレンホモポリマーを必須成分とするものに減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0017】の「ポリオキシメチレン(A)としては、例えば、ポリオキシメチレンホモポリマー(a-1)及びポリオキシメチレンコポリマー(a-2)が挙げられる」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項1によって、訂正される請求項3ないし6についての訂正も同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載される複合部品を、「密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される全有機体炭素の量をポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下である」ものに限定するものであり、かかる限定は、上記の全有機体炭素の量について特定されていなかった訂正前の請求項1に係る複合部品を、全有機体炭素の量がポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下であるものに減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正事項2は、本件特許明細書の【0063】の記載及び訂正前の請求項2の記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項2によって、訂正される請求項3ないし6についての訂正も同様である。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載される「複合部品」を「前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する前記樹脂組成物が、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含むもの」を除くものに限定するものであり、「前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する前記樹脂組成物が、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含む」態様を包含していた訂正前の請求項1に係る複合部品を、当該無機粉体を含まないように減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1から、特定の態様を除く訂正事項3の訂正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項3によって、訂正される請求項3ないし6についての訂正も同様である。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(5) 訂正事項5ないし8について
訂正事項5ないし8は、訂正前の請求項3ないし6の記載において引用する請求項から請求項2を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項5及び6によって、訂正される請求項についての訂正も同様である。
(6) 訂正事項9ないし13について
訂正事項1及び2により、本件特許明細書中の実施例1~9及び13~15は、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなるところ、訂正事項9~13は、この「実施例1~9、13~15」を、「参考例1~9、13~15」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項9ないし13は、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなった実施例を参考例に訂正するものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項2ないし6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし6は、一群の請求項〔1-6〕に該当し、本件訂正請求は、この一群の請求項ごとに請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-6〕について請求されたものである。そうすると本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、訂正事項1ないし13に係る訂正前の請求項1ないし6に対して、特許異議の申立てがされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する、いわゆる独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件発明1」・・・のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】金属部品とポリオキシメチレン製樹脂部品を含み、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物が、ポリオキシメチレンホモポリマーを含み、密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される酢酸の量が、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して100質量ppm以下であり、続きを表示(全16行)密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される全有機体炭素の量がポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下である複合部品(但し、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する前記樹脂組成物が、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含むものを除く)。【請求項2】(削除)【請求項3】前記金属部品が鉄鋼系金属である、請求項1に記載の複合部品。【請求項4】前記ポリオキシメチレン製樹脂部品及び/又は前記金属部品が動作されて使用される部品であるか、又は前記金属部品が通電されて使用される部品である、請求項1又は3に記載の複合部品。【請求項5】請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の複合部品に含まれるポリオキシメチレン製樹脂部品であって、前記金属部品との摺動部位を有するポリオキシメチレン製樹脂部品。【請求項6】請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の複合部品に含まれるポリオキシメチレン製樹脂部品に含有される樹脂組成物であって、メルトフローレート(MFR)が0.9~45g/10分であり、安定剤を含有する樹脂組成物。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(甲1を根拠とする新規性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし6に係る特許は、甲2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)証拠方法
・ 甲第1号証:特開2014-40547号公報
・ 甲第2号証:特開平8-302155号公報
・ 甲第3号証:神原周(外2名)「デルリン樹脂について」、
有機合成化学第19巻第1号(1961)、第47~56頁
なお、文献名の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、甲第1ないし3号証を、それぞれ、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して、当審が令和1年11月28日付けで特許権者に通知した取消理由(以降、「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び3ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献等に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献等に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・ 取消理由1(新規性)について
・ 取消理由2(進歩性)について
第6 当審の判断
1 甲号証の記載事項及び甲号証記載の発明
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(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明について
ア 甲1の記載事項
甲1には次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・ 「【請求項1】
剛性が2500MPa以上であり、耐衝撃性が10kJ/m2以上であり、摩擦係数が0.15以下であり、
オキシメチレンユニット100molに対して0~1.0molのコモノマーユニットを含有するポリオキシメチレンを含む、対金属間欠型摺動部品用ポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の対金属間欠型摺動部品用ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材(I)と、金属製の相手材(II)とを有し、前記部材(I)と前記相手材(II)とが接している、ポリオキシメチレン製間欠型摺動部品。」
・ 「【0010】
そこで、本発明においては、実用上充分な生産性を確保しながら、金属と間欠的に摺動した際の寸法変化が小さく、かつ優れた耐久性を有する対金属間欠型摺動部品となるポリオキシメチレン樹脂組成物及びそれを用いた間欠型摺動部品を提供することを目的とする。」
・ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部品を用いることによって、金属と間欠的に摺動した際に、寸法変化が小さく、かつ優れた耐久性を有するポリオキシメチレン製間欠型摺動部品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」
・ 「【0143】
(原材料)
<ポリオキシメチレン(A)>
ポリオキシメチレン(A)としては、次の手順により得たポリオキシメチレンホモポリマー(A-1)及びポリオキシメチレンコポリマー(A-2)を用いた。使用したポリオキシメチレン(A)と、そのメルトフローレートとを表1に示す。」
・ 「【0149】
・(A-2-1~2)ポリオキシメチレンコポリマーの合成
(重合工程)
ポリオキシメチレンコポリマーは、以下のようにして調製した。まず、熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、径に対する長さの比(L/D)=10)を80℃に調整した。主モノマーとしてトリオキサンを3750g/hr、コモノマーとして1,3-ジオキソランを25~150g/hr、かつ、連鎖移動剤(メチラール)を2.0~8.0g/hrの範囲で調整を行ない、前記連続混合反応機に連続的にフィードした。
【0150】
また、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10-5molになるように、前記連続混合反応機に添加して重合を行い、(A-2-1)の重合フレークを得た。また、メルトフローレートを表1に記載のように調整した以外は、上記同様の操作を行い(A-2-2)の重合フレークも得た。なお、メルトフローレートの調整は、連鎖移動剤や重合触媒の添加量を制御することにより行なった。
【0151】
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1質量%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1質量%水溶液を、濾過、洗浄及び乾燥を順次行い、粗ポリマーを得た。
【0152】
(末端安定化工程)
得られた粗ポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、下記数式(α)を用いて窒素の量に換算した場合に20ppmとなる量相当を添加し、均一に混合した後120℃で3時間乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
(式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
【0153】
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化を以下のとおり実施した。ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製、BT-30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、ポリマー末端を安定化させつつ減圧脱気を行って、乾燥ポリマーを得た。
【0154】
(造粒工程)
次に、上記乾燥ポリマー100質量部に対し、安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)0.2質量部と、H-3(旭化成ファインケム(株)社製)0.2質量部とを予めヘンシェルミキサーにて1分間混合した。得られた混合物を、上記二軸押出機の後段部分にあるサイドフィーダーから添加し、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)社製 BT-30、L/D=44)にてスクリュー回転数80rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンコポリマーのペレットを得た。原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。」
・ 「【0157】
【表1】
・・・(中略)・・・
【0158】
<潤滑剤(B)>
潤滑剤(B)として、下記(B-1)~(B-5)を用いた。
(B-1):エステル系潤滑剤(エチレングリコールジステアレート、日本油脂(株)社製、融点>50℃)」
「【0162】(ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)の調製)上記の原材料(A)と、及び必要に応じて、(B)、(C)又は(D)とを、表2に示す組成に従って配合し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物を、ベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業社製、BT-30、L/D=44、設定温度200℃、回転数80rpm)を用いて、溶融混合し、造粒を行ない、ポリオキシメチレン樹脂組成物(P1)~(P5)、(P7)~(P18)のペレットを得た。・・・(中略)・・・【0163】【表2】」
・ 「【0172】
〔相手材(II)を形成する金属〕
相手材(II)を形成する金属として以下を使用した。
(b-1):炭素鋼(S45C-Q)
(b-2):ステンレス鋼(SUS416)
(b′) :ポリオキシメチレン樹脂(旭化成ケミカルズ(株)社製、テナック2010)の丸棒。」
・ 「【0196】
[実施例1~4、比較例1~5]
実施例1~4、比較例1~5のポリオキシメチレン製間欠型摺動部品の評価結果を表4に記した。・・・(中略)・・・
【表4】
」
イ 甲1に記載された発明
甲1の、特に比較例4の記載から、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
<甲1部品発明>
「下記のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部材(I)と、金属製の相手材(II)とを有し、前記部材(I)と前記相手材(II)とが接している、ポリオキシメチレン製間欠型摺動部品。上記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、主モノマーとしてトリオキサン、コモノマーとして1,3-ジオキソラン、連鎖移動剤としてメチラール、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を用いて重合して、メルトフローレートを2.5g/10minに調製したポリオキシメチレンコポリマー(A-2-2)の重合フレークを得た後、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩で末端安定化させて乾燥ポリマーを得て、さらに安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)と、H-3(旭化成ファインケム(株)社製)を加えて溶融混練して得られたペレットに、潤滑剤として、エステル系潤滑剤(エチレングリコールジステアレート)を含有させたものであり、金属製の相手材として炭素鋼(S45C-Q)を用いたもの」(以下、「甲1部品発明」という。)
また、甲1には、ポリオキシメチレン樹脂組成物について、以下の発明が記載されている。
<甲1組成物発明>
「主モノマーとしてトリオキサン、コモノマーとして1,3-ジオキソラン、連鎖移動剤としてメチラール、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を用いて重合して、メルトフローレートを2.5g/10minに調製したポリオキシメチレンコポリマー(A-2-2)の重合フレークを得た後、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩で末端安定化させて乾燥ポリマーを得て、さらに安定剤としてイルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)と、H-3(旭化成ファインケム(株)社製)を加えて溶融混練して得られたペレットに、潤滑剤として、エステル系潤滑剤(エチレングリコールジステアレート)を含有させた樹脂組成物。」(以下、「甲1組成物発明」という。「甲1部品発明」及び「甲1組成物発明」を総称して「甲1発明」という。)
(2) 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明について
ア 甲2の記載事項
甲2には次の事項が記載されている。
・ 「【請求項1】 ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対し、
式
(Mg1-xAl)O1+1/2x
(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5重量部を含むことを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項2】 請求項1記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む材料を用いて成形されたことを特徴とする成形体。」
・ 「【0003】しかしながら、ポリオキシメチレンポリマーは、通常の雰囲気で用いられる場合には耐久性等に優れているが、水、水蒸気等に触れて使用する場合や高温高湿雰囲気下で長時間晒される場合にはポリマー自体の加水分解による劣化が徐々に進行し物性が低下するのみならず、劣化によって生じたモノマー成分であるホルムアルデヒドやその副反応で生じる蟻酸等の反応性の高い揮発成分が、近接する金属部品、ゴム、プラスチック等の腐食、劣化を生じさせる可能性がある。例えば、アセタール樹脂が水と接触して樹脂中に拡散した水により、樹脂中のホルムアルデヒド、蟻酸や酢酸等の酸成分などが抽出される。さらに、ホルムアルデヒドがカニッツァロ反応により蟻酸とメタノールに変化することにより酸化劣化がさらに進行してしまうことがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水、水蒸気等に触れて使用する場合や高温高湿雰囲気下で長時間晒される場合であっても、物性や耐久性が低下せず、近接する金属部品、ゴム、プラスチック等に影響を与えない信頼性の高いポリオキシメチレン樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。」
・ 「【0008】本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いられる固溶体は、Al2O3がMgOに固溶したものであり、次式
Mg1-xAlx(OH)2A-nx/n・mH2O
(式中A-nはn価のアニオンを示し、x,mおよびnは0<x<0.4,0<m<1,1<n<4の範囲を満たす正の数である)で表されるハイドロタルサイト類化合物を約400℃~900℃、好ましくは約500℃~700℃で焼成処理することにより得ることができる。このようにして得られた固溶体は適当な粉砕機を用いて所望の平均粒径となるように調整することができる。本発明においては、ポリオキシメチレン樹脂に均等に分散して添加される固溶体の平均粒径は10ミクロン程度であることが望ましい。
【0009】上記のハイドロタルサイト類化合物はAl2O3とMgOとの固溶体が層状構造をなし、その層間に水、炭酸イオン、その他酸性アニオン等が挟まれる構造をとるものである。本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物に用いられる酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの固溶体は、上記ハイドロタルサイト類化合物の層間に取り込まれたアニオン分子が取り除かれた状態にある物質であり、この状態で蟻酸、酢酸等の酸性分を捕捉する効果を発現し、既に層間に上記分子等が取り込まれて飽和している場合には上記効果は発現しない。」
・ 「【0011】以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】まず、後述の実施例および比較例の各サンプルに対して行われた高温高湿エージング試験について説明する。スチロール製の箱容器内に実験対象のオキシメチレン樹脂85gおよび水15gを入れ、その上にスチール製の金属片とクロロプレンゴム製のローラーを載せたスチロール製の小箱を載せた。箱容器に蓋をし、蓋と箱容器との境目を接着テープで密封し、70℃で一週間放置して、金属の腐食の程度、ゴム表面の油状物質の析出(汚染)の程度を次の4段階の判断基準に照らして評価した。
【0013】
○ 金属片の表面に若干のさびあり。
△ 金属片の表面にかなりのさびの発生あり。
× 金属片の全表面にさびの発生あり。
○ ゴムローラーの表面に若干のくもりあり。
△ ゴムローラーに部分的に油状の斑点の発生あり。
× ゴムローラー全体が油状の斑点で覆われる。
【0014】また、上記高温高湿エージング試験後に、スチロール製の箱容器内にさらに65gの水を加えたうえで、pHメーターでpH値を測定した。このpH値は加水分解による劣化に伴って発生する酸性分の濃度を調べて、緩衝物質の添加による緩衝効果の有無を判断する目安とした。これらの評価、測定値は表1
に示した。」
・ 「【0016】
○ 重量減少0.2~0.4%
△ 重量減少0.4~1.0%
× 重量減少1%以上
(実施例1)オキシメチレンホモポリマー、デルリン1700P-NC10(デュポン社製)(MFR(溶融流量)16.5/10分:測定温度190℃、荷重1190g)3kgに対し、0.75gのAl2O3とMgOとの固溶体(製品名:キョーワード2200、協和化学株式会社製)を添加し、35mm径二軸スクリュー押し出し成形機(東芝製)にて設定温度200℃で溶融混練した。混練状態が安定した時点で、水冷した後、ペレタイザーで切断し、ペレット形状の樹脂500gをサンプリングした。このサンプルを一昼夜、室温で乾燥した後、上述の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0017】(実施例2)Al2O3とMgOとの固溶体を1.5g添加した以外は実施例1と同様にしてサンプルを得、上述の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0018】(実施例3)Al2O3とMgOとの固溶体を6g添加した以外は実施例1と同様にしてサンプルを得、上述の試験を行い、その結果を表1に示した。」
・ 「【0025】
【表1】
・・・(中略)・・・
【0027】以上の結果から、ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対し上記固溶体を0.02~0.5重量部の範囲で添加した樹脂組成物の成形体は、高温高湿条件下における金属腐食およびゴム劣化を抑制すると共に、良好な成形性を示すという優れた効果を奏することがわかった。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、高温高湿状態における樹脂の劣化を抑制することができるので、例えば、水、水蒸気、もしくは高温高湿雰囲気下での加水分解による劣化、さらには、その劣化によって発生していた酢酸、蟻酸等の揮発性の酸性分による部品回りの金属、プラスチック、ゴム等の部品の腐食、劣化を確実に低減することが可能である。従って、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体は、具体的にはオーディオ、ビデオ、複写機、印刷機、コンピュータ機器等に使用されるギヤ、シャーシー、カム、ローラー等の部品や自動車のワイパー、ドアロック装置等に使用されるギヤ、コンビネーションスイッチ等に好適に利用され得る。」
イ 甲2に記載された発明
甲2の、特に請求項2及び実施例3の記載から、甲2には、以下の発明が記載されていると認める。
<甲2成形体発明>
「オキシメチレンホモポリマー、デルリン1700P-NC10(デュポン社製)(MFR(溶融流量)16.5/10分:測定温度190℃、荷重1190g)3kgに対し、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体を6g含むポリオキシメチレン樹脂組成物を含む材料を用いて成形された成形体。」(以下、「甲2成形体発明」という。)
また、甲2には、ポリオキシメチレン樹脂組成物について、以下の発明が記載されている。
<甲2組成物発明>
「オキシメチレンホモポリマー、デルリン1700P-NC10(デュポン社製)(MFR(溶融流量)16.5/10分:測定温度190℃、荷重1190g)3kgに対し、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体を6g含むポリオキシメチレン樹脂組成物。」(以下、「甲2組成物発明」という。「甲2成形体発明」及び「甲2組成物発明」を総称して「甲2発明」という。)
2 甲1発明との対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1部品発明を対比すると、甲1部品発明におけるポリオキシメチレン樹脂組成物は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体を含有しないものであるから、以下の点で一致する。
<一致点>
金属部品とポリオキシメチレン製樹脂部品を含む複合部品(但し、前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する前記樹脂組成物が、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含むものを除く)。
そして、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の複合部品は、「密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される酢酸の量が、ポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して100質量ppm以下であり、
密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される全有機体炭素の量がポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下である」と特定されるのに対し、甲1部品発明のポリオキシメチレン製間欠型摺動部品においては、そのような特定がない点。
<相違点2>
本件発明1の複合部品は、ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物が、「ポリオキシメチレンホモポリマー」を含むものであるのに対し、甲1部品発明のポリオキシメチレン製間欠型摺動部品を構成する樹脂組成物は、ポリオキシメチレンコポリマーの重合フレークを得た後、末端安定化させたものを含むものである点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
甲1部品発明における部材(I)を形成するポリオキシメチレン樹脂組成物は、コポリマーを含むものであって、ホモポリマーを含有しない点で、本件発明1における樹脂組成物と実質的に相違するものといえる。
また、甲1の段落【0011】に「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて形成された部品を用いることによって、金属と間欠的に摺動した際に、寸法変化が小さく、かつ優れた耐久性を有するポリオキシメチレン製間欠型摺動部品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った」と記載されるように、甲1部品発明の課題解決手段の前提となる「特定のポリオキシメチレン樹脂」であるコポリマーをあえてホモポリマーに置換、又はホモポリマーを更に含有させる動機付けは、甲1に記載も示唆も無く、当業者にとって、甲1部品発明から本件発明1の発明特定事項に到達できるものではない。
ウ 効果について
また、本件発明1は、本件特許明細書における実施例10ないし12及び16と、対応する比較例との対比から看取できるように、相違点2に係るポリオキシメチレンホモポリマーを含む樹脂部品と、金属部品を含む複合部品を用いることで、高温高湿環境下における外観及び耐久作動性に格別顕著な効果を得るものである。
エ 小括
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1部品発明であるとはいえず、また、甲1部品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件発明3ないし5について
本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5に係る発明である本件発明3ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、いずれも、上記(1)で本件発明1について述べたように甲1部品発明であるとはいえず、また甲1部品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件発明6について
本件発明6は、本件特許の請求項1、3又は4のいずれかを引用する請求項6に係る発明であって、本件発明1、3又は4の複合部品に含まれるポリオキシメチレン製樹脂部品に含有される樹脂組成物のメルトフローレートの範囲及び当該樹脂組成物に安定剤を含有することをさらに特定するものである。
本件発明6と甲1組成物発明を対比すると、甲1組成物発明に用いるポリオキシメチレンコポリマーのメルトフローレートは2.5g/10minであり、さらに安定剤を加えているから、結局、上記(1)アで認定した相違点1及び2と同じ点において相違する。
そして、当該相違点2については、上記(1)イで判断したとおりである。
よって、本件発明6は、甲1組成物発明ではなく、また甲1組成物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) まとめ
以上のとおり、本件発明1及び3ないし6は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 甲2発明との対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
甲2には、ポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体の用途として、「具体的にはオーディオ、ビデオ、複写機、印刷機、コンピュータ機器等に使用されるギヤ、シャーシー、カム、ローラー等の部品」(段落【0028】)が記載されていることから、甲2成形体発明に係る成形体は部品として供されることが明らかである。
したがって、本件発明1と甲2成形体発明を対比すると、以下の点で一致する。
<一致点>
ポリオキシメチレン製樹脂部品を含み、
前記ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物が、ポリオキシメチレンホモポリマーを含む部品。
そして、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3>
本件発明1の複合部品は、「密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される酢酸の量が、ポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して100質量ppm以下であり、
密閉された2Lのポリプロピレン容器に、150gの水を入れたビーカーとともに入れ、温度80℃のオーブンに15日間放置した後、常温に戻した後のビーカーの水に抽出される全有機体炭素の量がポリオキシメチレン製樹脂部品の質量に対して300質量ppm以下である」と特定されるのに対し、甲2成形体発明には、そのような特定がない点。
<相違点4>
本件発明1の複合部品には、金属部品を含むことが特定されるのに対し、甲2成形体発明には、そのような特定がない点。
<相違点5>
本件発明1の複合部品における、ポリオキシメチレン製樹脂部品を構成する樹脂組成物が、「式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体0.02~0.5質量部を含むものを除く」ものであるのに対し、甲2成形体発明における、成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物は、「オキシメチレンホモポリマー、デルリン1700P-NC10(デュポン社製)(MFR(溶融流量)16.5/10分:測定温度190℃、荷重1190g)3kgに対し、式(Mg1-xAl)O1+1/2x(式中xは0<x<0.4の不等式を満たす)で表される酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体である無機粉体を6g含む」もの、すなわち、ポリオキシメチレン樹脂100重量部に換算すると、0.2重量部の上記無機粉体を含むものである点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、上記相違点5から検討する。
甲2成形体発明は、甲2の段落【0009】に記載されるように、ポリオキシメチレンホモポリマーに対し上記無機粉体の固溶体を添加することで、層状構造をなす固溶体の層間に蟻酸、酢酸等の酸性分を捕捉するものであり、その実施例に記載されるように上記無機粉体の固溶体を所定量含むことで、高温高湿条件下における金属腐食およびゴム劣化を抑制すると共に、良好な成形性を示すという効果を奏するものであるから、この固溶体である無機粉体を含まないことを特定事項とする本件発明1は、甲2成形体発明から到達できるものではない。
よって、相違点5以外について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2成形体発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件発明3ないし5について
本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5に係る発明である本件発明3ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、いずれも、上記(1)で本件発明1について述べたように甲2成形体発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件発明6について
本件発明6は、本件特許の請求項1、3又は4のいずれかを引用する請求項6に係る発明であって、本件発明1、3又は4の複合部品に含まれるポリオキシメチレン製樹脂部品に含有される樹脂組成物のメルトフローレートの範囲及び当該樹脂組成物に安定剤を含有することをさらに特定するものである。
本件発明6と甲2組成物発明を対比すると、甲2組成物発明において、用いたオキシメチレンホモポリマーのメルトフローレートすなわちMFRは、16.5/10分(当合議体注:単位は技術常識から「g/10分」と認定した。)であるから、この点は新たな相違点にならず、結局、上記(1)アにおいて認定した相違点3及び5と同じ点において相違する。
そして、当該相違点5については、上記(1)イで判断したとおりである。
よって、本件発明6は、甲2組成物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) まとめ
以上のとおり、本件発明1及び3ないし6は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
4 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が主張する申立理由1に対し、取消理由1は、訂正前の請求項2について採用していない点を除き同旨である。
そして、本件訂正による訂正により、訂正前の請求項2が削除されたので、採用しなかった申立理由1は、検討を要しない。
また、申立理由2に対し、取消理由2は同旨の理由を包含するものである。
したがって、取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載された申立理由は、理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1及び3ないし6に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2に係る特許は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てのうち、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700626