特許異議申立
2019-700414
キャップ付容器
- 審判番号
- 2019-700414
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-158371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月22日
- 審決日
- 2019年10月10日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユニバーサル製缶株式会社
- 【権利者代理人】青山 正和
- 【異議申立人】青山 裕樹
- 分類
- P1652.113-YAA(B65D) / P1652.121-YAA(B65D) / P1652.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6431582号発明「キャップ付容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6431582号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6431582号の請求項5に係る特許を維持する。
特許第6431582号の請求項1及び4に係る特許についての申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6431582号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成25年6月19日にされた特許出願(特願2013-128369号、以下「原出願」という。)の一部を、平成29年8月21日に新たに特許出願したものであり、平成30年11月9日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年11月28日)がされた。その後、請求項1、4及び5に係る特許について、令和1年5月22日に特許異議申立人青山裕樹(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において令和1年7月22日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である令和1年9月19日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)がされたものである。
なお、以下の「第2」で述べるように、本件訂正は、特許異議の申立てがされた請求項1、4を削除して、申立てがされていない請求項2及び3、並びに請求項2又は3を引用する請求項5についてのみされたものであるため、特許法第120条の5第5項ただし書の特別の事情があると認め、本件訂正請求に関し、申立人に対して意見書を提出する機会を与えなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は次の訂正事項(1)~(7)のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、独立形式に改め、「容器と、該容器の口金部に装着されて密栓するキャップとを備えるキャップ付容器であって、前記キャップは、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けたライナとを備え、前記ライナは、前記天面部の内面側に配置され該天面部と摺動する摺動層と、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で前記容器と接触する密封層とを有し、前記キャップは前記ライナを前記口金部に圧接した状態で該口金部に巻き締められて装着されており、
前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられており、
前記摺動層と前記天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、前記キャップの閉栓位置から10°以内であることを特徴とするキャップ付容器。」と訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3及び5も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか一項記載のキャップ付容器。」とあるのを、「請求項2又は3に記載のキャップ付容器。」と訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0008】に「巻き締められて装着されており、」とあるのを「巻き締められて装着されており、前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられており、」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0011】の「本発明のキャップ付容器において、前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられているとよい。」の記載を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0012】の「また、本発明のキャップ付容器において、前記摺動層は前記天面部に接着されていないものとすることができる。」の記載を削除する。
2.訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の追加の有無、独立特許要件及び一群の請求項
(1)訂正事項1について
本件訂正の訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び新規事項の追加に該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
本件訂正の訂正事項2は、請求項2について請求項1との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び新規事項の追加に該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
本件訂正の訂正事項3は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び新規事項の追加に該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
本件訂正の訂正事項4は、「請求項1から4のいずれか一項」を引用していた本件訂正前の請求項5について、上記訂正事項1及び3により請求項1及び4を削除することに伴い、「請求項2又は3」を引用するものとして、引用請求項の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び新規事項の追加に該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5~7について
本件訂正の訂正事項5~7は、訂正事項1~4による特許請求の範囲の請求項1~5の記載の訂正に整合するように、明細書の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと、及び新規事項の追加に該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)独立特許要件
本件訂正の訂正事項2は、特許異議の申立てがされていない請求項2及び3に係る訂正であるが、当該訂正は前記(2)のとおり特許法第120条の5第2項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
したがって、前記訂正事項2に関し、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(7)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5がそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用する関係にあり、前記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、当該一群の請求項1~5に対して請求されたものである。
また、訂正事項5~7による明細書の訂正に係る請求項は、請求項1及びこの請求項1を直接又は間接に引用する請求項2~5であり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する、一群の請求項の全てについて行われたものである。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正を認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正請求は認容されるから、本件特許の請求項2、3、5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項2、3、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項2】
容器と、該容器の口金部に装着されて密栓するキャップとを備えるキャップ付容器であって、前記キャップは、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けたライナとを備え、前記ライナは、前記天面部の内面側に配置され該天面部と摺動する摺動層と、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で前記容器と接触する密封層とを有し、前記キャップは前記ライナを前記口金部に圧接した状態で該口金部に巻き締められて装着されており、
前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられており、
前記摺動層と前記天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、前記キャップの閉栓位置から10°以内であることを特徴とするキャップ付容器。
【請求項3】
前記ライナと前記天面部との接着力は、前記摺動層と前記天面部との間の静止摩擦力よりも小さいことを特徴とする請求項2記載のキャップ付容器。
【請求項5】
前記トルクのピーク値が40N・cm以上100N・cm以下とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のキャップ付容器。
第4 特許異議の申立てについて
請求項1及び4に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除されたため、以下、請求項5に係る本件発明5について検討する。
1.取消理由の概要
本件発明5に対して、特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
理由1)本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2)本件発明5は、原出願の出願前に頒布された甲第1号証(特開2008-213039号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3)本件発明5は、原出願の出願前に頒布された上記甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.当審の判断
(1)理由1(特許法第36条第6項第2号)について
特許権者に通知した取消理由の理由1は、訂正前の請求項1の「前記摺動層と前記天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、前記キャップの閉栓位置から10°以内である」との記載について、「トルクのピーク値」とは具体的に何を意味するのか明らかでなく、摺動層と天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、キャップの閉栓位置から0°にほかならないと解されるところ、上記「10°以内」の数値範囲のうち0°以外の数値がどのような技術的意味を有するのか明らかでない、との不備があるというものである。
そこで、本件発明5についてみると、本件発明5は本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであり、上記「前記摺動層と前記天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、前記キャップの閉栓位置から10°以内である」との事項を含むものであるが、同じく、本件発明2の「前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられており、」との事項も含むものである。ここで、本件明細書には、「接着部分によって開栓時の抵抗を高めることができる。・・・・摺動層と天面部とが摺動を開始するために要するトルクのピーク値の大きさを容易に調整することができる」(段落【0011】)、「キャップの閉栓位置から10°以内に摺動層と天面部との摺動開始位置を設ける」(段落【0010】)と記載されており、これらの記載からみて、本件発明5の「トルクのピーク値」は、摺動層と天面部との間の接着状態が解除され摺動を開始するために要するトルクのピーク値を意味し、また、本件発明5の「10°以内」の数値範囲のうち0°以外の数値は、キャップの閉栓位置から接着状態が解除される位置までを意味するものと解される。
そうすると、上記「前記摺動層と前記天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、前記キャップの閉栓位置から10°以内である」との事項を含む本件発明5の記載が、明確でないとまではいえない。
(2)理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(特許法第29条第2項)について
ア.甲第1号証(特に【0001】、【0025】~【0028】、【0036】、【0047】、【0058】、【0074】~【0075】、図2、4)には、以下の「甲1発明」が記載されている。
「ボトル本体13と、口金部7に取り付けられて密封するキャップ1とを備えるキャップ付きボトル6であって、キャップ1は、天板部2と天板部2の周縁から垂下した筒状周壁部3とからなるキャップシェル4と、天板部2の内面に設けたライナー5とを備え、ライナー5は、天板部2の内面に接して配され、キャップシェル4の内天面と摺動する硬質シート5aと、硬質シート5a上に樹脂成型で形成され硬質シート5aよりも柔軟で口金部7に接する軟質層5bとを有し、キャップ1は、ライナー5が口金部7に圧接される状態で、これによりボトル6の内容物が密封された状態で口金部7に巻き締めた状態で備えられているキャップ付きボトル6。」
イ.本件発明5と甲1発明とを対比すると、
本件発明5が、キャップにより容器を密栓した状態において、摺動層の一部が天面部と接着状態に設けられており、摺動層と天面部との摺動開始の際のトルクのピーク値発生位置は、キャップの閉栓位置から10°以内であるのに対し、甲1発明は、そうではない点(以下「相違点1」という。)、
本件発明5が、トルクのピーク値が40N・cm以上100N・cm以下とされているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点(以下「相違点2」という。)で相違し、その余で一致する。
ウ.上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、ライナー5の一部とキャップシェル4との間を接着状態とすることは記載されていない。むしろ、ライナー5をキャップシェル4に硬質シート5aで接するようにして、摩擦抵抗が低く温度依存性の少ない開栓トルク値が得られる(甲第1号証の段落【0047】)ようにしたものであるから、ライナー5の一部とキャップシェル4との間を接着して、抵抗を増やす動機付けがない。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明5の上記相違点1に係る構成は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。
エ.よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.申立人は、甲第1号証のほか、甲第2号証(特許第3456684号公報)、甲第3号証(特開平11-37870号公報)及び甲第4号証(特開平7-134076号公報)を提出して、特許異議申立書(8頁9行~9頁12行)において、本件発明5は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基いて、あるいは、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかし、甲第1号証~甲第4号証のいずれにも、「摺動層の一部が天面部と接着状態に設けられ」るとの事項が、記載も示唆もされていないから、申立人の主張は採用することができない。
イ.また、申立人は、特許異議申立書(9頁13行~10頁11行)において、ライナーと天面部とが部分的に接着されていることが限定されていないことによるサポート要件に係る理由を主張する。
しかし、上述のとおり、本件発明5は、本件発明2の「前記キャップにより前記容器を密栓した状態において、前記摺動層の一部が前記天面部と接着状態に設けられており、」との事項も含むものであり、申立人の主張は採用できない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により、請求項1及び4に係る特許は削除されたため、請求項1及び4に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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