特許異議申立
2017-700168
蓋材
- 審判番号
- 2017-700168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-211487
- 登録番号
- 特許第5983241号(P5983241)
- 請求日
- 2017年02月23日
- 審決日
- 2018年04月10日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 小笠原特許事務所
- 【異議申立人】ユニサプライ 株式会社
- 【異議申立人代理人】杉本 ゆみ子
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 渡邊 豊英
- 審判官 蓮井 雅之
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5983241号発明「蓋材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5983241号の明細書及び特許請求の範囲を平成29年12月 5日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし8]について訂正することを認める。
特許第5983241号の請求項1及び5ないし8に係る特許を維持する。
特許第5983241号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5983241号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年9月25日に特許出願され、平成28年8月12日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年2月23日に、請求項1ないし8に係る特許について、特許異議申立人ユニサプライ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年4月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月23日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、平成29年6月28日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされ、その指定期間内である平成29年7月28日付けで申立人より意見書が提出された。
その後、平成29年10月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年12月5日付けで特許権者より意見書及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。なお、平成29年6月23日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)があり、平成29年12月21日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされたが、その指定期間内に申立人からの意見書の提出はなかった。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容(訂正箇所に下線を付す。)は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」とあるのを、
「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」に訂正する。
イ.訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2ないし4を削除する。
ウ.訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5、6、8に、それぞれ、「請求項1~4のいずれか」、「請求項1~5のいずれか」、「請求項1~7のいずれか」とあるのを、それぞれ、「請求項1」、「請求項1または5」、「請求項1、5~7」に訂正する。
エ.訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「前記第1の熱可塑性樹脂層の」とあるのを、「前記第1の熱可塑性樹脂の」に訂正する。
オ.訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、「1/40~3/4」とあるのを、「40:1~4:3」に訂正する。
カ.訂正事項6
本件訂正前の明細書の段落【0008】に、
「第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」とあるのを、
「第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する」に訂正する。
キ.訂正事項7
本件訂正前の明細書の段落【0010】、【0023】、【0025】、【0026】、【0028】、【0032】、【0034】、【0041】に、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」または「実施例4」とあるのを、それぞれ、「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」または「参考例4」に訂正する。
ク.訂正事項8
本件訂正前の明細書の段落【0036】、【0042】に、「実施例1~5」とあるのを、「参考例1、2、3、4、実施例5」に訂正する。
ケ.訂正事項9
本件訂正前の明細書の段落【0018】に、「1/40~3/4」とあるのを、「40:1~4:3」に訂正する。
コ.訂正事項10
本件訂正前の明細書の段落【0018】に、「9/175~9/100」とあるのを、「175:9~100:9」に訂正する。
(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるから、訂正事項1ないし10による訂正は当該一群の請求項1ないし8に対して請求されたものである。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「基材」が「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書の段落【0012】の「基材2は・・・尚、基材2の層構成は、上記構成に限らず、例えば、紙層と遮光印刷を付与したPET層との2層を積層した構成でもよい。」との記載、段落【0030】の「<実施例5>・・・PET層/印刷インキ層/紙層/遮光印刷を付与したPET層の層構成を有し、紙層と印刷インキ層を設けたPET層と、また紙層と遮光印刷を付与したPET層とをポリエステル、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を介して積層されている基材を用いた。」との記載及び段落【0041】、【0042】の「実施例5」に関する記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ.訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2ないし4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項5、6、8が、それぞれ、請求項1~4のいずれか、請求項1~5のいずれか、請求項1~7のいずれかを引用するものであったところ、それぞれについて、上記訂正事項2による訂正により削除する訂正前の請求項2ないし4を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ.訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項6の「前記第1の熱可塑性樹脂層のJIS.K7113における引張破断強度が5~20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下である」との記載における「第1の熱可塑性樹脂層」が、明細書の段落【0017】の「第1の熱可塑性樹脂9の樹脂物性を、JIS.K7113における引張破断強度で5~20MPaでかつ、引張破断伸びが600%以下にする。」や【0019】の「上述したように、第1の熱可塑性樹脂9は、JIS.K7113における引張破断強度で5~20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることが好ましい。」、段落【0020】の「第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が5MPaより小さいと、樹脂としての強度が低くなりすぎ、シール強度が得られない可能性がある。また、第1の熱可塑性樹脂9の引張り破断強度が20MPaより大きく、かつ、引張破断伸びが600%を超えると、開封時に糸引きを発生する虞がある。」との記載からみて、誤記であって、正しくは「第1の熱可塑性樹脂」と記載すべきであったことが明らかであることに鑑み、当該誤記を訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定された誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ.訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、「前記低密度ポリエチレンと前記ポリブテン-1とのMFR比」について、訂正前の請求項7の「1/40~3/4」との分数による表記を、明細書の段落【0018】の「一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。」との記載との整合を考慮し、比についての通常の表記である「40:1~4:3」と訂正することで、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ.訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、明細書の段落【0008】の「第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚み」との記載について、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ.訂正事項7及び8について
訂正事項7及び8による訂正は、明細書における実施例の記載について、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ク.訂正事項9
訂正事項9による訂正は、明細書の段落【0018】の「第1の熱可塑性樹脂9と、第2の熱可塑性樹脂10とのMFR比」について、上記訂正事項3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させ、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ケ.訂正事項10
訂正事項10による訂正は、明細書の段落【0018】の「第1の熱可塑性樹脂9と、第2の熱可塑性樹脂10とのMFR比」について、訂正前の「9/175~9/100」との分数による表記を、同段落【0018】の「一般的に、成形加工温度およびせん断速度下で、第1の熱可塑性樹脂9の粘度よりも第2の熱可塑性樹脂10の粘度の方が高ければ、上記モルフォロジーを形成させる事が可能である。そのため、製膜条件における第1の熱可塑性樹脂9の溶融粘度が、第2の熱可塑性樹脂10の溶融粘度より小さければ問題は無い。」との記載との整合を考慮し、比についての通常の表現である「175:9~100:9」と訂正することで、より明瞭に記載しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし8]について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1ないし8」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材は、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記基材は、紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成であり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有することを特徴とする、蓋材。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記第1の熱可塑性樹脂層は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸‐メタクリル酸エステル三元共重合体樹脂、エチレン‐アクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸エステル‐酸無水物三元共重合体樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂からなり、
前記第2の熱可塑性樹脂層は第1の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを60~80wt%と、第2の熱可塑性樹脂としてポリブテン-1を20~40w%含むブレンド樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性樹脂のJIS.K7113における引張破断強度が5~20MPaで、かつ、引張破断伸びが600%以下であることを特徴とする、請求項1または5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記低密度ポリエチレンと前記ポリブテン-1とのMFR比が40:1~4:3であることを特徴とした請求項5または6に記載の蓋材。
【請求項8】
前記シーラント層が共押出ラミネートにより、前記基材に積層されていることを特徴とする請求項1、5~7のいずれかに記載の蓋材。
(2)取消理由の概要
平成29年4月26日付け取消理由通知書に記載した本件発明1及び5ないし8に係る特許に対する取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由1.本件発明1及び5ないし8は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本件発明1及び5ないし8は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、甲1ないし3に記載された発明及び周知技術、技術常識(甲5、甲6を参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
甲1.特開2000-229664号公報
甲2.特開2001-158064号公報
甲3.特開2000-302990号公報
甲5.特開2002-193329号公報
甲6.化学大辞典編集委員会、「化学大辞典8」、昭和37年2月28日、共立出版株式会社、初版第1刷発行、第734頁及び第771頁
甲1ないし甲3、甲5及び甲6は、それぞれ特許異議の申立ての甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証である。
ア.理由1.について
本件発明1及び5ないし8は、甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)である。
イ.理由2.について
(ア)本件発明1及び5ないし8は、甲1発明及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明1及び5ないし8は、甲2に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)、甲1の記載事項及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明1及び5ないし8は、甲3に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)、甲1の記載事項及び周知技術(例えば甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ.理由3.について
本件発明6、7の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と整合していないから、本件発明6、7は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(3)判断
ア.理由1.について
(ア)甲1発明
甲1の【請求項1】、段落【0001】、【0005】、【0006】、【0011】、【0017】、【0018】、【0022】、【0025】ないし【0033】及び【0035】の記載からみて、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
《甲1発明》
紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップに用いられる蓋材において、
前記蓋材は、紙にアルミ箔を積層させた基材と、前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、
前記シーラント層は、JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)70wt%中に、前記低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)に非相溶系もしくは部分相溶系のポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)30wt%を、前記ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた分散構造を有する、蓋材。
(イ)対比、一致点、相違点
甲1発明の「紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップ」、「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層」、「シーラント層」、「JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)」、「ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器」、「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層」、「前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」に相当する。
そして、甲1発明の「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造」は、本件発明1の「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造」に相当する。
また、甲1発明の「前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、」は、本件発明1の「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、」との要件を満足する。
さらに、「分散構造」について、甲1発明の「2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた」ことは、本件発明1の「1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた」ことを満足するから、甲1発明の「2≦l/s≦8の範囲となるように分散させた分散構造」は、本件発明1の「1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器に用いられる蓋材において、
前記蓋材は、基材と、シーラント層からなり、
前記シーラント層は前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、 前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造を有し、
前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、
前記第2の熱可塑性樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂中に、前記第1の熱可塑性樹脂に非相溶または部分相溶の第2の熱可塑性樹脂を、前記第2の熱可塑性樹脂のドメイン長径lとドメイン短径sとの比l/sが、1.5≦l/s≦10の範囲となるように分散させた分散構造を有する、蓋材。
《相違点1-1》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲1発明は「紙にアルミ箔を積層させた」ものである点。
(ウ)相違点の判断
上記《相違点1-1》は、基材を構成する層の素材についてのものであり、単に表現が異なるだけの一応の相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲1発明ではない。
(エ)小括
以上を踏まえると、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当しないから、理由1には理由がない。
イ.理由2.について
(ア)甲1発明を主たる引用発明とした場合
a.甲1発明、対比、一致点、相違点
甲1発明、本件発明1と甲1発明の対比、一致点、相違点については、上記3.(3)ア.(ア)及び(イ)に示したとおりである。
b.相違点の判断
甲1には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0011】を参照。)ものの、「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」(以下、「特定層構成」という。)にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲2、3、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲1発明の基材を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲1発明において、「紙にアルミ箔を積層させた基材」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲2、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲1発明、甲2、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)甲2発明を主たる引用例とした場合
a.甲2発明
甲2の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0015】、【0028】及び【0054】の記載からみて、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。
《甲2発明》
アルミニウム箔に低密度ポリエチレン樹脂を共押出ラミネートした包装材料において、
前記包装材料は、前記アルミニウム箔に、エチレンーメタアクリル酸共重合体の層と、ピール層とを積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーメタアクリル酸共重合体の層厚が20μmであり、前記ピール層の層厚が10μmであり、
前記ピール層は、低密度ポリエチレンを65重量部とし、前記低密度ポリエチレンに実質的に非相溶であるポリブテン-1を35重量部とした混合物であって、これらの混合物はいわゆる「海島構造」を形成し、ピール層の凝集力を低下させ、凝集破壊タイプのイージーピール性を発現させることができる、包装材料。
b.対比、相違点
甲2発明の「エチレンーメタアクリル酸共重合体の層」、「ピール層」、、「低密度ポリエチレン」、「ポリブテン-1」、「海島構造」は、各々、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂層」、「第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」、「分散構造」に相当する。
そして、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
《相違点1-2》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲2発明は「アルミニウム箔」である点。
c.相違点の判断
甲2には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0013】を参照。)ものの、特定層構成にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲1、3、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲2発明の「アルミニウム箔」を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲2発明の「アルミニウム箔」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明、甲1、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲2発明、甲1、甲3に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)甲3発明を主たる引用例とした場合
a.甲3発明
甲3の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0024】、【0028】及び【0036】ないし【0038】の記載からみて、甲3には、以下の甲3発明が記載されている。
《甲3発明》
紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップに用いられる蓋材において、
前記蓋材は、紙にアルミ箔を積層させた基材と、前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造とを有し、
前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、
前記シーラント層は、JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)70wt%中に、前記低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)に非相溶系もしくは部分相溶系のポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)30wt%を分散させた分散構造を有する、蓋材。
b.対比、相違点
甲3発明の「紙に低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした原反から作成した紙カップ」、「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層」、「シーラント層」、「JIS.K7113における引張破断強度が9MPa、引張破断伸びが450%の低密度ポリエチレン樹脂(熱可塑性樹脂A)」、「ポリブテン樹脂(熱可塑性樹脂B)」は、それぞれ、本件発明1の「ポリエチレン樹脂で覆われたシール部を有する容器」、「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層」、「前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層」、「第1の熱可塑性樹脂」、「第2の熱可塑性樹脂」に相当する。
そして、甲3発明の「前記アルミ箔と接着性を有するエチレンーアクリル酸共重合体の層とシーラント層とが積層した積層構造」は、本件発明1の「前記基材に接着性を有する第1の熱可塑性樹脂層と、前記ポリエチレン樹脂で覆われた前記シール部に接着性を有する第2の熱可塑性樹脂層とを積層した積層構造」に相当する。
また、甲3発明の「前記エチレンーアクリル酸共重合体の層厚が30μmであり、前記シーラント層の層厚が30μmであり、」は、本件発明1の「前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の厚みが、第1の熱可塑性樹脂層の厚み≦第2の熱可塑性樹脂層の厚みとなっており、」との要件を満足する。
そして、本件発明1と甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
《相違点1-3》
基材が、本件発明1では「紙層と遮光印刷を付与したポリエチレンテレフタレート層とを含み、金属箔層を含まない層構成」のものであるのに対し、甲3発明は「紙にアルミ箔を積層させた」ものである点。
c.相違点の判断
甲3には、基材について、その層構成を限定しない旨の記載はある(段落【0030】を参照。)ものの、特定層構成にする旨の記載はなく、また特定層構成にすべきことを示唆する記載もない。
そして、甲1、2、5及び6には、上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲3発明の基材を、上記特定層構成のものに変更すべきことを示唆する記載もない。
ゆえに、甲3発明の「紙にアルミ箔を積層させた基材」を、上記特定層構成のものに変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明1は、甲3発明、甲1、甲2に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明5ないし8も、上記と同様の理由により、甲3発明、甲1、甲2に記載された事項、甲5、甲6に例示される周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)小括
以上を踏まえると、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものではないから、理由2には理由がない。
ウ.理由3.について
上記2.で示したとおり本件訂正請求が認められることにより、本件発明6及び本件発明7は、上記3.(1)に示したとおりのものであり、いずれも本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と整合するものとなったから、理由3は、理由のないものとなった。
(4)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件発明1及び5ないし8は、甲4の実施例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を述べている(特許異議申立書の29頁14ないし18行を参照。)が、その具体的理由は述べられていない。
そして、甲4には上記特定層構成の基材が記載されておらず、甲1発明の基材を、上記特定層構成に変更すべきことを示唆する記載はないし、甲4の実施例1に記載の発明を主たる引用例としても、上記特定層構成の基材を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1及び5ないし8は、甲4の実施例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立人の主張は採用できない。
(5)中括
以上のとおり、本件発明1及び5ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明1及び5ないし8に係る特許は、同条第2項及び同法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものでもないから、同法第113条第2号及び第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件発明1及び5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び5ないし8に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
そして、本件特許の請求項2ないし4は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項2ないし4についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項2ないし4についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
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2017-700168