特許異議申立
2024-700067
耐アルコール性積層体
- 審判番号
- 2024-700067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-100672
- 登録番号
- 7320993
- 請求日
- 2024年01月29日
- 審決日
- 2026年03月05日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】共同印刷株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【権利者代理人】青木 修二郎
- 【権利者代理人】胡田 尚則
- 【権利者代理人】塩川 和哉
- 【権利者代理人】倉田 佳貴
- 【異議申立人】青山 裕樹
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7320993号発明「耐アルコール性積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7320993号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~18〕について訂正することを認める。
特許第7320993号の請求項1~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7320993号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年5月29日を出願日とするものであり、令和5年7月27日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和5年8月4日発行)がされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 1月29日 :特許異議申立人青山裕樹(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月17日付け:取消理由通知書
同年 6月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月10日 :特許権者による令和6年6月18日提出の訂正請求書の手続補正書(方式)及び上申書の提出
同年10月25日 :申立人による意見書の提出
同年12月26日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和7年 3月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月12日 :特許権者による令和7年3月28日提出の訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲、並びに意見書を補正する手続補正書(方式)の提出
同年 9月29日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年6月18日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年8月12日に提出された手続補正書(方式)により補正された、令和7年3月28日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7320993号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~18について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「 前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の耐アルコール性積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、
「 基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
耐アルコール性積層体。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「 前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、
「 基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
耐アルコール性積層体。」に訂正する。(請求項4を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している、
袋。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、金属アルコキシドを含まない、
袋。」に訂正し、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
袋。」に訂正し、新たに請求項10とする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
袋。」に訂正し、新たに請求項11とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、かつ
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有する、
袋。」に訂正し、新たに請求項12とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に「 請求項1~6のいずれか一項に記載の耐アルコール性積層体で構成されている、袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有し、かつ
前記ウレタン接着層の、赤外分光法による測定によって得られるスペクトルにおいて、C=O伸縮振動に由来するピークの面積に対するC-N-H変角振動のピークの面積の比が、0.13以上である、
袋。」に訂正し、新たに請求項13とする。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している、
内容物入り袋。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、金属アルコキシドを含まない、
内容物入り袋。」に訂正し、新たに請求項14とする。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
内容物入り袋。」に訂正し、新たに請求項15とする。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
内容物入り袋。」に訂正し、新たに請求項16とする。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、かつ
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有する、
内容物入り袋。」に訂正し、新たに請求項17とする。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項8に「 請求項7に記載の袋、及び
前記袋に封入されているアルコールを含む内容物
を有する、内容物入り袋。」とあるうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7を引用するものについて、
「 耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有し、かつ
前記ウレタン接着層の、赤外分光法による測定によって得られるスペクトルにおいて、C=O伸縮振動に由来するピークの面積に対するC-N-H変角振動のピークの面積の比が、0.13以上である、
内容物入り袋。」に訂正し、新たに請求項18とする。
(15)一群の請求項について
本件訂正前の請求項4~8は、直接的又は間接的に、本件訂正の対象である請求項3を引用するものであるから、本件訂正請求は一群の請求項〔3~8〕について請求されたものである。また、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはされてないから、訂正後の請求項〔3~18〕は、一群の請求項である。
2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1、5について
ア 訂正事項1の訂正前の請求項3の請求項1を引用するもの、訂正事項5の訂正前の請求項7の請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、それぞれ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるための訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1、5の、無機材料層が「アルミニウム蒸着膜である」とする訂正は、訂正前の請求項3に「アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜からなる群より選択される」とされていたものを、選択肢を減らしてアルミニウム蒸着膜に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項1、5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2~4、6~8について
訂正事項2の訂正前の請求項4の請求項1を引用するもの、訂正事項3の訂正前の請求項7の請求項1を引用するもの、訂正事項4の訂正前の請求項7の請求項1を引用する請求項2を引用するもの、訂正事項6の訂正前の請求項7の請求項1を引用する請求項4を引用するもの、訂正事項7の訂正前の請求項7の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用するもの、訂正事項8の訂正前の請求項7の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するものについて、それぞれ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるための訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
訂正事項2~4、6~8は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項9、10、12~14について
ア 訂正事項9の訂正前の請求項8の請求項1を引用する請求項7を引用するもの、訂正事項10の請求項8の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項7を引用するもの、訂正事項12の請求項8の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項7を引用するもの、訂正事項13の請求項8の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項7を引用するもの、訂正事項14の請求項8の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7を引用するものについて、それぞれ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるための訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項9、10、12~14の、内容物が「35vol%以上のアルコールを含有している」とする訂正は、内容物について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 内容物が「35vol%以上のアルコールを含有している」ことは、本件明細書等の【0047】及び【0048】に記載されており、訂正事項9、10、12~14は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項11について
ア 訂正事項11の請求項8の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項7を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるための訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
訂正事項11の、内容物が「35vol%以上のアルコールを含有している」とする訂正は、内容物について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項11の、無機材料層が「アルミニウム蒸着膜である」とする訂正は、訂正前の請求項3に「アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜からなる群より選択される」とされていたものを、選択肢を減らしてアルミニウム蒸着膜に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項11は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 本件訂正請求についてのまとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔3~18〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~18に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している、
耐アルコール性積層体。
【請求項2】
前記第二の接着層が、金属アルコキシドを含まない、請求項1に記載の耐アルコール性積層体。
【請求項3】
基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
耐アルコール性積層体。
【請求項4】
基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
耐アルコール性積層体。
【請求項5】
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有する、請求項4に記載の耐アルコール性積層体。
【請求項6】
前記ウレタン接着層の、赤外分光法による測定によって得られるスペクトルにおいて、C=O伸縮振動に由来するピークの面積に対するC-N-H変角振動のピークの面積の比が、0.13以上である、請求項5に記載の耐アルコール性積層体。
【請求項7】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している、
袋。
【請求項8】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している、
内容物入り袋。
【請求項9】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、金属アルコキシドを含まない、
袋。
【請求項10】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
袋。
【請求項11】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
袋。
【請求項12】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、かつ
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有する、
袋。
【請求項13】
耐アルコール性積層体で構成されており、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有し、かつ
前記ウレタン接着層の、赤外分光法による測定によって得られるスペクトルにおいて、C=O伸縮振動に由来するピークの面積に対するC-N-H変角振動のピークの面積の比が、0.13以上である、
袋。
【請求項14】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、金属アルコキシドを含まない、
内容物入り袋。
【請求項15】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記無機材料蒸着樹脂層の前記無機材料層が、アルミニウム蒸着膜である、
内容物入り袋。
【請求項16】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、かつ
前記第二の接着層が、ウレタン接着層である、
内容物入り袋。
【請求項17】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、かつ
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有する、
内容物入り袋。
【請求項18】
耐アルコール性積層体で構成されている袋、及び前記袋に封入されている、35vol%以上のアルコールを含有している内容物
を有し、
前記耐アルコール性積層体が、基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する、無機材料蒸着樹脂層であり、
前記無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在しており、
前記第二の接着層が、ウレタン接着層であり、
前記ウレタン接着層が、ポリエステルポリオールに由来する繰り返し単位を有し、かつ
前記ウレタン接着層の、赤外分光法による測定によって得られるスペクトルにおいて、C=O伸縮振動に由来するピークの面積に対するC-N-H変角振動のピークの面積の比が、0.13以上である、
内容物入り袋。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
(新規性) 本件発明1、2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(進歩性) 本件発明1~8については、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1~6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は、上記(進歩性)の取消理由に対応するものである。
<引用刊行物>
引用文献1:特開2001-37846号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2016-155574号公報(当審で発見し引用した文献)
引用文献3:特開2016-124565号公報(当審で発見し引用した文献)
引用文献4:国際公開第2009/075145号(当審で発見し引用した文献)
引用文献5:特開平8-207196号公報(当審で発見し引用した文献)
引用文献6:特開2007-106046号公報(申立人が提出した甲第8号証)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載等
(1)引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 揮発性の薬液を主成分としたものを含浸させた脱脂綿やガーゼなどの衛生材料を包装するための袋体素材であって、シリカ蒸着フィルムの外側にアルミ層を設け、前記アルミ層の外側に耐熱性の合成樹脂層を設け、前記シリカ蒸着フィルムの内側に前記耐熱性の合成樹脂層より溶融温度が低い合成樹脂シーラント層を設けた層構成よりなることを特徴とする衛生材料用袋体素材。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、揮発性の薬液を含浸させた脱脂綿やガーゼなどの衛生材料を包装するための袋体素材及び袋体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】病院等で薬液を含浸させた脱脂綿やガーゼなどの衛生材料は、カスト、万能壺などの容器に脱脂綿やガーゼ及び薬液を入れて使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】消毒に使用する薬液の主成分としては、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等の揮発性であり、酸化によって、例えばエタノールはアセトアルデヒドを経て酢酸に、イソプロパノールはアセトンへと変化して、それぞれ殺菌力を低減してしまうので、カストなどの容器は密封性が要求されるが十分ではない。また、容器を再利用する時には、洗浄や滅菌等を必要としている。
【0004】病院等で脱脂綿やガーゼなどの衛生材料を使用する際に、薬液を含浸させた脱脂綿やガーゼを作成する手間や容器の洗浄や滅菌等の手間が省けた便利な、しかも消毒効果の持続する衛生材料が要望されている。
【0005】本発明の目的は、薬液を含浸させた脱脂綿やガーゼなどの衛生材料を手軽に用意でき、その殺菌清浄効力を長時間保持し、しかも、使用後のごみ処理問題を考慮した衛生材料用袋体素材及び袋体を提供することである。」
(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において1は、本発明の袋体素材による袋体の1実施形態を示すものであり、サイドシール2と底部に自立を可能とするためのガゼット4を設けた底シール3が施され、開口部5には再開閉可能なチャック6と、このチャック6より上方の引き裂き予定線7を引き裂くための引き裂き口となるVノッチ8が前記サイドシール2に設けられたものである。尚、ガゼット4、チャック6、Vノッチ8は絶対に必要な構成ではないが、これらが構成されている方が取り扱いに便利であり、すなわち、ガゼット4を設けガゼット4を底開きすることによって袋体1を自立させた状態で消毒作業を行うことができ、チャック6を設けチャック6を閉めておくことによって衛生材料による消毒効果を持続させることができ、また、Vノッチ8を設けることによって袋体の開封が円滑となる。
【0012】前記本発明の袋体素材は、図2で示す第1実施例の袋体素材10Aと図3で示す第2実施例の袋体素材10Bである。図2においてAは袋体1の外側であり、Bは内側である。図2で示す第1実施例の袋体素材10Aは、シリカ蒸着フィルム20の外側にアルミ層21を設け、前記アルミ層21の外側に耐熱性の合成樹脂層22を設け、前記シリカ蒸着フィルム20の内側に前記耐熱性の合成樹脂層22より溶融温度が低い合成樹脂シーラント層23を設けた層構成よりなるものである。
・・・
【0014】前記第1実施例の袋体素材10A及び第2実施例の袋体素材10Bの各層はドライラミネート用接着剤24で接着されている。
【0015】前記シリカ蒸着フィルム20、20a、20bのシリカ蒸着に使用される原料は酸化ケイ素で、ベースフィルムとしてはポリエステルが一般的である。このシリカ蒸着フィルム20、20a、20bは透明でありながらバリヤ性や防湿性に優れており、耐薬品性や耐溶剤性及び耐内容物性に優れた特性を有しているものである。しかし、遮光性がなく、紫外線や螢光灯の光の影響を受けやすいという側面がある。
【0016】前記アルミ層21としては、通常のアルミニウム箔やそのアルミニウム箔と紙とをラミネート用接着剤で接着した通称紙アルミであっても良いが、特に成形性に優れ、引張強度が高く、しかも伸びのあるAl- Fe- Ti合金等のアルミニウム合金箔が使用されることが好ましい。因みに、7μの通常のアルミニウム箔と前記アルミニウム合金箔との比較で引張強度約1.5倍、伸び約2倍の優位性を持っている。
【0017】さらに最外側の耐熱性の合成樹脂層22としてはポリエステルが適当であり、最内側の合成樹脂シーラント層23としてはポリエチレンやポリプロピレンが適当である。ポリエステルの合成樹脂層22は耐熱性に優れ、ポリエチレンやポリプロピレンの合成樹脂シーラント層23はシール性に優れている。勿論これらの素材の使用に限定されるものではない。
【0018】また、ドライラミネート用接着剤24によるドライラミネートは接着材が硬くラミネート品の腰を出す特性を有している。
【0019】そこで、本発明の第1実施例の袋体素材10Aはシリカ蒸着フィルム20によりバリヤ性、防湿性、耐薬品性、耐溶剤性及び耐内容物性に優れた特性を有し、外側のアルミ層21により紫外線や螢光灯の光を遮断して、遮光性がないシリカ蒸着フィルム20の側面をカバーし、内容物のエタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等の揮発性薬液の酸化作用を抑制する。一方、アルミ層21に対する薬品や溶剤及び内容物による影響は、シリカ蒸着フィルム20によって可及的に抑えられることになり、アルミ層21の腐食等による弊害を防止して長期に渡る殺菌清浄効力の保持を可能とする。」
(エ)「【0026】
【実施例1】本発明構成フィルムによる袋体と、本発明構成中のシリカ蒸着フィルムを使用していない袋体について、1ケ月保存後の薬液重量変化を調べたところ、前者が0.04~0.07%の減少であるのに対し、後者は0.11~5.12%の減少となった。また、1ケ月保存後の容器形状の変化を比較したところ、前者はチャックやシール部の剥離も生じず、内層フィルムや内容物にも何等変化は見られなかった。後者はチャック部やシール部に剥離を生じる可能性が見られ、また、内層フィルムや内容物の変色も見られた。すなわち、後者については耐薬品性の問題があることが判然とした。」
(オ)「【図2】
[図:0001436132000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参酌し、特に第1実施例に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「揮発性の薬液を主成分としたものを含浸させた脱脂綿やガーゼなどの衛生材料を包装するために用いられる袋体素材であって、
当該袋体素材が、シリカ蒸着フィルムの外側にアルミ層を設け、前記アルミ層の外側に耐熱性の合成樹脂層を設け、前記シリカ蒸着フィルムの内側に前記耐熱性の合成樹脂層より溶融温度が低い合成樹脂シーラント層を設けた層構成よりなり、各層はドライラミネート用接着剤で接着されており、
前記シリカ蒸着フィルムは、ベースフィルムであるポリエステルに酸化ケイ素を蒸着して形成された、袋体素材。」
(2)引用文献2~6
ア 引用文献2、3に記載された事項
引用文献3には、次の事項が記載されており、引用文献2にも同様の記載がある。
(ア)「【請求項1】
少なくとも、ポリエステル系樹脂フィルム層、該ポリエステル系樹脂フィルム層上に隣接して積層されたアンカーコート層、及び、該アンカーコート層上に隣接して積層されたポリオレフィン系樹脂層、を有するアルコール含有液用包装材料であって、
該アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂と架橋剤とを含むが、ただし不揮発性水性化助剤を含まない水性分散液であって、
該ポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように水性溶媒中に分散させてなる水性分散液を、
前記ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し乾燥させてなる層である、上記アルコール含有液用包装材料。」
「【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂層の、アンカーコート層との隣接面と反対側の面上に、さらにポリオレフィン系樹脂フィルム層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルコール含有液用包装材料。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂フィルム層の、アンカーコート層積層面と反対側の面上に、さらにバリア層を有する、請求項4に記載のアルコール含有液用包装材料。」
「【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のアルコール含有液用包装材料を、そのポリオレフィン系樹脂層またはポリオレフィン系樹脂フィルム層が最内層となるように重ね合せ、その端部をシーラントしてなる包装容器。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有機化合物等の成分、特に高濃度のアルコールに対し高い耐性を有することから、高い層間接着強度を長期にわたり保持し、且つ、シーラント性に優れたシーラント層を有する、耐アルコール性に優れた包装材料、及び、それを用いた包装容器、すなわち、アルコール含有液用包装材料等に関する発明である。」
(ウ)「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、ポリエステル系樹脂フィルム層、該ポリエステル系樹脂フィルム層上に隣接して積層されたアンカーコート層、及び、該アンカーコート層上に隣接して積層されたポリオレフィン系樹脂層、を有するアルコール含有液用包装材料であって、該アンカーコート層は、不飽和カルボン酸又はその無水物を含むポリオレフィン共重合樹脂と架橋剤とを含む特定の水性分散液を、ポリエステル系樹脂フィルム層上に塗布し乾燥させてなる層であることを特徴とする包装材料等が、上記の目的を達成することを見出した。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)アルコール含有液用包装材料の構成
本発明のアルコール含有液用包装材料の基本構成は、特定の基材層(1)、特定の水性分散液が硬化したアンカーコート層(2)、及び特定のシーラント層(3)が積層されたものである。・・・
本発明は、外層から内層に向かって基材層(1)、アンカーコート(2)、シーラント層(3)が、基本的にはこの順に積層されるものであれば、さらに他の層を積層するものであってもよい。
【0020】
・・・
本発明の基材層は、多層で構成されるものであってもよく、また各層の接着層は、接着性フィルムからなるものであってもよい。
また、基材層であるポリエステル系樹脂フィルム層の、アンカーコート層積層面と反対側の面上に、さらにバリア層を形成し、アルコール含有液用包装材料としても良い。・・・」
(オ)「【0028】
(3)アンカーコート層
本発明において、アンカーコート層は、ポリエステル系樹脂フィルム層等からなる基材と、ポリオレフィン系樹脂層等からなるシーラント層とを強固に接着するためのものである。」
(カ)「【0051】
(6)バリア層
本発明の積層体において、バリア層としては、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を防ぐガスバリア性を有し、且つ、内容物中のアルコール成分の透過を防ぐ任意のバリア膜またはバリアフィルムを使用することができる。
このようなバリア膜またはバリアフィルムとしては、無機物または無機酸化物からなる蒸着膜、金属箔、バリア性樹脂フィルム、樹脂フィルム上に前記蒸着膜を設けた蒸着フィルム等が挙げられる。
【0052】
具体的には、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着ポリエステル系樹脂フィルム、アルミニウム蒸着ポリプロピレンフィルム、シリカ蒸着ポリエステル系樹脂フィルム、シリカ蒸着ポリアミド系樹脂フィルム、アルミナ蒸着ポリエステル系樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、MXD6フィルム等からなるバリア膜またはバリアフィルムが挙げられる。」
イ 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、次の事項が記載されている。
(ア)「[0011] 本発明者らは、シランカップリング剤等の浸透性の高い助剤を含むシーリング材が、柔軟性容器を構成する積層フィルムのアルミ箔等の界面に気泡を発生させることに着目し、これを防止するために鋭意研究を行った結果、水およびガスのバリア性に優れるとされる酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素(シリカ)などの無機物の層を、積層フィルムの特定位置に設けることにより、これら浸透性の高い助剤のアルミ箔等への接触・浸透を大幅に遅らせることができることを見出した。
[0012] 本発明は、以上の知見に基づきなされたものであって、前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属箔層の一方の面側に、基材フィルム層とシーラント層とを、この順に積層してなる積層フィルムにおいて、これら各層間の少なくとも1ケ所に、無機物からなる蒸着薄膜層が形成されていることを特徴とする。
[0013] すなわち、請求項1に記載の発明によれば、積層フィルムを構成するアルミ箔等からなる金属箔層と樹脂からなる基材フィルム層の間、もしくは、樹脂からなる基材フィルム層とシーラント層の間、の少なくとも一方に、無機物からなる蒸着薄膜層を設けることにより、内容物に含まれるシランカップリング剤等の高浸透性助剤が、前記金属箔層まで浸透して反応することを抑制または防止することができる。
[0014] 本発明の積層フィルムにおいては、請求項2のように、前記蒸着薄膜層を形成する無機物が酸化アルミニウムおよび/または酸化珪素であるとともに、該蒸着薄膜層が前記基材フィルム層におけるシーラント層側の面に形成されている構成を好適に採用することができる。
[0015] 酸化アルミニウム(アルミナ)または酸化珪素(シリカ)は、樹脂フィルムの表面にコートあるいは蒸着することにより、フィルム部材の水蒸気やガスに対するバリア性を向上させることが知られているが、シランカップリング剤等の高浸透性助剤に対するバリア性を向上させる場合にも有効である。また、本発明者らの研究によれば、前記基材フィルム層におけるシーラント層側の面、すなわち基材フィルム層における内容物側となる面に、好ましくは前記酸化アルミニウムおよび/または酸化珪素からなる蒸着薄膜層を形成することによって、更に好ましくは酸化珪素(シリカ)からなる蒸着薄膜層を形成することによって、その効果が更に向上することが確認された。
[0016] 酸化アルミニウムや酸化珪素などの無機物の蒸着薄膜層を基材フィルム層のシーラント層側の面に形成すると、蒸着薄膜層を反シーラント層側の面に形成する場合に比べて効果が更に向上する理由については明らかでないが、次のように推察される。
まず、シーリング材などの内容物に含有されるシランカップリング剤などの高浸透性助剤が積層フィルム内部を浸透していく駆動力は、積層フィルム内部に高浸透性助剤の濃度差が生じていることによる「拡散」によるものであると考えられる。また、アルミ箔層などの金属箔層の界面における気泡の発生は、金属箔層の界面に存在するシランカップリング剤などの高浸透性助剤の量に依存し、高浸透性助剤の量が多くなるほど気泡が発生しやすくなると考えられる。そして、酸化アルミニウムや酸化珪素などの無機物の蒸着薄膜層は、有機物(樹脂)の基材フィルム層やシーラント層よりも、高浸透性助剤に対する高いバリア性を有するものと考えられる。これらの点を考慮して、本発明の積層フィルムで作製された柔軟性容器に内容物を充填して一定時間が経過した後の積層フィルム内部の高浸透性助剤の濃度勾配を模式的に図示すると、無機物の蒸着薄膜層を基材フィルム層のシーラント層側の面に形成した場合は図4の(a)のようになり、無機物の蒸着薄膜層を基材フィルム層の反シーラント層側の面に形成した場合は図4の(b)のようになる。
[0017] 図4の(a),(b)を対比すると明らかなように、無機物の蒸着薄膜層を基材フィルム層のシーラント層側の面に形成した図4の(a)の方が、反シーラント層側の面に形成した図4の(b)よりも、金属箔層の界面に存在する高浸透性助剤の量が少なくなるため、気泡の発生などの不具合が生じ難くなるものと推察される。また、蒸着薄膜層は極めて薄い層であるため、仮に欠点等が蒸着薄膜層に存在している場合には、高濃度の高浸透性助剤が金属箔層の界面に存在する図4の(b)の方が、気泡の発生などの不具合を生じやすくなるものと推察される。なお、シーラント層と、無機物の蒸着薄膜層が形成された基材フィルム層と、金属箔層との間には接着剤層がそれぞれ存在するが、これらの接着剤層はいずれも濃度勾配について同じ条件であるので図4の(a)、(b)では省略している。」
(イ)「[0033] 以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための形態について説明する。
[0034] 図1に示す実施形態の積層フィルム10も、シーリング材や接着剤等を収容する図2に示すような柔軟性容器(パウチ)を製袋するために用いられるものであり、保管中における内容物の劣化や硬化を防ぐために、光や水分、ガスのバリア性に優れたアルミニウムからなる金属箔層1(以下、アルミ箔層1と表記する)を含む多層構造を採用している。
[0035] また、この積層フィルム10は、接着剤5を用いたドライラミネート法を用いて形成されており、アルミ箔層1(層厚:9μm)の一方の面(製袋後に内容物側となる内面側:図示下方)には、ポリプロピレン(PP)からなるシーラント層2(層厚:40μm)が、アルミ箔層1の他方の面(製袋後における外面側:図示上方)には、印刷層3と、この印刷層3およびアルミ箔層1を保護・補強する透明ポリアミド(PA)からなるクッション層(外層)4(層厚:15μm)が積層されている。
[0036] 本実施形態における積層フィルム10の特徴は、前記アルミ箔層1とシーラント層2との間に、高浸透性物質のアルミ箔層1への浸透を抑制または防止するバリア層となる蒸着フィルム6、すなわちポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材フィルム層(膜厚:12μm)の一方の面に酸化珪素(シリカ)の蒸着薄膜層6aを形成した蒸着フィルム6が介在配置(積層)されている点である。この蒸着フィルム6は、蒸着薄膜層6aを前記シーラント層2側、すなわち製袋後に内容物側となる内面(図示下方)側に向けた状態で積層されている。」
(ウ)「[図1]
[図:0001436132000002.jpg]
」
(エ)「[図4]
[図:0001436132000003.jpg]
」
ウ 引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 複数の層が積層されてなる加熱殺菌用包装材料において、最内層が、無配向のポリプロピレン系樹脂からなる最内層と、該最内層の外側面に無機物、または、有機物を含有する無機物の薄膜層とを有することを特徴とする加熱殺菌用包装材料。」
(イ)「【0015】このようにシーラント層にガスバリヤー性を付与することは、単に臭気成分が内容物に移行するのを防止するだけでなく、外部からの酸素の侵入も防止できるため、従来、中間層などに使用していたガスバリヤー性材料を省略できる利点もある。・・・」
(ウ)「【0017】
【実施例】・・・図1において、加熱殺菌用包装材料10は、外側から表面層1、接着剤層6a 、中間層2-1、接着剤層6b 、そして、無機物等の薄膜層3と無配向のポリプロピレン系樹脂層4とからなる最内層5を順に積層した構成である。また、図2に示した加熱殺菌用包装材料10は、外側から表面層1、接着剤層6a 、中間層2-1、接着剤層6b 、中間層2-2、接着剤層6c 、そして、無機物等の薄膜層3と無配向のポリプロピレン系樹脂層4とからなる最内層5を順に積層した構成である。本発明の加熱殺菌用包装材料は、先にも説明したように最内層の構成は規定されるが、表面層及び中間層の構成については、包装される内容物の種類や量などに応じて、その材質や層の数などを自由に設定できるものである。
【0018】(実施例1)表面層(最外層)に厚さ12μmのPETフィルム〔エスペットT4102東洋紡績(株)製〕を用い、第1の中間層として厚さ7μmのAL箔を、そして、第2の中間層として厚さ15μmのONフィルム〔ボニールRX 興人(株)製〕を用い、更に、最内層(シーラント層)には、厚さ70μmのCPPフィルム〔ZK93K 東レ合成フィルム(株)製〕に、予め無機物の薄膜層として酸化珪素(SiOx)を200Åの厚さに真空蒸着により設けたフィルム〔このフィルムの貼り合わせ面は酸化珪素(SiOx)の蒸着面とする〕を用い、これらのフィルムを外側から、表面層/第1の中間層/第2の中間層/最内層の順にドライラミネート方式で2液混合型ウレタン系接着剤〔タケラックA515/タケネートA50 武田薬品工業(株)製〕を使用して、いずれも塗布量4g/m2(固形分)で順次貼り合わせて実施例1の加熱殺菌用包装材料を作成した。」
(エ)「【図1】
[図:0001436132000004.jpg]
」
エ 引用文献6
引用文献6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品の包装体等として有用なガスバリア性フィルムに関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、特に高湿度雰囲気下においても酸素等のガスバリア性に優れ、且つデラミネーション(ボイル処理やレトルト処理後におけるフィルムの層間剥離)の発生が十分に抑制されたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高分子フィルム基材と特定のガスバリア層の間にポリエステル系ポリオール及び脂肪族系イソシアネート化合物を含有する特定のアンカーコート層を設けることによりボイル処理やレトルト処理後におけるフィルムの層間剥離を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(ウ)「【0086】
(実施例1)
先ず、厚み12μmのポリエステルフィルム(ルミラーP60:東レ(株)製)の表面に、バーコーター(K303 PROOFER;RK Print-Coat Instruments社製)を用いて、アンカーコート剤(b-1)を塗工し、70℃にて1分間乾燥させてアンカーコート層を形成させた。得られたアンカーコート層の厚みは0.2μmであった。
【0087】
次に、アンカーコート層の表面に、上記バーコーターを用いて、数平均分子量200000のポリアクリル酸重合体(アロンA-10H:東亞合成(株)製、25質量%水溶液)を蒸留水にて5質量%に調製したものを塗工し、100℃にて1分間乾燥させてポリアクリル酸重合体層(PAA層)を形成させた。得られたポリアクリル酸重合体層(PAA層)の厚みは0.3μmであった。
【0088】
次いで、ポリアクリル酸重合体層(PAA層)の表面に、上記バーコーターを用いて、酸化亜鉛分散液(ZnOサスペンションZS-303:住友大阪セメント(株)製、固形分濃度32.4質量%、溶媒:トルエン)を塗工し、100℃にて1分間乾燥させて酸化亜鉛層(ZnO層)を形成させた。得られた酸化亜鉛層(ZnO層)の厚みは0.3μmであった。このようにしてポリエステルフィルム上にアンカーコート層とガスバリア層(PAA層/ZnO層)が積層されたガスバリア性フィルムを得た。」
「【0096】
<酸素透過度の測定及び耐レトルト性の評価>
(i)酸素透過度の測定及び耐レトルト性の評価用の積層フィルムの作製
実施例1~5及び比較例1~5で得られたガスバリア性フィルムのガスバリア層上にポリウレタン系接着剤[(主剤:タケラックA620、硬化剤:タケネート65、溶剤:酢酸エチル):三井武田ケミカル(株)製]を介して、二軸延伸ポリアミド(ONy)フィルム及び未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムをドライラミネート法により接着せしめて積層フィルムを得た。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「耐熱性の合成樹脂層」は、袋体素材の最も外側に位置する樹脂層であるから、本件発明1の積層体の最も外側に位置する「基材樹脂層」に相当する。
引用発明の「アルミ層」は、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔から構成されるものであるから(【0016】)、本件発明1の「金属箔層」に相当する。
引用発明の「シリカ蒸着フィルム」は、ベースフィルムであるポリエステルに酸化ケイ素が蒸着されたものであり、バリヤ性や防湿性に優れ、耐薬品性や耐溶剤性及び耐内容物性に優れた特性を有するものであるから(【0015】)、当該「シリカ蒸着フィルム」は、本件発明1の「金属箔以外のバリア層」に相当し、引用発明の「ポリエステル」及び「ポリエステル」に「蒸着され」る「酸化ケイ素」は、本件発明1の「被蒸着樹脂層」及び「被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層」に相当する。
引用発明の「合成樹脂シーラント層」は、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
引用発明の「耐熱性の合成樹脂層」と「アルミ層」、「アルミ層」と「シリカ蒸着フィルム」、「シリカ蒸着フィルム」と「合成樹脂シーラント層」を接着する「ドライラミネート用接着剤」は、それぞれ本件発明1の「基剤接着層」、「第一の接着層」、「第二の接着層」にそれぞれ相当する。
引用発明の「層構成」よりなる「袋体素材」は、内容物のエタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等の揮発性薬液の酸化作用を抑制し、かつ、アルミ層21に対する薬品や溶剤及び内容物による影響を、シリカ蒸着フィルム20によって可及的に抑え、アルミ層21の腐食等による弊害を防止して長期に渡る殺菌清浄効力の保持を可能とするものであるから(【0018】)、本件発明1の「耐アルコール性」「積層体」に相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点1】
「基材樹脂層、基材接着層、金属箔層、第一の接着層、金属箔層以外のバリア層、第二の接着層、及びシーラント層をこの順で有し、
前記バリア層が、被蒸着樹脂層、及び前記被蒸着樹脂層に直接に蒸着されている無機材料層を有する無機材料蒸着樹脂層である
耐アルコール性積層体。」
【相違点1】
本件発明1は、「無機材料蒸着樹脂層の無機材料層が、前記第一の接着層側に存在している」のに対して、引用発明は、「酸化ケイ素」が、「ベースフィルムであるポリエステル」のどちら側に蒸着されて存在しているか不明である点。
(2)判断
ア 引用発明の「袋体素材」は、シリカ蒸着フィルムの「酸化ケイ素」が、「ベースフィルムであるポリエステル」のどちら側に蒸着されて存在しているか規定されておらず、引用文献1の【0026】に記載の、薬液重量変化と1ヶ月保存後の容器形状の変化の結果を参照しても、「酸化ケイ素」が「ベースフィルムであるポリエステル」の外側(最内層側とは反対側)に蒸着されて存在しているかどうかは判別できない。
よって、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は引用発明ではない。
イ 次に、本件発明1の相違点1に係る構成が容易に想到し得るものか検討する。
(ア)引用文献2、3には、バリア層、ポリエステル系樹脂フィルム層、該ポリエステル系樹脂フィルム層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層に隣接して積層されたポリオレフィン系樹脂層、ポリオレフィン系樹脂フィルム層の順に有するアルコール含有液用包装材料(請求項1、4、5)について、この包装材料のポリオレフィン系樹脂フィルム層を最内層となるようにして、その端部をシーラントした包装容器(請求項8)が記載されている。
このアルコール含有液用包装材料では、バリア層として蒸着膜(引用文献3の【0051】)が、ポリエステル系樹脂フィルム層の外側(最内層側とは反対側)に配置されるが、これは、アンカーコート層が、ポリエステル系樹脂フィルム層等からなる基材と、ポリオレフィン系樹脂層等からなるシーラント層とを強固に接着するためのものであって(引用文献3の【0028】)、ポリエステル系樹脂フィルム層とアンカーコート層は隣接して積層されるものであるから、ポリエステル系樹脂フィルム層上に積層される蒸着膜は、必然的にもう一方側である、ポリエステル系樹脂フィルム層の外側(最内層側とは反対側)に配置されたものと理解できる。
そうすると、アンカーコート層を有していない引用発明に、アンカーコート層を有することを前提とした引用文献2、3に記載された配置を適用することはできず、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項により、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たものではない。
(イ)引用文献4には、蒸着膜の配置に関し、「シランカップリング剤等の浸透性の高い助剤を含むシーリング材が、柔軟性容器を構成する積層フィルムのアルミ箔等の界面に気泡を発生させること」([0011])から、「アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属箔層の一方の面側に、基材フィルム層とシーラント層とを、この順に積層してなる積層フィルム」([0012])において、シーラント層側の面、すなわち基材フィルム層における内容物側となる面に、好ましくは前記酸化アルミニウムおよび/または酸化珪素からなる蒸着薄膜層を形成することによって、シランカップリング剤等の高浸透性助剤に対する酸化アルミニウムまたは酸化珪素のバリア性をより向上できる旨記載されている([0015]~[0017]、図4)。
引用文献4の上記[0015]~[0017]、図4に記載の蒸着薄膜層の配置に基づけば、引用発明の「酸化ケイ素」は、「ベースフィルムであるポリエステル」の「合成樹脂シーラント層」側に配置となることから、当業者が、引用発明に引用文献4の上記記載を適用したとしても、引用発明の「酸化ケイ素」を、「ベースフィルムであるポリエステル」の「合成樹脂シーラント層」側とは反対側に配置することはない。
(ウ)引用文献5には、ポリプロピレン系樹脂の最内層の外側面に、無機物等の薄膜層を形成した加熱殺菌用包装材料が記載されている(請求項1、【0017】、図1)。
ポリプロピレン系樹脂の最内層はシーラント層として機能するものであり(【0018】)、引用文献5の無機物等の薄膜層は、シーラント層の面上に設けられたものである。
そのため、引用発明のシリカ蒸着フィルムと合成樹脂シーラントが積層された袋体素材において、引用文献5のシーラント層の面上に無機物等の薄膜層を設ける配置を採用しても、本件発明1のものにはならず、本件発明1の相違点1に係る構成は想到し得ない。
(エ)引用文献6には、無機材料の蒸着膜の配置について記載されていない。
また、取消理由通知(決定の予告)に引用されなかった、特許異議申立書に添付された甲第2号証(特開平11-291384号公報)、甲第3号証(特開2012-76360号公報)、甲第4号証(実公昭47-31097号公報)、甲第5号証(特開2013-173258号公報)、甲第6号証(特開2015-157363号公報)、及び、甲第7号証(特開2015-33824号公報)にも、本件発明1の相違点1に係る構成について、記載も示唆もされていない。
(オ)よって、本件発明1の相違点1に係る構成は、引用発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 以上より、本件発明1は、引用発明ではなく、引用発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~18について
本件発明2~18と引用発明を対比すると、本件発明2~18の各発明は、引用発明と少なくとも上記相違点1で相違する。
そして、相違点1は、上記2(2)アで述べたように、実質的な相違点であるから、本件発明2も引用発明ではなく、また、上記2(2)イで述べたように、引用発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明2~18も、引用発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700067