2019-700258
分離膜のスライム抑制方法、逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物、および分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法
- 審判番号
- 2019-700258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-090914外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月04日
- 審決日
- 2020年08月03日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オルガノ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
- 【異議申立人】亀崎 伸宏
- 分類
- P1652.536-YAA(C02F) / P1652.537-YAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許権者であるオルガノ株式会社が保有する特許第6401491号の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成26年4月25日(優先権主張平成25年8月28日)に出願され、平成30年9月14日にその特許権の設定登録がされ、同年10月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許のうちの請求項1~12に係る特許について、平成31年4月4日に特許異議申立人である亀崎伸宏により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件におけるその後の手続の経緯は次のとおりである。
同年 9月 3日 :(特許権者)訂正請求書及び意見書の提出
同年10月 9日 :(特許異議申立人)意見書の提出
同年12月 3日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 2月21日 :(特許権者)手続補正書(方式)の提出
同年 6月 9日付け:取消理由通知
なお、令和2年7月9日に訂正の請求がされたので、令和元年9月3日及び令和2年1月28日にされた先の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、同条第5項の規定に基づき、令和2年1月28日付けの訂正について特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかったため、同訂正に類似する令和2年7月9日付けの訂正(以下、「本件訂正」という。)については、同機会を与えなかった。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の趣旨
本件訂正は、特許第6401491号の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年7月9日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、7~12について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~6及び請求項7~12を訂正の単位として請求されたものであるところ、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~4のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「請求項3または4に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「請求項3~5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する。
(7) 訂正事項7
明細書の【0009】を削除する。
(8) 訂正事項8
明細書の【0010】を削除する。
(9) 訂正事項9
明細書の【0011】に
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜である分離膜のスライム抑制方法である。」
と記載されているのを、
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。」
に訂正する。
(10) 訂正事項10
明細書の【0012】に
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜である分離膜のスライム抑制方法である。」
と記載されているのを、
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。」
に訂正する。
(11) 訂正事項11
明細書の【0013】に
「また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
に訂正する。
(12) 訂正事項12
明細書の【0021】に
「本発明では、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができる。」
と記載されているのを、
「本発明では、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができる。」
に訂正する。
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項9に
「臭素と、スルファミン酸化合物とを含有することを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項10に
「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有することを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(18) 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項7~11のいずれか1項に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「請求項9または10に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する。
(19) 訂正事項19
明細書の【0015】を削除する。
(20) 訂正事項20
明細書の【0016】を削除する。
(21) 訂正事項21
明細書の【0017】に
「本発明は、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
と記載されているのを、
「本発明は、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
に訂正する。
(22) 訂正事項22
明細書の【0018】に
「本発明は、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
と記載されているのを、
「本発明は、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
に訂正する。
(23) 訂正事項23
明細書の【0019】に
「また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることが好ましい。また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
に訂正する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1、2、13、14、17について
訂正事項1、2、13、14、17は、それぞれ請求項1、2、7、8、11を削除するものであり、これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的にするものである。そして、これらの訂正事項が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(2) 訂正事項5、6、7、8、11、12、18、19、20、23について
訂正事項5、6、7、8、18、19、20、23は、上記訂正事項1、2、13、14、17に係る請求項の削除に伴い、他の請求項の記載内容や引用請求項が不明瞭となったもの、あるいは、明細書の記載内容との整合がとれなくなったものについて、当該不明瞭あるいは不整合を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。そして、これらの訂正事項が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項3、4、15、16について
訂正事項3、4、15、16は、請求項3、4、9、10において、「臭素とスルファミン酸化合物」、あるいは、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」が、分離膜のスライムを抑制するための組成物(分離膜スライム抑制剤組成物)の構成成分であることを明示するとともに、本件訂正前の【請求項11】や明細書の【0052】の記載などに基づいて、当該組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを追加するものであるから、これらの訂正事項は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、さらに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないということができる。
(4) 訂正事項9、10、21、22について
訂正事項9、10、21、22は、上記訂正事項3、4、15、16に係る請求項3、4、9、10の訂正に合わせて、明細書の記載を整合させるものであるから、これらの訂正事項は、明瞭でない記載の釈明を目的にするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであると認められる。
したがって、特許第6401491号の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年7月9日提出の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~12〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載(本件発明)
上記第2のとおり本件訂正は認容できるものであるから、本件特許異議の申立ての対象とされた請求項1~12に係る発明(以下、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。また、対応する特許についても、「本件特許1」などといい、総じて「本件特許」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)【請求項2】(削除)続きを表示(全34行)【請求項3】分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。【請求項4】分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。【請求項5】請求項3または4に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。【請求項6】請求項3~5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。【請求項7】(削除)【請求項8】(削除)【請求項9】臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。【請求項10】臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。【請求項11】(削除)【請求項12】請求項9または10に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
第4 令和元年12月3日及び令和2年6月9日付けで通知された取消理由についての判断
令和元年12月3日付けの取消理由通知(決定の予告)及び令和2年6月9日付けの取消理由通知において、当審が指摘した取消理由は、要するに、分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上である場合については、本件明細書の発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識することはできない、と解されるから、そのような場合を含む発明について記載した特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない、というものである。
これに対してなされた上記本件訂正後の特許請求の範囲の記載をみると、いずれの発明も、分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満となっており、同臭素酸濃度が5mg/kg以上である場合は除外されているから、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に基づいて、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識することができる範囲内のものということができる。
したがって、本件発明について記載した特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、本件特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは認められず、同法第113条第4号に該当するものではないから、標記取消理由によって、本件特許を取り消すことはできない。
第5 上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
特許異議申立人は、特許異議申立書第61~63頁の「3.13 むずび」において整理されているとおり、申立理由1~7を挙げ、その証拠方法として、甲第1~6号証を提出しているところ、それらの申立理由のうち、設定登録時の請求項11を対象とするものは、申立理由5に係る特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(同法第113条第4号に該当)のみである。
一方、上記第3に記載した本件訂正後の特許請求の範囲の記載のとおり、本件発明3~6、9、10、12はいずれも、上記設定登録時の請求項11に記載された発明特定事項、すなわち、スライム抑制剤組成物中の「臭素酸濃度が5mg/kg未満である」という技術的事項を具備するものである。
以上の状況に鑑み、上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由として、ここでは、上記申立理由5に係る特許法第36条第4項第1号所定の規定違反についてのみ検討することとする。
そして、当該申立理由5は、端的にいうと、以下のとおりのものと解することができる(特に、特許異議申立書第58、59頁の「3.10 申立理由5(特許法第36条第4項第1号)」の項目を参酌した。)。
すなわち、本件発明は、分離膜の劣化抑制効果とともに、処理水(透過水)等の水質悪化抑制効果と十分なスライム抑制効果とを両立させることを課題とするものであるが、スライム抑制剤組成物において臭素酸は、当該組成物におけるスライム抑制に関わる成分濃度を高めることで、それに追従して副次的に濃度が高まるものであることから、本件発明のような臭素酸の濃度を5mg/kg未満に規定した組成物は、スライム抑制に関わる成分濃度も同時に低下し、結果的にスライム抑制効果の低下は免れないところ、このように二律背反の事項である臭素酸の濃度とスライム抑制に関わる成分濃度の両者を調整する手段について発明の詳細な説明には記載がないため、実施可能要件に違反する、というものである。
しかしながら、実際に本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例においては、当該二律背反の事項が成立しているとともに、特に、実施例5、6においては、窒素パージの有無により当該臭素酸濃度を調整できることも示されているから、当該発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。
したがって、特許異議申立人が主張する標記特許異議申立理由によっても、本件訂正後の本件特許を取り消すことはできない。
第6 結び
以上のとおり、本件特許3~6、9、10、12は、特許法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するとは認められないから、上記取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、ほかに、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項1、2、7、8、11は削除されたため、これらの請求項に係る本件特許1、2、7、8、11についての特許異議の申立ては、対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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