特許異議申立
2024-700967
水処理方法および水処理装置
- 審判番号
- 2024-700967
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-088295
- 登録番号
- 7471143
- 請求日
- 2024年10月04日
- 審決日
- 2025年05月27日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オルガノ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人YKI国際特許事務所
- 【異議申立人】根本 学
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.536-YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F) / P1651.851-YAA(C02F) / P1651.853-YAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7471143号発明「水処理方法および水処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7471143号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、〔3~4〕について訂正することを認める。
特許第7471143号の請求項1、3に係る特許を維持する。
特許第7471143号の請求項2、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7471143号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年5月20日の出願であって、令和6年4月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月4日(差出日)に、請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人 根本 学(以下、「申立人根本」という。)により、甲第1~4号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年10月18日に、請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人 笹井 栄治(以下、「申立人笹井」という。)により、甲第1~3号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年11月12日に申立人根本から手続補正書が提出され、同年12月26日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である令和7年2月7日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、特許法第120条の5第5項の規定に従い、申立人根本及び申立人笹井に相当の期間を指定して意見を求めたが、申立人根本及び申立人笹井からは、共に、当該期間内に何ら応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容及び一群の請求項について
本件訂正請求(以下、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7471143号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、
前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であることを特徴とする水処理方法。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
と記載されているのを、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、
前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、
前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)であることを特徴とする水処理方法。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
に訂正する
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
本件訂正前の明細書の段落【0008】に
「本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上である、水処理方法である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
と記載されているのを、
「本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、水処理方法である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
に訂正する。
(4) 訂正事項4
明細書の段落【0011】を削除する。
(5) 訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御することを特徴とする水処理装置。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
と記載されているのを、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、
を備え 、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、
前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、
前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)であることを特徴とする水処理装置。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(7) 訂正事項7
本件訂正前の明細書の段落【0012】に
「本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する、水処理装置である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
と記載されているのを、
「本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、を備え、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、水処理装置である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」
に訂正する。
(8) 訂正事項8
明細書の段落【0015】を削除する。
(9) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~2は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、本件訂正前の請求項4は、請求項3を引用するものであるから、本件訂正前の請求項3~4は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、訂正事項1、2、5及び6に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項所定の規定に従い、この一群の請求項1~2、3~4を訂正の単位として請求されたものである。
また、訂正事項3、4、7及び8に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項所定の規定に従い、この一群の請求項1~2、3~4を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1に係る訂正のうち、本件訂正前の「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように」、との記載を「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように」、とする訂正は、本件訂正前の「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」」が不明確であったのを、本件特許明細書の段落【0054】~【0062】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の実施例1~3の記載に基づいて明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、前記訂正は、前記「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」」を「0.53以上になるように」限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、前記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項1に係る訂正のうち、「前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり」、を追記する訂正は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2及び段落【0055】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の記載に基づいて、「薬剤」を「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項1に係る訂正のうち、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」、を追記する訂正は、本件訂正前の「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」が不明確であったのを、本件特許明細書の段落【0055】及び【0059】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の記載に基づいて、「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)」として明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、前記訂正は、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」を「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、前記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3及び4について
ア 訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴い、明細書の段落【0008】の記載を本件訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2に係る請求項2の削除に伴い、明細書の段落【0011】の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ そして、訂正事項3及び4に係る訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項5について
ア 訂正事項5に係る訂正のうち、本件訂正前の「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように」、との記載を「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように」、とする訂正は、本件訂正前の「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」」が不明確であったのを、本件特許明細書の段落【0054】~【0062】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の実施例1~3の記載に基づいて明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、前記訂正は、前記「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」」を「0.53以上になるように」限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、前記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項5に係る訂正のうち、「前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり」、を追記する訂正は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4、段落【0055】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の記載に基づいて、「薬剤」を「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項5に係る訂正のうち、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」、を追記する訂正は、本件訂正前の「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」が不明確であったのを、本件特許明細書の段落【0055】及び【0059】(下記第6の1(1)イ(ア)d)の記載に基づいて、「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)」として明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、前記訂正は、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」を「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、前記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6) 訂正事項7及び8について
ア 訂正事項7に係る訂正は、訂正事項5に係る請求項3の訂正に伴い、明細書の段落【0012】の記載を本件訂正後の請求項3の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 訂正事項8に係る訂正は、訂正事項6に係る請求項4の削除に伴い、明細書の段落【0015】の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ そして、訂正事項7及び8に係る訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7) 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては本件訂正前の全ての請求項についてされているので、訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、〔3~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1及び3に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、
前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、
前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)であることを特徴とする水処理方法。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
【請求項2】(削除)
【請求項3】
薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、
「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、
を備え 、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、
前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、
前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)であることを特徴とする水処理装置。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
【請求項4】(削除)」
第4 特許異議申立理由の概要
1 申立人根本の特許異議申立理由の概要
ここでいう甲第1~4号証は、下記(3)の申立人根本が提出した甲第1~4号証である。
(1) 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
設定登録時の請求項1に係る発明の「R=Cc/Cctここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」は、R=Cc×Fc/(Cf×Ff-Cp×Fp)と変形できる。
そして、前記請求項1に係る発明の「前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとした」との発明特定事項及び本件特許明細書の段落【0032】(下記第6の1(1)イ(ア)c)の記載によれば、前記R=Cc×Fc/(Cf×Ff-Cp×Fp)の式は、有効成分残留率R=単位時間あたりの濃縮水中の薬剤量/分離膜を通過しなかった単位時間あたりの薬剤量を意味するから、有効成分残留率Rは、単位時間あたりの濃縮水中の薬剤量を、分離膜を通過しなかった単位時間あたりの薬剤量に対する比で表した特殊パラメーターである。
ここで、単位時間あたりの濃縮水中の薬剤量は、分離膜を通過しなかった薬剤量から分離膜通過時に生菌等(バイオファウリング)と反応して消費された薬剤量(いずれも単位時間あたり)を減じた量であるから、有効成分残留率Rは、分離膜での生菌等の種類や量に依存するパラメーターである。
ところが、分離膜での生菌等の種類や量は、供給水中の生菌等の量や供給水の水質、水温による生菌の増殖量の変化、死滅した生菌と薬剤との反応、死滅した生菌から放出される細胞内物質との反応等に依存し、これを予測して制御することはできないから、分離膜前後の生菌等(バイオファウリング)の種類や量に依存して制御不能な有効成分残留率Rの値は、達成すべき結果によって方法を特定しようとする記載である。
なお、本件特許明細書の段落【0030】(下記第6の1(1)イ(ア)c)には、有効成分残留率Rを常時又は定期的に所定値以上となるように分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加してもよいことが記載されているが、有効成分残留率Rを前記請求項1に係る発明の範囲にするための制御可能な条件の制御方法に関する記載はない。
仮に、本件特許明細書の段落【0051】(下記第6の1(1)イ(ア)c)の記載に基づいて、ある時点Aの有効成分残留率Rの値によって、それより先の時点Bの有効成分残留率Rを調整しようとしても、時点Aと時点Bの間での生菌等の種類や量の変動が予測できない以上、時点Bの有効成分残留率Rを前記請求項1に係る発明の範囲に調整することはできないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が前記請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないので、実施可能要件を満たさない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明ついて検討しても事情は同じである。
(2) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
ア 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。
イ 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第4号証の段落[0037](摘記は省略した)及び甲第1号証の段落【0035】(下記第6の1(2)ア(ア)a(b))の記載からみれば、甲第2号証に記載された発明である。
ウ 設定登録時の請求項1及び3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項2及び4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 証拠方法
甲第1号証:再公表特許WO2017/141717号
甲第2号証:国際公開第2016/158633号
甲第3号証:竹内 和久,「RO海水淡水化とバイオファウリング」,日本海水学会誌,2009年,第63巻,第5号,p.303-306
甲第4号証:国際公開第2020/040251号
2 申立人笹井の特許異議申立理由
ここでいう甲第1~3号証は、下記(5)の申立人笹井が提出した甲第1~3号証である。
(1) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
ア 甲第1号証の記載によれば、被処理水に対して分離膜処理を行う際に種々の薬剤を添加することは技術常識といえるが、設定登録時の請求項1に係る発明においては被処理水に添加する薬剤が特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、被処理水に対して分離膜処理を行う際に通常使用される任意の薬剤を添加するものを包含するものである。
一方、本件特許明細書の段落【0007】(下記第6の1(1)イ(ア)a)には、発明が解決しようとする課題として、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる水処理方法を提供することが記載されているから、被処理水に対して分離膜処理を行う際に通常使用される任意の薬剤を添加するものを包含する前記請求項1に係る発明は、前記課題を解決しない「水処理方法」を包含するものといえるので、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
更に、設定登録時の請求項3に係る発明について検討しても事情は同じである。
イ 前記アに記載したのと同様の理由により、前記請求項1に係る発明の「水処理方法」は、いかなる薬剤を使用した場合であっても、「有効成分残留率R」を「0.4以上」とすることで、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができるものとされている。
ところが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例1~3として、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を使用した場合に、RO膜の透過水のFlux低下率が2%以下に抑制されていることが記載されているにすぎず、薬剤として安定化次亜臭素酸組成物以外のファウリング防止剤を使用して「有効成分残留値R」を「0.4以上」にした場合に、分離膜のファウリングを効率的に抑制できることは記載されていない。
ここで、甲第2号証の記載によれば、安定化次亜臭素酸組成物以外のファウリング防止剤は、ファウリング防止作用の効能が安定化次亜臭素酸組成物とは異なるものである。
そして、前記発明の詳細な説明には、薬剤として安定化次亜臭素酸組成物以外のファウリング防止剤を添加して、かつ「有効成分残留値R」を「0.4以上」にした場合に、ファウリングを効果的に防止できることは記載されていないから、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、前記発明の詳細な説明に記載された事項を、前記請求項1に係る発明まで拡張ないし一般化することはできないので、前記請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の請求項3に係る発明について検討しても事情は同じである。
ウ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0035】及び【0036】(下記第6の1(1)イ(ア)c)の記載を参酌すると、設定登録時の請求項1に係る発明における薬剤の濃度「Cf」、「Cc」及び「Cp」とは、それぞれ被処理水、濃縮水及び透過水に含まれる殺菌剤や分散剤等の薬剤それ自体の濃度であると解される。
ところが、前記発明の詳細な説明の段落【0060】の【表1】(下記第6の1(1)イ(ア)d)には、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を薬剤として水処理を行った結果として、DPD法によって測定された塩素濃度が記載され、これらの塩素濃度に基づいて算出された「有効成分残留値R」が記載されているが、安定化次亜臭素酸組成物の濃度は記載されていない。
したがって、DPD法によって測定された塩素濃度の特定のない前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
設定登録時の請求項1に係る発明の「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように」、との発明特定事項における「所定値」がいかなる数値をいうのかが明らかでないから、前記請求項1に係る発明は明確でない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
(3) 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(委任省令要件違反)について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項1に係る発明の「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように」、との発明特定事項の技術的意義が記載されていないから、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」を「所定値以上」とすることについて、技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないので、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
(4) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 証拠方法
甲第1号証:松本 幹治 監修,「ユーザーのための実用膜分離技術」,初版第1刷,日刊工業新聞社,1996年4月30日,目次,p.236-241
甲第2号証:特開2015-62889号公報
甲第3号証:特開2018-153749号公報
第5 取消理由の概要
令和6年12月26日付けの取消理由通知書における取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1) 「薬剤」について
本件特許に係る発明は、逆浸透膜等の分離膜の運転におけるバイオファウリングの抑制のために殺菌剤を添加することを前提として、殺菌剤の必要十分量を正確に把握することは困難であり、バイオファウリングを確実に抑制するためには、過剰に殺菌剤を添加しているのが一般的であった、という課題や、濃縮水中の殺菌剤の残留有効成分濃度のみを観察していても、分離膜面でのバイオファウリングの増減を正しく検知することができず、適正な殺菌剤の添加量の調整を行うことができない場合がある、という課題を解決して、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる水処理方法及び水処理装置を提供することを目的としたものといえる。
ところが、設定登録時の請求項1に係る発明においては、「水処理方法」において「被処理水」に添加される「薬剤」が殺菌剤であることが特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、前記前提を破却した、本件課題とは無関係の発明であるといえるので、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の請求項3に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 「薬剤の濃度」について
設定登録時の請求項1に係る発明の「前記被処理水中の前記薬剤の濃度」、「前記濃縮水中の前記薬剤の濃度」及び「前記透過水中の前記薬剤の濃度」は、ぞれぞれ、「被処理水中」、「濃縮水中」及び「透過水中」の「薬剤」に含まれる全成分を包含した「濃度」をいうものと解される。
一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した全塩素濃度は、「安定化次亜臭素酸組成物」に含まれる一部の成分の濃度であり、「薬剤」に含まれる全成分を包含した「濃度」といえるものではないから、「被処理水中」、「濃縮水中」及び「透過水中」の「薬剤の濃度」について、前記請求項1の発明特定事項と発明の詳細な説明の記載が合致しないので、前記請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1) 「薬剤の濃度」について
「被処理水中」、「濃縮水中」及び「透過水中」の「薬剤の濃度」について、設定登録時の請求項1に係る発明の発明特定事項と発明の詳細な説明の記載が合致しないことは前記1(2)に記載したとおりであるから、前記請求項1に係る発明における「薬剤の濃度」の意味が不明確であるので、前記請求項1に係る発明は明確でない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
(2) 「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」について
設定登録時の請求項1に係る発明は、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し」との発明特定事項を有するが、前記発明特定事項における「所定値」がいかなる値をいうのかが明らかでないから、前記請求項1に係る発明は明確でない。
更に、設定登録時の請求項2~4に係る発明について検討しても事情は同じである。
第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断
事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び第5の取消理由についてまとめて判断する。
1 申立人根本の特許異議申立理由について
(1) 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
ア 実施可能要件の判断手法
明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。
そして、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
イ 実施可能要件の判断
(ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のa~eの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
a 「【0001】
本発明は、分離膜を用いる水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜等の分離膜の運転において、バイオファウリングの抑制は大きな課題である。バイオファウリングの抑制には、殺菌剤の添加が有効である。ただし、殺菌剤の必要十分量を正確に把握することは困難であり、バイオファウリングを確実に抑制するためには、過剰に殺菌剤を添加しているのが一般的である。
【0003】
分離膜のバイオファウリング抑制に必要な殺菌剤を過不足なく添加し、過剰な殺菌剤の添加を抑制するために、濃縮水中の残留有効成分濃度が所定値を保つように殺菌剤の添加量を調整することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、逆浸透膜の濃縮水中の全塩素濃度が0.05mg/L以上10mg/L未満の範囲となるように、殺菌剤として安定化次亜臭素酸組成物を存在させることが提案されている。
【0005】
しかし、濃縮水中の残留有効成分濃度のみを観察していても、分離膜面でのバイオファウリングの増減を正しく検知することができず、適正な殺菌剤の添加量の調整を行うことができない場合がある。つまり、濃縮水の残留有効成分濃度が同じであったとしても、分離膜面のバイオファウリング状態が異なる場合がある。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。」
b 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、水処理方法である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
【0011】(削除)
【0012】
本発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、を備え 、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、水処理装置である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
【0015】(削除)
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる水処理方法および水処理装置を提供することができる。」
c 「【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0020】
水処理装置1は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段として、分離膜処理装置12と、分離膜処理装置12の前段において薬剤の被処理水への添加を制御する制御手段として、制御装置32と、を備える。水処理装置1は、被処理水を貯留するための被処理水槽10を備えてもよい。
【0021】
図1の水処理装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、被処理水配管22が接続されている。被処理水槽10の被処理水出口と、分離膜処理装置12の入口とは、ポンプ14を介して被処理水配管24により接続されている。分離膜処理装置12の透過水出口には、透過水配管26が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管28が接続されている。被処理水槽10の薬剤入口には、薬剤添加配管30が接続されている。被処理水配管24におけるポンプ14の上流側には、被処理水中の薬剤濃度を測定する被処理水薬剤濃度測定手段として、被処理水薬剤濃度測定装置16が設置されている。透過水配管26には、透過水中の薬剤濃度を測定する透過水薬剤濃度測定手段として、透過水薬剤濃度測定装置18が設置されている。濃縮水配管28には、濃縮水中の薬剤濃度を測定する濃縮水薬剤濃度測定手段として、濃縮水薬剤濃度測定装置20が設置されている。制御装置32は、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20、薬剤添加配管30に設置された薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整手段(図示せず)と、それぞれ電気的接続等により接続されている。
【0022】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0023】
被処理水は、被処理水配管22を通して必要に応じて被処理水槽10へ貯留される。被処理水槽10において、被処理水へ薬剤添加配管30を通して、薬剤が添加される(薬剤添加工程)。
【0024】
薬剤は分離膜処理装置12の前段において添加されればよく、被処理水配管22において添加されてもよいし、被処理水配管24において添加されてもよい。
【0025】
薬剤が添加された被処理水は、ポンプ14により被処理水配管24を通して分離膜処理装置12へ送液される。分離膜処理装置12において、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理が行われ、透過水と濃縮水とが得られる(分離膜処理工程)。透過水は、透過水配管26を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管28を通して排出される。
・・・
【0027】
本発明者らは、分離膜処理の前段で薬剤を添加する水処理において、分離膜処理の分離膜面のバイオファウリングの増減を検知するには、分離膜を通過する間に薬剤の有効成分がどれだけ消費されたかを把握または検知し、その消費量を所定値以下に低減するように、薬剤を添加する、または薬剤の添加量を調整することが、バイオファウリングの抑制に効率的であるということを見出した。例えば、分離膜の前段において被処理水に添加する薬剤を、分離膜の通過する間の薬剤の消費度合に応じて、所定値以上に薬剤が残留するように添加制御することによって、必要最低限の薬剤添加量で、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる。
【0028】
例えば、本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1では、分離膜処理工程において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加する。
【0029】
また、例えば、本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1では、分離膜処理工程において、下記式で表される有効成分残留率Rが所定値以上である。例えば、分離膜処理工程において、下記式で表される有効成分残留率Rが所定値以上となるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加すればよい。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
Ff:被処理水の流量
Fc:濃縮水の流量
Fp:透過水の流量
Cf:被処理水中の薬剤の濃度
Cc:濃縮水中の薬剤の濃度
Cp:透過水中の薬剤の濃度
【0030】
上記式で表される有効成分残留率Rは、0.4以上であることが好ましく、0.5以上0.9以下の範囲であることがより好ましい。また、上記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加することが好ましく、有効成分残留率Rが0.5以上0.9以下の範囲となるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加することがより好ましい。有効成分残留率Rが0.4未満であると、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができない場合があり、0.9を超えると、透過水の水質を悪化させる場合がある。また、有効成分残留率Rが常時、所定値以上となるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加してもよいし、有効成分残留率Rが定期的に所定値以上となるように、分離膜処理の前段において薬剤を被処理水に添加してもよい。ここで、「定期的」とは、0.1時間~200時間間隔のことをいう。有効成分残留率Rは、制御装置32によって自動で制御してもよいし、手動で制御してもよい。
・・・
【0046】
<残留薬剤の把握>
被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20としては、薬剤の濃度を測定することができるものであればよく特に制限はない。
【0047】
ハロゲン系酸化剤の残留濃度の測定方法としては、DPD法やポーラログラフ法等が挙げられる。
・・・
【0051】
制御装置32は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20により測定された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度、またはこれらのうちの少なくとも1つの測定値に基づいて算出された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度に基づいて、薬剤添加配管30に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への薬剤の添加量を制御する機能を有するものである。また、制御装置32は、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20により測定された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度、またはこれらのうちの少なくとも1つの測定値に基づいて算出された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度と、透過水流量測定装置、濃縮水流量測定装置、被処理水流量測定装置により測定された透過水流量、濃縮水流量、被処理水流量と、に基づいて、薬剤添加配管30に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への薬剤の添加量を制御する機能を有するものである。
【0052】
<薬剤の添加方法>
分離膜処理の前段において添加される薬剤は、連続的に添加されてもよいし、間欠的に添加されてもよい。
【0053】
<その他の構成>
分離膜処理の後段において、逆浸透膜処理装置、UV処理装置、または、イオン交換処理装置のうち少なくとも1つを備えてもよく、分離膜処理の透過水について逆浸透膜処理、UV処理、または、イオン交換処理のうち少なくとも1つの処理を行ってもよい。」
d 「【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl2/L)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0056】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0057】 なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0058】
<実施例1~5>
以下の実験条件で分離膜処理を行った。実施例1~5では、被処理水、透過水、濃縮水中の薬剤濃度を測定し、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、薬剤を被処理水に添加した。結果を表1に示す。
【0059】
(実験条件)
・試験水:模擬水(地下水+有機物(TOCとして10mg/L))
・分離膜:逆浸透膜(DOW BW30-XFR)
・流量:被処理水=840L/h、濃縮水=700L/h、透過水=140L/h
・分離膜処理における透過水回収率:17%
・薬剤:上記で調製した安定化次亜臭素酸組成物
・薬剤有効成分検出方法:DPD法(Hach社製 吸光光度計「DR-3900」)
【0060】
【表1】
[図:0001425759000001.jpg]
【0061】
バイオファウリングが発生すると、逆浸透膜表面が閉塞し、膜の透水性(Flux)が低下する。ここで、Fluxとは逆浸透膜の透過水の透過流束のことを指し、所定条件下における膜の単位面積あたりの透過水量を示す。Fluxの低下率については、「直前7日間のRO膜の透過水Flux低下率(下式)」で評価した。実施例1~3では、R値を0.4以上に保持し、透過水Fluxの低下がほとんど確認されなかった。なお、濃度測定装置の計器の精度上、2%以下の変動は有意な差とは言えない。
「直前7日間のRO膜の透過水Flux低下率」=100-(測定時のFlux/測定時の7日前のFlux)×100
【0062】
一方、実施例4,5では、濃縮水中の薬剤の有効濃度は、実施例1~3と同レベルであるのにも関わらず、R値は0.4未満であったため、透過水Fluxにバイオファウリングによる低下がわずかに見られた。
【0063】
<実施例6,7>
実施例1~5と同様の実験条件でより長期間、分離膜処理を行った。実施例6,7では、被処理水、透過水、濃縮水中の薬剤濃度を測定し、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、薬剤を被処理水に添加した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
[図:0001425759000002.jpg]
【0065】
実施例6と実施例7の結果から、薬剤添加をR値で制御すると、より長期間にわたってバイオファウリングを抑制することができることがわかる。
【0066】
このように、実施例の方法によって、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができた。」
e 「【図1】
[図:0001425759000003.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、本件発明は、分離膜を用いる「水処理方法」及び「水処理装置」に関するものであって(段落【0001】)、同b、c、eの記載によれば、水処理装置1は、「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段」として、分離膜処理装置12と、分離膜処理装置12の前段において薬剤の被処理水への添加を制御する制御手段として、制御装置32と、を備え、また、被処理水を貯留するための被処理水槽10を備えてもよいものであり、被処理水槽10の被処理水入口には、被処理水配管22が接続され、被処理水槽10の被処理水出口と、分離膜処理装置12の入口とは、ポンプ14を介して被処理水配管24により接続され、分離膜処理装置12の透過水出口には、透過水配管26が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管28が接続され、被処理水槽10の薬剤入口には、薬剤添加配管30が接続され、被処理水配管24におけるポンプ14の上流側には、被処理水中の薬剤濃度を測定する被処理水薬剤濃度測定手段として、被処理水薬剤濃度測定装置16が設置され、透過水配管26には、透過水中の薬剤濃度を測定する透過水薬剤濃度測定手段として、透過水薬剤濃度測定装置18が設置され、濃縮水配管28には、濃縮水中の薬剤濃度を測定する濃縮水薬剤濃度測定手段として、濃縮水薬剤濃度測定装置20が設置され、制御装置32は、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20、薬剤添加配管30に設置された薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整手段と、それぞれ電気的接続等により接続されているものである(段落【0020】~【0021】)
そして、前記水処理装置1においては、「被処理水」は、被処理水配管22を通して必要に応じて被処理水槽10へ貯留され、被処理水槽10において、被処理水へ薬剤添加配管30を通して、薬剤が添加されるものであり(薬剤添加工程)(段落【0023】)、薬剤が添加された「被処理水」は、ポンプ14により被処理水配管24を通して分離膜処理装置12へ送液され、分離膜処理装置12において、薬剤が添加された「被処理水」について「分離膜処理」が行われ、「透過水」と「濃縮水」とが得られる(分離膜処理工程)ものであり、「透過水」は、透過水配管26を通して排出され、「濃縮水」は、濃縮水配管28を通して排出されるものである(段落【0025】)。
ここで、前記水処理装置1においては、「分離膜処理工程」において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が「0.53以上」になるように、「分離膜処理」の前段において「薬剤」を「被処理水」に添加するものであり(段落【0008】、【0012】、【0028】)、また、「分離膜処理工程」において、下記式で表される「有効成分残留率R」が「0.4以上」となるように、「分離膜処理」の前段において「薬剤」を「被処理水」に添加すればよいものであり、「有効成分残留率R」は、制御装置32によって自動で制御してもよいものである(段落【0008】、【0012】、【0029】、【0030】)。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
Ff:被処理水の流量
Fc:濃縮水の流量
Fp:透過水の流量
Cf:被処理水中の薬剤の濃度
Cc:濃縮水中の薬剤の濃度
Cp:透過水中の薬剤の濃度
また、添加する「薬剤」は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」であり(段落【0008】、【0012】)、残留薬剤の把握のための被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20としては、薬剤の濃度を測定することができるものであればよく、ハロゲン系酸化剤の残留濃度の測定方法としては、「DPD法」やポーラログラフ法等が挙げられるものである(段落【0046】~【0047】)。
そして、制御装置32は、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROM及びRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20により測定された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度、又はこれらのうちの少なくとも1つの測定値に基づいて算出された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度に基づいて、薬剤添加配管30に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への薬剤の添加量を制御する機能を有するものであり、また、被処理水薬剤濃度測定装置16、透過水薬剤濃度測定装置18、濃縮水薬剤濃度測定装置20により測定された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度、又はこれらのうちの少なくとも1つの測定値に基づいて算出された被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度と、透過水流量測定装置、濃縮水流量測定装置、被処理水流量測定装置により測定された透過水流量、濃縮水流量、被処理水流量と、に基づいて、薬剤添加配管30に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への薬剤の添加量を制御する機能を有するものである(段落【0051】)。
更に、前記(ア)dの実施例の記載によれば、前記水処理装置1において、「薬剤」を、窒素雰囲気下で液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して調製した「安定化次亜臭素酸組成物」とし、全塩素濃度を、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl2/L)として(段落【0055】)、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」を「0.53以上」とし、「有効成分残留率R」を「0.4以上」とすることで、バイオファウリングを抑制できることが裏付けられるものである(段落【0060】~【0062】、実施例1~3。)。
(ウ) そして、前記(イ)に記載された水処理装置1による水処理方法は、本件発明1に係る「水処理方法」の発明特定事項を満たすから、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができるのであり、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1について実施可能要件に適合する。
また、前記(イ)に記載された水処理装置1は、本件発明3に係る「水処理装置」の発明特定事項を満たすから、当業者は、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができるのであり、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明3についても、実施可能要件に適合する。
(エ) 前記(ウ)によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
ウ 申立人根本の主張について
前記第4の1の申立人根本の主張は、本件発明における「有効成分残留率R」は、予測して制御することが困難な、分離膜での生菌等の種類や量に基づいて導出されるものであることを前提として、前記「有効成分残留率R」の値は、達成すべき結果によって方法を特定しようとする記載であることをいうものといえる。
ところが、前記イ(イ)によれば、「有効成分残留率R」は、被処理水薬剤濃度、透過水薬剤濃度、濃縮水薬剤濃度、及びこれらと透過水流量、濃縮水流量、被処理水流量とに基づいて算出され、制御されるものであって、分離膜での生菌等の種類や量に基づいて導出されるものではないから、前記主張は前提において誤っている。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合することは、前記イ(エ)に記載したとおりであるから、前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の1(1)の申立人根本の特許異議の申立て理由は理由がない。
(2) 特許法第29条第1項第3号又は第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について
ここでいう甲第1~4号証は、前記第4の1(3)に記載された、申立人根本が提出した甲第1~4号証である。
ア 甲各号証の記載事項等
(ア) 甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明
a 甲第1号証には、以下の(a)~(e)の記載がある。
(a) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段以上の逆浸透膜を用いる水処理システムであって、
少なくとも1段目の逆浸透膜装置、および前記1段目の逆浸透膜装置の透過水を処理する2段目の逆浸透膜装置と、
前記2段目の逆浸透膜装置の濃縮水を前記1段目の逆浸透膜装置の供給水に循環させる循環手段と、
を備え、
前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加することを特徴とする水処理システム。
・・・
【請求項6】
少なくとも1段目の逆浸透膜、および前記1段目の逆浸透膜の透過水を処理する2段目の逆浸透膜を用いて、2段以上の逆浸透膜処理を行う水処理方法において、
2段目の逆浸透膜の濃縮水を1段目の逆浸透膜の供給水に循環させて用い、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加することを特徴とする水処理方法。」
(b) 「【0005】
本発明の目的は、2段以上の逆浸透膜を用いる水処理において、殺菌剤の添加量を低減することができる、水処理システムおよび水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2段以上の逆浸透膜を用いる水処理システムであって、少なくとも1段目の逆浸透膜装置、および前記1段目の逆浸透膜装置の透過水を処理する2段目の逆浸透膜装置と、前記2段目の逆浸透膜装置の濃縮水を前記1段目の逆浸透膜装置の供給水に循環させる循環手段と、を備え、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理システムである。
・・・
【0011】
また、本発明は、少なくとも1段目の逆浸透膜、および前記1段目の逆浸透膜の透過水を処理する2段目の逆浸透膜を用いて、2段以上の逆浸透膜処理を行う水処理方法において、2段目の逆浸透膜の濃縮水を1段目の逆浸透膜の供給水に循環させて用い、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理方法である。
・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2段以上の逆浸透膜を用いる水処理において、殺菌剤の添加量を低減することができる、水処理システムおよび水処理方法を提供することが可能である。
・・・
【0035】
逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤としては、例えば、次亜臭素酸安定化組成物、クロロスルファミン酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸等のアニオン性の殺菌剤、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾロン化合物、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド等のハロシアノアセトアミド化合物等の中性の殺菌剤等が挙げられ、逆浸透膜での阻止率が80%以上である、次亜臭素酸安定化組成物、クロロスルファミン酸、イソチアゾロン化合物、ハロシアノアセトアミド化合物が好ましく、逆浸透膜での阻止率が90%以上、特に99%以上である、次亜臭素酸安定化組成物、クロロスルファミン酸およびハロシアノアセトアミド化合物のうちの少なくとも1つであることがより好ましい。なお、本明細書において逆浸透膜での阻止率とは、後述する実施例の通り、逆浸透膜としてアニオン荷電膜「ES15」(芳香族ポリアミド系アニオン荷電膜、日東電工株式会社製)を用いた場合の阻止率のことを指す。」
(c) 「【0059】
<実施例1および比較例1,2>
実施例1では図1の水処理システムを用い、比較例1では図3の従来の水処理システムを用いて試験を行った。図3の従来の水処理システム5では、1段目の第1逆浸透膜装置12の供給水に殺菌剤を添加するための殺菌剤添加配管32が、配管18に接続されている。図1のように殺菌剤添加配管28から1点(薬注点2)で殺菌剤の添加(薬注)を行った場合と、図3のように殺菌剤添加配管32および殺菌剤添加配管28から2点(それぞれ薬注点1および薬注点2)で殺菌剤の添加(薬注)を行った場合について、殺菌剤の種類を表1の通り変えながら添加した殺菌剤(薬剤)の量を比較した。殺菌剤は、逆浸透膜の手前で3mg/L以上になるようにした。1段目および2段目の逆浸透膜としては、アニオン荷電膜である日東電工社製の逆浸透膜「ES15」を使用した。供給水量Qは、純水200L/h、1段目逆浸透膜の回収率は50%、2段目逆浸透膜の回収率は90%とした。
・・・
【0063】
[殺菌剤の逆浸透膜での阻止率の評価]
表1に示す配合組成の各殺菌剤について、殺菌剤の逆浸透膜での阻止率を、平膜試験装置を用いて下記条件で評価を行った。
【0064】
(試験条件)
試験装置:平膜試験装置(図4参照)
平膜セル:メンブレンマスターC70-Fフロー式平膜テストセル
平膜種類:アニオン荷電膜「ES15」(芳香族ポリアミド系アニオン荷電膜、低圧RO膜、日東電工株式会社製)
平膜径:直径75mm
試験水:超純水
試験水pH:7.0(下記各殺菌剤を添加後、塩酸、水酸化ナトリウムで調整)
試験水量:50L
試験水温:25℃±1℃
供給圧:0.75MPa
試験水量:5L/min
評価殺菌剤:表1参照
殺菌剤濃度:3mg/L
【0065】
(試験方法)
試験水に各殺菌剤を添加し、pH調整を行った後、30分間循環し、その後、各透過水を十分ブローした後、原水、透過水をサンプリングし、殺菌剤濃度の測定を行い、阻止率を算出した。殺菌剤は、3mg/Lとなるようにタンクに直接添加した。
【0066】
それぞれの殺菌剤の逆浸透膜での阻止率は、下式により求めた。 逆浸透膜での阻止率(%)=(供給水の殺菌剤濃度-透過水の殺菌剤濃度)/(供給水の殺菌剤濃度)×100
【0067】
[次亜臭素酸安定化組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、次亜臭素酸安定化組成物を調製した。・・・
・・・
【0069】
【表1】
[図:0001425759000004.jpg]
【0070】
[実施例1-1および比較例1-1]
実施例1-1および比較例1-1では、殺菌剤として次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)を添加した。このとき、次亜臭素酸安定化組成物の逆浸透膜での阻止率(RO阻止率)を測定したところ、99.1%であった。
【0071】
比較例1-1において、薬注点1から殺菌剤濃度C1、薬注点2から殺菌剤濃度C2で、殺菌剤濃度C1,C2ともに3mg/Lとなるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X1+X2=21.5g/dであった。次に、実施例1-1において、薬注点2から、第1逆浸透膜装置12の供給水における殺菌剤濃度C1が3mg/Lになるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X2は14.5g/d、殺菌剤濃度C2は6.1mg/L(>3mg/L)であった。比較例1-1に比べて実施例1-1では殺菌剤の添加量が7.0g/d低減された。結果を表2に示す。
・・・
【0080】
【表2】
[図:0001425759000005.jpg]
」
(d) 「【図1】
[図:0001425759000006.jpg]
」
(e) 「【図4】
[図:0001425759000007.jpg]
」
b 前記a(a)の記載によれば、甲第1号証には、少なくとも1段目の逆浸透膜、及び前記1段目の逆浸透膜の透過水を処理する2段目の逆浸透膜を用いて、2段以上の逆浸透膜処理を行う水処理方法において、2段目の逆浸透膜の濃縮水を1段目の逆浸透膜の供給水に循環させて用い、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理方法(【請求項6】)が記載されている。
そして、前記a(c)~(e)に記載された実施例1-1に注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「少なくとも1段目の逆浸透膜、及び前記1段目の逆浸透膜の透過水を処理する2段目の逆浸透膜を用いて、2段以上の逆浸透膜処理を行う水処理方法において、2段目の逆浸透膜の濃縮水を1段目の逆浸透膜の供給水に循環させて用い、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理方法であって、
殺菌剤添加配管から1点(薬注点2)で殺菌剤の添加(薬注)を行い、1段目及び2段目の逆浸透膜として、アニオン荷電膜である日東電工社製の逆浸透膜「ES15」を使用し、供給水量は、純水200L/h、1段目逆浸透膜の回収率は50%、2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであり、
殺菌剤の逆浸透膜での阻止率を、平膜試験装置を用いて下記条件で評価を行ったものであり、
(試験条件)
試験装置:平膜試験装置(図4参照)
平膜セル:メンブレンマスターC70-Fフロー式平膜テストセル
平膜種類:アニオン荷電膜「ES15」(芳香族ポリアミド系アニオン荷電膜、低圧RO膜、日東電工株式会社製)
平膜径:直径75mm
試験水:超純水
試験水pH:7.0(下記各殺菌剤を添加後、塩酸、水酸化ナトリウムで調整)
試験水量:50L
試験水温:25℃±1℃
供給圧:0.75MPa
試験水量:5L/min
評価殺菌剤:次亜臭素酸安定化組成物
殺菌剤濃度:3mg/L
(試験方法)
試験水に殺菌剤を添加し、pH調整を行った後、30分間循環し、その後、各透過水を十分ブローした後、原水、透過水をサンプリングし、殺菌剤濃度の測定を行い、阻止率を算出した。殺菌剤は、3mg/Lとなるようにタンクに直接添加した。
殺菌剤の逆浸透膜での阻止率は、下式により求めたものであり、
逆浸透膜での阻止率(%)=(供給水の殺菌剤濃度-透過水の殺菌剤濃度)/(供給水の殺菌剤濃度)×100
前記次亜臭素酸安定化組成物は、窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して調製したものであり、
実施例1-1では、殺菌剤として次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)を添加し、このとき、次亜臭素酸安定化組成物の逆浸透膜での阻止率(RO阻止率)を測定したところ、99.1%であったものであり、
前記次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)の組成は、水が55重量%、水酸化ナトリウムが13重量%、液体臭素が17重量%、スルファミン酸が11重量%、水酸化カリウムが4重量%であり、
実施例1-1において、薬注点2から、第1逆浸透膜装置の供給水における殺菌剤濃度C1が3mg/Lになるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X2は14.5g/d、殺菌剤濃度C2は6.1mg/L(>3mg/L)であったものであり、総殺菌剤添加量X1+X2は14.5g/dであったものである、水処理方法。」(以下、「甲1-1発明」という。)
c また、前記a(a)の記載によれば、甲第1号証には、2段以上の逆浸透膜を用いる水処理システムであって、少なくとも1段目の逆浸透膜装置、及び前記1段目の逆浸透膜装置の透過水を処理する2段目の逆浸透膜装置と、前記2段目の逆浸透膜装置の濃縮水を前記1段目の逆浸透膜装置の供給水に循環させる循環手段と、を備え、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理システム(【請求項1】)が記載されている。
そして、前記bと同様にして実施例1-1に注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「2段以上の逆浸透膜を用いる水処理システムであって、少なくとも1段目の逆浸透膜装置、及び前記1段目の逆浸透膜装置の透過水を処理する2段目の逆浸透膜装置と、前記2段目の逆浸透膜装置の濃縮水を前記1段目の逆浸透膜装置の供給水に循環させる循環手段と、を備え、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する水処理システムであり、
殺菌剤添加配管から1点(薬注点2)で殺菌剤の添加(薬注)を行い、1段目及び2段目の逆浸透膜として、アニオン荷電膜である日東電工社製の逆浸透膜「ES15」を使用し、供給水量は、純水200L/h、1段目逆浸透膜の回収率は50%、2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであり、
殺菌剤の逆浸透膜での阻止率を、平膜試験装置を用いて下記条件で評価を行ったものであり、
(試験条件)
試験装置:平膜試験装置(図4参照)
平膜セル:メンブレンマスターC70-Fフロー式平膜テストセル
平膜種類:アニオン荷電膜「ES15」(芳香族ポリアミド系アニオン荷電膜、低圧RO膜、日東電工株式会社製)
平膜径:直径75mm
試験水:超純水
試験水pH:7.0(下記各殺菌剤を添加後、塩酸、水酸化ナトリウムで調整)
試験水量:50L 試験水温:25℃±1℃
供給圧:0.75MPa
試験水量:5L/min
評価殺菌剤:次亜臭素酸安定化組成物
殺菌剤濃度:3mg/L
(試験方法)
試験水に殺菌剤を添加し、pH調整を行った後、30分間循環し、その後、各透過水を十分ブローした後、原水、透過水をサンプリングし、殺菌剤濃度の測定を行い、阻止率を算出した。殺菌剤は、3mg/Lとなるようにタンクに直接添加した。
殺菌剤の逆浸透膜での阻止率は、下式により求めたものであり、
逆浸透膜での阻止率(%)=(供給水の殺菌剤濃度-透過水の殺菌剤濃度)/(供給水の殺菌剤濃度)×100
前記次亜臭素酸安定化組成物は、窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して調製したものであり、
実施例1-1では、殺菌剤として次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)を添加し、このとき、次亜臭素酸安定化組成物の逆浸透膜での阻止率(RO阻止率)を測定したところ、99.1%であったものであり、
前記次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)の組成は、水が55重量%、水酸化ナトリウムが13重量%、液体臭素が17重量%、スルファミン酸が11重量%、水酸化カリウムが4重量%であり、
実施例1-1において、薬注点2から、第1逆浸透膜装置の供給水における殺菌剤濃度C1が3mg/Lになるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X2は14.5g/d、殺菌剤濃度C2は6.1mg/L(>3mg/L)であったものであり、総殺菌剤添加量X1+X2は14.5g/dであったものである、水処理システム。」(以下、「甲1-2発明」という。)
(イ) 甲第2号証に記載された事項及び甲第2号証に記載された発明
a 甲第2号証には、以下の(a)~(c)の記載がある。
(a) 「請求の範囲
[請求項1] 逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムの運転方法において、
前記逆浸透膜装置の被処理水に、前記エネルギー回収装置に導入される前記濃縮水の残留ハロゲン濃度が全塩素換算濃度で0.1~10000mg/Lとなるように、結合塩素系および安定化臭素系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤を添加することを特徴とする逆浸透膜処理システムの運転方法。
・・・
[請求項4] 逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムにおいて、前記逆浸透膜装置の被処理水に結合塩素系および安定化臭素系のすくなくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する薬注手段と、前記エネルギー回収装置に導入される濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残留ハロゲン濃度測定手段と、該残留ハロゲン濃度測定手段の測定値に基いて、前記薬注手段におけるスライムコントロール剤の添加量を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする逆浸透膜処理システム。」
(b) 「[0070] 図1は、本発明の実施に好適なRO膜処理システムの一例を概略的に示す系統図であり、図1中、1は貯水槽、2は濾過器、3はRO膜装置、4はエネルギー回収装置、5は残留ハロゲン濃度計、6は安定化ハロゲンスライムコントロール剤の薬注ポンプ、7は安定化ハロゲン系スライムコントロール剤貯槽、8は薬注制御装置であり、Pは高圧ポンプである。
[0071] 図1のRO膜処理システムでは、貯水槽1においてNaClOが添加された水は、配管11より濾過器2に導入され、濾過器2で濾過された後、配管12を経て高圧ポンプPによりRO膜装置3に圧送される過程で、NaHSO3が添加されて残留塩素が分解除去され、その後、クロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤やブロモスルファミン酸塩系スライムコントロール剤等の安定化ハロゲンスライムコントロール剤が添加された後、RO膜装置3に導入される。・・・
・・・
[0077] 以下の実施例及び比較例においては、図1に示すRO膜処理システム(発電所の海水淡水化逆浸透膜処理装置)において、以下の条件で運転を行った。
[0078]
[運転条件]
<RO膜装置>
RO給水量:250m3/hr
透過水量:100m3/hr
水回収率:約40%
<エネルギー回収装置>
圧力回収型エネルギー回収装置
[0079] 以下の実施例及び比較例において、RO膜装置の水回収率を約40%としているため、RO給水の全塩素濃度に対して、濃縮水の全塩素濃度は理論的には1.7倍となる。ただし、添加した結合塩素系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、RO中の給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、RO中に残留したNaHSO3等によって分解されるために、濃縮水の全塩素濃度は、ROの全塩素濃度の1.7倍よりも低濃度となる場合もある。
・・・
[0082][比較例1]
貯水槽1において、NaClOを添加して殺菌処理した後、高圧ポンプPの入口側でNaHSO3を添加して残留NaClOを還元除去した海水をRO膜装置に供給してRO膜処理を1年間行った。その結果、エネルギー回収装置のエネルギー回収率(P1/P2×100、P1=エネルギー回収装置の入口圧力、P2=エネルギー回収装置によって変換(回収)された圧力の値)は年間平均85%で、エネルギー回収装置のバイオファウリングによる停止回数は1年間に3回であった。
[0083] 以下、エネルギー回収装置の年間平均のエネルギー回収率を単に「エネルギー回収率」と称し、1年間当たりの、エネルギー回収装置のバイオファウリングによる停止回数を「停止頻度」と称す。
[0084][実施例1,2、比較例2~4]
比較例1において、ポンプPの入口側、NaHSO3の添加箇所よりも後段側で、結合塩素系スライムコントロール剤としてモノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)を、RO給水の全塩素濃度が表1に示す濃度となるように連続添加したこと以外は、比較例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
ここで用いたモノクロロスルファミン酸ナトリウムは、後述の実験例Iにおける供試薬品の製造の項に記載される方法で製造したものである。
・・・
[0087][比較例5,6]
比較例1において、ポンプPの入口側、NaHSO3の添加箇所よりも後段側で、有機系殺菌剤として5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT)を、RO給水のCl-MIT濃度が表1に示す濃度となるように連続添加したこと以外は、比較例1と同様に運転を行った。その結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度、エネルギー回収装置のエネルギー回収率及び停止頻度は、表1に示す通りとなった。
[0088][表1]
[図:0001425759000008.jpg]
」
(c) 「[図1]
[図:0001425759000009.jpg]
」
b 前記a(a)の記載によれば、甲第2号証には、逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムの運転方法において、前記逆浸透膜装置の被処理水に、前記エネルギー回収装置に導入される前記濃縮水の残留ハロゲン濃度が全塩素換算濃度で0.1~10000mg/Lとなるように、結合塩素系及び安定化臭素系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤を添加することを特徴とする逆浸透膜処理システムの運転方法([請求項1])が記載されている。
そして、前記a(b)及び(c)に記載された比較例4に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムの運転方法において、前記逆浸透膜装置の被処理水に、前記エネルギー回収装置に導入される前記濃縮水の残留ハロゲン濃度が全塩素換算濃度で0.1~10000mg/Lとなるように、結合塩素系及び安定化臭素系の少なくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する、逆浸透膜処理システムの運転方法であって、
前記逆浸透膜処理システムは、貯水槽、濾過器、RO膜装置、エネルギー回収装置、残留ハロゲン濃度計、安定化ハロゲンスライムコントロール剤の薬注ポンプ、安定化ハロゲン系スライムコントロール剤貯槽、薬注制御装置及び高圧ポンプを有し、
その運転条件は、
<RO膜装置>
RO給水量:250m3/hr
透過水量:100m3/hr
水回収率:約40%
<エネルギー回収装置>
圧力回収型エネルギー回収装置
であり、RO膜装置の水回収率を約40%としているため、RO給水の全塩素濃度に対して、濃縮水の全塩素濃度は理論的には1.7倍となるものであり、ただし、添加した結合塩素系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、RO中の給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、RO中に残留したNaHSO3等によって分解されるために、濃縮水の全塩素濃度は、ROの全塩素濃度の1.7倍よりも低濃度となる場合もあるものであり、
貯水槽において、NaClOを添加して殺菌処理した後、高圧ポンプの入口側でNaHSO3を添加して残留NaClOを還元除去した海水をRO膜装置に供給してRO膜処理を1年間行ったものであり、
ポンプの入口側、NaHSO3の添加箇所よりも後段側で、結合塩素系スライムコントロール剤としてモノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)を、RO給水の全塩素濃度が0.05mg/Lとなるように連続添加した結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度が0.08mg/L、エネルギー回収装置のエネルギー回収率(P1/P2×100、P1=エネルギー回収装置の入口圧力、P2=エネルギー回収装置によって変換(回収)された圧力の値)が85%及び停止頻度が3回/年となり、評価が×である、逆浸透膜処理システムの運転方法。」(以下、「甲2-1発明」という。)
c また、前記a(a)の記載によれば、甲第2号証には、逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムにおいて、前記逆浸透膜装置の被処理水に結合塩素系及び安定化臭素系のすくなくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する薬注手段と、前記エネルギー回収装置に導入される濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残留ハロゲン濃度測定手段と、該残留ハロゲン濃度測定手段の測定値に基いて、前記薬注手段におけるスライムコントロール剤の添加量を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする逆浸透膜処理システム([請求項4])が記載されている。
そして、前記bと同様にして比較例4に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置の濃縮水が導入されるエネルギー回収装置とを備えた逆浸透膜処理システムにおいて、前記逆浸透膜装置の被処理水に結合塩素系及び安定化臭素系のすくなくともいずれかのスライムコントロール剤を添加する薬注手段と、前記エネルギー回収装置に導入される濃縮水の残留ハロゲン濃度を測定する残留ハロゲン濃度測定手段と、該残留ハロゲン濃度測定手段の測定値に基いて、前記薬注手段におけるスライムコントロール剤の添加量を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする逆浸透膜処理システムであって、
前記逆浸透膜処理システムは、貯水槽、濾過器、RO膜装置、エネルギー回収装置、残留ハロゲン濃度計、安定化ハロゲンスライムコントロール剤の薬注ポンプ、安定化ハロゲン系スライムコントロール剤貯槽、薬注制御装置及び高圧ポンプを有し、
その運転条件は、
<RO膜装置>
RO給水量:250m3/hr
透過水量:100m3/hr
水回収率:約40%
<エネルギー回収装置>
圧力回収型エネルギー回収装置
であり、RO膜装置の水回収率を約40%としているため、RO給水の全塩素濃度に対して、濃縮水の全塩素濃度は理論的には1.7倍となるものであり、ただし、添加した結合塩素系スライムコントロール剤は、RO膜面に付着した有機物や、RO中の給水配管及び濃縮水配管内に付着した有機物、RO中に残留したNaHSO3等によって分解されるために、濃縮水の全塩素濃度は、ROの全塩素濃度の1.7倍よりも低濃度となる場合もあるものであり、
貯水槽において、NaClOを添加して殺菌処理した後、高圧ポンプの入口側でNaHSO3を添加して残留NaClOを還元除去した海水をRO膜装置に供給してRO膜処理を1年間行ったものであり、
ポンプの入口側、NaHSO3の添加箇所よりも後段側で、結合塩素系スライムコントロール剤としてモノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)を、RO給水の全塩素濃度が0.05mg/Lとなるように連続添加した結果、エネルギー回収装置の入口濃縮水の全塩素濃度が0.08mg/L、エネルギー回収装置のエネルギー回収率(P1/P2×100、P1=エネルギー回収装置の入口圧力、P2=エネルギー回収装置によって変換(回収)された圧力の値)が85%及び停止頻度が3回/年となり、評価が×である、逆浸透膜処理システム。」(以下、「甲2-2発明」という。)
(ウ) 甲第3号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された発明
a 甲第3号証には、以下の(a)~(c)の記載がある。
(a) 「1.はじめに
逆浸透膜(RO膜)を利用した海水淡水化装置にとってRO膜のファウリングによる性能劣化の抑制は最も重要な課題の一つである.これまでに多くの海水淡水化プロセスに関して報告されている.本報ではRO海水淡水化プロセスにおけるバイオファウリングの研究事例につき紹介する.」(303ページ左欄1行~7行)
(b) 「4.カタールにおけるRO海水淡水化実証プラントでの事例9)
・・・
実証プラントのフローをFig.2に示す.本プラントでは砂ろ過(PF:Pre-Filter)と膜ろ過(MF膜)により前処理した海水を海水淡水化用RO膜で脱塩し,後処理用RO膜によりホウ素を除去する.本プロジェクトの初期にバイオファウリングが原因と思われるモジュール差圧の急激な上昇が観察された.そこで本プラントの海水中のバクテリアの挙動を調査した.・・・国内の他の事例で硫黄酸化細菌(Sulfur Oxidizing Bacteria)が優占化している事例があったため,本プラントでも硫黄酸化細菌が増殖していると考え,SBS(重亜硫酸ナトリウム)の消費量を測定した.大型の付着生物の防止を目的に取水口で海水に塩素が添加されているが,その塩素の膜への到達を防ぐ目的でSBSが添加されている.RO入口までに塩素はなくなっているため、RO入口に存在するSBSは過剰のSBSである.分析結果をFig.5に示す.この図からRO膜モジュール内でSBSが消費されていることがわかる.本プラントではこの後,過剰のSBSを調整することにより差圧の急激な上昇を抑制できることを確認した.」(305ページ左欄5行~306ページ左欄9行)
(c) 「
[図:0001425759000010.jpg]
」
b 前記a(a)の記載によれば、甲第3号証には逆浸透膜(RO膜)を利用した海水淡水化装置が記載されており、同(b)及び(c)の記載によれば、前記海水淡水化装置の実証プラントでは、砂ろ過(PF:Pre-Filter)と膜ろ過(MF膜)により前処理した海水を海水淡水化用RO膜で脱塩し、後処理用RO膜によりホウ素を除去するものであるが、本プロジェクトの初期にバイオファウリングが原因と思われるモジュール差圧の急激な上昇が観察されたので、本プラントの海水中のバクテリアの挙動を調査したものである。
そして、国内の他の事例で硫黄酸化細菌(Sulfur Oxidizing Bacteria)が優占化している事例があったため、本プラントでも硫黄酸化細菌が増殖していると考え、SBS(重亜硫酸ナトリウム)の消費量を測定したものであり、大型の付着生物の防止を目的に取水口で海水に塩素が添加されているが、その塩素の膜への到達を防ぐ目的でSBSが添加されているものであり、RO入口までに塩素はなくなっているため、RO入口に存在するSBSは過剰のSBSであり、RO膜モジュール内でSBSが消費されていることがわかるので、本プラントではこの後、過剰のSBSを調整することにより差圧の急激な上昇を抑制できることを確認したものである。
c 前記bによれば、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「逆浸透膜(RO膜)を利用した海水淡水化装置による海水淡水化方法であって、
前記海水淡水化装置の実証プラントでは、砂ろ過(PF:Pre-Filter)と膜ろ過(MF膜)により前処理した海水を海水淡水化用RO膜で脱塩し、後処理用RO膜によりホウ素を除去するものであるが、本プロジェクトの初期にバイオファウリングが原因と思われるモジュール差圧の急激な上昇が観察されたので、本プラントの海水中のバクテリアの挙動を調査したものであり、
国内の他の事例で硫黄酸化細菌(Sulfur Oxidizing Bacteria)が優占化している事例があったため,本プラントでも硫黄酸化細菌が増殖していると考え、SBS(重亜硫酸ナトリウム)の消費量を測定したものであり、大型の付着生物の防止を目的に取水口で海水に塩素が添加されているが、その塩素の膜への到達を防ぐ目的でSBSが添加されているものであり、RO入口までに塩素はなくなっているため、RO入口に存在するSBSは過剰のSBSであり、RO膜モジュール内でSBSが消費されていることがわかるので、本プラントではこの後、過剰のSBSを調整することにより差圧の急激な上昇を抑制できることを確認した、海水淡水化方法。」(以下、「根本甲3-1発明」という。)
「逆浸透膜(RO膜)を利用した海水淡水化装置であって、
前記海水淡水化装置の実証プラントでは、砂ろ過(PF:Pre-Filter)と膜ろ過(MF膜)により前処理した海水を海水淡水化用RO膜で脱塩し、後処理用RO膜によりホウ素を除去するものであるが、本プロジェクトの初期にバイオファウリングが原因と思われるモジュール差圧の急激な上昇が観察されたので、本プラントの海水中のバクテリアの挙動を調査したものであり、
国内の他の事例で硫黄酸化細菌(Sulfur Oxidizing Bacteria)が優占化している事例があったため,本プラントでも硫黄酸化細菌が増殖していると考え、SBS(重亜硫酸ナトリウム)の消費量を測定したものであり、大型の付着生物の防止を目的に取水口で海水に塩素が添加されているが、その塩素の膜への到達を防ぐ目的でSBSが添加されているものであり、RO入口までに塩素はなくなっているため、RO入口に存在するSBSは過剰のSBSであり、RO膜モジュール内でSBSが消費されていることがわかるので、本プラントではこの後、過剰のSBSを調整することにより差圧の急激な上昇を抑制できることを確認した、海水淡水化装置。」(以下、「根本甲3-2発明」という。)
なお、甲第4号証の摘記は省略する。
イ 甲第1号証を主引用例とした場合について
(ア) 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、甲1-1発明における「殺菌剤」は、その組成が「水が55重量%、水酸化ナトリウムが13重量%、液体臭素が17%、スルファミン酸が11%、水酸化カリウムが4重量%」である「次亜臭素酸安定化組成物(アニオン性)」であるから、本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当し、甲1-1発明において、「少なくとも1段目の逆浸透膜、及び前記1段目の逆浸透膜の透過水を処理する2段目の逆浸透膜を用いて、2段以上の逆浸透膜処理を行う」ことは、「前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加する」ものであるから、本件発明1における「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物である、水処理方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:「水処理方法」が、本件発明1は、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加」するのに対して、甲1-1発明は、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が明らかでない点。
・相違点2:「水処理方法」が、本件発明1は、「前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「R=Cc/Cct ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」のに対して、甲1-1発明は、「1段目及び2段目の逆浸透膜として、アニオン荷電膜である日東電工社製の逆浸透膜「ES15」を使用し、供給水量は、純水200L/h、1段目逆浸透膜の回収率は50%、2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであり」、「殺菌剤のRO膜での阻止率が99.1%であり、薬注点2から、第1逆浸透膜装置の供給水における殺菌剤濃度C1が3mg/Lになるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X2は14.5g/d、殺菌剤濃度C2は6.1mg/L(>3mg/L)であったものであり、総殺菌剤添加量X1+X2は14.5g/dであったものである」点。
ここで、前記相違点2の認定の理由について検討しておくと、本件発明1の「有効成分残留率R」は、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」などから算出されるものであり、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」の測定値は、その測定方法である「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法」と一体不可分のものであるから、「有効成分残留率R」もまた、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」の測定方法である「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法」と一体不可分のものといえるので、本件発明1と甲1-1発明の「有効成分残留率R」についての相違点を、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」の測定方法まで含めて、前記相違点2のとおりに認定する。
(イ) 事案に鑑み、始めに、前記(ア)の相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、「有効成分残留率R」を算出するには、少なくとも「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf」、「前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc」及び「前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」が求められなければならない。
ここで、甲1-1発明においては、第2逆浸透膜装置の供給水の「殺菌剤濃度C2」が「6.1mg/L」であり、「2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであ」り、「殺菌剤のRO膜での阻止率が99.1%」であるとされている。
ところが、甲第1号証には、「薬剤」の濃度が「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」ことは記載されていないし、甲1-1発明における「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「薬剤」の濃度を予測することは困難であるから、甲1-1発明において、「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf」、「前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc」及び「前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」を求めることは困難である。
また、甲1-1発明における「殺菌剤のRO膜での阻止率」は、「試験装置:平膜試験装置(図4参照) 平膜セル:メンブレンマスターC70-Fフロー式平膜テストセル 平膜種類:アニオン荷電膜「ES15」(芳香族ポリアミド系アニオン荷電膜、低圧RO膜、日東電工株式会社製) 平膜径:直径75mm 試験水:超純水 試験水pH:7.0(下記各殺菌剤を添加後、塩酸、水酸化ナトリウムで調整) 試験水量:50L 試験水温:25℃±1℃ 供給圧:0.75MPa 試験水量:5L/min 評価殺菌剤:次亜臭素酸安定化組成物 殺菌剤濃度:3mg/L」の「試験条件」において、「試験水に殺菌剤を添加し、pH調整を行った後、30分間循環し、その後、各透過水を十分ブローした後、原水、透過水をサンプリングし、殺菌剤濃度の測定を行い、阻止率を算出した。殺菌剤は、3mg/Lとなるようにタンクに直接添加した。」という「試験方法」により、「99.1%」と求められたものである。
一方、甲1-1発明に係る「水処理方法」は、装置の構成が【図1】(前記ア(ア)a(d))のものであり、【図4】(同(e))のものではないから、前記「試験条件」とは、そもそも装置の構成が異なるし、そのほかの処理条件も、前記「試験条件」及び「試験方法」と合致しているとはいえない。
そしてその場合、前記甲1-1発明の装置及び処理条件における「殺菌剤のRO膜での阻止率」が、前記「試験条件」及び「試験方法」により求めた「殺菌剤のRO膜での阻止率」と合致するとはいえないし、このことを裏付ける証拠もなく、更に、前記甲1-1発明の装置及び処理条件における「殺菌剤のRO膜での阻止率」を予測することも困難であるから、前記甲1-1発明の装置及び処理条件における「殺菌剤のRO膜での阻止率」は明らかでない。
そうすると、甲1-1発明において、第2逆浸透膜装置の供給水の「殺菌剤濃度C2」が「6.1mg/L」であり、「2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであ」り、「殺菌剤のRO膜での阻止率が99.1%」であるとされているとしても、前記甲1-1発明の装置及び処理条件における「殺菌剤のRO膜での阻止率」が明らかでないことから、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf」、「前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc」及び「前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」を求めることは困難である。
これらのことから、甲1-1発明における「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf」、「前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc」及び「前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」を求めることは困難であるので、「有効成分残留率R」を算出することも困難である。
更に、甲1-1発明は、2段以上の逆浸透膜を用いる水処理において、殺菌剤の添加量を低減することができる、水処理システムおよび水処理方法を提供することを目的とするものであって(段落【0005】。前記ア(ア)a(b)。)、2段目の逆浸透膜の濃縮水を1段目の逆浸透膜の供給水に循環させ、前記2段目の逆浸透膜の供給水に、逆浸透膜での阻止率が70%以上である殺菌剤を添加することで、殺菌剤の添加量を低減することができるものであり、「有効成分残留率R」に注目したものではないから、甲1-1発明において「有効成分残留率R」を「0.4以上」とすることはそもそも想定されない。
してみれば、甲1-1発明が、「有効成分残留率Rが0.4以上であ」る、との発明特定事項を有しているとはいえないから、前記相違点2は実質的な相違点であるので、前記(ア)の相違点1について検討するまでもなく、本件発明1が甲1-1発明であるとはいえない。
(ウ) 次に、前記(ア)と同様にして本件発明3と甲1-2発明とを対比すると、本件発明3と甲1-2発明とは、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段を備え、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物である、水処理装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’:「水処理装置」が、本件発明3は、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段」を有するのに対して、甲1-2発明は、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が明らかでない点。
・相違点2’:「水処理装置」が、本件発明3は、「前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記膜分離処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「R=Cc/Cct ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」のに対して、甲1-2発明は、「1段目及び2段目の逆浸透膜として、アニオン荷電膜である日東電工社製の逆浸透膜「ES15」を使用し、供給水量は、純水200L/h、1段目逆浸透膜の回収率は50%、2段目逆浸透膜の回収率は90%としたものであり」、「殺菌剤のRO膜での阻止率が99.1%であり、薬注点2から、第1逆浸透膜装置の供給水における殺菌剤濃度C1が3mg/Lになるように殺菌剤を添加したところ、殺菌剤添加量X2は14.5g/d、殺菌剤濃度C2は6.1mg/L(>3mg/L)であったものであり、総殺菌剤添加量X1+X2は14.5g/dであったものである」点。
(エ) 事案に鑑み、始めに、前記(ウ)の相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記相違点2’は、「有効成分残留率R」を「0.4以上」とするものである点で前記相違点2と共通するから、前記(イ)に記載したのと同様の理由により、実質的な相違点である。
したがって、前記(ウ)の相違点1’について検討するまでもなく、本件発明3が甲1-2発明であるとはいえない。
(オ) 申立人根本は、甲第1号証に記載された発明の「有効成分残留率R」は、甲第1号証の実施例の記載(前記ア(ア)a(c)、(d))から求められる旨を主張しているが(特許異議申立書20ページ3行~22ページ14行)、甲第1号証における「有効成分残留率R」を算出することは困難であることは前記(イ)に記載したとおりであるから、申立人根本の前記主張は採用できない。
(カ) したがって、本件発明1及び3は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないから、前記第4の1(2)アの申立人根本の特許異議の申立て理由は理由がない。
ウ 甲第2号証を主引用例とした場合について
(ア) 本件発明1と甲2-1発明とを対比する。
始めに、甲2-1発明における「結合塩素系スライムコントロール剤」が本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」である「薬剤」に相当するか否かについて検討すると、前記「結合塩素系スライムコントロール剤」は「モノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)」であって、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」ではない。
また、甲第2号証には、「安定化ハロゲンスライムコントロール剤」としてクロロスルファミン酸塩系スライムコントロール剤やブロモスルファミン酸塩系スライムコントロール剤が挙げられているが(段落[0071]。前記ア(イ)a(b))、甲2-1発明は、「停止頻度が3回/年」となり、「評価が×」である比較例にすぎない。
そして、比較例にすぎない甲2-1発明において、更に、前記「結合塩素系スライムコントロール剤」を「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」に代えることは想定されない。
これらのことからみれば、甲2-1発明における「結合塩素系スライムコントロール剤」は、本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するものではないから、本件発明1と甲2-1発明とは、少なくとも「薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するか否かの点で実質的に相違するので、仮に、本件発明1が甲2-1発明の間にそのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明1が甲2-1発明であるとはいえない。
(イ) 次に、本件発明3と甲2-2発明とを対比する。
始めに、甲2-2発明における「結合塩素系スライムコントロール剤」が本件発明3における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するか否かについて検討すると、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲2-2発明における「結合塩素系スライムコントロール剤」は、本件発明3における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するものではない。
そうすると、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、仮に、そのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明3が甲2-2発明であるとはいえない。
(ウ) 申立人根本は、摘記を省略した甲第4号証の段落[0037]の記載によれば、甲第2号証の比較例4の薬剤である「モノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)」は、水中で解離してクロロスルファミン酸を生じ、このことと、甲第1号証の段落【0035】の記載(前記ア(ア)a(b))によれば、「モノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)」の逆浸透膜での阻止率は99%であるから、甲第2号証の比較例4の透過水中の薬剤の濃度を算出できるので、設定登録時の請求項1~4に係る発明は、前記比較例4に対して相違点が存在しない旨、設定登録時の請求項1~4に係る発明は、前記比較例4の場合と同様の理由により、甲第2号証の実施例6(当審注:甲第2号証には実施例6は記載されていないので、実施例6は比較例6の誤記と認める。)に対して相違点が存在しない旨を主張している(特許異議申立書33ページ下から6行~39ページ13行)。
ところが、仮に、甲第2号証の比較例4の薬剤である「モノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)」が水中で解離してクロロスルファミン酸を生じ、「モノクロロスルファミン酸ナトリウム(NHClSO3Na)」の逆浸透膜での阻止率が99%であるとしても、前記比較例4に注目して認定した甲2-1発明及び甲2-2発明における「結合塩素系スライムコントロール剤」が、本件発明1及び3における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するものではないことに変わりはないし、甲第2号証の比較例6に記載された、有機系殺菌剤として5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを用いる発明について検討しても事情は同じである。
すると、本件発明1及び3が、甲第2号証の比較例4及び比較例6に対して相違点が存在しないということはできないので、申立人根本の前記主張はいずれも採用できない。
(エ) したがって、本件発明1及び3は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないから、前記第4の1(2)イの申立人根本の特許異議の申立て理由は理由がない。
ウ 甲第3号証を主引用例とした場合について
(ア) 本件発明1と根本甲3-1発明とを対比する。
始めに、根本甲3-1発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」が本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するか否かについて検討すると、前記「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」は「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」ではないから、根本甲3-1発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」は、本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するものではない。
また、根本甲3-1発明は、ほかに、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」を添加するものでもない。
そうすると、本件発明1と根本甲3-1発明とは、少なくとも、「前記薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するか否かの点で実質的に相違するから、仮に、そのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明1が根本甲3-1発明であるとはいえない。
(イ) 次に、根本甲3-1発明を、「前記薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するものとすることの容易想到性について検討すると、根本甲3-1発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」は、「大型の付着生物の防止を目的に取水口で海水に」「添加され」た「塩素の膜への到達を防ぐ目的で」「添加」されるものであるから、そもそも殺菌剤とはいえない。
すると、根本甲3-1発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」を、殺菌剤である「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」に代えることは、甲第1号証に記載された事項にかかわらず、もとより想定されないから、根本甲3-1発明を、「前記薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、仮に、そのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明1は、根本甲3-1発明に基づいて、又は、根本甲3-1発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 次に、本件発明3と根本甲3-2発明とを対比する。
始めに、根本甲3-2発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」が本件発明3における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するか否かについて検討すると、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、根本甲3-2発明における「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」は、本件発明3における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当するものではない。
そうすると、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、仮に、そのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明3が根本甲3-2発明であるとはいえない。
更に、根本甲3-2発明を、「前記薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するものとすることの容易想到性について検討すると、前記(イ)に記載したのと同様の理由により、根本甲3-2発明を、「前記薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る、との発明特定事項を有するものとすることは、甲第1号証に記載された事項にかかわらず、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、仮に、そのほかの相違点が存在するとしても、それらについて検討するまでもなく、本件発明3は、根本甲3-2発明に基づいて、又は、根本甲3-2発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 申立人根本は、甲第3号証の実証プラントで使用される「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」は、「硫黄酸化細菌が増殖していると考え、SBS(重亜硫酸ナトリウム)の消費量を測定した」ことからみれば、殺菌剤であるから、設定登録時の請求項1に係る発明の「薬剤」に相当する旨を主張している(特許異議申立書41ページ16行~23行)が、前記「SBS(重亜硫酸ナトリウム)」はそもそも殺菌剤とはいえないことは、前記(イ)に記載したとおりであるから、申立人根本の前記主張は採用できない。
(オ) よって、本件発明1及び3は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(2)ウの申立人根本の特許異議の申立て理由は理由がない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1及び3は、特許法第29条第1項又は第2項所定の規定により特許を受けることができないものではないから、前記第4の1(2)の申立人根本の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
2 申立人笹井の特許異議申立理由及び取消理由について
(1) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ サポート要件の判断
(ア) 前記1(1)イ(ア)aの記載によれば、本件発明は、従来技術における、濃縮水中の残留有効成分濃度のみを観察していても、分離膜面でのバイオファウリングの増減を正しく検知することができず、適正な殺菌剤の添加量の調整を行うことができない場合がある、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができる「水処理方法」及び「水処理装置」を提供することを目的とするものである(段落【0005】、【0007】)。
(イ) ここで、同bの記載によれば、本件発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加し、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、「水処理方法」である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
また、本件発明は、薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段と、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段と、を備え、前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であり、前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である、「水処理装置」である。
R=Cc/Cct
ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc
更に、これらの「水処理方法」及び「水処理装置」によれば、分離膜を用いる水処理において、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができ、本件課題を解決することができるのであり(段落【0008】~【0016】)、このことは、同dに記載された実施例によっても裏付けられるものである。
そして、本件発明1の発明特定事項は、前記「水処理方法」の構成を満たすし、本件発明3の発明特定事項は、前記「水処理装置」の構成を満たすものである。
(ウ) 前記(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1及び3の発明特定事項を満たす「水処理方法」や「水処理装置」により、分離膜のバイオファウリングを効率的に抑制することができるものとなって、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
ウ 申立人笹井の主張及び取消理由について
(ア) 本件発明1においては、「薬剤」が「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」に特定されたから、本件発明1が、本件課題を解決しないものや、本件課題と無関係のものを包含するものではなく、また、発明の詳細な説明の記載を本件発明1まで拡張ないし一般化することができないともいえない。
更に、本件発明3について検討しても事情は同じであるので、前記第4の2(1)ア及びイの申立人笹井の特許異議の申立て理由及び前記第5の1(1)の取消理由はいずれも理由がない。
(イ) 本件発明1においては、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」は、「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」ことが特定されたから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
更に、本件発明3について検討しても事情は同じであるので、前記第4の2(1)ウの申立人笹井の特許異議の申立て理由及び前記第5の1(2)の取消理由も、いずれも理由がない。
エ 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、第4の2(1)の申立人笹井の特許異議の申立て理由及び前記第5の1の取消理由はいずれも理由がない。
(2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
ア 明確性要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 明確性要件の判断
(ア) 本件発明1においては、「前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cp」は、「DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」ことが特定されたから、本件発明1における「被処理水中」、「濃縮水中」及び「透過水中」の「薬剤の濃度」は、発明の詳細な説明の記載と合致している。
してみれば、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明3について検討しても事情は同じであるから、前記第5の2(1)の取消理由は理由がない。
(イ) 本件発明1においては、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が「0.53以上になる」ものと特定されたから、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」について、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。
更に、本件発明3について検討しても事情は同じであるから、第4の2(2)の申立人笹井の特許異議の申立て理由及び前記第5の2(2)の取消理由はいずれも理由がない。
ウ 小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するから、第4の2(2)の申立人笹井の特許異議の申立て理由及び前記第5の2の取消理由はいずれも理由がない。
(3) 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(委任省令要件違反)について
ア 委任省令要件の判断手法
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
イ 委任省令要件の判断
(ア) 本件発明は、従来技術における、濃縮水中の残留有効成分濃度のみを観察していても、分離膜面でのバイオファウリングの増減を正しく検知することができず、適正な殺菌剤の添加量の調整を行うことができない場合がある、という本件課題を解決するものであることは、前記(1)イ(ア)に記載したとおりである。
そして、前記1(1)イ(ア)d(段落【0058】~【0062】)の記載によれば、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が「0.53以上」であり、「有効成分残留値R」が「0.4以上」である実施例1~3は、透過水Fluxの低下がほとんど確認されず、本件課題を解決できるものである。
(イ) 前記(ア)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明が解決しようとする課題を理解できるし、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」を「0.53以上」とすることは、「有効成分残留値R」を「0.4以上」とすることとともにその解決手段であって、適正な殺菌剤の添加量の調整を行うことで、バイオファウリングを抑制できる、という技術上の意義を有することを理解できる。
そして、このことを前記アの判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、委任省令要件に適合する。
ウ 小括
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の2(3)の申立人笹井の特許異議の申立て理由は理由がない。
(4) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
ここでいう甲第3号証は、前記第4の2(5)に記載された、申立人笹井が提出した甲第3号証である。
ア 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア) 甲第3号証には、以下のa~cの記載がある。
a 「【請求項1】
生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水および濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、
前記被処理水または前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。
・・・
【請求項3】
生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水および濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理システムであって、
逆浸透膜を有する逆浸透膜処理装置と、
前記被処理水または前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、
を備えることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理システム。」
b 「【0089】
[安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg/L asCl2)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
・・・
【0096】
<実施例3および比較例4>
[生物処理水を含有する被処理水の通水試験]
逆浸透膜用スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を使用して、下記の通りに濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上となるように連続的に薬注した結果を比較した。生菌数はスリーエム株式会社製ペトリフィルム(商標)培地生菌数測定用ACプレートにより行った。
【0097】
(試験条件)
・試験装置:エレメント試験装置
・逆浸透膜:CPA5(日東電工製、ポリアミド系高分子膜)
・運転圧力:0.75MPa
・被処理水:MBR後、活性炭を通水させた処理水(pH7.0)
・薬剤:安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)
・試験温度:25℃
・被処理水水質SS:<2mg/L
CODMn:50mg/L
NH4-N:1mg/L
・・・
【0101】
(実施例3)
実施例3では、図1に示すエレメント試験装置を用い、上記の試験条件で通水した。薬剤は安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を使用して、濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水した。
【0102】
(結果)
通水時間(hr)に対するFlux保持率(%)および通水差圧(MPa)を図7に、通水時間(hr)に対するRO濃縮水の生菌数(CFU/mL)を図8に、通水時間(hr)に対するRO濃縮水の全塩素濃度(mg/L)および遊離塩素濃度(mg/L)を図9に示す。
【0103】
実施例3では、Flux保持率の急激な低下と通水差圧の急激な上昇は認められなかった。試験終了時のFlux保持率は101%、通水差圧は0.002MPaであった。また、試験期間において生菌数は25~41CFU/mLであった。
【0104】
このように、実施例の方法により、生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水および濃縮水を得る逆浸透膜処理において、逆浸透膜のスライム抑制効果を有し、かつ透過水量の低下を抑制することができた。」
c 「【図1】
[図:0001425759000011.jpg]
」
(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、前記被処理水又は前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法(【請求項1】)が記載されている。
そして、前記(ア)b及びcに記載された実施例3に注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、
前記被処理水又は前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる、逆浸透膜を用いる水処理方法であり、
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を調製したものであり、安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であり、全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg/L asCl2)であり、
(試験条件)
・試験装置:エレメント試験装置
・逆浸透膜:CPA5(日東電工製、ポリアミド系高分子膜)
・運転圧力:0.75MPa
・被処理水:MBR後、活性炭を通水させた処理水(pH7.0)
・薬剤:安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)
・試験温度:25℃
・被処理水水質SS:<2mg/L
CODMn:50mg/L
NH4-N:1mg/L
エレメント試験装置を用い、上記の試験条件で通水したものであり、薬剤は安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を使用して、濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水したものであり、
Flux保持率の急激な低下と通水差圧の急激な上昇は認められず、生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る逆浸透膜処理において、逆浸透膜のスライム抑制効果を有し、かつ透過水量の低下を抑制することができたものである、逆浸透膜を用いる水処理方法。」(以下、「笹井甲3-1発明」という。)
(ウ) また、前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理システムであって、逆浸透膜を有する逆浸透膜処理装置と、前記被処理水又は前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、を備える、逆浸透膜を用いる水処理システム(【請求項3】)が記載されている。
そして、前記(イ)と同様にして実施例3に注目すると、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る、逆浸透膜を用いる水処理システムであって、
逆浸透膜を有する逆浸透膜処理装置と、
前記被処理水又は前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する添加手段と、を備える、逆浸透膜を用いる水処理システムであり、
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を調製したものであり、安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であり、全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg/L asCl2)であり、
(試験条件)
・試験装置:エレメント試験装置
・逆浸透膜:CPA5(日東電工製、ポリアミド系高分子膜)
・運転圧力:0.75MPa
・被処理水:MBR後、活性炭を通水させた処理水(pH7.0)
・薬剤:安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)
・試験温度:25℃
・被処理水水質SS:<2mg/L
CODMn:50mg/L
NH4-N:1mg/L
エレメント試験装置を用い、上記の試験条件で通水したものであり、薬剤は安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を使用して、濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水したものであり、
Flux保持率の急激な低下と通水差圧の急激な上昇は認められず、生物処理水を含有する被処理水を逆浸透膜に通水して処理水及び濃縮水を得る逆浸透膜処理において、逆浸透膜のスライム抑制効果を有し、かつ透過水量の低下を抑制することができたものである、逆浸透膜を用いる水処理システム。」(以下、「笹井甲3-2発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1と笹井甲3-1発明とを対比すると、笹井甲3-1発明における「安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)」は、「液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して」「調製した」ものであるから、本件発明1における「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であ」る「薬剤」に相当し、笹井甲3-1発明において、「逆浸透膜:CPA5(日東電工製、ポリアミド系高分子膜)」を備える「エレメント試験装置を用い」、「安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を使用して、濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水」することは、本件発明1における「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程」に相当し、笹井甲3-1発明における「逆浸透膜を用いる水処理方法」は、本件発明1における「水処理方法」に相当する。
そうすると、本件発明1と笹井甲3-1発明とは、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理工程において、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物である、水処理方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点3:「水処理方法」が、本件発明1は、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加」するのに対して、笹井甲3-1発明は、「濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水したもの」である点。
・相違点4:「水処理方法」が、本件発明1は、「前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上であり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「R=Cc/Cct ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」のに対して、笹井甲3-1発明は、「有効成分残留率R」が明らかでない点。
なお、前記相違点4の認定の理由は、前記1(2)イ(ア)に記載した理由と同様である。
(イ) 始めに、前記(ア)の相違点3が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第3号証には、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加」することは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もないから、笹井甲3-1発明が、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加」するものとはいえないので、前記相違点3は実質的な相違点である。
(ウ) 次に、前記相違点3の容易想到性について検討すると、笹井甲3-1発明は、もともと、「前記被処理水又は前記濃縮水中の遊離塩素濃度が0.05mg/L以上となるように、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる」ことを特徴とするものであって、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」に着目したものではないから、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加」する動機付けは存在しない。
また、そうすることを開示した証拠もないから、笹井甲3-1発明を、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(ア)の相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、笹井甲3-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 次に、前記(ア)と同様にして本件発明3と笹井甲3-2発明とを対比すると、本件発明3と笹井甲3-2発明とは、
「薬剤が添加された被処理水について分離膜処理を行い透過水と濃縮水とを得る分離膜処理手段
を備え 、
前記薬剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物である、
水処理装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点3’:「水処理装置」が、本件発明3は、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御する制御手段」を有するのに対して、笹井甲3-2発明は、「濃縮水中の遊離塩素濃度を0.05mg/L以上に維持して通水したもの」である点。
・相違点4’:「水処理装置」が、本件発明3は、「前記制御手段は、前記被処理水の流量をFf、前記濃縮水の流量をFc、前記透過水の流量をFp、前記被処理水中の前記薬剤の濃度をCf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度をCc、前記透過水中の前記薬剤の濃度をCpとしたときに、下記式で表される有効成分残留率Rが0.4以上となるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加するよう制御するものであり、前記被処理水中の前記薬剤の濃度Cf、前記濃縮水中の前記薬剤の濃度Cc、前記透過水中の前記薬剤の濃度Cpは、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した全塩素濃度の値(mg-Cl2/L)である」「R=Cc/Cct ここで、Cct=(Cf×Ff-Cp×Fp)/Fc」のに対して、笹井甲3-2発明は、「有効成分残留率R」が明らかでない点。
(オ) 始めに、前記(エ)の相違点3’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記相違点3’は、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」を「0.53以上」とするものである点で前記相違点3と共通するから、前記(イ)に記載したのと同様の理由により、実質的な相違点である。
次に、前記相違点3’の容易想到性について検討すると、前記(ウ)に記載したのと同様の理由により、笹井甲3-2発明を、前記相違点3’に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。
したがって、前記(エ)の相違点4’について検討するまでもなく、本件発明3は、笹井甲3-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 申立人笹井は、水処理薬品を被処理水に添加するにあたり、被処理水に添加される水処理薬品の添加濃度の上限は、経済的・安全性の観点より当然設定する事項であるから、甲第3号証の実施例3においても、被処理水中の薬剤濃度の上限が設定されているといえるし、かつ、濃縮水中の薬剤濃度の下限が設定されているので、「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上となるようにされていると思量されることから、甲第3号証には、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が所定値以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加する」ことが実質的に記載されている旨を主張している(特許異議申立書19ページ10行~20ページ9行)。
ところが、仮に、甲第3号証の実施例3において、被処理水中の薬剤濃度の上限が設定されているとしても、その上限値は明らかでないから、甲第3号証に、「「濃縮水中における薬剤濃度/被処理水中の薬剤濃度」が0.53以上になるように、前記分離膜処理の前段において前記薬剤を前記被処理水に添加する」ことが実質的に記載されているとはいえないし、そのことを裏付ける証拠もない。
更に、そうすることが容易想到でもないことは、前記(ウ)及び(オ)に記載したとおりであるから、申立人笹井の前記主張は採用できない。
ウ 小括
したがって、本件発明1及び3は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項所定の規定により特許を受けることができないものではないから、前記第4の2(4)の申立人笹井の特許異議の申立て理由は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、3に係る特許は、申立人根本及び申立人笹井の特許異議申立書に記載された特許異議の申立て理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項2、4は削除されたから、請求項2、4に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700967