特許異議申立
2024-700919
廃水の処理方法
- 審判番号
- 2024-700919
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-143980
- 登録番号
- 7454096
- 請求日
- 2024年09月24日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日鉄環境株式会社
- 【権利者代理人】近藤 利英子
- 【権利者代理人】菅野 重慶
- 【権利者代理人】竹山 圭太
- 【権利者代理人】岡田 薫
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 原 賢一
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.113-Y (C02F) / P1651.121-Y (C02F) / P1651.536-Y (C02F) / P1651.537-Y (C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7454096号発明「廃水の処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7454096号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7454096号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和5年9月5日(優先権主張 令和4年9月7日)に出願されたものであり、令和6年3月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~9に係る特許について、同年9月24日に特許異議申立人松山徳子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件の請求項1~9に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。
「【請求項1】
アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記アルカリ酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
【請求項2】
アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程と、
前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
【請求項3】
前記還元剤は、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び第一鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
【請求項4】
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中に、Cu+、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンの存在下で行われる請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
【請求項5】
前記アルカリ酸化反応液を得る工程の前に、前記廃水に、Cu+、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンを含有させる工程をさらに含む請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
【請求項6】
前記還元反応液を得る工程を経た分離対象液を固液分離設備に導入し、固液分離処理を行う工程と、
前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に銅化合物を添加する工程と、をさらに含み、
前記固液分離処理を行う工程は、前記銅化合物の添加によって難溶化されたシアン化合物を前記分離対象液から分離除去する工程である、請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
【請求項7】
前記銅化合物を添加する工程は、前記分離対象液への前記銅化合物の添加によって行われる請求項6に記載の廃水の処理方法。
【請求項8】
前記固液分離処理を行う前に、前記還元反応槽内の液、前記還元反応液、又は前記分離対象液に、第4級アンモニウム化合物を添加することをさらに含む、請求項6に記載の廃水の処理方法。
【請求項9】
前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に、前記銅化合物の添加と同時又はその後に、凝集剤を添加することをさらに含む、請求項6に記載の廃水の処理方法。」
第3 異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(以下、「申立理由1」という。)
本件発明1~5は、下記2に記載の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(甲第2、3号証を参考とする。)。
2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由2」という。)
本件発明1~9は、下記に記載の甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開昭55-49191号公報
甲第2号証:特開2018-69227号公報
甲第3号証:特開2017-104802号公報
甲第4号証:特開平5-337476号公報
甲第5号証:特開2020-32412号公報
(以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。)
3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由3」という。)
本件特許は、請求項1~9の記載が後記第4の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)(以下、「申立理由4」という。)
本件特許は、請求項1~9に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が後記第4の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 当審の判断
1 申立理由1(新規性欠如)及び申立理由2(進歩性欠如)について
(1)甲1~5に記載された事項
ア 甲1に記載された事項
(ア)「本発明は、廃水の浄化処理方法に関し、さらに詳しくは、銀メツキ剥離廃水のように銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含むアンモニアおよびシアン化合物廃水の浄化処理方法に関するものである。
銀メツキを剥離する処理工程から、銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含む、アンモニアおよびシアン化合物含有廃水が排出される。これら金属塩は、pHの変動によりアンモニア錯化合物および/またはシアン錯化合物となる。これらは安定した性質を有し、シアン化合物処理法として従来から使用されているアルカリ塩素法、すなわち、pH10以上のアルカリ性でORPが300mV以上になるように次亜塩素酸塩を添加する一段処理と、さらにpH8~9でORPが650mV以上になるように次亜塩素酸塩を添加する2段処理では、前記廃水の金属塩、アンモニアおよびシアン化合物は容易に除去されなかった。この理由としては、本発明者の検討によればアンモニアおよびシアン化合物は共に金属塩と錯体を生じ、かつ塩素系酸化剤と共に反応し、さらに競合作用があるのにかかわらず、これらを十分に除去する考慮を欠いていたためであることが見出された。
本発明の目的は、従来、除去が困難とされていた上記廃水中の金属塩を含有するアンモニアおよびシアン化合物を容易に分解除去することができる廃水の浄化処理方法を提供することにある。」(471頁右下欄5行~472頁左上欄12行)
(イ)「本発明は、銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含む、アンモニアおよびシアン化合物含有廃水にアルカリ剤を添加または添加せずに、pHを9.5~10.5に保ち、またはこれを保持せずに、ORPを550~700mVに保つように塩素系酸化剤を添加し、次に鉱酸を添加してpHを7.5~8.5に保ちながら、ORPが800~900mVになるように塩素系酸化剤を添加し、つぎにORPが150~200mVになるように還元剤を添加し、さらに鉱酸を添加してpHを5~6に保ちながら、第一鉄塩を添加して沈殿物を生じさせ、これを除去後、消石灰を添加し、pH12以上とし、生じた沈殿物を除去することを特徴とするものである。
前記ORPおよびpHが、上記数値範囲外では、廃水からアンモニアおよびシアンの金属錯化合物が充分除去されない。」(472頁左上欄17行~右上欄13行)
(ウ)「また塩素系酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムのような酸素酸塩が好ましく用いられる。還元剤としては、例えば重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩が好適である。」(472頁左下欄4~8行)
(エ)「以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水200mlのORPを770mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素10%)溶液186mlを20分間かけて徐々に廃水に注入し、つぎに硫酸15%溶液15mlと次亜塩素酸ナトリウム溶液70mlを添加し、pH8に保ちながらORPを860mVに20分間保持する。その後、重亜硫酸ナトリウム20%溶液35mlを添加し、pH6.5でORP160mVとし、つぎに硫酸15%溶液10mlを添加し、pHを5.5とし、硫酸第一鉄10%溶液12mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。沈殿除去後の処理液に消石灰15%乳液50mlを添加してpHを12.2とし、アニオン系高分子凝集剤を5ppm添加して30分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。
実施例2
実施例1で用いたと同じ廃水200mlのORPを580mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10%)145mlと水酸化ナトリウム24%溶液8.2mlを添加してpH10を保持する。つぎに硫酸15%溶液24mlを添加し、pH8に保ち、かつORPを830mVに20分間保持し、攪拌する。つぎに重亜硫酸ナトリウム20%溶液13.25mlを添加し、ORP200mVとし、さらに硫酸15%溶液11.5mlを添加しpHを5.2として硫酸第一鉄10%溶液7mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。つぎに消石灰15%乳液175mlを添加してpHを120とし、アニオン系高分子凝集剤を5ppm添加し30分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。」(472頁左下欄13行~473頁左上欄11行)
イ 甲2に記載された事項
(ア)「【請求項1】
遊離シアン、亜鉛シアノ錯体、ニッケルシアノ錯体、及び銅シアノ錯体のうちの少なくとも1種を含有するとともに鉄シアノ錯体を含有する廃水に、過酸化水素、銅塩、及び還元剤を添加して反応させた後、その反応液を固液分離し、前記反応液中に生じた難溶性シアン化合物を分離除去する廃水の処理方法。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水の処理方法に関し、より詳しくは、シアン成分を含有する廃水(以下、「シアン含有廃水」と記載することがある。)の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水には、シアン成分が含有されている場合がある。そのシアン成分は、シアン化ナトリウム等のシアン化物、シアン化物イオン(遊離シアン;CN-)、並びにフェロシアン化物イオン([Fe(CN)6]4-)及びフェリシアン化物イオン([Fe(CN)6]3-)等の鉄シアノ錯体(錯イオン)等を含む。」
(ウ)「【0018】
一方、処理対象となる廃水が、チオシアン酸イオン(SCN-)を含有する場合、その廃水に次亜塩素酸塩を添加すると、チオシアン酸イオンと次亜塩素酸塩とが反応して、塩化シアンが生成される可能性がある。例えば、排出ガスの洗浄廃水には、チオシアン酸イオンが含有されていることが多い。さらに、排出ガスの洗浄廃水には、例えばアンモニア等のように次亜塩素酸塩と容易に反応する化合物が含まれていることが多いため、これらが共存する場合には、その反応に次亜塩素酸塩が消費されることになる結果、大量の次亜塩素酸塩の添加が必要となる。
【0019】
上述した次亜塩素酸塩を用いる方法に対し、本発明の一実施形態の方法では、過酸化水素を使用する。そのため、上述のような多量のアルカリや酸を必要とするようなpH調整を必須とせずに、廃水中に含有されている可能性のある遊離シアン、亜鉛シアノ錯体、ニッケルシアノ錯体、及び銅シアノ錯体を処理することができる。なおかつ、過酸化水素の使用により、排出ガスの洗浄廃水のような、チオシアン酸イオンを含有する可能性のある廃水に対しても安全かつ有効に処理することができる。」
(エ)「【0053】
本発明の一実施形態の処理方法は、処理対象である原水(シアン含有廃水)として、メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水に好適である。廃水としては、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオン、及びそれら以外の他の鉄シアノ錯体、並びにチオシアン酸イオンを含有する可能性が高いことから、排出ガスの洗浄廃水がさらに好適である。排出ガスの洗浄廃水には、排ガス処理装置から生じる廃水も含まれる。」
ウ 甲3に記載された事項
(ア)「【請求項1】
シアン化物イオン及びWADシアンからなる群から選択される成分を少なくとも含有する廃水に、酸化剤を添加して廃水中のシアンを酸化剤によって酸化分解する際に、前記酸化剤として少なくとも次亜塩素酸又は過酸化水素を用い、且つ、前記酸化分解を、pH6.0以上9.0以下の中性域で行うことを特徴とするシアン含有廃水の処理方法。
・・・
【請求項3】
前記廃水が、アンモニア或いはチオシアン酸イオンを含有する場合に、前記酸化剤として過酸化水素を使用する請求項1又は2に記載のシアン含有廃水の処理方法。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン含有廃水からシアン成分を分解除去するためのシアン含有廃水の処理方法に関し、特に、メッキなどを行う化学工場や、石炭工場、コークス工場、コークスを大量に用いる工場などで生ずる、様々な形態のシアンを含むシアン含有廃水中のシアン成分を、より効率よく経済的に酸化分解処理するシアン含有廃水の処理方法に関する。」
(ウ)「【0011】
また、本発明者らは鋭意検討する過程で、処理対象の廃水中にはチオシアン酸塩が含有されていることがあるが、その場合に、酸化剤として次亜塩素酸ソーダを用い、且つ、その濃度が高く、次亜塩素酸ソーダを過剰に添加すると、図1-1に示したように、処理水中のT-CN濃度(全シアン濃度、JIS K-0102に規定される方法で測定)が、次亜塩素酸を低い添加濃度で添加した場合の処理水中のT-CN濃度を上回る数値を示すことがわかった。これは、廃水中のチオシアン酸イオンが、酸化剤として添加した次亜塩素酸と反応し、塩化シアン (シアン化合物として検出される)が生成したためと考えられる。
【0012】
本発明者らは、この点の対応策について検討した結果、酸化剤として次亜塩素酸ソーダを用いることなく、過酸化水素を用い、或いは、次亜塩素酸ソーダに併用して過酸化水素を用いることで解決できることを見出した。すなわち、酸化剤として過酸化水素を用いれば、図1-2に示したように、上記した問題は認められず、過酸化水素を過剰添加したとしても良好な処理がされることがわかった。さらに、アンモニアを含有する場合には、次亜塩素酸がアンモニアと反応することによって次亜塩素酸が消費され、シアンを処理するために多量の次亜塩素酸が必要である場合もあり、この点においても過酸化水素を利用することで効率のよい処理を行うことが可能になる。」
エ 甲4に記載された事項
(ア)「【請求項1】 シアン化合物含有廃物にアルカリ性条件下にて、銅塩の存在下、酸化剤を添加し、次いで加熱処理することを特徴とするシアン化合物の処理方法。」
(イ)「【0016】Cu塩は、触媒として作用するものであり、シアン化合物含有廃物に予め十分なCu塩が含有されている場合には、添加する必要はない。シアン化合物含有廃物がCu塩を含有しない場合、或いは、Cu塩含有量が少ない場合には、硫酸銅等のCu塩を添加する。この場合、Cu塩の添加量は、シアン化合物含有廃物中のシアン化合物のCN換算量に対するCuの重量比、Cu/CN(重量比)が0.5以上、特に0.8~2.5、とりわけ1.0~2.0程度となるように添加するのが好ましい。」
オ 甲5に記載された事項
(ア)「【請求項1】
シアン化物イオン及び鉄シアノ錯体を含有する被処理水に、過酸化水素を添加して反応させる工程(A)と、
前記工程(A)で得られた反応液中に残留する前記過酸化水素の濃度を測定する工程(B1)と、
前記工程(A)で得られた前記反応液に、銅(I)化合物を添加して反応させる工程(C)と、
前記工程(C)で得られた反応液を固液分離処理する工程(D)と、を含み、
前記工程(A)における前記被処理水への前記過酸化水素の添加量を、前記工程(B1)で測定される過酸化水素濃度の値が10mg-H2O2/L以下となる量に制御する、シアン含有水の処理方法。」
(イ)「【請求項11】
前記工程(C)における前記銅(I)化合物を添加する対象となる前記反応液に、さらに第4級アンモニウム化合物を添加する請求項1~10のいずれか1項に記載のシアン含有水の処理方法。」
(2)甲1に記載された発明
甲1には、上記(1)ア(ア)の記載によれば、「銀メツキ剥離廃水のように銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含むアンモニアおよびシアン化合物廃水の浄化処理方法」が記載され、その浄化方法は、同(イ)によれば、「銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含む、アンモニアおよびシアン化合物含有廃水にアルカリ剤を添加または添加せずに、pHを9.5~10.5に保ち、またはこれを保持せずに、ORPを550~700mVに保つように塩素系酸化剤を添加し、次に鉱酸を添加してpHを7.5~8.5に保ちながら、ORPが800~900mVになるように塩素系酸化剤を添加し、つぎにORPが150~200mVになるように還元剤を添加し、さらに鉱酸を添加してpHを5~6に保ちながら、第一鉄塩を添加して沈殿物を生じさせ、これを除去後、消石灰を添加し、pH12以上とし、生じた沈殿物を除去する」ものである。
そして、この浄化方法の具体的な実施例として、同(エ)には、実施例1及び実施例2が記載され、実施例2としては、以下の内容が記載されている。
「実施例1で用いたと同じ廃水200mlのORPを580mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10%)145mlと水酸化ナトリウム24%溶液8.2mlを添加してpH10を保持する。つぎに硫酸15%溶液24mlを添加し、pH8に保ち、かつORPを830mVに20分間保持し、攪拌する。つぎに重亜硫酸ナトリウム20%溶液13.25mlを添加し、ORP200mVとし、さらに硫酸15%溶液11.5mlを添加しpHを5.2として硫酸第一鉄10%溶液7mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。つぎに消石灰15%乳液175mlを添加してpHを120とし、アニオン系高分子凝集剤を5ppm添加し30分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する。」
ここで、「実施例1で用いたと同じ廃水」とは、同(エ)によれば、「NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水」であり、実施例2は、この廃水の浄化方法としてとらえることができる。
そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水の浄化方法であって、
廃水200mlのORPを580mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10%)145mlと水酸化ナトリウム24%溶液8.2mlを添加してpH10を保持し、つぎに硫酸15%溶液24mlを添加し、pH8に保ち、かつORPを830mVに20分間保持し、攪拌し、つぎに重亜硫酸ナトリウム20%溶液13.25mlを添加し、ORP200mVとし、さらに硫酸15%溶液11.5mlを添加しpHを5.2として硫酸第一鉄10%溶液7mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去し、つぎに消石灰15%乳液175mlを添加してpHを12.0とし、アニオン系高分子凝集剤を5ppm添加し30分間攪拌し、生じた沈殿物を除去する浄化方法。」
(3)本件発明2について
事案に鑑み本件発明2について先に検討した後、本件発明1を検討する。
ア 対比
本件発明2と甲1発明を対比する。
(ア)本件明細書の【0004】の「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物はいずれも含窒素化合物であり、廃水の全窒素濃度を十分に低減するためには、これらのいずれをも十分に除去する必要がある。」との記載によれば、本件発明2の「廃水の処理方法」は、廃水中の「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物」を除去し廃水を浄化するものであるから、甲1発明の「廃水の浄化方法」は、本件発明2の「廃水の処理方法」に相当する。
そして、甲1発明の「NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水」は、本件発明2の「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水」と、「アンモニア及びシアン化合物を含有する廃水」の点で共通している。
そうすると、甲1発明の「NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水の浄化方法」は、本件発明2の「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法」と、「アンモニア及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法」の点で共通している。
(イ)甲1発明の「ORP」は、本件発明2の「酸化還元電位」に相当する。
そして、甲1発明の「廃水200mlのORPを580mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10%)145mlと水酸化ナトリウム24%溶液8.2mlを添加してpH10を保持し」との段階において、酸化剤である「次亜塩素酸ナトリウム」は、浄化の対象物と「反応させ」るために添加するものであるところ、この段階の廃水のpH及びORPの値は、それぞれ、本件発明2の「アルカリ酸化反応液を得る工程」での「廃水のpH」である「9.0以上11.5以下」との条件、及びpH10における「350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下」の条件(pH10の場合は、「409mV以上759mV以下」)を満たしている。
また、甲1発明の上記の段階において、廃水にはORPが580mVに保たれるように、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムが添加されるのであるから、廃液は「酸化(状態の)反応液」となっているといえ、さらに、pH10のアルカリ性に保持されているのであるから、「アルカリ酸化(状態の)反応液」となっているといえる。
そうすると、甲1発明の「廃水200mlのORPを580mVに30分間保つように、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10%)145mlと水酸化ナトリウム24%溶液8.2mlを添加してpH10を保持し」との段階は、本件発明2の「前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程」であって、「前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程」と、「前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、アルカリ酸化反応液を得る工程」であって、「前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程」の点で共通している。
(ウ)甲1発明の「硫酸15%溶液24mlを添加し、pH8に保ち、かつORPを830mVに20分間保持し、攪拌し」との段階において、ORPが、その前のORPが580mVであった段階に比べても高位にあることから、廃液は酸化反応性の状態を保っている、すなわち、その前の段階で 浄化の対象物と「反応させ」るために添加した次亜塩素酸ナトリウムが残留した状態にあるといえる。
そして、この段階の廃水のpH及びORPの値は、それぞれ、本件発明2の「中性酸化反応液を得る工程」での「廃水のpH」であり「中性」であることを意味しているといえる「6.0以上8.0以下」との条件を満たしていると共に、pH8.0における「650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下」の条件(pH8.0の場合は、「591mV以上891mV以下」)を満たしている。
そうすると、甲1発明の「硫酸15%溶液24mlを添加し、pH8に保ち、かつORPを830mVに20分間保持し、攪拌し」との段階は、本件発明2の「前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程」であって、「前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程」と、「前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程」であって、「前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程」の点で共通している。
(エ)甲1発明の「重亜硫酸ナトリウム20%溶液13.25mlを添加し、ORP200mVとし、さらに硫酸15%溶液11.5mlを添加しpHを5.2として硫酸第一鉄10%溶液7mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去し」との段階における「重亜硫酸ナトリウム」は、甲1の上記(1)ア(ウ)の「還元剤としては、例えば重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩が好適である。」との記載によれば、「還元剤」である。
そして、上記(ウ)で述べたように、甲1発明の上記の段階の前の段階の廃水には、「残留塩素化合物」といえる「次亜塩素酸ナトリウム」が残留しているところ、「還元剤」である「重亜硫酸ナトリウム」をORPが200mVとなるように廃水に添加すれば、「重亜硫酸ナトリウム」は、「次亜塩素酸ナトリウム」と「反応」し、「次亜塩素酸ナトリウム」を消費し、廃水は、「還元反応液」になるといえる。
また、この段階でのORP200mVは、本件発明2の「還元反応液を得る工程」での酸化還元電位である「400mV以下」との条件を満たしている。
そうすると、甲1発明の「重亜硫酸ナトリウム20%溶液13.25mlを添加し、ORP200mVとし、さらに硫酸15%溶液11.5mlを添加しpHを5.2として硫酸第一鉄10%溶液7mlを添加し、40分間攪拌し、アニオン系高分子凝集剤3ppm添加してさらに10分間攪拌し、生じた沈殿物を除去し」との段階は、本件発明2の「前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程」であって、「前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程」と、「前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程」であって、「前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程」の点で共通している。
(オ)以上によれば、本件発明2は、甲1発明と、「アンモニア及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、アルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程と、
前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
処理の対象となる「廃水」について、本件発明2は、「チオシアン酸イオン」を含有しているのに対し、甲1発明は、「チオシアン酸イオン」を含有しているのか明らかでない点。
<相違点2>
「アルカリ酸化反応液を得る工程」について、本件発明2は、「前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し」、「少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解して」いるのに対し、甲1発明は、これらのことを行っているのか明らかでない点。
<相違点3>
「中性酸化反応液を得る工程」について、本件発明2は、「前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入」するのに対し、甲1発明は、中性酸化反応槽に導入しているのか明らかでない点。
<相違点4>
「還元反応液を得る工程」について、本件発明2は、「前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入」するのに対し、甲1発明は、還元反応槽に導入しているのか明らかでない点。
イ 上記相違点に対する判断
まず、上記相違点1及び2について検討する。
(ア)甲1発明における廃水は、「NH3-N430ppm,全CN9080ppm,Cd104ppm,Cu1430ppm,Zn7.74ppm,Ag1.16ppm,Fe114ppmを含む、pH11.7の銀メツキ剥離処理工程廃水」であり、含まれる成分の中に、「チオシアン酸イオン」はない。また、甲1全体の記載を見ても、甲1に記載される廃水中に「チオシアン酸イオン」が含まれていることを示す何らの記載もない。
そうすると、少なくとも上記相違点1は、実質的な相違点である。
(イ)a ここで、特許異議申立書(37頁12~26行)では、上記相違点1及び2に対し以下のことが述べられている。
メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水がシアン化合物に加えチオシアン酸イオンを含有することは、本件出願以前から甲2及び甲3に基づき公知である。
ここで、甲1発明は、銀メッキ剥離廃水のように銅、亜鉛、銀、鉄、カドミウムの少なくとも1種の塩類を含むアンモニアおよびシアン化合物廃水の浄化処理方法に関するものであり、甲2及び甲3に記載のメッキを行う工場から排出される廃水であるため、チオシアン酸イオンを含有するものである。
そうすると、甲1発明は、銅塩、チオシアン酸イオンを含むアンモニア及びシアン化合物廃水の浄化処理方法に関するものであり、このような廃水について、「pHを9.5~10.5に保ち、ORPを550~700mVに保つように塩素系酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)を添加」することが開示されているため、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明2(本件発明1)の構成を当然有している。
以上より、本件発明2は甲1発明に基づき新規性がないか、又は、甲1発明及び甲2及び甲3に記載の公知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり進歩性のないものである。
b 特許異議申立書に記載されている上記aの理由について検討する。
まず、甲1発明の銀メッキ剥離廃水が「チオシアン酸イオン」を含有するものである、とするには、メッキを行う工場から排出される廃水が、シアン化合物に加えチオシアン酸イオンを含有することが、甲2及び甲3に基づき公知であることだけでは不十分であり、チオシアン酸イオンが、メッキを行う工場から排出される廃水に「必ず」含まれる成分であることが公知でなければならない。以下、甲2及び甲3の記載について検討する。
甲2の上記(1)イ(イ)の【0002】の「メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水には、シアン成分が含有されている場合がある。そのシアン成分は、シアン化ナトリウム等のシアン化物、シアン化物イオン(遊離シアン;CN-)、並びにフェロシアン化物イオン([Fe(CN)6]4-)及びフェリシアン化物イオン([Fe(CN)6]3-)等の鉄シアノ錯体(錯イオン)等を含む。」との記載によれば、メッキを行う工場から排出される廃水には、シアン化ナトリウム等のシアン化物、シアン化物イオン(遊離シアン;CN-)、並びにフェロシアン化物イオン([Fe(CN)6]4-)及びフェリシアン化物イオン([Fe(CN)6]3-)等の鉄シアノ錯体(錯イオン)等を含むシアン成分が含まれていることは理解できるが、ここでの成分には、「チオシアン酸イオン」は、含まれていない。
そして、廃水が、「チオシアン酸イオン」を含有する場合については、同(ウ)の【0018】の「一方、処理対象となる廃水が、チオシアン酸イオン(SCN-)を含有する場合、その廃水に次亜塩素酸塩を添加すると、チオシアン酸イオンと次亜塩素酸塩とが反応して、塩化シアンが生成される可能性がある。例えば、排出ガスの洗浄廃水には、チオシアン酸イオンが含有されていることが多い。」との記載、同【0019】の「なおかつ、過酸化水素の使用により、排出ガスの洗浄廃水のような、チオシアン酸イオンを含有する可能性のある廃水に対しても安全かつ有効に処理することができる。」との記載、同(エ)の【0053】の「本発明の一実施形態の処理方法は、処理対象である原水(シアン含有廃水)として、メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水に好適である。廃水としては、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオン、及びそれら以外の他の鉄シアノ錯体、並びにチオシアン酸イオンを含有する可能性が高いことから、排出ガスの洗浄廃水がさらに好適である。排出ガスの洗浄廃水には、排ガス処理装置から生じる廃水も含まれる。」との記載によれば、甲2において、「チオシアン酸イオン」を含有する廃水とされているのは、「排出ガスの洗浄廃水」であって、「メッキを行う工場から排出される廃水」に「チオシアン酸イオン」が含まれることは記載されていない。
c 甲3においても、甲3の上記(1)ウ(イ)の【0001】の「本発明は、シアン含有廃水からシアン成分を分解除去するためのシアン含有廃水の処理方法に関し、特に、メッキなどを行う化学工場や、石炭工場、コークス工場、コークスを大量に用いる工場などで生ずる、様々な形態のシアンを含むシアン含有廃水中のシアン成分を、より効率よく経済的に酸化分解処理するシアン含有廃水の処理方法に関する。」との記載によれば、メッキを行う化学工場から排出される廃水には、少なくともシアンが含まれていることは理解できるが、ここでの成分には、「チオシアン酸イオン」は、含まれていない。
そして、廃水が、チオシアン酸イオン(SCN-)を含有する場合については、同(ア)の【請求項3】の「前記廃水が、アンモニア或いはチオシアン酸イオンを含有する場合に、前記酸化剤として過酸化水素を使用する請求項1又は2に記載のシアン含有廃水の処理方法。」との記載、同(ウ)の【0011】の「本発明者らは鋭意検討する過程で、処理対象の廃水中にはチオシアン酸塩が含有されていることがあるが、その場合に、酸化剤として次亜塩素酸ソーダを用い、且つ、その濃度が高く、次亜塩素酸ソーダを過剰に添加すると、図1-1に示したように、処理水中のT-CN濃度(全シアン濃度、JIS K-0102に規定される方法で測定)が、次亜塩素酸を低い添加濃度で添加した場合の処理水中のT-CN濃度を上回る数値を示すことがわかった。」との記載によれば、「チオシアン酸イオン」は、甲3に記載される「シアン含有廃水の処理方法」で対象とする廃水に必ず含まれるものではなく、ましてや、メッキを行う化学工場から排出される廃水に、必ず含まれている成分であることは記載されていない。
d 上記b及びcで述べたように、甲2及び甲3に、メッキを行う工場から排出される廃水が、シアン化合物に加え「チオシアン酸イオン」を必ず含有するものであることは、記載されていないのであるから、メッキを行う工場から排出される廃水が、シアン化合物に加え「チオシアン酸イオン」を必ず含有するものであることは、公知であるとはいえない。
しかも、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」は、銀メッキを剥離する際の廃水であって、メッキを行う際の廃水ではないから、甲2及び甲3に記載される、メッキを行う工場から排出される廃水に対応するものであるともいえない。
そうすると、甲2及び甲3の記載をもって、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」が、「チオシアン酸イオン」を含有するものであるとすることはできないし、仮に、甲2及び甲3の記載から、メッキを行う工場から排出される廃水が、「チオシアン酸イオン」を含有することがあるものであるとしても、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」も、同様に「チオシアン酸イオン」が含まれているものであるとすることはできない。
また、相違点2に関し、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」を、「チオシアン酸イオン」が含まれているものであるとすることはできないのであれば、甲1発明は、「少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解して」いるものでもない。
さらに、上記aでの進歩性欠如の理由は、甲2及び甲3の記載によって、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」は、「チオシアン酸イオン」を含有するものであるといえることをその根拠としているが、上述のように、甲2及び甲3によっては、甲1発明の「銀メッキ剥離廃水」は、「チオシアン酸イオン」を含有するものであるということはできないのであるから、上記aの理由では、本件発明2の進歩性を否定することはできない。
さらに言えば、廃水において「チオシアン酸イオン」は含有することが望ましくない成分であるから、甲1発明における「銀メッキ剥離廃水」を、廃水において含有することが望ましくない成分である「チオシアン酸イオン」をさらに含むものとする動機付けが、甲1発明にあるとはいえない。
そうすると、甲2~甲5の記載のいかんにかかわらず(甲4及び甲5には、上記相違点1及び2に関する事項は何ら記載されてない。)、上記相違点1及び2に係る本件発明2の構成は、甲1発明及び甲2~甲5に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到できるものではない。
ウ 小括
上記イで述べたように、上記相違点1及び2は、実質的な相違点であると共に、上記相違点1及び2に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~甲5に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
(4)本件発明1について
本件発明1は、本件発明2における「前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程」であって、「前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程」がなく、本件発明2と同じ「アルカリ酸化反応液を得る工程」及び「還元反応液を得る工程」を有し、「アルカリ酸化反応液を得る工程」で得られたアルカリ酸化反応液に対して「還元反応液を得る工程」を行うものである。
そうすると、上記(3)アで述べた、本件発明2と甲1発明との対比と同様の対比を甲1発明との間で行うと、本件発明1と甲1発明との間には、少なくとも、本件発明2と甲1発明との対比での相違点1及び2と同じ相違点が存在することになる。
そして、それらの相違点に対する判断も、上記(3)イで述べたものと同じとなる。
以上によれば、本件発明1は、本件発明2と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~甲5に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
(5)本件発明3~9について
本件発明3~9は、本件発明1又は2を直接又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1又は2の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1又は2と同様に、本件発明3~5は、甲1発明ではないし、本件発明3~9は、甲1発明及び甲2~甲5に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
(6)申立理由1及び2に関するまとめ
上記(3)~(5)で述べたとおり、申立理由1及び2には、理由がない。
2 申立理由3(サポート要件違反)、4(実施可能要件違反)について
(1)申立理由3、4の内容(特許異議申立書41頁5行~43頁8行)
本件発明の課題は、「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水について、塩化シアンの生成を抑制しつつ、全窒素の排水基準を満足し、かつ、全シアンの排水基準を高いレベルで満足する水質に処理することが可能な方法を提供しようとするものである。」(【0006】)と認められる。
そして、本件の発明の詳細な説明を確認すると、本件発明の課題を解決するには、アルカリ酸化反応において、アンモニア、チオシアン酸イオンを、次亜塩素酸と反応させ、アンモニア及びチオシアン酸イオンを分解することが重要であると理解できる。
しかしながら、本件発明1及び2には、アルカリ酸化反応液を得る工程に添加される次亜塩素酸塩について、「酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり」と規定されているのみであり、本限定により次亜塩素酸塩の添加量を水中の酸化還元電位が上記特定の範囲となるようにすることは理解できるものの、次亜塩素酸塩の添加量を上記範囲とすることで、いかなる濃度範囲のアンモニア、及び、いかなる濃度範囲のチオシアン酸イオンをもアルカリ酸化反応液を得る工程において分解できるとは理解できない。
そうすると、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度が高い場合は、次亜塩素酸塩との反応性が高いアンモニアが先に分解された後に、チオシアン酸イオンがアルカリ酸化反応液を得る工程において分解されずに残存する可能性が充分に考えられるため、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度に関して何ら規定されていない本件発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるため、サポート要件を具備しない。
また、本件明細書の発明の詳細な説明を確認しても、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度に関して何ら規定されておらず、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度がいかなる場合であっても、本件発明の課題を解決できるとは当業者であっても認識し得ないから、本件発明1~9は、本件明細書の全体を照らしても当業者が実施できる程度に充分に記載されていないため、実施可能要件を具備していない。
(2)申立理由3、4に対する当審の判断
本件明細書の【0013】の「工程1Aでは、アルカリ酸化反応槽22において、廃水W0に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも廃水W0中のチオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液W1を得る。この際、廃水W0中の次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位(ORP)が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下のアルカリ酸化反応液W1を得る。すなわち、工程1Aでは、ORPが上記特定の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水W0に添加する。それにより、廃水W0中のチオシアン酸イオンを十分に酸化分解することができる。廃水W0に次亜塩素酸塩を上記のように添加して反応させることによって、シアン化物イオン等の易分解性のシアン化合物やアンモニア態窒素も酸化分解することが可能である。廃水W0への次亜塩素酸塩の添加は、塩化シアンの生成をより抑制しやすい観点から、好ましくは廃水W0のpHを9.0以上11.5以下に調整後に行うが、調整しながら行ってもよい。」との記載によれば、ORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水W0に添加することにより、廃水W0中のチオシアン酸イオンを十分に酸化分解することができること、シアン化物イオン等の易分解性のシアン化合物やアンモニア態窒素も酸化分解することができること、また、廃水W0のpHを9.0以上11.5以下に調整後、又は調整しながら次亜塩素酸塩による酸化分解反応を行うアルカリ酸化反応液を得る工程により、塩化シアンの生成をより抑制することができるといえるから、同【0006】に記載される「アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水について、塩化シアンの生成を抑制しつつ、全窒素の排水基準を満足し、かつ、全シアンの排水基準を高いレベルで満足する水質に処理する」という本件発明の課題を解決するには、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法において、廃水に対して、次亜塩素酸塩による酸化分解反応を行うアルカリ酸化反応液を得る工程を行うこと、この工程においては、廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整すること、ORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水に添加することが肝要であるといえる。
そして、本件発明1、2及び本件発明1、2を直接又は間接的に引用する本件発明3~9には、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法において、廃水に対して、次亜塩素酸塩による酸化分解反応を行うアルカリ酸化反応液を得る工程を行うこと、この工程においては、廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整すること、ORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水に添加することが特定されており、本件発明の課題を解決するのに必要な事項が全て特定されていることになるから、本件発明は、サポート要件を充足するものである。
ここで、異議申立人は、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度が高い場合は、次亜塩素酸塩との反応性が高いアンモニアが先に分解された後に、チオシアン酸イオンがアルカリ酸化反応液を得る工程において分解されずに残存する可能性があることを主張している。
同【0028】の「[工程1A及び2Aでの反応例]
第一及び第二実施形態の処理方法におけるアルカリ酸化反応液W1を得る工程(工程1A及び2A)では、次の反応が生じると考えられる。
(A-1)下記反応式(1)で表される推定機構のように、チオシアン酸イオン(SCN-)の次亜塩素酸イオン(ClO-)との反応によるシアン酸(CNO-)への酸化が生じると考えられる。
SCN-+4ClO-+2OH-
→SO42-+CNO-+4Cl-+H2O (1)
(A-2)下記反応式(2)で表される推定機構のように、アンモニアと次亜塩素酸イオンとの反応によるクロラミン(代表的なクロラミンとしてモノクロラミン(NH2Cl))の生成が考えられる。
NH3+ClO-→NH2Cl+OH- (2)
(A-3)下記反応式(3)で表される推定機構のように、クロラミンの分解が生じると考えられる。
3NH2Cl→N2+NH4Cl+2HCl (3)
(A-4)下記反応式(4)で表される推定機構のように、後述するシアン化合物のうち、易分解性のシアン化合物(シアン化物イオンや、シアンと金属との結合が比較的弱い金属シアノ錯体(亜鉛シアノ錯体及び銅シアノ錯体等))のシアン酸への酸化が生じると考えられる。なお、ペンタシアノモノカルボニル鉄(II)イオンやテトラシアノジカルボニル鉄(II)イオンも、この工程1A及び2Aで一部分解する可能性があると考えられる。
CN-+ClO-→CNO-+Cl- (4)」との記載によれば、チオシアン酸イオンは、【0028】の式(1)によって、アンモニアは、同式(2)によって分解されるといえるところ、同式(4)によって分解されるシアン化物イオンを含め、チオシアン酸イオン及びアンモニアを分解している酸化剤である「CNO-」(次亜塩素酸塩として供給されている。)の存在量の程度が、本件発明1及び2の「前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液得る」によって特定されているといえる。すなわち、この特定によって、シアン化物イオンを含め、チオシアン酸イオン及びアンモニア等との反応後も、廃液において、「CNO-」による所定の酸化状態が維持されていることが担保されているといえる。
これによれば、仮に、廃水に多量のチオシアン酸イオン及びアンモニアが存在しているとしても、本件発明が、「前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液得る」という条件を満たすということは、この条件に満たすのに見合うだけの次亜塩素酸塩を添加すること、すなわち、シアン化物イオンを含め、多量のチオシアン酸イオン及びアンモニアを酸化分解するのに十分な次亜塩素酸塩を添加することを意味しているといえるから、異議申立人がいうように、廃水中のアンモニア濃度及びチオシアン酸イオン濃度が高い場合は、次亜塩素酸塩との反応性が高いアンモニアが先に分解された後に、チオシアン酸イオンがアルカリ酸化反応液を得る工程において分解されずに残存するということはない。
そうすると、異議申立人の、本件発明はサポート要件を満たしていないとの主張は、採用することができない。
次に、異議申立人の実施可能要件違反に関する主張は、要は、本件発明は、サポート要件を満たしていないから、実施可能要件も満たしていないというものであるが、上述のとおり、本件発明は、サポート要件を満たしているのであるから、異議申立人の主張によっては、本件発明は実施可能要件を満たしていないとすることはできない。
(3)申立理由3、4に関するまとめ
上記(2)で述べたとおり、申立理由3及び4には、理由がない。
第5 むすび
上記第4で検討したとおり、本件特許1~9は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由1~4では、本件特許1~9を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~9を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700919