審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700869

極性有機溶媒の精製方法、極性有機溶媒の精製装置、分析方法及び精製極性有機溶媒の製造方法

審判番号
2025-700869
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-541501
登録番号
7645269
請求日
2025年09月04日
審決日
2026年06月02日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】オルガノ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人あしたば国際特許事務所
  • 【異議申立人】小西 美奈子
審判長/審判官
  • 審判長 新留 豊
  • 審判官 常見 優
  • 審判官 野田 定文
分類
P1652.113-YAA(C07C) / P1652.121-YAA(C07C) / P1652.537-YAA(C07C) / P1652.851-YAA(C07C) / 標準データ:手続:異議 / 標準データ:652・113-YAA (C07C) / 標準データ:652・121 / 標準データ:652・537 / 標準データ:652・851
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)

事件の表示

特許第7645269号発明「極性有機溶媒の精製方法、極性有機溶媒の精製装置、分析方法及び精製極性有機溶媒の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7645269号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 特許第7645269号の請求項1、2、4、6、7及び9に係る特許を維持する。 特許第7645269号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7645269号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)7月30日(優先権主張 令和2年8月4日)を国際出願日とする出願であって、令和7年3月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~4、6、7及び9に係る特許について、同年9月4日に、特許異議申立人 小西 美奈子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和7年10月 7日付け 手続補正指令(方式) 同年 同月30日 手続補正書(方式)の提出(申立人) 同年12月 9日付け 取消理由通知 令和8年 2月 6日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月25日付け 手続補正指令(方式) 同年 3月 4日 手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 同月27日付け 訂正の請求があった旨の通知 また、上記訂正の請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨及び訂正の内容 令和8年3月4日提出の手続補正書により補正された同年2月6日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7645269号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7、9~10について訂正することを求める。」というものであり、その内容は以下の訂正事項1~8のとおりである(下線は訂正による変更箇所を示す。)。 (1) 訂正事項1 本件訂正前の請求項1に、 「イオン交換体に接触させ」 と記載されているのを、 「少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体に接触させ」 と訂正する。 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 本件訂正前の請求項1に、 「該極性有機溶媒が、アルコール類またはエーテル化合物、あるいは、アルコール類及びエーテル化合物のうちの1種以上を含む混合溶媒であり」 と記載されているのを、 「該極性有機溶媒が、イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒であり」 と訂正する。 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 本件訂正前の請求項4に、 「請求項1~3いずれか1項記載の」 と記載されているのを、 「請求項1又は2記載の」 と訂正する。 請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。 また、訂正特許請求の範囲の請求項4の記載に基づき、訂正請求書7(2)エに記載の「請求項1~3いずれか」は、「請求項1~3いずれか1項」の誤記と認める。 (5) 訂正事項5 本件訂正前の請求項5に、 「請求項1~4いずれか1項記載の」 と記載されているのを、 「請求項1、2及び4いずれか1項記載の」 と訂正する。 請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6及び7も同様に訂正する。 (6) 訂正事項6 本件訂正前の請求項6に、 「請求項1~5いずれか1項記載の」 と記載されているのを、 「請求項1、2、4及び5いずれか1項記載の」 と訂正する。 請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。 (7) 訂正事項7 本件訂正前の請求項9に、 「イオン交換体に接触させ」 と記載されているのを、 「少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体に接触させ」 と訂正する。 請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。 (8) 訂正事項8 本件訂正前の請求項9に、 「アルコール類またはエーテル化合物、あるいは、アルコール類及びエーテル化合物のうちの1種以上を含む混合溶媒」 と記載されているのを、 「イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒」 と訂正する。 請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、本件訂正前の請求項9及び10において、請求項10は、請求項9の記載を引用しているものであって、訂正事項7によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~7〕、〔9、10〕に対して請求されたものである。 3 訂正の適否 (1) 訂正事項1及び7について 訂正事項1は、請求項1に記載の「イオン交換体」について、交換対象となるイオンタイプ又は交換体タイプを限定し、「少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体」とするものである。 また、訂正事項7も、請求項9に記載の「イオン交換体」について、同様の訂正をするものである。 したがって、訂正事項1及び7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の【0042】には、「イオン交換体」に関し、 「イオン交換体としては、カチオン交換体、アニオン交換体、H形キレート交換体、ホウ素選択形イオン交換樹体等が挙げられる。イオン交換体は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。イオン交換体は、カチオン交換体、アニオン交換体、H形キレート交換体、ホウ素選択形イオン交換樹体の単床で用いられてもよいし、上記イオン交換体のうちの2種以上の混床又は複床で用いられてもよい。」 と記載されている。 そうすると、本件特許明細書等には、「イオン交換体」として、「カチオン交換体」及び「H形キレート交換体」が記載されているから、訂正事項1及び7は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項1及び7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 上記のとおり、訂正事項1及び7は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1及び7による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2及び8について ア 訂正事項2は、請求項1に記載の「極性有機溶媒」における「アルコール類」及び「エーテル化合物」について、それぞれ、「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」と限定するものである。 また、訂正事項8も、請求項9に記載の「極性有機溶媒」について、同様の訂正をするものである。 したがって、訂正事項2及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の【0032】には、「極性有機溶媒」に関し、 「本発明の極性有機溶媒の精製方法に係る極性有機溶媒は、極性を有しており、水を溶解することができる溶媒であれば、特に制限されず、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル化合物、ポリエーテル化合物及びこれらのうち1種以上の混合溶媒が挙げられる。なお、これらのうち1種以上の混合溶媒としては、例えば、2種以上のアルコール類の混合溶媒、2種以上のエステル化合物の混合溶媒、2種以上のエーテル化合物の混合溶媒のように、同じカテゴリーの溶媒のうちの2種以上の混合溶媒;例えば、1種以上のアルコール類及び1種以上のエステル化合物の混合溶媒とのように、異なるカテゴリーの溶媒が少なくとも2種混合されている混合溶媒が挙げられる。極性有機溶媒としては、プロトン性の極性有機溶媒であって、非プロトン性の有機溶媒であってもよい。」 と記載されている。 さらに、本件特許明細書等には、具体的な実験例として、以下の記載がある。 「【0097】 <処理対象の極性有機溶媒1> 半導体グレードのイソプロピルアルコール(トクソーIPA SEグレード、トクヤマ社製)に、オイルベース標準液Conoatanを加え、各金属濃度1ppbの処理対象の極性有機溶媒1を調製した。極性有機溶媒1の含水量は53質量ppmであった。 【0098】 (実施例1) 極性有機溶媒1に超純水を添加して、95質量ppmの含水量の極性有機溶媒を調製した。 次いで、水を添加した極性有機溶媒を、H形強酸性カチオン交換樹脂(オルライトDS-1)に、SV=5h-1で4時間通液し、通液4時間後の精製極性有機溶媒を得た。 次いで、精製極性有機溶媒の各金属濃度を、ICP-MS Agilent 8900で測定し、処理前後の分析値より各金属元素の除去率(除去率(%)=((精製前の金属元素濃度-精製後の金属元素濃度)/精製前の金属元素濃度)×100)を求めた。その結果を表1に示す。 ・H形強酸性カチオン交換樹脂(DS-1):オルガノ社製、カチオン交換容量2.0eq/L-樹脂 【0099】 (実施例2) 極性有機溶媒1に超純水を添加して、193質量ppmの含水量の極性有機溶媒を調製すること以外は、実施例1と同様に行い、精製極性有機溶媒を得た。その結果を表1に示す。 【0100】 (比較例1) 処理対象の極性有機溶媒1に水を添加しないこと、すなわち、H形強酸性カチオン交換樹脂(オルライトDS-1)に通液する極性有機溶媒を、処理対象の極性有機溶媒1とすること以外は実施例1と同様に行い、精製極性有機溶媒を得た。その結果を表1に示す。 【0101】 【表1】 [図:0001439219000001.jpg] 【0102】 <処理対象の極性有機溶媒2> 半導体グレードのイソプロピルアルコール(トクソーIPA SEグレード、トクヤマ社製)を、処理対象の極性有機溶媒2として用意した。極性有機溶媒2の含水量は31質量ppmであった。 【0103】 (実施例3) 極性有機溶媒2に超純水を添加して、70質量ppmの含水量の極性有機溶媒を調製した。 次いで、水を添加した極性有機溶媒を、H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形アニオン交換樹脂の混床(オルライトDS-7)に、SV=4h-1で2時間通液し、通液2時間後の精製極性有機溶媒を得た。 次いで、精製極性有機溶媒の各金属濃度を、ICP-MS Agilent 8900で測定し、各金属元素の濃度を求めた。その結果を表2に示す。 ・H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形アニオン交換樹脂の混床(DS-7):オルガノ社製、カチオン交換樹脂の交換容量1.8eq/L-樹脂、アニオン交換樹脂の交換容量1.0eq/L-樹脂 【0104】 (実施例4) 極性有機溶媒2に超純水を添加して、170質量ppmの含水量の極性有機溶媒を調製し、SV=8h-1で1時間通液すること以外は、実施例3と同様に行い、精製極性有機溶媒を得た。その結果を表2に示す。 【0105】 【表2】 [図:0001439219000002.jpg] 【0106】 <処理対象の極性有機溶媒3> 各金属元素濃度が表3に示す通りである高濃度Naを含有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を、処理対象の極性有機溶媒3として用意した。極性有機溶媒3の含水量は154質量ppmであった。 【0107】 (実施例5) 極性有機溶媒3に超純水を添加して、320質量ppmの含水量の極性有機溶媒を調製した。 次いで、水を添加した極性有機溶媒を、H形強酸性カチオン交換樹脂(オルライトDS-1)を上層に、H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形強アニオン交換樹脂の混床(DS-3)を下層に積層した複床のイオン交換体に、SV=5h-1で4時間通液し、通液4時間後の精製極性有機溶媒を得た。 次いで、精製極性有機溶媒の各金属濃度を、ICP-MS Agilent 8900で測定し、各金属元素の濃度を求めた。その結果を表3に示す。 ・H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形アニオン交換樹脂の混床(DS-3):オルガノ社製、カチオン交換樹脂の交換容量2.0eq/L-樹脂、アニオン交換樹脂の交換容量1.0eq/L-樹脂 【0108】 <処理対象の極性有機溶媒4> 各金属元素濃度が表3に示す通りである高濃度Naを含有するプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を、処理対象の極性有機溶媒4として用意した。極性有機溶媒4の含水量は141質量ppmであった。 【0109】 (比較例2) 処理対象である極性有機溶媒4に水を添加せずに、極性有機溶媒4を、H形強酸性カチオン交換樹脂(オルライトDS-1)を上層に、H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形強アニオン交換樹脂の混床(DS-3)を下層に積層した複床のイオン交換体に、SV=5h-1で4時間通液し、通液4時間後の精製極性有機溶媒を得た。 次いで、実施例5と同様にして、精製極性有機溶媒の各金属濃度を求めた。その結果を表3に示す。 【0110】 【表3】 [図:0001439219000003.jpg] 」 すなわち、具体的な精製対象である「極性有機溶媒」として、実施例1~4及び比較例1では「イソプロピルアルコール」を、実施例5及び比較例2では「プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)」を検討していることが理解される。 そうすると、本件特許明細書等には、「極性有機溶媒」における「アルコール類」及び「エーテル化合物」が、それぞれ、「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」であること、並びに、それらを1種以上含む混合溶媒を「極性有機溶媒」として使用することも記載されているといえるから、訂正事項2及び8は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項2及び8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 上記のとおり、訂正事項2及び8は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2及び8による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 請求項の削除は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことが明らかであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項4~6について 訂正事項4~6は、それぞれ、請求項3の記載を引用する請求項4~6において、訂正事項3によって請求項3が削除されたことにともない、請求項3の記載を引用する場合を削除するものである。 したがって、訂正事項4~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、請求項3の記載を引用する場合の削除は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことが明らかであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5) 独立特許要件について ア 請求項1、2、4、6、7及び9について 本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の請求項である請求項1~4、6、7及び9に係る特許に対して特許異議の申立てがされている。 そうすると、請求項1、2、4、6、7及び9についての訂正事項1、2及び4~8による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正後の請求項1、2、4、6、7及び9に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 イ 請求項5及び10について (ア) 本件特許異議申立事件においては、訂正事項1、2、4及び5の訂正対象である請求項5並びに訂正事項7及び8の訂正対象である請求項10に対して特許異議の申立てがされておらず、また、請求項5及び10についての訂正事項1、2、4、5、7及び8による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項5及び10に係る発明が独立特許要件を満たしているかを検討する。 (イ) 訂正前の請求項5及び10に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、訂正事項1、2、4及び5による訂正後の請求項5、並びに、訂正事項7及び8による訂正後の請求項10は、上記(1)、(2)及び(4)で検討したとおり、記載を引用する請求項1又は9の発明特定事項の限定と連動して限定されたもの、及び、記載を引用する請求項の一部を削除したものであるから、このことによって新たな拒絶理由が生じることはなく、また、特許出願の際独立して受けることができるものでないとする特段の事情も存在しない。 (ウ) まとめ 訂正事項1、2、4、5、7及び8は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。 4 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~7〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~10の記載は以下に示すとおりであり、請求項1~10に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等ということがある。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~10(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等ということがある。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 極性有機溶媒に水を添加する水添加工程と、 水が添加された極性有機溶媒を、少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体に接触させ、イオン性金属不純物が低減された精製極性有機溶媒を得る精製工程と、 を有し、 該極性有機溶媒が、イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒であり、 該極性有機溶媒が、イオン性金属不純物として、Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つを含有し、 水を添加する前の該極性有機溶媒の水の含有量が200質量ppm以下であり、該水添加工程での該極性有機溶媒への水の添加量が、水を添加する前の該極性有機溶媒中の含水量に対する割合((極性有機溶媒に添加する水の量/水を添加する前の極性有機溶媒中の含水量)×100)で150質量%以上であること、 ことを特徴とする極性有機溶媒の精製方法。 【請求項2】 前記水添加工程において、前記水が添加された極性有機溶媒中の含水量が0.01~20.0質量%となる範囲で、前記極性有機溶媒に水を添加することを特徴とする請求項1記載の極性有機溶媒の精製方法。 【請求項3】削除 【請求項4】 前記極性有機溶媒が25℃で100.0g当たり1.0g以上の水を溶解できる溶媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の極性有機溶媒の精製方法。 【請求項5】 前記精製極性有機溶媒が、ICP-MSを用いる金属濃度分析における希釈液として用いられる溶媒であることを特徴とする請求項1、2及び4いずれか1項記載の極性有機溶媒の精製方法。 【請求項6】 イオン交換体が充填されているイオン交換体の充填部と、 極性有機溶媒に水を添加するための水添加部と、 該水添加部により水が添加された該極性有機溶媒を、該イオン交換体の充填部に供給するための極性有機溶媒供給部と、 を有することを特徴とする請求項1、2、4及び5いずれか1項記載の極性有機溶媒の精製方法を実施するための極性有機溶媒の精製装置。 【請求項7】 接液部がフッ素系樹脂で形成又はコーティングされていることを特徴とする請求項6記載の極性有機溶媒の精製装置。 【請求項8】 極性有機溶媒に水を添加する水添加工程と、 水が添加された極性有機溶媒を、イオン交換体に接触させ、精製極性有機溶媒を得る精製工程と、 希釈溶媒として、該精製極性有機溶媒を用いて、検量線を作成する検量線作成工程と、を有し、 該極性有機溶媒が、アルコール類またはエーテル化合物、あるいは、アルコール類及びエーテル化合物のうちの1種以上を含む混合溶媒であり、 該極性有機溶媒が、イオン性金属不純物として、Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つを含有すること を特徴とするICP-MSを用いる金属濃度の分析方法。 【請求項9】 極性有機溶媒に水を添加する水添加工程と、 水が添加された極性有機溶媒を、少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体に接触させ、イオン性金属不純物が低減された精製極性有機溶媒を得る精製工程と、 を有し、 該極性有機溶媒が、イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒であり、 該極性有機溶媒が、イオン性金属不純物として、Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つを含有し、 水を添加する前の該極性有機溶媒の水の含有量が200質量ppm以下であり、該水添加工程での該極性有機溶媒への水の添加量が、水を添加する前の該極性有機溶媒中の含水量に対する割合((極性有機溶媒に添加する水の量/水を添加する前の極性有機溶媒中の含水量)×100)で150質量%以上であること、 を特徴とする精製極性有機溶媒の製造方法。 【請求項10】 前記精製極性有機溶媒が、ICP-MSを用いる金属濃度分析用の希釈液であることを特徴とする請求項9記載の精製極性有機溶媒の製造方法。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、証拠方法として、下記(3)に示す甲第1号証~甲第4号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」等ということがある。)を添付して提出し、本件特許の請求項1~4、6、7及び9に係る特許を取り消すべきとの特許異議の申し立てをしており、その理由(以下「申立理由」という。)の概要は、下記(1)及び(2)に示すとおりである。 なお、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものである。 (1) 申立理由1(新規性欠如) 請求項1~4及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(甲2及び甲3は参考文献)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4及び9に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。 (2) 申立理由2(進歩性欠如) 請求項1~4、6、7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~4、6、7及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当する。 (3) 甲号証一覧 甲第1号証:特開2017-132700号公報 甲第2号証:『Aldrich Advancing Science』、2005-2006、シグマアルドリッチ株式会社、p.906-907、「Diethylene glycol dimethyl ether」の項目 甲第3号証:「Diethylene Glycol Dimethyl Ether 111-96-6」、東京化成工業株式会社、令和7年4月15日出力、インターネット < URL: https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/B0498 > 甲第4号証:特開2007-117781号公報 なお、甲3は、本件特許の出願後に公表された文献である。 2 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~4、6、7及び9に係る特許に対して、当審合議体が令和7年12月9日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1) 取消理由1(新規性欠如) 請求項1~4、6及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、6及び9に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 (2) 取消理由2(進歩性欠如) 請求項1~4、6、7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び周知技術(甲2~4に記載された事項)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6、7及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 (3) 取消理由3(サポート要件違反) 請求項1~4、6、7及び9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 請求項1~4、6、7及び9に係る発明は、「イオン交換体」について、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、かつ、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 (4) 引用文献一覧 甲1:特開2017-132700号公報 甲2:『Aldrich Advancing Science』、2005-2006、シグマアルドリッチ株式会社、p.906-907、「Diethylene glycol dimethyl ether」の項目 甲3:「Diethylene Glycol Dimethyl Ether 111-96-6」、東京化成工業株式会社、令和7年4月15日出力、インターネット < URL: https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/B0498 > 甲4:特開2007-117781号公報 ここで、甲1~甲4は、それぞれ、特許異議申立人が提出した甲1~4であり、甲3は、本件特許の出願後に公表された文献であるものの、化合物の物理特性について、本件優先日前後で変化しない顕著な事実を示すものである。 また、取消理由1は申立理由1を含み、取消理由2は申立理由2と同じである。 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由及び申立人の申立理由によっては、本件請求項1、2、4、6、7及び9に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 その理由は次のとおりである。 1 甲号証の記載事項(以下、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。) (1) 甲1の記載事項 (1a) 「【請求項1】 非イオン型界面活性剤に対して水を0.5質量%以上~40.0質量%未満となるよう加えた金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理することを特徴とする非イオン型界面活性剤の処理方法。 ・・・ 【請求項5】 非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が1ppb以下となるように処理する請求項1~3のいずれか一つの項記載の非イオン型界面活性剤の処理方法。」 (1b) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明が解決しようとする課題は、電子、半導体及び精密加工分野等での使用に要求される数ppbのレベルにまで含有金属イオン濃度を低減することができる非イオン型界面活性剤の処理方法及びそのような非イオン型界面活性剤を提供するところにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、水を特定割合となるよう加えた金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を、特定のカチオン交換樹脂と特定のアニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供して処理すると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下にまで低減することができることを見出した。」 (1c) 「【0010】 本発明の処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン2級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、モノオール型ポリエーテル、ジオール型ポリエーテル、ポリオール型ポリエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセチレン系エーテル及びプルロニック型ポリエーテルが挙げられる。なかでもポリオキシアルキレン2級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアセチレン系エーテルが好ましく、ポリオキシアルキレンアセチレン系エーテルがより好ましい。かかるポリオキシアルキレンアセチレン系エーテルとしては、サーフィノールシリーズ(米国エアプロダクツ社製の商品名シリーズ)、オルフィンシリーズ(日信化学工業社製の商品名シリーズ)、アセチレノールシリーズ(川研ファイン社製の商品名シリーズ)等が挙げられる。 ・・・ 【0012】 本発明の処理方法では、前記のような特定の割合で水を加えた非イオン型界面活性剤を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供する。強酸性カチオン交換樹脂としては、市販品を使用できるが、なかでもゲル型強酸性カチオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強酸性カチオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIR-124、アンバーライトIR-120B(共に米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS-1(オルガノ社製)、デュオライトC20J、デュオライトC20LF、デュオライトC255LFH(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSK-110、ダイヤイオンSK-1B(共に三菱化学社製)等のゲル型でスルホン酸型のものが挙げられる。また強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、これも市販品を使用できるが、なかでもゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂を使用するのが好ましい。かかるゲル型強アルカリ性アニオン交換樹脂としては、いずれも商品名で、アンバーライトIRA-400J、アンバーライトIRA-410J、デュオライトA113LF、デュオライトA116(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、オルライトDS-2(オルガノ社製)、ダイヤイオンSA12A、ダイヤイオンSA20A(共に三菱化学社製)等のゲル型で4級アンモニウム塩型のものが挙げられる。 【0013】 イオン交換法に供する強酸性カチオン交換樹脂及び強アルカリ性アニオン交換樹脂について以上説明したが、本発明の処理方法では、前記のゲル型でスルホン酸型の強酸性カチオン交換樹脂やゲル型で4級アンモニウム塩型の強アルカリ性アニオン交換樹脂と組み合わせて用いる場合には、いずれも商品名で、デュオライトC-433LF(米国ダウ・ケミカル社製)等の弱酸性カチオン交換樹脂やアンバーライトIRA67(米国ダウ・ケミカル社製)、デュオライトA-375LF(米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンWA10(三菱化学社製)等の弱アルカリ性アニオン交換樹脂も使用することができる。またいずれも商品名で、デュオライトMB5113、デュオライトUP6000、デュオライトUP7000(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、アンバーライトEG-4A-HG、アンバーライトMB-1、アンバーライトMB-2、アンバージェットESP-2、アンバージェットESP-1(いずれも米国ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSMNUP、ダイヤイオンSMT100L(共に三菱化学社製)、オルライトDS-3(オルガノ社製)等、予め強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂とが混合された状態で市販されているものも使用できる。 【0014】 本発明の処理方法では、以上説明したように、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いるが、双方の混合比は、強酸性カチオン交換樹脂/強アルカリ性アニオン交換樹脂の容量比で、1/4~4/1とするのが好ましく、1/3~3/1とするのがより好ましい。」 (1d) 「【0022】 本発明に係る非イオン型界面活性剤は、半導体製造プロセスの各工程で用いる洗浄液や表面処理液、ホトレジストプロセスの処理液、剥離液、現像液、洗浄液、コート剤、電池、コンデンサ及びキャパシター等の電解液や電極製造組成物、種々のコート剤、インクや塗料における顔料やカーボンブラックの分散剤、ナノテクノロジーにおけるカーボンナノチューブ、フラーレン及び金属ナノ粒子の分散剤、色素増感型太陽電池における酸化チタンの分散剤等、多くの分野において有用である。」 (1e) 「【0025】 実施例1 金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A-1)1240gに760gの水を加えて混合し、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR-120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA-400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。前記の試料及びカラム内の液温を25℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.6で試料をカラムに通してイオン交換処理した。 ・・・ 【0029】 実施例5~7 金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤(A-5)~(A-7)を用い、また表1に記載の処理条件でイオン交換処理を行なったこと以外は実施例1と同様の操作を行ない、金属イオン濃度を低減した精製物を得た。 【0030】 比較例1 試料として金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A-1)を用いた。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR-120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLと強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA-400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mlを均一に混合し、ガラスフィルターで混合樹脂を炉別して、恒量になるまで40℃で真空乾燥した後、500gの試料中でなじませ、24時間静置した。静置した混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、試料及びカラム内の液温を30℃で一定に保温し、空間速度(SV)0.1で試料2000gを水を加えることなくそのままカラムに通してイオン交換処理した。 【0031】 比較例2 金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A-1)1300gに700gの水を加えて混合し、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR-120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを垂直にセットした内容量300mLカラムに充填し、4000gのイオン交換水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を15℃で一定に保温し、空間速度(SV)2.6で試料をカラムに通してイオン交換処理した。 【0032】 比較例3 金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A-1)1400gに600gの水を加えて混合し、これを試料とした。酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR-120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mlを用い、また強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライトIRA-400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mlを用いたが、双方を混合せずに、前者をカラム前段(上段)にセットし、また後者をカラム後段(下段)にセットして、その他は実施例1と同様に行ない、試料をイオン交換処理した。 【0033】 比較例4 金属イオンを含有する市販の非イオン型界面活性剤(A-1)2000gをメタノール800gに溶解し、これを試料とした。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライトIR-120B(米国ダウ・ケミカル社製の商品名)75mL、強アルカリ性アニオン交換樹脂として予め1Nテトラメチルアンモニウム塩水溶液を用いてOH型に再生しておいたアンバーライト IRA-400J(米ダウ・ケミカル社製の商品名)75mLを均一に混合し、混合樹脂を垂直にセットした内容量300mLカラムに充填して、4000gのメタノールで十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の液温を25℃に保温し、空間速度(SV)1.0で試料をカラムに通してイオン交換処理した。 【0034】 各例のイオン交換処理の処理条件等を表1にまとめて示し、また各例でイオン交換処理したものについてそれらの金属イオン濃度を表2にまとめて示した。但し、比較例5はイオン交換処理をしていない未処理の例である。尚、金属イオン濃度は各例でイオン交換処理したものを減圧加熱して水やメタノールを留去した非イオン型界面活性剤に対する濃度であり、かかる金属イオン濃度は誘導結合プラズマ質量分析装置としてAgilent 7700s(アジレント・テクノロジー社製の商品名)を用いた誘導結合プラズマ質量分析法によって測定した。データを省略するが、未処理の非イオン型界面活性剤(A-2)~(A-7)はいずれも、未処理の非イオン型界面活性剤(A-1)と同様、各金属イオンを高濃度で含有していた。 【0035】 【表1】 [図:0001439219000004.jpg] 【0036】 表1において、 A-1:サーフィノール465(米国エア・プロダクツ社製の商品名) A-2:オルフィンE1004(日新化学工業社製の商品名) A-3:サーフィノール2502(米国エア・プロダクツ社製の商品名) A-4:ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル(平均分子量:1060) A-5:ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル(平均分子量:700) A-6:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物(平均分子量:2800) A-7:ジエチレングリコールジメチルエーテル 水添加量:金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤に対する水の添加割合 【0037】 【表2】 [図:0001439219000005.jpg] 【0038】 表1に対応する表2の結果からも、本発明の処理方法によると、金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下、各実施例の場合には1ppb以下にまで金属イオン濃度を低減することができる。」 (2) 甲2の記載事項(訳文にて示す。) (2a) 「 [図:0001439219000006.jpg] [図:0001439219000007.jpg] 」 (3) 甲3の記載事項 (3a) 「 [図:0001439219000008.jpg] ・・・ 別名: ジエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 水への溶解性 完全に混和性である」 (4) 甲4の記載事項 (4a) 「【請求項1】 含有金属不純物量が1mg/l以下でかつ濃度が5%以上の鉱酸溶液に接触させることにより、濃度3%の塩酸を体積比25倍量で通過させたときに溶出する全金属不純物量を5μg/ml-R以下としたことを特徴とするイオン交換樹脂。 ・・・ 【請求項6】 請求項5に記載のイオン交換樹脂カラムと、 前記被処理液を前記イオン交換樹脂カラムに向けて導くポンプと、を有することを特徴とする精製装置。」 (4b) 「【0027】 イオン交換樹脂カラム及びポンプが被処理液に接する接液部が、フッ素系樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン樹脂のうち少なくともいずれか1により構成されていてもよい。これにより、接液部から被処理液への金属不純物溶出等の悪影響を防止することができ、この精製装置を用いた精製により金属不純物含有量の少ない高純度の被処理液を得ることができる。なお、フッ素系樹脂としては、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、PVDF(ビニリデンフロオライド樹脂)、ECTFE(エチレン-クロロトリフルオエチレン樹脂)、PCTFE(クロロトリフルオロエチレン樹脂)、PVF(ビニルフルオライド樹脂)等が考えられる。 ・・・ 【0049】 なお、この精製装置Sが被処理液10と接触する各部(例えば、ポンプ2の内部流路、配管部材6の内壁、収納部材8の内壁等の接液部)はフッ素系樹脂によって形成又はコーティングされている。したがって、接液部は被処理液10に対して不活性であり、被処理液10に悪影響を与えることがない。もちろん、フッ素系樹脂のほかにもポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂を適用することも可能である。」 2 取消理由についての判断 (1) 理由1(新規性欠如)及び理由2(進歩性欠如)について ア 甲1に記載された発明 甲1には、非イオン型界面活性剤に対して水を0.5質量%以上~40.0質量%未満となるよう加えた金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理する、非イオン型界面活性剤の処理方法として、非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が1ppb以下となるように処理することが記載され(摘記(1a))、当該処理方法を適用するのに好適な非イオン型界面活性剤の一種として「ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル」が例示されている(摘記(1c))。 さらに、甲1には、上記処理方法の具体例として、「ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル」に該当する「A-7:ジエチレングリコールジメチルエーテル」を処理した実施例8が記載されている(摘記(1e))。 なお、摘記(1e)の【0029】に記載の「実施例5~7」は、「実施例6~8」の明らかな誤記と認める。 そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 非イオン型界面活性剤に対して水を0.5質量%以上~40.0質量%未満となるよう加えた金属イオンを含有する非イオン型界面活性剤を、強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供し、非イオン型界面活性剤に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で5ppb以下となるように処理し、非イオン型界面活性剤に対するNa、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン濃度が1ppb以下となるように非イオン型界面活性剤を処理する方法において、非イオン型界面活性剤がジエチレングリコールジメチルエーテルであり、水を15質量%となるように加える処理方法。 イ 本件発明と甲1に記載された発明との対比・判断 (ア) 本件発明1について a 新規性について (a) 本件発明1と甲1発明との対比 甲1発明における「強酸性カチオン交換樹脂」は、本件発明1における「カチオン交換体」に相当し、甲1発明における「Na、K、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Cu、Ni、Cr及びZnの各金属イオン」は、本件発明1における「Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つ」の「イオン性金属不純物」に相当する。 また、甲1発明は、「各金属イオン濃度」をある一定量以下に処理する方法であるから、「各金属イオン」が低減される「精製方法」といえる。 さらに、甲1発明の精製対象である「ジエチレングリコールジメチルエーテル」は「エーテル化合物」であって、甲2に記載されているとおり、「沸点:162℃」及び「融点:-64℃」の常温で液状であるから(摘記(2a))、本件発明1の精製対象の「極性有機溶媒」である「イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒」と、甲1発明の「ジエチレングリコールジメチルエーテル」は、液状の精製対象である「アルコール類またはエーテル化合物、あるいは、アルコール類及びエーテル化合物のうちの1種以上を含む混合化合物」である点で共通する。 そして、甲1発明において、「水」を「加え」ること、及び、「強酸性カチオン交換樹脂と強アルカリ性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いたイオン交換法に供」することは、それぞれ、本件発明1における「水添加工程」及び「少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体」に接触させる「精製工程」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「液状の精製対象に水を添加する水添加工程と、 水が添加された液状の精製対象を、少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体に接触させ、イオン性金属不純物が低減された精製化合物を得る精製工程と、 を有し、 該液状の精製対象が、アルコール類またはエーテル化合物、あるいは、アルコール類及びエーテル化合物のうちの1種以上を含む混合化合物であり、 該液状の精製対象が、イオン性金属不純物として、Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つを含有する、 液状の精製対象の精製方法。」 である点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 <相違点1> 液状の精製対象が、本件発明1では、「イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒」であるのに対し、甲1発明では、「非イオン型界面活性剤」としての「ジエチレングリコールジメチルエーテル」であって、「極性有機溶媒」に該当するかも明らかでない点 <相違点2> 本件発明1では、「水を添加する前の液状の精製対象の水の含有量が200質量ppm以下であり、水添加工程での該液状の精製対象への水の添加量が、水を添加する前の該液状の精製対象中の含水量に対する割合((液状の精製対象に添加する水の量/水を添加する前の化合物中の含水量)×100)で150質量%以上」であるのに対し、甲1発明では、水を添加する前の液状の精製対象の水の含有量が不明であり、水添加工程での該液状の精製対象への水の添加量が、水を添加する前の該液状の精製対象中の含水量に対する割合が不明であるものの、「水含有率が15質量%となるように水を液状の精製対象に加えている」点 (b) 相違点についての判断 相違点1について検討する。 甲1発明の「ジエチレングリコールジメチルエーテル」は、本件発明1の「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」のいずれでもなく、当然にそれらを1種以上含む混合溶媒にも該当しない。 そして、本件発明1の「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」について、甲1には精製対象である「非イオン型界面活性剤」として記載も示唆もない。 そうすると、相違点1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではない。 b 進歩性について 相違点1について検討する。 本件発明1の「極性有機溶媒」である「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」について、甲1には精製対象である「非イオン型界面活性剤」として記載も示唆もないところ、甲2~4(摘記(2a)、(3a)、(4a)及び(4b))を参照しても、「イソプロピルアルコール」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は、当業者にとって、「非イオン型界面活性剤」と認識される化合物ともいえないし、そのような技術常識も確認できない。 そうすると、甲1発明において、「非イオン型界面活性剤」である「ジエチレングリコールジメチルエーテル」を、「イソプロピルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいは、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種以上を含む混合溶媒」に変更する動機付けはなく、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2、4について 本件発明2及び4は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、本件発明2及び4は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明6、7について 本件発明6及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであって、少なくとも本件発明1の極性有機溶媒の精製方法を実施するための極性有機溶媒の精製装置であるから、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、本件発明6は、甲1に記載された発明ではないし、また、本件発明6及び7は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 本件発明9について 本件請求項9は、本件請求項1における「極性有機溶媒の精製方法」の記載を、「精製極性有機溶媒の製造方法」に変更しただけのものであるから、本件発明9と甲1発明とを対比すると、上記(ア)a(a)で示した相違点1及び相違点2で相違するものである。 そうすると、上記(ア)a(b)及び(ア)bで述べたのと同様の理由により、本件発明9は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 理由1(新規性欠如)及び理由2(進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、2、4、6及び9は、甲1に記載された発明ではないし、また、本件発明1、2、4、6、7及び9は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 取消理由3(サポート要件違反)について ア 本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書【0010】~【0013】を含む本件特許明細書等全体の記載によれば、「極性有機溶媒中のイオン性不純物の除去性に優れる極性有機溶媒の精製方法及び精製極性有機溶媒の製造方法を提供すること」であるものと認められる。 本件発明1は、「Na、K、Li、Cr、As、Ca、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、Pb及びZnのうち少なくとも1つ」の「イオン性金属不純物」を低減する「精製方法」において、「少なくともカチオン交換体及び/又はH形キレート交換体」と、水が添加された極性有機溶媒を接触させることを発明特定事項とするものである。 イ 本件特許明細書等の記載 「カチオン交換体及び/又はH形キレート交換体」に関し、本件明細書【0042】~【0067】には、「イオン交換体」についての一般的な記載があり、実施例で使用している「イオン交換体」は、「H形強酸性カチオン交換樹脂」(実施例1、2)、「H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形アニオン交換樹脂の混床」(実施例3、4)、「H形強酸性カチオン交換樹脂を上層に、H形強酸性カチオン交換樹脂とOH形強アニオン交換樹脂の混床を下層に積層した複床のイオン交換体」(実施例5)、「H形キレート交換樹脂:H形のアミノリン酸形キレート樹脂(カチオン交換容量1.8eq/L)」(実施例6)、「H形強酸性カチオン交換樹脂」(実施例7)であり、いずれも、「カチオン交換体」又は「H形キレート交換体」といえる「イオン交換体」を使用している。 ウ 判断 そうすると、本件特許明細書等には、「イオン交換体」として、「カチオン交換体及び/又はH形キレート交換体」を使用することにより「イオン性金属不純物」を低減できることが具体的に記載されているものであって、さらに、「カチオン性」を示す金属「イオン性不純物」の除去機序にも合致するものであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、かつ、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。 同様の理由により、本件発明2、4、6、7及び9は、発明の詳細な説明に記載したものといえる。 エ 理由3(サポート要件)についてのまとめ したがって、本件発明1、2、4、6、7及び9は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3) 小括 したがって、取消理由通知に記載した取消理由1、2及び3によっては、本件請求項1、2、4、6、7及び9に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1、2、4、6、7及び9に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、ほかに本件請求項1、2、4、6、7及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3に係る特許は、本件訂正により削除され、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700869

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存